ブリッジレポート
(4043) 株式会社トクヤマ

プライム

ブリッジレポート:(4043)トクヤマ 2020年3月期決算

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横田 浩

代表取締役

社長執行役員

株式会社トクヤマ(4043)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

化学(製造業)

代表取締役社長執行役員

横田 浩

所在地

東京都千代田区外神田1-7-5 フロントプレイス秋葉原

決算月

3月

HP

https://www.tokuyama.co.jp/

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

2,473円

69,934,375株

172,947百万円

12.4%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

未定

-

316.75円

7.8倍

2,431.21円

1.0倍

*株価は6/12終値。各数値は20年3月期決算短信より。中間配当は前期と同額の35円とするが期末配当は未定で、今後の業績動向を踏まえ、決定次第、速やかに開示する。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2017年3月(実)

299,106

39,720

33,998

52,165

147.78

0.00

2018年3月(実)

308,061

41,268

36,196

19,698

259.81

30.00

2019年3月(実)

324,661

35,262

33,400

34,279

493.26

50.00

2020年3月(実)

316,096

34,281

32,837

19,937

287.05

70.00

2021年3月(予)

310,000

28,000

28,000

22,000

316.75

未定

*単位:円、百万円。予想は会社側予想。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下、同様。
2017年10月1日より売買単位を1000株から100株へ変更するとともに、同日付で株式併合(5株を1株へ併合)を実施。DPSは併合を考慮した年間配当金合計。EPS、DPSは遡及再計算していない。配当は今後の業績動向を踏まえ、決定次第、速やかに開示する。

 

 

トクヤマの2020年3月期決算概要、中期経営計画の進捗、横田社長へのインタビューなどをお伝えします。

 

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2020年3月決算概要
3.2021年3月期業績予想
4.中期経営計画の進捗
5.横田社長に聞く
6.今後の注目点
<参考1:中期経営計画「再生の礎」>
<参考2:コーポレートガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 20年3月期の売上高は前期比2.6%減の3,160億円。化成品、特殊品、セメントとも減収。営業利益は同2.8%減の342億円。国産ナフサなど原燃料コスト減少がプラス寄与したが、半導体関連製品の販売数量が減少。苛性ソーダ輸出価格や石化製品価格が軟調だったほか、減価償却費、研究開発費、広告宣伝費が増加した。第4四半期(1‐3月)の新型コロナウイルス感染症の影響は軽微だったが、主力製品の販売数量が計画未達で売上、利益とも予想を下回った。

     

  • 21年3月期の売上高は前期比1.9%減の3,100億円の予想。特殊品は増収も、化成品、セメントが減収。営業利益は同18.3%減の280億円を予想。原料コスト減、放熱材等の数量増がプラス寄与するが、修繕費、減価償却費、研究開発、人件費など固定費を積み増す。新型コロナウイルスの影響については、第2四半期(7‐9月)より徐々に薄れ、第3四半期(10-12月)以降の事業環境は回復に向かうものと想定している。配当については、現時点では未定。今後の業績動向を踏まえ、決定次第、速やかに開示する。

     

  • 横田社長に前期決算の総括、今期業績予想のポイント、中期経営計画の進捗、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。「世の中に求められる存在になるために株主や投資家の皆様とともに歩んでいきたいというのが私の強い想いだ。この想いにご賛同下さり株主となって頂いた皆様には、我々も適切なリターンをお返ししたいと考えている。中長期の視点で是非弊社を応援していただきたい」とのことだ。

     

  • 残念ながら前期決算は予想に対して未達で、今期が最終年となる中期経営計画についても売上・利益は未達の見込みであるが、横田社長がインタビュー内でも触れているように、コモディティ中心に以前からの各種取り組みが売上を下支えしたということであり、今期以降も基盤強化に寄与すると思われる。

     

  • 一方財務体質の改善を一期前倒しで達成し、投資余力も生まれてきた。石化燃料に厳しい目が向けられている中、次の中計において環境関連でどこに事業機会を見出し、どのような投資を実行し、どんな姿を目指していくのかを注目したい。

     

1.会社概要

ソーダ灰、苛性ソーダなど幅広い用途に用いられる必要不可欠な基礎化学製品、多結晶シリコンを始めとする半導体関連製品、国内第4位の生産量のセメントのほか、メガネ関連材料やジェネリック医薬品原薬などを展開する総合化学メーカー。1918年創業。多様な特有技術から生み出される先端製品、高度に統合・集積された徳山製造所の競争力などが大きな強み。

 

【1-1 沿革】

1918年にガラスの原料であるソーダ灰(炭酸ナトリウム)の国産化を目指し、創業者 岩井勝次郎により「日本曹達工業株式会社」として設立された。現在でもソーダ灰製造を継続する唯一の国産メーカーである。
1938年にはソーダ灰事業の副産物を生かした湿式法によるセメント製造を開始した。
第二次大戦後、無機関連事業を伸張させた後、高度経済成長時代に入ると、塩化ビニルやポリプロピレンなど石油化学関連事業を拡大させた。
2度のオイルショックを経た後は、電子材料・ファインケミカルなど高付加価値分野へ進出。1984年には、現在では世界トップスリーに入る多結晶シリコン事業に進出した。また、1985年には電子部品の放熱材料として用いられる窒化アルミニウム粉末を独自開発の製法である還元窒化法により製造を開始した。
以降も、メガネレンズ材料や歯科器材など生活・医療分野、環境・エネルギー分野などへ事業フィールドを拡大させてきた。

 

ただ、2009年にマレーシアに設立した連結子会社「トクヤママレーシア」における多結晶シリコン事業が市況下落により大幅に収益が悪化。これにより15年3月期、16年3月期に多額の減損損失を計上し無配に転じた。
こうした状況に対し、2016年5月には「財務基盤の再建」に向けた種類株式の発行による資金調達を実施。
同時に、「あらたなる創業」に向けたビジョンの下、5年間の中期経営計画「再生の礎」を策定・発表し、組織風土の変革、事業戦略の再構築などの重要課題に取り組んでいる。18年3月期には4期ぶりの配当を実施した。

 

【1-2 経営理念など】

1989年に制定された「基本理念」、「行動指針」の抜本的な見直しを行い、2016年の中期経営計画「再生の礎」策定時に、新たに「存在意義、「目指す姿」、「価値観」からなる、あらたなる創業に向けた「トクヤマのビジョン」を制定した。
2018年に創業100年を迎えるにあたり、次の100年に向けて「トクヤマ再生の礎」を築き、持続的成長を遂げていくためには、改めてトクヤマの存在意義と進むべき方向性を明確にする必要があると考えた。
事業戦略をはじめとする会社の活動の大本は、このビジョンに繋がっている。

 

(トクヤマのビジョン)

存在意義

化学を通じて暮らしに役立つ価値を創造する

目指す姿

量から質へ

 

(2025年度)

*先端材料世界トップ

*伝統事業日本トップ

価値観

*顧客満足が利益の源泉

 

*目線はより広くより高く

 

*前任を超える人材たれ

 

*誠実、根気、遊び心

 

【1-3 事業内容】

事業セグメントは化成品、特殊品、セメント、ライフアメニティー、その他の5つ。(報告セグメントは前者4つ。)

 

 

◎化成品
<概要・主要製品>
ソーダ灰、苛性ソーダ、塩化カルシウムなど、幅広い用途に用いられ、各産業において必要不可欠な基礎化学製品を取り扱っている。
また、苛性ソーダの製造工程で発生する塩素と水素は多結晶シリコンの製造工程で使用されるなど、効率的な事業運営が行われている。
「顧客に選ばれ続けるトクヤマを実現する」という部門目標のもと、顧客企業個々のニーズに見合った安定的かつタイムリーな製品・サービスの提供に努めている。

 

事業

特長

主要製品

ソ-ダ・塩カル

国内需要の伸び悩みや輸入品の増加による競争激化から、事業環境は厳しく、国内のソーダ灰製造メーカーは現在同社1社。国内メーカーとしての存在意義と責任は今まで以上に大きく、創業以来培ってきた技術と、長年にわたり築き上げてきた顧客との信頼関係を軸に、競争力を維持・強化し国内市場で確固たる地位を築いくことを目指している。

また珪酸ソーダカレットは、原料であるソーダ灰や苛性ソーダから一貫して自社生産する競争力と生産能力の高さを武器に国内トップシェアを誇っている。

ソーダ灰、塩化カルシウム、珪酸ソーダ、重曹

クロルアルカリ・塩ビ

苛性ソーダ生産能力は年間49万トンで国内第3位。また、併産される塩素を利用して多様な製品を生産しており、同社の競争力を下支えしている。これらの製品群は多岐にわたるため、特定の分野の消費動向から受ける影響が少ないのも特長。

