ブリッジレポート
(7089) フォースタートアップス株式会社

グロース

ブリッジレポート:(7089)フォースタートアップス 2023年3月期第3四半期決算

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志水 雄一郎 代表取締役社長

フォースタートアップス株式会社(7089)

 

 

企業情報

市場

東証グロース市場

業種

サービス業

代表取締役社長

志水 雄一郎

所在地

東京都港区六本木1丁目6-1 泉ガーデンタワー 36F

決算月

3月

HP

https://forstartups.com/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,820円

3,546,644株

6,454百万円

34.4%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

0.00円

-

104.35円

17.4倍

373.43円

4.9倍

*株価2/24終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROEとBPSは前期実績。
*EPSは今期の会社予想。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2019年3月(実)

1,045

244

247

174

59.56

0.00

2020年3月(実)

1,262

240

219

155

52.91

0.00

2021年3月(実)

1,273

76

79

38

11.59

0.00

2022年3月(実)

2,348

488

492

382

110.68

0.00

2023年3月(予)

2,800

500

500

370

104.35

0.00

*単位:百万円、円。予想は会社側予想。2022年3月期より連結決算。
*過年度決算訂正後の数値。

 

 

フォースタートアップス株式会社の2023年3月期第3四半期決算の概要等をブリッジレポートにてご報告致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2023年3月期第3四半期決算概要
3.2023年3月期業績予想
4.中長期の取り組み・考え方
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 23/3期第3四半期は前年同期比35.2%の増収、同38.3%の営業増益。訂正決算の影響を受けたものの、高成長を継続した。受注高も前年同期比で増加基調が継続した。タレントエージェンシーは堅調な受注を維持し、オープンイノベーションも「成長産業カンファレンス」の協賛金の受注が当初の計画を上回った。

     

  • 同社は、2023年1月20日に23/3期通期決算の業績修正を行った。新しい会社計画は前期比19.2%の増収、同2.3%の営業増益。過去及び進行中の事業年度における売上原価の一部に計上漏れがあることが判明したことに対応し、訂正決算を行い販管費が第4四半期に発生することを見越し、各段階利益の下方修正を行ったものである。一方、タレントエージェンシー事業における23/3期第3四半期の人材紹介受注の状況、ならびに今第2四半期までの業績進捗と受注実績を踏まえ、売上高については期初予想を据え置いた。

     

  • 2022年11月28日、首相官邸において、「第13回 新しい資本主義実現会議」が開催され、スタートアップ育成5か年計画が決定された。人材、資金供給、オープンイノベーションの3本柱を一体として推進し、スタートアップへの投資額を5年後の2027年度には10兆円規模と10倍増にすることを目標としている。スタートアップ企業の増加は当然同社の中長期的な成長性の向上に結び付く。これら政策の後押しが今後同社の業績にどの様なインパクトをもたらすのか注目される。

     

1.会社概要

日本の競争力を回復させ明るい未来をもたらすためにはスタートアップの成長が不可欠との想いから「for Startups」という経営ビジョンを掲げ、必要な支援を行う成長産業支援インフラとなることを目指している。
「成長産業支援事業」として「タレントエージェンシー」「オープンイノベーション」の2つのサービスを展開。今期から人材支援に加え資金支援も実施することでハイブリッドキャピタル化を図り、スタートアップ企業の早期成長を促していく。「イノベーションに関わるプレイヤーとのネットワーク」「国内最大級の成長産業データベース『STARTUP DB』」などが競争優位性。

 

(1)上場までの沿革

1996年に大手人材紹介会社に入社後キャリアを重ね、新規事業の立ち上げなどトップクラスの実績を上げてきた志水雄一郎氏(現 フォースタートアップス株式会社 代表取締役社長)に、自らの存在意義を改めて問い直す機会が訪れる。そこでこれまでの自身の人生と日本社会の変化を振り返ると同時に、これからの日本の将来を見通して見ると、日本経済およびこれまでの日本経済を支えてきた大企業が「失われた20年」と呼ばれる長期低迷に喘ぎ、今後も明るい未来を予想し難いと考える。
一方で、世界に目を向けるとベンチャー企業の躍進が国富の大きな部分を創出していることを知り、人材関連事業に携わっていた自分および業界は、「本来取り組むべき課題解決=人の力を活用することによる企業の成長」に向き合わず、自分や自社の成長、営業成績のみを目標としていたことを痛感。そこで、人材関連事業に携わるものとして、「人の可能性を信じ、人を最適に組み合わせることで日本企業および日本の競争力を復活させ、明るく最高の未来を次世代に繋いでいく」ことへの挑戦を決意する。

 

2013年4月、志水氏の想いに共感し協力を申し出た(株)ウィルグループ(東証1部、6089)は、子会社の(株)セントメディア(現(株)ウィルオブ・ワーク)の一事業部門としてネットジンザイバンク事業部を発足させ、志水氏はそこでスタートアップ企業に対する人材支援サービス提供を開始した。国内有数のベンチャーキャピタルであるグロービス・キャピタル・パートナーズの投資先であったスマートニュースのCXO(経営チーム)組閣を手掛けたことを始めとした数々の実績から、VCや起業家における認知度や評価は急上昇し、案件数も拡大していく。経営判断のスピードアップのため2016年9月に会社分割により株式会社ネットジンザイバンクを新設。2018年3月、フォースタートアップス株式会社に商号を変更した。企業規模を拡大し、スタートアップに対する支援スピードをさらに加速させるため、2020年3月、東京証券取引所マザーズ市場に上場。2022年4月、市場再編に伴い、東証グロース市場に移行した。

 

(2)理念

同社では、『「進化の中心」にいることを選択する挑戦者達』をスタートアップスと呼んでいる。
沿革にあるように、志水社長の「日本に明るい未来をもたらすためには多くのスタートアップスの成長が不可欠」との強い想いをベースに創業以来スタートアップスを支援してきたが、2021年7月、新ミッション「(共に)進化の中心へ」を掲げた。
新ミッションは、「進化の中心とは何か」を、時代に合わせて常に問い、その目標をアップデートし続けていく姿勢を表現している。また、「(共に)」とすることで、「支援者」という立ち位置にとどまらず、時には自らも時代を創る「主体者・創造主」となる覚悟を示しており、スタートアップスと(共に)進化の中心であり続けることが、日本の成長、次世代にとっての未来のアップデートにつながると考えている。

 

