ブリッジレポート
(2593) 株式会社伊藤園

プライム

ブリッジレポート:(2593)伊藤園 2023年4月期第2四半期決算

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株式会社 伊藤園

(普通株2593、優先株25935)

 

 

企業情報

市場

東証プライム市場

業種

食料品(製造業)

代表者

本庄 大介

所在地

東京都渋谷区本町3-47-10

決算月

4月

HP

https://www.itoen.co.jp/

 

株式情報

<普通株式>

株価

発行済株式数(期末)

時価総額

ROE(実)

売買単位

5,060円

89,212,380株

451,414百万円

8.2%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

40.00円

0.8%

96.28円

52.6倍

1,334.88円

3.8倍

*株価は12/16終値。発行済株式数、DPS、EPSは2023年4月期第2四半期決算短信より。ROE、BPSは前期実績。

 

<優先株式>

株価

発行済株式数(期末)

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,794円

34,246,962株

61,439百万円

8.2%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

50.00円

2.8%

106.20円

16.9倍

1,339.88円

1.3倍

*株価は12/16終値。発行済株式数、DPS、EPSは2023年4月期第2四半期決算短信より。ROE、BPSは前期実績。

 

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主帰属利益

EPS

DPS

2019年4月(実)

504,153

22,819

23,211

14,462

116.02

40.00

2020年4月(実)

483,360

19,940

19,432

7,793

61.53

40.00

2021年4月(実)

446,281

16,675

17,029

7,011

55.10

40.00

2022年4月(実)

400,769

18,794

19,971

12,928

103.92

40.00

2023年4月(予)

418,000

20,000

19,500

12,000

96.28

40.00

*予想は会社予想。単位:百万円、円。2022年4月期から「収益認識基準」を適用。EPS、DPSは普通株式の値。

 

(株)伊藤園の2023年4月期第2四半期決算概要、2023年4月期業績予想について、ご報告致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2023年4月期第2四半期決算概要
3.2023年4月期業績予想
4.マーケティング・事業戦略
5.今後の注目点
<参考1:新・中期経営計画>
<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 23年4月期第2四半期の売上高は前年同期比8.9%増の2,272億円。伊藤園(単独)は同5.2%増、大都市圏の出店ロケーションにより前期はコロナ禍の影響を強く受けたタリーズコーヒージャパンが同21.0%増と大きく回復した。営業利益は同4.4%増の113億円。タリーズコーヒージャパンが大幅増益であった一方、原材料・資材高の影響で伊藤園(単独)は微減益、米国事業は営業損失。

     

  • 業績予想に変更は無い(会社別の内訳には売上・利益の修正あり)。23年4月期の売上高は前期比4.3%増の4,180億円、営業利益は同6.4%増の200億円の予想。伊藤園(単体)を始めグループ会社とも増収。伊藤園(単体)が増益予想のほか、前期黒字転換したタリーズコーヒージャパンは大幅な増益を見込む。一方、米国事業は減益の予想。配当は普通株式、優先株式とも前期と変わらず、それぞれ40円/株、50円/株の予定。予想配当性向は普通株式41.5%、優先株式47.1%。

     

  • 上期進捗率は売上高54.4%、営業利益56.7%。売上・利益ともに、飲料の最盛期である7‐9月を含む上半期のウェイトが高いのが同社の特長であるが、過去数年と比較すると、売上高はほぼ例年通り、営業利益は低水準となっている。食料・飲料共全般の値上げに伴う消費マインドの低迷が懸念材料であるが、商品力や営業力の強みを活かし、第3四半期以降、どれだけ売上・利益を積み上げていくことができるか注目していきたい。

     

1.会社概要

緑茶などの茶系飲料、コーヒー飲料、野菜飲料等の飲料(ドリンク)や茶葉(リーフ)の製造・販売を中心に、子会社を通してタリーズコーヒー等の飲食店経営及びフランチャイズ(FC)展開やサプリメントの製造・販売等も手掛ける。国内では、「お~いお茶」等の緑茶飲料市場で35%(2022年見通し)のトップ・シェアを有する。この他にも、ノンカフェイン茶系飲料No.1の「健康ミネラルむぎ茶」、野菜100%飲料No.1の「1日分の野菜」、及びタリーズコーヒージャパン(株)との連携によるボトル缶ブラックコーヒーNo.1の「TULLY'S COFFEE」といった人気ブランドを有し、いずれも年間販売数量が1,000万ケースを超える(「お~いお茶」は約9,000万ケース)。
タリーズコーヒージャパン(株)やチチヤス(株)等の連結子会社31社、持分法適用関連会社3社等とグループを形成。「世界のティーカンパニー」を目指し、ニューヨークを中心に米国、中国、オーストラリア、東南アジア地域で、「お~いお茶」ブランドの確立と新しい緑茶市場の開拓に取り組んでいる。

 

【1-1 経営理念「お客様第一主義」】

 

“すべてのお客様を大切にすることが経営の基本である”とする「お客様第一主義」を経営理念としている。

 

お客様とは、同社とかかわる、消費者、株主、販売先、仕入先、金融機関、更には地域社会等のステークホルダー。ステークホルダー全てをお客様と位置付け、それぞれの意見や要望に真摯に向き合い、常にお客様の立場に立った対応を図る事を経営の根幹としている。

 

 

この経営理念の下、以下のミッション、ビジョンを掲げている。

 

ミッション

健康創造企業

お客様の健康で豊かな生活と持続可能な社会を実現する

ビジョン

世界のティーカンパニー

茶スペシャリストとして世界の茶文化とつながり、おいしさと価値を広く伝える

 

*グローバル

世界中で飲まれている茶を進化させ、世界中の人々の心身ともに健やかな生活を支える。

 

*価値創造

茶で培った知見を活かし、健康と持続可能な社会に貢献する価値を創出する。

 

*ユニーク

農業から資源循環まで、伝統と先端技術を融合させる独自性のある唯一無二の企業に。

 

【1-2 創業以来変わらない五つの製品開発コンセプト】

 

 

製品開発のコンセプトは、「自然」、「健康」、「安全」へのこだわりと、マーケティング施策の徹底、そしておいしさの追求。主力製品の「お~いお茶」では、前身の「缶入り煎茶」(1985年発売)から、原料と製法にこだわり、自然のままのおいしさを引き出している。

 

 

 

自然

自然の素材を活かした製品

健康

健康的な生活をサポートする製品

安全

安全で安心して楽しめる製品

良いデザイン

おいしさをストレートに伝えるデザイン

おいしい

幸せを感じるおいしさ

 

(同社Webサイトより)

