ブリッジレポート
(7089) フォースタートアップス株式会社

グロース

ブリッジレポート:(7089)フォースタートアップス 2024年3月期第2四半期決算

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志水 雄一郎 代表取締役社長

フォースタートアップス株式会社(7089)

 

 

企業情報

市場

東証グロース市場

業種

サービス業

代表取締役社長

志水 雄一郎

所在地

東京都港区六本木1丁目6-1 泉ガーデンタワー 36F

決算月

3月

HP

https://forstartups.com/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

2,080円

3,555,644株

7,395百万円

28.7%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

0.00円

-

67.67円

30.7倍

498.40円

4.2倍

*株価11/8終値。発行済株式数は24/3期第2四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROEとBPSは前期実績。
*EPSは今期の会社予想。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2020年3月(実)

1,262

240

219

155

52.91

0.00

2021年3月(実)

1,273

76

79

38

11.59

0.00

2022年3月(実)

2,348

488

492

382

110.68

0.00

2023年3月(実)

2,998

585

586

442

124.76

0.00

2024年3月(予)

3,300

330

330

240

67.67

0.00

*単位:百万円、円。予想は会社側予想。2022年3月期より連結決算。
*過年度決算訂正後の数値。

 

 

フォースタートアップス株式会社の2024年3月期第2四半期決算の概要等をブリッジレポートにてご報告致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2024年3月期第2四半期決算概要
3.2024年3月期業績予想
4.中期業績目標
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 24/3期第2四半期累計決算は前年同期比11.9%の増収、同4.3%の営業減益となった。売上面では、第1四半期の好調な受注高を背景に第2四半期の売上高がタレントエージェンシーを中心に堅調に推移した。営業戦略を柔軟に変えたことが奏功し、当初の想定よりも外部環境の影響を受けなかった。利益面では、利益率の高いタレントエージェンシーが計画を大きく上回ったことに加え、第1四半期の採用活動抑制や一定の離職により人件費が計画を下回ったことが寄与した。

     

  • 第2四半期が終わり、24/3期の会社計画は前期比10.0%の増収、同43.6%の営業減益の予想から修正なし。売上は順調に推移し、各段階利益は計画を上回るペースで進捗している。こうした環境下、更なる成長力強化のため本社移転、人材採用強化、STARTUP DBのユーザー数拡大を見据えた広告宣伝などの先行投資を積極的に実施することから費用が増加する見込みである。

     

  • 通期の会社計画に対する上期の進捗率は、売上高で48.8%ながら、営業利益で92.2%、経常利益92.1%となっており、各段階利益が通期予想を超過するのはほぼ確実な状況となっている。同社のタレントエージェンシーにおける人材紹介料は、内定の決定から平均2.5ヶ月後に売上高が計上される。そのため、続く第3四半期の受注状況が、今期業績の着地点の鍵を握る。第3四半期の受注が確定した段階で、通期見通しを修正するかの判断を下すものと想定される。続く第3四半期のタレントエージェンシーの受注状況が注目される。

     

1.会社概要

日本の競争力を回復させ明るい未来をもたらすためにはスタートアップの成長が不可欠との想いから「for Startups」という経営ビジョンを掲げ、必要な支援を行う成長産業支援インフラとなることを目指している。
「成長産業支援事業」として「タレントエージェンシー」「オープンイノベーション」の2つのサービスを展開。前期から人材支援に加え資金支援も実施することでハイブリッドキャピタル化を図り、スタートアップ企業の早期成長を促している。「イノベーションに関わるプレイヤーとのネットワーク」「国内最大級の成長産業データベース『STARTUP DB』」などが競争優位性。

 

