ブリッジレポート
(1716) 第一カッター興業株式会社

プライム

ブリッジレポート:(1716)第一カッター興業 2020年6月期決算

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 高橋 正光 社長

第一カッター興業株式会社(1716)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

建設業

代表者

高橋 正光

所在地

神奈川県茅ケ崎市萩園833番地

決算月

6月

HP

http://www.daiichi-cutter.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(自己株式を控除)

時価総額

ROE(実)

売買単位

2,204円

5,691,566株

12,544百万円

13.5%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

27.00円

1.2%

203.98円

10.8倍

2,104.74円

1.0倍

*株価は09/11終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。

 

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主帰属利益

EPS

DPS

2017年6月(実)

12,840

1,412

1,473

900

174.01

15.00

2018年6月(実)

16,283

2,187

2,263

1,487

261.37

25.00

2019年6月(実)

14,871

1,760

1,843

1,251

219.80

20.00

2020年6月(実)

17,440

2,296

2,482

1,523

267.73

25.00

2021年6月(予)

16,860

1,888

1,983

1,160

203.98

27.00

* 予想は会社予想。単位は百万円、円。

 

 

第一カッター興業(株)の2020年6月期決算の概要と2021年6月期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2020年6月期決算概要
3.2021年6月期業績予想
4.中期経営計画(19/6期~21/6期)の進捗状況と今後の戦略
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 20/6期は前期比17.3%の増収、同30.5%の営業増益。輸送インフラの好調が続く中、(株)アシレの連結効果もあり、切断穿孔工事事業が同21.0%増と伸長。ヒト・モノへの投資やM&Aに伴う販管費の増加を吸収して営業利益も大きく伸びた。コロナ禍の影響も限定的なものにとどまり、売上・利益共に過去最高を更新。中期経営計画の数値目標(売上・利益・従業員数)を1年前倒しで達成した。配当は5円増配の25円(期初予想は22円)を予定している(配当性向9.3%)。

     

  • 21/6期予想は前期比3.3%の減収、同17.8%の営業減益。老朽化対策工事は比較的安定した受注が期待できるものの、民間・公共ともにコロナ禍で時間をかけて発注が弱含む展開を想定している。利益面では、ゼネコン各社が減益予想であることを踏まえ、値下げ圧力による受注環境(コンペ)の悪化を想定しており、研究開発投資や採用・育成等の人材投資を中心にした投資を織り込んだ。配当は2円増配の期末27円を予定している(予想配当性向13.2%)。

     

  • 21/6期は慎重な業績予想となったが、中長期での補修需要は膨大であり、同社の課題は、この需要を取り込むための受注キャパシティの拡大である。20/6期は売上・利益目標を1年前倒しで達成するだけでなく、人材採用も順調だったが、この流れを継続できるか。建設業界に即した働き方改革とワークライフバランスプロジェクトを進める人材戦略、魅力ある職場づくりにもつながる生産性向上や研究開発、及び事業領域拡大等、受注キャパシティの拡大に向けた取り組みとその成果に注目していきたい。

     

     

1.会社概要

ダイヤモンド工法とウォータージェット工法による専門技術を強みとする社会インフラの維持補修工事を展開しており、ビルメンテナンスやIT機器のリユース・リサイクルも手掛ける。ダイヤモンド工法は、工業用ダイヤモンドを使って道路や構造物の切断削孔を行う。従来のコンクリート破砕工法では、常に騒音や振動、粉塵等の公害を意識する必要があったが、ダイヤモンド工法は、安全に、スピーディーに、正確に、環境に影響を与える事なく工事を行う事ができる。一方、ウォータージェット工法は、超高圧で水を噴射してコンクリートの結合を破壊する。鉄筋を痛める事なく、ピンポイントでコンクリート構造物の修繕補修が可能。
グループは、ワイヤーソーやコアボーリング工事を手掛ける(株)ウォールカッティング工業、海洋土木(水中での切断穿孔工事)に強い(株)光明工事、沖縄県に拠点を置く(株)新伸興業、建築関連のウォータージェット工法に強い(株)アシレ、及びリユース・リサイクル事業を手掛ける(株)ムーバブルトレードネットワークスの連結子会社5社と、持分法適用関連会社のダイヤモンド機工(株)等。

