ブリッジレポート
(9068) 丸全昭和運輸株式会社

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ブリッジレポート:(9068)丸全昭和運輸 2022年3月期決算

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岡田 廣次 社長

丸全昭和運輸株式会社(9068)

 

 

会社情報

市場

東証プライム市場

業種

陸運業(倉庫・運輸関連業)

代表取締役社長

岡田 廣次

所在地

神奈川県横浜市中区南仲通2-15

決算月

3月末日

HP

https://www.maruzenshowa.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

2,938円

20,612,844株

60,560百万円

8.3%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

85.00円

2.9%

443.77円

6.6倍

5,259.39円

0.6倍

*株価6/16終値。各数値は22年3月期決算短信より。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2019年3月(実)

116,967

7,502

8,315

5,937

298.97

65.00

2020年3月(実)

122,801

8,877

9,477

8,030

396.23

70.00

2021年3月(実)

121,136

9,851

10,490

6,748

332.73

75.00

2022年3月(実)

136,850

11,820

12,567

8,579

423.02

85.00

2023年3月(予)

144,000

13,800

14,500

9,000

443.77

85.00

*単位:百万円、円。予想は会社側予想。2018年10月1日付で5:1の株式併合を実施。EPS、DPSは遡及して調整。
*当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。22/3期のDPSには記念配当5.00円を含む。

 

丸全昭和運輸株式会社の2022年3月期決算概要などをお伝えします。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2022年3月期決算概要
3.2023年3月期業績予想
4.長期ビジョン及び第8次中期経営計画
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 22年3月期の営業収益は前期比13.0%増の1,368億円。国際物流・国内物流とも前期の新型コロナウイルス感染拡大による取扱い減少から回復した。営業利益は同20.0%増の118億円。増収により粗利額は同13.9%増加した一方、販管費をほぼ前期並みにコントロールした。営業収益・利益ともに予想を上回った。

     

  • 23年3月期の営業収益は前期比5.2%増の1,440億円、営業利益は同16.7%増の138億円の予想。第8次中期経営計画の初年度となる23年3月期は、各種施策を推進し、更なる売上および利益の拡大を目指す。配当は、中間配当42.50円/株、期末配当42.50円/株の合計85.00円/株とする予定。予想配当性向は19.2%。22年3月期の配当には記念配当5.00円/株が含まれていたので、普通配当では5.00円/株の増配となる。

     

  • 2031年3月に向け長期ビジョンと2023年3月期を初年度とする3か年の第8次中期経営計画を策定し、公表した。目指す姿を、「テクノロジーと現場力で、お客様の未来を創造するロジスティクスパートナー」とし、「3PL 事業の拡大と高度化」「物流プラットフォームの確立」など事業競争力の強化と、「DXの推進」「人材の確保と育成」などによる企業基盤の強化に取り組む。「3PL 事業の拡大と高度化」においては、新規及び既存 3PL 事業の売上拡大とともに、MALoSと呼ぶ3PL を発展させた同社独自の LLP サービスの確立を目指す。

     

  • 前回のレポートで、「第7次中期経営計画の最終年度となる今期、どれだけ上積みを図れるのか注目していきたい」と書いたが、営業収益はほぼ計画通りも、経常利益は計画を1割以上上回った。コロナ禍の影響もありグローバル物流体制構築は想定通りには進まず、マテハン機器導入による効率化も課題として残ったが、十分及第点と評価されよう。

     

  • 第8次中期経営計画では、グローバル物流事業の拡大に再度取り組みつつ、「3PL 事業の拡大と高度化」を図る。MALoSの推進にあたってはDX導入が重要なカギとなる。従来の労働集約型ビジネスから、施設活用型・データ活用型ビジネスへの変革の進捗を注目していきたい。

     

1.会社概要

陸・海・空の複合一貫輸送に取り組む総合物流企業。現場の「知恵と実績」を活かしたソリューションの提供、「プラスα」のオペレーション、国内外に広がる物流ネットワーク、物流と情報を繋ぐITシステム等が強み。顧客の大半が上場企業という顧客基盤をベースに着実な収益拡大を継続。ロジスティクスを包括的に受託し、全体最適化を実現する「MARUZEN 3PL service」の拡大に注力。減配は一度もなく、前期まで8期連続の増配を実施。

 

【1-1 沿革】

1931年8月17日 創業者中村全宏(なかむら まさひろ)氏が「丸全昭和運輸株式会社」を創立し、京浜工業地帯の鉄鋼、化学メーカーなど、重厚長大産業の顧客を中心に、工場資材、原料、製品の荷造りなど構内作業や運搬を開始した。
また、設立と同時に、中村氏の名前である全宏の「全」の字を「○」で囲んだ店のマークも作られた。
「○」には「永遠」に続く企業であってほしいという願い、「全」には「一度踏み出した道だ、何があってもこの業を全うしよう」という固い決意が込められている。
店名としては最初、「昭和組」も候補に挙がったが、創業当時は昭和6年と、昭和時代も始まったばかりで、店名に「昭和」をつける企業が多かったことから、「昭和」の上に創業者中村全宏氏の「全」をとった「丸全」をつけた。
創業時から単なるトラック輸送だけではなく、上記の構内作業、通関など様々な業務を一括して請け負う「複合一貫輸送」を特徴として顧客企業のニーズを取り込んでいった。
第二次世界大戦後の復興、高度成長の波にも乗り企業規模は急速に拡大、1963年には東証一部に上場した。
国内ネットワークを拡大するのと並行し1971年には国際航空貨物取扱業務に進出。1974年には「MARUZEN OF AMERICA,INC」(ロサンゼルス)、「丸全昭和(香港)有限公司」を設立するなど、海外ネットワークの拡大も積極的に推進する。
2004年には現在の同社を特徴づける3PL事業システムが本格的に稼働を開始。その後も、M&Aも活用して国内外のネットワーク拡充を進めている。
2022年4月、市場再編に伴い東証プライム市場に移行した。