(1)上場までの沿革

1996年に大手人材紹介会社に入社後キャリアを重ね、新規事業の立ち上げなどトップクラスの実績を上げてきた志水雄一郎氏(現 フォースタートアップス株式会社 代表取締役社長)に、自らの存在意義を改めて問い直す機会が訪れる。そこでこれまでの自身の人生と日本社会の変化を振り返ると同時に、これからの日本の将来を見通して見ると、日本経済およびこれまでの日本経済を支えてきた大企業が「失われた20年」と呼ばれる長期低迷に喘ぎ、今後も明るい未来を予想し難いと考える。
一方で、世界に目を向けるとベンチャー企業の躍進が国富の大きな部分を創出していることを知り、人材関連事業に携わっていた自分および業界は、「本来取り組むべき課題解決=人の力を活用することによる企業の成長」に向き合わず、自分や自社の成長、営業成績のみを目標としていたことを痛感。そこで、人材関連事業に携わるものとして、「人の可能性を信じ、人を最適に組み合わせることで日本企業および日本の競争力を復活させ、明るく最高の未来を次世代に繋いでいく」ことへの挑戦を決意する。

 

2013年4月、志水氏の想いに共感し協力を申し出た(株)ウィルグループ(東証1部、6089)は、子会社の(株)セントメディア(現(株)ウィルオブ・ワーク)の一事業部門としてネットジンザイバンク事業部を発足させ、志水氏はそこでスタートアップ企業に対する人材支援サービス提供を開始した。国内有数のベンチャーキャピタルであるグロービス・キャピタル・パートナーズの投資先であったスマートニュースのCXO(経営チーム)組閣を手掛けたことを始めとした数々の実績から、VCや起業家における認知度や評価は急上昇し、案件数も拡大していく。経営判断のスピードアップのため2016年9月に会社分割により株式会社ネットジンザイバンクを新設。2018年3月、フォースタートアップス株式会社に商号を変更した。企業規模を拡大し、スタートアップに対する支援スピードをさらに加速させるため、2020年3月、東京証券取引所マザーズ市場に上場。2022年4月、市場再編に伴い、東証グロース市場に移行した。

 

(2)理念

同社では、『「進化の中心」にいることを選択する挑戦者達』をスタートアップスと呼んでいる。
沿革にあるように、志水社長の「日本に明るい未来をもたらすためには多くのスタートアップスの成長が不可欠」との強い想いをベースに創業以来スタートアップスを支援してきたが、2021年7月、新ミッション「(共に)進化の中心へ」を掲げた。
新ミッションは、「進化の中心とは何か」を、時代に合わせて常に問い、その目標をアップデートし続けていく姿勢を表現している。また、「(共に)」とすることで、「支援者」という立ち位置にとどまらず、時には自らも時代を創る「主体者・創造主」となる覚悟を示しており、スタートアップスと(共に)進化の中心であり続けることが、日本の成長、次世代にとっての未来のアップデートにつながると考えている。

 

Mission

(共に)進化の中心へ

Vision

for Startups

Value

Startups First

全ては日本の成長のために。スタートアップスのために。

 

Be a Talent

スタートアップスの最たる友人であり、パートナーであり、自らも最たる挑戦者たれ。

そして、自らの生き様を社会に発信せよ。

 

The Team

成長産業支援という業は、TEAMでしか成し得られない。仲間のプロデュースが、日本を、スタートアップスを熱くする。

 

日本では、スタートアップが生まれ続けるエコシステムの構築と既存スタートアップの成長の両者が必須である。同社はその両者を複数サービスでスタートアップを支援していく。

(同社資料より)

 

(3)同社を取り巻く環境

①日本経済・日本企業の凋落「失われた30年」 
下の表はフォースタートアップス株式会社が運営する「STARTUP DB」より引用した、平成元年(1989年)および令和5年(2023年)の世界時価総額ランキング(一部抜粋)を比較したものである。
1989年の世界時価総額No.1はNTTで、上位20社中日本企業は14社。上位50社でも32社が日本企業で、まさに「Japan as No.1」という、日本にとって輝かしい時代であった。しかし、1989年12月に記録した日経平均38,915円をピークに、バブル経済は崩壊。失われた30年という長期低迷に入り、日本企業の競争力は低下。2022年の世界時価総額ランキングでは上位20位はおろか、50位以内にランクインしたのがトヨタ1社という凋落ぶりである。
また、2022年の顔ぶれ(上位20社)を見ると、GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon,Microsoft)を始めとした米国企業15社のほか、中国IT企業のBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)の一角であるTencentがランクイン。30年間における産業構造の変化および国家の浮沈を明確に表している。

 

