ブリッジレポート
(2462) ライク株式会社

プライム

ブリッジレポート:(2462)ライク 2023年5月期第1四半期決算

ブリッジレポートPDF

 

岡本 泰彦 代表取締役会長兼社長

ライク株式会社(2462)

 

 

企業情報

市場

東証プライム市場

業種

サービス業

代表取締役会長兼社長

岡本 泰彦

所在地

東京都渋谷区道玄坂一丁目12番1号 渋谷マークシティ ウェスト17階

決算月

5月末日

HP

https://www.like-gr.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(自己株式を控除)

時価総額

ROE(実)

売買単位

2,028円

19,190,103株

38,918百万円

25.2%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

53.00円

2.6%

174.57円

11.6倍

730.69円

2.8倍

*株価は11/8終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
*ROE・BPSは22年5月期実績、EPS・DPSは23年5月期予想、数値は四捨五入。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2018年5月(実)

45,663

1,915

3,889

1,532

81.49

29.00

2019年5月(実)

47,797

1,746

3,753

1,595

84.58

26.00

2020年5月(実)

51,072

2,000

4,067

1,793

94.41

28.00

2021年5月(実)

54,274

3,610

5,341

3,262

171.10

50.00

2022年5月(実)

57,642

4,238

5,234

3,268

170.87

52.00

2023年5月(予)

61,600

4,350

5,300

3,350

174.57

53.00

* 予想は会社予想。単位:百万円、EPS・DPSは円。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益(以下、純利益については同様)。
* 2017年9月、1株を2株に分割。EPSは株式分割を反映。

 

2023年5月期第1四半期の概要と2023年5月期の見通しについて、ブリッジレポートにてお伝えします。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2023年5月期第1四半期決算
3.2023年5月期業績予想
4.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

今回のポイント

  • 23/5期1Qは前年同期比5.1%増収、42.6%経常減益。子育て支援サービス、総合人材サービス、介護関連サービスがいずれも増収。利益面では、子育て支援サービス事業における期ズレ補助金の計上額が前年同期と比べ減少したことなどにより売上総利益率が低下した。介護関連サービス事業における新規施設開設コストが発生して23.2%営業減益。営業外収益では、前年同期に計上した保育施設の設備補助金収入なくなったこともあり経常減益となった。

     

  • 通期予想に修正はなく、23/5期は前期比6.9%増収、1.3%経常増益を見込む。子育て支援サービスでは、認可保育園10ヶ所前後の開設を予定し4.4%増収、総合人材サービスでは、物流・製造、介護、建設、外国人材領域等、成長市場への集中投資を先鋭化させ12.0%増収、介護関連サービスでは引き続き介護付き有料老人ホームを中心とする新規施設の開設を進め1.2%増収を計画する。外国人材就労支援サービスでは入国制限の緩和が追い風。各事業でM&Aの機会もうかがう方針。配当予想も修正なく、中間配当金26.00円/株、期末配当金27.00円/株、年間で53.00円/株を予定している。

     

  • 1Qは各段階利益が2桁減益となったものの、子育て支援サービス事業における期ズレ補助金の減少や介護関連サービス事業における新規開設コスト、前年同期に発生した保育施設の設備補助金収入の反動といった一時的要因や事業展開とはやや異なる要素が主因となっている。各事業が増収かつ業績予想の修正もなかったことから、順調に進捗していると見て良いだろう。10/11から新型コロナウイルスの水際対策が大幅に緩和されている。特に宿泊業や飲食業で人手不足が顕著となっており、今後は外国人材就労支援サービスにおいて活躍の場が広がりそうだ。1Qの数字上で表れたこととは裏腹に事業環境はフォローになっているといえそうだ。また、期初には新たな中期計画も発表しており、27/5期に売上高1,000億円、営業利益80億円を目指す。中期計画達成を前提とすると、営業外に計上する補助金収入を考慮しないでEPSは250円程度が想定される。1Q決算を受けて株価は下落、PERは東証プライム平均を下回る水準となっている。1Qは着実に進捗しており、中期計画における利益水準も考慮するとかなり割安感の強い水準にあるといえそうだ。

1.会社概要

「…planning the Future ~人を活かし、未来を創造する~」をグループの経営理念として掲げ、ゆりかごからハッピーエンディングまで、人生のどの段階においても「なくてはならない企業グループ」を目指して、保育・人材・介護サービスを営んでいる。

(同社資料より)

 