 

【1-3 事業概要】

事業は、飲料(ドリンク)や茶葉(リーフ)の製造販売を行うリーフ・ドリンク関連事業、タリーズコーヒージャパン(株)によるスペシャルティコーヒーの飲食店経営とFC展開の飲食関連事業、及びMason Distributors,Inc.(米国フロリダ州)が手掛けるサプリメントの製造・販売等のその他の事業に分かれる。

 

 

同社を代表する年間販売数量1,000万ケース超のブランド

 

 

 

 

 

 

 

茶系飲料

No.1   

機能性表示食品(飲料)No.1

ノンカフェイン茶系飲料No.1

野菜100%飲料

No.1

ボトル缶ブラックコーヒー

No.1

(同社資料より)

 

【1-4 世界のティーカンパニー】

伊藤園グループは、世界のティーカンパニーをビジョンに掲げている。「グローバル」「価値創造」「ユニーク」を3つの柱におき、茶のスペシャリストとして世界の茶文化とつながり、おいしさと価値を広く伝えていく。そして、健康創造企業としてお客様の健康で豊かな生活と持続可能な社会の実現を目指している。

 

コーポレート・サステナビリティ
伊藤園グループは、「伊藤園グループ中長期環境目標」を策定し、対応を進めている。環境対応では「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」提言に賛同表明し、気候変動への対応を経営戦略の重要課題と位置づけている。今後も持続可能な社会の実現と、当社事業の持続性向上に向けた取組みを積極的に進めていく。

 

容器包装の取組み
「3R(リサイクル、リデュース、リプレイス&リユース)+Clean」を基本方針とし、2030年までに全ペットボトル製品をリサイクル素材等(生物由来素材を含む)に切り替えることを目指している。

 

 

(同社資料より)

 

伊藤園グループプラスチックに関する方針と実績

リサイクル(資源循環)

・2030年までにペットボトルに使用するリサイクル素材等*の割合を100%にすることを目指す。

・ペットボトル以外の用途においても、リサイクル素材の利用を推進する。

・行政機関、業界団体、取引先等と連携し、リサイクル率向上に向けた活動を推進する。

*生物由来素材を含む

リデュース(省資源化)

・さらなる容器包装の軽量化・使用量削減に向けて容器設計、生産方法の改良を行う。

・お~いお茶ペットボトル1本あたりに使用するプラスチック使用量は、2002年から約40%削減した(「お~いお茶」500ml、525mlペットボトルの場合)。

・「お~いお茶」ブランドで採用する2Lペットボトルは従来比約26%の軽量化を実現した。

リプレイス&リユース

・生物由来素材、生分解性素材の使用を推進する。ティーバッグのフィルターや紙パック製品のストローに採用している。

・飲食事業において、再利用可能な容器への代替も推進する。

・TULLY’S COFFEE 店舗ではHOT/COLD兼用の紙カップで提供を開始。CHICHIYASU LECT店でもソフトクリームカップを紙容器に刷新した。

(同社資料を基に作成、)

 

気候変動への対応
削減目標を設定してのCO2排出量の削減や茶葉に関する気候変動分析に取り組んでいる。

 

CO2の削減では、2022年4月に新たな数値目標を設定した。2030年度までに2018年度比で、Scope1(直接排出量)とScope2(エネルギー起源間接排出量)のCO2排出量を総量で50%削減、Scope3(その他間接排出量)については総量20%削減するとした。また2050年度までに、Scope1、Scope2、Scope3でカーボンニュートラルの目標を掲げている。これまで、飲料製造工場における環境配慮型充填システムの導入や、モーダルシフト、営業車両のエコドライブ推進、ヒートポンプ式自動販売機の積極導入などに取り組んできた。同社は飲料製造工場を自社で保有せず、外部に委託するファブレス方式を採用しているため、全国5ブロック約50の製造委託工場と連携し、2030年度の削減の目標達成に向けてこれまで以上に協働の取り組みを進めていく。また、「伊藤園グループプラスチックに関する方針」に基づき、2030年までに、ペットボトルに使用するリサイクル素材等の割合を100%にすることを目指している。リサイクル素材等を使用することにより、バージン樹脂より大幅なCO2排出量削減効果が期待でき、Scope3の目標達成に寄与する。

 

CO2排出量の削減目標

 

 

目標

2030年度

Scope1-2

総量50%削減

Scope3

総量20%削減

2050年度

Scope1-2

カーボンニュートラル

Scope3

**いずれも2018年度が基準年。原単位は売上百万円あたりの排出量。2030年度の総量20%削減目標は、足元の原料価格高騰などの影響を踏まえ、現時点での目標をパリ協定の「2℃より十分低い」目標に合わせて設定。

 

茶葉に関する気候変動分析では、独自の分析とシナリオ分析を継続的に行い、その結果を踏まえて、新たな産地開発や栽培管理手法、技術開発等に茶農家と協働して取り組んでいる。

 

伊藤園独自の持続可能な農業モデル
◎「茶産地育成事業」(1976年~)
国内茶園面積は近年減少傾向にあり、農業従事者数も減少傾向にあるとともに、農業従事者の平均年齢も高齢化が進んでいる。
こうした状況に対し、同社は高品質な茶葉の安定調達を目的に、個々の茶農家との契約栽培または産地の育成(新産地事業)を行う「茶産地育成事業」を1976年より展開しており、大規模茶園をはじめ、茶生産農家と連携して茶原料の持続的な調達に取り組んでいる。茶産地育成事業(新産地事業)に取り組む従事者の平均年齢は45歳、乗用型摘採機の導入も100%と、省力化や効率化の取り組みは他に例を見ない成果を生み出している。

 

地域活性化や持続的な農業経営など社会・事業者への価値が高い「新産地事業」は、2001年より宮崎県から始まり、2022年には埼玉県へと事業エリアが広がり、現在7県9地区に拡大している。
2021年4月末までの中長期目標としていた茶産地育成事業の「展開面積2,000 ha」も達成。2030年の目標を2,800haとしている。

 

(同社資料より)

 

積極的に減農薬や有機栽培へも取り組んでおり、有機栽培の生産量は2030年度 500トンを目標としている(2021年度実績 236トン)。
このほか、AIによる画像診断を基に茶葉の摘採時期判断や荒茶の成分評価などを行うことで、経験にとらわれない農業を可能にし、後継者不足の解消、新規参入ハードルの低減を図っている。

 