 

【1-2 経営理念】

以下の社是、経営理念を掲げている。

 

 

社是

 

 

(同社WEBSITEより)

 

仕事への熱い思い入れと、それをやり遂げる不断の努力が如何に大切であるかということを意味している。
創業者中村全宏の精神であり、今も全社員に受け継がれている。

 

経営理念

☆物流の分野に於て、お客様第一主義をモットーに、高品質なサービスの提供をします

☆経営基盤の安定と拡大を通じて、株主の期待に応え、広く社会に貢献します

☆社員の福祉向上と人材育成に努め、働き甲斐のある職場をつくります

☆事業運営に当たっては、企業の倫理、社会規範を遵守します

 

1991年、物流新時代を自社が切り拓き、物流の発展に貢献するための道標を示したものとして発表された。

【1-3 市場環境】

国土交通省が発表した「物流を取り巻く現状について」(2018年11月)によれば、国内貨物輸送量は長期的には減少傾向にあったが近年は概ね横這いに、一方国際貨物輸送量はリーマンショックによる減少の後、長期的には概ね増加傾向にある。

 

一方で、2020年以降、コロナ禍による世界的な生産及び物流の縮小があった後、感染拡大沈静化に伴う中国生産の急回復、米国での巣ごもり需要の急拡大、半導体不足・部材不足などの複合要因によるコンテナ不足・物流遅延といった物流能力の回復遅れが顕在化している。
運送業者にとっては荷主の計画通りの運送が困難な状況も発生。荷主にとっても運賃高騰や在庫積み増しなどコスト増を余儀なくされているケースも増加している。

 

(国土交通省資料「我が国の物流を取り巻く現状」2018年11月より)

 

また構造的な人手不足も運輸業界にとっては大きな課題となっている。関連企業はIT活用を含めた様々な施策による効率化に取り組んでいるほか、運送費用の値上げを試みている。

 

(国土交通省資料「物流を取り巻く現状について」 2018年10月より)

 

(主なベンチマーク企業)

コード

社名

売上高

増収率

営業利益

増益率

営業利益率

ROE

時価総額

PER

PBR

9062

NIPPON EXPRESS HD

2,550,000

-

110,000

-

4.3%

8.9

702,143

6.0

1.1

9065

山九

563,500

+1.7

35,000

+1.6

6.2%

9.4

235,915

9.7

0.9

9068

丸全昭和運輸

144,000

+5.2

13,800

+16.7

9.6%

8.3

60,560

6.6

0.6

9069

センコーGHD

700,000

+12.3

26,700

+7.8

3.8%

10.8

131,625

7.8

0.9

※売上高、営業利益は今期会社側予想、単位は百万円。ROEは前期実績、単位は%。時価総額は6月16日終値ベース×6月16日時点直近の短信記載の発行済株式数。単位は百万円。PER(予)・PBR(実)は6月16日終値ベース。単位は倍。

 

PBR1倍割れで、PERも一桁。一層の認知度向上および成長戦略の明確化が必要であろう。

 

【1-4 事業内容】

(概要)
3PLサービスや海・陸・空一体の複合一貫輸送によるロジスティクスをグローバルに展開している。
また、工場や大学の移転、プラント輸出等の各種大型機器の解体から、移設・組立・据付まで一貫して行う機工関連業務、精密機器輸送や危険品輸送等、専門知識と高い技術力を伴う高品質な物流サービスを提供している。

 

(主要顧客)
創業時より重厚長大型産業の顧客企業が多いが、近年では新規開拓により顧客の業種はより幅広いモノとなっている。
主な顧客及びグループは以下の通り。
昭和電工、ダイヘン、富士フイルム、三菱商事、ライオン、旭ファイバーグラス、ニチアス、三井化学、日本電産など。

 

顧客別売上高ベスト10で総売上の約3割、ベスト50で同約6割、ベスト100で同約7割を占め、ほとんどが上場企業またはそのグループ会社となっており、優良な顧客基盤を有している。

 

(主な物流サービス)
◎3PLサービス
調達・生産・販売・回収に係わるロジスティクスを包括的に受託し、ロジスティクスの全体最適化を実現している。

 

*3PLとは?
サードパーティー・ロジスティクスの略。企業の抱えるさまざまな業務の内、物流部門を第三者企業に委託する業務形態を指す。
効率的な物流ルートの構築は企業にとって極めて重要な課題であるが、企業が自前でトラックなどの交通手段、荷物を保管しておく倉庫、必要な人的資源やソフトウェアなどを全て揃えるのは大きな手間と資金がかかる。
そこで、そうした物流業務を丸ごと専門に扱っている外部業者にアウトソーシングし、企業は自社の貴重な経済資源を中核業務に集中させるほうが様々なメリットを得ることができるため、3PLの活用が急速に拡大してきた。

 

3PL導入のメリットとしては、本業集中による商品やサービスの品質向上、在庫最適化を通じた業務の効率化やキャッシュフローの改善などが挙げられる。
例えば、最重要課題となる「単価」と「物量」で構成される物流コストの削減においては、物流部門は物流の管理・運営機能を担っている為、コントロールできるのは「単価」の低減に限られ、それも一定の基準に達すると限界がくる。それに対し、物量はコントロール不可能であり、生産計画・納入条件など「生産部門」、「営業部門」の制約によって決まる。
従って、物流コストの削減は物流部門だけでなく「生産部門」、「営業部門」が三位一体となり全体を最適化するSCM(サプライチェーンマネジメント)の実現が不可欠となるわけだが、同社の提供する「MARUZEN 3PL service」では、顧客と共同で経営戦略に沿った物流の全体設計を策定し、従来の物流業者としての立場を超えて、実物流業務、オペレーション管理にとどまらず、SCM全体を見据えた企画・調整機能も提供しており、この点が大きな特徴である。
また、顧客が求める物流の全体設計と共にPDCAサイクルを回し、継続的な改善活動を提案しながら、共同で更なる物流の効率化を追求している。