Mission

(共に)進化の中心へ

Vision

for Startups

Value

Startups First

全ては日本の成長のために。スタートアップスのために。

 

Be a Talent

スタートアップスの最たる友人であり、パートナーであり、自らも最たる挑戦者たれ。

そして、自らの生き様を社会に発信せよ。

 

The Team

成長産業支援という業は、TEAMでしか成し得られない。仲間のプロデュースが、日本を、スタートアップスを熱くする。

 

(3)同社を取り巻く環境

①日本経済・日本企業の凋落「失われた30年」 
下の表はフォースタートアップス株式会社が運営する「STARTUP DB」より引用した、平成元年(1989年)および令和4年(2022年)の世界時価総額ランキング(一部抜粋)を比較したものである。
1989年の世界時価総額No.1はNTTで、上位20社中日本企業は14社。上位50社でも32社が日本企業で、まさに「Japan as No.1」という、日本にとって輝かしい時代であった。しかし、1989年12月に記録した日経平均38,915円をピークに、バブル経済は崩壊。失われた30年という長期低迷に入り、日本企業の競争力は低下。2022年の世界時価総額ランキングでは上位20位はおろか、50位以内にランクインしたのがトヨタ1社という凋落ぶりである。
また、2022年の顔ぶれ(上位20社)を見ると、GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon,Microsoft)を始めとした米国企業15社のほか、中国IT企業のBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)の一角であるTencentがランクイン。30年間における産業構造の変化および国家の浮沈を明確に表している。

 

(フォースタートアップス株式会社 STARTUP DB :2022年世界時価総額ランキング。世界経済における日本のプレゼンスは?より)

 

また、IMD(国際経営開発研究所:International Institute for Management Development)が作成する「世界競争力年鑑」によれば、バブル期に1位だった日本の総合順位は最新2021年では31位まで落ち込んだ。8,000円台を下回った日本株は一時3万円台まで回復したが、それでもピークの約8割の水準に過ぎず、史上最高値更新を続ける米国株とは対照的である。これも現在の両国の国力のみならず将来に対する見通しや期待を映し出しているといえよう。

 

②スタートアップ支援に力を入れ始めた日本政府
ただ、こうした状況について日本政府も手をこまねいているわけではない。2018年6月には「未来投資戦略2018」を発表。「我が国の強みを活かし、官民が一丸となってあらゆる政策を総動員すること等を通じて、我が国のベンチャー・エコシステムの構築を加速し、グローバルなベンチャー企業を生み出していく」との方針を打ち出している。2020年7月に閣議決定した「成長戦略フォローアップ」では、「4.オープンイノベーションの推進」の項で「企業価値または時価総額が10億ドル以上となる未上場ベンチャー企業(ユニコーン)または上場ベンチャー企業を2025年までに50社創出」という目標を掲げた(2019年末時点では16社)。
また、2022年11月28日、首相官邸において、「第13回 新しい資本主義実現会議」が開催され、スタートアップ育成5か年計画が決定された。この日議長である岸田総理は、スタートアップ育成5か年計画について、今回決定した「スタートアップ育成5か年計画」は、官民によるスタートアップ育成策の全体像と5年間の具体的なロードマップを示したものであり、人材、資金供給、オープンイノベーションの3本柱を一体として推進し、スタートアップへの投資額を5年後の2027年度には10兆円規模と10倍増にすることを目標にすると述べている。

 

スタートアップ支援の中核省庁である経済産業省では、新規産業の創出、ベンチャーの創業・成長促進のために、支援人材のネットワーク構築、起業応援の税制・融資制度の整備、起業家教育の推進などの取り組みを実施。新しい事業やベンチャーが次々と生まれ成長するエコシステム(※)の形成を目指している。
※エコシステム
スタートアップや大企業、投資家、研究機関など、産学官のさまざまなプレイヤーが集積または連携することで共存・共栄し、先端産業の育成や経済成長の好循環を生み出すビジネス環境を、自然環境の生態系になぞらえたもの。

 

(経済産業省の主な施策)

オープンイノベーション促進税制

国内の対象法人等が、オープンイノベーションを目的としてスタートアップ企業の株式を取得する場合、取得価額の25%を課税所得から控除できる制度

エンジェル税制

ベンチャー企業への投資を促進するためにベンチャー企業へ投資を行った個人投資家に対して税制上の優遇措置を行う制度

女性、若者/シニア起業家支援資金

新規開業後概ね7年以内の女性や若者(35歳未満)、シニア(55歳以上)という、民間金融機関のみでは長期的・安定的な資金供給が難しい起業家に対し、日本政策金融公庫が低利融資を行う制度

J-Startup

世界で戦い、勝てるスタートアップ企業を生み出し、革新的な技術やビジネスモデルで世界に新しい価値を提供することを目指す経済産業省が、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とともに推進するスタートアップ企業の育成支援プログラム

(同省ウェブサイトより)

 

このうち、「未来投資戦略2018」を受けて経済産業省が立ち上げたベンチャー支援プログラムが「J-Startup」である。
「J-Startup」では、トップベンチャーキャピタリスト、アクセラレーター、大企業のイノベーション担当などが、日本のスタートアップ企業約10,000社の中から一押し企業を推薦し、外部審査委員会がその推薦内容を尊重しつつ企業をチェック。厳正な審査で選ばれた企業をJ-Startup企業として選定する。
選定されたスタートアップ企業に対しては、民間支援機関・NEDO・JETRO・METIによる事務局が中心となり支援するコミュニティを構築し、「J-Startup企業」とサポーター、政府機関を結びつけ、タイムリーかつスピーディな支援を実現する。
フォースタートアップス株式会社もサポーター企業の1社である。

 

 

 

(J-Startup資料より)

 

また、2020年7月には、内閣府・文部科学省・経済産業省が「スタートアップ・エコシステム形成に向けた支援パッケージ ~コロナを乗り越えて新たな成長軌道へ~」を発表した。新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、スタートアップ向けのリスクマネー供給の減少、事業展開や研究開発の停滞等、自律的なエコシステム形成に向けたリスクが顕在化し、大きな分岐点にあるとの危機意識の下で、スタートアップは、その機動性で、今後の社会変革に対応するイノベーションを牽引するキープレイヤーであると改めて位置付け、今後3年間を集中支援期間としてスタートアップ・エコシステム支援パッケージ(事業規模約1,200億円)を実行している。具体的には、アントレプレナーシップ教育の推進(大学における講座の開設など)、SBIR(Small Business Innovation Research)制度改革(研究開発型スタートアップ等への補助金等の支出機会の拡大や、初期段階の技術シーズから事業化までの一貫した支援)、J-Startup地域版の立ち上げ、JETRO等による海外発信等である。
経済産業省、内閣府、文部科学省以外に、総務省、厚生労働省、国土交通省、農林水産省、環境省、防衛省、財務省の各省もスタートアップ支援プログラムを打ち出しており、「ALL Japan」でのスタートアップ支援体制構築が加速している。