 

【経営理念 : 特化した技術と高いサービスを持って社会に貢献し、最良のグループとなる事をめざす】

「特化した技術と高いサービスを持って社会に貢献し、最良のグループとなる事をめざす」を経営理念に掲げ、「切る」「はつる」「洗う」「剥がす」「削る」をキーワードに、特化した技術を様々な現場へ提供している。

 

営業方針 : 組織力、展開力を生かし、攻めの営業展開を
工事方針 : 当社の品質である工事力を高めよう
安全方針 : 働く人の健康と安全を促進する

 

1-1 事業内容

事業は、切断・穿孔工事事業、ビルメンテナス事業、及びリユース・サイクル事業に分かれる。切断・穿孔工事業は、同社、(株)ウォールカッティング工業、(株)光明工事、(株)新伸興業、(株)アシレ、ダイヤモンド機工(株)、(株)ユニペック(100%非連結子会社)が手掛け、ビルメンテナス事業は同社が、リユース・リサイクル事業は(株)ムーバブルトレードネットワークスが、それぞれ手掛けている。20/6期の売上構成比は、87.8%、2.1%、10.1%

 

 

切断・穿孔工事事業
切断・穿孔工事とは、道路等の各種舗装、及びコンクリート構造物の解体、撤去等に必要な切断工事、穿孔工事の事。同社グループの切断・穿孔工事事業は、工業用ダイヤモンドを使用したダイヤモンド工法(第一カッター興業株式会社の登録商標)、及び水圧を利用したウォータージェット工法を中心に事業を展開している。切断・穿孔工事で発生する排水は回収され、大型中間処理施設で中和され切断水として再利用される。また、切断されたコンクリート等の廃棄物は脱水処理後、コンクリート等の原料へと再生される。

 

グループで全国をカバーしており、同社が東日本全域に、(株)アシレが神奈川・大阪に、(株)ウォールカッティングエ業が主に東海地方に、(株)光明工事が大阪・中四国地方に、(株)新伸興業が沖縄県に、ダイヤモンド機工(株)が九州地方に、それぞれ営業基盤を有している。

 

同社グループは専門工事業者として、インフラの建設工事や維持補修工事の一翼を担っており、主な得意先は総合建設業者、道路建設業者、及び設備業者等。得意先が工事を受注し、コンクリート等の切断穿孔工事を同社グループに発注する。得意先は公共事業関連工事を中心に事業展開しているため、同社グループが施工する工事も大半が公共事業関連工事である((株)アシレは民間分野の客層が大半)。一方、公共事業関連工事以外の工事としては、化学工場・石油プラント・発電所等のメンテナンスやウォータージェット工法による洗浄等が挙げられる。工事を種類別に分類すると、土木工事、建築関連工事、都市土木工事、道路・空港工事、生産設備メンテナンスに分類される。

 

 

主要取引先
大成建設、大林組、鹿島建設、ショーボンド建設、鉄建建設、東鉄工業、JFEエンジニアリング、IHIインフラシステム、野村不動産パートナーズ、大成ロテック、鹿島道路、山九、三菱地所コミュニティ、三井不動産レジデンシャルサービス、NIPPO、日本道路、清水建設、三井住友建設他(順不同)。

 

 

土木工事

橋梁工事、港湾工事、ダム関連工事といった、大型構造物の補修・撤去工事を行っており、水中など特殊な環境下での切断・穿孔作業の場合にも、専属のオペレーターによる施工を行っている。

建築関連工事

建物解体工事、免震工事、耐震工事、改修工事、新築工事といった、解体・リニューアル工事に伴う各種作業を行っている。また、周辺施設への環境負荷軽減にマッチした施工方法で、従来工法では困難な施にも対応している。

都市土木工事

鉄道工事、廃棄物処理施設工事、上下水道施設工事といった、都市基盤施設における土木関連工事を行っている他、計画立案から施工までトータルで対応する環境関連工事も手掛けている。

道路・空港工事

道路の補修等に伴う各種切断や表面処理、劣化コンクリート除去、空港での滑走路グルーピングや灯火設置のためのコアドリリング等作業を行っている。グルービングマシンやコア特装車といった特定条件での切断・穿孔作業が可能な事が同社の強みである。

