ブリッジレポート
(4930) 株式会社グラフィコ

スタンダード

ブリッジレポート:(4930)グラフィコ 2022年6月期第1四半期決算

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長谷川 純代 社長

株式会社グラフィコ(4930)

 

 

企業情報

市場

東証JASDAQ(スタンダード)

業種

化学(製造業)

代表取締役社長

長谷川 純代

所在地

東京都品川区大崎 1-6-1 TOC 大崎 16F

決算月

6月

HP

https://www.graphico.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

2,042円

929,040株

1,897百万円

11.3%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

0.00円

-

214.04円

9.5倍

2,091.14円

1.0倍

*株価は1/21終値。発行済株式数、DPS、EPSは22年6月期第1四半期決算短信より。ROE、BPSは前期実績。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2018年6月(実)

2,807

157

150

23

28.86

0.00

2019年6月(実)

3,377

213

205

144

180.21

0.00

2020年6月(実)

3,499

234

222

148

185.90

0.00

2021年6月(実)

4.096

317

274

182

204.74

0.00

2022年6月(予)

4,100

300

290

198

214.04

0.00

*単位:百万円、円。予想は会社側予想。「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を22年6月期第1四半期の期首から適用。

 

株式会社グラフィコ会社概要、業績動向、成長戦略、長谷川社長へのインタビューなどをお伝えします。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2022年6月期第1四半期決算概要
3.2022年6月期業績予想
4.成長戦略
5.長谷川社長に聞く
6.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 「モノ創りで、笑顔を繋ぐ」を経営ビジョンとして、健康食品、化粧品、日用雑貨、医薬品を中心に商品企画から、マーケティング、プロモーション、セールスを一貫して手掛けるファブレスメーカー。女性向け商品を中心に多数のヒット商品を市場へ送り出している。企画開発部は全員女性という開発体制が大きな特徴で、自らが生活者の立場に立って女性ならではの視点から商品企画・開発を行なっている。

     

  • 2022年6月期第1四半期の売上高(収益認識基準適用無し)は前年同期比1.2%増の11億61百万円。酸素系漂白剤 オキシクリーンが好調なハウスホールドが増収も、他カテゴリーは減収。営業利益は同16.7%増の1億32百万円。増収及び売上原価の減少により売上総利益は同10.2%増加し、粗利率も4.1ポイント改善。一方で、効率的な事業運営で、人件費、販売費など販管費の上昇を抑制し、2ケタの増益となった。

     

  • 業績予想に変更は無い。22年6月期の売上高(収益認識基準適用無し)は前期比5.6%の43億27百万円、営業利益は同4.2%増の3億31百万円の予想。輸入品の一部における供給不安要素や、新型コロナウィルス感染拡大による不透明な市場の継続を想定し、慎重な予想としている。フェムテック市場での新プロジェクト立ち上げ、新商品の研究開発など、未来へむけた事業創造への投資を積極的に実行していく。配当は無配の予定。

     

  • 持続的な成長のため、「フェムテック市場での展開」「ハウスホールドのオリジナルブランド展開」「事業ポートフォリオの最適化」「環境への配慮」の4つの重点施策に注力する。

     

  • 長谷川社長に、ビジョンの共有、競争優位性およびその持続・発展のための取り組み、成長戦略、課題、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。「当社は大変真面目な会社です。ユーモア溢れるネーミングの商品が多いのですが、真面目な人間がそろっており、真面目に仕事に取り組んでいます。これからも今まで困っていたけど無かった商品を開発し、事業を成長させてまいりますので、その点に是非ご期待ください。また、企業の成長に加え、当社は社会貢献にもしっかりと取り組んでまいります。当社に投資していただき、株主となっていただいた皆様とご一緒に社会に貢献していくことができれば大変嬉しい限りです」とのことだ。

     

  • 長谷川社長の創業の想いは、『これまで多くの人達に助けていただいて生きてこられた。今度は、自分が周りの人達を助けることができる人間になりたい』というもの。この思いは「真面目な」同社の重要な土台となり、本業である女性の悩みを解決する各商品開発はもちろんのこと、途上国に現地の人々と一緒になって産業基盤を構築する『途上国に産業を!「FEEL PEACE」プロジェクト』を始めとしたSDGsの取り組みとして具現化している。株主となって同社と共に社会課題の解決に参加するということも投資家の選択肢の一つかもしれない。

     

  • 一方、今後2-3年でのハウスホールド及びヘルスケアにおける次のミリオンセラーが登場するかという点が成長のカギになる。商品開発に際しては、ニーズを確実に取り込み、なおかつ使用実感がよくリピートするものなど、基本的にかなり厳選したもののみリリースする方針であるため、「SKU増=売上増」とは判断できず、会社側からの開示や説明をベースにミリオンセラーの登場を期待していくということになる。足元はコロナ禍の影響が大きく株価も上場来安値圏での推移となっているが、フェムテック関連の新製品・新サービスのリリースも含め、同社からの情報発信を注目していきたい。

     

1.会社概要

「モノ創りで、笑顔を繋ぐ」を経営ビジョンとして、健康食品、化粧品、日用雑貨、医薬品を中心に商品企画から、マーケティング、プロモーション、セールスを一貫して手掛けるファブレスメーカー。自社オリジナル商品に加え、海外商品の独占販売権取得や日本用オリジナル商品の製造を手掛け、女性向け商品を中心に多数のヒット商品を市場へ送り出している。企画開発部は全員女性という開発体制が大きな特徴で、自らが生活者の立場に立って女性ならではの視点から商品企画・開発を行なっている。

 

【1-1 上場までの沿革】

1994年に長谷川 純代氏(現 株式会社グラフィコ 代表取締役社長)が、化粧品や健康食品の商品企画・販売促進・マーケティング等、クリエイティブ制作を行う企画事務所を創業。1996年に現在の株式会社グラフィコの前身である「有限会社スタジオグラフィコ」を設立し、日本の大手メーカーの商品企画をはじめ、米国や韓国などの海外商品を日本市場向けのプロデュース事業を展開。その際に蓄積したノウハウ・実績を基に、2004年、自社オリジナル商品を企画開発し販売するメーカー事業をスタートさせる。日本で初めて、インフォメーション(情報)とコマーシャル(広告)とを掛け合わせた造語でテレビCMの一種であるインフォマーシャルを放映した。
2008年には米国Church & Dwight Co., Inc.よりオキシクリーンの内国企業における唯一の日本オリジナル商品の販売を含む独占販売権を取得。オキシクリーンはその後、同社の主力製品に成長する。
2013年に株式会社グラフィコへ社名変更。
2017年には製薬会社「みらいファーマ株式会社」を完全子会社化後吸収合併し、医薬品の製造販売にも事業領域を広げる。
健康食品、化粧品、日用雑貨、医薬品等をドラッグストア、GMS(General MerchandiseStore、大規模総合スーパー)、ホームセンター、バラエティストアに供給し、業容は着実に拡大。
2020年9月、東証JASDAQ(スタンダード)に上場した。

