ブリッジレポート
(8130) 株式会社サンゲツ

プライム

ブリッジレポート:(8130)サンゲツ 2021年3月期決算

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安田 正介 社長

株式会社サンゲツ(8130)

 

 

企業情報

市場

東証1部・名証1部

業種

卸売業(商業)

代表取締役社長執行役員

安田 正介

所在地

愛知県名古屋市西区幅下1-4-1

決算月

3月

HP

https://www.sangetsu.co.jp/

 

株式情報

株価

期末発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,590円

61,150,000株

97,228百万円

5.1%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

58.50円

3.7%

71.29円

22.3倍

1,547.92円

1.0倍

*株価は6/23終値。各数値は21年3月期決算短信より。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2018年3月(実)

156,390

5,033

5,698

4,514

68.97

55.50

2019年3月(実)

160,422

5,895

6,699

3,579

57.28

56.50

2020年3月(実)

161,265

9,268

9,844

1,432

23.56

57.50

2021年3月(実)

145,316

6,701

7,042

4,780

78.97

58.00

2022年3月(予)

152,500

6,600

6,800

4,300

71.29

58.50

*単位:百万円、円。予想は会社側予想。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益(以下、同様)。2022年3月期の期首より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)等を適用。

 

 

株式会社サンゲツの2021年3月期決算概要などをご紹介致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2021年3月期決算概要
3.2022年3月期業績予想
4.経営戦略:中期経営計画(2020-2022)【D.C.2022】の進捗
5.安田社長へのインタビュー
6.今後の注目点
<参考1:長期ビジョン【DESIGN 2030】と中期経営計画(2020-2022)【D.C. 2022】>
<参考2:コーポレートガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 21年3月期の売上高は前期比9.9%減の1,453億円。新型コロナウイルス感染症の影響により、郊外での戸建住宅に堅調な動きが見られる一方、宿泊施設・店舗等の非住宅物件の改装需要が大きく低迷したため、スペースクリエーションセグメントを除く全セグメント減収。インテリアセグメントは全品目減収だった。販管費も減少したが減収により営業利益は同27.7%減の67億円。当期純利益は前期、海外セグメントで減損損失を計上したため大幅増。売上高、売上総利益とも11期ぶりの減少となったが、20年11月に公表した修正予想に対しては、売上・利益ともに上回った。

     

  • 22年3月期の売上高は前期比4.9%増の1,525億円(収益認識基準適用なしでは同7.0%増の1,555億円)、営業利益は同1.5%減少の66億円を予想。全セグメント増収を計画している。増収により粗利も増加するが、仕入れコストの上昇に加え、営業活動の回復に伴う人件費、物流費に加え、新関西ロジスティクスセンター稼働や見本帳発刊に伴う一時的費用なども増加することから営業利益は若干の減少を予想。一方で、9月21日受注分より全商品(13~18%)の値上げを発表しているが、この業績予想には含まれておらず、通期業績へは大きく寄与する見込みである。

     

  • 配当は前期比0.50円/株増配の58.50円/株を予定。予想配当性向は82.1%。

     

  • 安田社長に、前期決算の振り返り、中期経営計画の進捗状況などについて伺った。「中期経営計画(2020-2022)【D.C.2022 】自体は昨年発表したものだが、ウェーブロックインテリアの子会社化、新関西ロジスティクスセンター(LC)の稼働など、従来からの取り組みが顕在化してきており、着実に進捗している。デザイン力を重視した「スペースクリエーション企業」を目指して今後も各施策を着実に進捗させていく」とのことだ。

     

  • 21年3月期は減収減益ではあったが、前期(第3四半期)比で減収減益見通しであった第4四半期(1-3月)は売上・利益とも予想を上回り、結果的に前期比増収増益となった。第2四半期(7-9月)をボトムに回復傾向にあるようだ。この傾向が22年3月期も継続するか、四半期ごとの推移を見ていきたい。

     

  • 同社では、市場全体がマイナスの時でも、着実に売上を伸ばすことのできる体制作りを目指しており、ウェーブロックインテリアの子会社化はその観点からは大きな一歩となろう。好調なスペースクリエーションセグメントの寄与、海外事業の組織再編効果の発現なども注目していきたい。

     

1.会社概要

壁紙、床材、カーテンなどインテリア商品の専門商社最大手。商社ではあるがデザインや機能など製品の企画・開発から手掛ける「ファブレス企業」。安定した業績を生み出すビジネスモデル、主要商品の高いシェア等が強み。
2021年3月末現在、グループ企業に、沖縄地区でのインテリア商品の販売を担う「株式会社サンゲツ沖縄」、カーテン専門の販売会社「株式会社サンゲツヴォーヌ」、エクステリア商品の専門卸「株式会社サングリーン」、中国での事業展開の拠点「山月堂(上海)装飾有限公司」、米国の非住宅向けを中心とした壁装材製造販売会社「Koroseal Interior Products Holdings,Inc.」、東南アジアにおける内装材料販売会社である「Goodrich Global Holdings Pte., Ltd.」、施工能力の強化を通じて更なる受注獲得を目指す「フェアトーン株式会社」、国内最大手のビニル壁紙製造メーカーである「株式会社ウェーブロックインテリア」の8社を有する。

【1-1沿革】

1849年(嘉永2年)、表具(布や紙などを張って仕立てられた巻物、掛軸、屏風、襖、衝立、額、画帖など)を商う「山月堂」創業。1953年、創業家により株式会社山月堂商店として株式会社化。1970年代後半以降、東京、福岡、大阪を始め全国で事業展開。1980年、名古屋証券取引所市場第2部に上場。1996年、東京証券取引所市場第1部上場。海外にも進出し、トータルインテリアを供給するブランドメーカーとしての地位を確立する。
2014年4月、安田正介氏が初めて創業家以外から代表取締役社長に就任。第1期(創業)、第2期(株式会社化)に次ぐ、第3期(第3の創業)として位置づけ、新たなステージに臨む。

 

【1-2 企業理念】

新たなステージに臨む同社では、変革のチャレンジを進める上で、2016年2月、新ブランド理念を含めた企業理念を再構築した。以下の、「社是」、「企業使命」に新しい「ブランド理念」を合わせ、企業理念としている。
加えて、2020年に策定した「Sangetsu Group 長期ビジョン 【DESIGN 2030】」において、目指す姿を「スペースクリエーション企業」とした。(詳細は「参考1:長期ビジョン【DESIGN 2030】と中期経営計画(2020-2022)【D.C. 2022】」を参照)

 

<社是>
誠実

 

<企業使命>
インテリアを通じて社会に貢献し、豊かな生活文化の創造に寄与します。

 

<ブランド理念>
ブランドステートメント「Joy of Design」を掲げ、ブランドパーパスとして「私たちは、新しい空間を創りだす人々にデザインするよろこびを提供します。」と謳っている。

 

インテリア商品の作り手と使い手、同社に関連する全てのステークホルダーとともに、新しい価値創造のよろこびを分かち合うことを目指す考えだ。

 

【1-3市場環境】

◎概観
同社の主力商品である壁紙や床材の出荷状況は国内建設市場の動向に影響される。人口減少や家族構成の変化による新設住宅着工戸数の減少やデフレ経済における販売の低下で国内インテリア市場は下のグラフの様に、縮小傾向にある。

 

(同社資料より)

 

一方、下のグラフは、同社売上高、国内インテリア市場、新設住宅着工戸数(国土交通省発表)の推移を比較したもの。同社の売上高及び国内インテリア市場の動向は、新設住宅着工戸数にほぼリンクしてきたが、リーマンショック後の動きを見ると、市場全体及び新設住宅着工件数は低水準で推移しているのに対し、同社売上高は2020年3月までは過去最高を連続して更新してきた。21年3月期は新型コロナウイルスの影響もあり11期ぶりの減収となったが、市場全体の落ち込みほどではなく、主要製品ではシェアを向上させている。

 

 

これは、M&Aに加え、民間住宅以外に非住宅市場の開拓に注力してきたことによるものである。

 


 

国土交通省発表の「令和2年度 建設投資見通し」によれば、民間住宅建築投資、民間非住宅建築投資ともにリーマンショック後は回復途上にあったが、民間住宅建築投資は2017年度以降頭打ち、2000年レベルを上回っていた民間非住宅建築投資も新型コロナウイルスの影響もあり、直近では減少に転じた。
また、事務所及び店舗(新設)の床面積合計は、上下はあるものの減少傾向にあり、市場の縮小は構造的なものと考えられる。

 

また、一般財団法人 建設経済研究所が発表した「建設経済モデルによる建設投資の見通し」(2021年4月28日発表)によれば、名目民間非住宅建築投資の対前年度伸び率は、2017年度11.8%増、2018年度(見込み)1.5%増、2019年度(見込み)0.5%増の後、2020年度(見通し)4.5%減、2021年度(見通し)3.2%減とマイナスが続く見通しである。新型コロナウイルス感染症の影響による宿泊施設や店舗の減少が主要因。

 

着工床面積は、事務所が16年度の10.3%増から17年度は一転して4.6%減となり、18年度も3.9%の減。19年度2.3%増と回復したが、2020年度(見通し)は10.0%減と大きなマイナスに転じる。2021年度(見通し)は前年度の反動もあり9.4%増と回復するが、減少傾向には変化がない。同見通しよれば、「全国的に空室率が上昇し、東京では平均賃料も下落しており、先行きには不透明感がある」とのことである。

 

店舗も14年度以降前年割れが続いており、19年度20.5%減、20年度(見通し)10.2%減と2ケタのマイナスが続く。2021年度(見通し)は5.4%増とプラスになる。同見通しでは「減少傾向が続いてきたが、持ち直しの兆しが見られる」と述べているが、継続的な回復に繋がるかは不透明であろう。

 

 

このように、住宅市場、非住宅市場ともに厳しい事業環境ではあるが、非住宅市場においては、リニューアル需要は堅調に推移しているため、市場開拓部およびコントラクト営業部を中心に需要取り込みを図っている。加えて海外事業の育成にも取り組み、他社にはない強みを強化、更なる成長を追求している。