塩化ビニル樹脂(塩ビ)はその40%が石油由来で、残りの60%は塩由来。石油への依存度という面からは、塩ビは省資源性の高いプラスチックである。さらに塩ビ製の複層ガラスサッシは住宅の保温効果に優れ、冷暖房のエネルギーを節約することによる地球温暖化ガスの排出削減にも有効である。

苛性ソーダ、塩化ビニルモノマー、酸化プロピレン、メチレンクロライド

ニューオーガニックケミカルズ

同社の工業用イソプロピルアルコール(IPA)は、大気汚染物質や産業廃棄物が全く排出されない無公害のプロセスが特徴。

自社技術であるプロピレンの直接水和法は、1974年日本石油学会技術進歩賞、75年毎日工業技術賞、76年日本化学会化学技術賞を受賞した。また、省エネルギー、低コストといった特性に加えて、高純度の製品を提供できるため、品質面でも高い評価を受けている。

工業用イソプロピルアルコール(IPA)

 

主要製品

用途

ソーダ灰

ガラス原料、グラスウール原料、石けん・洗剤原料、かん水、水処理助剤 他

塩化カルシウム

凍結防止剤、防塵、除湿剤、廃液処理、食品添加物

 

(同社提供)

 

<基本方針と施策>
顧客ニーズに沿った、高品質及びコスト競争力に優れた基礎化学素材及びサービスを提供することにより、顧客の事業発展に貢献するとともに、中核事業として安定的かつ、継続的な収益向上に貢献する。

 

事業

主要施策

ソ-ダ・塩カル

*国内単一メーカーとして、安定供給・品質を維持

*融雪向け粒状塩化カルシウムの増産

クロルアルカリ・塩ビ

*苛性ソーダ・塩素の更なる原価低減を目指した自家発電と電解の競争力強化

*塩化ビニルモノマーの輸出拡大とプラントフル稼働の維持

*塩素誘導品(塩ビ、酸化プロピレン、クロロメタン他)の収益力強化

 

◎特殊品
<概要・主要製品>
取扱製品群は、エネルギー、エレクトロニクス、環境など多方面に亘る。半導体に使われる高純度多結晶シリコンは、世界有数のシェアを有する。またその副生物から製造する乾式シリカはシリコーンゴムや複写機トナーなどに使用されている。放熱性に優れた窒化アルミニウムは、半導体製造装置のほか、インバーター、LEDなどの省エネルギー分野で、電子工業用高純度薬品は半導体、液晶パネルの製造などで使用されている。

 

事業

特長

主要製品

電子材料

徳山製造所において年産8,500トンの多結晶シリコン生産能力を有し、国内一位。

半導体用多結晶シリコン

乾式シリカ

独自の技術により開発されたレオロシールは高度に精製した原料ガスを酸水素炎中で高温加水分解させ、反応から包装まで全てクローズドシステムで一貫した管理のもとに製造されている。そのため、高純度、高分散性、高比表面積という特徴を有しており、多くの用途で使われている。日本国内だけでなく中国にも生産拠点を持ち、事業の最適化を図りながら、安定・継続的な供給に努め、世界市場を視野に入れて更なる事業拡大を目指している。

乾式シリカ

放熱材

窒化アルミニウム粉末から、顆粒、粉末を焼結したセラミックスなど、用途にあわせた製品を展開している。独自開発の製法・還元窒化法は、不純物の極めて少ない良質な製品を生み出し、その製造能力は世界最大の年産840トンを誇る。窒化アルミニウム粉末では、世界シェア70%以上を獲得している。

窒化アルミニウム

ICケミカル/洗浄システム

アジアの成長市場に向け、より高純度な製品を供給すべく、製造・販売拠点を各地に展開している。

電子工業用高純度薬品、ポジ型フォトレジスト用現像液

 

主要製品

用途

多結晶シリコン

半導体ウエハ

乾式シリカ

各種エラストマー、各種シーラント、液状樹脂製品、粉体製品

窒化アルミニウム

電子部品の放熱材料

電子工業用高純度薬品

ウエハ、電子デバイス等の精密洗浄及び乾燥

 

 

(多結晶シリコン)

 

(窒化アルミニウムセラミックス)

 

(同社提供)

 

<基本方針と施策>
顧客から選ばれ続ける製品の供給と開発品の提案により事業と収益の拡大を図る。

 

事業

主要施策

多結晶シリコン

*最先端品を始めとし顧客要求品質を的確に把握し、品質世界一・コスト極小化を実現

乾式シリカ

*CMP、シリコーン向けに続く高機能品の拡充

*中国子会社徳山化工におけるコストダウンと高付加価値化

ICケミカル

*先端半導体向け製品の品質追求、拡販

放熱材

*窒化アルミ粉末生産能力増強

*窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウムフィラーの事業化

 

同社が製造している世界シェア30%の多結晶シリコンや放熱材用窒化アルミニウムなど半導体製造プロセスに不可欠な様々な半導体関連製品は、同社が長年かけて開発・蓄積してきた様々な特有の要素技術の組み合わせから創出された先端材料であり、どれも世界的に極めて高い競争力を有している。

 

(同社資料より)

 

半導体製造分野では半導体の大容量化・小型化に伴う 半導体の微細化・3次元化が急速に進んでいる。
同社の「半導体用高純度多結晶シリコン」、「電子工業用高純度薬品」は、歩留まり悪化を引き起こす不純物、残渣物を極限まで低減させた超高純度材料であり、微細化・3次元化を進める半導体メーカーから高い評価を得ている。

 

また、半導体の安定した動作に不可欠な放熱材料においても同社製品の評価は高い。
近年、車載用、産業機器、電鉄向けパワーデバイスの高出力化・小型化に伴い放熱材料の需要が急増しているが、同社では、窒化アルミニウム粉末、窒化アルミニウムセラミックス、窒化ホウ素など、独自の還元窒化法により開発された不純物の極めて少ない高熱伝導率の放熱材料を供給している。

 

上の図の様に、原料から最終製品に至る半導体製造プロセスにおいて、「点」ではなく、多様な先端製品を「面」で供給することで、より大きな事業機会を創出し、需要を取り込んでいく考えだ。

 

◎セメント
<概要・主要製品>
1938年、徳山製造所内の副産物の有効活用という観点でスタートした。徳山製造所南陽工場で製造するセメントやセメント系固化材など関連製品は、生コンクリートやコンクリート二次製品として、住宅・ビル・ライフラインを支える構造物、港・橋・道路など社会資本となり人々の暮らしを支えている。
社内だけでなく、社外からも廃プラスチックや家庭ゴミを燃やした後の灰など多くの廃棄物を受け入れ、セメントを製造する工程で原料や熱エネルギーとして利用しており、資源循環型社会の形成に貢献している。

 

 

事業

特長

主要製品

セメント

徳山製造所南陽工場は、単一工場としては国内最大規模。

セメント事業は国内第4位で、東京・大阪・広島・高松・福岡を主な拠点として、地域に根ざした営業活動を展開している。また東京・大阪・広島・福岡の4地区にセメント試験室を設置。セメントおよびセメント系固化材の使用に際し、施工前の配合試験、施工後の管理試験を実施し、きめ細かいユーザーサポートを提供している。

 

またセメント系やモルタル系の各種建材製品をトクヤマエムテックが製造販売するほか、同社独自の漆喰をシート化する技術により、建築内装材「漆喰ルマージュ」や、古典的なフレスコ画の技法に漆喰による立体造形技術を組み合わせた最新フレスコ技法「Fresco Graph」などを展開し、セメント・建材分野で培った技術で新たな事業機会を追求している。

ポルトランドセメント、高炉セメント、セメント系固化材

資源環境

低含水・高含水汚泥設備や鋭角廃棄物処理施設など様々な再資源化設備で、廃プラスチック類、汚泥、ガラスくずを始め多様な廃棄物を受け入れている。

廃棄物処理

 

<基本方針と施策>
事業環境の変化に柔軟に対応し、最適な製造・販売・物流体制を整備・構築する。輸出拡大による廃棄物処理収益の最大化、原価低減による競争力強化を図る。

 

事業

主要施策

セメント

*生産効率及び原単位改善と廃棄物受入増を軸とした原価低減

*4号キルン(セメントの焼成に使う窯)を最大限活用した輸出の拡大による収益確保

*トクヤマエムテックによるインフラの補修・補強事業の拡充

資源環境

*原料系の最適化と可燃系廃棄物の活用促進及び燃料化プラント事業の最適化

*廃石膏ボードリサイクルなど既存リサイクル事業の安定操業及び新たなリサイクル事業の創生

 

2013年6月に買収したトクヤマニューカレドニアは、クリンカ(セメントの製造過程でできる塊状の物質で、粉砕してセメントを作る。)の輸出先としてセメント部門の収益改善に寄与している。

 

