ブリッジレポート
(2722) 株式会社IKホールディングス

スタンダード

ブリッジレポート:(2722)アイケイ 2021年5月期決算

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飯田 裕 会長兼CEO

株式会社アイケイ(2722)

 

 

企業情報

市場

東証1部・名証1部

業種

小売業(商業)

代表取締役会長兼CEO

飯田 裕

所在地

愛知県名古屋市中村区名駅3-26-8 KDX名古屋駅前ビル

決算月

5月末日

HP

https://www.ai-kei.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

621円

8,308,000株

5,159百万円

10.1%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

12.00円

1.9%

70.15円

8.9倍

451.96円

1.4倍

*株価は7/28終値。各数値は21年5月期決算短信より。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2018年5月(実)

18,337

898

899

641

86.07

10.00

2019年5月(実)

17,614

431

437

238

31.85

12.00

2020年5月(実)

18,483

590

623

384

52.19

12.00

2021年5月(実)

20,754

705

730

321

42.60

12.00

2022年5月(予)

22,000

880

870

550

70.15

12.00

*単位:百万円、円。予想は会社側予想。2017年12月1日付、2018年4月1日付でそれぞれ1:2の株式分割を実施。EPS、DPSは
遡及して調整。

 

株式会社アイケイの2021年5月期の決算概要などをお伝えします。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2021年5月期決算概要
3.2022年5月期業績予想
4.今後の戦略
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

今回のポイント

  • 21年5月期は2期連続の増収増益となった。売上高は前年同期比12.3%増の207億54百万円と過去最高を更新。前期と比較してBtoC事業で18億11百万円の増収、BtoBtoC事業で3億46百万円の増収、その他で1億15百万円の増収となり、全体では22億71百万円増収。営業利益は同1億15百万円増加し7億5百万円となった。販管費比率は物流費と広告宣伝費の売上比率が増加したことにより47.7%と、前期と比較して2.8ポイントUPしたが、売上総利益率が51.1%と、前期と比較して3.0ポイント向上したため。なお、売上総利益が106億円と初めて100億円を突破した。ただ、当期純利益は、特別損失173百万円を計上したため、前期と比較して16.3%減となった。

     

  • 売上高では、BtoC事業のTVショッピングの「エアヨーン」が前期と比較して13億57百万円の増収、「スピードヒート」も前期と比較して18億22百万円の増収と、それぞれ急拡大。また、利益面では、粗利率の高いPB商品(自社開発品)比率が65.34%と前期比と比較して5.9ポイントUPしたことが寄与した。

     

  • 22年5月期の売上高は220億円と過去最高の更新を目指す。営業利益8億80百万円と3期連続の増益予想。ダイレクトマーケティング(旧BtoC)事業では引き続きTVショッピングへの投資と、リアル店舗での売上増を見込んでいる。セールスマーケティング(旧BtoBtoC)事業ではコロナ特需に落ち着きは見られるが、小売店舗卸の売上再拡大を見込み、ほぼ前期並みを予想。なお、22年5月期よりセグメントの名称が変更になるが中身は変わっていない。配当性向20%を目途としながら、配当金12.00円/株と据え置かれた。予想配当性向は17.1%。

     

  • これまで非開示だった中期経営計画を初めて公表。24年5月期を最終年度とする3ヵ年計画。超高齢化社会が急速に進む日本国内において、シニア層のライフワークを「健康(ヘルスケア)」、「美容(ビューティー)」、「楽しさ(エンターテイメント)」の3つのテーマを軸に、豊かなものにしていく。今後近い将来、アジア諸国が直面する高齢化社会に向けて、高齢化先進国である日本国内でサービスを磨き、アジアマーケットへの展開を加速する。経営指標として24年5月期の売上高250億円、調整後EBITDA19.7億円を目指す。

     