 

【1-2 理念】

同社のVision、Mission、Valueは以下の通り。
変容する働き方やライフスタイルの中で頑張る人々を応援し、心身ともに健康的で美しくありたいと願う女性達や家族に笑顔で幸せな生活を楽しんでもらうための商品を創出している。

 

Vision

モノ創りで、笑顔を繋ぐ。

Mission

常に創意工夫の限りを尽くし、お客様の立場に立った思考で、本当に求められる商品を創出することで、人々を楽しく幸せにできる商品を提供いたします。

Value

「心」を大切に、自分の利益だけでなく周囲や世界規模まで思いやり、仕事のみならず人として成長し積極的に世界に貢献できる企業を目指しています。

 

また、行動指針に、 「真摯さ」 「向上心」 「思いやり」を掲げ、「心」を大切に、自分の利益だけでなく世界規模まで周囲を思いやり、仕事のみならず人として成長し、最大限の創意工夫と精進で人々の役に立ち社会に貢献できる企業を目指している。

 

【1-3 事業内容】

(1)商品カテゴリー
健康食品、化粧品、日用雑貨、医薬品の企画及び販売を主たる事業とする単一セグメント。
取扱商品カテゴリーは、健康食品を中心とする「ヘルスケア」、化粧品を中心とする「ビューティケア」、日用雑貨の「ハウ
スホールド」、医療用医薬品と一般用医薬品の「医薬品」、「その他」に区分している。

 

 

カテゴリ―

代表商品とその概要

健康食品(ヘルスケア)

 

現代人の乱れた食生活や運動不足など「健康習慣の悩み」に着目した商品を展開

 

 

「なかったコトに!」

食事のおともに飲むことで、気にせず食事を楽しめるサプリメントシリーズ

 

「満腹30倍」

水を含むと30倍以上に膨らむ種(タネ)バジルシード(シソ科メボウキ属の多年草であるバジルの種)を用いたキャンディシリーズ

化粧品(ビューティケア)

 

お肌の悩みや冷え、足のニオイなど「美容の困りごと」の本質を捉えた商品を展開

 

 

「フットメジ」

洗って足の角質や菌・ニオイをケアできる「足用角質クリアハーブ石けん」をはじめとするフットケアシリーズ

 

「優月美人」

韓国の「よもぎ蒸し」をイメージして開発された、下着に貼って温めるタイプの「よもぎ温座パット」をはじめとした温活サポートブランド

 

「スキンピース」

途上国の教育・産業支援を行う「FEEL PEACE プロジェクト」から生まれたブランド。シアバター(シアの木「シアーバターノキ」の実の種から採れる天然の植物油脂)と食べ物由来成分(※)で作った高保湿スキンケアシリーズ

日用雑貨(ハウスホールド)

 

オキシクリーンの日本独占販売権を取得し、日本向けオリジナル商品も展開

 

 

「オキシクリーン」

酸素パワーで衣類等の汚れ・シミを落とす酸素系漂白剤ブランド。衣類だけでなくキッチンやお風呂などの汚れにも使用できる。米国大手家庭用消費材メーカーであるChurch & Dwight Co., Inc.が世界展開するブランドで、内国企業において、唯一、日本オリジナル商品の販売を含む独占販売権を取得している。

医薬品

 

肩こり・腰痛・しみ・そばかすの軽減など「女性のより深い悩みをケアできる医薬品」を展開

 

 

「消毒用エタノール「TX」(第3類医薬品)」

皮膚や器具などの消毒に使える高濃度の殺菌・消毒用エタノール

 

「ビタミンC2000(第3類医薬品)」

しみ、そばかす、日やけ・かぶれによる色素沈着の緩和や体力低下時などのビタミンC補給を目的とした商品。錠剤及びチュアブルタイプがある。

 

「こりキュン 鎮痛消炎ミニ温膏(第3類医薬品)」

「香り」「形状」「色柄」「貼り心地」にこだわった温感パッチ。肩こり・腰痛に効く第3類医薬品である外用消炎鎮痛剤。

 

特に、女性の潜在ニーズを引き出し、新発想の商品を世の中に定着させることに注力。以下のような累計販売数100万個超えの商品「ミリオンセラー」を複数生み出している。

ミリオンセラー商品名

累計出荷数

発売開始時

満腹30倍 キャンディシリーズ

729万個

2005年3月

なかったコトに! サプリメントシリーズ

752万個

2009年5月

優月美人 よもぎ温座パット(個包装換算)

1,505万個

2008年10月

オキシクリーン(粉タイプ)

1,368万個

2008年10月

オキシクリーン マックフォースシリーズ

259万個

2009年8月

フットメジ 足用角質クリアハーブ石けんシリーズ

842万個

2010年5月

フットメジ 足用ピーリングスプレー

122万個

2014年3月

スキンピース ファミリーUVシリーズ

113万個

2016年3月

 

 

(2)商品化から販売までの流れ
「生活者が必要としている」「使用実感が高い」「ポジティブな気持ちになる」商品を企画開発しており、常に使う人の立場で考え、シーズ(原材料や技術等に基づく製品アイデアや消費者自身が気が付いていないニーズ)を探り、ニーズを把握し、「①調査→②企画→③開発→④宣伝→⑤販売」の5アクションで独自性のある複数のヒット商品を生み出している。

 

① 調査
調査段階においては、ブランド育成のため、新商品として可能性のあるアイテムを検討し、ターゲットとする市場規模や顧客、想定される競合先(商品)、商品の使用感、成分等の調査、分析を行っている。また商品のネーミング候補に係る商標権等について第三者の知的財産権侵害の可能性の事前調査も可能な限り対応している。
また、初めに商品を開発する場合のみでなく、既に市場に投入した商品についても使用者に直接感想を聞き取りする「抽出調査」とデータに基づく「定量調査」繰り返し行い、商品力を高めている。

 

② 企画
クリエイティブ事務所として創業以来培われたノウハウを活かして、商品企画、パッケージ企画、コンセプト設計、マーケティングリサーチ等を実施しながら、メインターゲットである女性の潜在ニーズを探り、市場が必要とし、かつ効果が実感できる商品企画を目指している。
企画開発部門は全員20代から50代の女性で構成され、ターゲットとなる顧客のニーズをくみ上げている、企画段階においては、「ターゲット層の見極め」「マーケット分析」「市場ニーズの高い商品企画」「効果実感の高い商品」を意識している。

 

