ブリッジレポート
(6826) 本多通信工業株式会社

プライム

ブリッジレポート:(6826)本多通信工業 2022年3月期第2四半期決算

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樫尾 欣司 社長

本多通信工業株式会社(6826)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

電気機器(製造業)

代表取締役社長

樫尾 欣司

所在地

東京都品川区北品川5-9-11 大崎MTビル

決算月

3月

HP

https://www.htk-jp.com/

 

株式情報

株価

発行済株式数(期末)

時価総額

ROE(実)

売買単位

449円

25,006,200株

11,227百万円

0.7%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

8.00円

1.8%

13.88円

32.3倍

477.37円

0.9倍

*株価は11/2終値。発行済株式数、DPS、EPS、BPSは22年3月期第2四半期決算短信より。ROEは前期実績。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2018年3月(実)

19,498

2,007

2,111

1,625

67.87

18.00

2019年3月(実)

17,606

1,141

1,184

765

32.06

20.00

2020年3月(実)

14,923

237

157

43

1.89

21.00

2021年3月(実)

14,932

-74

147

75

3.29

7.00

2022年3月(予)

16,500

500

450

320

13.88

8.00

*単位:百万円、円。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下同様。17年12月1日付で1:2の株式分割を実施。EPS、DPSは遡及して計算。

 

 

本多通信工業の2022年3月期第2四半期決算概要などをお伝えします。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2022年3月期第2四半期決算概要
3.2022年3月期業績予想
4.今後の注目点
<参考1:経営計画>
<参考2:コーポレートガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 2022年3月期第2四半期(累計)の売上高は前年同期比29.1%増の86億66百万円。設備投資の活況によりFA・通信分野が伸長したほか、全分野で増収。営業利益は前年同期の損失から2億28百万円の黒字に転換。増収に伴い売上総利益も同57.2%増加し、粗利率も3.1ポイント改善した。経常利益は同じく1億95百万円の黒字に転換。四半期ベースでも前年同期比で増収・黒字転換も、営業利益は前期第4四半期を下回った。品種構成のほか、部材価格上昇・製造コスト増などのコストプッシュ要因により回復幅は不十分であると会社側は考えている。

     

  • 業績予想に変更は無い。22年3月期の売上高は前期比10.5%増の165億円の予想。全分野増収。通信分野、FA分野が2ケタ増収。一方で半導体及び金属材不足の影響が不透明である。営業利益は5億円の予想。増収効果に加え、前期の一時要因解消効果が寄与。前期コロナ禍で停滞した成長及び合理化投資を積極的に実行する。今期より変更した株主還元方針では総還元性向30%を基本としつつ、中期での業績動向や財務状況等を総合的に勘案し安定配当を実施することとした。また、業績見通しの変動などにより、配当性向が30%を大幅に下回ることが見込まれる場合には、自己株式取得を検討する。今期の配当は前期比1.00円/株増配の8.00円/株を予定している。予想配当性向は57.6%。

     

  • 上期実績の進捗率は売上高で52.5%、営業利益で45.6%。過去数期と比べると売上高は比較的高水準も、営業利益の進捗率はやや低水準である。品種構成のほか、部材不足などが利益のマイナス要素となっている。半導体を始めとした部材不足は、当初想定よりも解消に時間がかかっているようで、第3四半期以降の影響が気がかりではある。注視していきたい。

     

  • 車載分野の売上高の9割以上を占めている「車載カメラ用コネクタ」は上期水準で下期も推移した場合、今期約1,400万個を供給、売上は約50億円を計画。今期は売上に関しては部品不足による販売減が生じる。利益については、品種構成及び販売価格低下がマイナス要因。ただ、来期2022年度は、部品不足解消による販売増、新規自動車メーカー向けの納入本格化、カメラ搭載車数/個数の増加などで21年度比600万個増の約2,000万個、15億円増収の売上高65億円を見込んでいる。利益についても、引き続き品種構成及び販売価格低下はあるものの、センシング用の生産自動化、ベトナム生産の拡大及び合理化で限界利益率は約1.5ポイントの上昇を予想している。

     

  • また、新市場の創出・開拓へのチャレンジに向けた中心的な製品の一つである「次世代車内LAN向け高速伝送タイプコネクタ」は展示会に出展し、年度内にエンジニアリングサンプルの提供を開始する計画である。事業としての立ち上がりの進捗に注目したい。

     

     