 

(同社HPより)

 

この「MARUZEN 3PL service」の効果的な運用を可能にしているのが自社開発した3PL情報システム「MLPシステム」である。
「MLPシステム」は、全てのロジスティクスプロセスを一元的に管理し、顧客の大切な貨物情報をWeb上でリアルタイムに公開するなど「物流の見える化」を可能としている。
同社では物流改善活動の第一歩は「物流の見える化」の推進であると考えているが、その為の効率的な運用と物流データの蓄積・分析を支える物流システムの構築には多大なコストが必要であり、同システムを利用することにより、顧客企業は新たなシステム投資費用を最小限に抑えることが可能である。

 

(同社HPより)

 

3PLにおける同社のもう一つの違い・特徴は、同社が「アセット型3PL」であるという点である。
「アセット型3PL」とは文字通り自社で倉庫や輸送手段、物流拠点などを所有しているプレーヤーであり、これに対し自社ではそれらを所有しておらず、輸送業者や倉庫業者と提携して荷主企業のニーズに対応していく業者を「ノンアセット型3PL」と呼ぶ。

 

高品質なサービスを追求する同社は倉庫など施設を原則的に自社で保有していることに加え、トラックのドライバーの安全教育、構内作業の標準化等にも力を入れているため、顧客からの厚い信頼を得ている。
また自社施設であるため顧客に対しきめ細かいデータの提供も可能で、前述のPDCAサイクルをより効果的に回すことができる点も、同社の3PLサービスが顧客に評価される要因となっている。

 

今後は、以上の3PLサービスを更に発展させた独自のLLPサービス「Malos(Maruzen Advanced Logistics Solution、丸全版先進的物流ソリューション)」を展開していく。

 

◎グローバル物流
国内拠点と世界20か所の拠点網および海外パートナーとの連携により、顧客企業の海外進出、生産拠点の移設などの海外展開をサポートしている。また海外物流システムで現地での物流プロセスを可視化し、海外拠点間の物流効率化、サプライチェーンの効率化を実現している。

 

◎トラック輸送
コンピューター、医療機器、各種検査装置などの精密機械から建設機械・建設資材などの重量物や危険物等の化学品、また事務所や個人引越等の一般貨物まで幅広く対応。専門スタッフが安心できるきめ細やかなサービスを提供している。
鉄道、内航海運、航空輸送による一貫した最適な物流プランを提案している。

 

◎港湾サービス
海上輸送の窓口の港湾において、高いセキュリティ、コンプライアンス体制を背景に、輸出入貨物の通関、輸出梱包など迅速なサービスを提供している。

 

◎鉄道輸送
幹線輸送の鉄道部分を担うJR貨物と全国の集荷・配達の鉄道貨物利用運送事業者と連携し、荷物を戸口から戸口へ届ける複合一貫輸送サービスを行っている。

 

◎保管・流通加工
全国各地に配置している倉庫・物流センターで、貨物の入出庫から保管(在庫管理)、流通加工などの情報システムを駆使してシームレスに行っている。
MLPシステムが入出庫・保管状況などの情報を一元管理。検品、ラベル貼り、小分け、半製品の組立など、ニーズに合わせた流通加工を行うほか、物流センターやSP倉庫の効率的な運用に関する様々な提案を行い、庫内作業の最適化を実現している。

 

◎構内作業
顧客の有する工場・倉庫内で梱包や流通加工、横持輸送、本船積みを伴う出荷作業等、ニーズに合わせた構内作業を行っている。
構内作業のスペシャリストがお客様の工場・倉庫内物流の最適化を実現します。
作業進捗、在庫状況などの情報管理を徹底し、お客様のご要望にお応えします。
作業に応じた荷役機械をご用意し、無理・無駄のない構内作業をご提案します。

 

(事業セグメント)
報告セグメントは「物流事業」、「構内作業及び機械荷役事業」の2つ。この他、報告セグメントに含まれない事業として建設業、警備業、不動産業、保険代理業、自動車整備業等のサービスを提供している。

 

 

セグメント名

サービスの種類

物流事業

*貨物自動車運送事業

*利用運送事業(貨物自動車・鉄道・外航海運・内航海運・航空)

*港湾運送事業(一般港湾運送・港湾荷役(船内、沿岸)・艀運送)

*倉庫業

*通関業

*梱包業

*海上運送事業

*航空運送代理店業

構内作業及び機械荷役事業

工場構内での原料、製品、重量物、精密機械等の移送、組立、充填、構内倉庫への保管、入出荷作業とこれらに附帯する諸作業並びに機械の賃貸

 

貨物自動車運送事業においては自社保有1,000台を含め4,000台のトラックを有している。

 

【1-5 特長と強み】

1931年の創業以来、顧客の製造現場において、顧客と一体となって物流業務を行うことを得意分野としてきた同社の、製品の品質向上、業務の合理化、効率化を追求する挑戦を間近で支えた経験は、アセット型3PL事業者として多様な業界への顧客に対して提供している物流提案や物流サービスの基盤となっている。

 

①現場の「知恵と実績」を活かしたソリューションの提供

顧客の製造現場、流通現場を支えてきた「現場」を知るスタッフを企画担当として配置し、その専門性と物流知識を活かし、データに基づき物流システムの改革、物流現場レベルでの改善提案などを行っている。
リードタイムの短縮、物流コストの圧縮、在庫適正化によるキャッシュフローの増加など、サプライチェーンを最適化することで、顧客の企業価値を最大化する提案を行っている。
現在、石化業界、鉄鋼業界を始め建設機械、日用品、食品、農薬、農産物業界など多岐に亘る顧客と取引しており、それらの経験と実績を基に、顧客の業種・業態に合わせた最適なロジスティクス・ソリューションを提供している。
人手不足、高齢化が進む中、こうした知恵と実績をどのようにして継承し、また新たな知恵を生み出すか、持続可能なものとするかは今後の課題であるが、マニュアル化、標準化、IT化など様々な取り組みを進めている。