 

 

③経団連の提言
企業側もスタートアップの育成について積極的な姿勢を示している。
2022年3月、日本経済団体連合会(経団連)は「スタートアップ躍進ビジョン ~10X10Xを目指して~」との提言を公表した。
同提言では、「わが国の持続的成長の新たな牽引役として、グローバル級のスタートアップを継続的に創出することを目標とする。GAFAMのように既存産業にとって代わりグローバル市場を席巻するスタートアップは、全体の中のほんの一部であることから、母数すなわち起業の数自体を格段に増やすとともに、成長のレベルも引き上げる必要がある」との認識の下、以下のような目標を掲げている。
5年後(2027年)までにスタートアップの裾野、起業の数を10倍にするとともに、最も成功するスタートアップのレベルも10倍に高める。目標を確実に達成するために、それぞれについて以下のKPIを設定し、実現状況をモニタリングする。

 

◆裾野=起業の数を10倍にする
スタートアップの数を10倍=約10万社に
スタートアップへの年間投資額を10倍=約10兆円に
◆高さ=レベルを10倍にする
ユニコーン企業数を10倍=約100社に
ユニコーンから更に飛躍したデカコーン企業((時価評価額が100億ドル超の上場後1年以内の企業)数を2社以上に

 

④起業に向けた環境の変化
「2017年版 中小企業白書」によれば、我が国の開業率は2000年以降5%前後で推移し、欧米諸国に比べて一貫して低水準で推移している。

 

(2017年版 中小企業白書より)

 

ただ一方、フォースタートアップス株式会社が運営する「STARTUP DB」によれば、米ペンシルべニア大学ウォートンスクールと市場調査会社Y&Rが起業環境についての国際比較を行ったところ、日本は調査対象80か国中、イギリス、アメリカを抑え、ドイツに次いで第2位という調査結果を報告している(2021年版でもカナダに次いで第2位)。開業率が低水準なのは事実であるものの、上記のような政府の創業支援政策の積極化に加え、ICTの進化、クラウドサービスの普及・浸透など、起業に向けたハードルは確実に低下し、一段とスタートアップが産まれやすい環境が整いつつある。
こうしたことから、同社を取り巻く事業環境は中長期的なトレンドとしても良好である。

 

⑤市場規模
同社のタレントエージェンシーサービスが主戦場とする国内有力スタートアップ企業における人材紹介市場は約130億円と同社では試算している。また、資金調達市場と連動してこの注力市場は年率30%程度で拡大すると同社では見ており、2025年には約285億円まで成長し、その後も成長が期待できると考えている。

 

(4)事業内容

22年3月期より、「タレントエージェンシー&オープンイノベーション事業」と「ベンチャーキャピタル事業」の2つを報告セグメントとしている。

 

【タレントエージェンシー&オープンイノベーション事業】
「2022年3月期 売上高 2,348百万円、セグメント利益 492百万円」
「タレントエージェンシーサービス」と「オープンイノベーションサービス」の2つのサービスで構成されている。

 

 

(同社資料より)

 

◎タレントエージェンシーサービス
スタートアップ企業に対して人材支援サービスを提供し、支援内容は、成功報酬型の転職支援サービスと固定報酬型の採用支援コンサルティングを行う①人材紹介と、起業潜在層の発掘・起業サポートを行う②起業支援に区分される。

 

<サービス概要>
①人材紹介
(プロセス)
スタートアップ企業に対して、主として雇用期間の定めのない候補者を紹介する。
同社のコンサルタントであるヒューマンキャピタリストがスタートアップ企業から求人情報を獲得し、求人内容に合致する候補者を発掘し、ヘッドハンティングする。スタートアップ企業に人的資源を最適配置することを重視しているため、国内の人材紹介会社の多くが採用する登録型(求職者の登録媒体を設け求職者を集めるスタイル)ではなく、求人ニーズに合致した人材を効率的に発掘できるハンティング型を採用している。発掘にあたっては、主として株式会社ビズリーチ等が運営する外部の人材データベースを利用している。
同社が支援するスタートアップは独立系大手のベンチャーキャピタルである株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズを中心としたVCからの紹介案件が中心。VCは投資ポートフォリオの中でも、フォースタートアップスがCXO(経営チーム)の組閣を始めとした人材確保を支援することで、今後更に急成長すると期待するスタートアップを紹介するため、フォースタートアップスにとっても成功確率の高い案件を手掛けることとなる。また、紹介されるスタートアップは既にVCから出資を受けているため、支援にあたっての資金面での問題は無い。

 

(マッチングに際してのノウハウ)
スタートアップの要望に合う適切な人材を発掘、マッチングするにはノウハウが必要である。
同社では社内における情報の共有を重視している。ヒューマンキャピタリストは現在手掛けている案件について、「スタートアップの要望」「候補者の発掘およびマッチングの進捗」などを社内システムに随時登録し、他のヒューマンキャピタリストもそうした情報を共有できるようにしている。このため、仮に自分の手掛けている案件ではマッチングの可能性が低そうな場合でも、候補者を他のヒューマンキャピタリストの案件に紹介することで、マッチングの確率が向上し、結果的にスタートアップ、候補者双方が満足することとなる。
また、スタートアップの要求は時として、やや現実的ではないケースもあるが、そうした際、ヒューマンキャピタリストはスタートアップと会社の現状・今後の方針や見通しなどを深くディスカッションし理解したうえで、「このフェーズであればこの人で」「少しハードルを下げてこういう能力の人を2名採用してはどうか」等、現実的な提案を行うことも重要な役割である。

 