【1-1 沿革】

1993年パッケージ旅行の企画事業を目的として設立。現在の主要事業の足掛かりとなったのは98年に開始した総合人材サービス事業。05年にマザーズへ上場、07年には東証一部へ市場変更。22年4月より東証プライム市場を選択。09年には持株会社体制に移行し、買収を通して保育サービス、介護サービスへ事業領域を拡大させている。

 

(同社資料より)

 

【1-2 事業セグメントとライクグループ】

事業セグメントは、公的保育施設運営と受託保育の子育て支援サービス事業、人材派遣、業務受託、紹介予定派遣・職業紹介、及び採用・教育支援等の総合人材サービス事業、介護施設運営の介護関連サービス事業に分かれる。

 

(同社資料より)

 

グループは、純粋持株会社である同社の他、連結子会社4社及び持分法非適用関連会社1社。連結子会社は、受託保育事業と公的保育事業(認可保育園等の運営)を手掛けるライクキッズ(株)、人材派遣や業務受託、紹介予定派遣・職業紹介等の総合人材サービス事業と携帯電話キャリアショップ運営を手掛けるライクスタッフィング(株)、及び介護施設運営のライクケア(株)。また、施設運営のノウハウを活かした物品・サービス販売を推進するライクプロダクツ(株)を新設した。この他、ライクスタッフィング(株)が20%、携帯電話販売代理店最大手の(株)ティーガイア(東証プライム:3738)が80%、それぞれ出資する合弁会社(株)キャリアデザイン・アカデミーが、法人顧客向け研修サービスを提供している。

 

ライクプロダクツ設立
施設運営のノウハウを活かした物品・サービス販売を推進

①グループ内物品調達

▶まずはグループ内購買を集約

▶スケールメリットを活かしコスト圧縮

 

②業務効率化

▶購買手続きの集約による業務効率化

▶システム導入によるデジタル化推進

 

③物品・サービスの外販

▶子育て・介護世帯向け物販サービス

▶事業者向け運営パッケージサービスの外販

 

【1-3 ライクグループの強みと事業展開の特徴】

祖業である人材ビジネスで培った人材マネジメントスキル

(無資格・未経験の人材を早期かつ大量に戦力化)

×

機動的経営判断による資源配分・ポジショニング

労働集約型成長市場での事業拡大

 

 

強みを活かした事業シナジー
人材マネジメントスキルを土台に各事業が「人」を介して連環しシナジーを発揮

 

(同社資料より)

 

【1-4 中期経営計画】

7月には中期経営計画[21/5期~25/5期]を更新し新たに中期経営計画[23/5期~27/5期]を策定した。

 

■新中期経営計画策定の目的
感染症の拡大は当社グループが運営する事業それぞれがいかに社会から必要とされるサービスか再認識する契機となった。事業環境の変化を事業成長の機会と捉えて圧倒的な事業成長を遂げ、当社グループのサービスを世の中の提供することで真に世の中にとって「なくてはならない企業」となるべく、新たな中期計画を策定した。

 

■中期経営計画における業績目標
27/5に売上高1,000億円、営業利益80億円を計画する。オーガニックな成長を前提に、M&Aにより更なる業績の拡大を狙う。

 

(同社資料より)

 

同社グループのサービスを広く世の中に提供し、様々な社会課題の解決に繋げることで、持続可能な社会の実現に貢献するためにも、計画の達成に向け邁進していく。

 

連結業績の実績と今後の計画

(同社資料より)

 

■中期経営計画の達成に向けた戦略
①子育て支援サービス
27/5期売上高計画 363億円

市場動向

▶2020~2040年の保育ニーズは273万人から334万人へ増加を予想

▶待機児童数:保育所2,944人(潜在待機児童数:61,283人)

学童13,416人

▶今後、少子化進行により上場企業を含めた業界再編が活発化する見込み

 

 

 

 

 

戦略

 

施設開設

▶認可園・受託・学童など様々な運営形態の開設に注力

▶公立園を運営受託するケースへの対応

▶関西圏など新たなエリアへの開設も検討

 

新規事業

▶自社アプリ「ナナポケ」を軸にプラットフォーム事業を推進

▶写真販売サービス「ナナポケフォト」7月から全園に展開

▶自治体向け請求業務等のBPOサービス展開

 

M&A

 

 

▶多数乱立業界のためM&Aを積極検討

 

②総合人材サービス
27/5期売上高計画 450億円

 

 

 

 

 

 

市場動向

戦略

 

モバイル

▶キャリアショップ減少による代理店統廃合が進む

→正社員から派遣ニーズへの移行に伴いシェア拡大を狙う

▶家電量販店向け業務請負案件の大型受注を目指す

 