1.会社概要

車載、FA機器、通信インフラ、民生機器用途向けの電気コネクタおよび光コネクタの製造販売を行う。「Segments No.1」を掲げ、特定分野での高い競争力を追求している。長い歴史の中で培われた幅広い設計技術力、産業用機器向けで培った長期信頼性と堅牢性に関するノウハウ、多品種少量生産体制などが特長。子会社ではソフトウエア開発なども手掛けている。グループ認知度の向上に向けて、複数存在していたブランドを「HTK」に統一。グループは同社と連結子会社7社(国内2社、海外5社)の計8社で構成されている。(2021年6月末日現在)

 

【1-1 沿革】

1932年5月に精密ねじ加工業として現在の東京都目黒区で創業。第二次大戦後は、日本電信電話公社(現NTT)の電話交換機用プラグ・ジャック、防衛庁向けプラグ・ジャックを始め、その発展形となるコネクタの製造販売を手掛け、業容を拡大。2001年に東証2部に上場した。だが、ITバブル崩壊で売上が急減。数度のリストラクチャリングを経て、成長路線への復帰と拡大発展をめざし、2008年に松下電工株式会社(現パナソニック株式会社)と資本業務提携契約を締結。2014年2月、約80年に亘って本社を置いていた目黒から品川区へ本社を移転した。
2016年3月、東証1部に上場した。

 

【1-2 経営理念など】

特定分野で特徴あるソリューションを提供することで顧客に「この分野なら本多通信グループに限る」と高く評価される事をめざし、「Segments No.1」を掲げている。
また、新中期経営計画「GC20」策定に際し、グループの企業理念として「Value by Connecting」を新たに掲げた。
豊かな未来のために「人」、「もの」、「情報」をつなぎ、価値を創造し続ける事を目指すというビジョンを示したもの。

 

【1-3 事業内容】

事業セグメントはコネクタ事業と情報システム事業の2つ。

◎コネクタ事業
<コネクタとは?>
電子回路や光通信において配線基板同士を接続し、電気や信号を繋ぐために用いられる部品・器具のこと。基板をはんだ付けや圧着で接続した場合、分断時にはケーブル切断等が必要になり再接続は困難となるが、コネクタを使用した場合、手または簡易的な工具を用いて容易に繰り返し脱着することが可能であるため、ほぼ全ての電子機器で使用される。

 

<利用分野>
長年の経験で培われた高い技術力により、以下の6分野を中心に付加価値の高く、顧客志向のコネクタを始めとした製品をラインアップしている。

 

 

分野

概要

カーエレクトロニクス

日々進化するカーエレクトロニクス市場へ、通信分野・産業機器分野で培った技術をベースに高い信頼性を有するコネクタを提供

通信機器

電話交換機のプラグ・ジャックを起点に、光コネクタを中心とした通信機器用コネクタを提供

FA機器

工作機器・制御機器などの長期信頼性ニーズに対応する堅牢で高品質のFA機器用コネクタを提供

医療機器

拡大する医療分野に対して同社グループのノウハウを活かした医療用コネクタを提供。ナースコール用コネクタでは国内シェア1位

デジタル家電

産業用コネクタで培った要素技術をベースに軽薄短小を追求し、同社グループならではのものづくりでデジタル家電市場へ商品を提供

サーバ・ストレージ

電子データの高速化・大容量化に対応すべく同社グループが得意とする高速伝送技術を最大限に生かした商品を提供

 

<主な製品ラインアップ>

(同社資料より)

 

2021年3月期の分野別売上構成比率(全売上高に対する構成比)は、車載分野33%、FA分野22%、通信分野16%、民生分野10%となっている。

最も構成比の高い車載分野において、安全性や運転性能向上の観点から車載カメラやセンサの搭載台数が増加しているカーエレクトロニクスの成長に対応して投資や製品開発を進めている。

 

◎情報システム事業
通信分野でのソフトウエアの重要性が高まる中、1983年に事業をスタート。
システム開発から保守運用まで幅広いソリューションを展開している。なかでも仮想化(*)サーバの構築では業界屈指の技術を有し、クラウドコンピューティングの広がりに貢献している。
世界的ベンダーとの連携により、上流工程からの受注に力を入れており、Tier2からTier1.5への進化を目指している。
*仮想化とは?:1台のサーバ(物理サーバ)を複数台の仮想的なサーバ(仮想化サーバ)に分割して利用する仕組み。それぞれの仮想化サーバではOSやアプリケーションを実行させることができ、あたかも独立したコンピュータのように使用することが可能となる。
サーバ台数の適正化や消費電力を含めた運用管理コストの低減など、企業のITコスト見直しニーズに対応し、注目が集まっている。
また、仮想化環境下ではハードウェア等を新たに購入しなくても新サーバを容易に追加することができるため、ビジネスの変化に迅速かつ柔軟に対応するというITシステムニーズに対する有効なソリューションの一つとなっている。