(収益)
候補者がスタートアップ企業に入社した事実を企業等に確認した上で、入社日を基準に成功報酬としてのコンサルティングフィーを収受している。成功報酬型以外にも、毎月一定数の候補者の提案や、ターゲット人材の設定等のコンサルティングサービスも提供している。売上は入社日が基準となるため、例えば2-3月に内定が出れば4月に入社することが多いなど、期間収益に影響を与えるため、同社内では内定を承諾した時点で計上する「受注」を重視している。主な原価は、候補者発掘にあたって使用する外部データベースの利用料など。
なお、(株)ビズリーチが運営する「ビズリーチ」経由での取引が人材紹介売上高のうち22年3月期で46.9%を占めている。フォースタートアップスでは、今後もビズリーチ社との良好な関係を保ちながら取引を行うことに加え、複数媒体の利用推進によるリスク低減を図っている。

 

②起業支援
日本のスタートアップ・エコシステムの形成には、起業家数の増加が必要不可欠であると考えており、以下のような起業支援サービスを行っている。

ベンチャーキャピタルと連携した起業家創出プログラム

ベンチャーキャピタルと提携し、起業家の創出を行っている。

具体的には、同社が発掘した起業希望者を提携するベンチャーキャピタルに紹介し、そのベンチャーキャピタルが相談や起業サポートを行う。

研究機関と連携した起業家創出プログラム

国内の研究機関(大学等)には、高い技術力をベースにした優れたアイディア・人材が多く存在しているが、そのアイディアをビジネスとして実行できるケースは決して多くない。

そこで、日本が誇る優れた技術を成長産業へ成長させるため、大学系ベンチャーキャピタルと連携して経営陣等の人材支援を行う等、起業サポートを行っている。

 

いずれも、紹介した起業希望者や支援した経営陣等が実際に起業に至った場合には、同社はベンチャーキャピタルや研究機関から成功報酬を収受するほか、そのスタートアップ企業に対して継続的な人材支援を行う。

 

◎オープンイノベーションサービス
データベース「STARTUP DB」を活用し、大手企業や官公庁・自治体とスタートアップ企業の連携を促進している。
具体的なサービス内容は以下の通り。

資金調達支援

資金調達ニーズのあるスタートアップ企業に、主に大手企業などの資金提供元を紹介。

資金調達が行われれば、その規模に応じた手数料を収受する。

データベース課金

データベース「STARTUP DB」のデータを法人向けに提供。API連携も行っている。

定額利用料金を収受するほか、顧客ニーズに応じたデータ販売やサービス提供により収入を得る。

Public Affairs

官公庁・自治体によるスタートアップ業界関連の調査事業等を競争入札により受託する。

 

2021年4月に開始した資金調達支援は、スタートアップの成長を加速させるために事業会社やコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)からの資金調達を支援するもの。事業会社やCVCからのスタートアップ企業への出資は増加傾向にあるが、スタートアップの成長戦略を実現する適切な資本業務提携先に出会う機会は限定的である。また、CVCに限らず事業部本体からの調達可能性もあり、一つの企業の中でも複数の候補部署が存在し、スタートアップの戦略次第では同じ企業であっても適切な提携先の部署が異なることもある。
そこで、同社のオープンイノベーショングループでは、スタートアップの成長戦略を実現するために適切な資本業務提携先を紹介するサービスを開始した。同グループでは、多数の事業会社やCVCの出資注力領域や出資可能金額、出資検討期間などの出資ニーズを集約している。スタートアップの調達スケジュールや目的などを資本業務提携先に予め伝達することで、調達可能性がある企業との商談を実現。初回面談設定から調達実施までをフォローする。紹介可能な資本業務提携候補は毎月増加しているため、スタートアップの資金調達可能性は拡大している。
フィー体系はイニシャルコストが不要の完全成果報酬型である。

 

(同社資料より)

 

【ベンチャーキャピタル事業】
「22年3月期 営業損失 4百万円」
起業支援または人材支援中の企業に対しスタートアップ投資を行うとともに、タレントエージェンシーとのシナジー効果を創出している。
22年3月期からスタートした新事業。2021年5月、投資事業を行う連結子会社「フォースタートアップスキャピタル合同会社」を設立した。創業以来、成長産業を「人材」から支援してきた同社だが、中長期の目標である「成長産業の支援インフラの構築」を実現するために、これまでの「人材」の支援に加え、「資金」の支援を行うことを目的としている。主力サービスであるタレントエージェンシーサービスとのシナジーを創出し、成長産業支援をより強固なものとする。
起業時や成長期における資金調達の支援にとどまらず、自ら資金提供者となることで責任と覚悟を持って起業家を支え、加えて人材支援で培ってきた同社の組織的能力を注力することによって投資先企業の成長速度と成功確度を高め、日本を代表するグローバルスタートアップ企業を創出する。
21年8月には最初のファンドとなる「フォースタートアップス1号投資事業有限責任組合」を設立。組み入れも始まった。

 

(5)特長と強み

中長期的に良好な事業環境にある同社の特長・強み、競争優位性は以下の通りである。

 

◎ベンチャーキャピタル・起業家等イノベーションに関わるプレイヤーとのネットワーク
イノベーションの創出源泉となる新たなテクノロジーは、移り変わりが激しく、その結果としてスタートアップ企業の人材ニーズも大きく変動する。スタートアップ企業に人的資源を最適配置するには、スタートアップ企業自体だけでなく、成長産業に対する広範かつ深い理解が重要である一方、情報のキャッチアップコストや候補者とのマッチングコストが高いという課題がある。
そのため、この領域で収益性の向上を図るためには、スタートアップ企業に関連した幅広い情報収集力や企業側・候補者側双方をマッチングさせる仕組みが必要である。
同社は、この課題を解決するために、ベンチャーキャピタルや起業家、大手企業、政府、エコシステムビルダー等と密な連携を行う情報収集ネットワークを構築している。未公開企業への投資活動を専門に行っているベンチャーキャピタルは、投資背景等のスタートアップ企業に関する客観的な情報を保有している。一方、起業家は企業の将来的な展望や起業背景等の内面的な情報を保有していることから、ベンチャーキャピタル及び起業家と緊密な連携を行うことで、スタートアップ企業に関する様々な情報をタイムリーにキャッチアップすることができる。
具体的には、独立系大手のベンチャーキャピタルである株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズやインキュベイトファンド株式会社等の複数のベンチャーキャピタルと定期的に情報交換を実施するとともに、起業家との勉強会も定期的に開催し、起業家とヒューマンキャピタリストが直接連携できる仕組みを構築している。
同社では、同一のヒューマンキャピタリストがクライアント企業及び候補者を担当する両面型の運営方式を採用している。
そのため、キャッチアップされたスタートアップ企業情報をヒューマンキャピタリストはタイムリーかつ正確に候補者に説明することができ、それにより候補者のヒューマンキャピタリストへの信頼感は一段と強まることとなる。
これが結果として難易度が高いCEO、CFO、事業責任者等の経営幹部層の採用に結びついている。