 

②「プラスα」のオペレーション
これまでアセット型3PL事業者として、センター内作業、構内作業、流通加工など様々なオペレーションを行ってきた同社のオペレーションの特徴として、通常の物流作業に「プラスα」となる付加価値を顧客に提供していることが挙げられる。
「プラスα」とは、例えば原料の充填や部品のピッキング・梱包など一般的な流通加工に加え、その前後の工程となる、材料の調合、部品の組み立てなど製造工程の一部を代行するサービス。品質はもとより、顧客のニーズに合わせ業務をカスタマイズする力、それを標準化し継続する力は顧客に高く評価されている。

 

③国内外に広がる物流ネットワーク
国内においては、得意先の多種多様なニーズに対応可能な輸送車両。それらを利用した大都市間を結ぶ幹線ネットワーク、大都市をカバーする配送ネットワークなどの輸送ネットワークを全国に展開する物流拠点と共に運用しており、アセット型3PLである同社の強力な事業基盤となっている。
特に大型コンピュータ輸送からスタートした精密機械輸送、大型建機輸送からスタートした重量物輸送は多くの顧客に支持されている。

 

海外においては海外現地法人、海外パートナーとの連携により世界のあらゆる地域に貨物を輸送するネットワークを構築している。国内から海外へ、また海外から国内への原材料、部品、完成品の供給に国内外のネットワークを使い、一貫したサービスを提供している。
特に中国を初めとする東南アジアに力を入れており、物流拠点の拡大、車両・荷役機器などハードウエアの装備を推進している。その他、海上輸送での重量物・プラント輸送には、豊富な経験と実績を有し、国内の機工事業と合わせ、国内外で一貫したプラント輸送サービスを提供している。

 

④物流と情報を繋ぐITシステム
これまで培ってきたノウハウを結集し、自社開発したMLPシステム(3PL情報システム)は、全てのロジスティクスプロセスを一元管理しWeb上で公開することで、在庫情報、輸配送情報、KPI(評価指標)情報等、顧客のロジスティクス戦略をサポートするうえで欠かせない情報を提供している。
物流データの蓄積・分析を支える物流システムの構築には、多大なコストがかかるが、同システムの活用により顧客は新たなシステム投資を最小限に抑えることが可能である。

 

⑤優良顧客に支えられた安定した事業基盤
前述のように上場企業またはそのグループ会社からの売上が大半を占めており、優良な顧客に支えられた安定した事業基盤と、それをベースに安定した売上・利益を生み出している点も大きな特徴と強みと言えるだろう。
20/3期まで7期連続で増収増益を達成。残念ながら21/3期は減収となったが、経常利益は8期連続で増益となった。22年3月期は再び増収増益で、23/3期も増収増益予想。経常利益は10期連続増益を見込んでいる。
また配当についても減配は一度もなく、前期まで8期連続の増配を実施している。

 

 

【1-3市場環境】で触れたように、運送業界を取り巻く環境は決して良好ではないが、優良な顧客を多数有する同社は、リーマンショック時には減収を経験したものの、中心顧客となる重厚長大型企業に加え、景気の影響を受けにくい日用雑貨企業など新規顧客開拓を積極的に進めてきた。
今後も「3PLサービス」および「グローバル展開」によって着実な収益拡大を目指している。

 

 

【1-6 目標とする指標】

(1)財務健全性の確保
持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指すためには経営基盤を強化することが必要と考え、成長投資とリスクの許容ができる範囲内で自己資本の水準を保持することを基本としており、自己資本比率は、現状では連結ベースで50%以上を考えている。

 

(2)持続的成長と企業価値向上のための投資
内部留保資金は、物流拠点の確保、保管設備の増強ならびに輸送力強化・環境対応のための車両・機械荷役装置、IT、DXへの投資やM&Aによる事業拡大などに活用し、資本の効率向上に努めている。
自己資本利益率(ROE)は連結ベースで7%以上を安定的に達成できる企業体質を目指している。

 

(3)株主還元
配当については、業績と配当性向、自己資本利益率などを総合的に勘案し、長期的に安定した配当を継続することを基本方針としている。
配当性向は、5年間の連結ベースで平均20~30%程度を目途としており、自己株式取得は、財務状況を考慮しつつ市場環境や資本効率等を勘案し、必要に応じて検討する。

 

【1-7 ROE分析】

 

15/3期

16/3期

17/3期

18/3期

19/3期

20/3期

21/3期

22/3期

ROE(%)

5.7

5.9

6.2

6.1

7.1

9.1

7.1

8.3

 売上高当期純利益率(%)

3.87

3.98

4.22

4.25

5.08

6.54

5.57

6.27

 総資産回転率(回)

0.84

0.87

0.88

0.88

0.91

0.90

0.80

0.83

 レバレッジ(倍)

1.74

1.70

1.67

1.62

1.54

1.55

1.59

1.60

 

22/3期のROEはマージンおよび総資産回転率の改善により上昇し、目標である7%以上を維持した。今後もマージン改善をベースにしたROEの向上実現に取り組んでいく。
注力している3PLはまだまだ収益性向上の余地が大きいということで、売上の拡大とともに3PLのブラッシュアップに取り組んでいく。

 

2.2022年3月期決算概要

(1)業績動向

 