(フォースタートアップス株式会社 STARTUP DB :2023年世界時価総額ランキング。世界経済における日本のプレゼンスは?より)

 

また、IMD(国際経営開発研究所:International Institute for Management Development)が作成する「世界競争力年鑑」によれば、バブル期に1位だった日本の総合順位は最新2022年では34位まで落ち込んだ。8,000円台を下回った日本株は現在3万円台を回復したが、それでもピークの約8割の水準に過ぎず、史上最高値更新を続ける米国株とは対照的である。これも現在の両国の国力のみならず将来に対する見通しや期待を映し出しているといえよう。

 

②スタートアップ支援に力を入れ始めた日本政府
ただ、こうした状況について日本政府も手をこまねいているわけではない。2018年6月には「未来投資戦略2018」を発表。「我が国の強みを活かし、官民が一丸となってあらゆる政策を総動員すること等を通じて、我が国のベンチャー・エコシステムの構築を加速し、グローバルなベンチャー企業を生み出していく」との方針を打ち出している。2020年7月に閣議決定した「成長戦略フォローアップ」では、「4.オープンイノベーションの推進」の項で「企業価値または時価総額が10億ドル以上となる未上場ベンチャー企業(ユニコーン)または上場ベンチャー企業を2025年までに50社創出」という目標を掲げた(2019年末時点では16社)。
また、2022年11月28日、首相官邸において、「第13回 新しい資本主義実現会議」が開催され、スタートアップ育成5か年計画が決定された。この日議長である岸田総理は、スタートアップ育成5か年計画について、今回決定した「スタートアップ育成5か年計画」は、官民によるスタートアップ育成策の全体像と5年間の具体的なロードマップを示したものであり、人材、資金供給、オープンイノベーションの3本柱を一体として推進し、スタートアップへの投資額を5年後の2027年度には10兆円規模と10倍増にすることを目標にすると述べている。

 

スタートアップ支援の中核省庁である経済産業省では、新規産業の創出、ベンチャーの創業・成長促進のために、支援人材のネットワーク構築、起業応援の税制・融資制度の整備、起業家教育の推進などの取り組みを実施。新しい事業やベンチャーが次々と生まれ成長するエコシステム(※)の形成を目指している。
※エコシステム
スタートアップや大企業、投資家、研究機関など、産学官のさまざまなプレイヤーが集積または連携することで共存・共栄し、先端産業の育成や経済成長の好循環を生み出すビジネス環境を、自然環境の生態系になぞらえたもの。

 

(経済産業省の主な施策)

オープンイノベーション促進税制

国内の対象法人等が、オープンイノベーションを目的としてスタートアップ企業の株式を取得する場合、取得価額の25%を課税所得から控除できる制度

エンジェル税制

ベンチャー企業への投資を促進するためにベンチャー企業へ投資を行った個人投資家に対して税制上の優遇措置を行う制度

女性、若者/シニア起業家支援資金

新規開業後概ね7年以内の女性や若者(35歳未満)、シニア(55歳以上)という、民間金融機関のみでは長期的・安定的な資金供給が難しい起業家に対し、日本政策金融公庫が低利融資を行う制度

J-Startup

世界で戦い、勝てるスタートアップ企業を生み出し、革新的な技術やビジネスモデルで世界に新しい価値を提供することを目指す経済産業省が、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とともに推進するスタートアップ企業の育成支援プログラム

(同省ウェブサイトより)

 

このうち、「未来投資戦略2018」を受けて経済産業省が立ち上げたベンチャー支援プログラムが「J-Startup」である。
「J-Startup」では、トップベンチャーキャピタリスト、アクセラレーター、大企業のイノベーション担当などが、日本のスタートアップ企業約10,000社の中から一押し企業を推薦し、外部審査委員会がその推薦内容を尊重しつつ企業をチェック。厳正な審査で選ばれた企業をJ-Startup企業として選定する。
選定されたスタートアップ企業に対しては、民間支援機関・NEDO・JETRO・METIによる事務局が中心となり支援するコミュニティを構築し、「J-Startup企業」とサポーター、政府機関を結びつけ、タイムリーかつスピーディな支援を実現する。
フォースタートアップス株式会社もサポーター企業の1社である。