  • 新型コロナウイルス感染症の拡大が第2波、第3波、第4波と立て続けに現れ、個人消費や企業活動が大きく制限され景気失速傾向が強まり、先行き不透明な状況が続いている。実際、22年5月期出足の売上高は前年同月を下回って推移しており、今後の盛り返しに期待したい。世界で唯一の『マーケティングメーカー』というビジネスモデルを極めることを目指す同社だが、現在65%の自社製品比率が100%へと上昇するスピードも見極めたい。

     

1.会社概要

独自のプロモーション戦略で商品の企画・製造・販売・物流を自社で一貫して行うマーケティングメーカー。
雑貨品類・食品類・化粧品類といった商品をTVショッピング、EC、店舗を通じて直接消費者に販売する「ダイレクトマーケティング事業」、生協、通販会社、店舗、海外など多様なルートを通じて販売する「セールスマーケティング事業」、システムの開発・販売などITソリューションを提供する「ITソリューション事業」の3事業を展開。
経営理念に「ファンつくり」を掲げ、全てのステークホルダーにファンになってもらえるグループ経営を目指している。

 

◎業績動向

 

【1-1 沿革】

高校・大学時代を自由な校風の中で過ごし、元来起業家精神が旺盛であった飯田 裕氏(現代表取締役会長兼CEO)は、損害保険会社勤務を経て1982年5月にアイケイ商事有限会社を設立。様々な商材の販売を手掛けていた中で、愛知県生活協同組合連合会の購買担当者の知遇を得て1983年4月に同生協の口座を開設し、職域生協との取引を開始した。
最初の商材である充電式クリーナーのチラシ販売が大ヒットとなったことが契機となり、全国他生協への横展開が進むとともに、取扱商品も増加し、業容は急速に拡大。2001年12月にJASDAQ市場に上場した。
上場に伴う認知度及び信用力の向上もあり百貨店通販や通販会社への商品供給も本格的に始まり、販売先も着実に拡大し、2007年5月期まで25期連続増収を達成した。

 

しかしリーマンショックで成長にブレーキがかかったのをきっかけに、独自のプロモーション戦略で商品の企画・製造・販売・物流を自社で一貫して行う「マーケティングメーカー」への転換を図るとともに、それまでの「BtoBtoC」に加え直接消費者に商品を提供する「BtoC」チャネルも構築し再び成長軌道に回帰した。
2014年9月にはTVショッピング大手である株式会社プライムダイレクトを100%子会社にするなど、M&Aにも積極的に取り組んでいる。

 

【1-2 経営理念】

ファンつくり

21世紀のリーディングカンパニーとなるために追及すべきことは売上高、資本金、社員数の多寡ではなく、100年先の未来を見据えたとき、出来るだけ多くの方に「ファン」になって頂くことが企業としての繁栄に繋がると考え、「アイケイに関わる全ての人たちに『ファン』になって頂く」ことを目標として、「ファンつくり」を経営理念とした。

 

【1-3 事業内容】

(1)セグメント
2022年5月期より同社のビジネスモデルである「マーケティングメーカー」を展開するにあたり、事業内容をより適切に表現するために事業セグメントを「ダイレクトマーケティング(旧BtoC)事業」、「セールスマーケティング(旧BtoBtoC)事業」、「ITソリューション(旧その他)事業」に変更する。

 

(注:21年5月期を旧セグメントで表示)

 

(同社資料より)

 

➀ダイレクトマーケティング(旧BtoC)事業・・・小売り事業
子会社(株)プライムダイレクトが、WEBサイトやTVショッピング枠を通じて直接消費者に商品を提供しているほか、子会社(株)フードコスメが、韓国化粧品ブランドの「SKINFOOD」、「OLIVE YOUNG」を店舗販売している。店舗数は、国内主要都市の駅ビルを中心に2021年5月末現在、直営店18店舗、FC店5店舗の合計23店舗。

 

②セールスマーケティング(旧BtoBtoC)事業・・・卸事業
メーカーとして企画・開発した化粧品、アパレル、靴・バッグ、美容・健康関連商品等を、生協、通販会社、店舗、海外の各ルートを通じて消費者に提供している。

 

(主な販売ルート)