コールセンター

▶大手ベンダーへの営業活動に注力しシェアを拡大

▶人材不足や働き方改革によるBPO分野伸長に対応

▶公共案件の入札に積極参加

 

物流・製造

▶派遣から業務請負への変換による利益率向上

▶ドライバー・フォークオペレーター等の高単価スタッフ派遣

▶製造から販売まで一気通貫のスタッフ派遣

 

保育・介護

 

▶[保育]首都圏での営業活動に集中し自社保育部門とのシナジーを強化

▶[介護]日本人と外国人材両面での支援を強化

 

建設

▶営業拠点を東京・大阪以外へ拡大し、

大手クライアントの地方拠点人材ニーズに対応

▶未経験者へのBIM講習実施による専門人材の育成・増加

 

③介護関連サービス
27/5期売上高計画 93億円

市場動向

▶今後日本では高齢化率がさらに上昇

特に首都圏を中心とした大都市圏でこの傾向が強まる見通し

▶介護士は2040年には最大69万人不足する見通し

▶特定技能介護分野の受入状況は50,900人の枠に対して10,411人(22年6月末時点)

 

 

 

 

 

戦略

 

施設開設

▶首都圏を中心に介護施設を年間1~3ヶ所開設

▶大手ハウスメーカーだけでなく地場の設計会社など様々なルートからの案件開発を積極化

 

外国人材

 

▶今後も人材部門と連携し積極的に受入を推進

▶現在、当社介護施設では約40名の外国人材が就業

 

M&A

 

▶介護付き有料老人ホーム運営事業者を中心に検討

▶現状、自社施設は神奈川県を中心とした首都圏に位置するが

M&Aによる他エリアへの展開も検討

 

④新たな取組み
27/5期売上高計画 94億円

 

 

 

 

市場動向

戦略

 

 

外国人材

 

▶在留資格「特定技能」に特化した外国人材の紹介

▶介護業界向けの他、

ビルクリーニング・宿泊・外食・飲食料品製造業界向け紹介も検討

▶東南アジア地域の各国で現地送り出し機関・現地学校と提携

▶日本国内の日本語学校と提携し留学生向け当社専用クラスを創設

▶現地法人M&A等による収益性の向上も検討

 

 

ライク プロダクツ

▶初めはグループ内購買の集約による効率化推進→順次外販を開始

▶消費者向け・事業者向け両面で事業拡大を狙う

[消費者向け]

ハードだけでなくソフトも含め提供サービスを拡大しプラットフォーム化

[事業者向け]

今後高まるアウトソーシングニーズに対して

施設運営のパッケージサービスを提供

 

【1-5 SDGsへの取組】

■グループ事業とサスティナビリティとの関連性
各事業が社会課題に直結、同社の事業拡大自体が持続可能な社会の実現に繋がる

 

(同社資料より)

 

■SDGsとの対応関係

(同社資料より)

 

環境保全に関する取組み

22年2月:環境省が定める「エコ・ファースト企業」に認定

 

 

(同社資料より)

環境分野において「先進的、独自的でかつ業界をリードする事業活動」を行っている企業(業界における環境先進企業)であることを環境大臣が認定する制度

 

ライクグループ「エコ・ファーストの約束」(概要)
1.事業活動を通じて環境教育の振興を推進し、持続可能な社会を支える人材の育成に貢献します。
2.事業活動を通じて環境への負荷の低減に注力するとともに、循環経済の実現に向け、積極的に行動します。
3.CO₂の排出量を削減し、脱炭素社会の構築に積極的に取り組みます。
4.環境配慮型経営に取り組み、広く環境の保全に貢献します。
5.自身が社会課題の解決に貢献するだけでなく、ESG関連の課題解決に取り組む企業を応援します。

 

 

■脱炭素への取組み

 

(同社資料より)

 

【1-6 株主優待】

「ライク・プレミアム優待倶楽部」を提供。
対象・・・毎年5月末現在の株主名簿に記載された、同社株式300株(3単元)以上を保有する株主。
内容・・・毎年7月に下表に基づいた株主優待ポイントを贈呈。特設インターネットサイト(https://like.premium-yutaiclub.jp)において、株主優待ポイントを、食品、電化製品、ギフト、雑貨など5,000種類以上の優待商品に交換。

 

(同社資料より)

 