 

 

 

(J-Startup資料より)

 

また、2020年7月には、内閣府・文部科学省・経済産業省が「スタートアップ・エコシステム形成に向けた支援パッケージ ~コロナを乗り越えて新たな成長軌道へ~」を発表した。新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、スタートアップ向けのリスクマネー供給の減少、事業展開や研究開発の停滞等、自律的なエコシステム形成に向けたリスクが顕在化し、大きな分岐点にあるとの危機意識の下で、スタートアップは、その機動性で、今後の社会変革に対応するイノベーションを牽引するキープレイヤーであると改めて位置付け、今後3年間を集中支援期間としてスタートアップ・エコシステム支援パッケージ(事業規模約1,200億円)を実行している。具体的には、アントレプレナーシップ教育の推進(大学における講座の開設など)、SBIR(Small Business Innovation Research)制度改革(研究開発型スタートアップ等への補助金等の支出機会の拡大や、初期段階の技術シーズから事業化までの一貫した支援)、J-Startup地域版の立ち上げ、JETRO等による海外発信等である。
経済産業省、内閣府、文部科学省以外に、総務省、厚生労働省、国土交通省、農林水産省、環境省、防衛省、財務省の各省もスタートアップ支援プログラムを打ち出しており、「ALL Japan」でのスタートアップ支援体制構築が加速している。

 

スタートアップ支援は国策となった。

政府の動き

2020年

◆エコシステム拠点都市 選定

2022年

◆スタートアップ創出元年 宣言

◆骨太の方針に組み込まれる

◆スタートアップ育成5カ年計画

◆補正予算1兆円を計上

2023年

◆骨太の方針に組み込まれる(2年連続)

 

③経団連の提言
企業側もスタートアップの育成について積極的な姿勢を示している。
2022年3月、日本経済団体連合会(経団連)は「スタートアップ躍進ビジョン ~10X10Xを目指して~」との提言を公表した。
同提言では、「わが国の持続的成長の新たな牽引役として、グローバル級のスタートアップを継続的に創出することを目標とする。GAFAMのように既存産業にとって代わりグローバル市場を席巻するスタートアップは、全体の中のほんの一部であることから、母数すなわち起業の数自体を格段に増やすとともに、成長のレベルも引き上げる必要がある」との認識の下、以下のような目標を掲げている。
5年後(2027年)までにスタートアップの裾野、起業の数を10倍にするとともに、最も成功するスタートアップのレベルも10倍に高める。目標を確実に達成するために、それぞれについて以下のKPIを設定し、実現状況をモニタリングする。

 

◆裾野=起業の数を10倍にする
スタートアップの数を10倍=約10万社に
スタートアップへの年間投資額を10倍=約10兆円に
◆高さ=レベルを10倍にする
ユニコーン企業数を10倍=約100社に
ユニコーンから更に飛躍したデカコーン企業((時価評価額が100億ドル超の上場後1年以内の企業)数を2社以上に

 

④起業に向けた環境の変化
「2017年版 中小企業白書」によれば、我が国の開業率は2000年以降5%前後で推移し、欧米諸国に比べて一貫して低水準で推移している。

(2017年版 中小企業白書より)

 

ただ一方、フォースタートアップス株式会社が運営する「STARTUP DB」によれば、米ペンシルべニア大学ウォートンスクールと市場調査会社Y&Rが起業環境についての国際比較を行ったところ、日本は調査対象80か国中、イギリス、アメリカを抑え、ドイツに次いで第2位という調査結果を報告している(2021年版でもカナダに次いで第2位)。開業率が低水準なのは事実であるものの、上記のような政府の創業支援政策の積極化に加え、ICTの進化、クラウドサービスの普及・浸透など、起業に向けたハードルは確実に低下し、一段とスタートアップが産まれやすい環境が整いつつある。
こうしたことから、同社を取り巻く事業環境は中長期的なトレンドとしても良好である。

 

(4)事業内容

22年3月期より、「タレントエージェンシー&オープンイノベーション事業」と「ベンチャーキャピタル事業」の2つを報告セグメントとしている。

 