中長期では人口減に伴う国内需要の縮小が不可避であるため、安定した輸出先の確保による販売数量の増大、セメント工場の稼働率向上、廃棄物受け入れ拡大を目指し、トクヤマニューカレドニアに続く海外粉砕工場の展開を検討・推進していく。

 

(同社資料より)

 

◎ライフアメニティー
<概要・主要製品>
トクヤマ本体が手掛けるファインケミカル事業とNF事業および、グループ会社が開発・製造・販売するイオン交換膜、歯科材料、臨床検査システム、ポリオレフィンフィルム、樹脂サッシ等から成る。
ファインケミカル事業では、同社の強みである有機合成技術から生まれた、メガネ関連材料やジェネリック医薬品原薬・中間体を中心に事業展開をしており、NF事業では、水は通さず空気や湿気は通すというフィルムを製造販売している。
海外グループ会社としては、中国はじめ新興国で急速に需要が伸びている紙おむつ用の通気性フィルムの製造販売を担っている上海徳山塑料などがある。

 

事業

主要製品

ファインケミカル

医薬品原薬・中間体(アミノ基保護材、縮合剤)、プラスチックレンズ関連材料(フォトクロミック材料、ハードコート剤)

NF

微多孔質フィルム

(株)トクヤマデンタル

歯科医療器材の製造・輸出入・販売

(株)エイアンドティー

臨床検査試薬・機器システムの開発・製造・販売

サン・トックス(株)

ポリオレフィンフィルムの製造・販売

(株)アストム

脱塩・濃縮用イオン交換膜及び電気透析装置の製造販売

(株)エクセルシャノン

樹脂サッシ及び関連製品、住宅用建築資材の製造販売

 

(医薬品)

(同社提供)

 

 

<基本方針と施策>
顧客起点の開発・製造・販売体制の確立・強化により、国内外の市場で優位なポジションを獲得。事業の拡大を図り、人々の生活・健康(QOL)の改善に貢献する。

 

事業

主要施策

ファインケミカル

メガネ用調光材料のシェア拡大、用途開拓

NF

中国事業の立て直し

歯科器材事業

審美充填材料を中心とした海外展開の加速

医療診断システム事業

江刺工場増設による生産体制強化

ポリオレフィンフィルム事業

製造設備のスクラップアンドビルドによる生産性改善(17年10月~)

イオン交換膜

海外大型案件への対応

樹脂サッシ

ゼロエネルギーハウス(ZEH)向け拡販

 

同セグメントでは、フォトクロミック材料(調光材料)の成長に力を入れている。

 

フォトクロミック材料とは、太陽光(紫外線)を照射すると無色からグレーやブラウンなどに発色し、照射を止めると再び無色の状態に戻る樹脂材料。
近年では、スポーツウェア・ドライブウェア用途に加え、有害紫外線への意識の高まり、高齢化にともなう緑内障など眼の疾患増加を背景に、フォトクロミック材料の使用が増大している。

 

同社製品は、「赤・青・黄の3原色発色による豊富なカラーバリエーション」、「速い発色および退色速度」、「夏場の高温下でも十分な発色性能」、「優れた耐久性」、「紫外線を99%以上カット」といった特長を持っている。
こうした特長を訴求し、製品仕様に関する顧客ニーズへの対応など細やかな顧客対応や製品ラインナップの拡充によりシェア拡大を図るとともに、視認性向上、紫外線遮蔽などの特長を活かした新規用途の開拓も進める。

 

 

 

 

(同社資料より)

 

◎その他
報告セグメントである「化成品」、「特殊品」、「セメント」、「ライフアメニティー」に含まれない事業セグメントで、海外販売会社、運送業、不動産業などを含む。

 

 

【1-4 研究開発】

「化学技術で暮らしに役立つ価値を創造する」という研究開発の理念に基づき、①顧客起点をベースに事業にコミットした研究開発の推進、②特有技術の深耕と新技術との融合によるオンリーワン、ナンバーワン技術の創出、③技術を基軸としたマーケットインによる独自製品の創出、の4つを目指して研究開発に取り組んでいる。

 

高齢化社会の到来、環境重視、ICT技術の飛躍的発展・普及などを見据え、化学メーカーとしてこれまでに培ってきた無機や有機の材料合成、高純度化、結晶・析出、粉体制御、焼結などの特有技術をベースにしつつ、大学等とのオープンイノベーションにも積極的に取り組んで更に新たな技術を融合し、先端材料で世界トップとなる研究開発を目指している。

 

研究開発拠点として「つくば研究所」(茨城県つくば市)、「徳山総合研究所」(山口県周南市)を持ち、東西2拠点体制を敷いている。
「つくば研究所」では、中長期的な視点に立った先端技術開発、基盤技術としての分析解析技術開発、複合材料を特徴とする歯科材料分野、高付加価値製品をターゲットとした有機ファインケミカル分野の研究開発を行っている。

 

徳山製造所内に立地する「徳山総合研究所」は、徳山地区の研究・開発の拠点。
徳山地区の開発グループのみならず様々な研究・開発チームが集まることによって得られるシナジー効果や、ものづくりの現場である製造部にも近く情報交換が容易といったメリットも大きい。

 

【1-5 同業他社】

コード

社名

売上高

増収率

営業利益

増益率

営業利益率

ROE

ROA

時価総額

PER

PBR

4005

住友化学

-

-

-

-

-

3.2

3.8

557,885

-

0.6

4042

東ソー

-

-

-

-

-

10.1

9.7

493,472

-

0.9

4043

トクヤマ

310,000

-1.9

28,000

-18.3

9.0%

12.4

8.6

172,947

7.9

1.0

4063

信越化学

-

-

-

-

-

12.3

13.3

5,409,224

-

2.0

4118

カネカ

-

-

-

-

-

4.2

3.1

195,364

-

0.6

4183

三井化学

1,145,000

-

37,000

-

3.2%

7.0

4.4

486,696

22.7

0.9

4185

JSR

423,000

-10.4

23,000

-30.1

5.4%

5.7

4.8

458,583

29.0

1.1

4205

日本ゼオン

-

-

-

-

-

7.9

6.9

244,424

-

0.9

5711

三菱マテリアル

-

-

-

-

-

-12.8

2.6

316,363

-

0.6

*売上高、営業利益は今期予想、単位は百万円。ROE、ROAは前期実績、単位は%。時価総額、PER(予)・PBR(実)は6月12日終値ベース。単位は百万円、倍。住友化学、東ソー、信越化学、カネカ、日本ゼオン、三菱マテリアルは今期予想未定。三井化学は今期よりIFRS任意適用。

 

新型コロナウイルスの影響により今期予想未定企業が多い中、トクヤマは投資家への情報開示義務を重視し開示を行っている。

 

【1-6 特長と強み】

①多様な特有技術から生み出される先端製品
有機・無機合成、高純度化、粉体制御、結晶・析出、焼結、電解、精製、焼成、資源再処理など長年に亘って蓄積・磨き上げてきた特有技術をベースにしつつ、更に新たな技術を融合して、無機薬品、セメント、シリカ、シリコン、窒化アルミニウム、半導体用高純度薬品、レンズ材料、イオン交換膜、各種フィルムや樹脂、センサ材料、歯科材料等の先端製品を生み出してきた。

 

例えば、放熱材で幅広く用いられている窒化アルミニウム粉末を創り出す還元窒化技術は同社のオリジナル。
不純物の極めて少ない良質な同社の窒化アルミニウム粉末はその競争力の高さから70%以上の世界シェアを有している。
また、現在では世界最高レベルの高純度を実現し、世界のトップスリーに入る多結晶シリコンも、自社の電解プラントから生成される水素と塩素の有効活用を目的に進出したものであり、極めて幅広く、奥の深い技術基盤がこのような飛躍を可能にしたと言えるだろう。

 

②高度に統合・集積された徳山製造所の競争力
特有技術により生み出される製品の低コストでの製造、世界中への供給のために不可欠なのが徳山製造所。
国内有数の港湾インフラと自家発電所を有する徳山製造所は、以下のような特長を持っている。

 

国内第7位の発電量の自家発電所により、競争力あるコストで電力を使用することができる。

無機・有機化学、セメント、電子材料などの工場が複合的に集積し、原料・製品・副産物・廃棄物を相互に有効活用することが可能である。

セメントキルン(セメントの焼成に使う窯)への自社廃棄物受入れによりゼロエミッションを実現している。また、周南コンビナートの外部企業の廃棄物も受け入れており、環境面での社会貢献も果たしている。

 

(同社資料より)

 

また、大型輸送船も着岸可能な水深10メートル以上の天然の良港も有しているため、原材料および製品の大量搬入・搬出も可能。
徳山製造所における高度に統合・集積された高効率の生産・供給体制は同社競争優位性の源泉となっている。