「ライク・プレミアム優待倶楽部」は変更された(21年1月12日公表)
従来から付与ポイントは大幅アップされた。例えば、500株保有の場合、保有期間1年未満で従来の7,000ポイントから12,000ポイントへ、1年以上で従来の7,700ポイントから15,000ポイントへの大幅アップとなっている。

 

2.2023年5月期第1四半期決算

(1)連結業績

 

22/5期 1Q

構成比

23/5期 1Q

構成比

前年同期比

売上高

13,500

100.0%

14,186

100.0%

+5.1%

売上総利益

2,153

15.9%

1,983

14.0%

-7.9%

販管費

1,394

10.3%

1,401

9.9%

+0.5%

営業利益

758

5.6%

582

4.1%

-23.2%

経常利益

1,009

7.5%

579

4.1%

-42.6%

親会社株主に帰属する四半期純利益

631

4.7%

330

2.3%

-47.7%

単位:百万円。
*数値には(株)インベストメントブリッジが参考値として算出した数値が含まれており、実際の数値と誤差が生じている場合があります(以下同じ)。

 

同社資料を元に(株)インベストメントブリッジが作成。

 

前年同期比5.1%の増収、同42.6%の経常減益
売上高は前年同期比5.1%増の141億86百万円。子育て支援サービス、総合人材サービス、介護関連サービスがいずれも増収となった。営業利益は同23.2%減の5億82百万円。利益面では、子育て支援サービス事業における期ズレ補助金の計上額が前年同期と比べ1億78百万円減少したことなどにより売上総利益率が前年同期15.9%から14.0%に低下した。介護関連サービス事業における新規施設開設コストが発生したこともあり、販管費の増加は抑えたものの減益となった。営業外収益では、前年同期に2億51百万円計上した保育施設の設備補助金収入が今1Qは発生しなかったことにより経常利益は前年同期比42.6%減の5億79百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は同47.7%減の3億30百万円となった。

 

(2)セグメント別動向

 

22/5期 1Q

構成比

23/5期 1Q

構成比

前期比

子育て支援サービス

6,468

47.9%

6,541

46.1%

+1.1%

総合人材サービス

5,104

37.8%

5,662

39.9%

+10.9%

介護関連サービス

1,864

13.8%

1,927

13.6%

+3.4%

その他

63

0.5%

55

0.4%

-12.9%

連結売上高

13,500

100.0%

14,186

100.0%

+5.1%

子育て支援サービス

375

41.0%

191

24.5%

-49.1%

総合人材サービス

424

46.3%

525

67.3%

+23.9%

介護関連サービス

116

12.7%

71

9.1%

-38.8%

その他

-0

-

-7

-

-

調整額

-157

-

-198

-

-

連結営業利益

758

100.0%

582

100.0%

-23.2%

単位:百万円。
*その他は報告セグメントに含まれない事業等

 

同社資料を元に(株)インベストメントブリッジが作成。

 

 

子育て支援サービス事業
売上高65億41百万円(前年同期比1.1%増)、営業利益1億91百万円(同49.1%減)。

 

民設の認可保育園開設だけでなく、自治体が開設した保育園の運営受託、不動産開発事業者による大規模開発案件での新規保育園開設、病院・企業・大学等が設置する企業主導型保育等の事業所内保育施設の運営受託、自治体からの学童クラブ・児童館の運営受託等、あらゆる側面から保育の受け皿整備に尽力した。また、ライクスタッフィング株式会社と密に連携することで、保育の質を担保する優秀な保育士採用にも注力した。

 

 

 

 

総合人材サービス事業
売上高56億62百万円(前年同期比10.9%増)、営業利益5億25百万円(同23.9%増)。

 