③ 開発
製造設備を自社で保有せず、外部へ製造委託するファブレスメーカーとして最適な原料・資材の調達、生産委託先の選定や製造管理等を行うことで、製造コストを抑え、市場ニーズの変化に対応できる機動力を高めている。
同時に、商品の企画、開発、マーケティング、プロモーション、セールスに経営資源を集中し、同社の強みである顧客訴求力の高い表現方法やニーズを捉えるデザイン・表現等のクリエイティブ力を活かした独自性のあるアイデア商品を柔軟に展開している。
その他、自社開発商品以外に、マーケティング力を活かして、オキシクリーンの日本における独占販売権取得による海外商品の輸入販売や、製造元との協議による日本向け商品の共同開発を行っている。

 

④ 宣伝
販促計画及び広告戦略を立案し、その戦略を推進するための効果的なセールス・プロモーションツール(営業用提案資料)を制作している。制作した各種店頭用販促物や印刷媒体を活用し、費用対効果を検討しながら雑誌やウェブ等のメディアを主体に広告宣伝活動を実施し、各ブランドの認知度向上を図っている。

 

店頭で商品が埋没しないよう、その商品の明確な世界観を創造し、顧客がその商品の特長が伝わるような工夫を重ねている。
商品を置く店舗にとっても、置いてあるだけで商品説明になることは重要なため、サイズを店舗ごとにリサイズするなど、きめの細かい対応をすることで、ユーザーである消費者のみならず、クライアントである店舗にもメリットを提供している。

 

⑤ 販売
市場、競合、商品使用感等についての分析を基に、より効果的な販売戦略を立案し、消費者に訴求力のある販促物を活用しながら、販売店舗の売り場作りやPB(プライベート・ブランド)商品等の提案営業を進めている。
主要な顧客は国内の問屋であり、同社商品は問屋を通じて国内のドラッグストア、GMS(General Merchandise Store、大規模総合スーパー)、ホームセンター、バラエティストア等、約28,000店舗で販売している。
海外においても国内外の代理店を通じ、中国、韓国、米国、香港、台湾、タイ等12か国・地域で商品を販売している。また、自社サイトや他社のプラットフォームを活用した通信販売も行っている。

 

【1-4 特長と強み】

(1)商品の企画、開発、マーケティング、プロモーシン、セールスに経営資源を集中
前述のように、同社は、製造、物流を外部へ委託するファブレス企業であり、商品の企画、開発、マーケティング、プロモーション、セールスに経営資源を集中している。

 

(2)独自性の高い商品開発
他社にはない独自性の高い商品開発における同社の強みは以下の3点である。

 

①女性の健康を想い徹底的に品質のこだわる商品開発
女性のライフスタイルの多様化に伴い、女性の健康維持に対するニーズは年々高まっている。
同社の企画本部は8割が女性。うち、企画開発部門は全員が女性であり、自らが生活者の立場に立って女性ならではの視点から商品企画・開発を行なっている。

 

②消費者の「見えない困りごとに寄り添う商品開発
生活者自身がまだ気づいていないニーズに迫る商品開発も同社が得意とするものである。
生活者の声から「隠れた困りごと」を発掘し、新しい価値観・アイデアを付加した商品を創出している。
生活者の声を聞くために、商品のパッケージにQRコードを設置しているほか、座談会やセミナーを実施し、コミュニケーションの場を設けている。

 

③元デザイン会社ならではの自由で柔軟なパッケージ・ネーミング
1996年に広告デザイン会社として創業したことから、現在も社内にデザイン部門を備えており、商品開発における企画のみでなく、パッケージやネーミング、POPなどの販促物にも自由で柔軟な発想力が活かされている。
商品特長がわかりやすいネーミング、店頭で目をひくパッケージデザイン、話題になりやすいプロモーション、有名なキャラクターとのコラボレーションなどに力を入れている。

 

(商品開発の実例:「フットメジ」)
化粧品カテゴリーにおける、洗って足の角質や菌・ニオイをケアできる「足用角質クリアハーブ石けん」をはじめとするフットケアシリーズ「フットメジ」は、ニッチ分野のトップブランド商品。

 

身体の洗浄剤は、シャンプー、洗顔用せっけん、ボディーソープと細分化されているが、足の裏は「臭い」「角質」「汚れ」など様々なトラブルがあるにもかかわらず、専用の石鹸は無く、例えば角質はナイフで削るなど女性にとっては大変な問題であった。
こうした女性の悩みに対し、洗うだけで匂いや汚れのみならず、角質の悩みも解決するのが「フットメジ」。
当初は女性用としてスタートしたが、利用者へのアンケートやヒアリングの結果、配偶者や子供の足の臭いに困っているケースも多いことが判明し、男性用はしっかりと臭いをなくす商品、女性用は「ローズの香り」、子供用は人気のアイスとコラボした「ソーダの香り」など、利用者の特性も考慮した商品とした。

(フットメジ ウェブサイトより)

 

【1-5 サステナビリティ、SDGs】

サステナビリティ方針は「未来へ笑顔を繋ぎ、世界に貢献できる企業へ」。

 

Valueに、「『心』を大切に、自分の利益だけでなく周囲や世界規模まで思いやり、仕事のみならず人として成長し積極的に世界に貢献できる企業を目指しています」とあるように、周囲・地球への貢献を重視している同社は、上記のサステナビリティ方針の下、4つの活動領域で取り組みを進めている。

 

(1)途上国支援:途上国に産業を!「FEEL PEACE」プロジェクト

 

ベナン共和国の産業であるシアバターを正規の価格で購入し、加工プロセスも依頼して、化粧品を開発している。
ビジネスの仕組みから現地の人たちと一緒に構築することを大切にしており、10年以上継続している。
シアの木は現地では神聖な木とされており、女性しか触れることを許されないため、シアバターの製造も女性のみで行われ、これまでに40名以上の女性雇用を創出している。
また、寄付など一時的な支援ではなく長期的に安定した産業の発展に貢献し、現地では得られた収益で村の子供たち数百名全員が小学校に通えるようになるなど、教育水準の向上にも寄与している。

 

(2)女性の身体への思いやり:あたため研究所「温活36.5℃」

 

同社は身体と心をあたためることである「温活」という言葉の登録商標を取得し、2011年から「温活」プロジェクトを始動している。日本人の平均体温は約60年前の36.89℃に対し、現在は36℃ともいわれ、体温の低下は免疫力の低下につながるといわれている。現代では女性の社会進出に伴い、「冷え」からくる女性特有の悩みも深刻になっており、同プロジェクトでは女性の活躍を支え、QOLの向上を目指している。

 

温活メディア「あたため研究所 温活36.5℃」を運営し、「温活」を身近に感じてもらうように。温活に関する情報や、働く女子の気になる物事を発信している。
また、社内の女性を中心に、温活について研究するあたため部活動「温活女子会」では、身体をあたためる運動から温活に良いとされる食事の見直し、温活に関するワークショップの実施、漢方ミュージアムなどの温活取材などに取り組んでいる。
他にも、「温活女子会」で出たアイデアをもとに、「欲しい」をかたちにした温活雑貨・温活化粧品などのプロデュースも行なっており、貢献だけでなく事業機会の創出にもつなげている。