 

【1-4 特徴と強み】

①幅広い設計技術力
前述のように、同社のコネクタは、様々な分野で用いられている。
同社は、日本電信電話公社(現NTT)を始めとした多くの顧客からの様々なニーズに対応したカスタマイズによる製品作りに長年取り組んできた。この「顧客密着度の高さ」が、同社の幅広い設計技術力の源泉である。

 

②長期信頼性と堅牢性
制御装置に用いられる「1.27mmピッチコネクタ」、FTTH(Fiber To The Home:光通信のための光ファイバーを家屋内に引き込むこと)に用いられる「シャッター付きSC形プラグ」、プロジェクタに用いられる「高耐圧電源用コネクタ」などで強みを持っている。
これらは、顧客から長期信頼性や堅牢性が求められる分野であり、長年に亘って培ってきた同社の技術力や製造能力が顧客に高く評価されている証となっている。こうした強みを活かし、安全性という面でハードルの高い車載分野での売上を大きく伸ばしている。

 

③多品種少量生産
同社は現在約5,000品目のコネクタを生産しているが、このうちの月間生産個数が1万個未満の品目数は94%を占める。また生産金額ベースでも1万個未満の生産が62%、1万個以上が38%と、多品種少量生産が同社の特長となっている。
こうした状況に対応し、国内工場、海外工場の2つの車輪で最適なものづくりを行っている。
国内工場(安曇野工場:旧松本工場)は1万個未満の多品種少量生産の拠点。今後も同社の得意技を磨き、迅速な納入を行うため国内で稼動を続ける。
海外工場(深圳工場)は1万個以上の中量品の一気通貫生産を行い、機動力を高め世界で戦うための拠点とする。
加えて、ベトナムにも生産拠点を立ち上げ、車載関連中心に量産体制を構築した。

 

一方、多品種少量生産ながらも短納期を実現させ、顧客から発注を受けたら1週間以内での製品配送を確約する「1weekデリバリーサービス」に2013年から積極的に取組んでいる。
現在の取扱品目数はシステム化を進めた安曇野物流ハブの完成によりそれまでの倍にあたる約1,000品目に拡大している。

 

(主なコネクタメーカー)

 

コード

社名

売上高

増収率

営業利益

増益率

営業利益率

ROE

時価総額

PER

PBR

6640

I-PEX

62,600

+14.8

5,500

+88.9

8.8%

2.3

38,774

10.1

0.8

6798

SMK

48,500

-0.1

1,000

-6.6

2.1%

7.3

17,647

9.9

0.5

6800

ヨコオ

65,000

+8.4

5,800

+12.0

8.9%

12.2

61,091

15.5

1.6

6804

ホシデン

260,000

+11.1

11,500

-7.1

4.4%

9.8

80,778

8.1

0.6

6806

ヒロセ電機

156,000

+16.8

35,000

+25.5

22.4%

6.3

719,234

25.7

2.1

6807

日本航空電子

227,000

+8.2

18,500

+112.5

8.1%

4.1

169,467

12.7

1.2

6826

本多通信工業

16,500

+10.5

500

-

3.0%

0.7

11,227

32.3

0.9

6908

イリソ電子工業

42,000

+15.0

6,700

+131.0

16.0%

4.1

131,031

26.2

2.3

6941

山一電機

31,160

+12.6

4,300

+35.0

13.8%

10.7

41,130

11.7

1.4

※売上高、営業利益は今期会社側予想。単位は百万円。ROEは前期実績、単位は%。時価総額は11月2日終値ベース×11月2日時点直近の短信記載の発行済株式数。単位は百万円。PER(予)・PBR(実)は11月2日終値ベース。単位は倍。

 

【1-5 ROE分析】

 

14/3期

15/3期

16/3期

17/3期

18/3期

19/3期

20/3期

21/3期

ROE(%)

23.8

18.4

14.8

15.0

14.2

6.4

0.4

0.7

 売上高当期純利益率(%)

9.98

8.65

7.97

8.96

8.33

4.35

0.29

0.50

 総資産回転率(回)

1.51

1.39

1.30

1.22

1.24

1.09

0.97

1.02

 レバレッジ(倍)