生産設備メンテナンス

生産設備メンテナンスでは、工場メンテナンスに伴う各種設備洗浄、改造工事に伴う無火気切断、床の塗り替え、及び下地処理等を行っている。同社では産業洗浄技能士を常駐させる事で、作業の品質と安全を確保している。

 

 

ビルメンテナス事業
同社単独の事業である。集合住宅やオフィスビル等において、排水管清掃、貯水槽清掃、給水設備点検、床清掃、ファイバースコープ調査、機械式ピット清掃等を行っている。

 

 

リユース・リサイクル事業
(株)ムーバブルトレードネットワークス、持分法非適用非連結子会社1社、持分法非適用関連会社2社の事業である。リユース事業では、主に一般企業からタブレット、パソコン、サーバー、液晶ディスプレイ等の中古IT関連機器・OA機器を仕入れ、データ消去及び補修・改修を行った後、主に法人に対してこれらの機器を販売している。また、主に法人向けにIT関連機器のデータ消去を行うサービスや、OA機器のオフィス設置サービスも行っている。リユースが難しい中古品については解体した後、中間処理を行い再資源化を行うマテリアルメーカー・素材業者に販売している。一般的な素材から「金・銀・コバルト等の希少金属」まで再資源化を行う業者への販売を行う。

 

 

1-2 テクノロジー(独自の工法) - ダイヤモンド工法、ウォータージェット工法について -

ダイヤモンド工法
工業用ダイヤモンドを使って道路や構造物の切断・削孔を行う。フラットソーイング、コアドリリング、ウォールソーイング、ワイヤーソーイング、グルービングの5つの基本工法をもとに、独自のアイデアで多種多様なダイヤモンド工法を行っている。

 

ダイヤモンド工法に用いられる工具には、「ダイヤモンドブレード」、「ダイヤモンドビット」、「ダイヤモンドワイヤー」があり、それぞれダイヤモンド砥粒を使用している。「ダイヤモンドブレード」は、ダイヤモンド砥粒をメタルボンドで焼き固めた(焼結した)チップを基盤の周りに付けたもの。「ダイヤモンドブレード」を高速で回転させる事で対象物を切断する(建材の種類や切断の深さ等に応じてサイズを使い分ける)。「ダイヤモンドビット」は筒状のチューブの先端にダイヤモンドチップの付いた刃先を付けたもの。高速で回転させ対象物を穿孔する(穴の大きさや穿孔の深さによって様々なビットを使い分ける)。「ダイヤモンドワイヤー」はダイヤモンド砥粒をメタルボンドで焼結したビーズをワイヤーに一定間隔で装着したもの。対象物に制約がなく、複雑な形状物であっても切断できる。

 

 

ウォータージェット工法
水を高圧水発生装置によって加圧・圧縮し、ノズルから噴射される高速水噴流で、はつり(コンクリート製品を、削る、切る、壊す、穴を開ける等の作業)・洗浄等を行う。対象物に与えるひずみが少なく、マイクロクラックがほとんど発生しない、低振動等の特徴を有し、環境に配慮した優れた工法として注目されている。
同社は、土木・建築や産業メンテナンス、また環境関連など幅広い分野で活用している。土木・建築では、コンクリート除去処理、成型(コンクリート壁の開口、コンクリート構造物の部分除去)、表面処理、塗膜除去処理、洗浄処理等で使われ、産業用メンテナンスでは、タンクリアクター等のプラント機器の清掃作業(スケール除去等)で使われる。また、金属切断(アブレイシブ切断)もできるため、火気厳禁の場所での改修工事にも対応する。

 

振動が少ない

ブレーカー、削岩機等の打撃破砕とは異なり、ノズルから噴射された超高圧水のエネルギーによってコンクリートのセメントモルタル結合を破砕するメカニズムが特徴。

構造物への影響が最小限

対象物に与える変形、ひずみ、残留応力が少なく、マイクロクラックもほとんど発生しないため、構造物への影響を最小限に抑えた作業が可能。

ピンポイントで除去

適切な圧力と流量の設定により、鉄筋を傷めずコンクリートの劣化部分だけをピンポイントで除去できる。

塗膜や付着物だけを除去

圧力の調整によって、対象物の塗膜や付着物だけを除去できる。

遠隔操作

対象物とノズルが接触しないため機械の遠隔操作が容易。曲線・曲面における自由な作業が可能となり、均一な品質が得られる。

 