モバイル業界では、20年4月より新たに参入した第4のキャリアにおいて、営業体制強化にフェーズが移行したことで、さらにキャリア間の顧客獲得競争が激化している。そうした競争環境の変化は顧客争奪の場となる家電量販店における大型の人材需要へ波及し、同社に対するオーダーも増加している状況。また、通信キャリア各社の手続きオンライン化に伴い、コールセンターの人材需要も活況だった。なお、一部キャリアにおいてショップの削減報道が取り沙汰されているが、同社のモバイルスタッフはおおむね家電量販店向けであることから、キャリアショップの統廃合が進んだとしても業績への影響は軽微になる。物流業界は、ECマーケットの拡大に対応するため、全国で次々と大型物流施設が稼働開始しており、旺盛な人材需要に応えるかたちで売上が伸長した。人材不足が深刻さを増している保育・介護業界に対しては、社内の営業体制の見直しや最適な求人媒体施策の推進及び連結子会社であるライクキッズ株式会社・ライクケア株式会社で施設運営を行っているノウハウを採用力に繋げ、人材の派遣・紹介を強化している。また、次の成長軸となる事業として、以前より推進している建設業界向けサービス、外国人材就労支援サービスの拡大についても、より一層注力した。業界全体で高齢化が進んでいる建設業界向けサービスについては、施工管理者や現場監督(補助)、現場事務、BIM・CADオペレーター等の人材を採用している。また、同社正社員で主にモバイル業界に就業している「エキスパート職」の社員に対して、施工管理者として建設業界に就業する新たなキャリアを提示し、社員のリスキリングを促すと同時にクライアントの求人ニーズとエキスパート社員を結びつけることで、新たな価値創造へ繋げている。さらに建設業界において人材の育成が十分でないBIM・CADオペレーターについては、同社で2ヶ月間の講習・実務研修を実施し一定のスキルセット獲得を目指す育成型モデルを構築したことで、より付加価値の高い人材の派遣・紹介を実現している。また、積極的な営業活動により、新規顧客の開拓も順調に推移し、人材を求める企業からの問い合わせも増加している。外国人材就労支援サービスについては、感染症拡大の影響によって一時的に鈍化していた各業界での人材ニーズも経済の持ち直しの動きを受け、確実に回復しつつある。
売上高の業界別内訳は表の通り。


 

▶モバイル・・・第4のキャリア営業攻勢による人員需要の増加を要因に増収
▶物流・製造・・・大規模物流施設での人材需要は引き続き高水準で推移
▶保育・介護
・ライクキッズ向け:74百万円(前年同期比11百万円増)
・ライクケア向け:88百万円(前年同期比36百万円増)

 

介護関連サービス事業
売上高19億27百万円(前年同期比3.4%増)、営業利益71百万円(同38.8%減)。
22年7月1日には新たにサンライズ・ヴィラ板橋向原(64室)を開設し、運営施設数は26施設となった。新規開設コストの発生により減益となった。

 

(3)財政状態

◎財政状態

 

22年5月

22年8月

 

22年5月

22年8月

現預金

10,623

10,668

未払金

3,684

3,604

売上債権

5,425

4,196

未払法人税・消費税等

1,268

790

流動資産

17,748

16,076

受入入居金

825

768

有形固定資産

15,683

16,745

有利子負債(うちリース債務)

16,315(2,439)

16,661(3,611)

無形固定資産

681

563

負債

25,358

24,784

投資その他

5,267

5,230

純資産

14,022

13,831

固定資産

21,632

22,539

負債・純資産合計

39,380

38,615

単位:百万円。

 

同社資料を元に(株)インベストメントブリッジが作成。

 

1Q末の総資産は前期末比7億64百万円減の386億15百万円となった。
流動資産は前期末比16億72百万円減の160億76百万円。これは、受取手形、売掛金及び契約資産(売上債権)の減少12億28百万円等があったことによる。
固定資産は前期末比9億7百万円増の225億39百万円。これは、有形固定資産の増加10億62百万円、のれんの償却に伴う減少1億11百万円等があったことによる。
流動負債は前期末比9億22百万円減の107億17百万円。これは、未払法人税等の減少4億66百万円、賞与引当金の減少2億72百万円等があったことによる。
固定負債は前期末比3億48百万円増の140億67百万円。これは、リース債務の増加11億71百万円、長期借入金の減少7億62百万円、受入入居金の減少57百万円等があったことによる。
純資産は前期末比1億90百万円減の138億31百万円。これは、親会社株主に帰属する四半期純利益の計上3億30百万円、配当金の支払4億98百万円等があったことによる。
自己資本比率は前期末比0.2ポイント増の35.8%となった。

 

3.2023年5月期業績予想

(1)連結業績

 

22/5期 実績

構成比

23/5期 予想

構成比

前期比

売上高

57,642

100.0%

61,600

100.0%

+6.9%

 子育て支援サービス

27,790

48.2%

29,000

47.1%

+4.4%

 総合人材サービス

22,087

38.3%

24,740

40.2%

+12.0%

 介護関連サービス

7,506

13.0%

7,600

12.3%

+1.2%

 マルチメディア他

258

0.4%

260

0.4%

+0.6%

営業利益

4,238

7.4%

4,350

7.1%

+2.6%

経常利益

5,234

9.1%

5,300

8.6%

+1.3%

親会社株主に帰属する

当期純利益

3,268

5.7%

3,350

5.4%

+2.5%

単位:百万円

 