 

(3)女性目線の商品開発:女性による商品開発

 

同社の女性従業員割合は64%で、企画開発部では管理職も含めすべてが女性社員。消費者とのコミュニケーションを大切に、顧客の生の声を企画開発に反映している。
また、女性の社会活躍に伴い、健康への意識も高まっており、女性を応援する新商品が増えることで女性が職場で本来の能力を発揮できるようになり、社会全体の女性活躍推進にもつながると考えている。
加えて、東京都女性活躍・両立支援計画策定企業に選出されており、女性のライフステージ・体調に合わせた就業規則の構築などを行っている。

 

(4)環境への取り組み:地球の限られた資源を大切に

 

地球の限られた資源を無駄に浪費することなく、省資源化、廃棄量の削減に取組んでいる。
2020年11月から「単純焼却ゼロ・埋め立て処分ゼロ」の方針で準備を進め、2021年4月より返品処理はゼロエミッションを達成している。
商品包装の改善にも取り組んでおり、2018年「よもぎ温座パット 6P入り」の個包装の仕様を変更し、およそ7トンものプラスティックゴミの削減を実現した。
また、2021年には東京都の資源の有効利用やエネルギーの有効利用など、「もったいない」の意識を伝え、行動変容のきっかけを促す活動「チームもったいない」に加入した。

 

 

2.2022年6月期第1四半期決算概要

【2-1業績概要】

 

21/6期1Q

(適用無)

構成比

22/6期1Q

(適用無)

構成比

前年同期比

22/6期1Q

(適用有)

売上高

1,148

100.0%

1,161

100.0%

+1.2%

1,117

売上総利益

527

45.9%

581

50.0%

+10.2%

531

販管費

413

36.0%

448

38.6%

+8.2%

411

営業利益

113

9.9%

132

11.4%

+16.7%

120

経常利益

90

7.9%

126

10.9%

+39.1%

122

四半期純利益

55

4.8%

87

7.5%

+58.5%

84

*単位:百万円。「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を22年6月期第1四半期の期首から適用。

 

増収増益
収益認識基準適用無しの売上高は前年同期比1.2%増の11億61百万円。オキシクリーンが好調なハウスホールドが増収も、他カテゴリーは減収。
営業利益は同16.7%増の1億32百万円。増収及び売上原価の減少(前期は新商品・リニューアル品投下に伴う旧商品の
在庫評価損に伴い、一時的に売上原価が増加)により売上総利益は同10.2%増加し、粗利率も4.1ポイント改善。一方で、効率的な事業運営で、人件費、販売費など販管費の上昇を抑制し、2ケタの増益となった。

 

【2-2 カテゴリー別動向】

 

21/6期1Q

(適用無)

構成比

22/6期1Q

(適用無)

構成比

前年同期比

22/6期1Q

(適用有)

ヘルスケア

118

10.3%

65

5.7%

-44.4%

68

ビューティケア

102

8.9%

100

8.7%

-1.7%

94

ハウスホールド

861

75.0%

965

83.1%

+12.0%

925

医薬品

41

3.6%

26

2.2%

-37.7%

24

その他

24

2.1%

4

0.3%

-81.8%

4

合計

1,148

100.0%

1,161

100.0%

+1.2%

1,117

*単位:百万円。「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を22年6月期第1四半期の期首から適用。

 

(1)ヘルスケア
減収。
新型コロナウイルス感染症拡大に伴うインバウンド需要の停滞が継続しており、未だ回復が見込めない状況にある。主力商品ブランド「なかったコトに!」シリーズの新商品として前年度に発売した栄養機能食品および機能性表示食品により一定の売上は維持したものの、全体としては低調で大幅な減収。

 

(2)ビューティケア
減収。
新型コロナウイルス感染症拡大に伴うテレワークの定着、外出機会の減少やインバウンド需要の減少が継続していることを背景に化粧品需要が落ち込んでおり、厳しい環境が継続している。主力の足ケアブランド「フットメジ」の「薬用 足用角質クリアハーブ石けん 爽快ミント」「足用角質クリアハーブ石けんフレッシュハーブ」といった商品を中心に期初計画に対しては想定を上回って推移している。

 

(3)ハウスホールド
増収。
新型コロナウイルス感染症拡大による衛生意識の高まりや巣ごもり消費などにより日用品は需要が増加。酸素系漂白剤ブランド「オキシクリーン」では、継続して積極的なPRイベントの実施や更なる認知度向上のためのプロモーション活動を実施した。注目度の高まりから導入店舗や導入アイテムも拡大している。ECサイトでも「酸素系漂白剤用漬けおきバッグ」の販売を開始するとともに「オキシクリーン」大容量タイプを中心に売上が増加している。

 

(4)医薬品
減収。
新型コロナウイルス感染症拡大による衛生意識の高まりに伴う除菌・衛生関連製品の需要は一巡したものの、「ビタミンC2000」シリーズや「酸化マグネシウム錠」の売上は堅調に推移している。また、2021年8月に鎮痛消炎医薬品の新ブランド「こりキュン」を発売した。

 

(5)その他
減収。
植物石鹸等のPB商品の出荷時期の調整により減収。

 

【2-3 財務状態】

◎主要BS

 

21年6月末

21年9月末

増減

 

21年6月末

21年9月末

増減

流動資産

2,194

2,370

+175

流動負債

382

487

+105

現預金

671

722

+51

仕入債務

90

201

+111

売上債権

463

491

+27

固定負債

5

5

+0

たな卸資産

992

1,098

+105

負債合計

387

492

+105

固定資産

126

137

+10

純資産

1,934

2,015

+81

投資その他の資産

95

106

+11

利益剰余金

1,462

1,538

+75

資産合計

2,321

2,508

+186

負債純資産合計

2,321

2,508

+186

*単位:百万円

 

現預金の増加などで、資産合計は前期末比1億86百万円増加し25億8百万円。仕入債務の増加などで負債合計は同1億5百万円増加の4億92百万円。利益剰余金の増加などで純資産は同81百万円増加し20億15百万円。
自己資本比率は前期末から2.9ポイント低下し80.4%となった。

 

【2-4 トピックス】

(1)商品関連
商品関連のトピックスは以下の通り。

 

*医薬品において肩こり、腰痛のための「こりキュン」ブランドを立ち上げ、2アイテムを新発売した。約1,200店舗へ導入済。
*オキシ漬けが簡単にできる「漬けおきバッグ」をEC限定で新発売した。オキシクリーンユーザーに高評価である。
*ヘルスケアで、ドイツ・セバファルマ社のスキンケアブランド「セバメド(Sebamed)」の日本独占販売契約を締結した。2022年4月1日より販売開始を予定している。