 

トクヤマの競争力の源泉である徳山製造所だが、ESG投資が世界的にメインストリーム化する中、化石燃料を使用した発電により発生するCO2は自社の将来を大きく左右する問題であると認識している。
そこで、「基準年を2013年度とし、2030年度までに特段の対策のない自然体ケースと比較してCO2排出量を15%削減する」との目標達成に向け、2019年11月にCO2プロジェクトグループを立ち上げ、様々な施策に取り組んでいる。

 

(主な施策)

(1)新規技術開発:CO2の回収・利活用

大学など社外の研究機関の連携なども行いながら、徳山製造所から発生するCO2の回収技術、あるいは回収したCO2を活用する技術などを開発する。

(2)再生可能エネルギー由来電力(再エネ電力)による水素製造

大規模な変動再エネ電力にも対応可能な水素製造設備の開発として、商用サイズ電解槽及びプロセスの開発と実証を行う。

(3)再生可能エネルギー導入

*バイオマス混焼

自社保有の火力発電設備においてバイオマス燃料の使用を増やし、化石燃料使用量を削減する検討を開始する。

*エネルギーミックス

将来の環境行政やエネルギー情勢などについてシナリオを策定し、2030年度における製造所のエネルギーミックス(電源構成)を検討する。

(4)徳山製造所のエネルギー効率の最適化

徳山製造所内の各プラントの省エネルギーに加えて、プラント間でのエネルギー融通や、社外への熱、エネルギー供給などを行い、徳山製造所全体でのエネルギー効率を最適化する。

 

(2)の再生可能エネルギー由来電力(再エネ電力)による水素製造については、今後の事業化を目指すとともに、構築したモデルを地域内外へ地球温暖化防止対策の一つの手法として発信していく。
(3)のエネルギーミックスに関しては、国立大学法人 山口大学との包括連携協力の一環として、2019年11月に共同で調査・検討を開始した。

 

また、2020年6月には、トヨタ自動車株式会社と共同で、トヨタ自動車の燃料電池自動車「MIRAI」に搭載されている燃料電池システムを活用した定置式の燃料電池発電機を徳山製造所内に設置して、副生水素を利用した実証運転を開始した。

 

今回の実証運転の特徴は、トクヤマが食塩電解法で苛性ソーダを製造する時に副次的に発生する副生水素を燃料電池発電機の燃料として活用すること。
トクヤマは、副生水素を安定供給する役割を担い、燃料電池発電機で発電した電力は、定格出力50kWで徳山製造所内へ供給する。
この実証研究を機に、トクヤマは、国内有数の高純度な副生水素供給能力を持つ総合化学メーカーとして、副生水素を活用した地域貢献モデル事業の検討を進める。

 

2.2020年3月期決算概要

(1)連結業績概要

 

19/3期

構成比

20/3期

構成比

前期比

期初予想比

修正予想比

売上高

324,661

100.0%

316,096

100.0%

-2.6%

-7.8%

-1.8%

売上総利益

97,996

30.2%

98,650

31.2%

+0.7%

-

-

販管費

62,733

19.3%

64,359

20.4%

+2.6%

-

-

営業利益

35,262

10.9%

34,281

10.8%

-2.8%

-12.1%

-2.1%

経常利益

33,400

10.3%

32,837

10.4%

-1.7%

-15.8%

-3.4%

当期純利益

34,279

10.6%

19,937

6.3%

-41.8%

-34.6%

-23.3%

*単位:百万円。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下同様。

 

主力製品中心に販売が低調で減収減益
売上高は前期比2.6%減の3,160億円。化成品、特殊品、セメントとも減収。
営業利益は同2.8%減の342億円。国産ナフサなど原燃料コスト減少がプラス寄与したが、半導体関連製品の販売数量が減少。苛性ソーダ輸出価格や石化製品価格が軟調だったほか、減価償却費、研究開発費、広告宣伝費が増加した。
第4四半期(1‐3月)の新型コロナウイルス感染症の影響は軽微だったが、主力製品の販売数量が計画未達で売上、利益とも予想を下回った。

 

 

(2)セグメント別動向

売上高

19/3期

構成比

20/3期

構成比

前期比

期初予想比

修正予想比

化成品

983

30.3%

937

29.7%

-4.7%

-9.0%

-2.4%

特殊品

596

18.4%

544

17.2%

-8.7%

-18.8%

-4.6%

セメント

923

28.4%

872

27.6%

-5.5%

-7.2%

-3.1%

ライフアメニティー

552

17.0%

563

17.8%

+2.0%

-2.9%

-2.9%

その他

613

18.9%

652

20.6%

+6.4%

+1.9%

+3.5%

調整額

-424

-

-409

-

-

-

-

合計

3,246

100.0%

3,160

100.0%

-2.6%

-7.8%

-1.8%

営業利益

 

 

 

 

 

 

 

化成品

168

17.1%

153

16.3%

-8.9%

-17.3%

-7.3%

特殊品

99

16.6%

70

12.9%

-29.3%

-36.4%

-6.7%

セメント

32

3.5%

38

4.4%

+18.8%

+8.6%

-5.0%

ライフアメニティー

32

5.9%

28

5.0%

-12.5%

-30.0%

-30.0%

その他

43

6.9%

69

10.6%

+60.5%

+53.3%

+38.0%

調整額

-23

-

-18

-

-

-

-

合計

352

10.8%

342

10.8%

-2.8%

-12.1%

-2.1%

*単位:億円。利益の構成比は売上高利益率。20年3月期第1四半期より、一部子会社の経営管理区分の変更を行っており、前期は、この変更を反映している。

 

*化成品
減収減益。

苛性ソーダ

販売数量は堅調に推移したが、原料価格の上昇及び海外市況の下落により減益。

塩化ビニル樹脂

原料価格と販売価格のスプレッドを維持できたことにより増益。

酸化プロピレン

主要用途のウレタン向けの販売数量が減少し減益。

塩化カルシウム

少雪の影響による販売数量の減少及び物流費の増加で減益。

 

*特殊品
減収減益。

多結晶シリコン・放熱材

顧客の在庫調整により販売数量が減少し減益。

電子工業用高純度薬品

海外向けを中心として販売数量が回復し、前年同期並み。

 

*セメント
減収増益

セメント

石炭価格の下落により製造コストが低減したが、販売数量が軟調に推移し、修繕費等の固定費の増加もあり減益。

資源環境事業

廃棄物受入数量増により増益。

 

*ライフアメニティー
増収減益

プラスチックレンズ関連材料

メガネレンズ用フォトクロミック材料の販売数量が増加し増益。

歯科器材

海外を中心に販売数量は増加したが、新製品の上市に伴う広告宣伝費等の増加により減益。

医療診断システム

臨床検査機器システム案件獲得が堅調に推移し増益。

イオン交換膜

大型案件の減少により減益。

 

(3)財務状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS

 

19年3月末

20年3月末

 

19年3月末

20年3月末

流動資産

202,936

203,849

流動負債

93,248

95,241

 現預金

68,613

81,524

 仕入債務

47,268

42,795

 売上債権

80,358

72,929

固定負債

122,856

107,775

 たな卸資産

43,474

44,645

負債合計

216,104

203,017

固定資産

176,693

179,597

純資産

163,525

180,429

 有形固定資産

116,104

123,192

 株主資本

150,095

165,874

 無形固定資産

1,973

1,657

 利益剰余金

121,901

137,665

 投資その他の資産

58,614

54,747

負債純資産合計

379,630

383,447

資産合計

379,630

383,447

有利子負債残高

128,964

116,341

*単位:百万円。有利子負債にはリース債務を含む。

 

現預金、有形固定資産の増加などで、資産合計は同38億円増加の3,834億円となった。
有利子負債の減少などで、負債合計は同130億円減少の2,030億円。
利益剰余金の増加で、純資産は同169億円増加の1,804億円。
この結果、自己資本比率は前期末から3.8ポイント上昇し44.0%となった。
DEレシオは前期末の0.84から0.69へ低下。
中期経営計画最終年度の21年3月末は「有利子負債1,200億円、自己資本1,400億円、現預金800億円、DEレシオ0.9」を目標としているが、今期末でほぼ達成した。

 

◎キャッシュ・フロー

 

19/3期

20/3期

増減

営業CF

38,531

52,364

+13,833

投資CF

-16,174

-20,548

-4,374

フリーCF

22,357

31,816

+9,459

財務CF

-21,104

-18,348

+2,756

現金同等物残高

67,991

80,918

+12,927

*単位:百万円。

 

売上債権の減少などで営業CFのプラス幅は拡大。
有形固定資産の取得による支出増で投資CFのマイナス幅は拡大したがフリーCFはプラス幅が拡大。
長期借入金残高が減少し財務CFのマイナス幅は縮小。
キャッシュポジションは上昇した。