 

◎国内最大級の成長産業データベース「STARTUP DB」の活用
①概要
同社は、日本のスタートアップマーケットは、スタートアップ企業に関する客観的な情報が不足していると考えている。
そこで、その課題の解決のために、5年以上前からスタートアップに関する客観的な情報を収集し、統一データベース「STARTUP DB」を構築。2018年5月から原則無料で一部を公開している。
2022年4月末現在の掲載企業数は16,000社を超えている。

 

(同社資料より)

 

 

 

(同社資料より)

 

データベースの掲載内容は、スタートアップ企業の事業内容のほか、役員情報、資金調達情報、登記簿情報から算出した評価額等。マスコミや世界最大級のベンチャーデータベース「Crunchbase」とも連携してスタートアップ企業に関する情報を積極的に発信している。これらの公開情報に加え、ベンチャーキャピタルや起業家との情報収集ネットワークを通じて収集した情報を基に、独自のアルゴリズムを用いて各スタートアップ企業を数値化し、その情報を整理・序列化し、データベースとして蓄積。成長産業を可視化している(こちらは非公開)。
その上で、特に同社が成長性の高いと考える有力スタートアップ企業に対し優先的に人材紹介サービスを提供している。
これは、有力スタートアップ企業は調達資金額も多く、人材ニーズが旺盛なため収益機会が大きいことに加え、有力スタートアップ企業に人的資源を最適配置することが、結果的に次のユニコーン企業を生み出し、新サービスや成長産業の創出、日本の競争力回復にもつながると考えているためである。
ヒューマンキャピタリストは、「STARTUP DB」にいつでもアクセス可能であり、有力スタートアップ企業に優先的に候補者をマッチングできる環境が出来上がっている。
また2021年7月には、スタートアップとの事業創造をサポートするための新サービス「ENTERPRISE」の有償提供を開始した。
スタートアップとの接点を創出するだけではなく、事業会社とスタートアップ双方の健全な関係性の中で、速やかに事業創造を進め、さまざまな形で利益を生み出すためのプラットフォームを目指す。

 

(ENTERPRISE 4つの特徴)
◆全ての検索機能が利用可能
現在、「STARTUP DB」の無料ユーザーは検索結果の閲覧や一部機能に制限がかかっているが、ENTERPRISEユーザーは全ての検索機能が利用可能。ソート機能は累計調達金額の金額順や最終資金調達金額順などさまざまな条件で並び替えができる。今後のアップデートでは、ソート機能や条件付き検索の強化、データ取得などを予定している。
◆類似サービスの閲覧検索
協業・共創パートナーをリサーチする際に重要となる近しい領域の類似サービス閲覧も可能となる。リリース時は約1,500サービスを対象としているが、今後、類似サービスは順次アップデート予定。この機能により、1社のスタートアップ情報をもとに、類似サービスをリサーチすることが可能で検索効率を高めることができる。
◆リストアップ
ENTERPRISEユーザーの希望テーマにマッチしたコンタクトしたいスタートアップを同社専門チームがリストアップする。
専門チームはタレントエージェンシー、外部コミュニティマネージャーやアクセラレーションプログラムに携わってきたメンバーで構成されている。明確な定義が決まっていない調達シリーズの絞り込みなど累計資金調達額のレンジや所在地など、データベース上での絞り込みが難しい条件にも柔軟に対応する。
◆商談オファー
協業・共創に向けた商談をスタートアップと行うにあたり、700社以上のスタートアップとの取引実績や、これまで培ってきたネットワークを通じて、接触希望のスタートアップへ専門チーム経由で商談を打診する。

 

②エンジニア組織「TechLab.」のテクノロジー
「STARTUP DB」を構築しているのが、社内のエンジニア組織「TechLab.」である。
「TechLab.」は、スタートアップ企業を支援する「STARTUP DB CLUB」、大企業向けデータ提供サービスの「STARTUP DB ENTERPRISE」のシステム運営・サービス提供を行っている。また、社内のヒューマンキャピタリスト向けの「業務支援ツール」や、転職者向けの「TALENTSHIP」の開発にも従事している。
同社の事業は、「Startups Data Platform」を基盤としたサービス開発を実現するテクノロジーの力で支えられている。

 

(同社資料より)

 

 

(6)実績

(同社資料より)

 


(同社資料より)

(同社資料より)

 

同社はメルカリを含め数多くの支援実績を積み上げており、VC、スタートアップ企業、政府、大企業、エコシステムビルダーから高い評価を得ている。累計人材支援数のうち約3割が経営幹部クラスであり、スタートアップの成長には同社の人材支援が不可欠となっている。

 

(同社資料より)

 

 

また、ベンチャーキャピタル事業として現在5社に投資している。

 

(同社資料より)

 

(7)過年度決算の訂正の概要

<概要>
同社は、過去及び進行中の事業年度における売上原価の一部に計上漏れがあることが判明し、監査法人と協議の結果、過去に提出した有価証券報告書等及び内部統制報告書の訂正報告書の提出、決算短信等の訂正を行った。
同社のタレントエージェンシー事業はハンティング型(求人情報に合致する人材に対し紹介会社側から接触を図るビジネスモデル)を採用しており、各人材データベース上の求職者は、スカウト送信時においては匿名状態にあり、同社のスカウトに対する返信等を経て氏名等が公開される仕様となっている。このため、複数の人材データベース経由で同一の求職者と接点を有する場面は少なからず生じている。複数の人材データベースに跨って登録をしている求職者が存在し、当該求職者が同社の紹介した求人企業へ入社に至った場合、契約条件によっては接点をもった全ての運営会社に対して手数料支払いを実施する必要があった。このため、1つの成約取引に対して複数の運営会社に手数料の支払いが必要となる取引が存在する可能性があるものの、同社は最終的に入社に至る支援をした同社の担当者が接点を持った運営会社に支払いを実行するという運用を実施していた。このため、過去の成約取引のうち複数の運営会社に手数料支払いが必要となる取引が一部において生じ、当該追加的な支払額が発生した。
当該手数料の支払漏れに起因して、運営会社との契約に従い、運営会社から同社に対して違約金の支払が請求されており、手数料本体金額と併せた金額は4億03百万円(うち、違約金2億84百万円)となる。当該計上漏れとなった金額(違約金は除く)は、過去の売上原価(創業から2023年3月期第2四半期までに計上していた売上原価)における約6%に相当し、過去の事業年度の営業利益率に与える影響は概ね1.5%程度となる。なお、各人材データベースの利用については協議の上、継
続している。