生協ルート

コープさっぽろ、コープ東北サンネット事業連合、コープデリ連合会、パルシステム連合会、東都生協、ユーコープ、東海コープ事業連合、コープきんき事業連合、コープこうべ、コープ中国四国事業連合、コープ北陸事業連合、グリーンコープ連合会、コープ九州事業連合、全国の学校生活協同組合、愛知県生活協同組合連合会、日本生活協同組合連合会など。

通信販売ルート

(株)高島屋、(株)ディノス コーポレーション、(株)セシール、(株)ベルーナ、(株)千趣会、㈱ニッセン、イオンリテール(株)、auコマース&ライフ(株)、(株)エー・ビー・シーメディアコム、(株)J・A・Fサービス、(株)JALUX、(株)JR東日本商事、(株)小学館集英社プロダクション、(株)QVCジャパン、(株)ロッピングライフ、(株)日本文化センター、(株)全国通販、グリーンスタンプ(株)、(株)テレビショッピング研究所、(株)山忠、(株)ライトアップショッピングクラブ、(株)テレビ東京ダイレクト、(株)クレディセゾン、(株)郵便局物販サービスなど。

店舗ルート

バラエティー系

(株)ドン・キホーテ、(株)長崎屋、(株)UDリテール、(株)ロフト、(株)コスメネクスト、(株)東京ドーム、(株)イズミ、(株)東急ハンズなど。

ドラッグ系

(株)マツモトキヨシホールディングス、(株)ツルハホールディングス、(株)クリエイトエス・ディー、(株)アインファーマシーズ、(株)サンドラッグ、スギホールディングス(株)、(株)ココカラファインヘルスケア、イオンリテール(株)、(株)ダイコクなど。

HC系

コメリ(株)、(株)カインズ、など。

家電系

(株)ヤマダ電機、(株)ビックカメラ、(株)ヨドバシカメラなど。

海外ルート

中国、台湾、香港、韓国、シンガポール、ベトナム、アメリカなど

 

③ITソリューション(旧その他)事業
子会社アルファコム(株)が、音声通話録音システム「Voistore」などコンタクトセンター構築に関わるシステムや、ビジネス版LINE「LINE WORKS」、チャットシステム「M-Talk」などを販売している。

 

(2)主な自社開発商品
マーケティングメーカーとして、様々なジャンルの商品を自社開発している。
≪ヘルスケア≫

(同社資料より)

 

≪ビューティ≫

(同社資料より)

 

≪エンターテイメント≫

(同社資料より)

 

【1-4 特長と強み:マーケティングメーカーとしてのビジネスモデル】

同社を特徴づけている最大のポイントは、独自のプロモーション戦略で商品の企画・製造・販売・物流を自社で一貫して行う「マーケティングメーカー」としてのビジネスモデルであろう。
同社のビジネスモデルは以下の3つの機能によって構成されている。

 

 

(1)強力な商品開発・発掘・調達力
幅広い販路から得た情報や30年以上に亘って培ってきた経験を活かし、魅力ある商品を開発・発掘・調達している。
毎週1回「開発承認会議」を開催し、それぞれ7~8名で構成される化粧品、雑貨、食品の各開発チームが、役員や販売担当責任者に対して新商品の提案を行う。チャレンジを貴ぶ同社では各チームが自由な発想の下、毎月平均10以上のアイテムを提案するが、全てが承認されるわけではない。
同社では商品開発について「オリジナリティ重視」、「徹底的な差別化」等を定めた「開発十訓」が定められており、提案された商品はこれを基に厳しく批評されたり、宿題を出されたりするが、こうしたプロセスが開発担当者を鍛え、更なる商品開発力の強化に繋がっている。

 

(2)高いマーケティング力
ヒット商品の開発にあたって大きな力を発揮しているのが「高いマーケティング力」だ。
候補となった商品が実際に売れるのかを多彩な販売チャネルを使ってテストマーケティングを実施。その結果を受け、パッケージ、時期、ターゲット、価格など、様々な点で工夫を加え新たなプロモーションを行うことで、数多くのヒット商品を生み出している。