23/5期は6.9%増収、1.3%経常増益を見込む
通期予想に修正はなく、23/5期は売上高が前期比6.9%増の616億円、経常利益は同1.3%増の53億円を見込む。
セグメント別売上高は、子育て支援サービスが前期比4.4%増の290億円、総合人材サービスは同12.0%増の247億40百万円、介護関連サービスは同1.2%増の76億円を計画する。
子育て支援サービス事業では、認可保育園10ヶ所前後の開設を予定する。今後、出生数の減少による競争環境の激化によって保育事業者ごとの優勝劣敗が鮮明になること、大手事業者のシェアが低く多数乱立的な業界特性であることから、機動的にM&Aを実行することで、内部資源を活用した自律的な成長だけでなく、非連続的な業績の拡大も狙っていく。
総合人材サービス事業では、祖業であるモバイル業界に注力しながらも、旺盛な人材需要と高い成長性が期待できる、物流・製造、介護、建設、外国人材領域に経営資源を投下し、成長市場への集中投資を先鋭化することで飛躍的な業容の伸長を目指す。また、入国制限も順次緩和されており、今後は国内だけでなく海外から外国人材を採用し紹介することも可能となったことで、当初想定していた介護業界だけでなくビルクリーニング・外食・宿泊・飲食料品製造業界等へも積極的な営業活動を展開。また、より多くの企業においてスムーズに受け入れられるよう、生活のサポートを含む働きやすい環境の整備を進めている。
介護関連サービス事業では、高まる首都圏の介護需要に応えるべく、引き続き介護付き有料老人ホームを中心とする新規施設の開設を進める。また、総合人材サービス事業と協業することで、特定技能外国人の施設受け入れをさらに加速させ、介護人材の確保による施設サービスの質向上に繋げていく。さらに、教育を受けた優秀な外国人材を他介護事業者に紹介することで、介護人材不足の解消と介護業界全体のサービスの質向上に資するべく、引き続きグループシナジーの最大化を図る。
配当予想も修正なし。連結配当性向30%を目安とする方針から、中間配当金として26.00円/株、期末配当金と して27.00円/株、年間で53.00円/株を予定している。

 

(2)事業別の概要、強み・特徴

~子育て支援サービス~
【概要】
祖業である総合人材サービスでの子育てによる女性離職に問題意識あり
資本参加前と比較すると15年で売上約15倍に伸長
営業損益でも連結化の16/5期:40百万円の損失から22/5期:25億79百万円と大幅改善
首都圏中心に389施設運営、預かり児童数:10,000名超、売上業界2位

 

【強み・特徴】
▶[採用力]人材部門とのシナジー・研修コンテンツの横展開による人材育成
▶[ドミナント]首都圏中心に展開・柔軟な勤務地選択による働きやすさ確保
[スケールメリット]多施設展開によるコスト低減・多様なキャリア提示
[施設立地]不動産開発業者との緊密なリレーションによる高い開発力

 

~総合人材サービス~
【概要】
同社グループの祖業であり携帯電話販売代理店向け人材派遣でスケール
全国に13の営業拠点を展開
稼働スタッフ数:7,500名以上、取引先企業数:600社以上
人材業界(営業・販売支援人材ビジネス部門)におけるシェア:第3位

 

【強み・特徴】
[育成ノウハウ]無資格・未経験の求職者を戦力化してきた独自のノウハウ
[業界特化]成長市場かつエッセンシャルな業界に特化
[取引先数]業界特化型にも関わらず多くの取引先を抱えることでの安定性
[グループシナジー]保育・介護事業との連携による専門性獲得

 

~介護関連サービス~
【概要】
神奈川・東京を中心に26施設を展開、利用者数:約1,400名
主に介護付き有料老人ホームを運営(26施設中17施設)
買収後、人材部門とのシナジー発揮し入居率は60%台から90%超へ改善
連結化の14/5期:2億17百万円の営業損失は22/5期で4億26百万円の営業利益まで伸長

 

【強み・特徴】
▶[看取り介護]医療連携に強み、ほぼすべての施設で看取り介護が可能
▶[24ナース]施設によっては24時間365日の看護師によるサポート実施
▶[採用力]人材部門とのシナジーによる職員確保、充実したサポートを実現
▶[施設立地]保育事業における施設開発力の横展開、首都圏中心の施設展開

 

(3)事業別市場動向と成長戦略

~各事業の市場規模~

(同社資料より)同社想定外国人材の市場規模については現状受入表明されている特定技能外国人345,150人に対し各業種における平均年収を掛け合わせ合算した概算値

 