 

2.2020年6月期決算概要

2-1 連結業績

 

19/6期

構成比

20/6期

構成比

前期比

期初予想

予想比

売上高

14,871

100.0%

17,440

100.0%

+17.3%

15,700

+11.1%

売上総利益

4,782

32.2%

5,840

33.5%

+22.1%

 -

-

販管費

3,021

20.3%

3,543

20.3%

+17.3%

 -

-

営業利益

1,760

11.8%

2,296

13.2%

+30.5%

1,730

+32.8%

経常利益

1,843

12.4%

2,482

14.2%

+34.7%

1,856

+33.8%

親会社株主帰属利益

1,251

8.4%

1,523

8.7%

+21.7%

1,080

+41.1%

* 単位:百万円

 

前期比17.3%の増収、同30.5%の営業増益
売上高は前期比17.3%増の174.4億円。低採算案件の見直しでリユース・サイクル事業の売上が同5.9%減少したものの、主力の切断・穿孔工事事業の売上が輸送インフラを中心に21.0%増と伸びた他、コロナ禍の影響を受けたビルメンテナンス事業も、第3四半期までの好調で売上が同6.2%増加した。

 

利益面では、切断・穿孔工事での稼働率の向上やリユース・サイクル事業での低採算案件の見直し効果で売上総利益率が1.3ポイント改善。技術力増進のための研究開発投資や採用・育成等の人材投資、及びM&Aに伴う販管費の増加を吸収して営業利益が22.9億円と同30.5%増加した。リユース・サイクル事業での合弁子会社の持分法適用子会社化による持分法投資利益の増加(0.3億円→1.2億円)で営業外損益も改善。投資有価証券評価損0.8億円など特別損失1.0億円を計上したものの、最終利益は15.2億円と同21.7%増加した。
尚、同社が重視しているEBITDA(税金等調整前当期純利益+特別損益+支払利息+減価償却費)は29.8億円と前期(22.5億円)比32.7%増加した。

 

配当は、1株当たり5円増配の25円(期初予想は22円)を予定している(配当性向9.3%)。

 

 

2-2 セグメント別動向

 

19/6期

構成比・利益率

20/6期

構成比・利益率

前期比

切断・穿孔工事

12,654

85.1%

15,311

87.8%

+21.0%

ビルメンテナンス

337

2.3%

358

2.1%

+6.2%

リユース・リサイクル

1,879

12.6%

1,769

10.1%

-5.9%

連結売上高

14,871

100.0%

17,440

100.0%

+17.3%

切断・穿孔工事

2,317

18.3%

2,853

18.6%

+23.1%

ビルメンテナンス

36

10.9%

25

7.1%

-30.5%

リユース・リサイクル

1

0.1%

92

5.2%

+4951.5%

調整額

-596

-

-674

-

-

連結営業利益

1,760

11.8%

2,296

13.2%

+30.5%

* 単位:百万円

 

切断・穿孔工事事業
売上高153.1億円(前期比21.0%増)、セグメント利益28.5億円(同23.1%増)。コロナ禍による影響は限定的なものにとどまり、高速道路や鉄道・空港関連工事等の輸送インフラが同34%増加した他、産業インフラも同29%、連結子会社化した(株)アシレの寄与もあり、生活インフラも同12%増加。18/6期のような特殊要因は無い中で売上高が過去最高を更新した。利益面では、(株)アシレの子会社化や中期経営計画に基づく人材投資による販管費の増加を売上の増加と稼働率の向上等による収益性の改善で吸収した。

 

 

(同社資料より)

 

ビルメンテナス事業
売上高3.5億円(前期比6.2%増)、セグメント利益25百万円(同30.5%減)。第3四半期までは売上・利益共に過去最高ペースで進捗していたが、第4四半期にコロナ禍で案件スキップが多数発生した。また、平日稼働の定期案件の増加も利益面では負担になった。

 

リユース・サイクル事業
売上高17.6億円(前期比5.9%減)、セグメント利益92百万円(前期は1百万円の利益)。コロナ禍により売上が減少する中、主なオペレーションヤードの移転費用も発生したが、低採算案件の見直しで収益性が大きく改善した。