◎持続可能な農業への取り組み
国と地方自治体、生産者、JAや協力企業と協力して、将来を見据えた農業の取組みにも注力している。
茶農業の技術開発や普及に向けたロードマップを策定し、ITの活用などによる各種技術の確立や複合経営の実施を通じて持続可能な農業の推進に貢献していく考えだ。
また、JAが推進する「ニッポンエールプロジェクト」においては、共同で製品開発を行っており、製品を通じて国内農業産地を応援。季節ごとに全国各地の果実を飲料にし、すべてのチャネルで販売している。

 

*循環型農業の確立
茶農業の技術開発を通じた循環型農業の確立にも取り組んでいる。
現在、茶殻に含まれる窒素成分を活かした循環型肥料による肥料コスト削減と環境負荷低減や、蒸気防除機の普及による化学農薬の低減・減農薬を目指した技術開発を進めている。
これらの技術を確立したのちは契約産地での検証を行い課題の抽出と解決やコストダウンを図り、契約産地での普及を図る。
原材料から製品まで「安心・安全・環境配慮」のブランドを確立し、海外への輸出拡大にもつなげていく。

 

(同社資料より)

 

茶系飲料などの製造過程で排出する茶殻を、日用品などにリサイクル(2001年~)
茶殻リサイクルシステムでは、含水のまま常温保存して輸送する技術、含水茶殻を使用した製品開発技術、及びCO2を吸収した茶葉(茶殻)の製品中への固定技術を活用し、茶殻(緑茶)の抗菌効果や消臭効果等の特性を活かした高付加価値製品を創出している。

 

健康創造企業としての取り組みとSDGs
コロナ禍において意識されるのは、自らの「健康」と家族の「健康」。同社は、「健康」に資する製品を中心に事業を展開しており、この取り組みを更に強めていく。具体的には、日本人が日常的に飲用する「お茶」のチカラで、健康で豊かに生きる暮らしをサポートし、1200年続くお茶の歴史を新たに創造し、社会課題の解決に取組んでいる。
また、グループ経営理念である「お客様第一主義」に基づき、健康創造企業として持続的な成長を目指し、消費者課題、コミュニティ・社会、地球環境など7つの重要課題を設定。SDGsの目標に即した企業活動も行っていく。

 

◎7つのマテリアリティ
伊藤園グループが新たに策定した中長期経営計画に合わせ、外部環境の変化に対応するためマテリアリティの見直しを行った。その結果、「食生活と健康への貢献」「持続可能な国内農業への貢献」「環境」「地域社会・コミュニティとのつながりの深化」「持続可能なサプライチェーンへの貢献」「多様な人財と全員活躍の推進」「コーポレート・ガバナンス」の7つのマテリアリティを新たに特定した。新・中長期経営計画と相互に連動させながら、取組みを進めていく。

 

 

・食生活と健康への貢献
人生100年時代を見据えた研究開発、各世代の健康に資する製品・サービスを通じて、健康的で豊かな生活を提供。
・持続可能な国内農業への貢献
茶産地育成事業を通じて、高付加価値原料の開発や環境配慮型農業の推進により、国内農業の活性化に貢献。
・環境
自然由来の製品を主として事業活動をする企業として、人類共有の地球環境を守る課題に取組む。
・地域社会・コミュニティとのつながりの深化
様々なステークホルダーとの対話を通じ、地域社会の課題解決に貢献。
また、 お茶を介したコミュニケーションにより、心身ともに健康をサポートする。
・持続可能なサプライチェーンへの貢献
全てのサプライヤーとの持続的なパートナーシップにより、社会・環境課題の解決と双方の持続的な収益の両立を実現する。
・多様な人財と全員活躍の推進
バリューチェーンにおける全ての人々の人権を尊重するとともに、全従業員が健康でいきいきと活躍する組織づくりに取組む。
・コーポレート・ガバナンス
サステナビリティ経営の推進と実践で、環境・社会課題への対応とリスク管理を強化し、企業価値を向上させる。

 

(同社資料を基に作成)

 

 

ROE経営の強化
ROEを特に重要な経営指標として位置付けており、同社取締役に対して2004年に導入した業績連動株式報酬型ストック・オプションの評価項目にROEを選定している。
2022年6月に公表した新・中長期経営計画においても、引き続きROE10%以上を目標としている。ROE向上に向けては「収益性の向上」と「資産効率の向上」を特に重要視している。

 

 

(同社資料より)

 

 

17/4期

18/4期

19/4期

20/4期

21/4期

22/4期

ROE(%)

10.5

9.0

9.9

5.2

4.7

8.2

 売上高当期純利益率(%)

2.88

2.54

2.87

1.61

1.57

3.23

 総資産回転率(回)

1.61

1.64

1.67

1.63

1.43

1.21

 レバレッジ(倍)

2.25

2.17

2.07

2.00

2.08

2.12

*インベストメントブリッジが計算

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

 

2.2023年4月期第2四半期決算概要

【2-1 国内飲料市場の動向】

 

2019年

2020年

2021年

2022年見通し

2021年比

修正率

2019年比

2020年比

茶系飲料

9,665

8,770

8,900

9,170

+3.0%

0.5%

-5.1%

+4.6%

 緑茶飲料

4,450

4,180

4,260

4,350

+2.1%

0.0%

-2.2%

+4.1%

 その他茶系飲料

5,215

4,590

4,640

4,820

+3.9%

1.0%

-7.6%

+5.0%

コーヒー飲料

9,150

8,050

8,050

8,090

+0.5%

+0.5%

-11.6%

+0.5%

炭酸飲料

7,330

7,350

7,470

7,540

+0.9%

0.0%

+2.9%

+2.6%

ミネラルウォーター

2,840

2,560

2,610

2,920

+11.9%

+2.8%

+2.8%

+14.1%

果実飲料

2,800

2,240

2,210

2,230

+0.9%

+0.9%

-20.4%

-0.4%

スポーツドリンク

2,265

1,930

1,850

2,070

+11.9%

+4.0%

-8.6%

+7.3%

野菜飲料

1,540

1,570

1,520

1,470

-3.3%

-3.9%

-4.5%

-6.4%

機能性・その他

2,000

1,780

1,780

2,100

+18.0%

+17.3%

+5.0%

+18.0%

国内飲料市場

37,590

34,250

34,390

35,590

+3.5%

+1.5%

-5.3%

+3.9%

*単位:億円。同社資料を基に作成。修正率は22年4月期決算資料掲載の2022年見通しからの修正率。

 

2022年の国内飲料市場の規模はコロナ禍前の2019年水準には届かないものの、ミネラルウォーター、スポーツドリンクを中心に好調で、2021年比で3.5%増と回復が続く見通し。一方、野菜飲料は低調。
同社が無糖茶飲料「缶入りウーロン茶」を発売した1980年は1%であった国内飲料における無糖飲料比率は、2021年には54%まで上昇。今後も、消費者の健康志向の更なる高まりとともに、無糖飲料の比率も上昇すると同社では考えている。