 

3.2021年3月期業績見通し

(1)通期業績予想

 

20/3期

構成比

21/3期(予)

構成比

前期比

売上高

316,096

100.0%

310,000

100.0%

-1.9%

営業利益

34,281

10.8%

28,000

9.0%

-18.3%

経常利益

32,837

10.4%

28,000

9.0%

-14.7%

当期純利益

19,937

6.3%

22,000

7.1%

+10.3%

*単位: 百万円。予想は会社側発表。

 

減収減益
売上高は前期比1.9%減の3,100億円の予想。特殊品は増収も、化成品、セメントが減収。
営業利益は同18.3%減の280億円を予想。原料コスト減、放熱材等の数量増がプラス寄与するが、修繕費、減価償却費、研究開発、人件費など固定費を積み増す。
為替の前提は110円/USD(前期実績は109円)、国産ナフサは43,000円/kl(前期実績は42,700円)。
新型コロナウイルスの影響については、第2四半期(7‐9月)より徐々に薄れ、第3四半期(10-12月)以降の事業環境は回復に向かうものと想定している。各セグメントにおける影響は後述。
配当については、現時点では未定。今後の業績動向を踏まえ、決定次第、速やかに開示する。

 

(2)投資計画

 

(今期の主な投資案件)
*半導体関連製品増産・品質向上
*ヘルスケア関連製品増産
*新規放熱材開発
*港湾インフラ整備

 

ここ数年やや抑制気味にしてきた修繕費を増額するほか、将来の需要回復を見据え、基本的な投資計画の変更は行わないものの、製品の需要動向を見ながら投資スケジュールなどは臨機応変に対応する。

 

(3)セグメント別動向

売上高

20/3期

構成比

21/3期(予)

構成比

前期比

化成品

937

29.7%

870

28.1%

-7%

特殊品

544

17.2%

610

19.7%

+12%

セメント

872

27.6%

860

27.7%

-2%

ライフアメニティー

563

17.8%

580

18.7%

+3%

その他

652

20.6%

480

15.5%

-26%

調整額

-409

-

-300

-

-

合計

3,160

100.0%

3,100

100.0%

-1.9%

営業利益

 

 

 

 

 

化成品

153

16.3%

130

14.9%

-15%

特殊品

70

12.9%

75

12.3%

+6%

セメント

38

4.4%

35

4.1%

-9%

ライフアメニティー

28

5.0%

30

5.2%

+4%

その他

69

10.6%

40

8.3%

-42%

調整額

-18

-

-30

-

-

合計

342

10.8%

280

9.0%

-18.3%

*単位:億円。

 

(各セグメントの見通し)

分野

取り組み

新型コロナウイルスの影響

化成品

主要製品における出荷数量の確保及び原単位や固定費削減などのコスト競争力強化を推進し、収益確保に努める。

インドのロックダウンによる塩ビの輸入停止や、自動車生産減により石化製品の販売数量減など、建設・製紙・自動車等で幅広い影響を想定。

特殊品

末端デバイスメーカーでの部材の安定調達の観点による在庫の積み増しの動きにより堅調な需要を維持している。半導体向け多結晶シリコンは、品質を更に追求し、他社と差別化した高付加価値品の拡販により収益拡大を目指す。

電子工業用高純度薬品は、2020年に新たに増設したプラントの本格稼働により需要拡大に対応した供給体制の確立に注力する。

放熱材は、供給体制の強化を進めるとともに、製品のラインナップを増やすべく開発に注力する。

中国の景気減退等による停滞から5G需要を中心に回復が見込んでいたが、新型コロナウイルス感染症拡大により5G導入の遅れが懸念される。

ユーザーの在庫積み増しによる需要増はあるものの、先行きに関しては反動による需要減など注意が必要。

セメント

工事再開後の受注確保及び製造コストの徹底した削減等により収益確保に努める

建設工事中断、作業所閉所などによる国内外のセメント販売数量減。

ライフアメニティー

ヘルスケア関連製品の顧客ニーズや市場の変化に対応した新製品開発と販売活動に注力し、収益の拡大を目指す。

欧米のロックダウンにより、歯科器材の販売数量など欧米向け輸出数量減。

 

 

4.中期経営計画の進捗

(1)目標数値の進捗

5年間の中期経営計画最終年となる2021年3月期の目標数値に対する進捗は以下の通り。
売上高は前述のように、半導体需要が想定よりも低調となったこと、新型コロナウイルスの影響により未達。
営業利益未達は、減収もあるが今期各種投資を積み増すため。
一方、財務体質の改善を目指した「有利子負債1,200億円、自己資本1,400億円、現預金800億円、DEレシオ0.9」という目標に対しては前期末に一期前倒しで達成することができた。

 

 

16/3期

20/3期

21/3期

見込み

21/3期

目標

評価

売上高(億円)

 

3,160

3,100

3,350

固定費増加により目標未達

営業利益(億円)

230

342

280

360

ROA(%)

5.7%

9.0%

-

10%

総資産回転率の改善が進まず目標未達

 売上高営業利益率(%)

7.5%

10.8%

9.0%

10%

 総資産回転率(回転)

0.77

0.83

-

1

財務指標

 

 

 

 

 

 CCC(日)

69

64

-

55

目標未達

 D/Eレシオ(倍)

4.7

0.7

-

1

目標達成

為替

120

109

110

110

 

国際ナフサ価格

42,800

42,700

43,000

58,000

 

 

5年間の営業利益増加額50億円の内訳概略は以下の通り。

 

◎セグメント別

プラス

増減額

概要

 特殊品

+86

TMSB(マレーシア)譲渡を完了したものの、成長投資による償却費増やここ数年の半導体市場減速の影響により若干足踏みとなった。

 化成品

+41

苛性ソーダの値上げ、石化製品のスプレッド改善、ソーダ灰の値上げ・販売数量増などで大幅に改善した。

マイナス

 

 

 ライフアメニティー

-32

ヘルスケア関連事業の伸長に努めたが、グループ会社減少や事業構造改革の費用増などにより減益

 セメント

-23

収益改善に努めたものの原料費上昇、設備老朽化による設備故障、補修費増加で減益

*単位:億円

 

◎要因別

プラス

増減額

概要

 TMSB改善

+102

TMSB(マレーシア)譲渡

 数量差

+85

化成品、セメント、ライフアメニティーがプラス。特殊品はマイナス。新型コロナも影響。

 単位・操業度変動他

+28

徳山製造所のコストダウンなど

 売価格差

+10

全セグメントでプラス

マイナス

 

 

 固定費など

-157

減価償却費、研究開発費、人件費が増加

 原燃料単価差

-19

原燃料コストが増加

*単位:億円

 

 

(2)重点課題の成果

各課題について着実な進捗を達成することができた。

 

 

中期経営計画の進捗

2019年度の成果

組織風土の変革

管理職、シニア社員、一般社員の全ての人事制度の改定を完了。これからは、働き方や価値観が多様化する中での社員の更なるやる気向上、能力開発を実現する運用をめざす。

*総合人事制度の改定

*社外人材の積極登用

*働き方改革推進

事業戦略の再構築

ICT及びヘルスケア関連事業の拡大の布石が打たれ、次期中計で成長を更に加速。

この中計で着手したCO2排出量削減を中心とする環境問題解決の取り組みを新規事業へと繋げる。

*ヘルスケア関連事業展開

*IoT、AI活用による業務効率化、プラント運営効率化

*環境関連事業(水素活用、水処理、CO2関連)の強化

グループ経営の強化

懸案の課題であった樹脂サッシ事業再構築の他、機能分担グループ会社の再編などを実行した。

 

*エクセルシャノンの資本提携

*物流関連グループ会社間の連携強化による物流の効率化、費用削減

財務体質改善

高い収益力を背景に、計画を上回る財務再建の進捗を実現

*A格復帰

 

(3)投資計画

4年間の主要投資は、成長事業においては、フィルム最新鋭設備導入、窒化アルミ粉末増強、新規放熱材開発、TMAH増強、半導体関連材料の品質改善、台湾第2工場建設など。
伝統産業においては周南バルク置場の拡張、港湾インフラ整備など。
今期は、成長、インフラ、維持更新などに注力する。
2016~2020年度5年間累計設備投資は960億円を計画していたが、今期計画通りであれば1,083億円と計画を超過する。

 

 

(4)伝統事業への取り組み

収益性の改善を第一義としている伝統産業においては、20/3期のコスト削減額は、19/3期を上回り、中期経営計画で設定する最終年度21/3期の目標である40億円を大幅に上回った。
21/3期も引き続きコスト削減に努める。

 

 

(5)配当

18/3期の復配以降、配当額、配当性向とも引き上げてきた。
2021年3月期については、中間配当は35円/株を予定しているが、期末配当は新型コロナウイルス感染症拡大の不透明感が払拭できないため現時点では未定としている。