 

 

2-3 財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)

財政状態

 

 

19年6月

20年6月

 

19年6月

20年6月

現預金

5,698

6,348

仕入債務

718

637

売上債権

2,480

2,640

未払法人税等

240

502

たな卸資産

574

468

退職関連引当金・負債

520

577

流動資産

8,913

9,630

有利子負債

1

36

有形固定資産

3,326

4,063

リース債務

26

64

無形固定資産

104

466

負債

2,348

2,985

投資その他

960

1,373

純資産

10,956

12,548

固定資産

4,391

5,903

負債・純資産合計

13,304

15,533

* 単位:百万円

 

期末総資産は前期末との比較で22.2億円増の155.3億円。フリーCFの増加による現預金の増加、設備投資による有形固定資産の増加、(株)アシレの連結子会社化によるのれんの増加、及び非連結子会社株式の取得により投資有価証券の増加等が主な要因。負債・純資産では、未払法人税等や利益剰余金等が増加した。自己資本比率77.1%(前期末79.3%)。

 

キャッシュ・フロー(CF)

 

19/6期

20/6期

前期比

営業キャッシュ・フロー

1,231

2,515

+1,284

+104.3%

投資キャッシュ・フロー

-649

-1,699

-1,050

-

財務キャッシュ・フロー

-179

-198

-18

-

現金及び現金同等物期末残高

5,698

6,316

+617

+10.8%

* 単位:百万円

 

税前利益23.9億円(前期18.4億円)、減価償却費5.0億円(同4.0億円)、法人税等の支払い△4.9億円(同△8.5億円)等で25.1億円の営業CFを確保した。投資CFは設備投資や(株)アシレの連結子会社化や非連結子会社株式の取得等によるもので、財務CFは主に配当金の支払いによる。

 

2-4 (株)アシレと(株)ユニペックの子会社化

(株)アシレ
2019年7月に100%子会社化した(株)アシレ(神奈川県横浜市)は営業拠点を神奈川と大阪に設け、ウォータージェット工法による建築構造物の外壁関連及びコンクリートはつり事業、建物内外装クリーニング事業を手掛けており、第一カッター興業ループが相対的に弱い民間分野での客層がほとんどであり、客層が相互補完関係にある。創業者の前社長は取締役を退くが、会長として2年間バックアップに回り、社長は内部昇格、親会社より常勤取締役1名、非常勤取締役1名、非常勤監査役1名を派遣する。また、親会社と同社間で職人の相互入替を計画的に推進していく。

 

(同社資料より)

 

 

(株)ユニペック
2020年4月に子会社化した(株)ユニペック(兵庫県神戸市東灘区)はピグ(配管の内部にピグを挿入し圧力をかけ配管内を走行させ汚れを取り除く)工法・ショットラン(旋回気流に乗せた研掃材による配管内外面のクリーニング)工法をメインにプラント内配管・熱交換器・加熱炉ボイラー・反応炉等の内外面洗浄工事を手掛けており、ピグ工法は製造・設計・工事をワンストップで提供できる。営業拠点は兵庫県内だが、施工エリアは北海道~沖縄、そして東南アジアに及ぶ。創業者オーナーは顧問として2年間バックアップに回り、社長は親会社より転籍にて派遣、非常勤取締役2名、非常勤監査役1名を派遣する。親会社と同社間でプラント関連営業の情報交換を行い、相互営業を展開していく。

 

(同社資料より)

3.2021年6月期業績予想

3-1 連結業績

 

20/6期 実績

構成比

21/6期 予想

構成比

前期比

売上高

17,440

100.0%

16,860

100.0%

-3.3%

営業利益

2,296

13.2%

1,888

11.2%

-17.8%

経常利益

2,482

14.2%

1,983

11.8%

-20.1%

親会社株主帰属利益

1,523

8.7%

1,130

6.7%

-23.8%

* 単位:百万円

 

前期比3.3%の減収、同17.8%の営業減益予想
売上高は前期比3.3%減の168.6億円。不要不急ではない老朽化対策工事は比較的安定した受注が期待できるものの、コロナ禍による収入減で施主関連分野が弱含みで推移するとみている他、公共投資関連も、来年度以降、コロナ禍関連への予算配分で建設投資への配分が減少するとみている。