 

(2)セルフケアにより子宮内フローラを整えるフェムテック製品開発に向けVarinos株式会社と共同開発契約を締結
21年6月、Varinos株式会社と、子宮内フローラに関わる製品の共同開発契約を締結した。妊娠が成功しやすい子宮内環境づくりを目的とする製品化の研究および開発を進める。

 

(Varinos株式会社 概要)
診断や治療方針の決定にゲノム情報を利用するゲノム医療の実現化を目指したベンチャー企業。
他国から遅れをとっている日本のゲノム検査業界をけん引すべく、本格的なゲノム解析が実施できる衛生検査所として、精度管理を徹底しながら次世代シークエンサーを使った新しい検査サービスを医療機関に提供している。
子宮内フローラ検査を世界で初めて実用化し、直近では、日本産科婦人科学会が主導するPGT-A多施設特別臨床研究に解析機関として参加。最新のゲノム検査をタイムリーに市場に投入することで日本のゲノム医療の活性化を図り、医療の現場でゲノム検査がもっと身近なものになる社会の実現を目指していることが評価され、中小企業基盤整備機構が主催するJapan Venture Awards 2020(2020年2月25日:虎ノ門ヒルズフォーラム)では経済産業大臣賞を受賞した。

 

(契約の背景・目的)
日本における体外受精における不妊治療件数は毎年増加傾向にあり、2017年には、全国で56,000人の新生児が体外受精によって誕生、過去最高の出生児数となっている(2021年3月 野村総合研究所 不妊治療の実態に関する調査研究より)。
しかし、不妊治療を行うには、「仕事と治療の両立」と「治療費」の課題があるが、この2つの課題解決をサポートするため、医師と連携して臨床研究やゲノム解析を行い、両社で製品開発を実施することとなった。
本開発では、妊娠の成功率に関与すると報告されている「子宮内フローラ」に着目。不妊治療の負担を減らしながら、子宮内フローラの環境を整え妊娠が成功しやすい環境づくりをサポートする製品で、また、腟内および子宮内環境を整えることは、デリケートゾーンに関連する様々な不快感を軽減させる可能性もあるため、より多くの女性たちのQOL向上へも繋がるものと考えている。
不妊治療に取り組む人々の時間的負担と経済的負担の軽減、ひいては少子化という社会が抱える問題解決への貢献も目指している。

 

(3)ガバナンス体制の強化
2021年9月、取締役会の監督機能・監督体制の強化を通じて、より一層のコーポレート・ガバナンスの充実を図るため、監査役
会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行し、独立役員である社外監査等委員3名の体制とした。

 

(4)在庫管理体制の強化
コロナ禍による輸入品の一部における供給不安要素への対応、国内の市場環境が不安定な状況におけるゼロエミッションの実現、および効率的な在庫管理体制を構築するために、商品本部を独立した組織として、企画本部・営業本部・管理本部と合わせて4本部体制とした。

 

(5)新市場区分における「スタンダード市場」を選択
21年7月に、株式会社東京証券取引所より、「新市場区分における上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果について」を受領し、新市場区分における「スタンダード市場」の上場維持基準に適合していることを確認した。
これを受け、新市場区分への移行において「スタンダード市場」を選択することした。
今後は、東証の定める申請スケジュールに従い、新市場区分の選択申請に係る所定の手続きを進めていく。

 

(6)特定非営利活動法人deleteCが主催する「deleteC(デリート・シー)」の活動に賛同
特定非営利活動法人deleteCが主催する「deleteC(デリート・シー)」の活動に賛同し、2021年9月に、「#deleteC大作戦」へ参加した。

 

特定非営利活動法人deleteCは、「みんなの力で、がんを治せる病気にする」ことをミッションに掲げたプロジェクト。Cancerの頭文字である「C」を消す(=deleteする)表現を用い、ふだんの暮らしの中で、誰もががんの治療研究を応援していける仕組みを作り、医療者が推進するがん治療研究に寄付。
「#deleteC大作戦」は、誰もが参加できる投稿アクション。参加者のSNS(TwitterまたはInstagram)への投稿数と、企業・ブランドの公式アカウントが発信する投稿へのリアクション数に応じた金額が、がん治療研究へ寄付される。

 

3.2022年6月期業績予想

【3-1 業績予想】

 

21/6期

(適用無)

構成比

22/6期(予)

(適用無)

構成比

前期比

22/6期(予)

(適用有)

進捗率

対2Q予想

進捗率

対通期予想

売上高

4,096

100.0%

4,327

100.0%

+5.6%

4,100

50.6%

27.3%

営業利益

317

7.8%

331

7.6%

+4.2%

300

48.5%

40.1%

経常利益

274

6.7%

290

6.7%

+5.6%

290

50.4%

42.2%

当期純利益

182

4.5%

198

4.6%

+8.4%

198

53.9%

42.7%

*単位:百万円。予想は会社側予想。

 

業績予想に変更無し、増収増益を予想
業績予想に変更は無い。収益認識基準適用無しの売上高は前期比5.6%の43億27百万円、営業利益は同4.2%増の3億31百万円の予想。
輸入品の一部における供給不安要素や、新型コロナウィルス感染拡大による不透明な市場の継続を想定し、慎重な予想としている。
フェムテック市場での新プロジェクト立ち上げ、新商品の研究開発など、未来へむけた事業創造への投資を積極的に実行していく。
配当は無配の予定。

 

 

【3-2 カテゴリー別動向】

 

21/6期

(適用無)

構成比

22/6期(予)

(適用無)

構成比

前期比

ヘルスケア

559

13.6%

478

11.0%

-14.5%

ビューティケア

516

12.6%

611

14.1%

+18.6%

ハウスホールド

2,837

69.3%

3,036

70.2%

+7.0%

医薬品

125

3.1%

156

3.6%

+24.8%

その他

58

1.4%

44

1.0%

-24.1%

合計

4,096

100.0%

4,327

100.0%

+5.6%

*単位:百万円

 

各カテゴリー合わせ合計14SKUの新商品・リニューアル商品を投入予定。新商品の投入により、店頭展開のさらなる拡大、新販路開拓などにより、ブランド全体の底上げを図る。

 

*ヘルスケア
新商品を複数投下予定だが、引き続き海外・インバウンド需要が見込めない。
7SKUを投入予定。

 

*ビューティケア
フェムテック関連商品の販売を強化するほか、EC専用商品の販売に注力する。
4SKUを投入予定。

 

*ハウスホールド
引き続き販売を強化し、高水準での成長拡大を維持する。
1SKUを投入予定。

 

*医薬品
新ブランドの立ち上げによる店頭展開を強化する。
2SKUを投入予定。

 