 

◎同業他社
インテリア、内装材を扱う主な同業他社としては以下の8社が挙げられる。

 

コード

企業名

売上高

増収率

営業利益

営業増益率

営業利益率

時価総額

PER

PBR

ROE

3501

住江織物

81,400

-11.1%

868

-44.3%

1.1%

14,258

39.1

0.4

0.5%

4206

アイカ工業

200,000

+14.5%

21,000

+16.7%

10.5%

266,645

19.8

1.9

8.1%

4215

タキロンシーアイ

140,000

+4.1%

8,000

-6.0%

5.7%

56,355

10.2

0.7

6.4%

4224

ロンシール工業

18,500

+7.8%

1,250

+9.6%

6.8%

7,062

7.8

0.4

5.2%

5956

トーソー

21,700

-

720

-

3.3%

5,340

10.1

0.4

6.2%

7971

東リ

88,000

-

1,500

-

1.7%

16,306

14.9

0.4

3.8%

7989

立川ブラインド工業

42,040

+5.2%

4,800

+5.8%

11.4%

27,200

8.4

0.6

7.5%

8130

サンゲツ

152,500

-

6,600

-

4.3%

95,027

21.8

1.0

5.1%

9827

リリカラ

34,100

+4.1%

500

+464.2%

1.5%

2,532

13.7

0.4

0.9%

*単位:百万円、倍。業績は今期会社予想。時価総額、PER、PBRは2021年6月17日終値ベース。ROEは前期実績。
トーソー、東リ、サンゲツは今期首より「収益認識に関する会計基準」を適用するため増収率、増益率は記載していない。

【1-4 事業内容】

壁紙、床材、カーテン、椅子生地などインテリア商品の企画開発及び販売が中心事業。生産設備を持たない「ファブレス経営」が特色だが、単なる商社ではなく、扱う商品はすべて自社で企画・デザイン・開発を行っている。子会社を通じてエクステリア事業も展開している。米国、中国、シンガポールの子会社3社により海外事業も展開している。

 

事業セグメントは、インテリアセグメント、エクステリアセグメント、海外セグメント、スペースクリエーションセグメントの4セグメント。

 

 

①「インテリアセグメント」
(2021年3月期 売上高 110,462百万円、営業利益 7,082百万円)
◎主な取扱商品

壁紙

同社の主力商品。住宅から非住宅分野まで幅広く利用される壁装材。近年では汚れ防止や消臭、キズが付きにくいなどの性能を持つ機能性壁紙も人気。抗ウイルス壁紙などもラインアップ。また、部屋の一面あるいは一部だけ色やデザインの異なる壁紙を使う「アクセントクロス」は住空間の魅力を高め、一般住宅、賃貸住宅でも採用が進んでいる。

クッションフロア

住宅用と店舗用のタイプがあり、アパートやマンションなどでも多く利用されているシート系床材。木目・石目など豊富なデザインとクッション性が特長の幅広い用途を持つアイテム。

長尺塩ビシート

 

医療・福祉施設や商業スペース、教育施設などに多く利用されるシート系床材。安全、衛生面に配慮した機能のほか、ワックスがけ不要などの優れたメンテナンス性による管理維持コストの削減、環境負荷の低減にも繋がる性能を持つアイテムなどがある。

フロアタイル

商業施設や教育施設、また戸建やアパート、マンションにも利用される幅広い用途をもつ、タイル状の塩ビ床材。ウッドやストーンなどモチーフとなる素材を高い印刷技術と精緻なエンボス加工で表現した意匠性の高さも特長。

カーペット

 

住宅から商業施設、ホテル、旅館まで幅広い用途で利用される繊維系床材。多彩なデザインと高い機能性を備える。物件に応じたオリジナルデザインの提案も行う。

カーペットタイル

主に、オフィス、ホテル、商業施設、教育施設などに使用される50センチ角のタイル状カーペット。貼り替えも手軽な上、メンテナンス性にも優れている。

カーテン

同社が取扱うのはすべてオーダーカーテン。好みや部屋の条件に合ったデザイン、サイズで窓まわりを装飾できるのが特長。デザイン性豊かな厚手のカーテンのほか、外から室内が見えにくいミラー調レースや遮熱などの機能性アイテムも人気。

 

商品数は約12,000点と他に類を見ない多彩なラインアップを誇っている。
主力の壁紙で商品数は約4,300点。2年毎に見本帳の更新を行っているが(カーテンは3年毎)、旧い商品を見本帳から外し、新しい商品に入れ替える所謂「改廃率」は壁紙で30~40%程度。廃止されたデザインの商品は破棄しなければならないため無駄が発生してしまうが、見本帳の鮮度もユーザー満足度を高める重要な要素であり、同社の体力や長年に亘るノウハウの蓄積により効率と鮮度のバランスを取っている。
◎営業体制
名古屋の本社の他、全国に8か所の支社、50か所の支店・営業所・事務所を持ち、重要な営業拠点として8か所のショールームを有している。

 

 

(同社資料より)

 

最終的に商品を納入し、売上を立て、代金が入金されるのは上図右の川下の内装仕上げ段階で、主な相手先は代理店を通じた内装工事業者やインテリアショップ、建材店となるが、その前工程での商品PRも重要だ。
住宅やビルが竣工するまでには、発注者(施主)、設計事務所、デザイン事務所、ゼネコン、サブコン、ハウスメーカーなど、数多くのプレーヤーがかかわっており、インテリアをデザインや機能から最終的に選択する意思決定は川上から始まっているケースも多数ある。
そのため、同社では見本帳、ショールームなど様々な機会を通じて商品のPRを行っている。もちろん「待ち」のみでなく、市場開拓部およびコントラクト営業部(全国的に法人顧客をカバー)をはじめとした全国の営業員約700名が、各担当先に足を運び情報提供・収集、提案を行っている。主として代理店を経由した販売スタイルをとっているが(一部では直接販売)、顧客数は中部地域だけで約6,000社。代理店を通しているので正確な数字は把握できていないが、全国の顧客数は数万社にのぼる。

 

◎物流体制・配送体制
全国10か所に物流センターを含めた物流施設を保有している。
東・名・阪・福はほぼ全商品が常に在庫されており、出荷点数は一日6万点に上るが、欠品率は1日平均で約0.9%となっている。周辺の物流センターから即座にカバーする事で、納期待ちを依頼する事はほぼない。内装の工期に合わせた「Just in Time」を全国物流ネットワークによって実現している。仕入先は約100社と広範囲に亘っている。
物流効率化を目指し、ロジスティクスセンターの建設を進めており、2021年1月5日には、西日本全体の物流体制強化と、物流業務の自動化・省人化を目指した関西LCを新設・稼働開始。首都圏を始めとした他のLCでも同設備の導入を検討する。

 

配送については、物流コストが増加するのに対応し、自社配送体制の拡充を進めている。
東北において地域配送体制を整備したのに続き、他地域でも地域配送体制を構築すると同時に、重量物の配送も大都市圏を中心に整備していく。

 

②「エクステリアセグメント」
(2021年3月期 売上高 14,624百万円、営業利益 417百万円)
2005年に子会社化した株式会社サングリーンが門扉、フェンス、テラスなどのエクステリア商品を国内で販売している。新中期経営計画では、首都圏を中心とした景観ビジネスにも注力する。

 

③「海外セグメント」
(2021年3月期 売上高 15,034百万円、営業利益 -985百万円)
2016年11月に買収したKoroseal Interior Products Holdings,Inc.、2016年4月に設立した山月堂(上海)装飾有限公司および2017年12月に買収したGoodrich Global Holdings Pte., Ltd.の3社で構成される。
東南アジア・中国では収益性改善に向け、現在事業体制の再編に取り組んでいる。

 

④「スペースクリエーションセグメント」
(2021年3月期 売上高 5,195百万円、営業利益 201百万円)
2021年3月期より追加されたセグメント。
サンゲツのスペースクリエーション事業部および子会社であるフェアトーン株式会社で構成される。
サンゲツのデザイン力およびフェアトーンの内装仕上げに関する施工能力をベースに、新たに、スペースデザイン力・発想力・構想力・提案力・コンサル力などのソフトパワー、木工・照明・電気なども対象とした総合的な施工力を付加、施工管理力を強化し、顧客にとって最適な空間を創造・提供する。

 

【1-5 ROE分析】

 

13/3期

14/3期

15/3期

16/3期

17/3期

18/3期

19/3期

20/3期

21/3期

ROE (%)

4.1

4.6

3.7

5.6

6.0

4.2

3.5

1.5

5.1

 売上高当期純利益率(%)

3.90

4.14

3.33

4.77

4.84

2.89

2.23

0.89

3.29

 総資産回転率(回)

0.88

0.93

0.91

0.95

0.88

0.91

0.94

0.96

0.90

 レバレッジ(倍)

1.19

1.20

1.21

1.24

1.41

1.60

1.67

1.74

1.73

 

中期経営計画(2020-2022)【D.C. 2022】では2023年3月期の目標を9%としている。
収益性向上のための取り組みが必須である。

 

【1-6 特徴と強み】

①安定した収益を生み出すビジネスモデル
同社は製造部門を持たない「ファブレス経営」の先駆けとも言うべき存在で、一部を除き製造部門を持たないため固定費負担が小さい。また、商品数12,000点、仕入先100社以上、顧客数万件と、多くの面で分散が効いており、建設市場動向に連動する景気敏感型企業でありながら業績変動は決して大きくなく、設立以来、連結決算で赤字を計上したことが無い。

 

②「創る」・「提案する」・「届ける」
「創る」
同社は商品の製造を行ってはいないが企画・デザイン・開発は自社で行っている。1965年に初のオリジナル壁紙を発売。1973年に制定以降、現在も守り続けられているサンゲツ三則にある「創造的デザイン」に力を入れており、積極的な投資を行っている。
同社で様々なデザインをベースに約25名の企画担当者が、デザインを練り上げ、同社オリジナルデザインを開発している。担当者育成は海外の展示会への参加、営業の意見のヒアリング、デザイン顧問とのディスカッションなど、OJTで行っている。若い感覚をより積極的に採用していく方針だ。商品ラインアップは他社には例を見ない約12,000点。また2~3年ごとに定期的に改訂する約30種類の見本帳も他社にはない同社の大きな特徴。