 

営業利益は同17.8%減の18.8億円。ゼネコン各社が減益予想であることを踏まえ、値下げ圧力による受注環境の悪化(コンペ)を想定している。新工法や優位性の高い分野に注力することで収益性の維持を目指すが、投資分野や内容を精査しつつも、技術力増進のための研究開発投資や採用・育成等の人材投資を中心に積極的な投資を継続する考え。

 

配当は、1株当たり2円増配の期末27円を予定している(予想配当性向13.2%)。

 

4.中期経営計画(19/6期~21/6期)の進捗状況と今後の戦略

【中期経営計画の骨子】

建設現場における同社のポジションは下請の一部であり、直接職人を送り出し作業を行う立場にある。しかし、「専門施工業」としていう切断・穿孔に特化した独自のポジションを確立しており、切断・穿孔に不可欠な高い技術力を有した職人集団の形成が成長のカギとなる。このため、中期事業計画では、ヒトに軸足を置いた4つの基本戦略を進めている。
売上・利益・従業員数等の数値目標は20/6期に1年前倒しで達成したが、引き続き切断・穿孔事業における輸送インフラ及び産業インフラの一段の強化(売上構成比の引き上げ)に取り組んでいく他、成長投資(人材、生産性向上、事業領域拡大、及び研究開発)も継続する。また、災害復旧ボランティア制度や公的機関との災害時支援協定を通してCSRやSDGsにおける責任も果たしていく考え。尚、輸送インフラ及び産業インフラについては、5年後の24/6期売上構成比率を50%に引き上げたい考え(18/6期 生活インフラ : 輸送インフラ・産業インフラ = 56.9% : 43.1%)。

 

 

4-1 数値計画

 

19/6期 計画

同 実績

20/6期 計画

同 実績

21/6期 計画

売上高

14,318

14,871

15,700

17,440

17,400

営業利益

1,624

1,760

1,730

2,296

1,910

営業利益率

11.3%

11.8%

11.0%

13.2%

11.0%

親会社株主帰属利益

1,014

1,251

1,080

1,523

1,190

EPS

178.24

219.80

189.75

267.73

209.08

 

 

 

 

 

 

従業員数(連結)

500

501

525

568

550

* 単位:百万円、円、人

 

全項目において計画値を、2年目の2/6期に1年前倒しで達成した。

 

 

4-2 インフラ別売上構成比

 

16/6期

17/6期

18/6期

19/6期

20/6期

生活インフラ

62.0%

59.1%

56.9%

58.9%

54.8%

輸送インフラ

23.5%

26.6%

27.0%

29.0%

32.2%

産業インフラ

14.6%

14.3%

16.1%

12.1%

12.9%

 

高速道路の老朽化対策(床版リニューアル・耐震化)、鉄道再開発、インバウンド増による空港機能強化等の需要の取り込みで、輸送インフラの売上構成比が年々高まっている。老朽化対策については、計画的な売上確保のための営業戦略を進めており、その成果が顕在化しつつある。

 

 

4-3 成長投資

 

内容

19/6期 実績

20/6期 計画

同 実績

21/6期 計画

3年累計

人材投資

人材採用・研修

1.7億円

1.0億円

2.0億円

1.0億円

4.7億円

生産性向上

現場環境改善、働き方改革

4.0億円

3.0億円

4.1億円

3.0億円

11.1億円

事業領域拡大

新規営業所展開、M&A

1.2億円

7.0億円

8.7億円

2.0億円

11.9億円

研究開発

R&D、新技術への投資

0.3億円

0.5億円

0.8億円

0.5億円

1.6億円

合計

7.2億円

11.5億円

15.6億円

6.5億円

29.3億円

 

同社のコアコンピタンスである人(職人)への投資を積極的に行った結果、中計2年目の20/6期は15.6億円の実績。20/6期に2社のM&Aを実施した結果、3年累計投資予想は29.3億円に増額する考え(中計策定時は3年間で20億円を予定していた)。
研究開発では、環境対応水圧駆動式穿孔工法エコアをリリースした(SDGs17の目標のうちの、「6」、「9」、「14」、「15」に関わる取り組み)。従来は機械駆動に油圧(オイル)を使用しており、破裂時のオイル飛散が大きなリスクだったが、エコアは水圧駆動のため破裂時の環境汚染リスクがない。この他、熟練工の技術の「可視化」に取り組んでおり、操作手順の可視化及び目線・体各部位の動きの可視化が完了し社員教育に活用している(SDGs17の目標のうちの、「5」、「8」、「13」に関わる取り組み)。