【3-3 販売チャネル別】

 

21/6期

(適用無)

構成比

22/6期(予)

(適用無)

構成比

前期比

国内販売

3,701

90.4%

3,954

91.4%

+6.8%

海外販売

159

3.9%

113

2.6%

-28.9%

通信販売

235

5.7%

260

6.0%

+10.6%

合計

4,096

100.0%

4,327

100.0%

+5.6%

*単位:百万円

 

*国内販売
ハウスホールドを中心に、高水準での安定的な成長を維持する。

 

*海外販売
海外専用ヘルスケア商品の販売を継続する。

 

*通信販売
EC販売、テレビショッピングなどのチャネル開拓に取り組む。

 

4.成長戦略

持続的な成長のために以下の4つの重点施策に注力する。

 

重点施策

概要

1. フェムテック市場での展開

現状

現在、優月美人をはじめとする女性特有の不調に寄り添う商品を展開中

 

今後

不妊治療が社会問題化し、国を挙げた取り組みとなっている中、さらなる女性のお悩み解決に向け、フェムケア・フェムテック領域での商品展開を強化する。

Varinos社(臨床検査および衛生検査の受託解析、新世代ゲノム検査の開発)と業務提携し、膣ケア製品の研究開発を開始した。

2. ハウスホールドのオリジナルブランド展開

現状

オキシクリーンの展開拡大により、約28,000店で商品を導入

 

今後

オキシクリーンにおいては、米国Church & Dwight社との連携により、日本市場向けの新商品開発を行う。

オキシクリーン以外のオリジナルブランドを投下し、ハウスホールド市場におけるポジションを確立させ、事業の安定化を図る。

3.事業ポートフォリオの最適化

現状

ブランドではオキシクリーン、チャネルでは国内販売への売上依存度が高い。

 

今後

新規事業開発や他企業との連携により、他のブランド展開や、新規チャネルの構成比の拡大を図る。

より安定的かつ成長余地の見込まれる事業を積極的に展開する。

4.環境への配慮

現状

環境へ配慮した事業を展開中

 

今後

パッケージの省プラスチックや返品商品処理のゼロエミッションの推進により、地球にも人にも優しい企業を目指す。

 

2030年に向け、上記の4施策を推進。変化する時代・ニーズに迅速・柔軟に対応し、国内外の新たなチャネル開拓や、サービスなどの新しいアプローチにより、顧客のより深い悩みをサポートして、着実で継続的な成長を目指す。
また、既存事業に加え、新たなブランド・施策・事業を積極的に展開し、成長スピードを加速させる。

(同社資料より)

 

 

5.長谷川社長に聞く

長谷川社長に、ビジョン共有のための施策、競争優位性およびその持続・発展のための取り組み、成長戦略、課題、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。

 

Q:「近年企業はその社会的な存在意義(パーパス)、ビジョンがますます重視されるようになっています。そしてそれが企業全体に浸透しているかも企業を見るうえで重要な視点となっています。御社は『モノ創りで、笑顔を繋ぐ』を経営ビジョンとされています。また、『これまで多くの人達に助けていただいて生きてこられた。今度は、自分が周りの人達を助けることができる人間になりたい』という長谷川社長の創業に際しての想いも重要な土台になっていると思います。こうしたビジョンや想いを会社全体で共有、浸透させるためにどんなことをされていますか?」

 

日々の会話、会議などのコミュニケーションの場で繰り返し話すということが大切ですが、それに加え当社では以前から社会貢献に正面から取り組んでおり、それがビジョンの共有・浸透に重要な役割を果たしています。

 

最近でこそSDGsが盛んに言われるようになってきましたが、当社では10年以上前から発展途上国に寄付するのではなく、産業基盤、つまり収入源を作ろうと考え、ベナン共和国で活動しています。
現地に自生しているシアの木からシアの実を採り、村のおばあちゃんやお母さんたちに加工・抽出を依頼しシアバターを製造。当社はシアバターを使用した商品を開発し、その原料として購入して日本に輸入するという仕組みを作りました。

 

このような仕組みづくりを一から現地の方々と一緒にやってきたのですが、今ではファミリーのような感覚になっています。
真面目に頑張る方を応援し、お互いに感謝できる関係になっていることは当社にとって大変嬉しいことです。寄付などで一方的に支援するのではなく、継続すること、それこそが本当の支援だと確信しています。

 

以前は、こうした活動は本業の利益を減少させるという理由で、あまり評価されない時期もありましたが、現在では高くご評価いただけるようになり、時代がようやく追いついてきてくれたと思うと嬉しい限りです。
同じように働くのであれば、そこに意義を求める時代だと思います。誰かのために役に立つことを実感することで自身の向上心や喜びに繋がる原動力になる、当社のSDGs活動は、社員一人一人がそうした想いを共有するための環境づくりともなっています。

 

Q:「続いて、御社の競争優位性、御社でなければできないことなどをお教えください」

 

確実に市場はあるけれど他社には手掛けることができない商品を開発できる点です。
特に、多数の女性社員が在職している強みを活かして、女性が抱えている悩みを解決して差し上げるような商品を開発できる点は当社の強力な競争優位性です。

 

女性の社会進出が進み、共働きや子育てしながら働く女性が増えています。男女間の格差が縮小し、平等に近づいていますが、実はだからこそ言いたくても言えない、女性同士では暗黙の裡にわかっているけど口に出しにくい悩みがたくさんあるのですが、そこに手を差し伸べる商品は決して多くありません。
例えば生理痛の悩み。女性同士ではその辛さを分かっていても男性の前ではそぶりを見せられないので、鎮痛剤を飲んで我慢する。でも、こんなに飲み続けて大丈夫かなという不安もある。
他には、時間が無い。子育てしながら働きながらも資格を取りたい、勉強したい、運動もしたいなど、とにかく時間を有効に使いたいというニーズも極めて大きくなっています。
こうした女性の悩みにフォーカスして商品開発を進めています。

 

また、商品開発においては、女性や生活者のニーズを掘り起こすことだけではなく、顧客訴求力の高い表現方法やニーズを捉えるデザイン、表現等のクリエイティブ力なども当社の強み・特長だと考えています。

 

Q:「ありがとうございます。企業規模も拡大し、新しい社員も加わっていく中で、そうした競争優位性、強み・特長を持続・発展させるためにどんな取り組みをされていますか?」

 

人材教育は最も重要でかつ難しい所ではありますが、いくつかの要諦があります。
例えば、ヒット商品開発にあたって絶対に外してはいけないポイントをいくつか決めています。
例えば、同じような商品が極めて少ない、成分に特徴がある、開発する上で他社には手掛けられない点があるなど、何かしらの縛りがあるようなものです。

 