 

(同社資料より)
「提案する」
同社の営業スタッフ数は全従業員数のおよそ半分弱に当たる約700名で、業界最大である。
全国8支社、50拠点で前述のような、提案営業を展開している。8か所のショールームには約110名のショールームスタッフが在籍。また、各商品を組み合わせた室内空間を顧客にイメージしてもらうためのデザインボードを作成するコントラクトデザインスタッフが約70名おり、その提案力も業界最高水準となっている。

 

 

 

(同社資料より)

 

「届ける」
先述の様に、商品の全点常備在庫を行い、内装工期に合わせて「Just in Time」を実現する全国の物流ネットワークを有するのは同社の強みである。ただ、全点在庫は一方で過剰在庫や低効率につながりかねず、同社の様な注文に応じて正確に加工して出荷する加工物流において、ロス率を上げない正確な加工技術とスピードが重要な要素となる。
通常、壁紙は1ロール50m。30mの注文があった場合、同社の場合は正確に30mでカットして出荷し、加工後残った素材は次の注文に合わせ効率的にカットし、なるべく無駄が出ないように加工する。こうした加工技術は同社が長年蓄積してきた貴重なノウハウによるものである。

 

 

 

(同社資料より)

 

2.2021年3月期決算概要

(1)業績概要

 

20/3期

構成比

21/3期

構成比

前期比

予想比

売上高

161,265

100.0%

145,316

100.0%

-9.9%

+3.8%

売上総利益

52,925

32.8%

47,640

32.8%

-10.0%

+3.6%

販管費

43,656

27.1%

40,938

28.2%

-6.2%

+0.8%

営業利益

9,268

5.7%

6,701

4.6%

-27.7%

+24.1%

経常利益

9,844

6.1%

7,042

4.8%

-28.5%

+21.4%

当期純利益

1,432

0.9%

4,780

3.3%

+233.8%

+36.6%

*単位: 百万円。予想比は20年11月の修正予想に対する実績の増減。

 

減収減益も修正予想を上回る
売上高は前期比9.9%減の1,453億円。新型コロナウイルス感染症により、郊外での戸建住宅に堅調な動きが見られる一方、宿泊施設・店舗等の非住宅物件の改装需要が大きく低迷したため、スペースクリエーションセグメントを除く全セグメント減収。インテリアセグメントは全品目減収だった。
粗利額は同10.0%減少。販管費も減少したが減収により営業利益は同27.7%減の67億円。
当期純利益は前期、海外セグメントで減損損失を計上したための大幅増。
売上高、売上総利益とも11期ぶりの減少となった。
ただ、20年11月に公表した修正予想に対しては、売上・利益ともに上回った。

 

 

四半期ベースでも第4四半期(1-3月)は前年同期比では減収減益だが、第3四半期比では増収増益。第2四半期をボトムに回復傾向にある。

 

(2)セグメント別動向

 

20/3期

構成比

21/3期

構成比

前期比

予想比

売上高

 

 

 

 

 

 

インテリアセグメント

122,092

75.7%

111,794

76.9%

-8.4%

+4.0%

  壁装材事業

60,226

37.3%

55,814

38.4%

-7.3%

-

  床材事業

44,762

27.8%

41,271

28.4%

-7.8%

-

  ファブリック事業

8,472

5.3%

7,816

5.4%

-7.7%

-

  その他

8,631

5.4%

6,892

4.7%

-20.2%

-

エクステリアセグメント

16,082

10.0%

14,626

10.1%

-9.1%

+4.5%

海外セグメント

19,804

12.3%

15,034

10.3%

-24.1%

+3.7%

スペースクリエーションセグメント

4,162

2.6%

5,239

3.6%

+25.9%

+4.8%

調整額

-876

-

-1,378

-

-

-

合計

161,265

100.0%

145,316

100.0%

-9.9%

+3.8%

営業利益

 

 

 

 

 

 

インテリアセグメント

9,324

7.6%

7,082

6.3%

-24.1%

+22.1%

エクステリアセグメント

642

4.0%

417

2.9%

-35.1%

+4.3%

海外セグメント

-932

-

-985

-

-

-

スペースクリエーションセグメント

185

4.4%

201

3.8%

+8.8%

+34.6%

調整額

48

-

-13

-

-

-

合計

9,268

5.7%

6,701

4.6%

-27.7%

+24.1%

*単位:百万円。営業利益の構成比は売上高営業利益率。ファブリック事業は、カーテンと椅子生地を合わせたもの。報告セグメントの変更に伴い、20/3期の数値は変更後のセグメント区分に組み替え。

 

➀インテリアセグメント
減収・減益。全品目減収だった。
市場全体は金額ベース9.5~10%縮小したが、インテリアセグメント売上高は8.4%の減少で、壁紙・床材ではシェアは上昇。
新築住宅が大幅減少の中、注力中の壁装材廉価品は、中高価格帯からの需要の異動により底固い。
オンラインを活用した商品セミナーやインテリアコンサルテーションの実施、WEBサイトの情報拡充、テレワークなどコロナ禍に対応した営業・販促活動を継続した。

 

<壁装材>
新型コロナウイルス感染症に加え、新設住宅着工戸数の減少や、ホテルや商業施設を中心とした市場の縮小も影響し減収。
ただ、第4四半期(1-3月)には、一部で賃貸住宅や住宅リフォーム市場の需要の高まりが見られたことから、住宅向け壁紙の見本帳「リザーブ1000」と「リフォームセレクション」が売上を牽引した。また、ガラスフィルム見本帳「CLEAS」が引き続き好調に推移したほか、安心・安全へのニーズの高まりから、抗ウイルス商品も堅調。

 

<床材>
宿泊・商業分野の需要が回復せず減収。
住宅・非住宅分野で幅広く使用できる「フロアタイル」の売上が堅調。2020年9月に発刊したクッションフロア見本帳「Hフロア」が市場に浸透した。また、2020年11月に発刊した各種施設用フロア見本帳「Sフロア」は抗ウイルス商品を中心とした一部の商品で好調。オフィス改修市場においては、求めやすい価格帯ながらデザイン性の高いカーペットタイル「NT-350シリーズ」や 「NT-700シリーズ」の採用が進んだ。

 

<ファブリック>
市場のデフレ化や販促イベントを含む営業活動の自粛・縮小の影響で減収。
住宅市場においては、カーテン見本帳「AC」が売上を牽引したほか、椅子生地見本帳「UP」や9月に発刊した各種施設向けカーテン見本帳「コントラクトカーテン」が好調に推移。特に、抗ウイルス・抗菌機能を持つカーテンは、従来の医療・福祉施設だけでなく公共・教育施設にも使用されるなど、採用の幅が広がった。

 

<その他>
減収。施工代や接着剤を含むその他の売上を含んでいる。

 

➁エクステリアセグメント
減収・減益。
市場全体の低迷が続く中、公共工事をはじめとする非住宅物件の減少に加え、フェンス、門扉、カーポートといった住宅関連の主力商材の売上が低迷した。その一方、巣ごもり需要の拡大により、ポストや物置、ウッドデッキ等の販売が堅調に推移したほか、ホームセンターやEC販売店を通じた売上が大きく伸長した。また、中期経営計画に基づく施策である施工力強化の一環として、既存分野の工事能力強化に加えて、外構や土木工事といったより幅広い工事が対応可能なアライアンス先の開拓に注力した。

 

③海外セグメント
減収・損失は拡大。
海外セグメントでは2020年1月から12月までの各社実績を21年3月期の業績に算入している。
北米市場を担うKoroseal社においては、新型コロナウイルス感染症の拡大やそれに伴うロックダウンの影響により、厳しい状況が継続した。感染防止に配慮した屋外での営業PR活動等を実施し、営業機会の損失の低減に努めたほか、新規壁紙生産設備の稼働による生産性の向上や人員体制の見直しによるコスト低減にも努めた。また、サンゲツの粘着剤付化粧フィルム「リアテック」は、これまでの営業活動が奏功し、工期の短縮化やコスト削減、環境への配慮といったニーズを捉えたことから、売上が伸長した。

 

中国市場を担う山月堂(上海)においては、中国経済や建設市場全体が回復傾向にある中で、営業活動の再開・積極化に努めた。この結果、特に10月以降においては、オフィス物件等への壁装材・床材の納品が順調に進み、売上が伸長。また、Goodrich Global Holdings Pte., Ltd.との中国における協業を行い、中国事業再編及び新組織体制構築に向けた準備を進めた。

 

東南アジア市場を担うGoodrich社においては、各国で状況が異なるものの、経済活動の停滞により、主要マーケットであるホスピタリティ市場への影響が大きく、建設工事の中止や延期等が多く発生した。このような状況下で、2020年に新設したベトナム、タイの現地法人における営業体制の整備を進めたほか、各国のニーズに合わせた見本帳の開発を実施。また、マレーシア・シンガポールでの人員削減を実行するなど、各国の市場に合わせた拠点・経営体制の構築を進めた。

 

④スペースクリエーションセグメント
増収・増益。
フェアトーン株式会社において、非住宅の新築内装仕上事業への新型コロナウイルス感染症の影響が限定的であったほか、顧客との関係強化やサンゲツとの連携した営業活動も奏功し、ほぼ計画通りの進捗となった。一方、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けたホテル・オフィス案件を中心とした改修工事事業においては、特に2度目の緊急事態宣言の発出以降、工事量が減少し厳しい状況となる中、サンゲツとの連携による新規顧客及び受注工事の獲得に努めた。
一方、サンゲツのスペースクリエーション事業部ではオフィス改修工事の中止、延期等が発生した。その一方、ホテルからオフィスへのコンバージョン物件の発生や、働き方改革を踏まえたテナント改修工事といった新しいニーズも発生しており、こうした需要に対応し得る人材やアライアンスの強化に努めた。