 

(3)多彩な販売チャネル
上記の多彩な販売先に対し単に商品を提案するのではなく、他チャネルでの成功事例なども合わせ、その販売チャネルで最も売れる売り方や見せ方も提案している。
販売先のニーズやフィードバックにアイケイならではのアイデアを融合させ、日々ブラッシュアップを行っている。
商品選定にとどまらず、カタログや媒体の制作、品質管理、受注業務、物流業務、カスタマーサービスまで、販路に合わせた全てのソリューションを販売先に提供しているのも大きな特徴である。

 

ソリューション

概要

制作

企画に合わせたチラシ・カタログサイズで売れる紙面を制作する。

受注業務

電話、メール、FAX、はがきなど全ての受注スタイルに対応したフレキシブルな基幹システムを有しており、より正確で迅速な受注業務を行っている。

品質管理

コンプライアンス遵守のほか、商品ジャンルごとに自主基準を設け、クレームの未然防止につなげる商品チェックを行っている。

物流業務

5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の行き届いた自社物流センターからエンドユーザー宛に個別宅配の出荷を行っている。

カスタマーサービス

社内スタッフによるコールセンターで商品の問合せ、配送や交換相談までアフターサービスをワンストップで対応している。

 

多くの同業他社が商品の企画・マーケティングのみに特化していたり、販売チャネルが店舗に限られていたり、商品の製造や物流を他社に一任していたりするのに対し、同社は柔軟に対応できるシステムとノウハウを持つことで、他社には真似のできない独自のプロモーション戦略を実行することが可能である。

 

【1-5 ROE分析】

 

14/5期

15/5期

16/5期

17/5期

18/5期

19/5期

20/5期

21/5期

ROE(%)

-2.3

-3.4

4.9

25.0

29.0

9.1

14.0

10.1

 売上高当期純利益率(%)

-0.29

-0.40

0.53

2.79

3.50

1.35

2.08

1.55

 総資産回転率(回)

2.74

2.75

2.93

3.04

3.19

2.69

2.61

2.84

 レバレッジ(倍)

2.91

3.07

3.18

2.95

2.60

2.51

2.59

2.29

 

21年5月期は特別損失173百万円を計上したことで売上高当期純利益率が悪化したためROEは悪化した。22/5期の売上高当期純利益率は2.50%と、上昇する見通し。

 

2.2021年5月期決算概要

(1)連結業績概要

 

20/5期

構成比

21/5期

構成比

前年同期比

売上高

18,483

100.0%

20,754

100.0%

+12.3%

売上総利益

8,898

48.1%

10,613

51.1%

+19.3%

販管費

8,307

45.0%

9,908

47.7%

+19.3%

営業利益

590

3.2%

705

3.4%

+19.4%

経常利益

623

3.4%

730

3.5%

+17.1%

当期純利益

384

2.1%

321

1.5%

-16.3%

*単位:百万円。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。

 

2期連続の増収、増益。
売上高は前期比12.3%増の207億54百万円と過去最高を更新。新型コロナウイルスの影響により来客数が減少しSKINFOOD店舗など苦戦を強いられたものの、巣ごもり需要に適したTVショッピングで「スピードヒート温熱ベスト」や「ステップエイト」、「エアヨーン」などがけん引したことや、外出することなく買い物ができる生協ルート及び通販ルートでの自社開発品などが牽引。TVショッピングの増収で粗利率が上昇し粗利額も前期比19.3%増加し106億円と初めて100億円を突破した。広告宣伝費を中心に販管費も増加したが、吸収し営業利益は前期比19.4%増となった。ただ、当期純利益は特別損失173百万円(減損損失58百万円、顧客補償等対応費用41百万円、顧客補償等対応費用引当金繰入額17百万円、課徴金引当金繰入額47百万円等)を計上したため、前期と比較して16.3%減となった。

 

(販管費の推移)

 