候補の商品企画がそれらにマッチしているかをチェックした上で、お客様の立場で何度も見直すという作業を行って、お客様がメリットを感じないものもどんどん切り捨てていきます。
どうしても作り手は、プロダクトアウトの発想から、作っている途中に自分たちだけで盛り上がってしまう傾向があります。けれどもそこで一度立ち止まり、何も知らずに買い物に来たお客様がどう思うだろうかという視点で見直すと、これは違うということがわかったりもします。
加えて、使用実感も重要です。使っても効果を得られないと感じてしまうとお客様はリピートしていただけません。使うメリットを実感していただけるレベルに商品力を高めなければならず、この軸も重視しています。
こうした調査・検討を何度も何度も繰り返し、本当にお客様の気持ちになってマーケットインの発想で商品の開発を進めることを徹底しています。
こうした作業をOJTで何度も何度も繰り返すことで、当社における商品開発の勘所が身に付き、自分の感覚が鍛えられていくという流れです。

 

新商品開発候補の選別のための会議を頻繁に行っていて、「これはこういう理由なので切る」「これはこういう可能性があるから残そう」といった、その理由をきちんと参加者が発言することで、みんなで勉強し共有していくことが大変重要です。
そうした発言は記録として残していますので、その蓄積は当社にとって目には見えない重要な資産です。
また、ブランドごとに会議を行っており、企画の人間だけではなく、営業の声や目線を反映し、本当に売れるかどうかを含めて協議し、絞り込んでいくというプロセスを踏んでいます。

 

Q:「続いて、御社の成長戦略について伺います。4つの施策を掲げていらっしゃいますが、1つずつコメント頂けますか?」

 

1. フェムテック市場での展開
先程申し上げたように、当社では既に女性の身体の悩みの解決に繋がるような商品を販売しているのですが、これをもう一歩踏み込んでもっと深い悩みの解決に繋げていきたいと考えていました。これから不妊の悩み、女性特有の不快感、そうしたものをケアできる商品を開発していきます。

 

不妊治療は通院の時間も必要でお金もかかる。また身体的な苦痛のみならず、精神的な苦痛も大きい。当社の女性たちも、働く女性たちにとって解決すべき重要な問題と考えていましたので、不妊治療の一歩手前、妊娠しやすくなる体質作りについて研究開発を進めるべく、Varinos株式会社と共同開発契約を締結しました。
まずは医学的なエビデンスを集めるところからスタートし、2年程度で新商品・新サービスのリリースに繋げていきたいと考えています。
これが立ち上がれば大きな社会貢献になると考えています。

 

2. ハウスホールドのオリジナルブランド展開
現在、オキシクリーンで広範な販路を構築できていますので、新ブランドを立ち上げ、この販路やバイヤーとの関係を活用して、販売していきたいと考えています。

 

3.事業ポートフォリオの最適化
足元では、コロナ禍の影響もあり、ハウスホールド以外が減収で、オキシクリーンに売上構成が偏重してしまっています。
オキシクリーン自体は今後も拡大していきますが、他の商品、他のカテゴリーをそれ以上に伸ばして事業ポートフォリオの平準化を図ります。

 

4.環境への配慮
環境への配慮は、従来から継続して行ってきましたが、2020年11月から「単純焼却ゼロ・埋め立て処分ゼロ」の方針で準備を進め、2021年4月より返品処理はゼロエミッションを達成、つまり返品在庫は全部焼却し、再度資源として利用できるようにしました。
その他、容器の仕様を変更してプラスチックごみを削減したり、詰め替え用タイプを発売したりしています。
こうした取り組みは環境意識の高まりとともに、生活者に訴求する重要なポイントと考えています。

 

Q:「3年、5年、10年先を考えたときに会社が持続的に成長するために注力しなければならない点、克服していかなければならない点など、課題があればお聞かせください」

 

当社はファブレスでやっていますので、専門的な研究開発という点に関しては、強みを持っていないのは事実です。
ですので、今回のVarinos社とのアライアンスに見られるように、専門的な研究を行っている企業や研究機関などどの関係を構築して、エビデンスを取り、効果の実感がある、より質の高い商品を開発していくことが重要と考えています。
社内にそうしたリソースを取り込むというよりは、まずは外部とのアライアンスを構築していきます。

 

M&Aに関しては、良いものを作れるのだけど後継者がいない工場などは日本に多いので、そうした会社と助け合うことができるのではないかと考えています。
加えて販路です。現在直販の割合が低く、店頭販売がほとんどです。直販の内製化もしくは販売の専門企業をM&Aするなど、様々な手法があると思いますので、検討していきたいと思います。

 

会社の認知度向上も重要な課題です。
当社は商品名、ブランド名は比較的知られているのですが、会社名が知られていません。上場を機に、認知度、信用力を向上させ、時代の大きな変化に対応でき、企業文化の継承・発展にも重要な、新卒、第二新卒など若手社員の採用も増やしていきたいと考えています。

 

 

Q:「ありがとうございます。それでは最後に、株主・投資家へのメッセージをお願いします」

 

当社は大変真面目な会社です。ユーモア溢れるネーミングの商品が多いのですが、真面目な人間がそろっており、真面目に仕事に取り組んでいます。
その精神を大切にしていますので、これからもお客様のご期待に応えられるような、面白く、気持ちが明るくなって、なおかつ効果の実感が高い商品をお届けしてまいります。「目の付け所が面白い」と仰っていただくことが多いので、今まで困っていたけど無かった商品を開発し、事業を成長させてまいりますので、その点に是非ご期待ください。

 

また、企業の成長に加え、当社は社会貢献にもしっかりと取り組んでまいります。当社に投資していただき、株主となっていただいた皆様とご一緒に社会に貢献していくことができれば大変嬉しい限りです。

 

是非当社を中長期の視点で応援していただきたいと存じます。

 

6.今後の注目点

長谷川社長の創業の想いは、『これまで多くの人達に助けていただいて生きてこられた。今度は、自分が周りの人達を助けることができる人間になりたい』というもの。
この思いは「真面目な」同社の重要な土台となり、本業である女性の悩みを解決する各商品開発はもちろんのこと、途上国に現地の人々と一緒になって産業基盤を構築する『途上国に産業を!「FEEL PEACE」プロジェクト』を始めとしたSDGsの取り組みとして具現化している。株主となって同社と共に社会課題の解決に参加するということも投資家の選択肢の一つかもしれない。

 

一方、今後2-3年でのハウスホールド及びヘルスケアにおける次のミリオンセラーが登場するかという点が成長のカギになる。商品開発に際しては、ニーズを確実に取り込み、なおかつ使用実感がよくリピートするものなど、基本的にかなり厳選したもののみリリースする方針であるため、「SKU増=売上増」とは判断できず、会社側からの開示や説明をベースにミリオンセラーの登場を期待していくということになる。
足元はコロナ禍の影響が大きく株価も上場来安値圏での推移となっているが、フェムテック関連の新製品・新サービスのリリースも含め、同社からの情報発信を注目していきたい。