1.58

1.53

1.43

1.37

1.37

1.35

1.31

1.31

 

原価低減や新製品開発によるマージンの向上に加え、在庫水準のコントロールによる総資産回転率の向上に引き続き取組んでいく。

 

2.2022年3月期第2四半期決算概要

(1)連結業績概要

 

21/3期2Q

構成比

22/3期2Q

構成比

前年同期比

売上高

6,714

100.0%

8,666

100.0%

+29.1%

売上総利益

941

14.0%

1,479

17.1%

+57.2%

販管費

1,179

17.6%

1,251

14.4%

+6.1%

営業利益

-238

-

228

2.6%

-

経常利益

-95

-

195

2.3%

-

四半期純利益

-65

-

150

1.7%

-

*単位:百万円。四半期純利益は親会社株主に帰属する四半期純利益。「収益認識に関する会計基準」等を当第1四半期連結会計期間の期首から適用しており、2021年3月期第2四半期に係る各数値については、当該会計基準等を遡って適用した後の数値。

 

増収、黒字転換
売上高は前年同期比29.1%増の86億66百万円。設備投資の活況によりFA・通信分野が伸長したほか、情報システム以外は増収。
営業利益は前年同期の損失から2億28百万円の黒字に転換。増収に伴い売上総利益も同57.2%増加し、粗利率も3.1ポイント改善した。
経常利益は同じく1億95百万円の黒字に転換。

 

四半期ベースでも前年同期比で増収・黒字転換も、営業利益は前期第4四半期を下回った。品種構成のほか、部材価格上昇・製造コスト増などのコストプッシュ要因により回復幅は不十分であると会社側は考えている。

上期の受注額・受注残は2000年以降最高となっている。第2四半期(7‐9月)は顧客の在庫積上げや先行発注が落ち着きつつあるが、依然として高水準が継続している。

(2)分野別売上動向

◎累計

 

21/3期2Q(累計)

22/3期2Q(累計)

前年同期比

通信

1,108

1,411

+27.3%

FA

1,506

2,376

+57.8%

民生

659

930

+41.1%

車載

2,014

2,539

+26.1%

情報システム

1,427

1,410

-1.2%

合計

6,714

8,666

+29.1%

*単位:百万円

 

◎四半期

 

21/3期2Q

22/3期1Q

22/3期2Q

前年同期比

前期比

通信

556

682

729

+31.1%

+6.9%

FA

777

1,139

1,237

+59.2%

+8.6%

民生

371

452

478

+28.8%

+5.8%

車載

1,150

1,229

1310

+13.9%

+6.6%

情報システム

753

702

708

-6.0%

+0.9%

合計

3,607

4,204

4462

+23.7%

+6.1%

*単位:百万円

 

*通信分野:通信インフラ投資の好調が継続している。
*FA分野:設備投資の活況が継続しているが、部材不足・工数不足がネックとなっている。
*民生分野:テレワーク/巣ごもり需要で回復も、半導体不足の影響が懸念材料である。
*車載分野:半導体不足等の影響で回復が鈍化しており、現状では先行き不透明
*情報システム分野:主要顧客が低調で、四半期、累計とも前年同期を下回った。新ビジネスの立上げに注力中である。

 

(3)財務状態

◎主要BS

 

21年3月末

21年9月末

増減

 

21年3月末

21年9月末

増減

流動資産

11,333

11,905

+572

流動負債

2,884

3,498

+614

現預金

5,977

5,400

-577

仕入債務

1,651

2,064

+413

売上債権

3,765

4,055

+290

短期借入金

115

115

0

たな卸資産

1,429

2,251

+822

固定負債

616

546

-74

固定資産

3,172

3,157

-15

負債合計

3,501

4,044

+543

有形固定資産

2,140

2,132

-8

純資産合計

11,004

11,019

+15

無形固定資産

334

292

-42

資本金

1,501

1,501

0

投資その他の資産

697

732

-35

利益剰余金

8,696

8,685

-11

資産合計

14,505

15,063

+558

負債純資産合計

14,505

15,063

+558

*単位:百万円。売上債権には電子記録債権を、仕入債務には電子記録債務を含む。

 

たな卸資産の増加などで資産合計は前期末比5億58百万円増加し150億63百万円となった。
仕入債務の増加などで負債合計は同5億43百万円増加の40億44百万円。
利益剰余金の増加などで純資産合計は同14百万円増加の110億19百万円。
この結果、自己資本比率は前期末から2.7ポイント低下し73.2%となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