 

(3)財務状態など

◎主要BS

 

20/3月末

21/3月末

 

20/3月末

21/3月末

流動資産

100,591

89,469

流動負債

50,701

43,790

現預金

30,756

25,719

仕入債務

25,818

26,626

売上債権

47,069

44,983

短期借入金

12,840

7,261

有価証券

4,125

300

固定負債

19,182

21,375

たな卸資産

17,502

17,109

長期借入金

7,638

8,660

固定資産

63,509

69,356

負債合計

69,883

65,165

有形固定資産

35,673

40,516

純資産

94,217

93,660

無形固定資産

9,233

10,122

利益剰余金

62,853

61,387

投資その他の資産

18,603

18,717

自己株式

-2,440

-1,579

資産合計

164,101

158,826

負債純資産合計

164,101

158,826

 

 

 

自己資本比率

56.8%

58.8%

*単位:百万円。

 

現金や有価証券等の減少により、流動資産は前期末に比べ111億円減少。関西ロジスティクスセンター移転による有形固定資産増加、ウェーブロックインテリア子会社化に伴う有形固定資産の増加により固定資産は同58億円増加。資産合計は同52億円減少の1,588億円。
長期借入金が増加した一方短期借入金が減少し、負債合計は同47億円減少の651億円となった。
純資産はほぼ変わらず936億円。これらの結果、自己資本比率は前期末から2.0ポイント上昇し58.8%となった。
長短借入金残高は同45億円減少の159億円となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

20/3期

21/3期

増減

営業CF

13,804

9,694

-4,110

投資CF

-5,016

-2,599

+2,417

フリーCF

8,788

7,095

-1,693

財務CF

-5,476

-11,836

-6,360

現金同等物残高

29,922

25,124

-4,798

*単位:百万円。

 

前期にあった非資金性支出(減損損失)が減少したことなどから営業CF、フリーCFのプラス幅は縮小。
キャッシュポジションは低下した。

 

◎CCC
仕入債務回転期間の上昇によりCCCは前期末比3.5ポイント低下。
毎期着実に改善している。

 

3.2022年3月期業績予想

(1)業績予想

 

21/3期

22/3期(予)

前期比

売上高

145,316

152,500

+4.9%

155,500

+7.0%

売上総利益

47,640

50,500

+6.0%

51,000

+7.1%

販管費

40,938

43,900

+7.2%

44,400

+8.5%

営業利益

6,701

6,600

-1.5%

経常利益

7,042

6,800

-3.4%

当期純利益

4,780

4,300

-10.0%

*単位:百万円。2022年3月期の業績予想は、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)等を適用。2021年3月期の実績は、適用前の金額。売上高、売上総利益、販管費の上段は同基準適用ありの数値、下段は適用なしの数値。上段の前期比はインベストメントブリッジが参考値として計算。

 

増収減益を予想。9月からの価格改定は通期業績に大きく寄与する見込み。
売上高は前期比4.9%増の1,525億円(収益認識基準適用なしでは同7.0%増の1,555億円)、営業利益は同1.5%減少の66億円を予想。全セグメント増収を計画している。
増収により粗利も増加するが、仕入れコストの上昇に加え、営業活動の回復に伴う人件費、物流費に加え、新関西ロジスティクスセンター稼働や見本帳発刊に伴う一時的費用なども増加することから営業利益は若干の減少を予想。
一方で、9月21日受注分より全商品の値上げ(13~18%)を発表しているが、この業績予想には含まれておらず、通期業績へは大きく寄与する見込みである。
配当は前期比0.50円/株増配の58.50円/株を予定。予想配当性向は82.1%。

 

(2)セグメント別動向

 

21/3期

22/3期(予)

前期比

売上高

 

 

 

インテリアセグメント

111,794

117,000

+4.7%

111,794

120,000

+7.3%

エクステリアセグメント

14,626

15,300

+4.6%

海外セグメント

15,034

15,700

+4.4%

スペースクリエーションセグメント

5,239

6,000

+14.5%

調整額

-1,378

-1,500

-

合計

145,316

152,500

+4.9%

145,316

155,500

+7.0%

営業利益

 

 

 

インテリアセグメント

7,082

6,400

-9.6%

エクステリアセグメント

417

400

-4.1%

海外セグメント

-985

-500

-

スペースクリエーションセグメント

201

300

+48.6%

調整額

-13

-

-

合計

6,701

6,600

-1.5%

*単位:百万円。2022年3月期の業績予想は、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)等を適用。2021年3月期の実績は、適用前の金額。売上高の上段は同基準適用ありの数値、下段は適用なしの数値。上段の前期比はインベストメントブリッジが参考値として計算。

 

*インテリアセグメント
日本国内のインテリア市場は2020年度に2019年度比9.5~10%減少した後、2021年度は2019年度比4%減まで回復するとの前提。
塩ビ・可塑剤・ナイロン等の原材料価格上昇による壁装材・床材の仕入価格上昇を見込んでいる。
仕入れ価格上昇に加え、物流関連の業務委託費、内装施工現場等への配送を行うための物流設備の維持・更新にかかる投資・各種費用も上昇が続いていることから、商品の安定供給と物流サービスレベルの維持のため価格改定を実施することとした。2021年9月21日受注分より実施する。対象商品は壁紙・床材・ファブリック・副資材。値上げ幅は13~18%。
新関西ロジセンター本格スタートに伴うコスト増、見本帳発刊増により、販管費は約29億円の増加を計画。

 

*エクステリアセグメント、スペースクリエーションセグメント
エクステリア市場全体はインテリア市場全体と同様の見通し。
スペースクリエーションセグメントは今期も事業拡大を見込んでいる。

 

*海外セグメント
米国建設市場は大幅改善を予想しているが、内装工事に至る時間差により今期での改善は限定的。
東南アジア市場は、4月以降に新型コロナウイルス感染症が再拡大し、各国でロックダウンの再発令等続き、ワクチンの普及遅れもあり、回復を見通せない。
中国・香港市場はホスピタリティ市場の改修需要が回復せず、Goodrich中国・香港は厳しい状況を予想。

 

 

4.経営戦略:中期経営計画(2020-2022)【D.C.2022】の進捗

20年5月に発表した中期経営計画(2020-2022)【D.C.2022】の基礎となる考え方や取り組みの進捗などは以下の通り。

 

【4-1 成⻑戦略における基本的な考え方】

*住宅、非住宅、新築、リニューアル、リフォームからなる日本市場の大きな成長は望みにくい。
また、同社は既に商品によっては50%以上のシェアを有していることから、日本市場において数量・シェアの拡大による飛躍的な成長を遂げることも難しい。
*しかし、数量・シェアを漸次的に拡大し得る強い事業体制を確立していくことは依然として可能であり、値上げをしても数量・シェアを逸失しない体制作りに取り組むことが必要である。

 

*これによってインテリアセグメントの収益力を拡大していくことは可能ではあるが、長期的な視点からは限界があり、長期的・持続的な成長を実現するためには、ビジネスモデルの転換、海外事業の収益化および拡大が不可欠である。

 

ビジネスモデルの転換
◎これまでのビジネスモデル
メーカーからデザインの提案を受け、商品を選び、その後仕入・在庫・加工。
営業活動の対象は、主に代理店であり、代理店向けに出荷・配送する。

◎目指すべきビジネスモデル
ValueChain全体を商品の企画・デザイン・営業・配送・施工、およびバリューチェーン全体から得られるデータでカバーする製販一体形のビジネスモデル。

 

*製造部分においては、一部自社製造を含め多くの仕入先から仕入れ、企画・デザインはサンゲツが中心となる。
*営業活動は、代理店のみでなく、内装業者、ハウスメーカー、ゼネコンなど代理店の先にいる関係各社にも積極的にアプローチ。単なる営業活動ではなく、デザイン、コーディネーションを含めた提案活動が重要。
*全国津々浦々にきめ細かな配送体制を、代理店の配送力とともに構築。
*施工力の強化も重要。

 

こうした新たなビジネスモデル構築に向けて様々な施策を実行する。

 

 

【4-2 長期ビジョン:スペースクリエーション企業へ】

長期ビジョンにおいて「スペースクリエーション企業」を目指している。

 

壁紙・床材を販売するにあたり、モノのデザイン強化の上でも、どういう空間をデザインするか、どういう空間で壁紙・床材を使用するかを提案することが重要になる。
加えて、自社で空間のデザイン及び施工も手掛ける場合、その空間で行われるさまざまな活動を提案することも重要である。

 

このように、「モノのデザイン」のみでなく、「空間のデザイン」「コトのデザイン」を合わせ、三位一体としてデザイン活動を行うことにより、高い付加価値を生み出すことが自社の競争力強化に繋がると同社では考えている。
従来の「モノの販売」のみではなく、空間創造に重要なデザイン・配送・施工機能を活用し、「材料・施工の販売」と「空間の販売」を行うのが「スペースクリエーション企業」である。

 

【4-3中期経営計画(2020-2022)【D.C.2022】の進捗状況 】

中期経営計画(2020-2022)【D.C.2022】における主な進捗状況は以下の通り。

 

(同社資料より)

 

(1)基幹事業の収益拡大:デザイン力の発展的強化
①隈研吾氏とのコラボレーション
2021年4月、著名建築家である隈研吾氏とのコラボレーションによる壁紙・床材のコレクション「KAGETOHIKARI カゲトヒカリ」を発表した。
同氏と、作家 谷崎潤一郎氏の代表作である「陰翳礼讃」をベースに重ねたさまざまな議論が商品開発のベースとなっている。

 

②有名デザイン会社との連携
英国の有名デザイン会社「Sanderson Design Group」との共同開発により、壁紙・ファブリック・椅子生地のデザイン見本帳「EDA」の第2弾を発売。市場関係者からは高い評価を得ている。Sanderson Design Groupとは2021年5月にパートナーシップ契約を締結した。

 