20/5期

売上比

21/5期

売上比

前年同期比

人件費

1,479

8.0%

1,500

7.2%

+1.4%

広告宣伝費

3,544

19.2%

4,306

20.8%

+21.5%

物流費

1,368

7.4%

1,744

8.4%

+27.5%

販管費合計

8,307

44.9%

9,908

47.7%

+19.3%

単位:百万円

 

TVショッピングの放映枠の拡大等により、広告宣伝費比率は前期と比較して1.6ポイント増加。さらに物流センターでの商品荷受け、発送作業料等の上昇により物流費の売上比率も同1.0ポイント増加。一方で人件費比率を0.8ポイント改善したことで、販管費比率を同2.8ポイントの増加にとどめることができた。

 

◎四半期動向

 

(2)セグメント別動向

 

20/5期

構成比

21/5期

構成比

前年同期比

売上高

 

 

 

 

 

BtoC事業

6,656

36.0%

8,467

40.8%

+27.2%

BtoBtoC事業

11,539

62.4%

11,885

57.3%

+3.0%

その他

287

1.6%

402

1.9%

+40.0%

合計

18,483

100.0%

20,754

100.0%

+12.3%

営業利益

 

 

 

 

 

BtoC事業

359

5.4%

298

3.5%

-17.0%

BtoBtoC事業

176

1.5%

324

2.7%

+83.3%

その他

3

1.2%

52

13.0%

+1472.9%

調整額

50

-

30

-

-

合計

590

3.2%

705

3.4%

+19.4%

*単位:百万円。営業利益の構成比は営業利益率。

 

①BtoC事業
増収減益。
TVショッピングでは2020年度新作版である「スピードヒート温熱ベスト」や「ステップエイト」、「エアヨーン」等がヒット商品となったことで、SKINFOOD店舗での売上の減少をカバーし、全体では18億11百万円の増の84億67百万円となった。
前期と比較してMR(売上/媒体費)が1.0ポイントアップし、TVショッピングの売上が増加したことと、粗利益率が2.7ポイント改善したものの、第4四半期におけるテストマーケティング枠拡大による広告宣伝費や物流費の増加に加え、「ステップエイト」、「エアヨーン」の販売効率がピークアウトしたこともあり、BtoC事業全体の営業利益は2億98百万円と、前期比61百万円の減益となった。
②BtoBtoC事業
増収大幅増益。
マスク着用が定着していることからメイク化粧品が低迷するも、食品類の売上が生協ルートで24.7%、通信販売ルートで22.6%の増収となり、BtoBtoC事業全体では3億46百万円増の118億85百万円となった。増収に加え、売上高に占める販管費の比率が0.6ポイントダウンした結果、営業利益は1億47百万円増加し、3億24百万円となった。

 

③その他
増収大幅増益。
主力商品のM-Talk(チャットシステム)の拡販営業により増収となった。利益面では、M-Talkの売上が好調に推移したことと、販管費比率が8.0ポイントダウンしたことにより、営業利益は大幅増益となった。

 

(3)財務状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS

 

20年5月末

21年5月末

 

20年5月末

21年5月末

流動資産

6,268

6,230

流動負債

3,082

2,614

現預金

670

800

仕入債務

1,154

1,007

売上債権

3,176

2,800

短期借入金

809

570

たな卸資産

1,852

1,947

固定負債

1,477

1,055

固定資産

1,100

996

長期借入金

1,175

737

有形固定資産

380

361

負債合計

4,559

3,669

無形固定資産

163

157

純資産

2,809

3,557

投資その他の資産

556

476

利益剰余金

2,166

2,400

資産合計

7,369

7,226

負債純資産合計

7,369

7,226

*単位:百万円

 

 

借入金残高

1,985

1,308

 

 

 

自己資本比率

38.0%

49.0%

 

売上債権の減少が響き資産合計は前期末比1億42百万円減少の72億26百万円となった。長短借入金の減少などで負債合計は同8億90百万円減少の36億69百万円となった。利益剰余金の増加などで純資産は同7億47百万円増加の35億57百万円。自己資本比率は前期末より11.0ポイント向上し49.0%となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