 

<過年度決算の訂正の概要>
売上高の変更はなく、18/3期以降の売上原価と販管費の追加計上により段階利益が訂正された。販管費は、過去の未払取引のうち、自社人材採用にかかる取引に関する分となる。

 

(同社資料より)

 

<再発防止策>
1. リスク評価会の定期的な開催
2. 各人材データベースの利用ルールの周知徹底を図るための教育体制の再整備
3. 各運営会社とのコミュニケーションを行う専門チームの組成
4. 追加的な管理システム導入を含めた適切な管理体制の整備

 

各データベース運営会社と協議のうえ、合意したフロー・ガイドラインで運用を行い、再発防止策の実効性は、引き続き検証を行う。また、責任の所在を明確化し、役員の処分を決定した。

 

2.2023年3月期第3四半期決算概要

(1)業績概要

 

22/3期

第3四半期

構成比

23/3期

第3四半期

構成比

前年同期比

売上高

1,632

100.0%

2,206

100.0%

+35.2%

売上総利益

1,284

78.7%

1,819

82.5%

+41.7%

販管費

931

57.1%

1,332

60.4%

+43.0%

営業利益

352

21.6%

487

22.1%

+38.3%

経常利益

356

21.8%

488

22.2%

+37.3%

親会社株主に帰属

する四半期純利益

250

15.4%

345

15.7%

+37.8%

*単位:百万円

 

前年同期比35.2%増収、同38.3%営業増益
売上高は前年同期比35.2%増の22億6百万円、営業利益は同38.3%増の4億87百万円。
スタートアップ企業の資金調達は、2022年初頭のグロース市場を中心とした株価の下落の影響を受けている。世界的な株価低迷により、グローバル市場におけるIPO件数及び資金調達金額が前年比で大きく減少している中、国内における2022年の資金調達額は、大企業から子会社への出資を除くと前年比で微増(参照:STARTUP DB 2022年 年間国内スタートアップ投資動向レポート)となった。しかし、米国をはじめとする主要国において金融市場が引き締めに転じ、大手企業の大規模な人員削減等、景気後退を見据えた動きが進んでいる。また、国内においても、物価上昇による消費者マインドの悪化が懸念されており、スタートアップ企業も景気後退を見据え、ランウェイ(企業がキャッシュ不足に陥るまでの残存期間)を引き延ばすためにコストを抑制する等の動きがみられた。また、IPO件数及び資金調達金額の減少がスタートアップ企業の採用ニーズの減少にもつながっている。こうした環境下、同社は、グループがもつ情報やノウハウをベースに、成長見込が高いと判断したスタートアップ企業に対しての人材紹介、ならびに産学官を巻き込んだスタートアップ関連のサービス・事業を積極的に展開した。こうした取り組みの成果により、訂正決算の影響を受けたものの、大幅な増収増益を維持した。受注高も前年同期比で増加基調が継続した。タレントエージェンシーは堅調な受注を維持し、オープンイノベーションも「成長産業カンファレンス」の協賛金の受注が当初の計画を上回った。
更に、社員採用も順調に進捗し、今第3四半期末時点の入社予定ベースでは目標の50名純増(165名)を達成する見込みとなった。

 

 

 

タレントエージェンシーは外部環境の影響を受けながらも、成長トレンドを継続した。オープンイノベーションでは、「成長産業カンファレンス」の協賛金受注が発生した。

 

(2)セグメント別動向

 

22/3期

第3四半期

構成比

23/3期

第3四半期

構成比

前年同期比

タレントエージェンシー&

オープンイノベーション事業

1,632

100.0%

2,206

100.0%

+35.2%

ベンチャーキャピタル事業

-

-

-

-

-

連結売上高

1,632

100.0%

2,206

100.0%

+35.2%

タレントエージェンシー&

オープンイノベーション事業

353

21.7%

492

22.3%

+39.2%

ベンチャーキャピタル事業

-1

-

-5

-

-

連結営業利益

352

21.6%

487

22.1%

+38.3%

*単位:百万円。営業利益の構成比は営業利益率。

 

【タレントエージェンシー&オープンイノベーション事業】

 

22/3期

第3四半期

構成比

23/3期

第3四半期

構成比

前年同期比

タレントエージェンシーサービス

1,559

95.6%

2,000

90.6%

+28.2%

オープンイノベーションサービス

72

4.4%

206

9.4%

+186.2%

売上高合計

1,632

100.0%

2,206

100.0%

+35.2%

*単位:百万円

 

◎タレントエージェンシーサービス
前年同期比28.2%の大幅増収の20億万円。
タレントエージェンシーサービスは、スタートアップ・成長企業向けに人材紹介を中心とした人材支援サービスを提供している。
マクロ環境の不透明さを背景に、一部のスタートアップ企業において採用ニーズの減少が確認された。人材紹介サービスは、採用ニーズが相対的に強い有力スタートアップ企業かつ経営幹部層・エンジニアなどの需要・難易度の高いポジションの支援に注力した戦略により、堅調に推移した。また、採用ニーズの高いクライアントの採用活動をより強力に支援する採用コンサルティングサービスの営業強化が功を奏した結果、採用コンサルティングサービス売上高も高水準で推移した。
第3四半期(10‐12月)の人材紹介の単価は、3,594千円と高水準を維持した。引き続き、採用難易度の高いポジション支援に注力したことが奏功した。第3四半期(10‐12月)の人材紹介取引件数は、142件で前年同期比12件減少した。紹介件数と単価のトレンドは第2四半期(7‐9月)から変化がなかった。また、同社の強みであるミドル・ハイレイヤー層(年収800万円以上)の支援比率向上のトレンドは継続しており、単価上昇に寄与している。スタートアップの平均年収は上昇傾向にあり、優秀な人材への提示年収額も上昇している。一方、マクロ環境の影響により、年収600万円未満の大量採用ニーズが一段落し、ミドル・ハイレイヤー層のピンポイント採用へトレンドが変化した。

 

 

 

 

 