 

(同社資料を基に作成)

 

22年7月-9月は、全国的な猛暑、人流回復で好調に推移したが、10月に入ると食品市場全体における価格改定に加え天候不順も影響し、消費マインドは停滞し飲料市場・同社とも販売数量は前年を下回った。

 

【2-2 連結業績】

 

22/4期2Q 

構成比

23/4期2Q 

構成比

前年同期比

予想比

売上高

208,716

100.0%

227,262

100.0%

+8.9%

+3.3%

売上総利益

82,469

39.5%

85,211

37.5%

+3.3%

-

販管費

71,612

34.3%

73,875

32.5%

+3.2%

-

営業利益

10,856

5.2%

11,335

5.0%

+4.4%

-2.3%

経常利益

11,303

5.4%

12,548

5.5%

+11.0%

+9.1%

当期純利益

7,752

3.7%

7,923

3.5%

+2.2%

+11.6%

*単位:百万円、当期純利益は、親会社株主に帰属する当期純利益。

 

(同社資料より)

 

増収増益
売上高は前年同期比8.9%増の2,272億円。伊藤園(単独)は同5.2%増、大都市圏の出店ロケーションにより前期はコロナ禍の影響を強く受けたタリーズコーヒージャパンが同21.0%増と大きく回復した。
営業利益は同4.4%増の113億円。タリーズコーヒージャパンが大幅増益であった一方、原材料・資材高の影響で伊藤園(単独)は微減益、米国事業は営業損失。

 

会社別売上高・利益

 

22/4期2Q 

構成比

23/4期2Q 

構成比

前年同期比

伊藤園(単独)

159,505

76.4%

167,752

73.8%

+5.2%

タリーズコーヒー

14,017

6.7%

16,963

7.5%

+21.0%

チチヤス

6,155

2.9%

6,180

2.7%

+0.4%

その他国内

25,494

12.2%

26,666

11.7%

+4.6%

米国事業

17,224

8.3%

23,922

10.5%

+38.9%

その他海外

2,844

1.4%

3,243

1.4%

+14.0%

連結消去

-16,524

-

-17,466

-

-

連結売上高

208,716

100.0%

227,262

100.0%

+8.9%

伊藤園(単独)

9,149

5.7%

9,017

5.4%

-1.4%

タリーズコーヒー

115

0.8%

1,334

7.9%

+1,055.3%

チチヤス

440

7.1%

406

6.6%

-7.5%

その他国内

595

2.3%

585

2.2%

-1.7%

米国事業

330

1.9%

-321

-

-

その他海外

555

19.5%

578

17.8%

+4.2%

連結消去

-329

-

-265

-

-

連結営業利益(営業利益率)

10,856

5.2%

11,335

5.0%

+4.4%

*単位:百万円。為替レート(米ドル期中平均):22/4期2Q110.49円、23/4期137.48円。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

【2-3 財政状態及びキャッシュ・フロー】

◎財政状態

 

22年4月

22年10月

増減

 

22年4月

22年10月

増減

流動資産

223,278

232,934

+9,656

流動負債

76,796

76,813

+17

 現預金

96,571

100,525

+3,954

 仕入債務

30,365

30,439

+74

 売上債権

58,015

61,338

+3,323

 短期借入金

2,897

2,532

-365

 たな卸資産

54,317

58,401

+4,084

固定負債

88,549

90,783

+2,234

固定資産

105,081

105,417

+336

 長期借入金

68,917

70,441

+1,524

 有形固定資産

74,490

74,757

+267

負債合計

165,346

167,597

+2,251

 無形固定資産

8,249

8,484

+235

純資産

163,012

170,754

+7,742

 投資その他の資産

22,340

22,175

-165

 利益剰余金

131,105

136,446

+5,341

資産合計

328,359

338,351

+9,992

負債純資産合計

328,359

338,351

+9,992

*単位:百万円。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

現預金、売上債権、たな卸資産の増加等で資産合計は前期末比99億円増加し3,383億円。長期借入金の増加等で負債合計は同22億円増加の1,675億円。利益剰余金の増加など純資産は同77億円増加し、1,707億円。
自己資本比率は前期末から0.9%上昇し50.1%となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

22/4期2Q

23/4期2Q 

増減

営業キャッシュ・フロー(A)

11,762

10,772

-990

投資キャッシュ・フロー(B)

-4,385

-4,058

+327

フリー・キャッシュ・フロー(A+B)

7,377

6,714

-663

財務キャッシュ・フロー

-5,383

-4,842

+541

現金及び現金同等物期末残高

110,067

97,694

-12,373

*単位:百万円。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

キャッシュ・ポジションは低下した。

 

 

3.2023年4月期業績予想

【3-1 連結業績】

 

22/4期 

構成比

23/4期(予) 

構成比

前期比

進捗率

売上高

400,769

100.0%

418,000

100.0%

+4.3%

54.4%

売上総利益

159,581

39.8%

162,300

38.8%

+1.7%

52.5%

販管費

140,787

35.1%

142,300

34.0%

+1.1%

51.9%

営業利益

18,794

4.7%

20,000

4.8%

+6.4%

56.7%

経常利益

19,971

5.0%

19,500

4.7%

-2.4%

64.3%

当期純利益

12,928

3.2%

12,000

2.9%

-7.2%

66.0%

*単位:百万円。

 

業績予想に変更なし、増収増益の予想
業績予想に変更は無い(会社別の内訳には売上・利益の修正あり)。売上高は前期比4.3%増の4,180億円、営業利益は同6.4%増の200億円の予想。
伊藤園(単体)を始めグループ会社とも増収。伊藤園(単体)が増益予想のほか、前期黒字転換したタリーズコーヒージャパンは大幅な増益を見込む。一方、米国事業は減益の予想。
配当は普通株式、優先株式とも前期と変わらず、それぞれ40円/株、50円/株の予定。予想配当性向は普通株式41.5%、優先株式47.1%。

 

販管費の内訳

 

22/4期

対売上比

23/4期

(予)

対売上比

前期比

販売手数料

252

0.1%

258

0.1%

+2.2%

広告宣伝費

9,980

2.5%

10,592

2.5%

+6.1%

運送費

13,751

3.4%

14,291

3.4%

+3.9%

減価償却費

9,153

2.3%

8,310

2.0%

-9.2%

その他

107,651

26.9%

108,426

25.9%

+0.7%

合計

140,787

35.1%

142,300

34.0%

+1.1%

*単位:百万円。

 