【タレントエージェンシー&オープンイノベーション事業】
「2024年3月期第2四半期累計 売上高 1,609百万円、セグメント利益 3億8百万円」
「タレントエージェンシーサービス」と「オープンイノベーションサービス」の2つのサービスで構成されている。

 

<成長産業支援における各事業系統図>

(同社資料より)

 

◎タレントエージェンシーサービス
スタートアップ企業に対して人材支援サービスを提供し、支援内容は、成功報酬型の転職支援サービスと固定報酬型の採用支援コンサルティングを行う①人材紹介と、起業潜在層の発掘・起業サポートを行う②起業支援に区分される。

 

<サービス概要>
①人材紹介
(プロセス)
スタートアップ企業に対して、主として雇用期間の定めのない候補者を紹介する。
同社のコンサルタントであるヒューマンキャピタリストがスタートアップ企業から求人情報を獲得し、求人内容に合致する候補者を発掘し、ヘッドハンティングする。スタートアップ企業に人的資源を最適配置することを重視しているため、国内の人材紹介会社の多くが採用する登録型(求職者の登録媒体を設け求職者を集めるスタイル)ではなく、求人ニーズに合致した人材を効率的に発掘できるハンティング型を採用している。発掘にあたっては、主として株式会社ビズリーチ等が運営する外部の人材データベースを利用している。
同社が支援するスタートアップは独立系大手のベンチャーキャピタルである株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズを中心としたVCからの紹介案件が中心。VCは投資ポートフォリオの中でも、同社がCXO(経営チーム)の組閣を始めとした人材確保を支援することで、今後更に急成長すると期待するスタートアップを紹介するため、同社にとっても成功確率の高い案件を手掛けることとなる。また、紹介されるスタートアップは既にVCから出資を受けているため、支援にあたっての資金面での問題は無い。

 

(マッチングに際してのノウハウ)
スタートアップの要望に合う適切な人材を発掘、マッチングするにはノウハウが必要である。
同社では社内における情報の共有を重視している。ヒューマンキャピタリストは現在手掛けている案件について、「スタートアップの要望」「候補者の発掘およびマッチングの進捗」などを社内システムに随時登録し、他のヒューマンキャピタリストもそうした情報を共有できるようにしている。このため、仮に自分の手掛けている案件ではマッチングの可能性が低そうな場合でも、候補者を他のヒューマンキャピタリストの案件に紹介することで、マッチングの確率が向上し、結果的にスタートアップ、候補者双方が満足することとなる。
また、スタートアップの要求は時として、やや現実的ではないケースもあるが、そうした際、ヒューマンキャピタリストはスタートアップと会社の現状・今後の方針や見通しなどを深くディスカッションし理解したうえで、「このフェーズであればこの人で」「少しハードルを下げてこういう能力の人を2名採用してはどうか」等、現実的な提案を行うことも重要な役割である。

 

(収益)
候補者がスタートアップ企業に入社した事実を企業等に確認した上で、入社日を基準に成功報酬としてのコンサルティングフィーを収受している。成功報酬型以外にも、毎月一定数の候補者の提案や、ターゲット人材の設定等のコンサルティングサービスも提供している。売上は入社日が基準となるため、例えば2-3月に内定が出れば4月に入社することが多いなど、期間収益に影響を与えるため、同社内では内定を承諾した時点で計上する「受注」を重視している。主な原価は、候補者発掘にあたって使用する外部データベースの利用料など。

 

(同社資料より)

 

②起業支援
日本のスタートアップ・エコシステムの形成には、起業家数の増加が必要不可欠であると考えており、以下のような起業支援サービスを行っている。

ベンチャーキャピタルと連携した起業家創出プログラム

ベンチャーキャピタルと提携し、起業家の創出を行っている。

具体的には、同社が発掘した起業希望者を提携するベンチャーキャピタルに紹介し、そのベンチャーキャピタルが相談や起業サポートを行う。

研究機関と連携した起業家創出プログラム

国内の研究機関(大学等)には、高い技術力をベースにした優れたアイディア・人材が多く存在しているが、そのアイディアをビジネスとして実行できるケースは決して多くない。

そこで、日本が誇る優れた技術を成長産業へ成長させるため、大学系ベンチャーキャピタルと連携して経営陣等の人材支援を行う等、起業サポートを行っている。

 