 

 

5.横田社長に聞く

横田 浩社長に、前期決算の総括、今期業績予想のポイント、中期経営計画の進捗、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。

 

Q:「最初に前期決算の振り返りを伺いたいと思います。事業環境についての認識、良くできた部分、足りなかった点などをお話しください」
A:「全体として減収減益ではあったが苦しい中でも、様々な取り組みの結果、善戦したと考えている」

 

全体的に市場の減速感が強まり、環境は苦しい中でも、化成品やセメントといったコモディティにおいて貪欲に1円でも多く稼ごうという姿勢で踏ん張れた、頑張った決算であった。
特にセメントは市況が厳しい中でも値段をキープしながらシェアを伸ばすことができた点は前線の営業力を評価している。
一方、成長事業と位置付けている特殊品、半導体や電子部品関係は米中貿易摩擦の影響などで前半の足踏みが大きく、苦戦を余儀なくされ想定通りの数字には及ばなかったが、後半にロジック半導体が巻き返して市場全般が落ち込む中でも、なんとか最低限の数字を残すことができた。
全体として減収減益ではあったが苦しい中でも、様々な取り組みもあり、善戦したと考えている。

 

例えば、セメントに関して言うと、カギとなるゼネコンに対する営業活動をここ2年程度積極化させてきた。ただ単にセメントを買ってもらうのではなく、様々な材料をゼネコンと一緒に開発に取り組むなどした結果、そうした活動をご評価いただき、多くの物件をご紹介下さるなど、組織的な取り組みが成果に結びついた。
また化成品においては、この4年ほどかけて国内に偏重していた販売先を、アジア中心に海外マーケットへ広げてきた。そのため、国内需要が足踏みする中でも、海外需要を取り込んでプラントの稼働率を維持できたことに加え、需要家に直接営業をしてきたため末端の需要を把握し、タイムリーに成約・出荷することができた。
こうした地味な積み重ねが今回の苦しい局面でも下支えになった。

 

 

Q「今期の見通しですが、新型コロナウイルスの影響で多くの企業が今期予想を未定とする中、セグメントも含め予想を開示していますが、どういう考え方で業績予想を開示されたのでしょうか」
A「投資家にある程度合理的な考えは示したいと考えた。お客様の状況・情報を収集しながら我々として考え得る一定の妥当性がある中で数字を積み上げていった」

 

未定という選択もあったが、やはり上場企業として未定は芳しくない、投資家にある程度合理的な考えは示したいと考えた。
非常に先の読みづらい環境であるため仮定を置いて開示をするしかないのだが、その中でもお客様の状況・情報を収集しながら我々として考え得る一定の妥当性がある中で数字を積み上げていった。
例えば原燃料価格は石油も石炭も非常に読みにくいが、実勢よりも高めの数字を置いており、堅めの数字としている。
また、特殊品のうち電子部品に関しても保守的な前提である一方、5G、データセンター、パソコンなどの需要は底堅い。
全体としては大きく下振れる可能性は少ないのではないかと見ている。

 

 

Q:「続いて中期経営計画の進捗について伺います。4つの重点施策のうち組織風土の変革についての進捗、自己評価をお聞かせください」
A:「4つの課題のうち組織風土の改革が最大のポイントであるという点に変わりはない。成長事業においては、まだ部分的ではあるがスピード感が出てきた。伝統産業は、意識の変化が成長事業ほどは進んでいないが、仕事のやり方そのものを変える取り組みの中で、ものの考え方を変えて、人を育てて行かなければならないと考えている。また、社外人材の登用は大きな効果を上げており、外国人や女性も含め、より広い間口で適材適所を中長期のスパンで進めて、組織風土の変革を遂行していく」

 

4つの課題のうち組織風土の改革が最大のポイントであるという点に変わりはない。
これまでのトクヤマの、そしてこれからのトクヤマにおける最大の資産は「人」であり、「組織風土の変革」はまさに、社長としての最大のミッションである人作りだ。

 

いろいろな取り組みをしてきた結果、成長事業においては、まだ部分的ではあるがスピード感が出てきた。
新しい事業に向けてのパイプライン構築、研究開発テーマ、あるいは事業をいかにスピードアップして作り上げるかといった場面でこれまでにはないスピーディーな動きが見られており、成長事業の社員はだいぶ意識が変わりつつあると見ている。
成長事業においては、様々な形で優秀な人材を採用することが重要なため積極的に動いている。
直近のキャリア採用では技術系社員が事務系を上回り、新しい事業に必要なテクノロジーを持った人、人員構成ギャップを埋めることのできる優秀な人材の確保を進めている。

 

一方、伝統産業は、100年を超す長年の伝統があり、マーケットも比較的安定しているため、意識の変化が成長事業ほどは進んでいない。
ここをどう進めるかというと、仕事のやり方そのものを変える取り組みの中で、ものの考え方を変えて、人を育てて行かなければならないと考えている。

 

伝統産業の現場である当社工場は、基本的に24時間365日、3交替で稼働させているが、中長期で安定的に質の高い人材を確保することが難しいなか、今後はICTやAIを活用していかに効率的にオペレーションできるかが競争力強化のカギとなる。
ただ、当社工場はコストを抑えながら少ない人材でオペレーションするために、協力会社への委託も含めて分業制を採用してきた。分業制は効率化という点ではメリットもあったが、ものづくりの隅から隅まで、全体として把握している人材がほとんどいなくなってしまったのが問題となっている。

 

安定的に高品質の製品を創り出す競争力の高いIoTやAIを用いた工場オペレーションシステムを構築するには、全体のプロセスを全て把握し、ボトルネックや時代にそぐわない箇所等をあぶりだし、再構築しなければならないので、まず足元をしっかり把握しながら、そこに新しい知恵をどう入れていくかというたゆまざる勉強を通じて、人を育てていこうと考えている。
積極的に勉強の場を提供しているが、やはりスピード感という点では物足りないというのが現状だ。
ただ、当社のセメントを始めとしたコモディティは簡単に代替品が見つかるものではなく、グローバルに経済が拡大する中で需要は比例して増加するものであるため、競争力があれば今後も確実なキャッシュカウとして位置けることができるため、しっかりと取り組んでいく。

 

両事業とも、今後は即戦力として必要な部分と中長期で人材の厚みを構成する部分の双方が必要なので、定期採用にはこだわらず、バランスを見ながら採用を進める。
また、社外人材の登用は組織風土改革にも大きな効果を上げており、外国人や女性も含め、より広い間口で適材適所を中長期のスパンで進めて、「組織風土の変革」を遂行していく。

 

 

Q:「事業戦略の再構築においては以前よりオープンイノベーションに注力していますが、具体的な動きなどをお話しください」
A「大学、研究機関との連携を深めてきたことで、新たな開発のパイプラインやテーマも随分増えてきた。オープンイノベーションによるアカデミアとの連携の中でいろいろな知恵を授かり、その知恵を工夫して使いこなすことで、大いなる可能性が生まれてくるということを強く感じている」

 

大学、研究機関との連携を深めてきたことで、新たな開発のパイプラインやテーマも随分増えてきた。
大きな金額ではないが、基礎研究をしっかりと行っていただくため開発費のサポートもしながら新しい技術の育成に取り組んでいる。
加えて他大学の先生をご紹介いただくケースも多く、ネットワークの厚みも増しており、当社のキャリア採用につながるなど、いろいろな形で好循環も生まれている。
今後は国内だけではなく海外の大学・研究機関にもリレーションを広げ、先端技術に触れながら仕事の質とスピードを上げて行こうと考えている。

 

オープンイノベーションの成果として具体的には、ファインセラミックスの分野で、決して目新しくはないもののこれまで産業的に実用化出来ず眠っていた良い技術が、共同開発に取り組むことで実用化に進んだケースもある。
例えば、セラミックスは焼成には多大なエネルギーが必要だが、追加エネルギー不要で焼成できるテクノロジーを開発した。
これは省エネルギーでかつ競争力もあり品質も高いため、これを強みに放熱材ビジネスを拡大してく考えだ。

 

これ以外にも、ヘルスケア分野で大学と共同で化学物質の構成における新しいプロセスを開発した。
このプロセスを用いると薬の原薬などを従来よりも安価にかつ高品質で創り出すことができるため、当社において今期新たなサプリメントの上市に繋がったほか、このプロセスを他社に提供することで創薬分野に参入することも可能となってきた。

 

オープンイノベーションによるアカデミアとの連携の中でいろいろな知恵を授かり、その知恵を工夫して使いこなすことで、大いなる可能性が生まれてくるということを強く感じている。

 