会社別売上高・利益

 

22/4期 

対売上比

23/4期(予) 

対売上比

前期比

修正率

進捗率

伊藤園(単独)

300,319

74.9%

312,500

74.8%

+4.1%

0.0%

53.7%

タリーズコーヒー

30,060

7.5%

34,450

8.2%

+14.6%

+4.4%

49.2%

チチヤス

11,844

3.0%

12,342

3.0%

+4.2%

-1.7%

50.1%

その他国内

48,486

12.1%

50,153

12.0%

+3.4%

-1.2%

53.2%

米国事業

36,771

9.2%

47,417

11.3%

+29.0%

+17.3%

50.5%

その他海外

5,155

1.3%

5,865

1.4%

+13.8%

-3.9%

55.3%

連結消去

-31,867

-

-44,728

-

-

-

-

連結売上高

400,769

100.0%

418,000

100.0%

+4.3%

0.0%

54.4%

伊藤園(単独)

15,685

5.2%

16,500

5.3%

+5.2%

0.0%

54.6%

タリーズコーヒー

860

2.9%

2,000

5.8%

+132.6%

+66.7%

66.7%

チチヤス

734

6.2%

650

5.3%

-11.4%

-11.6%

62.5%

その他国内

655

1.4%

650

1.3%

-0.8%

+9.6%

90.0%

米国事業

555

1.5%

0

0.0%

-

-

-

その他海外

917

17.8%

1,000

17.1%

+9.1%

-19.0%

57.8%

連結消去

-613

-

-800

-

-

-

-

連結営業利益(営業利益率)

18,794

4.7%

20,000

4.8%

+6.4%

0.0%

56.7%

*単位:百万円。為替レート(米ドル期中平均):22/4期113.79円、23/4期137.00円(修正前120.00円)。

 

4.マーケティング・事業戦略

【4-1 お~いお茶】

2022年の緑茶飲料市場は前年比2%伸長し、4,350億円規模を見込んでいる。同社の販売金額シェアは同1ポイント上昇し、35%の見通し。主力製品の「お~いお茶」の販売数量は今上期に前年同期比7%増。第2四半期(8-10月)は過去最高を記録した。また、秋冬期のホット緑茶飲料において「お~いお茶」はシェアNo.1となっており、独自の電子レンジ対応製品をはじめ、「急須でいれたときの香り立ちやおいしさ」が支持された結果と同社では考えている。

 

(同社資料より)

 

「お~いお茶」は、「日本文化を現代風に楽しむ」「製品バリエーション」「特定保健用食品・機能性表示食品の製品化」「嗜好品領域」「環境保全の取組み」といった様々な切り口から価値を提供することで多くの消費者から支持されている。
2019年8月に発売した機能性表示食品「お~いお茶 濃い茶」の2021年度販売数量は3,000万ケースを突破した。今後、「お~いお茶」ブランドで1億ケースを目指す考えだ。

 

【4-2 リーフ】

リーフ市場は弱含みであるものの、同社シェアは上昇している。
特定保健用食品・機能性表示食品のリーフ製品展開を強化し健康志向需要の取り込みを図り、上期の販売額は前年同期比8%増と伸長した。
環境にも配慮したエコティーバッグも開発した。

 

(同社資料より)

【4-3 むぎ茶・野菜飲料】

無糖のノンカフェイン飲料として麦茶の販売は堅調である。定番の「健康ミネラルむぎ茶」「麦茶ティーバッグ」は伸長が続いている。

 

(同社資料より)

 

野菜のカロリーを気にする消費者が野菜飲料を控える傾向の中、2022年5月以降、営業体制を拡充し紙容器の販売を強化した結果、今上半期の紙容器販売シェアは1.3ポイント上昇した。2022年12月には、鉄道駅ホームにスタンド販売の青汁専門店を開店するなど、健康への関心を取り込んで販売拡大を目指す。

 

(同社資料より)

 

【4-4 タリーズブランド】

コーヒー飲料市場においても無糖へのシフトが進んでおり、製品バリエーションを増やしている。無糖ボトル缶の販売量は大きく伸長している。

 

(同社資料より)

 

【4-5 タリーズコーヒージャパン】

タリーズコーヒージャパン(株)の販売状況は都心店舗で前年比26%増、郊外店同15%増と引き続き好調。物販を強化したことで、客単価はコロナ禍前の2019年比9%上昇し、コーヒー豆販売額は同12%増となっている。
公式アプリは100万DLを超えた。ニュウマン新宿店では初めてセルフレジを導入したほか、約340店舗でデリバリーサービスを実施。店舗オペレーションの効率化による生産性向上の取組みを強化している。
22年12月以降には、オーダー統合システムを導入しオペレーションの効率化を図るほか、米国のDistant Lands Trading Co. とのシナジーを図る。
新たな取組みに挑戦することで更なるファン獲得、回復ステージへ向かう。

 

(同社資料より)

 

【4-6 海外戦略】

日本の緑茶で世界中の人々に健康的な生活を提案する「世界のティーカンパニー」となることを目指している。
ドリンク「お〜いお茶」、リーフ「グローバルブランド」共に、販売は順調に拡大している。
2027年には、海外売上比率12%以上を目指している。
そのために、「北米・中国の基盤強化」を重点テーマとし、地域に合わせたマーケティング、世界で活躍できる人材育成、現地基準に沿う原料開発、有機栽培・減農薬栽培への着手などに取り組んでいく。

 

【4-7 健康創造企業として】

(1)農福連携
障がい者などが農林水産業などの分野で活躍することを通じて、自信や生きがいをもって社会参画を実現していく取組み「農福連携」をスタートさせ、22年11月、同社直営店でノウフクJAS認証茶葉を100%使用した「ふんわり香る静岡茶」の販売を開始した。
また、農福連携等応援コンソーシアムの賛助会員として取組みを応援している。
農業を通じて多様性を認め合う社会へ貢献する。
※ノウフクJAS
2019年に制定・認証が始まった日本農林規格(JAS)。障がい者が主体的に携わって生産した農林水産物及びこれらを原材料とした加工食品の生産方法及び表示の基準を規格化したもの。

 

(2)お茶の基本価値「コミュニティの創出」
同社が制定した10月1日「日本茶の日」に、リアル&オンラインによる双方向コミュニケーションのお茶を楽しむ企画を実施した。
リアルでは、同社、学生、お客様による「わくわく大茶会」を開催し、老若男女、世代を超えてお茶を楽しむコミュニティを創出したほか、オンラインで各地を中継しお茶の魅力を紹介した。