21/3期

構成比

22/3期

構成比

前期比

予想比

営業収益

121,136

100.0%

136,850

100.0%

+13.0%

+1.4%

営業総利益

14,558

12.0%

16,588

12.1%

+13.9%

-

販管費

4,707

3.9%

4,767

3.5%

+1.3%

-

営業利益

9,851

8.1%

11,820

8.6%

+20.0%

+12.6%

経常利益

10,490

8.7%

12,567

9.2%

+19.8%

+14.2%

当期純利益

6,748

5.6%

8,579

6.3%

+27.1%

+15.9%

*単位:百万円。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。予想比は21年11月公表の業績予想に対する増減。

 

増収増益、予想を上回る
営業収益は前期比13.0%増の1,368億円。国際物流・国内物流とも前期の新型コロナウイルス感染拡大による取扱い減少から回復した。
営業利益は同20.0%増の118億円。増収により粗利額は同13.9%増加した一方、販管費をほぼ前期並みにコントロールした。
営業収益・利益ともに予想を上回った。
外部要因である国際物流の回復に加え、昨年11月に大型の3PL案件の受注、新規倉庫の稼働、個別案件の取り扱い拡大など、内部要因が好決算の背景である。

 

(2)セグメント別動向

 

21/3期

構成比

22/3期

構成比

前期比

売上高

 

 

 

 

 

物流事業

104,027

85.9%

119,167

87.1%

+14.6%

構内作業・機械荷役事業

14,819

12.2%

15,397

11.2%

+3.9%

その他

2,288

1.9%

2,284

1.7%

-0.2%

合計

121,136

100.0%

136,850

100.0%

+13.0%

営業利益

 

 

 

 

 

物流事業

8,314

8.0%

10,086

8.5%

+21.3%

構内作業・機械荷役事業

1,089

7.3%

1,301

8.4%

+19.5%

その他

447

19.5%

432

18.9%

-3.4%

合計

9,851

8.1%

11,820

8.6%

+20.0%

*単位:百万円。「構内・機械荷役事業」は、構内作業及び機械荷役事業。営業利益の構成比は営業利益率。

 

<物流事業>
増収増益。前期の新型コロナウイルス感染拡大による既存貨物の取扱い減少から回復した。
各事業の取り扱い動向は以下の通り。

 

(貨物自動車運送事業)
増収
関東地区:日用雑貨が減少。建設機械や住宅資材が増加。
中部地区:ステンレス製品が減少。住宅資材が増加。
関西地区:電力機器関連が増加。

 

(港湾運送事業)
増収
関東地区:荷役設備が減少。建設機械の輸出入や車両の輸出、化学品が増加。
関西地区:電力機器関連が増加。

 

(倉庫業)
増収
関東地区:医薬品や日用雑貨が増加。
関西地区:日用雑貨や電力機器関連が増加。

 

(鉄道利用運送事業)
増収
住宅資材の取扱いが増加した。

 

(物流附帯事業)
大幅増収
外航船収入:化成品や電極関連品が大幅に増加し増収。
航空収入:農業化学品や電力機器関連が増加し増収。
梱包収入:電力機器関連が増加し増収。
荷捌収入:モーター関連製品が増加し増収。

 

<構内作業及び機械荷役事業>
増収増益。
構内作業は、鋼材の取扱いが減少したが、電力機器関連や化学品の取扱いが増加した。

 

<その他事業>
減収減益。
主に工事収入が大型工事案件の受注減少により減収。

 

(3)財務状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS

 

21年3月末

22年3月末

増減

 

21年3月末

22年3月末

増減

流動資産

56,325

63,012

+6,687

流動負債

32,013

32,515

+502

 現預金

14,787

14,150

-637

 仕入債務

12,733

13,318

+585

 売上債権

28,125

29,944

+1,819

 短期借入金

10,254

10,507

+253

固定資産

101,596

107,906

+6,310

固定負債

25,049

29,889

+4,840

 有形固定資産

71,168

77,197

+6,029

 長期有利子負債

17,987

22,451

+4,464

  建物及び構築物

28,240

34,418

+6,178

負債合計

57,063

62,404

+5,341

 無形固定資産

3,242

2,653

-589

純資産合計

100,858

108,514

+7,656

 投資その他の資産

27,185

28,055

+870

 利益剰余金

73,509

80,380

+6,871

資産合計

157,922

170,919

+12,997

負債純資産合計

157,922

170,919

+12,997

*単位:百万円。

 

有形固定資産の取得などで資産合計は前期末比129億円増加の1,709億円となった。
借入金の増加などで負債合計は同53億円増加の624億円。
利益剰余金の増加などで純資産合計は同76億円増加の1,085億円。
自己資本比率は前期末より0.3ポイント低下し62.4%となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

21/3期

22/3期

増減

営業CF

11,376

12,239

+863

投資CF

-11,324

-11,007

+317

フリーCF

52

1,232

+1,180

財務CF

-39

2,672

+2,711

現金同等物残高

25,887

30,250

+4,363

*単位:百万円。

 

税金等調整前当期純利益の増加などで、営業CF、フリーCFのプラス幅は拡大。
長短借入金の増加で財務CFはプラスに転じた。
キャッシュポジションは上昇した。

 

3.2023年3月期業績予想

(1)通期業績予想

 

22/3期

構成比

23/3期(予)

構成比

前期比

営業収益

136,850

100.0%

144,000

100.0%

+5.2%

営業利益

11,820

8.6%

13,800

9.6%

+16.7%

経常利益

12,567

9.2%

14,500

10.1%

+15.4%

当期純利益

8,579

6.3%

9,000

6.3%

+4.9%

*単位:百万円。予想は会社側発表。

 

増収増益予想
営業収益は前期比5.2%増の1,440億円、営業利益は同16.7%増の138億円の予想。
第8次中期経営計画の初年度となる23年3月期は、後述の施策を推進し、更なる売上および利益の拡大を目指す。
配当は、中間配当42.50円/株、期末配当42.50円/株の合計85.00円/株とする予定。予想配当性向は19.2%。22年3月期の配当には記念配当5.00円/株が含まれていたので、普通配当では5.00円/株の増配となる。