Q:「財務体質の改善はいかがでしょうか?」
A:「2021年3月末の目標を前期末に一期前倒しでほぼ達成することができた。そこで2010年代以降にできてなかった修繕費を始めとした積み残しの投資を前期から重点的に行っている」

 

ROA、CCCは未達となる見込みだが、財務体質の改善についての「有利子負債1,200億円、自己資本1,400億円、現預金800億円、DEレシオ0.9」という目標に対しては前期末に一期前倒しでほぼ達成することができた。
そこで財務の体質も随分改善してきたため2010年代以降にできていなかった修繕費を始めとした積み残しの投資を前期から重点的に行っている。
株主資本比率で50パーセント程度ぐらいを目途としながら、必要に応じてもう少しレバレッジを上げることも考えながら、取り巻く環境やキャッシュフローの状況を見ながら積極的な投資を行っていく。

 

 

Q:「今期で再生の礎は終了ですが、2025年度の目指す姿に向けた方向性や施策は基本的には変わらないということでしょうか?」
A:「大きな流れは変わらない。ただ、国際的な持続可能な社会の構築という流れの中では、より大きな視点から、もう1回どうあるべきかを見直すことが必要であり、現在取り組み始めているところだ」

 

大きな流れは変わらない。ただ、今回の中期経営計画は10年間、2025年を着地点に前半5年と後半5年に分け、今期で前半戦が終わろうとしているが、次の中計が同じく5年間では不十分だと感じている。
国際的な持続可能な社会の構築という流れの中では、2030年、2050年といった視点・ストーリーの中で我々のビジネスを位置付けていかないと生き残ることができないという問題意識を持ち、より大きな視点から、もう1回どうあるべきかを見直すことが必要であり、現在取り組み始めているところだ。

 

 

Q:「持続可能な社会の構築というキーワードが出ましたので、ESGに関する取り組みや考えをお聞かせください」
A:「地球環境というポイントが、さらに大きなウェイトを占めていく中、競争力の源泉であった自前の石炭火力発電による電力の使用を大きく再考し、中長期の視点でCO2排出量やエネルギー削減目標、代替エネルギーへの転換などの方向性を具体的に目標として落とし込んでいかなければならない。同時に、事業機会創出への取り組みも進める。環境ビジネスを新たに切り拓くことも合わせ、ビジネスポートフォリオの変革も次の中計の大きなポイントとなる」

 

当社ではSDGsのうち9つのテーマをマテリアリティとしているが、地球環境というポイントが、現在の中計策定時よりもさらに大きなウェイトを占めている。
我々は自前の石炭火力発電による電力の使用が競争力の源泉であったので、ここを大きく再考し、中長期の視点でCO2排出量やエネルギー削減目標、代替エネルギーへの転換などの方向性を具体的に目標として落とし込んでいかなければならない。

 

こうしたリスクの開示・対応と同時に、事業機会創出への取り組みも進める。
我々の技術を活かした水素ビジネスの構築や、世界最先端を行く電気分解テクノロジーを磨き上げてこの技術自体をビジネスにするなど、環境ビジネスを新たに切り拓くことも合わせ、ビジネスポートフォリオの変革も次の中計の大きなポイントとなる。
加えて、国際化も重要な取り組みだ。
現在の海外売上比率は約2割に過ぎず、今後の成長を目指す上では海外市場の開拓は不可欠であるだけでなく、今後新しいプラントを建設することを考えれば、再生エネルギーが安価かつ安定的に調達できる場所を選定せねばならず、必然的に海外ということとなるだろう。
調達・生産・販売・人材確保、全ての面で国際化が必要だ。

 

またガバナンスについては、女性社外取締役の選任や、少し先にはなろうが国際化に伴う外国人取締役など多様性も実現していく必要があると考えている。

 

 

Q:「新型コロナウイルスの及ぼす様々な影響について、お考えになる点はありますか?」
A:「テレワークとオフライン両方を組み合わせると相当効率を上げることができると感じた。働き方の多様性を通じた働きやすい環境作りという観点でも今回の経験は大きく役立つだろう。
一方、新型コロナウイルスによって世界における分断と協調が大きく加速する中、真の国際化を進めるにあたっては欧米の物差しのみではなく、アジアの文化や物差しを受容することで真に向き合うことが重要であると強く感じている」

 

自分でもテレワークをやってみて、一人で考えたり、調べもの物をしたりするにはテレワーク、それをベースにお客様や外部の方たちと触れ合ってヒントやビジネスの種を見つけるにはオフラインといったふうに、仕事にメリハリをつけ、両方を組み合わせると相当効率を上げることができると感じた。
働き方の多様性を通じた働きやすい環境作りという観点でも今回の経験は大きく役立つだろう。

 

新型コロナウイルスの影響としてより大きな問題として考えているのは、世界における分断と協調が、新型コロナウイルスによってその流れが大きく加速するのではないかという点だ。
これは当社の国際化において、どの地域でどのように事業を展開するかという点で極めて重要な問題であると思う。

 

これまで日本は欧米先進国を向いてビジネスをしてきた。もちろん近年は商売としてアジアも向いてきたが、文化としてアジアを受け入れて本当に向き合ってきたかというと疑問だ。
その意味では、今我々は基本的に欧米の物差しによってすべてのものごとを考えているが、本当の国際化を進めようとすれば、マーケットの将来、それから人口の多さなどを考えても、アジアの文化や物差しを受容することで真に向き合うことが重要であり、欧米の物差しのみでは本当の意味での国際化は実現できないだろう。

 

アメリカと中国を中心としたパワーバランスも新型コロナの影響で大きくうねりが変わりつつある中、日本は「人」しか資産のない国なので、「人」しか資産のない国としてふさわしい振る舞い方をよく研究しながら、当社としても国際化を考えて行かなければならないと強く感じている。

 

Q:「ありがとうございました。では、最後に投資家・株主を始めとしたステークホルダーへのメッセージをお願いします」
A:「世の中に求められる存在になるために株主や投資家の皆様とともに歩んでいきたいというのが私の強い想いだ。この想いにご賛同下さり株主となって頂いた皆様には、我々も適切なリターンをお返ししたいと考えている。中長期の視点で是非弊社を応援していただきたい」

 

トクヤマという会社は長期の視点に立って会社が発展することを重視してきた会社であり、「モノづくり」の企業として技術の育成を柱に成長してきた企業だ。
そのため、可能な限りの収益を上げつつ、適切に投資を行い、社員にも適切に配分し、株主の皆様にも適切な配分を行うのが基本的な考え方である。

 

非常に不透明感の強い環境下、我々が勝ち残るためには世の中の期待に沿ったビジネスを適切に計画して投資を実行し、確実に成果を上げることができるかということが問われているが、世の中に求められる存在になるために株主や投資家の皆様とともに歩んでいきたいというのが私の強い想いだ。
この想いにご賛同下さり株主となって頂いた皆様には、我々も適切なリターンをお返ししたいと考えている。
中長期の視点で是非弊社を応援していただきたい。

 

6.今後の注目点

残念ながら前期決算は予想に対して未達で、今期最終年となる中期経営計画についても売上・利益は未達の見込みであるが、横田社長がインタビュー内でも触れているように、コモディティ中心に以前からの各種取り組みが売上を下支えしたということであり、今期以降も基盤強化に寄与すると思われる。
一方財務体質の改善は一期前倒しで達成し、投資余力も生まれてきた。
石化燃料に厳しい目が向けられている中、次の中計において環境関連でどこに事業機会を見出し、どのような投資を実行し、どんな姿を目指していくのかを注目したい。

 

<参考1:中期経営計画「再生の礎」>

15年3月期、16年3月期に多額の減損損失を計上し無配に転じた同社は、新たな利益成長の原動力が必要であることから、2016年5月、「あらたなる創業」に向けたビジョンの下、5年間の中期経営計画「再生の礎」を策定・発表した。
組織風土の変革、事業戦略の再構築などの重要課題に取り組んでいる。

 

(1)中期経営計画「再生の礎」概要

①現状認識

無機化学・有機化学を事業基盤とした当社は、1970年代のオイルショックを経て、スペシャリティケミカル分野への進出や海外展開を推し進め、事業を拡大してきた。

2000年代後半に特殊品事業の収益性が上昇する一方で、化成品やセメントを中心とする汎用品事業は、国内の市場縮小の影響を受け、収益性が低下してきた。

高効率な製造所、国内屈指の自家発電能力などの創業来の強みを生かした化成品、セメント等を基盤とし、スペシャリティケミカル分野へ進出を図り、高純度化、粉体制御、有機・無機合成、結晶・析出、焼結など、新たな強みを培ってきた。

一方、スペシャリティケミカル分野で蓄積された技術力を、半導体向け多結晶シリコン以外の事業の拡大に十分に結びつけることができていなかった。新規事業創出の空白期間ができてしまった。