 

泉州「お茶のある暮らし」プロジェクトでは、産・官・学連携の取組みとして、大阪観光大学で「お茶を楽しむ」授業を正規科目として開講した。

 

(3)食生活と健康への貢献
緑茶成分の機能性に関する研究を強化している。
筑波大学発ベンチャーの株式会社MCBIとの共同研究の結果、抹茶の継続摂取により、「睡眠の質の向上」「社会的認知機能の改善」という2つの効果を確認した。

 

定期的に開催している「伊藤園健康フォーラム」では、お茶の健康価値を研究者と一緒に発信している。人々が笑顔で健康な毎日を過ごすために“お茶が果たせる役割”を考え発信し続ける考えだ。

 

こうした取り組みにより、「お茶」を通じてつながりを創出し、心と体の両面からお客様の健康をサポートする。

 

5.今後の注目点

上期進捗率は売上高54.4%、営業利益56.7%。売上・利益ともに、飲料の最盛期である7‐9月を含む上半期のウェイトが高いのが同社の特長であるが、過去数年と比較すると、売上高はほぼ例年通り、営業利益は低水準となっている。
食料・飲料共全般の値上げに伴う消費マインドの低迷が懸念材料であるが、製品力や営業力の強みを活かし、第3四半期以降、どれだけ売上・利益を積み上げていくことができるか注目していきたい。

 

<参考1:新・中長期経営計画>

経営理念、ミッション、ビジョンの下、2023年4月期~2027年4月期を対象とする5か年の新・中長期経営計画を策定した。

 

【5-1 重点戦略】

以下、5つの重点戦略を展開する。

国内既存事業の盤石化

・国内で圧倒的No.1ティーカンパニーの地位を確立

・健康訴求を中心としたブランド価値の向上、お客様との接点強化

「お~いお茶」のグローバル化

「お~いお茶」を米国や中国をはじめとする各国の食文化との融合により日常生活へ浸透

新たな事業の創出

・食や生活への新しい価値の提供

・茶の機能性、茶事業で培った技術や繋がりの活用

経営基盤の強化

・伊藤園グループのシナジー強化

・人材育成、研究開発、DXの強化推進

サステナビリティ経営の推進

・伊藤園らしい事業活動を通じた、消費者、地域社会、農業、地球環境の課題解決への貢献

・100年企業に向けた持続的な成長

 

【5-2 定量目標】

成長に対しては、「収益性重視」「シェア向上のための持続的成長」「資本利益率の向上」重視している。
連結売上高の5か年平均伸長率3%以上、総還元性向40%維持を掲げている。

 

【5-3 事業投資】

5年間累計営業キャッシュ・フロー1,500億円以上を原資に、事業投資700億円、有利子負債削減400億円、株主還元350億円以上を計画している。

 

【5-4 マテリアリティ】

健康創造企業として7つのマテリアリティを特定している。

 

(同社資料より)

 

・食生活と健康への貢献
人生100年時代を見据えた研究開発、各世代の健康に資する製品・サービスを通じて、健康的で豊かな生活を提供。
・持続可能な国内農業への貢献
茶産地育成事業を通じて、高付加価値原料の開発や環境配慮型農業の推進により国内農業の活性化に貢献。
・環境
自然由来の製品を主として事業活動をする企業として、人類共有の地球環境を守る課題に取組む。
・地域社会・コミュニティとのつながりの深化
様々なステークホルダーとの対話を通じ、地域社会の課題解決に貢献。
またお茶を介したコミュニケーションにより、心身ともに健康をサポートする。
・持続可能なサプライチェーンへの貢献
全てのサプライヤーとの持続的なパートナーシップにより、社会・環境課題の解決と双方の持続的な収益の両立を実現する。
・多様な人財と全員活躍の推進
バリューチェーンにおける全ての人々の人権を尊重するとともに、全従業員が健康でいきいきと活躍する組織づくりに取組む。
・コーポレート・ガバナンス
サステナビリティ経営の推進と実践で、環境・社会課題への対応とリスク管理を強化し、企業価値を向上させる。

 

<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

13名、うち社外5名

監査役

4名、うち社外3名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2022年12月1日)
基本的な考え方
伊藤園グループ(以下「当社グループ」)の経営理念は、「お客様第一主義」です。伊藤園グループ基本綱領の中で、当社グループは、そこに働くすべての人とその家族、そして広く社会全体のために存在し、国・地域社会・消費者・株主・販売先・仕入先・金融機関等のステークホルダーと協調して、企業の社会的責任を果たすことを経営の根幹としています。
このグループ経営理念が当社グループの企業倫理の基本的な考え方であり、コーポレート・ガバナンスを支える不変の真理です。当社グループは、すべてのステークホルダーの信頼に応え、持続可能な社会の実現に向けた経営を全役員及び全従業員一丸となって積極的に推し進めます。
当社グループは、この理念に基づき、「健康創造企業」として中長期ビジョン「世界のティーカンパニー」を目指します。また、世界中のお客様の健康に貢献することにより、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上につなげ、より一層のコーポレート・ガバナンス強化に取り組みます。

 

監査役会設置会社である当社は、適切なコーポレート・ガバナンスを実現するために、監査役が当社グループ会社の代表取締役あるいは担当取締役、執行役員または従業員に対し、営業の状況、意思決定のプロセス等の確認を行い、監査を実施しています。
監査役は、取締役会に毎回出席し、監査の状況につき会社全般または、個別案件ごとに客観的、且つ公平に意見を述べると共に監査役会での監査方針に従い取締役の業務執行を監査しています。

 

<実施しない原則とその理由>
2021年6月の改訂後のコードに基づき記載しています。

 

【原則4-11 取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件】
当社の取締役会の構成は、経営戦略等に照らして知識・経験・能力を考慮し、全体としてバランス良く備え、取締役会における実効性ある意思決定及び実質的な議論を確保するために必要かつ適切な人数で構成することを基本とし、ジェンダ-や国際性、職歴、年齢の面を含む多様性の確保の観点にも十分配慮して決定します。
 現在、女性の取締役は不在ですが、ジェンダーの面での多様性の確保については、引き続き検討を重ねていきます。
(当社コーポレート・ガバナンス・ガイドライン第6条(取締役会の構成))

 

<開示している主な原則>
【コーポレート・ガバナンス・コードの各原則に基づく開示】
当社は、コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方と基本方針を示すものとして、取締役会の決議に基づき、「株式会社伊藤園 コーポレートガバナンス・ガイドライン」(以下「当社ガイドライン」)を定め、当社コーポレートサイトにおいて開示していますので併せてご参照ください。
https://www.itoen.co.jp/csr/governance/