 

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査等委員会設置会社

取締役

9名、うち社外4名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2022年12月27日
<基本的な考え方>
当社は、コーポレート・ガバナンスの目的を、企業価値の安定的な増大と、株主重視の立場に立ち、経営の健全性を確保し、透明性を向上させることと認識しております。そのために、財務の健全性を追求すること、タイムリーディスクロージャーに対応した開示体制を強化すること及び監査等委員でない取締役及び監査等委員である取締役がそれぞれ独立性を保ち業務執行及び監査責任を果たすことを経営の最重要方針としております。
なお当社は、取締役会の監督機能を強化し、更なる監視体制の強化を通じて、より一層のコーポレート・ガバナンスの充実を図るため、2021年9月29日開催の第25期定時株主総会における承認をもって監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行しました。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由(抜粋)>
【対象コード】
2021年6月の改訂後のコードに基づいて記載しております。

 

【補充原則 3-1-2.英語での情報開示・提供】
当社は、英語版・中国語版のウェブサイトを開設し、英語・中国語での情報提供に努めております。しかしながら、当社株主における海外投資家比率は相対的に低いことから、決算短信、決算説明会資料、株主総会招集通知等の英文等での開示は行っておりません。今後につきましては、海外投資家比率に留意しつつ、株主・投資家のご意見・ご要望等を勘案して英語での情報の開示・提供を検討してまいります。

 

【補充原則 3-1-3.サステナビリティの取組みの開示】
当社は、サステナビリティを巡る課題について、企業の社会的責任(CSR)を果たすことと捉えて対応しております。
この取り組みとして、経営ビジョン「モノ創りで、笑顔を繋ぐ。」を掲げ、「途上国に産業を!」を根付かせるために活動する「FEEL PEACE(フィール・ピース)」プロジェクトを発起し、ビジネスを通じて途上国の「自立と子供たちの幸せ」を支援しております。これにより、当社は資源の少ない途上国に長期的収入源となる産業基盤を作ることによる自立を支援し、単なる寄付やフェアトレードに留まらない社会の実現に取り組んでおります。
また、「単純焼却ゼロ・埋め立て処分ゼロ」の方針のもと、すべての返品商品に対してゼロエミッションを推進しております。
なお、当社は、中期経営計画を作成しておりますが開示しておりません。そのため、人的資本や知的財産への投資等についても開示しておりません。
今後につきましては、情報の有用性を十分に検討した上で、中期経営計画と合わせ、人的資本や知的財産への投資等についての開示要否を検討してまいります。

 

【補充原則 4-1-2.中長期経営計画の実現への努力と未達時対応】
当社は、中期経営計画を策定しておりますが開示しておりません。しかしながら、当社ウェブサイトに四半期毎に決算説明資料を開示するとともに、半期毎に代表取締役CEOが決算内容を説明する動画を開示し、”未来展望”について説明しております。従って現状では、単年度の業績目標の達成を最重要課題として、業績管理会議において月次業績や各部門の課題や今後の活動方針について情報を共有するとともに、活発な議論や意見交換を行い、取締役会において独立社外取締役の意見を踏まえ、業績目標や今後の事業展開に反映し、アナリスト・機関投資家や株主に対して決算説明会において説明を行っております。
中期経営計画も株主に対するコミットメントの一つであるとの認識に立ち、取締役会において、引き続き中期経営計画の開示要否について検討してまいります。

 

【補充原則 4-2-2.サステナビリティの取組み】
当社取締役会は、サステナビリティを巡る課題への対応として、中長期的な企業価値の向上の観点から企業の社会的責任(CSR)として持続可能な開発目標(SDGs)17項目のうち下記5項目を定め、基本的な方針として、取り組んでおります。
1.あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ
4.すべての人々に包括的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
5.ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る
8.すべての人々のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワークを推進する
13.気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る
を事業計画に盛り込んで取り組んでおります。
当該事業計画も含めて、当社取締役会はサステナビリティをめぐる課題への対応として、中長期的な企業価値の向上の観点から企業の社会的責任(CSR)を果たすことを基本的な方針として、監督しております。
一方で、当社は、中期経営計画を作成しておりますが開示しておりません。そのため、経営資源の配分や、事業ポートフォリオに関する戦略の策定・実行についても開示しておりません。
今後につきましては、人的資本・知的財産への投資等の重要性に鑑み、中期経営計画と合わせ、経営資源の配分や、事業ポートフォリオに関する戦略の策定・実行についての開示要否を検討してまいります。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示(抜粋)>
【原則 1-4.政策保有株式】
当社は、政策保有株式としての(上場企業の)株式を保有しておりません。また、(その保有の意義が認められる場合を除き、)原則として、政策保有株式を保有しない方針であります。

 

【原則 5-1.株主との建設的な対話に関する方針】
当社株主との建設的な対話を促進するための体制整備及び取り組みに関する方針は、「コーポレート・ガバナンスに関する基本方針」の「5.株主との対話」に記載をしておりますので、ご参照ください。
当社は、株主や投資家から対話(面談)申込を受けた場合には、当該面談の目的を十分検討し、合理的な範囲で、対応することを基本方針としております。
また、株主や投資家に対しては、決算説明会を半期に1回開催するとともに、逐次、スモールミーティング等を実施しております。当社では、IR担当として取締役CFO管理本部長を選任し、IR活動に関連する部署を管掌し、日常的な部門間の連携を図っております。
IR担当部署は、投資家からの電話取材やワンオンワンミーティング等のIR取材に対して積極的に対応するとともに、アナリスト・機関投資家向けに半期毎の決算説明会を開催し、代表取締役CEOまたはIR担当取締役等が説明を行っております。また、投資家との対話の際は、決算説明会やスモールミーティング等を問わず、当社の持続的成長、中長期における企業価値向上に関わる事項を対話(面談)のテーマとすることにより、インサイダー情報管理に留意しております。

 

【基本原則 5.株主との対話】
当社は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上のため、常日頃から株主と積極的な対話を行い、株主のご意見やご要望を経営に反映させ、株主とともに当社を成長させていくことが重要と認識しております。そのため、IR担当部署を設置し、当社の経営戦略や経営計画に対する理解を得るため、アナリスト・機関投資家向けの決算説明会を半期に1回開催し、投資家との対話の場を設けるほか、株主や投資家からの取材にも積極的に応じております。引き続き、当社をより一層理解して頂けるよう、株主を含むステークホルダーに有益な会社情報は、適時に開示を行ってまいります。
なお、決算説明会資料については当社ウェブサイト、並びにTDnetにて開示しておりますので、ご参照ください。
(「決算説明資料」:https://www.graphico.co.jp/ir/library/presentation)

 

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