 

事業環境については以下のように考えている。
(国内)
*新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が進んでいるものの、未だに収束は見通せず、今後も感染の拡大と縮小を繰り返すことが予想される。
*ウィズコロナ社会における人々の行動や価値観の変容などにより、感染拡大前の水準に戻るには、まだ期間を要するものと思われる。
不安定な国際情勢により、原油価格や原材料価格の高騰による物価上昇、円安リスクにより国内景気や企業収益に与える影響が懸念される。

 

(海外)
*個人消費の増加や設備投資の拡大が持続した結果、各国における経済活動の制限が段階的に緩和され、景気が拡大したが、半導体不足やロシアによるウクライナ侵攻による緊迫化、エネルギー価格の高騰が景気減速につながることが懸念される。

 

4.長期ビジョン及び第8次中期経営計画

2031年3月に向け長期ビジョンと2023年3月期を初年度とする3か年の第8次中期経営計画を策定し、公表した。

 

(1)第7次中期経営計画の振り返り

以下のように自己評価している。

定量目標

営業収益、経常利益とも目標を達成した。

3PL事業

既存荷主からの新規案件の獲得等で売り上げが拡大した。

人事制度の改定

新評価制度を中心に新たな仕組みを導入した。

 

2019年度:役職解任制度の改定

2020年度:新評価制度の導入

2021年度:等級制度の見直しなどの推進

RPAの導入による効率化

以下のような時間削減効果があった。

 

2019年度:111時間/月

2020年度:79時間/月

2021年度(12月末):142時間/月

マテハン機器による機械化・自動化

コスト面等の課題があり、全社的な導入までには至らなかった。

ESG

ガバナンス体制の強化を進めるとともに、環境保護や社会貢献につながる取り組みを推進した。

 

環境(E)

*モーダルシフト推進

*環境保護の取り組み

 

社会(S)

*社会貢献の取り組み(清掃活動、献血活動)

 

ガバナンス(G)

*執行役員制度の導入

*監査等委員会設置会社への移行

*指名・報酬諮問委員会の設置

 

 

(主なポイント)
*グローバル物流事業の拡大、設備移設による売上拡大については、コロナの影響もあり、進捗は遅れている。
*物流ネットワークは新倉庫の設置など、強化が進んだ。
*2022年4月に寮を併設した川崎研修センターが竣工した。人材育成のハードは強化できたので、ソフトの強化にも取り組んでいく。人的資本強化は重要な課題と認識している。
*組織の再編については、トラック運送会社の統合を行った。今後は第8次中期経営計画において作業会社についても統合を行う計画である。
*同社が注力する「品質向上」については、物流品質環境部が中心となり、着実に進めている。
*マテハン機器については、より大きくDXによる効率化・自動化という視点から第8次中計で取り組んでいく。
*M&Aは100億円の計画のうち70億円を実施した。第8次中計でも同額を設定しており、いい案件を獲得したい。

 

(2)長期ビジョン

①目指す姿
目指す姿を、「テクノロジーと現場力で、お客様の未来を創造するロジスティクスパートナー」とし、顧客、社会に貢献する。

 

お客様への貢献

*DXの取り組みを通じて、自社内の省力化を図ると共に、データを蓄積する仕組みを整備し、そのデータを利用した提案で、物流の効率化だけでなく、生産、販売の効率化、高付加価値化をグローバルに提供します。

*物流の共同化、標準化を進める中で、当社独自の現場対応でお客様に貢献します・

社会への貢献

*企業の稼ぐ力のサステナビリティと社会のサステナビリティの両立を目指します。

*株主、取引先、従業員、地域社会などステークホルダーの満足度を高めます。

 

(同社資料より)

 

②基本戦略
長期ビジョンの基本戦略として、以下の4つを掲げている。

 

成長領域への拡大(SDGs をビジネスに)

① カーボンニュートラルに貢献する物流の構築

② 循環型社会に貢献する物流の構築

③ 再生可能エネルギー、新エネルギー分野への参画

DX によるビジネスモデルの変革

① 労働活用型⇒装置活用型⇒情報活用型への転換

② データを利用した当社独自のLLPの展開

③ 業界別プラットフォーム構築によるエコシステムの実現

グローバル物流の拡大

① 自社拠点の拡大

② 海外物流企業とのアライアンスの強化

③ グローバル管理体制の強化

経営基盤、事業基盤の変革

① コーポレートガバナンスの強化(気候変動リスクへの対応等)

② 各社のパフォーマンスを最適化するグループ経営の実現

③ 教育、人事制度、組織変革による現場力の強化

④ 自社拠点の拡充

⑤ 収益構造の転換(情報活用型ビジネスへの転換、コア事業の内製化の推進)

 

(3)第8次中期経営計画

成長ターゲット、事業競争力強化の施策、事業基盤強化の施策、経営目標、投資計画、資本政策を掲げている。

 

①成長ターゲット
今後の成長が予想される業界・分野をターゲットとして、3PL サービスの更なる高度化や、物流プラットフォームによる新サービスの提供により事業拡大を図る。
環境の変化を捉え、自社の強みを活かしていく為に、設備投資やM&Aによる機能強化を実施する。

 

4つの成長ターゲットを設定している。

成長ターゲット1(成長産業)

成長産業と目されるもまだ同社の取り扱いが大きくない分野で、自社の強みを活かせる7業界をターゲットとし、営業の拡大を図る。

*ロボット

*医療機器

*半導体製造装置

*半導体材料

*蓄電池

*電子部品

*産業機械

成長ターゲット2(既存顧客のシェア拡大)

大手既存顧客の中で、成長産業に関わる製品・部材などをターゲットとして、シェア拡大を図る。

成長ターゲット3(差別化分野)