20/5期

21/5期

増減

営業CF

712

636

-76

投資CF

-374

-220

+153

フリーCF

338

415

+77

財務CF

-139

-258

-118

現金同等物残高

802

967

+164

*単位:百万円

 

事業譲受による支出が無くなったことや投資有価証券の売却などで投資CFおよびフリーCFは増加した。
長期借入金の返済が増加したことで財務CFはマイナス幅が拡大。キャッシュポジションは上昇した。

 

3.2022年5月期業績予想

(1)通期業績予想

 

21/5期

構成比

22/5期(予)

構成比

前期比

売上高

20,754

100.0%

22,000

100.0%

+6.0%

営業利益

705

3.4%

880

4.0%

+24.8%

経常利益

730

3.5%

870

4.0%

+19.2%

当期純利益

321

1.5%

550

2.5%

+71.3%

*単位:百万円。予想は会社側発表。

 

増収増益。売上は過去最高を更新。
売上高は220億円と過去最高の更新を目指す。営業利益8億80百万円と3期連続の増益予想。ダイレクトマーケティング(旧BtoC)事業では引き続きTVショッピングへの投資と、リアル店舗での売上増を見込んでいる。セールスマーケティング(旧BtoBtoC)事業ではコロナ特需に落ち着きは見られるが、小売店舗卸の売上再拡大を見込み、ほぼ前期並みを予想。なお、22年5月期よりセグメントの名称が変更になるが中身は変わっていない。配当性向20%を目途としながら、配当金12.00円/株と据え置かれた。予想配当性向は17.1%。

 

(2)セグメント別動向

*売上予想

 

21/5期

構成比

22/5期(予)

構成比

前期比

ダイレクトマーケティング事業

8,467

40.8%

9,776

44.4%

+15.4%

セールスマーケティング事業

11,885

57.3%

11,803

53.7%

-0.6%

ITソリューション事業

402

1.9%

421

1.9%

+4.7%

合計

20,754

100.0%

22,000

100.0%

+6.0%

*単位:百万円

 

(セグメント別月別売上高)


 

 

4.今後の戦略

(1)今後の戦略

生協への卸売りから始まり、通販会社、小売店舗への卸売りというセールスマーケティングの業態からTVやECといったダイレクトマーケティングの業態、主に中国をターゲットとした海外事業へと多角化。

 

(2)セグメント別戦略

①ダイレクトマーケティング事業
◎TVショッピング
TVショッピングの売上効率を表す指標MRは、年間平均で2期連続上昇しており、MRが2を超える商品数も増加している。MRが2を超えると営業利益の押し上げ要因になる。これらのアイテムが5~6種類あるとポートフォリオが組める。7~8アイテムあるとベストと考えている。
TVショッピングのターゲット層は50代~70代(シニア層:21年5月期の売上比率88%)であり、今後数年も増加の傾向。東アジアや東南アジアもシニア層が増加してくるため、2026年までは増えるとみている。

 

◎EC事業
TVショッピングの受注ツールとして、TVとのシナジーを計りながら利益最大化を狙う。
EC独自プロモーションの実施、楽天・アマゾンでの拡販目指す。ECでのストック型ビジネスとして、秋ごろから新商品の投入をスタート。
◎SHOP事業
SHOP事業では、「SKINFOOD」に加え、昨年より販売している「OLIVE YOUNG」の販売に注力。
「SKINFOOD」店舗とWEBサイトの相互送客。
「OLIVE YOUNG」 PB化粧品の正規店出店。
韓国コスメ複合ブランド業態のテスト販売開始。
人の流れが少しずつ回復していく中で店舗売上の拡大も目指す。

 