 

(同社資料より)

 

投資効果と今後の課題
人材投資については、中途採用が改善すると共に定着率が上昇した。労働環境の更なる改善に取り組むことで採用活動を支援し、キャリアパスの多様化で定着率の更なる向上につなげる考え。また、生産性向上については、KPIである月間出来高指数(目標1,700千円⇒実績2,040千円)と時間当たり生産性(目標1,700円⇒実績17,019円)が改善した。今後は労働時間抑制に向けた最適化配置で成果をあげる必要がある。研究開発では、開発した環境対応水圧駆動式穿孔工法エコアを実際の現場で採用し売上につなげていく。事業領域拡大では、M&Aにより、民間部門及び産業インフラ部門を強化したが、今後は引き続きM&A情報の収集に努めると共に海外展開(プラント)を進める。

 

 

4-4 SDGs活動

同社は「社会インフラを支えるプレイヤーとして、地域社会を含めたステークホルダーへの貢献は恩返しであり、今後も事業を継続していくにあたって必要不可欠である」との考えから、SDGsの達成に貢献するべく活動を行っている。具体的には、社員にテイクアウト助成金を支給している(SDGs17の目標のうちの、「8」、「11」、「17」に関わる取り組み)他、カーボンオフセット付中間処理サービスを提供している(SDGs17の目標のうちの、「6」、「11」、「12」、「13」に関わる取り組み)。
テイクアウト助成金の支給では、コロナ禍により苦しむ地域の小規模飲食店に協力すべく、従業員にテイクアウト助成金を拠出することで、近隣飲食店の利用を促進している。一方、カーボンオフセット付中間処理サービスでは、切断作業時に発生する汚泥の中間処理サービスにカーボンオフセットを付与した。同社は汚泥の回収・処理の付帯サービスとして無料でカーボンオフセットの付与を行っており、汚泥の中間処分サービスだけでも環境負荷の低減になるが、更なる地球環境への貢献を目指している。

 

4-5 今後の戦略

コロナ禍で生じる影響への対応を進めると共に、引き続き、人材戦略、生産性向上、研究開発、及び事業領域拡大に向けた取り組みを進めていく。

 

 

コロナ禍の影響と対策
民間・公共ともに時間をかけて発注が弱含む展開を予想している。ただ、老朽化対策工事は、新築を含めたその他の目的工事よりも安定した推移が予想されるため、中経営業方針(輸送・産業インフラへの注力)はコロナ禍対策としても有効と考え継続する。また、感染者発生時の影響を最小化するための事業体制の構築にも取り組む。具体的には、職人以外のリモートワーク、会議等のオンライン化、飛沫感染防止対策、外勤と内勤の接触の最小化、行動記録の整備、地域をまたぐ集合行事の廃止等、事業活動における濃厚接触の最小化に取り組む。この他、感染症対策を講じた上で社員教育を継続する。

 

人材戦略
建設業界に即した働き方改革とワークライフバランスプロジェクトを進める。働き改革では、人材確保には他産業と比べて魅力的な職場である必要があるという観点から、下記の業界規制に先行した働き方改革を推進する。

 

(同社資料より)

 

一方、ワークライフバランスプロジェクトでは、単純に残業規制に適合するだけでなく、他産業と比較しても魅力のある働き方を目指す。

 

(同社資料より)

 

上記の他、生産性向上に向け、営業活動から受注・配車管理、伝票作成、請求処理、債権管理までの業務に一気通貫で対応できるシステムの構築を進めている。また、研究開発では、試験施工・研究開発ヤードの大型化を進めると共に、新工法・新技術開発にプロジェクト方式で取り組む。事業領域の拡大では、海外展開とM&Aを推進するが、海外展開では対象を東南アジアのプラントに絞り、リサーチを進める。M&Aでは、切る、はつる、洗う、剥がす、削る、の5つをキーワードとする専門施工会社、サプライチェーンにおける工事の前後(調査、設計、保守)にかかわる会社、及び特化した、技術、仕組み、客層を有する会社を対象としていく。