~子育て支援サービス~
出生数
▶21年の出生数は約81万人で調査開始以来最少
▶感染症拡大による婚姻数の減少も懸念

 

都道府県別人口
▶20年時点での全国人口は15年に比べ減少
▶一方で首都圏とその他一部地域では増加

 

待機児童問題[保育所]
▶22年4月時点で2,944人と減少傾向
▶今後、保育ニーズ(申込者数)が再び増加する可能性あり

 

待機児童問題[学童]
▶21年5月時点で13,416人と「小一の壁」の解消が課題
▶減少傾向にあるものの依然として首都圏で問題は深刻

 

子育て安心プラン
▶24年度末までに新たに約14万人分の保育の受け皿を整備
▶早期の待機児童解消と女性就業率向上が狙い

 

保育士不足
▶有効求人倍率は減少傾向にあるものの保育士不足は継続
▶全職種対比で2倍近い倍率で推移

 

株式会社比率
▶保育所等における2017年時点の営利法人比率は6.2%
▶その後、株式参入進むも現在も多くは非営利法人運営

 

保育所ニーズ
▶15年(233万人)から40年(334万人)に向け増加する推計
▶幼稚園から保育所へシフトすることで40年は15年比で1.4倍

 

~総合人材サービス~
物流・製造
EC市場は年々拡大し近年ではもはやインフラ化
▶ECを支える物流施設の整備が急ピッチで進行中

 

建設
▶25年度に不足が予想される人材は約47~93万人
▶人材の高齢化も深刻であり早期の若返りが急務

 

介護
▶25年度に必要とされる介護職員は約243万人
▶人材確保には外国人材の受入が必須

 

~介護関連サービス~
高齢化率の増加
▶65歳以上人口割合である高齢化率は年々上昇を予測
▶特に今後は75歳以上の増加を推計

 

大都市での高齢化
▶特に大都市圏で65歳以上人口指数の増加を想定
首都圏を中心とする大都市圏でますます介護需要が高まる

 

~DX戦略~

(同社資料より)

 

21年4月:経済産業省が定める「DX認定事業者」に認定
23/5期以降は、基幹システム全面刷新等のデジタル化を強力推進するだけでなく取得したデータを用いて新事業創造も含めたDXを実現

(同社資料より)

 

自社アプリ「ナナポケ」
自社アプリ「ナナポケ」のプラットフォーム化により、業界のDX推進と補助金に依存しない収益源の獲得を目指す

 

(同社資料より)

 

4.今後の注目点

1Qは各段階利益が2桁減益となったものの、子育て支援サービス事業における期ズレ補助金の減少や介護関連サービス事業における新規開設コスト、前年同期に発生した保育施設の設備補助金収入の反動といった一時的要因や事業展開とはやや異なる要素が主因となっている。各事業が増収かつ業績予想の修正もなかったことから順調に進捗していると見て良いだろう。10/11から新型コロナウイルスの水際対策が大幅に緩和されている。特に宿泊業や飲食業で人手不足が顕著となっており、今後は外国人材就労支援サービスにおいて活躍の場が広がりそうだ。期初には、岡本会長兼社長は会社予想を「できれば上回りたい」とコメントしている。1Qの数字上で表れたこととは裏腹に事業環境についてもフォローになっているといえそうだ。
また、期初には新たな中期計画も発表している。27/5期に目指す売上高1,000億円、営業利益80億円についても、「大幅に上ブレしたい」と岡本会長兼社長はコメントしている。中期計画達成を前提とすると、営業外に計上する補助金収入を考慮しないでEPSは250円程度が想定される。
1Q決算を受けて株価は下落、PERは東証プライム平均を下回る水準となっている。1Qは着実に進捗しており、中期計画における利益水準も考慮するとかなり割安感の強い水準にあるといえそうだ。

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査等委員会設置会社

取締役

7名、うち社外3名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書  更新日: 2022年8月30日

 

基本的な考え方
当社は、「…planning the Future~人を活かし、未来を創造する~」をグループ理念とし、人生のどの段階においてもなくてはならない企業集団を目指しており、コーポレート・ガバナンスへの取組みを重要な経営課題として認識しております。これを実現するために、当社グループの役員、従業員及びサービス利用者が、常に公正で機能的な行動をとることができるよう、持株会社体制であることを活かし、コンプライアンス体制を持株会社に集約し、持株会社の機能をグループ全体の経営管理に集中させることにより、グループ全体のコーポレート・ガバナンスの強化を図っております。