②セールスマーケティング事業
◎生協・通販事業の安定成長
新型コロナウイルスの影響により、前期は主に食品ジャンルが拡大したが、今後は雑貨・化粧品ジャンルに移行するものと考え、全体的には安定成長へと向かう。特に、TV事業とのシナジーを図り、TVショッピングでのヒット品を軸に、生協や店舗へと販売を拡大し、PB商品の売上アップと収益アップに繋げていく。
◎店舗事業の再建
店舗数は現状を維持し、既存販売店にて売上強化を行い販売効率UPへ。
「Cocoegg」や「除毛ミルク」といったメイク以外のジャンルの拡販。
TVや生協でのヒット商品を店舗へと直接卸し、グループ内のシナジーを計る。

 

◎海外事業の再建2021年1月より、担当役員が中国本土に常駐し、中国子会社の建て直し中
T-mall、RED等のEC販路でのプロモーション強化によるEC販路の改革。
中国本土の新規開拓&「Cocoegg」の中国本格販売開始。

 

◎中期経営計画

これまで社内で作成していた中期経営計画を初めて公開。今回から新しい経営指標として調整後EBITDAとCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)を取り入れた。

 

(1)存在意義

私たちの商品を通じて、お客様の生活満足度向上とサスティナブルな社会を実現すること。
24年間取り組んでいる地球環境との調和を商品の開発方針として持っている。

 

(2)同社の強み

①40年間多くのお客様と関係を築かせて頂いたことによる膨大なデータ
創業から40年に渡り、顧客との接点と商品流通の中で培ってきた膨大なデータと経験値。
世の中のトレンドを素早くとらえ、トレンドに沿ったマーケティングとプロモーションを融合することでお客様が日々の生活の中で欲している商品を素早く、適切な流通経路で、より多くのお客様に届けることが可能。

 

②同社グループの主要顧客は、50代~70代のシニア世代であるということ
同社の主要顧客は、50代~70代のシニア世代。
子育てを終え、可処分所得が高く、比較的時間に余裕のある世代であることから、ヘルスケア、美容、エンターテイメントに対して購買意欲が高い世代であり、当社の強い基盤。

 

③豊富な販売チャネルと効率的なロジスティクス
SHOPの運営からTVショッピング、EC、生活協同組合、通信販売やドラッグストア、バラエティストアなど多様な販売チャネルと直接取引できると同時に、各チャネルを経由してスピード感をもってお客様へ商品を届けるための効率的なロジスティクスを抱えている。これにより、お客様が欲しい時に、欲しい商品を迅速に届けることが可能。

 

(3)同社が目指す姿

◎計画策定の背景
超高齢化社会が急速に進む日本国内において、シニア層のライフワークを「健康(ヘルスケア)」、「美容(ビューティー)」、「楽しさ(エンターテイメント)」の3つのテーマを軸に豊かなものにしていくことの意義(50代で貯蓄高が負債高を逆転し、純貯蓄額(貯蓄現在高ー負債現在高)は70代でピークを迎える)。今後近い将来、アジア諸国が直面する高齢化社会に向けて、高齢化先進国である日本国内でサービスを磨き、アジアマーケットへの展開を加速する(2020年時点における65歳以上人口は4億人から2050年には7億人へ約倍増)。

 

◎同社が目指す姿
ファンつくり・・・お客様から見てよい会社であり続けること
めまぐるしく変化する社会環境の変化に適応することで企業は存続し、存在し続ける意義をもつ。
常にお客様の現場の声に耳を傾けることで、「ファンつくり」をキーワードにアジアへと広げていく。

 

(4)重点施策

①重点投資領域へのM&A(攻めの施策)
TVショッピング、ECに積極的に投資、そこに対する定期購入商品への注力、メイドインジャパンの海外展開

 

②機動的な意思決定の基盤となるグループ構造改革(守りの施策)
事業ポートフォリオマネジメント、コーポレート機能の強化
③キャッシュ・フロー経営へのシフト
特にCCCをいかに短くして資金を捻出し、成長事業であるPB商品に投資し強化

(5)数値目標

重点施策①~③を中心に今後3年間で 30億円の投資を行う

(同社資料より)

 