◎オープンイノベーションサービス
前年同期比186.2%の大幅増収の2億6百万円。
オープンイノベーションサービスは、同社グループが運営するデータベース「STARTUP DB」を活用し、大手企業や官公庁・自治体とスタートアップ企業の連携を促進するサービスを提供している。
第3四半期(10‐12月)に成長産業カンファレンスを開催(前期は第4四半期に開催)したことによる協賛金収入を計上した。また、「Public Affairs(※)」や「STARTUP DB」の大企業向けデータベース課金サービスが堅調に推移した。
※産学官の連携を主体的に推進し、スタートアップ関連の事業を受託する同社グループのサービス

 

 

<Public Affairsの状況>
全国のスタートアップ関連事業の受託やプログラム参画を進めた。

第3四半期の取り組み

みちのくアカデミア発スタートアップ

共創プラットフォームに参画

◆スタートアップ・エコシステム形成支援の採択を受けて東北・新潟の10大学で組成されたプラットフォームの協力機関として参画

◆産学連携HRをテーマにワークショップを開催

Shimonoseki Add-venture Summitに参画

◆山口フィナンシャルグループ主催のイベントにパートナーとして参画

中国地域における地域×スタートアップによる地域の産業活性化への寄与を目指すイベント

「起動」プロジェクトに参画

◆公益財団法人大阪産業局が運営する、関西圏で創業初期のスタートアップを支援するプログラムに企業サポーターとして参画

◆組織組閣領域及び「STARTUP DB」を活用した情報発信領域にて支援

高専インカレワークショップに参画

◆SMBC日興証券が主催する高専生と企業の社員が交流し学びあう次世代型の産学連携プログラムに協力機関として参画

◆専門性の高いユニークな技術教育カリキュラムを持つ高専生の、早期のビジネススキル獲得のみならず、起業家精神の醸成に繋がることを企図

大阪府「海外プロモーションモデル事業」

を受託

◆大阪府より「海外プロモーションモデル事業」を受託

(1)国際的なスタートアップイベントの調査比較

(2)有望な海外VC・アクセラレーターの調査比較

(3)海外VC等へのプロモーションのモデル実施

 

【ベンチャーキャピタル事業】
今第3四半期累計期間は、前第3四半期累計期間に続き管理費用のみが発生していることから、ベンチャーキャピタル事業のセグメント損失は5,339千円(前年同期1,452千円の損失)となった。また、今第3四半期累計期間において、新たにポケトーク株式会社、株式会社カケハシへの出資を行い、投資先企業は5社となった。なお、当セグメントには、子会社であるフォースタートアップスキャピタル合同会社、及び同社を通じて組成したフォースタートアップス1号投資事業有限責任組合が含まれている。

 

(3)財政状態

財務状態

 

22年3月

22年12月

 

22年3月

22年12月

現預金

1,717

1,870

未払金

614

586

売上債権

272

303

短期有利子負債

116

83

営業投資有価証券

154

257

流動負債

1,016

957

流動資産

2,167

2,507

長期有利子負債

66

12

有形固定資産

135

125

固定負債

66

12

無形固定資産

2

0

純資産

1,485

1,924

投資その他

262

260

負債・純資産合計

2,569

2,893

固定資産

401

386

有利子負債合計

183

95

*単位:百万円。

 

22年12月末の総資産は前期末3億24百万円増の28億93百万円。資産サイドでは受注の回復に伴い、現預金、売上債権、営業投資有価証券などが主な増加要因となった。負債・純資産サイドでは、四半期純利益の計上に伴う利益剰余金などが主な増加要因となった。総資産の約86%を流動資産が占める等、資産の流動性が高い。22年12月末の自己資本比率は、57.6%と前期末から6.3ポイント上昇した。
なお、ベンチャーキャピタル事業からの投資額が、営業投資有価証券として表示される。基本的に投資先が未上場会社の場合は取得原価、上場会社の場合は時価により評価される。また、ベンチャーキャピタルの出資持分のうち、外部出資者に帰属する部分が非支配株主持分として計上される。

 

(4)最近のトピックス

◎同社投資先A.L.I. Technologiesの米国法人がNASDAQ上場
株式会社A.L.I. Technologies(以下A.L.I.社)の米国法人であるAERWINS Technologies Inc.が、PONO Capital CorpとのDe-SPAC契約を締結し、米証券取引所NASDAQに上場した。2019年に「エアーモビリティ社会」の実現を通して次世代のインフラ企業を目指すA.L.I.社に対し、HRパートナーとして事業拡大をより一層サポートしていくために、同社が一部株式を取得した。

 

◎アンドパッド社に出資
株式会社アンドパッド(以下、アンドパッド社)とは、2017年より人材支援を中核とした成長支援の取り組みを開始し、同社が支援したアンドパッド社の累計採用人数は180名を超えている。支援人材事例は、執行役員コーポレート本部長兼社長室長、VPoE、VP of New Businessなど。建設産業が抱える長時間労働・人手不足・低生産性等の建設現場の課題解決に取り組むアンドパッド社に対して、「ヒト(人材)」と「カネ(資金)」の両側面からスタートアップの成長を支えるハイブリッドキャピタルとして、今後も共に連携を深めながら全力でサポートする方針である。

 

◎ポケトーク社に出資
同社の子会社であるフォースタートアップスキャピタル合同会社は、フォースタートアップス1号投資事業有限責任組合において、ポケトーク株式会社(以下、ポケトーク社)に出資した。ポケトーク社は、「言葉の壁をなくす」をミッションにAI通訳機「POCKETALK(ポケトーク)」を展開するスタートアップ企業である。互いの言葉を話せない人同士が、自国語のままで対話をできるように、83言語(70言語で音声とテキスト、13言語でテキストのみ)を翻訳することが可能。クラウド上の最新最適なエンジンとAIを活用した翻訳精度の高さが特長で、2021年9月時点で売上台数は90万台を突破している。ポケトーク社は既に事業を国内にとどまらず世界に展開している。同社は、世界市場をリードするスタートアップへの支援を使命と捉えており、ポケトーク社に「日本発のグローバルスタートアップとしてより活躍してほしいとの想い」から、出資を決定した。

 