21/3期2Q

22/3期2Q

増減

営業CF

247

-205

-452

投資CF

-56

-91

-35

フリーCF

191

-296

-487

財務CF

-538

-280

+258

現金同等物残高

5,194

5,361

+167

*単位:百万円。

 

売上債権及びたな卸資産の増加などで営業CF、フリーCFはマイナスに転じた。
キャッシュポジションは上昇した。

 

(4)トピックス

◎プライム市場を選択及び上場維持基準の適合に向けた計画書を作成
東証の新市場区分において「プライム市場」を選択することとしたが、移行基準日(2021年6月30日)時点において、同市場の上場維持基準を充たしていないことから、新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書を作成した。

 

上場維持基準のうち、「流通株式時価総額」が73.7億円(上場維持基準100億円)、「1日平均売買代金」が0.19億円(同0.2億円)と、この2つの基準を充たしていない。
このため、2024年度までに上場維持基準を充たすために下記のような各種取組みを進める。

 

(1)流通株式時価総額の適合に向けて
<基本方針>
経営計画における「中期目標(~2025年度、売上高200億円、営業利益16億円、純利益12億円、ROE8%)」水準への業績拡大を主として、株式施策による流通株式数の増加および IR活動の強化に取り組む。
仮に「中期目標」の達成率が9割程度の場合においても、これらの施策を複合的に推進することにより、2024年度までに上場維持基準を上回ることを見込んでいる。

 

<課題および取組み内容>
① 経営計画「中期目標」水準への業績拡大による株価上昇
現経営計画では、長期ビジョンとして創業100 周年となる2032年度までに売上高500億円規模の企業グループへの成長を目指し、そのマイルストーンとして「中期目標(~2025年度、売上高200億円、営業利益16億円、純利益12億円、ROE8%)」を設定している。
「中期目標」水準への業績拡大により、2025年度までに株価800円以上への上昇を見込んでいる。なお、株価が800円の場合、流通株式数が現状のままでも、流通株式時価総額は上場維持基準を約 20%上回る水準となる。
「中期目標」達成時に株価が800円の場合、PERは約17倍、PBRは約1.4倍となる見込みで、業界平均や同社の過去の類似業績時の実績と比較して、余裕をもって達成可能と見込んでいる。

 

②株式施策による流通株式数の増加
現状、流通株式より除外されている事業法人等が所有する株式の流通株式化の実施や一部自己株式の市場への売り出し等により、流通株式を一定数増加させることを検討する。

 

③IR活動の強化による株価上昇
IR活動を積極的に展開し、株主・投資家との対話を深めることで信頼と期待を高め、株価の上昇を図る。
ESG に関する開示情報の充実および開示情報の英文化を進めるとともに、ホームページや動画の活用により情報へのアクセスの利便性を高める。
機関投資家からの取材件数や個人投資家向け説明会の開催回数の増加により、認知度の向上および事業への理解促進を図る。
2020年度の機関投資家の取材件数は21件、 個人投資家向け説明会の開催回数は1回であった。

 

(2)1日平均売買代金の適合に向けて
<基本方針>
業績拡大およびIR活動の強化に取り組むことにより株価上昇と出来高の増加を図り、2024年度までに上場維持基準を上回る水準へ高める。

 

<課題および取組み内容>
①経営計画における「中期目標」水準への業績拡大による株価上昇および出来高の増加
「中期目標」達成時には、出来高が現状と同程度の場合でも、株価の上昇により 1 日平均売買代金が3,000万円以上に増加することを見込んでいる。
また、業績の拡大に伴い、同社の過去の類似業績時と同様に出来高が増加することを期待している。

 

〇「中期目標」達成時の見込み
1 日平均売買代金 約3,236万円 = 1日平均出来高約40,450株× 取引平均株価 800 円
(1日平均出来高は、2020年7月1日~2021年6月30日における出来高(約987万株)を同期間における東京証券取引所の営業日数244日で除した数値)

 

②IR活動の強化による株価上昇および出来高の増加
IR活動を積極的に展開することにより、認知度の向上と株主・投資家様からの信頼と期待を高め、株価の上昇および出来高の増加を図る。
開示情報の英文化およびESGに関する開示情報の充実を進めるとともに、ホームページや動画の活用により情報へのアクセスの利便性を高める。
機関投資家からの取材件数や個人投資家向け説明会の開催回数の増加により、認知度の向上および事業への理解促進を図る。

 

3.2022年3月期業績予想

(1)業績予想

 