既に提供しているサービスの中で、特に差別化できているサービスを強化し、売上の拡大を図る。

*農産物関連物流サービス

*危険物輸送網

成長ターゲット4(新規事業)

SDGs 等、社会的な要請が強く、今後の成長が期待される分野での事業展開を図る。

*新エネルギー

*リバースロジスティクス

 

②事業競争力の強化

物流事業

3PL 事業の拡大と高度化

*新規及び既存 3PL 事業の売上拡大

*LLP サービス(MALoS ※)によるコンサルティングの拡大

物流プラットフォームの確立

*デジタルプラットフォームによる共同物流の拡大

*物流パートナーとの関係強化

ロジスティクス事業(※)の拡大

*ロジスティクス事業の売上拡大

*持続的な物流サービスの提供

グローバル物流事業の拡大

*海外現地法人の事業拡大

*海外ネットワークの活用による国内事業の拡大

構内作業及び

機械荷役事業

構内作業における機械化・省人化の推進

-

その他事業

機工関連業務(メンテナンス等)のサービス範囲の拡大

-

 

※MALoS(マロス)
「Maruzen Advanced Logistics Solution、丸全版先進的物流ソリューション」。3PL を発展させた同社独自の LLP サービスの名称として設定した。

 

※ロジスティクス事業
事業セグメント「物流事業」の内、3PL・MALoS・物流プラットフォームに該当しない業務を総称してロジスティクス事業とする。

 

③企業基盤の強化

DXの推進

*次期基幹システムの構築

*物流プラットフォームの構築

*デジタイゼーションの推進

人材の確保と育成

*ダイバーシティの推進

*社員のスキル向上

*グループにおける人事制度の整備

設備投資の強化

*物流事業における環境対応の推進

*物流拠点の拡充

M&A の活用

*国内企業のM&A

グループ組織体制の強化

*グループの戦略策定機能の強化(管理部門)

*管理力・現場力の強化につながるグループ再編

*リスクマネジメント体制の強化

IRの強化

*各種情報開示の充実

SDGsへの取り組み

*物流事業と連動した社会貢献の実施

*強靭な物流の実現

 

④経営目標

 

 

 

⑤投資計画(2022年度~2024年度)

設備投資

250億円

DX投資

100億円

M&A

100億円

 

 

⑥資本政策

財務健全性の確保

成長投資とリスクの許容ができる範囲内で自己資本の水準を保持することを基本とし、自己資本比率の水準は連結ベースで 50%以上とする。

配当性向

株主還元を重要政策と位置付け、配当については、会社の業績と配当性向、自己資本利益率などを総合的に勘案し、長期液に安定した配当を継続することを基本方針とする。

配当性向は、5年間の連結ベース平均で20~30%程度を目途とする。

 

(主要ポイント)

◎DX推進について

DXのプロジェクトは21年年初から取り組んでいるが、21年12月にDX推進室を新設し、さらに注力している。

同社の取り組みは主に3つ。

一つは、15年前に構築した基幹システムの切り替え。

一つは、3PL を発展させた同社独自のLLP(リード・ロジスティックス・プロバイダ)であるMALoS(マロス)およびプラットフォームの構築。

もう一つはRPAの導入などを含めた一般的な業務の効率化。

 

最も重要なのは、MALoS(マロス)およびプラットフォームの構築だ。

LLPは、荷主側にたって、物流戦略構築、リードタイムの短縮、在庫圧縮などに取り組む。物流戦略を立てるためには、生産、販売等、荷主から正確な情報を手に入れられるかがカギとなり、LLP成功の重要な要素である。

同社は長年の実績と信頼により顧客から生産から販売、回収まで、物流すべてに関する一貫したデータを預かることができる。このデータを活用して、顧客企業の生産や販売の最適化を支援する。

 

プラットフォームの構築は、同社の得意分野(化学、機械など)に絞り込んで、共同配送・共同物流のプラットフォームを構築する。協力会社とともに、共通基盤のシステムづくりに取り組む。

 

MALoS(マロス)の推進にあたってはコンサルティングも重要な要素となる。

従来の労働集約型ビジネスから、施設活用型・データ活用型ビジネスへの変革を図る。

 

新エネルギー分野

自動車においてはEV化の流れが加速しているが、トラックにおいてはモーターでは十分な出力を得にくいという課題がある。

そこで、トラックにおいては水素、アンモニアを利用したエネルギーの利用が適していると考えられている。

同社は化学メーカーとの長年の取引関係があるため、これを活用してエネルギーの活用を進める。

 

5.今後の注目点

前回のレポートで、「第7次中期経営計画の最終年度となる今期、どれだけ上積みを図れるのか注目していきたい」と書いたが、営業収益はほぼ計画通りも、経常利益は計画を1割以上上回った。
コロナ禍の影響もありグローバル物流体制構築は想定通りには進まず、マテハン機器導入による効率化も課題として残ったが、十分及第点と評価されよう。
第8次中期経営計画では、グローバル物流事業の拡大に再度取り組みつつ、「3PL 事業の拡大と高度化」を図る。
MALoSの推進にあたってはDX導入が重要なカギとなる。従来の労働集約型ビジネスから、施設活用型・データ活用型ビジネスへの変革の進捗を注目していきたい。


<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査等委員会設置会社

取締役

9名、うち社外3名

監査役

-

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2022年7月8日

 

<基本的な考え方>
1.基本的な考え方
当社は激変する経営環境に対し迅速かつ的確に対応し、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現できる体制を確立するため、株主をはじめとするステークホルダーに対し経営の透明性をより高めるとともに、経営理念にも掲げております社会規範の遵守を励行し、コーポレート・ガバナンスの強化と充実に取り組むことが重要な経営課題であると位置づけております。

 