③国際デザインアワード受賞
ドイツのiFインターナショナル・フォーラム・デザインが主催する「iF DESIGN AWARD2021」において、壁紙「SHITSURAI」シリーズが初めて受賞した。同アワードは1954年からの長い歴史を誇り、世界で最も認知されているデザインアワードの一つである。

 

(2)基幹事業の収益拡大:戦略的調達の推進
2021年3月、株式会社ウェーブロックインテリアの株式51%を取得した。取得金額は約24億円。今後100%の株式を取得することを株主であるウェーブロックホールディングス株式会社との間で合意済み。

 

ウェーブロックインテリアは、サンゲツが注力中の廉価版量産壁紙における国内最高効率の生産設備を保有している。
壁紙は年間約6億5,000万メーターが製造・販売されているが約3分の2が量産壁紙。また、量産壁紙の約3分の2を生産しているのがウェーブロックインテリアである。

 

市場がデフレ化する中、壁紙の需要は中高級品から廉価版である量産壁紙へ移行している。そうした中、一部壁紙メーカーの撤退や倒産も発生しており、量産壁紙の需給バランスはタイト化している。

 

こうした状況下、サンゲツは今回の子会社化により量産壁紙の安定供給体制を構築し、需給バランスがタイトな量産壁紙の生産利益を取り込む。また、製販一体化による製造面での効率化も目指している。

 

サンゲツは約3,000点以上の壁紙を販売しているが、このうち量産壁紙は20分の1の約150点。
この150点で、上記した市場全体の壁紙販売と同様に3分の2程度の販売を行っている。
商品数が少なく、取引ロットが大きい量産壁紙はコスト競争力が重要であり、販売面での機能が製造に与える影響も大きいことから、今後も継続的に戦略的な対応を進めていく考えだ。

 

(3)基幹事業の収益拡大:サービス機能の拡充と高度化
2021年1月、新関西ロジスティクスセンター(LC)が稼働を開始した。西日本を中心とした基幹物流拠点として配送体制の更なる効率化を図る。

 

旧尼崎LC及び東大阪LCを廃止し新設した同LCは主要な納品先である大阪市内のみならず、全国への幹線輸送を可能にするため高速道路に近い良好なロケーションである大阪市淀川区加島に建設した。
建物は地上4階建て、1万1,000坪以上におよぶ倉庫面積は、従来と比べておよそ1.6倍。容積はおよそ2倍と大きく拡張。同社の倉庫坪数の全国合計は66,000坪から東京ドーム5個分に相当する71,400坪に拡大した。

 

新関西ロジスティクスセンター(LC)では従来のLCにはないレベルでの「自動化・省人化・省力化」を実現。
GTP(商品棚を作業者の下に運ぶ無人搬送ロボット)、AGV(無人搬送車)などの最新マテハンの導入により、人的作業を約25%削減することができた。

 

なお、移転後の自社所有の旧尼崎LC、中部LCIIIは賃貸化し、2022年より収益貢献する計画である。

 

(4)次世代事業の収益化:海外セグメント
①米国Koroseal社
「デザインポートフォリオの改善と効率化:自社製造壁紙への集中」「新商品・デザインの発売」「マーケティングの全面的見直しと改善」「幹部の交代」という方針を継続的に実行していく。

 

②中国・東南アジア市場での事業体制再編
◎東南アジア
2017年度に買収したGoodrich Global Holdingsはサンゲツ70%、創業者30%の持分で、Goodrich Global Holdingsの下にGoodrich香港、Goodrich香港の下にGoodrich中国があるが、これを以下のように再編する。

 

*創業者より30%の持分を買い取り、Goodrich Global Holdingsを100%子会社化した。
*シンガポール、マレーシアに次いでベトナムにも現地法人を設立。タイにもGoodrich Global Holdingsの100%子会社を別途設立した。
*ドバイからは撤退する予定。

 

サンゲツの完全子会社となったシンガポールのGoodrich Global Holdingsが、ベトナム、シンガポール、マレーシア、タイの100%子会社を通じてインドシナ半島を事業基盤として迅速かつ的確に事業活動を展開する。

 

◎中国
シンガポールのGoodrich Global Holdingsの下にGoodrich Global香港があり、Goodrich Global香港が中国各社を保有しているが、以下のように再編する。

 

*Goodrich Global香港をサンゲツの100%子会社とした。
*その上でGoodrichの中国の事業と山月堂(上海)の事業を統合し、新会社とする。今期第3四半期を予定している。
*蘇州の倉庫保有会社は売却の上、撤退する予定。

 

 

 

(同社資料より)

 

(5)次世代事業の収益化:専門能力拡充によるスペースクリエーション事業の展開
サンゲツのスペースクリエーション事業部ではデザイナー、現場管理者など専門人材の採用をすすめているほか、アライアンスによる工事対応範囲の拡大など事業体制を強化している。
また、エクステリア子会社サングリーンにもスペースクリエーション事業本部を設立し、デザイナー、施工管理を始めとした人員を強化。専門商社から転換し、バリューチェーンにおけるより強いポジションを構築する。

 

内装のサンゲツ、外装のサングリーンが連携し、内装・外装を統一した空間デザインを提案し、内装・外装セットでの受注を目指している。
昨年、サンゲツグループ スペースクリエーション担当役員を採用した。インテリア・エクステリアを通じたスペースクリエーション事業の更なる強化を図る。

 

【4-4 資本政策・株主還元】

(1)配当
前述の通り、22年3月期の配当は前期比0.50円/株増配の58.50円/株を予定している。

 

(2)株主還元
21年3月期は27万9,600株の自己株の取得を行い、株主還元総額は39億3,000万円。総還元性向は82.4%。

 

(3)資本配分計画
中期経営計画開始前2020年3月末におけるキャッシュ同等物は368億円。中計期間3カ年で営業キャッシュ・フローを280~300億円生み出すことを目標としている。

 

その資金配分計画は以下の通り。
*成⻑投資:200~260億円
*株主還元:170~190億円
*中計最終期末キャッシュ同等物:250~300億円

 

この結果、借入金は資金需要の多寡により50億円程度の借入減から100億円程度の借入増となると計画している。

 

【4-5 ESGの取り組み】

同社は自社の社会的価値を、「みんなで、いつまでも、楽しさあふれる社会の実現」と定義し、それに基づいてESGについて様々な取り組みを行っている。

 

(1)地球環境への負荷低減
◎GHG排出量削減
2020年にGHG(グリーンハウスガス)排出量の削減目標を発表しているが、その後、日本政府が「2050年カーボンニュートラル実現」を宣言したこともあり、修正を検討中である。
単体では2030年にカーボンニュートラルゼロ、グループ全体では新たに、21年3月に壁紙製造工場を有するウェーブロックインテリアがグループインしたことから2030年での減少幅を検討中。近々に発表する予定である。

 

(同社資料より)

 

◎見本帳リサイクルセンター開設
見本帳は同社ビジネスにとって最も重要なアイテムで年間150万冊を発行しているが、数年で廃棄となる見本帳を発行する責任を認識し、その回収・リサイクルを行う見本帳リサイクルセンターを2021年3月に開設した。
障がい者雇用の場としてダイバーシティの推進にも寄与する。
初年度の今期は年間5万冊、来期23年3月期は年間13万冊をリサイクルする計画だ。

 

(2)人的資本
「多様な人材が活躍する組織」を目指し、以下の実績を上げた。

 

①健康経営推進室の設立
2020年4月、「安全・健康・快適で働きやすい職場環境の確保」「心身の健康づくりに向けた推進体制の充実」を図るため、健康経営推進室を設立した。

 

②厚生労働省委託事業「がん対策推進パートナー賞」を受賞
2020年度「がん対策推進企業アクション」における「がん対策推進パートナー賞(治療と仕事の両立部門)」を受賞した。仕事と治療の両立に関するセミナーの開催等を通じ、安心感のある職場づくりに取り組んでいる点が評価された。

 

③PRIDE指標 シルバー認定を3年連続で取得
任意団体「work with Pride」によるLGBTQへの取り組み評価指標「PRIDE指標2020」で、3年連続シルバー認定を取得した。

 

5.安田社長へのインタビュー

安田社長に、前期決算の振り返り、中期経営計画の進捗状況などについて伺った。

 

【5-1 21年3月期決算について】

インテリアセグメントの各商品において市場全体が減少する中、当社の減収幅はそこまでにはならず、結果的にシェアは上昇したが、プラスとなってはいない点は満足できていない。
市場が縮小する中でも、当社は売上・利益を着実に伸長させていくためには中期経営計画であげている諸施策を確実に実行していかなければならないと改めて認識している。

 

原材料価格の上昇もあり、価格改定を実施することとした。2014年、2018年に次いで3回目の価格改定となる。
商品の安定供給と物流サービスレベルの維持によりお客様にもメリットを提供することができることから、十分ご理解いただけると考えている。

 

21年3月期から新セグメントとしたスペースクリエーション事業は増収増益と好調な立ち上がりだ。子会社フェアトーンの売上高はM&A当時の10億円が前期は50億円まで伸長している。同社の高い施工能力とサンゲツの営業力のシナジー効果の現われであり、「スペースクリエーション企業」を目指す当社にとって非常に良いM&Aだったと認識している。

 

【5-2 経営戦略:中期経営計画の進捗について】

「値上げしても数量シェアを逸失しない体制作り」のカギは、代理店のみでなく、最終的に当社製品を使用することを決定する先に、価格だけではないメリットを十分に提供できる提案をすることだ。
代理店の利用は効率的なボリュームの拡大というのメリットはある一方、市場そのものが構造的に縮小傾向にある中ではバリューチェーン全体に対する掌握力を強めることが欠かせない。
「モノの販売」だけではなく、空間・コトもデザインし販売する提案をすることにより、当社をなくてはならない存在と認識してもらうことが必要だ。

 

ウェーブロックインテリアの子会社化は、需給がタイトな量産壁紙の安定した供給体制構築という点で非常に大きな資産を入手できたと思っている。
量産壁紙の収益性はこれまでも上昇しているが、製販一体化により供給量を拡大させながらシェアを取りつつ、収益性の更なる向上も期待できる。予定している価格改定も寄与することとなるだろう。
状況を見ながら能力増強や、一般壁紙についての生産技術の改善などの投資も考えていきたい。