21/3期

構成比

22/3期(予)

構成比

前期比

進捗率

売上高

14,932

100.0%

16,500

100.0%

+10.5%

52.5%

営業利益

-74

-

500

3.0%

-

45.6%

経常利益

147

1.0%

450

2.7%

+206.1%

43.3%

当期純利益

75

0.5%

320

1.9%

+326.7%

46.9%

*単位:百万円

 

業績予想に変更無し。増収、大幅増益を予想
業績予想に変更は無い。売上高は前期比10.5%増の165億円の予想。全分野増収。通信分野、FA分野が2ケタ増収。
営業利益は5億円の予想。増収効果プラス5億20百万円に加え、前期の一時要因解消効果プラス3億円が寄与。前期コロナ禍で停滞した成長及び合理化投資を積極的に実行する。

 

今期より株主還元方針を変更した。総還元性向30%を基本としつつ、中期での業績動向や財務状況等を総合的に勘案し安定配当を実施することとした。また、業績見通しの変動などにより、配当性向が30%を大幅に下回ることが見込まれる場合には、自己株式取得を検討する。
配当は前期比1.00円/株増配の8.00円/株を予定。予想配当性向は57.6%。

 

(2)分野別概観

各分野の見通しは以下の通り。

 

21/3期

22/3期(予)

前期比

進捗率

通信

2,328

2,600

+11.7%

54.3%

FA

3,294

3,800

+15.4%

62.5%

民生

1,463

1,500

+2.5%

62.0%

車載

4,934

5,500

+11.5%

46.2%

情報システム

2,913

3,100

+6.4%

45.5%

合計

14,932

16,500

+10.5%

52.5%

*単位:百万円

 

*通信分野
通信インフラ投資の好調継続により堅調な推移を予測している。

 

*FA分野
中国市場中心に半導体・EV・自動化等への設備投資の活況が継続する。国内需要の回復にも期待している。

 

*民生分野
需要の好不調は機器によって斑模様。大幅な回復は見込めず低調な推移を予測している。

 

*車載分野
上期に半導体不足の影響を懸念している。通期では前期比10%増の回復を見込んでいる。

 

*情報システム
コロナ禍から事業環境は改善に向かっている。DXビジネス拡大に向け取組みを本格化させる。

 

4.今後の注目点

上期実績の進捗率は売上高で52.5%、営業利益で45.6%。過去数期と比べると売上高は比較的高水準も、営業利益の進捗率はやや低水準である。
品種構成のほか、部材不足などが利益のマイナス要素となっている。半導体を始めとした部材不足は、当初想定よりも解消に時間がかかっているようで、第3四半期以降の影響が気がかりではある。注視していきたい。

 

車載分野の売上高の9割以上を占めている「車載カメラ用コネクタ」は上期水準で下期も推移した場合、今期約1,400万個を供給、売上は約50億円を計画。
今期は売上に関しては部品不足による販売減が生じる。利益については、品種構成及び販売価格低下がマイナス要因。ベトナム生産拠点は安定化してきたが当初見込んでいた合理化は遅延している。
ただ、来期2022年度は、部品不足解消による販売増、新規自動車メーカー向けの納入本格化、カメラ搭載車数/個数の増加などで21年度比600万個増の約2,000万個、15億円増収の売上高65億円を見込んでいる。
利益についても、引き続き品種構成及び販売価格低下はあるものの、センシング用の生産自動化、ベトナム生産の拡大及び合理化で限界利益率は約1.5ポイントの上昇を予想している。

 

また、新市場の創出・開拓へのチャレンジに向けた中心的な製品の一つである「次世代車内LAN向け高速伝送タイプコネクタ」は展示会に出展し、年度内にエンジニアリングサンプルの提供を開始する計画である。事業としての立ち上がりの進捗に注目したい。

 

<参考1:経営計画>

(1)概要

急速に変化する事業環境と現在の自社の状況を踏まえ、経営計画を見直した。
将来の予測が困難な「VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)の時代に3-5年の中期計画の設定はふさわしくないと考え、創業100周年にあたる2033年3月期をターゲットとする「長期(創業100周年)ビジョン」とそこに至るマイルストーンとして今期から3-4年内の達成を目指す「中期目標」を掲げた。

 

基本戦略は「Society 5.0で拡大する“つなぐ”市場に、新商品をスピーディに創出」。
企業理念である「Value by Connecting」をベースに、Society 5.0で拡大する「つなぐ」市場に新製品・新サービスを創出する。
急激な変化の中で勝ち残るには、顧客や市場の変化の先を行くスピードが不可欠と考えている。
走りながらの行動を重視する。