 

1.株主の権利・平等の確保
株主総会における議決権をはじめとする株主の権利が実質的に確保されるよう、適切な対応を行っております。

 

2.株主以外のステークホルダーとの適切な協働
当社のグループ理念に基づき、行動規範や行動原則を遵守し、サービス利用者、クライアント、株主、従業員等全てのステークホルダーの皆様に対し誠実に行動することにより、継続的に企業価値を拡大してまいります。

 

3.適切な情報開示と透明性の確保
法令に基づく情報開示を適切に行うとともに、法令に基づく開示以外の情報や非財務情報の提供にも積極的に取り組んでまいります。

 

4.取締役会等の責務
取締役会は、グループの経営の基本方針や戦略の策定、事業会社の管理・監督を行っており、グループ全体における業務の意思決定及び取締役会による業務執行を監督する機関として位置付け、運営しております。なお、社外取締役は、経営規律の強化を図るとともに、透明性をより一層高める役割を担っております。

 

5.株主との対話
グループの企業価値の極大化のため株主との対話を重視しており、株主からの対話の申し込みに対しては随時対応しております。株主との対話は、IR担当部署、IR担当役員、経営陣幹部が必要に応じて行っております。

 

 

コーポレート・ガバナンス・コード各原則の実施について
<実施をしないコード:3項目、その主な原則>

 

【補充原則1-2-4】
当社では現在、議決権電子行使プラットフォームの利用は行っておりませんが、2022年8月開催予定の定時株主総会より利用する予定です。

 

【補充原則4-10-1】
当社取締役の構成は、社内取締役4名、独立社外取締役3名であり過半数に達しておらず、任意の独立した諮問委員会を設置しておりませんが、取締役候補の選任や取締役の報酬については、取締役会の決議に先立ち、独立社外取締役に対し説明を行い、適切な助言を得ております。このように、取締役候補の選任や取締役の報酬について、独立社外取締役の適切な関与・助言を得ていることから、これらに係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任は十分担保されているものと考えております。

 

<開示しているコード:10項目、その主な原則>

 

【原則1-4】
政策保有株式につきましては、企業価値向上におけるシナジーが認められると判断した場合に限り、当該株式の政策保有について検討いたします。現在、政策保有している株式については保有意義があることを確認しております。また、当該株式の議決権の行使については、当該会社の企業価値向上及び当社への影響を勘案し、議案に対する賛否の意思表示を行うものといたします。

 

【原則2-6】
当社では、コーポレート・ガバナンス・コードが想定している基金型・規約型の確定給付年金及び厚生年金基金を制度として導入していないため、アセットオーナーには該当していません。

 

【原則5-1】
・当社は、当社グループのIR活動全般を行うIR担当役員とIR担当部署を設置し、株主との建設的な対話の促進を図っております。
・情報開示については、基本的な考え方をまとめた「ディスクロージャー・ポリシー」を定め、これに則り、公正かつ適時・適切な開示に取り組んでおります。
・ディスクロージャー・ポリシーについては、当社HP(https://www.like-gr.co.jp/ir/policy.html)において開示しております。
・IR活動の詳細につきましては、本報告書の「株主その他の利害関係者に関する施策の実施状況」の2.に記載のとおりであります。

 

本レポートは、情報提供を目的としたものであり、投資活動を勧誘又は誘引を意図するものではなく、投資等についてのいかなる助言をも提供するものではありません。また、本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、当社は、本レポートに掲載されている情報 又は見解の正確性、完全性又は妥当性について保証するものではなく、また、本レポート及び本レポートから得た情報を利用したことにより発生するいかなる費用又は損害等の一切についても責任を負うものではありません。本レポートに関する一切の権利は、当社に帰属します。なお、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申し上げます。

Copyright(C) Investment Bridge Co.,Ltd. All Rights Reserved.

 

ブリッジレポート(ライク:2462)のバックナンバー及びブリッジサロン(IRセミナー)の内容は、www.bridge-salon.jp/ でご覧になれます。

 

 

同社の適時開示情報の他、レポート発行時にメールでお知らせいたします。

>> ご登録はこちらから

 

ブリッジレポートが掲載されているブリッジサロンに会員登録頂くと、株式投資に役立つ様々な便利機能をご利用いただけます。

>> 詳細はこちらから

 

投資家向けIRセミナー「ブリッジサロン」にお越しいただくと、様々な企業トップに出逢うことができます。

>> 開催一覧はこちらから