CCC・・・ダイレクトマーケティング事業のウエイトが高まれば回収が早くなるのでスケールアップさせていく

 

(同社資料より)

(6)成長投資

今後3年間で重点投資領域である「投資を継続」、「将来性」領域へ25億のM&Aなどの投資を行う収益基盤で生み出したキャッシュをTV事業、店舗、SHOP事業へ。
将来的には、EC事業、海外事業、ITソリューション事業に振り分けていく

 

(同社資料より)

 

(7)株主還元方針

余剰資金のバランスを考慮しつつ、配当性向20%を目安とする(従来と変わらず)。
これからの3年間は、戦略的な成長投資を優先していく方針。

 

5.今後の注目点

新型コロナウイルスの感染拡大が第2波、第3波として現れ、大都市などを中心に4度目の緊急事態宣言が発令されるなど、未だ収束の見通しが立たない。こうした中、足元の業績をけん引している「巣ごもり需要」をいかに取り込み続けられるかがカギ。ヒット商品を自ら生み出すことのできる「マーケティングメーカー」としての能力と、TVショッピングなどにより商品を的確に訴求できるマーケティング能力の相乗効果に期待。

 

また、世界で唯一の『マーケティングメーカー』というビジネスモデルを極めることを目指す同社だが、現在65%の自社製品比率が100%へと上昇するスピードを見極めたい。

 

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査等委員会設置会社

取締役

7名、うち社外3名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2020年12月17日

 

<基本的な考え方>
当社は、コーポレート・ガバナンスが有効に機能することが求められる中、上場企業として社会的使命と責任を果たすため、経営基盤を充実し、尚且つ高い倫理観を保持し、経営の透明性を一層高めることで、信頼される企業を目指してまいります。
また、当社は経営環境の変化に迅速かつ的確に対応できる経営体制の確立を重要な経営課題の一つと考えており、定時取締役会(月1回開催)、臨時取締役会(必要に応じて随時開催)のほか、常勤取締役(監査等委員である取締役を含む)及び執行役員による社内役員会(週1回開催)、チームマネージャー職以上で構成されるTOP会議(週1回開催)の開催により、多方面からの情報共有に努めております。

 

<実施しない主な原則とその理由>

原則

実施しない理由

【補充原則1-2.(4)議決権の電子行使、招集通知の英訳】

当社は、現状、議決権電子行使プラットフォームの利用や株主総会招集通知の英訳等は行っておりませんが、機関投資家や海外投資家の株主構成等を踏まえ、株主の利便性も考慮し、必要に応じて検討してまいります。

【補充原則4-1.(2)中期経営計画の説明】

当社は、中期計画を策定しておりますが、中期ビジョンを掲げることで株主・投資家との共有認識を醸成できるよう努めております。中期の利益計画については開示しておりませんが、今後も開示の有無について検討いたします。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示>

原則

開示内容

【原則1-4 いわゆる政策保有株式】

当社は、取引先との継続的かつ安定的で良好な取引関係の維持・強化につながる政策保有株式を保有します。ただし、リターンとリスク等を踏まえ、中・長期的な観点から定期的に検証し、必要性が認められなくなった場合には売却を進めます。当該株式については、毎年、取締役会において保有目的や合理性、取得価格と時価との比較、受取配当金の状況等を検証し、保有の必要性を確認しております。

議決権行使については、すべての議案に対して、原則、賛成行使しますが、株主価値の毀損につながる議案に関しては個別に精査いたします。

なお、議決権行使は、当該会社の状況や当社との関係維持・強化などを総合的に判断するため、外形的な基準を設けておりません。

【原則5-1 株主との建設的な対話に

関する方針】

当社では、管理チーム総務グループをIR担当部署とし、株主からの対話の依頼に対しては、当社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するよう合理的な範囲で対応しております。

代表取締役会長が、株主や機関投資家に対して、決算説明会を年に2回開催しております。なお、説明会に参加できない株主や投資家に対しては、当社のホームページにその決算説明会資料及び動画を掲載しております。

 

 

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