 

新関西ロジスティクスセンター(LC)に導入した自動化・省人化システムは、スペースの関係もあり、動線や現在の機械の位置を変更するといった作業が必要とはなるが、首都圏ロジスティクスセンターなどでも導入していきたい。
今回の新関西ロジスティクスセンター(LC)の稼働で旗艦センターと地域センターは整ったので、今後は四国・北陸・広島・静岡などでサテライトセンターが必要と考えている。サテライトセンターは在庫拠点というよりも、荷の積み替えや量産品のカットなどを行うもので、よりきめ細かい配送体制を構築するために必要だ。
中期経営計画(2020-2022)【D.C.2022 】自体は昨年発表したものだが、ウェーブロックインテリアの子会社化、新関西ロジスティクスセンター(LC)の稼働など、従来からの取り組みが顕在化してきており、着実に進捗している。
デザイン力を重視した「スペースクリエーション企業」を目指して今後も各施策を着実に進捗させていく考えだ。

 

6.今後の注目点

21年3月期は減収減益ではあったが、前期(第3四半期)比で減収減益見通しであった第4四半期(1-3月)は売上・利益とも予想を上回り、結果として前期比増収増益となった。第2四半期(7-9月)をボトムに回復傾向にあるようだ。この傾向が22年3月期も継続するか、四半期ごとの推移を見ていきたい。
同社では、市場全体がマイナスの時でも、着実に売上を伸ばすことのできる体制作りを目指しており、ウェーブロックインテリアの子会社化はその観点からは大きな一歩となろう。
好調なスペースクリエーションセグメントの寄与、海外事業の組織再編効果の発現などを注目していきたい。

 

<参考1:長期ビジョン【DESIGN 2030】と中期経営計画(2020-2022)【D.C. 2022】>

<Sangetsu Group 長期ビジョン【DESIGN 2030】>
安田社長が創業家以外初の経営トップに就任した2014年以降、経営体制、ガバナンス体制、仕事のやり方、社外とのかかわり方など、様々な変革に取り組み、同社は大きく変化・変容してきた。
しかし、事業そのものは、内装材料の販売という事業モデルから変化しておらず、この事業モデルそのものの変革が必要であると認識している。
そのためには、目指すビジョンを明確にし、未来の目標を明確に意識しながら、確実に諸施策を実行していく必要があると考え、「Sangetsu Group長期ビジョン【DESIGN 2030】」を設定した。

 

【DESIGN 2030】は2030年のありたい姿をデザインするという意味。
DESIGNのそれぞれのアルファベットが、目指すべき仕事の内容を表している。

 

(同社資料より)

 

(1)目指す姿:「スペースクリエーション企業」

現在有するモノや商品のデザイン力、営業力、物流力をベースに、新たにスペースや空間を構想・デザインし、提案する能力を獲得して、新たなスペースや空間を創造する企業を目指していく。

 

(2)長期ビジョン達成に向けて

長期ビジョンの達成に向けては、経営の基本を「デザイン経営」とし、デザインによるブランド価値の向上と事業転換を目指す。また、経営・事業の基盤に、「多様性のある専門人材」と「事業関連データの連携と活用」を位置付け、「現場力と多様性ある専門人材が活躍する組織」、「DATAによる事業の効率化と転換」を実現させる。
主要機能としては、従来のモノを売る機能から、サービスを売る機能への完全な転換を目指す。
また、事業のエリアは、北米、日本、中国、東南アジアを中心とした環太平洋地域とする。
こうしたアプローチにより、「スペースクリエーション企業」へ転換し、同時に社会的価値の実現にも取り組んでいく。

(同社資料より)

 

(3)デザイン経営

デザイン経営の考え方は以下の通り。

 

『サンゲツグループは、デザインによる提供価値の拡大・向上を実現し、事業を転換することを目指します。

 

商品・空間自体の美しさや機能、コーディネーションを追求するだけでなく、さまざまな空間での人々の過ごし方、生活・体験・行動を考え、人と空間とのかかわりを構想し、デザインし、提案します。

 

モノのデザイン、空間のデザインに加え、コトのデザインを考え、提案することにより、ブランド価値を向上し、従来のモノを売る会社から、空間を創造しコトを提案・実現する会社へ転換することを目指します』

 

(4)実現を目指す社会的価値

実現を目指す社会的価値を「Inclusive(みんなで)、Sustainable(いつまでも)、Enjoyable(楽しさあふれる)社会の実現に貢献します」としており、Inclusive、Sustainable、EnjoyableのそれぞれにおいてSDGsの目標を掲げている。

 

平等で健康的なインクルーシブな社会の実現

 

サンゲツグループは、健康で快適な空間の創造を通じ、ジェンダーの多様性が尊重される、格差のない平等で健康的でインクルーシブな社会の実現に貢献します。

 

地球環境を守るサステイナブルな社会の実現

 

サンゲツグループは、サプライチェーン全体の環境負荷を低減し、長く使い続けられる空間の創造を通じ、ストック建築物の有効活用と共に、地球環境を守るサステイナブルな社会の実現に貢献します。

 

より豊かでエンジョイアブルな社会の実現

 

サンゲツグループは、公平・安全・安心・効率的で人権を尊重する働き方により、さまざまな文化・生活に応じた空間の創造を通じ、よりエンジョイアブルな社会の実現に貢献します。

 

3つ目のEnjoyable については、SDGsの基本的な理念「誰も取り残さない」を踏まえ、自社の事業を考慮し、一歩進んで、より豊かでエンジョイアブルな社会の実現を社会的価値の一つとして挙げることとした。

 

(5)数値目標

10年後の2030年3月期「売上高2,250億円、営業利益185億円」を目指す。

 

 

中期経営計画(2020-2022)【D.C. 2022】
この長期ビジョン達成に向けたファーストステップが3ヵ年の中期経営計画「Design & Creation D.C. 2022」である。

(1)前中期経営計画「PLG2019」のレビュー

最終2020年3月期は、売上高1,612億円と過去最高を更新し、営業利益は前期比57.2%増92.6億円と大幅増益であった。一方で、海外事業での減損損失計上により連結純利益は同6割減の14.3億円。営業利益増、CCC改善によりROICは改善したがROEは低迷した。

前中期経営計画で定めた諸施策である「商品調達・営業・ロジスティクス等の強化」「海外事業展開」「人材関連施策」「ESG施策」等は着実に実行した。

セグメント毎の振り返りは以下の通り。

*インテリアセグメント

壁紙、住宅・店舗用床材、廉価版カーテンは、見本帳改善、代理店協業、受注・出荷・配送サービス強化によりシェアアップ。非住宅用床材、リアテック、ガラスフィルムは地域・市場・商品営業組織によるスペック営業の実行が不十分でシェアは横這い・縮小。要改善。市場・顧客・商品・出荷・配送に関する膨大なDATAを活用できていない。

 

*エクステリアセグメント

17/3期から13億円の増収となったが、施工力と配送力の質・量両面での不足、事業領域の限定、首都圏におけるプレゼンスが課題である。

 

*海外セグメント

Koroseal社の不振を中心に、各国・個別市場での経営体制、ビジネスモデル、ブランディングが脆弱である。

海外事業の収益化、事業拡大は重要課題である。

 

*スペースクリエーションセグメント

2021年3月期の新設セグメント。2017年1月に買収したフェアトーンでは、関西・東京事業の拡大、中部地域におけるサンゲツの施工部門との連携、デザイナー採用、総合工事力の強化に取り組んだ。2019年4月にサンゲツスペースクリエーション事業部を設立した。緒に就いたばかりであり、専門能力の強化や規模の拡大が課題。

事業基盤、事業能力、機能は整備、強化、拡充されたが、前中期経営計画中の営業利益増はほぼ日本市場での価格改定によるもので、量的拡大は限定的であった。施策効果は道半ば。

従来の施策を更に徹底実行することに加えてデータの活用や、より広い業態での事業の拡大が課題である。

GHGガス排出削減率の目標(35%)達成、離職率(入社3年以内)の低下、女性管理職比率向上およびワーキングマザー数増加、健康経営のための施策実行、ESG評価レーティング向上、障がい者雇用の推進など、ESG関連のKPIは着実に向上している。

減損損失計上により期末自己資本は目標金額を割込んだ。一方、3年間の総還元額は248億円で、総還元性向は260.5%であった。期中に600万株以上の自己株式の取得を行い、全株消却した。

 

*定量目標の達成状況

 

2019年度中計目標

2019年度実績

概要

売上高

1,650億円

1,612.6億円

若干未達も過去最高を更新

当期純利益

80~100億円

14.3億円

米国Koroseal社関連の減損損失計上

ROE

8~10%

1.5%

財務レバレッジ、総資産回転率は改善も、純利益低迷

CCC

75~60日

72.4日

売上債権回転期間短縮、仕入債務回転期間長期化、棚卸資産回転期間は長期化

ROIC

-

7.9%

16年度の7.2%を上回る。

EBITDA

-

134.9億円

16年度の112.0億円を上回る。

資本政策

 

 

 

自己資本

1,050~1,000億円

932.4億円

17/3期末の1,103.7億円からの削減

成長投資

100~250億円

62億円

未達。M&A案件未成立。

株主還元

250~330億円

248億円

ほぼ計画通り

期末現金

250~300億円

368億円

成長投資未達により計画を上回る。

 

(2)中期経営計画(2020-2022)【D.C. 2022】の概要

①位置付け・基本方針
【D.C. 2022】は、長期ビジョン「DESIGN2030」の最初のステップである3年間の役割を担う中期経営計画。
スペースクリエーション企業への転換を目指す3年間であり、「基幹事業の質的成長による収益の拡大」「基幹事業のリソースに基づく次世代事業の収益化」「経営・事業基盤の強化」「社会的価値の実現」の4つを基本方針とし、「基幹事業の収益拡大」と「次世代事業の収益化」による成長を目指す。

 

(同社資料より)

 