2.基本方針
(1)株主の権利・平等性の確保
当社は、法令に従い株主の権利及び平等性を確保するとともに外国人株主や少数株主に配慮し、株主がその権利を適切に行使することができる環境の整備に努めます。

 

(2)株主以外のステークホルダーとの適切な協働
当社は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出を実現するためコンプライアンスを重視しつつ、株主、顧客、取引先、社会、従業員等の様々なステークホルダーの利益を考慮して適切な協働と良好な関係の維持に努めます。

 

(3)適切な情報開示と透明性の確保
当社は、会社の財務情報及び非財務情報について法令に基づく情報開示を適切に行うとともに、法令に基づく情報開示以外にも株主をはじめとするステークホルダーにとって有用性の高い情報については主体的に提供するよう努めます。

 

(4)取締役会等の責務
当社の取締役会は、株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえ、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を促進し、収益力・資本効率等の改善を図るため、1.中期経営計画を策定し企業戦略の方向性を定める。2.内部統制システム、リスク管理・コンプライアンス体制を整備し取締役・経営陣のリスクテイクを支える。3.社外取締役を複数選任することで取締役・経営陣に対する実効性の高い監督体制を構築する。4.取締役会の監督機能の強化によるコーポレート・ガバナンスの充実の観点から、委員の過半数が社外取締役で構成される監査等委員会が、業務執行の適法性・妥当性の監査・監督を担うことで、より透明性の高い経営を実現し、国内外のステークホルダーの期待に、より的確に応えうる体制の構築をする。以上の4点をはじめとする役割・責務を適切に果たすよう努めます。

 

(5)株主との対話
当社は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のため、株主との建設的な対話を行い経営計画等の内容について明確に説明するとともに、株主からの意見、要望等は取締役会に報告し、経営に反映させるよう努めます。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由(抜粋)>

原則

実施しない理由

(補充原則2-4-1)人材の多様性確保のための目標

当社は、社内における人材の多様性の推進とともに、全従業員の自律的なキャリア形成を支援し、全ての従業員が個性と能力を十分に発揮して、いきいきと働くことが出来る雇用環境の整備に取り組んでおります。

女性の活躍推進に向けては、従業員全体に占める女性従業員の比率を高めるために、女性の多様な部署への配置により、活躍できる環境の整備や、ライフイベントも配慮した多様なキャリアパスの構築等を推進中です。

今後引き続き外国人、中途採用者も含め、多様性の確保に向けて施策を講じ、測定可能な数値目標についても検討してまいります。

(補充原則3-1-3)サステナビリティについての取り組み、(補充原則4-2-2)サステナビリティを巡る取り組みについての基本的な方針

当社は、社会のより良い形成と持続可能な発展に貢献し、中長期的な企業価値向上の創出を実現するために、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)という3つの観点が非常に重要であるとの認識のもと、中期経営計画を策定し、具体的な取り組みを進めていくこととしております。また、人的資本や知的財産への投資等についても積極的に開示するよう取り組んでまいります。

当社の現在の取組については、ホームページに開示しております。

https://www.maruzenshowa.co.jp/csr/

なお、当社はデジタル社会の変化に対応するべく2021年12月1日付でDX推進室を設置しました。

また、TCFDと同等の枠組みに基づく開示について、当社は陸運業として、気候変動が当社事業に与える影響について重要であると認識しております。今後、気候変動に係る収益機会やリスクが、事業活動や収益等に与える影響について必要なデータの収集と分析を行い、評価したうえで開示できるよう努めてまいります。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示>

原則

開示内容

(原則1-4) 政策保有株式の方針、議決権行使 

当社は、投資株式を保有目的によって区別しており、専ら株式の価値の変動または株式に係る配当によって利益を受けることとして所有する株式を「純投資目的である株式」また、純投資目的ではなく、取引関係の維持強化を目的とし、政策的に所有する株式のことを「純投資以外の目的である投資株式」としております。

現在、「純投資以外の目的である投資株式」しか保有しておりませんが、そのうち、当社の企業価値を向上させるために中長期的な視点に立ち、今後の当社事業における営業戦略上の取引関係の維持・強化等を勘案し、政策上、保有の妥当性・合理性が認められる株式については保有していく方針です。

保有の継続に関しましては、その顧客である取引企業との業務取引の状況ならびに保有先企業の財政状況を定期的に確認し、取締役会等においてモニタリングを行い、保有の意義が十分でないと判断される銘柄については、縮減を図ってまいります。

今後も引き続き、モニタリングを継続し、政策保有株式の見直しを行ってまいります。

議決権につきましては、発行会社における財務の健全性に悪影響を及ぼす場合、違法行為が発生した場合等における該当議案には反対するなど、発行会社の持続的成長ならびに当社の中長期的な企業価値の向上につながるかどうかを判断基準として、適切に行使してまいります。

(原則5-1)

株主との対話に関する方針

(ⅰ)目配りを行う経営陣等の指定

総務部・経理部・経営企画部の担当・管掌役員が必要に応じて株主との対話を行っております。

(ⅱ)IR担当との有機的な連携のための方策

当社は、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するため、株主との対話を積極的に行い、意見や要望を経営に反映させ、株主の期待に応え広く社会に貢献することを経営理念に掲げております。そのため、総務部・経理部・経営企画部を中心に連携を取り、株主や投資家との対話の場を設けるなど、株主や投資家からの取材にも積極的に応じております。

(ⅲ)対話手段充実のための取組み

個別面談以外では、個人投資家向け説明会等を積極的に行っております。

なお、大株主に対しては、本決算・第2四半期決算等の説明を行っております。

(ⅳ)フィードバックのための方策

株主・投資家との対話内容は、取締役、執行役員に対して適宜報告しております。

(ⅴ)インサイダー情報の管理に関する方策

当社では、社内規程で内部者取引(インサイダー取引)防止規程を策定し、情報管理の徹底を図っております。

 

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