5.今後の注目点

21/6期は民間・公共ともに時間をかけて発注が弱含む展開を予想しており、慎重な業績予想となった。ただ、新聞報道によると、災害時に重要なライフラインとなる道路の維持・更新には今後30年で約70兆円が必要とされていると言う。また、橋の老朽化も深刻な状態にあり、該当する全国約12万の橋のうち、2023年度までに約1割が修繕等の対応が必要であると言う。
同社が力を入れている輸送インフラだけをとっても補修需要は膨大であり、中長期での成長を目指した戦略に間違いはない。
21/6期が一時的な踊り場となったとしても、中長期での補修需要は膨大であり、同社の課題は、この需要を取り込むための受注キャパシティの拡大である。20/6期は売上・利益目標を1年前倒しで達成するだけでなく、人材採用も順調だったが、引き続き、建設業界に即した働き方改革とワークライフバランスプロジェクトを進める人材戦略、魅力ある職場づくりにもつながる生産性向上や研究開発、及び事業領域拡大等、受注キャパシティの拡大に向けた取り組みとその成果に注目していきたい。

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査役会設置会社

取締役

5名、うち社外2名

監査役

3名、うち社外2名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2019年10月07日)
基本的な考え方
当社は、お客様、株主、地域住民及び従業員等ステークホルダーと共存共栄できるコーポレート・ガバナンス体制を構築し、中長期的な企業価値の向上を図ることを重要な経営課題の一つとして認識しております。また、経営の透明性・健全性を確保するため社外監査役及び社外取締役を選任し、経営監視機能の強化を図っております。

 

<実施しない主な原則とその理由>
【原則1-4.政策保有株式】
当社は、原則として株式の政策保有を行なわない方針でございます。しかし、取引の内容・規模等を総合的に勘案し、安定的な取引関係の維持・強化を図ることが当社の企業価値の向上に資すると判断された場合には、取引先の株式を保有する場合もございます。保有する株式については、取締役会において毎年当社の企業価値向上に資するか否かを検証してまいります。検証の結果、保有の意義が認められない、あるいは薄れたと判断された場合は、適宜売却に向け手続きを進めることと致します。保有する株式の議決権行使については、当該会社の企業価値を毀損させるようなこと等がないかを検討のうえで議決権を行使します。

 

【原則5-1.株主との建設的な対話に関する方針】
当社は経営企画室をIR担当部署としております。株主や投資家に対しては、半期に一度決算説明会を開催するとともに、逐次個別面談等を実施しております。また当社は、株主や投資家との建設的な対話を促進するためには、当該株主・投資家との信頼関係の構築・維持が重要であり、そのために適切な情報開示を行うことが必要不可欠と認識しております。その認識を実践するため、法令に基づく開示以外にも、株主をはじめとするステークホルダーにとって重要と判断される情報(非財務情報も含む)を積極的に開示する等、経営戦略や経営状況について、当社ホームページを通じ、積極的に情報開示を行っております。
なお、株主との建設的な対話を促進するための体制整備・取組みに関する方針の策定及び開示については、今後の検討事項と致します。

 

<開示している主な原則>
原則3-1.情報開示の充実】
(ⅰ)当社の企業理念等を当社ホームページ、決算説明資料にて開示しております。
(ⅱ)コーポレート・ガバナンスの基本方針を当社ホームページ及びコーポレート・ガバナンスに関する報告書にて開示しております。
(ⅲ)取締役及び監査役の報酬等については、株主総会において決議された報酬総額の範囲内で、各役員の貢献度や業績を考慮した上で、今後の経営戦略を勘案し取締役会にて決定しております。
なお、上記内容については有価証券報告書にて開示しております。
(ⅳ)取締役及び監査役候補の指名を行うに当たっての方針・手続きについては、社内規程等で定めておりませんが、それぞれ豊富な経験と高い見識を有し、取締役・監査役の職務と責任を全うできる人材で、かつ人格に優れた者を候補者として選定し、取締役会にて決定しております。
(ⅴ)取締役・監査役候補者の選任理由を株主総会招集通知にて開示しております。

 

 

 

 

 

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