 

【原則1-4 政策保有株式】
当社は、原則として株式を保有しない方針です。ただし、株式を保有することにより、円滑な取引、仕入、または資金調達ができると判断できる場合に政策保有を行っています。また、当社グル-プの中長期的な企業価値向上に資すると認められない場合には、段階的に縮減する方針としています。

上記ただし書に基づき保有する上場株式(以下「政策保有株式」)について、毎年の取締役会で、個別銘柄毎に投下資本に対するリタ-ンが資本コストを上回っているかを検証しています。また、中長期的な取引先との関係維持・強化の観点から、保有意義の確認を行い、経済合理性と保有意義が希薄化してきた銘柄については相手先企業と対話の上、売却及び縮減を進めることを取締役会において確認しています。
政策保有株式にかかる議決権の行使については、各議案の内容を精査し、当社及び保有先の企業価値の向上に資するものか否かを総合的に判断した上で適切に行います。
(当社ガイドライン第14条(株式の政策保有に関する方針))

 

【補充原則2-4(1)中核人材の登用等における多様性の確保】
<中核人材の登用等における多様性の確保についての「考え方」>
当社グループは創業以来、「他に類を見ない素晴らしい企業にすること」を目的とした伊藤園グループ基本綱領を定めています。この中で人材の登用については、単なる年功、学歴、門閥等は問わず、真に実力のある者を登用する実力主義を原則としています。この原則のもと、人材の性別・国籍・年齢・中途採用者・障がいの有無等によって与えられる機会が損なわれることはなく、個々の能力や適性に応じて多様な人材が活躍できる環境を整備します。この実力主義の考え方に基づく組織文化を育むことで、「世界のティーカンパニー」の実現を目指します。
(当社ガイドライン第18条(多様性に関する方針))

 

<中核人材の登用等における多様性の確保についての自主的かつ測定可能な「目標」>
(1)女性の管理職登用
当社では、実力主義の考えのもと、性別の区別なく、役員・管理職の登用を行っています。また、多様性の確保の観点から女性活躍推進は経営の重要な課題と認識し、女性社員の定着率向上、家庭と仕事の両立支援強化、管理職の育成に取り組んでいます。2020年度における女性管理職2.3%、次期管理職候補(係長相当)5.0%に対して、2023年度には2020年対比で女性管理職150%、次期管理職候補(係長相当)130%の目標を掲げ、長期目標(2030年)としても更なる育成・登用を目指します。

 

(2)中途採用者の管理職登用
当社の管理職に占める中途採用者の割合は、従業員全体に占める中途採用者の割合と同等(約20%)であり、様々な経験・知識を有する人材が、その実力に応じて管理職として登用されています。現状は自主的かつ測定可能な目標について定めていませんが、今後も実力主義の考えに基づき多様な人材を採用及び育成することで、より活躍できる環境を整備していきます。

 

(3)外国人の管理職登用
当社では、外国人採用者は現在16名在籍しており、うち4名が管理職として活躍しています。グループ全体では、社員の約1割(約800人)が外国人であり、各国・各グループ会社においてそれぞれの実力に応じて登用されています。当社においても、外国人が管理職に登用されている割合は、社員全体に占める管理職の割合と同等以上であり、多様なバックグラウンドを有した社員が活躍しています。現状は自主的かつ測定可能な目標については定めていませんが、「世界のティーカンパニー」を目指す企業として、実力主義の考えに基づきグループ全体での登用を推進していきます。

 

<多様性の確保に向けた「人材育成方針」及び「社内環境整備方針」、その状況>
(1)人材育成方針
当社は実力主義の考えのもと、チャンスは社員一人ひとりに平等であり、評価は公正に行うことを基本として人材育成に力を入れています。グループ経営理念「お客様第一主義」の実践を根幹に多様な人材の育成や働き方改革等、社員一人ひとりが健康でいきいきと働ける健康経営を推進します。

 

①コンプライアンス教育
「伊藤園グループコンプライアンス行動基準の手引」に基づき、全社員に対して性別、年齢、民族、人種、国籍、宗教、信条、社会的身分、門地、障がいの有無等による差別をせず、人権を尊重し、個人の適性能力により公正に取扱いがなされるよう教育しています。

 

②管理職教育
管理職に対しては、多様性の確保の重要性について理解を深める教育を実施するとともに、多様な人材が活躍できるよう整備された各種制度の目的と内容について教育をしています。

 

③女性活躍推進研修
女性社員が自己の能力を充分に発揮し、更なる活躍ができるようキャリア・ライフプランを再考・形成できる場を設けています。階層別の女性教育を実施することで女性社員のモチベーションや定着率向上、家庭と仕事の両立支援、管理職の育成などの強化に繋げています。

 

④海外人材育成教育
今後の海外事業を支える人材の育成を目的に、異文化の理解とコミュニケーションの促進を主眼とした教育を実施しています。具体的には、近い将来海外勤務を希望する社員を募り事前に教育を行うプレエントリー制度、その後実際に海外に渡航し研修を受ける海外研修生制度により、社員のキャリア支援を行うとともに異文化への理解の促進を図っています。

 

(2)社内環境整備方針
当社では、多様な人材が一人ひとりの状況に応じて柔軟に働き方を選択できるようにすることで、ワークライフバランスを推進し、誰もが働きやすい職場になるよう環境整備を行っています。

 

伊藤園ファミリーサポート制度社員とその家族のライフイベント(結婚・出産・育児・介護等)における支援制度を「伊藤園ファミリーサポート制度」として整備

し総合的な支援を行っています。

 

職場環境改善推進委員会職場環境の総合的な問題および改善策を検討し、より良い職場環境をつくるため、職場環境改善推進委員会(原則年2回実

施)を設置しています。委員会のもとには、各事業所の代表者による地区委員会(2020年度は28回実施)が設置され、労働時間・職場の安全・衛生管理などの課題や今後の働き方の見直しについて意見交換をしています。

 

障がい者支援各職場で働く障がいを持つ社員に対して、人事部門が定期的に訪問し、社員及びその家族との面談、公共の支援団体との

連携を図ることで、障がいを持つ方がいきいきと長く働けるよう支援しています。

 

Voice制度(社内提案制度)職種にかかわらず全社員が新しい製品や販売促進の提案等ができる「Voice制度」を設けています。この制度を通じて、全

社員が「STILL NOWの精神=今でもなお、お客様は何を不満に思っているか」を常に意識するとともに、優れた提案には社内表彰を行うことで社員のモチベーション向上にも寄与しています。
人事育成・社内環境整備の詳細は、当社コーポレートサイトをご参照ください。
https://www.itoen.co.jp/csr/labour/