◎カケハシ社に出資
同社の子会社であるフォースタートアップスキャピタル合同会社は、フォースタートアップス1号投資事業有限責任組合において、株式会社カケハシ(以下、カケハシ社)に出資した。カケハシ社とは2017年より、人材支援を中核とした成長支援の取り組みを開始し、カケハシ社の成長において必要不可欠であった経営企画、事業企画、BizDev、PMM等のキーパーソンとなるポジションの支援を行った。共に伴走していく中で、カケハシ社は、高い課題意識をもって、常に挑戦し続ける、強くそして信頼できるチームであると認識している。カケハシ社の成長が日本の「日本の医療体験」の進化につながり、その結果として日本の国際競争力向上につながると確信を得た結果、出資を決定した。

 

◎第3回目となる成長産業カンファレンスを12月14日に開催

(同社資料より)

 

3.2023年3月期業績予想

(1)連結業績

 

22/3期

構成比

23/3期

構成比

前期比

売上高

2,348

100.0%

2,800

100.0%

+19.2%

営業利益

488

20.8%

500

17.9%

+2.3%

経常利益

492

21.0%

500

17.9%

+1.5%

親会社株主に帰属

する当期純利益

382

16.3%

370

13.2%

-3.3%

*単位:百万円

 

前期比19.2%の増収、同2.3%の営業増益
2022年初頭のグロース市場を中心とした株価の下落が資金調達環境に変化をもたらし、コスト意識が高まっており、注視が必要な状況が続いている。こうした環境下、同社では、グループがもつ情報やノウハウをベースに、成長見込が高いと判断したスタートアップ企業(有力スタートアップ企業)に対しての人材紹介、ならびに産学官を巻き込んだスタートアップ関連のサービス・事業を積極的に推進する。
同社は、2023年1月20日に23/3期通期決算の業績修正を行った。新しい会社計画は前期比19.2%の増収、同2.3%の営業増益。過去及び進行中の事業年度における売上原価の一部に計上漏れがあることが判明したことに対応し、訂正決算を行い販管費が第4四半期に発生することを見越し、各段階利益を下方修正したものである。23/3期業績に与える影響額は、売上原価の約95百万円(うち、違約金約68百万円)の増加及び過年度決算の訂正に係る関連費用(販管費に計上)である。
一方、タレントエージェンシー事業における23/3期第3四半期の人材紹介受注の状況、ならびに今第2四半期までの業績進捗と受注実績を踏まえ、売上高については期初予想を据え置いた。
売上高営業利益率は、前期比2.9ポイント低下の17.9%を見込む。

 

(2)進捗率

 

23/3期 第3四半期実績

23/3期 会社計画

進捗率

売上高

2,206

2,800

78.8%

営業利益

487

500

97.5%

経常利益

488

500

97.8%

当期純利益

345

370

93.4%

*単位:百万円

 

売上高及び各段階利益ともに高い進捗率となっているものの、売上高については、マクロ環境の不確実性が高まる可能性を考慮している。また、各段階利益については、訂正決算に伴う販管費が第4四半期に発生するため。

 

(3)人材確保目標に対する進捗状況

 

第3四半期末現時点の入社予定ベースで165名となり、期初目標の50名純増を達成する見込みとなった。また、4月には新卒21名が入社する予定である。厳選採用ながら着実に人員の増加が継続しており、引き続き採用活動に注力する方針である。また、人員の流入の増加の施策として、全社的な採用KPIの設定と採用部門の人員強化を実施する。更に、アトラクトの強化の施策として、社長を含む役員陣の採用プロセスへの積極的な関与を実施する。

 

4.中長期の取り組み・考え方

(1)成長産業の支援インフラの構築

創業以来、成長産業の支援インフラを中長期で構築することを目指している同社は、成長産業支援に重要である人材、資金、エコシステムのそれぞれにおいて支援領域を拡大すべく、当面は積極的な人員拡大を実行する方針である。

 

(同社資料より)

 

(2)中長期成長イメージ

当面は売上高成長にフォーカスし、2025年3月期連結売上高50億円を目指す。22/3期から25/3期中長期目標の売上高は、年平均成長率+30%を計画。そのための成長投資として、人材関連投資を軸に注力支援領域の拡張に向けた投資を実行する。

 

 

5.今後の注目点

過年度決算の訂正に伴い、今期の各段階利益が下方修正となったことは非常に残念であった。同社では再発の防止に向け、①リスク評価会の定期的な開催、②各人材データベースの利用ルールの周知徹底を図るための教育体制の再整備、③各運営会社とのコミュニケーションを行う専門チームの組成、④追加的な管理システム導入を含めた適切な管理体制の整備からなる再発防止策を実施する。雨降って地固まるとなり、より一層のガバナンス強化が図られるのか注目される。
一方で、2022年のスタートアップ企業の採用ニーズが減少する環境下で、好調な売上高が継続できている点は極めて評価が高い。これは、いち早く採用ニーズの強い有力スタートアップ企業へフォーカスするとともに、ハイレイヤー・エンジニア等の希少人材のピンポイント支援へ注力したことが奏功し、紹介件数は減少したものの、希少人材支援により高年収の割合が増加したことに加え、希少人材の採用のために紹介料率を引き上げるクライアントが増え、紹介単価が上昇したことが寄与したものである。厳しい業界環境における柔軟な戦略転換の成果であり、同社のマネジメント能力の高さの証明となった。第4四半期においても、採用難易度の高いポジション支援に注力し、高単価と高水準の紹介件数を継続できるのか注目される。
また、2022年11月28日、首相官邸において、「第13回 新しい資本主義実現会議」が開催され、スタートアップ育成5か年計画が決定された。人材、資金供給、オープンイノベーションの3本柱を一体として推進し、スタートアップへの投資額を5年後の2027年度には10兆円規模と10倍増にすることを目標としている。スタートアップ企業の増加は当然同社の中長期的な成長性の向上に結び付く。中長期的な話とはなるものの、これら政策の後押しが今後同社の業績にどの様なインパクトをもたらすのか期待を込めて注目していきたい。

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

8名、うち社外3名

監査役

3名、うち社外2名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2022年6月17日

 

<基本的な考え方>
当社は、「for Startups」という経営ビジョンのもと、ユーザー、クライアント、株主、従業員、取引先、社会等のステークホルダーに対する責任を果たし、全てのステークホルダーからの信頼を獲得することを基本的な考え方としております。当該基本的な考え方のもと、経営のさらなる効率化と透明性の向上、業務執行の監督機能の強化等のコーポレート・ガバナンスの充実を図り、企業価値を安定的かつ継続的に向上に努めていく方針であります。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則を全て実施していく方針です。

 

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