②売上・利益の数値目標
「2023年3月期 売上高1,720億円、営業利益120億円」としている。
セグメント別には、量的には引続きインテリアセグメントが中心となるが、海外セグメントの底入れ・回復、新セグメントのスペースクリエーションセグメントの立ち上がりがカギとなる。

 

 

2020/3期

2023/3期

CAGR

売上高

1,612.6

1,720.0

+2.2%

  インテリア

1,220.9

1,270.0

+1.3%

  エクステリア

160.8

170.0

+1.9%

  海外

198.0

210.0

+2.0%

  スペースクリエーション

41.6

70.0

+19.0%

営業利益

92.6

120.0

+9.0%

  インテリア

93.2

105.0

+4.3%

  エクステリア

6.4

8.0

+7.7%

  海外

-9.3

4.0

黒字転換

  スペースクリエーション

1.8

3.0

+4.9%

*単位:億円。CAGR(年平均成長率)はインベストメントブリッジが計算

 

③各基本方針の概要
③-1 基幹事業の質的成長による収益の拡大
◎インテリアセグメント
*市場環境
住宅市場(新築、リフォーム)、非住宅市場(新築)とも、ほぼ横ばい状態にあり今後も量的な拡大は大きく望めないが、非住宅のリニューアル市場はストック物件増加に伴い工事は拡大すると見込んでいる。

 

*4市場における基本戦略

市場

基本戦略

重点施策

住宅:新築

量の縮小の中、利益率改善による総利益額の拡大を目指す。

代理店協業深化、売れる見本帳開発、受注・出荷・配送サービスの拡充・高度化、商品デザイン力強化、戦略的調達強化

住宅:リニューアル

シェア向上、利益率改善を目指す。

代理店協業深化、スペースデザイン力の強化、受注・出荷・配送サービスの拡充・高度化

非住宅:新築

シェア向上、利益拡大を目指す。

経営資源の重点配分、戦略的調達強化、デザイン力の発展的強化

非住宅:リニューアル

数量増を目指すと同時に、高価格商品投入により、利益率も改善させる。

経営資源の重点配分、コトのデザイン力強化

 

*3つの施策
(1)デザイン力の発展的強化と戦略的調達の推進
◎デザイン力の発展的強化
従来の商品デザイン力の強化に加え空間デザイン力の強化とコトのデザイン力強化を進める。
3つのデザイン力の相互作用を通じて、総合的なデザイン力を発展的に強化させる。

 

デザインに関してはこれまでも、各事業部の商品開発課の商品デザイン、コントラクトデザイン室の非住宅関係の空間デザインの提案、ショールームにおける住宅関連を中心としたコーディネーション提案を行っているが、加えてスペースクリエーション事業部では様々な形でスペースのデザイン提案を行っている。またフェアトーンでも、デザイナーを採用し、デザイン力を持った施工工事の拡大に努めている。
営業組織においても、設計会社、デザイナー、インテリアコーディネーターとデザインに関する議論を行っており、情報も収集されている。このように社内の各部署で、デザインを重要な課題として捉え、デザイン力の強化に複合的に取り組んでいくが、そのベースとして全社のデザイン戦略を明確にし、市場の求めるデザイン・機能・コストも含めてデザイン戦略を立てた上で、デザイン力全体を発展的に強化していく。

 

◎戦略的調達
同社の商品は、商品数・デザイン数の多少、取引ロットの大小など多様な商品から構成されている。
このうち、商品デザインの数の多い商品、取引ロットの小さい商品は、デザインの多様性を重視し、仕入れ先の分散を進め、多様な仕入れ先からデザイン提案等を受けることが重要である。
一方、デザイン数・商品数が少なく、取引ロットの大きい商品は、コスト競争力を強化していくこと、特定のメーカーや仕入先とのアライアンスをさらに強化していくことが重要であると考えており、商品の特性・状況に応じて調達の方針を明確にし、戦略的調達を推進する。

 

(2)サービス機能の拡充と高度化
同社での受注・出荷・発送の流れは

 

受注(内装施工業者から代理店を経由) → 出荷(代理店向け) → 配送(代理店から施工現場、もしくは同社が直接配送)

 

となっており、受注から出荷までの時間差は、一般的に2時間から4時間で、この間に10センチメーターもしくは枚数単位で商品を用意して出荷している。この出荷に基づいて、内装施工業者や顧客が発注してから、当日中ないし翌日までに商品を届けるクイックデリバリーを実行している。
一方、同社が仕入先(メーカー)に発注して、メーカーが生産を仕上げるまでには、数週間から数カ月かかる。

 

このような状況の下で、素早く受注し、素早く出荷・配送するというサービスが重要な機能となっているが、一方で施工については顧客である内装施工業者の施工仕事量は、季節における変動が大きく、施工力の過不足も発生する。
施工がタイトな時期には、施工応援の要請があり、これに応じて代理店、また同社が直接、施工の支援を行うことも多く、これも重要な機能と位置づけている。
こうした受注、在庫・出荷、配送、施工、全体のサービスを、人手不足の中でも拡充・強化することが同社サービスの強化、事業の強化につながると位置づけ、今回の中計期間中も、各種施策の実行が必要である。

 

(受注)
受注における社員関与率は前中期経営計画中にBPO導入によって78.7%から大幅に低下し、その後もEDIでの受注比率の拡大、オンライン受注の拡大に伴って、社員関与率は13.3%へと、BPO比率も46.4%まで低下している。
今中期経営計画中にオンラインの比率を40.3%から62%まで引き上げると同時に、BPO比率を32%まで、社員関与率を6%まで低下させる。AIの活用も検討している。

 

(出荷)
前中期経営計画中には全国の出荷設備の更新、新設・統合を行った。
2021年3月、新関西LC(ロジスティクスセンター)が稼働を開始した。同社にとってはいままでにはない無人化・省人化設備を導入した。在庫・出荷に関しての持続性を確保するために、今後さらに首都圏および中部圏においても省人化設備を導入する計画である。

 

(配送)
前中期経営計画中には、東北を中心として配送体制の整備を進めた。
今後も、北関東、静岡、北陸、関西、九州などで地域配送体制を拡充すると同時に、重量物の配送も、大都市圏を中心に整備していく。

 

(施工)
フェアトーン社で、約650人の施工技能者が施工に従事。この他、サンゲツ単体で依頼している施工技能者、パートナーの施工事業者等を合わせると、現在、約1,000人の内装施工技能者を有している。
今中計中にさらに内装施工力を強化・拡充すると同時に、総合施工力の向上、施工ネットワークの拡充にも努める。

 

(3)代理店との協業深化と営業体制の強化
代理店経由の販売比率が、16年3月期の57.7%から21年3月期には67.2.%へと上昇している。
代理店との協業強化は、効率化および量的拡大の上で重要であり、代理店との協業を量的・質的に強化し、最終23年3月期までに代理店経由の販売数量を70%とする計画だ。
また、情報・DATAの共有・活用による効率化と分業もさらに推進していく。

 

課題と認識している営業体制については、営業人員数を850~890名とほぼ現在の人員数を維持したまま、非住宅市場でのスペック活動に社員を重点的に投入し、非住宅市場でのスペック力強化を図る。
デザイン力を活用した営業強化にも取り組む。
非住宅顧客へのデザイン営業の拠点であるコントラクトデザイン室が、非住宅を中心としたスペースデザイン及び特注デザインを提案するほか、ビルダー・ハウスメーカー・リフォーム事業者へのデザイン営業の拠点であるショールームは、住宅を中心としたデザインコーディネーション提案に注力する。

 

◎エクステリアセグメント
川下市場の営業展開を強化し、首都圏での事業拡大を行うと同時に、景観工事へ進出する。
また、既存事業の機能として、重量物を中心とした配送体制、また施工の強化にも取り組む。

 

③-2 基幹事業のリソースに基づく次世代事業の収益化
*海外セグメント
各国において、強固な経営基盤の構築を行うと同時に、最適モデルの追求と徹底した現地化、ブランディングとプロダクトポートフォリオの強化を図る。

 

◎強固な経営基盤の構築
前期減損を計上したKoroseal社、巨大な東南アジア市場攻略の拠点となるGoodrich社中心に新経営陣の招請、人員強化、新拠点設立を進める。

 

(同社資料より)

 

◎最適モデルの追求と徹底した現地化、ブランディングとプロダクトポートフォリオの強化
最適モデルを追求すると同時に、内装材料ビジネスにはローカルの力が重要なため、徹底した現地化を進める。
また、プロダクトポートフォリオ強化については、各国市場の要求する商品を強化すると同時に、ブランディングもさらに強化する。
ブランディングに関しては、米国においてはKoroseal、カナダにおいてはMetro、中国においてはサンゲツとGoodrichの2ブランド、香港においてはGoodrich、ベトナム、タイにおいてはGoodrichとサンゲツ、マレーシア、シンガポールにおいてはGoodrichブランドを強化する。

 

(同社資料より)

 

*スペースクリエーションセグメント
スペースクリエーション企業を目指すにあたり、スペースクリエーションセグメントが先鋒となるが、同セグメントに限らず全社を挙げて、スペースクリエーション企業を目指す。
サンゲツには顧客基盤(ホテル・宿泊・オフィス・商業・福祉など)、非住宅の空間デザインを提案するコントラクトデザイン室の約60名のスタッフおよび社外インテリアデザイナーとの連携によるデザイン力、フェアトーンの内装仕上げ施工力など、既存の基幹事業において豊富な知見と強みを有している。
これに、スペースデザイン力・発想力・構想力・提案力・コンサル力、木工・照明・電気を対象とする総合的な施工力、施工管理力の強化といった専門能力の獲得・強化を進め、顧客にとって最適な空間を創造・提供し、スペースクリエーション事業を拡大していくのが、スペースクリエーションセグメントの役割である。

 