 

(2)分野別の取り組み

①業務用コネクタ
長期ビジョンは「社会の進化で発生するつなぐ課題をスピード解決」。
Society 5.0が進む中で確実に市場の拡大とニーズの多様性が見込まれ、これまでの実績をベースに、新商品の開発を加速させニーズを確実に取り込んでいく。

 

I/Oコネクタは販売開始から30年が経つが、前期は過去最高売上を記録した。今後もリニューアルやカスタマイズを進めて拡販を目指す。
また、5G・6Gの浸透に対応し、光接続技術のブラッシュアップに注力し、実績のある光コネクタも更なる拡大を図る。
新たに技術統括担当の取締役を選任し、組織体制も強化する。

 

マーケティング手法に関しては、効率化を重視し、デジタルマーケティングの強化、販売チャネル構築に取り組む。

 

生産体制については、同社が得意とする多品種少量生産をより効率的なものとするために、自動化・製造DXへの投資による適時適量生産体制を構築し、長期的にはスマート工場化を目指す。

 

②車載用コネクタ
長期ビジョンは「高速伝送技術を磨きモビリティの自動運転を支える」。
CASEに向けてエレクトロニクス化が進展する中、車載カメラ用の実績と高速伝送技術をベースに、自動車に限らずモビリティ全般に事業を拡大する。

 

車載カメラ用に関しては、ビューイング向けコネクタが主力自動車メーカーの復調で回復傾向にあることに加え他社への販売も広がってきた。
センシング向けコネクタも納入が始まり、次世代製品の開発にも着手している。

 

接続機器に関しては、同社コネクタの特長である堅牢性が評価され建機や農機への展開が始まった。
次世代車内LAN向け高速伝送タイプコネクタの技術開発が完了した。リリース、顧客評価、提案を経て拡販に向かう。自動運転のキーパーツとなるもので、受注獲得に注力する。

 

生産体制に関しては、新・深圳工場およびベトナム生産拠点への移管が完了した。合理化・量産を進めつつ、次の生産拠点立ち上げも検討していく。長期的には地産地消で自動一貫生産体制を構築する。

 

③情報システム
長期ビジョンは「中堅会社のデジタル革命を支えるDX支援事業へ」。
IoT、クラウドサービスの拡大によりデジタルの社会実装が加速する中、新技術の活用で独自のDXビジネスを展開し、事業領域を拡大する。

 

システム開発会社として、Tier2からTier1.5へのステップアップを目指している。
システム設計やインフラ構築において新技術を積極的に活用・深化させ髙付加価値化を図る。
DXに関しては前期新たに開発部・営業部を立ち上げた。実績も出始めているため、今期からビジネスモデルの確立を目指す。
AI・RPA・ブロックチェーンなど新技術の獲得、人材開発、DX商材の開発に取り組んでいく。

 

(3)数値目標

 

20/3期

21/3期

22/3期(予)

 

中期目標

 

長期ビジョン

33/3月期

CAGR

売上高

149

149

165

 

200

 

500

+10.6%

業務用

67

70

79

 

90

 

200

+9.1%

車載用

51

49

55

 

70

 

200

+12.4%

情報システム

30

29

31

 

40

 

100

+10.9%

営業利益

2.3

-0.7

5.0

 

16.0

 

55.0

+24.4%

営業利益率

1.6%

-0.5%

3.0%

 

8.0%

 

11.0%

-

当期純利益

0.4

0.7

3.2

 

12.0

 

40.0

+25.8%

当期純利益率

0.3%

0.5%

1.9%

 

6.0%

 

8.0%

-

ROE

0.4%

0.7%

2.9%

 

8.0%

 

12%以上

-

*単位:億円。CAGRは2021年3月期をスタートとした33年3月期まで12年間の年平均成長率でインベストメントブリッジが計算。利益は22/3期からの11年間。

 

変化の激しい業環境を踏まえ、中期目標は毎年見直す。

 

(4)デジタル及びサステナビリティへの取組み

◎製造DX
コネクタ事業と情報システム事業の連携を強化し、コネクタ事業はモノづくり力の向上、情報システム事業は技術力を自社ビジネスへ展開することでシナジーを創出する。

 

◎サステナビリティ
21年6月、サステナビリティ委員会を立ち上げた。気候変動リスクへの対応、人材・組織力の強化、ガバナンスの強化を図る。
2021年6月開催の定時株主総会では以下2名の新任取締役を選出した。