 

【補充原則3-1(3)サステナビリティについての取組み等】
<サステナビリティについての取組み>
当社グループは、「お客様第一主義」の経営理念に基づき、中長期ビジョン「世界のティーカンパニー」の実現に向けて、CSV経営の実践およびESGの推進により、環境・社会課題の解決と企業価値向上の両立を目指して取り組んでいます。そのため、「伊藤園グループCSR憲章」に基づき、国際規格ISO26000に則した7つの中核主題、組織統治・人権・労働慣行・環境・公正な事業慣行・消費者課題・コミュニティへの参画及びコミュニティの発展、を推進テーマに設定し、特に「消費者課題」「コミュニティへの参画・発展」「環境」を重要課題と位置付けています。
環境課題については、「伊藤園グループ環境方針」のもと「伊藤園グループ中長期環境目標」を策定し、環境負荷低減に取り組んでいます。その中でも、当社製品の容器包装に関わるプラスチック問題を背景に、2020年9月、「伊藤園グループ プラスチックに関する方針」を策定し、2030年までにペットボトルに使用するリサイクル素材等の割合を100%にすることを目指し、資源循環に取り組んでいます。
当社コーポレートサイトに掲載しています「CSR/ESG (環境・社会・ガバナンス)」をご参照ください。
https://www.itoen.co.jp/csr/

 

<人的資本についての取組み>
当社では、最も大切な財産は「人」であるという考え方に基づき、常に前向きに挑戦できる人材の育成を目指しています。人材を「人財」として捉え、人的資源「コスト(=管理)」から人的資本「投資(=価値創造)」とすることで経営戦略と連動した取組みを実現していきます。

 

(1)社内研修制度「伊藤園大学・伊藤園大学院」
社員の成長を促進し、社員自らの夢を実現するための一つの支援として社内研修制度「伊藤園大学・伊藤園大学院」を毎年開設し、ビジネス・経営等に必要な専門知識を習得できる教育の機会を提供することで、積極的な自己啓発支援を行っています。

 

(2)「伊藤園ティーテイスター制度」
1994年から開始した「ティーテイスター(茶資格)制度」は、お茶に関する高い知識と技術を持つ社員に資格を与え、お茶に関する知識と技術の向上、社内外への茶文化の普及などを目指した伊藤園グループ独自の制度です(2017年3月より、厚生労働省認定の社内検定)。「世界のティーカンパニー」の実現に向けた社員の育成強化のひとつとして、国内外のグループ会社で取り組んでいます。

 

(3)健康経営
当社は、2021年5月に「伊藤園グループいきいき健康宣言」を策定しました。健康経営の実施により、社員一人ひとりが健康でいきいきと働き、明るく前向きに挑戦する姿を通じて社会に貢献できる企業を目指しています。具体的にはバランスの取れた食事、適正体重の維持、適度な運動、良い睡眠という4つの軸を中心に全社員が規則正しい生活習慣を実現することで、社員の活力向上や生産性向上等の組織の活性化を通じて、中長期的な企業価値向上を目指します。

 

(4)定年延長
当社は、これまで60歳の定年後も、最大5年間勤務できる再雇用制度を設けていましたが、社員が安心していきいきと働くことができる環境を整備するため、2022年5月から65歳を定年とする定年延長を決定しています。これまでに培った経験や知識、ノウハウをさまざまな職場で発揮できる環境を整え、70歳まで健康でいきいきと働ける仕組みづくりを推進していきます。

 

<知的財産についての取組み>
(1)知的財産権の活用・保護
当社は、知的財産活動を事業継続・展開していく上で不可欠な活動と位置づけ、経営戦略、当社事業の成長、イノベーションの促進を支援するため、知的財産情報を活用したIPランドスケープを構築し、中長期事業計画の柱となるブランド、既存・新規事業、海外展開等に対して知的財産権の活用を推進していきます。
研究開発部門、マーケティング部門、新規事業部門に対しては知的財産情報を提供し、今後の研究開発戦略・ブランド戦略の支援を行っています。併せて当社事業を支える商品・技術・デザイン・ネーミング等については、知的財産権を確保し、市場における競争優位性を保持しています。特に当社のコア事業であるお茶関連では、サプライチェーンを意識した茶畑から茶製品、茶殻リサイクルまでの知的財産権を確保し、事業を通じて環境・社会課題にも貢献しています。

 

(2)人材の育成への投資
当社は、社内に弁理士、弁護士を擁するとともに、外部の専門家も活用しながら、専門部署としての知的財産部を有しています。研究開発を中心とした知的財産創出に係る部門の人材については、知識・スキルを継続して教育することによって、権利取得を意識した研究設計、権利活用、戦略立案を担える人材の育成に取り組んでいます。

 

(3)他社の知的財産権の調査
他社の知的財産権を尊重し、侵害リスクを回避するために他社特許調査及び情報収集を行っています。特に「世界のティーカンパニー」に向けた海外展開の支援として、各国における知的財産権の取得、リスク回避のため、各国の係争・審査実態の情報を収集しながら適切且つ効果的な権利取得を推進していきます。

 

<TCFD提言への対応>
気候変動対応については、TCFD提言に基づき、IPCC代表的濃度経路シナリオのRCP2.6、RCP4.5、RCP6.0、RCP8.5の4つのシナリオを選択。主力原料である国内茶葉の収量と品質への影響分析を実施し、2020年度統合レポートにおいて開示しました。
また、中長期CO2排出量削減目標およびKPIを設定し、全社部門において認証取得しているISO14001の仕組みを活用し、環境マネジメントを推進しています。
今後も、TCFD等の枠組みに基づき、シナリオ分析を継続し開示の質と量の充実化を進めていきます。

 

【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】
当社は、自社の資本コストを的確に把握した上で、経営幹部等による株主との建設的な対話を通じて、株主の声に耳を傾け、その関心・懸念に正当な関心を払うとともに、事業ポートフォリオの見直しや、設備投資・研究開発投資、人的資本への投資等を含む自らの経営方針を分かりやすい形で明確に説明し、その理解を得る努力を行います。さらに決算発表後の取締役会においては、株主やアナリストから寄せられた意見を共有し、経営戦略のレビューなどに積極的に活かしていきます。
(当社ガイドライン 第16条(株主との建設的な対話に関する方針)
詳細については、本報告書「IRに関する活動状況」をご参照ください。

 

 

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