③-3 経営・事業基盤の強化
◎業務執行の能力強化と効率化
教育研修の拡充、高度専門人材の採用拡大、現場力と専門能力の強化、多様性に富んだ雇用推進などで業務執行の能力強化を図るとともに、業務改革・テレワークの常時実施・社内での定期的かつ密接な意思疎通による業務執行の効率化も進める。
これら現場力と専門能力強化のために職責内容を重視した人事制度・給与制度への変更にも着手する。
また、引き続き健康経営の推進、エンゲージメントの向上、インクルージョンある雇用促進にも取り組む。

 

◎DATAの高度活用体制の整備
同社では、多数・多様な顧客から多数・多様な商品の発注を受け、大量の出荷を行っており、多様かつ膨大なDATAが日常的に発生している。
これらは「受注関連DATA」「出荷・配送関連DATA」「営業関連DATA」に分けられるが、このうち、「受注関連DATA」「出荷・配送関連DATA」は、現在、代理店などとの連携により入手しているが、代理店の出荷・配送関連DATAは未入手である。また、営業関連のDATAに関しても構造化されていない。
そこで、将来的にDATAを活用した業務の可視化や効率化、効果的なマーケティングの展開、各事業における事業転換を可能にするためには、未入手DATAをさまざまな努力を通じて入手して構造化DATAとすることおよび、非構造化DATAである営業DATAを質的DATA・定性DATAとすることによって、DATAを連携・分析することが必須である。
今回の中期経営計画期間中に少しずつでも着実にDATAの高度活用体制整備を進めていくことを目標としている。

 

③-4 社会的価値の実現
ESG課題として、地球環境、人的資本、社会資本、ガバナンスの4グループに分けて課題を抽出し、マテリアリティを明確にした上で諸施策を立て、実行していく。
ESGの諸課題抽出、諸施策の実行にあたっては、長期ビジョンで定めた「社会的価値の実現」「Inclusive、Sustainable、Enjoyable」「みんなでいつまでも楽しさあふれる」という3つの価値の実現とリンクさせた上で、実行する。

地球環境

「地球環境への負荷低減」

①事業活動における環境負荷の低減

・GHG排出量の削減

・エネルギー使用量の削減

・廃棄物総廃棄量の削減

・リサイクル率向上

 

②サプライチェーンにおける環境負荷の把握と低減

・サプライヤーごとのGHG原単位の把握と、調達活動での考慮

 

③ロングライフ商品の拡充

・高耐久性商品の開発

・長期継続品の拡充

 

④見本帳の回収・リサイクルの拡大

・回収リサイクル体制の構築と拡大

人的資本

「多様な人材が活躍する組織」

①社員の健康と能力開発

・社員の健康・安心・安全の確保

・業務変革による働き方改善の推進

・きめ細やかな人事マネジメントに基づく能力開発

・社員エンゲージメントの向上

 

②ダイバーシティ&インクルージョンの推進

・女性活躍推進

・障がい者雇用の拡大

・グループ内での人材交流を含む外国籍人材の増員

社会資本

「サプライチェーンの安心・安全・魅力の向上」

「コミュニティ参画」

①商品安全性の向上

・原料の見直し

 

②品質安定性の向上

・商品クレームの削減

 

③環境・人権・労働安全衛生を考慮した調達活動の推進

・調達先との長期安定的な取引関係の構築

 

④取引先と一体となった働き方の改善

・バリューチェーンを通じての業務体制の変革・改善

 

⑤コミュニティへの積極的な参画

・児童養護施設リフォームでのスペースクリエーション

・発展途上国の子どもたちに向けた支援活動

・社員の積極的な参加

 

⑥インテリア文化の向上と芸術支援

・サンゲツ壁紙デザインアワードの継続開催

・各種芸術イベント支援

ガバナンス

「コーポレートガバナンスの強化」

①取締役会の実効性強化

・取締役会の多様性推進

・取締役会の独立性確保

 

②指名・報酬委員会の実効性強化

・時間軸かつ明示された資格要件に基づく指名の検討

・報酬決定プロセスの客観性確保と内容開示

 

③コンプライアンスの徹底

 

④ステークホルダーとの責任ある対話の実施

 

③-5 定量目標
経済的価値、社会的価値、資本政策の3点について定量目標(KPI)を掲げている。

 

(1)経済的価値:2023年3月期目標

連結売上高

1,720億円

連結営業利益

120億円

連結純利益

85億円

ROE

9.0%

ROIC

9.0%

CCC

65日

 

 

(2)社会的価値:2023年3月期目標

1.地球環境

事業活動(Scope1&2)における環境負荷の低減

①GHG排出量

 

SBT:WB 2度水準達成(※)

30.0%削減(2018年度比)

*2031年3月期目標

②エネルギー使用量

4.0%削減(2018年度比)

③廃棄物総廃棄量

4.0%削減(2018年度比)

④リサイクル率

83.0%以上

2.人的資本

(1)社員の健康と能力開発

①特定保健指導実施率、がん検診受診率、有所見率、メタボ率の改善

②非喫煙率80.0%以上

(2)ダイバーシティ&インクルージョンの推進

①女性管理職比率

20.0%以上

②障がい者雇用率

4.0%以上

3.社会資本

コミュニティへの参画

①児童養護施設リフォームでのスペースクリエーション

年間30件

②社員の積極的な参加

マッチングギフト:7,000 S-mile

※:世界の気温上昇を産業革命前より2°Cを十分に下回る水準(Well Below 2°C:WB2°C)に抑え、また1.5°Cに抑えることを目指すもの)が求める水準と整合した、5年〜15年先を目標年として企業が設定する、温室効果ガス排出削減目標。

 

(3)資本政策
◎資本政策

1.自己資本を900〜950億円の範囲で維持する。

2.3年間の総額で総還元性向を、ほぼ100%とする。

3.自己株式取得および配当に関しては、安定増配を念頭に、新型コロナウイルス感染症の業績に与える影響を見極め都度決定する。

 

◎資本配分政策・未定としていた資本配分に関して、3年間の業績見通しが明確になり、2021年5月に決定。

 

中期経営計画(2020-2022)[ D.C.2022 ]期間中の資本配分政策

資金創出・調達

資金配分

2020年3月末 保有現金同等物 ※

368億円

成長投資 ※

200~260億円

3年間の営業キャッシュ・フロー

280~300億円

株主還元

170~190億円

3年間の借入金

△50~100億円

2023年3月末 期末現金

250~300億円

※現預金と株式以外の有価証券

※M&A、マイナー投資(アライアンス強化)、設備投資(物流・DXなど)

 

<参考2:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態、取締役の構成

組織形態

監査等委員会設置会社

取締役

7名、うち社外4名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2021年6月25日

 

<基本的な考え方>
当社は、「誠実」を社是とし、企業価値の向上を図るため全てのステークホルダーとの良好な関係を築き、長期安定的に発展していくことを目指しています。
その実現のため、経営の透明性、迅速性、効率性を基盤としたコーポレートガバナンスの強化が重要な経営課題であると認識しています。
当社は、社外取締役の経営参加による取締役会の監査・監督機能を強化することをねらいとして、監査等委員会設置会社へ移行しています。
このガバナンス体制のもと、更なる企業価値の向上に努めていきたいと考えています。

 

<実施しない主な原則とその理由>
同社はコーポレートガバナンス・コードの各原則を実施している。

 

<各原則に基づく主な開示>

原則

開示内容

【原則1-4. いわゆる政策保有株式】

1.政策保有に関する方針

事業戦略上、新たに関係を強化すべき企業、また、取引先として継続して関係を強化すべき企業などの観点から総合的に判断して中長期的に保 有する政策保有株式を決めております。保有株式については毎年、保有にかかるコストとリターンを確認し、中長期的にも保有意義がなくなったと 判断した場合には株式の売却を行う方針であり、それに基づいた運用をしております。取締役会における検証の結果、保有継続を決定した銘柄に ついては、有価証券報告書の「株式の保有状況」欄で開示します。 2.議決権行使の考え方 投資先企業の経営方針を尊重した上で、様々なチャンネルを通じた対話やコミュニケーションを行い、その企業の中長期的な企業価値の向上、株 主還元姿勢、コーポレートガバナンスやCSRへの取組みなどを総合的に判断するとともに、議案の内容が当社の保有目的に適合するか、又、当 該企業の価値向上につながるかを個別に精査した上で賛否の判断をしています。

【原則5-1. 株主との建設的な対話に関する方針】

 

・当社のIR活動は、社長執行役員が統括しています。 ・株主との対話を合理的に推進し且つ機動的なIR活動を実践するために、総務部広報IR課を設置しています。 ・国内・海外機関投資家、アナリストとの対話は要望に応じて社長執行役員、担当役員、総務部広報IR課が面談しています。 ・IR活動は広報IR課を専門部局としますが、各事業本部、財務経理部、社長室経営企画課などの各部門が連携し、より実効性の高い情報提供に 努めています。 ・決算発表、投資家向け決算説明会、個人投資家向けIRイベントに参加し説明会を開催しています。なお、2021年3月期決算説明会については、 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、ウェビナー開催とし、双方向で質疑応答も実施しました。なお動画は後日当社WEBサイトにて配信して おります。 ・2017年より株主総会後の7月中旬に当社品川ショールームにおいて株主向け会社説明会を実施し、主に関東地区の個人株主様への会社説明 の機会を設けています。本説明会には取締役全員が出席し、社長執行役員が会社説明を行っていますが今期は、新型コロナウイルス感染拡大 防止のため、株主向け会社説明会を中止しております。 ・各イベント等で使用した説明用資料や対話の様子をウェブサイトに公表しています。(必要に応じて英語版も公表) ・各年度において統合報告書を作成し、ウェブサイトには日本語版と英語版を公表しています。 ・直接的な対話やウェブサイト上の資料や決算説明会の動画、株主総会の動画の公開を通じて、株主に対し当社の経営戦略、事業環境、事業進 捗、財務情報などに関して理解を深めて戴ける活動を実践しています。 ・株主や投資家との対話を通じて得られたご意見は広報IR課を通じて経営の改善に役立てています。 ・インサイダー情報の管理の取扱いについては、内部者取引等管理規定(インサイダー取引防止規定)に基づき、未公表の重要事実の管理を徹 底し、適切に対応しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

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