ネット有利子負債は2009年には実質無借金に近い水準まで低下したものの、その後マレーシアへの巨額投資に向けた資金調達により急速に増加し、財務体質も大幅に悪化。15年度のD/Eレシオは4.7倍まで上昇した。

 

こうした現状認識の下、伝統事業では国内汎用品市場の縮小、電子材料事業では成長率の鈍化が予想される中、以下の反省点を克服し、新たな利益成長の原動力を創り出すことが不可欠であると考えている。

 

「徳山製造所への過信と依存」
「内向き思考、待ちの姿勢の蔓延」
「コーポレートガバナンスの弱体化」
「全社及び各部門の戦略方向性が不明確」

 

②経営方針
以下の「トクヤマのビジョン」をベースに、事業体質の転換、仕事のやり方の抜本的な見直しを経営戦略の柱とし、2025年度までの達成を目指す。

 

(トクヤマのビジョン)

存在意義

化学を通じて暮らしに役立つ価値を創造する

目指す姿

量から質へ

 

(2025年度)

◇ 先端材料世界トップ

◇ 伝統事業日本トップ

価値観

◇ 顧客満足が利益の源泉

◇ 目線はより広くより高く

◇ 前任を超える人材たれ

◇ 誠実、根気、遊び心

 

(中長期の経営戦略)

経済環境の変動に強く、持続的に成長する 強靭な事業体質へ転換

従来の仕事のやり方の抜本見直しによる 全社的な低コスト体質への転換

 

(事業戦略の再構築)

 

目指す姿

達成手段

重視する指標

「成長事業」

・ 特殊品

・ ライフアメニティー

・ 新規事業

『特有技術で先端材料の世界トップになる』

・ 顧客ニーズを徹底理解し、特有技術でニーズに応える

◇ 徹底した顧客起点の事業活動

◇ オープンイノベーションの活用

◇ アライアンス活用

◇ 研究開発体制の見直し

EBITDA成長率

「伝統事業」

・ 化成品

・ セメント

『競争力で日本トップになる』

・ 汎用品市場で勝ち抜く

・ 貪欲に効率を追求する事業

◇ 維持更新投資の厳格化と、 競争力強化への戦略投資

◇ 定修期間の短縮化による修繕費の効率化

◇ 部門横断の改善活動強化

◇ アライアンス活用

ROA、CCC

 

(成長事業のドライバー)
成長事業では、先端分野において培ってきた特融技術を活用し、社会のニーズに応える製品開発を行う。
分野としては、ICT、ヘルスケアに期待している。
ICT分野においては、放熱材料の窒化アルミニウム生産ラインの増設、窒化ホウ素の事業化、多結晶シリコンの増産に取り組む。
ヘルスケア分野においては現在展開中の歯科器材、診断薬分野を核に、M&Aも視野に入れながらさらなる成長を目指している。

 

(部門横断的コスト削減活動)
原燃料、修繕費、物流費といった主要コスト項目削減のため、従来とは異なる部門横断的なアプローチや戦略的な設備投
資実施によるコスト削減を目指す。

 

(研究開発)
既存事業の拡大、及び特有技術を活かした新規領域への展開を実現するため、研究開発体制を顧客ニーズに立脚したものへと転換する。
研究開発人員もコーポレートではなく、事業部やグループ会社のウェイトを高め、より一層外を向いた研究開発を進める。

 

(設備投資計画と戦略的投資枠の設定)
2016~2020年度5年間累計設備投資は960億円を計画。うち26%を多結晶シリコン高品質化対応、放熱材料拡充など新増設へ振り向け成長への足場作りを進める。
同時に成長事業の拡大や、伝統事業の競争力強化を目的とした戦略的投資枠200億円を別途設ける。内訳は、伝統事業に65%、成長事業に35%。

 

③重点課題と施策
4つの重点課題と施策を掲げ取り組みを進めている。

重点課題

施策

1.組織風土の変革

人事評価制度、グループ会社との人材交流、社外人材の積極登用などの抜本的な制度変革。

2.事業戦略の再構築

徹底した顧客起点の事業活動と顧客ニーズに立脚した研究開発体制への転換による、特有技術を活用した新規領域への展開。

アライアンスやオープンイノベーションなど、他社との提携による人材や情報等、経営資源の補強。

3.グループ経営の強化

グループ会社各社の位置づけを今一度明確にし、グループの成長戦略やコスト削減への貢献を求め、グループ全体としての経営管理を一段と強化

4.財務体質改善

利益の積み上げによる自己資本の回復。

優先株発行による財務基盤の早期安定化と、将来の成長加速に向けたM&A等への機動的対応への準備。

 

 

<参考2:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査等委員会設置会社

取締役

8名、うち社外3名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2019年6月24日

 

<基本的な考え方>
当社は、2016年に制定した「トクヤマのビジョン」において、トクヤマグループの存在意義を「化学を通じて暮らしに役立つ価値を創造する」と定めました。トクヤマグループが培ってきた化学技術を用いて、新しい価値を創造し、提供し続けることを通じて、人々の幸せや社会の発展に貢献していきます。新しい価値を創造し、提供し続けることは、株主の皆様をはじめとして、顧客、取引先、従業員、地域社会等のステークホルダーの方々との信頼と協働によってこそ可能であり、それが持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に繋がると考えております。その実現のためには、コーポレートガバナンスは経営の重要な課題であり、常に充実を図ってゆく必要があると認識しています。以上が基本的な考え方です。
 基本方針としては、コーポレートガバナンスコードを踏まえて、株主の皆様の権利・平等性の尊重、各種ステークホルダーとの適切な協働、適切な情報開示と透明性の確立、取締役会の独立性整備と監督機能の強化、意思決定の迅速化と責任の明確化、および株主の皆様との建設的な対話などに努めます。

 

<実施しない主な原則とその理由>

原則

実施しない理由

補充原則4-1-3【最高経営責任者の後継者計画】

最高経営責任者(社長執行役員)の選任については、経営理念や経営戦略を踏まえ慎重に行っていますが、後継者を計画的に育成するサクセションプログラムについては、その導入が課題であると認識しており、引続き検討します。

手続きについては、公正性・透明性を保証するために、人材委員会で慎重に審議の上、取締役会へ答申しており、これを受けて取締役会で決議しています。

補充原則4-11-1【取締役会の多様性に関する考え方】

「原則3-1(iv) 経営陣幹部の選解任と取締役の指名における方針と手続」にある通り、取締役会の全体としてのバランス及び多様性に配慮していますが、ジェンダー及び国際性を含む領域での多様性の確保が課題であると認識しています。

この点については、引続き検討します。

 

<開示している主な原則>

原則

開示内容

原則1-4【いわゆる政策保有株式】

当社は、経営戦略の一環として、取引の維持強化、資金調達、原材料の安定調達等事業活動の必要性に応じて、政策的に上場企業の株式を保有することがあります。

この政策保有上場株式については、効率的な企業経営を目指す観点から、可能な限り縮減します。

また、毎年取締役会において、リスクを織り込んだ資本コストと便益との比較により経済合理性を検証し、将来の見通しを踏まえて保有の適否を確認します。

当社は、当社と投資先企業双方の企業価値への寄与を基準に議決権を行使します。

原則5-1【株主との建設的な対話に関する方針】

当社は、株主・投資家の皆様からの理解と信頼を得るため、会社の経営・財務情報のみならず社会に提供する製品・サービス、環境的・社会的側面などの非財務情報についても、適時・適切にかつわかりやすく開示するよう努めています。情報開示の基本姿勢、適時開示体制については、本報告書の「V-2.その他コーポレートガバナンス体制等に関する事項(適時開示体制の概要)」をご覧ください。

株主・投資家の皆様との建設的な対話を促進する統括的な役割は、広報・IRグループ所管部門長が担います。

対話の企画、実施などについては、広報・IRグループが主体となり、経営企画グループ、財務・経理グループ、CSR企画グループ、総務グループ、研究開発部門、事業部門など社内の各部署と密接に連携しています。

経営トップ自らが株主・投資家と対話を行うIR活動として、アナリスト・機関投資家向けの決算説明会を年4回開催している他、証券会社主催のカンファレンスやスモールミーティングへの出席などを随時実施しています。またIR活動を担当する広報・IRグループは、国内外の機関投資家との個別面談や個人投資家向け会社説明会などを行っています。その他IR活動の詳細については、本報告書の「III-2.IRに関する活動状況」をご覧ください。

株主・投資家の皆様との対話で得られたご意見等につきましては、経営トップと関係部署の責任者が出席するIR会議の中で確認・共有しているほか、IR報告書により社内の各部署へフィードバックし、経営戦略や事業戦略の策定や軌道修正に活かし、企業価値向上につなげています。

なお、インサイダー情報の管理については、社内規程を定め、秘密保持誓約等で情報管理を徹底しています。

 

 

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