 

*米澤均氏
松下電工入社以来、約35年間技術部門に従事。研究開発・商品企画設計・生産技術と幅広い部門に携わり、同社の工場長、センター長など要職を歴任。2021年からはHTKの技術統括部長に就任。開発部門のトップとして、成長を牽引する商品の創出を期待している。

 

*長崎真美氏
弁護士としての多様な経験と法務全般に関する知識に加え、投資法人の業務全般の執行及び事業会社の社外取締役の経験を有す。HTKのガバナンスや法務面でのアドバイスを期待している。

 

<参考2:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

8名、うち社外3名

監査役

3名、うち社外2名

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2021年7月7日
<基本的な考え方>
コーポレートガバナンス基本方針に定めています。(https://www.htk-jp.com/csr/governance.html)

 

(コーポレートガバナンスの基本的な考え方)
第1条 当社は、常に最適なコーポレートガバナンスを追求し、その充実に継続的に取り組む。
2.当社は、当社の持続的な成長及び長期的な企業価値の向上を図る観点から、意思決定の透明性・公正性を確保するとともに、保有する経営資源を十分有効に活用し、迅速・果断な意思決定により経営の活力を増大させることがコーポレートガバナンスの要諦であると考え、次の基本的な考え方に沿って、コーポレートガバナンスの充実に取り組む。
(i) 株主の権利を尊重し、平等性を確保する。
(ii) 株主を含むステークホルダーの利益を考慮し、それらステークホルダーと適切に協働する。
(iii) 会社情報を適切に開示し、透明性を確保する。
(iv) 独立社外取締役および独立社外監査役に業務執行状況や取締役会決議事項等を丁寧に説明することにより的確な助言を得、業務執行の監督機能を実効化する。
(v) 中長期的な株主の利益と合致する投資方針を有する株主との間で建設的な対話を行う。

 

<実施しない主な原則とその理由>

原則

実施しない理由

<補充原則1-2-4>

議決権電子行使プラットフォームは導入済です。招集通知の英訳は、議案部分について実施しています。

<補充原則3-1-2>

外国法人等の持ち分が10%未満のため、業務、効率面から未実施。20%を超えた段階で実施します。

 

<開示している主な原則>

原則

開示内容

<原則1-3>

総還元性向30%を基本とします。中期での業績動向や財務状況等を総合的に勘案し、安定配当を実施します。また、業績見通しの変動等により、配当性向が30%を大幅に下回ることが見込まれる場合には、自己株式取得を検討します。

<原則1-4>

 

当社は、株価変動の影響を受けにくい強固な財務基盤の構築や資本効率性の向上の観点から、政策保有株式を原則として保有しないことを基本方針とします。ただし、業務提携その他経営上の合理的な理由から保有する場合には、目的に応じた保有であることを検証の上、合理性を定期的に確認します。

<原則4-11>

年に一度、全取締役、全監査役が、取締役会の実効性について自己評価し、その評価方法、評価結果、今後の課題等を取締役会で議論し、改善を図っています。その結果、取締役会の構成は、当社の事業内容および規模に照らして適格であり、多様性も高まりました。また、監査役は、財務・会計または法務に関する知見を有する者が選任されています。

<原則5-1>

 

コーポレートガバナンス基本方針 第1条 第2項にて、「中長期的な株主の利益と合致する投資方針を有する株主との間で建設的な対話を行う。」と定めた上で、第21条第3項にて、「3.当社は、株主との建設的な対話を促進するためにIRをサポートする部門を配置する。」と定めています。

<補充原則5-1-2>

 

(i) 対話全般について代表取締役社長が統轄し、且つ担当します。

(ii) 経営企画グループをIR活動の事務局と定め、本グループが各部門と有機的に連携しています。

(iii) 毎年、IR活動計画を策定した上で、その充実・進化を継続的に進めています。

(iv) 対話にて重要な株主の意見等が把握できた場合は、速やかに常勤役員で構成する経営会議等に報告し検討します。さらに必要に応じ、取締役会へ報告等を実施します。

(v) 説明資料のHP開示、説明者の限定により、発信情報の均一化に取り組んでいます。特にインサイダー情報についてはグループ行動規範に則り、厳格に運用しています。

<原則5-2>

 

自社の資本コストを的確に把握しており、事業ポートフォリオの見直し、中長期的な設備投資や研究開発を実行し、これらは経営計画等に織り込み、適宜公表しています。

 

 

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