いずれも、紹介した起業希望者や支援した経営陣等が実際に起業に至った場合には、同社はベンチャーキャピタルや研究機関から成功報酬を収受するほか、そのスタートアップ企業に対して継続的な人材支援を行う。

 

◎オープンイノベーションサービス
データベース「STARTUP DB」を活用し、大手企業や官公庁・自治体とスタートアップ企業の連携を促進している。
具体的なサービス内容は以下の通り。

資金調達支援

資金調達ニーズのあるスタートアップ企業に、主に大手企業などの資金提供元を紹介。

資金調達が行われれば、その規模に応じた手数料を収受する。

データベース課金

データベース「STARTUP DB」のデータを法人向けに提供。API連携も行っている。

定額利用料金を収受するほか、顧客ニーズに応じたデータ販売やサービス提供により収入を得る。

Public Affairs

官公庁・自治体によるスタートアップ業界関連の調査事業等を競争入札により受託する。

 

2021年4月に開始した資金調達支援は、スタートアップの成長を加速させるために事業会社やコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)からの資金調達を支援するもの。事業会社やCVCからのスタートアップ企業への出資は増加傾向にあるが、スタートアップの成長戦略を実現する適切な資本業務提携先に出会う機会は限定的である。また、CVCに限らず事業部本体からの調達可能性もあり、一つの企業の中でも複数の候補部署が存在し、スタートアップの戦略次第では同じ企業であっても適切な提携先の部署が異なることもある。
そこで、同社のオープンイノベーショングループでは、スタートアップの成長戦略を実現するために適切な資本業務提携先を紹介するサービスを開始した。同グループでは、多数の事業会社やCVCの出資注力領域や出資可能金額、出資検討期間などの出資ニーズを集約している。スタートアップの調達スケジュールや目的などを資本業務提携先に予め伝達することで、調達可能性がある企業との商談を実現。初回面談設定から調達実施までをフォローする。紹介可能な資本業務提携候補は毎月増加しているため、スタートアップの資金調達可能性は拡大している。
フィー体系はイニシャルコストが不要の完全成果報酬型である。

 

(同社資料より)

 

【ベンチャーキャピタル事業】
「2023年3月期 営業損失 7百万円」
起業支援または人材支援中の企業に対しスタートアップ投資を行うとともに、タレントエージェンシーとのシナジー効果を創出している。
22年3月期からスタートした新事業。2021年5月、投資事業を行う連結子会社「フォースタートアップスキャピタル合同会社」を設立した。創業以来、成長産業を「人材」から支援してきた同社だが、中長期の目標である「成長産業の支援インフラの構築」を実現するために、これまでの「人材」の支援に加え、「資金」の支援を行うことを目的としている。主力サービスであるタレントエージェンシーサービスとのシナジーを創出し、成長産業支援をより強固なものとする。
起業時や成長期における資金調達の支援にとどまらず、自ら資金提供者となることで責任と覚悟を持って起業家を支え、加えて人材支援で培ってきた同社の組織的能力を注力することによって投資先企業の成長速度と成功確度を高め、日本を代表するグローバルスタートアップ企業を創出する。
21年8月には最初のファンドとなる「フォースタートアップス1号投資事業有限責任組合」を設立。23/3期は3社へ投資を行い、投資先企業は5社となった。

 

(5)特長と強み

中長期的に良好な事業環境にある同社の特長・強み、競争優位性は以下の通りである。

 

◎ベンチャーキャピタル・起業家等イノベーションに関わるプレイヤーとのネットワーク
イノベーションの創出源泉となる新たなテクノロジーは、移り変わりが激しく、その結果としてスタートアップ企業の人材ニーズも大きく変動する。スタートアップ企業に人的資源を最適配置するには、スタートアップ企業自体だけでなく、成長産業に対する広範かつ深い理解が重要である一方、情報のキャッチアップコストや候補者とのマッチングコストが高いという課題がある。
そのため、この領域で収益性の向上を図るためには、スタートアップ企業に関連した幅広い情報収集力や企業側・候補者側双方をマッチングさせる仕組みが必要である。
同社は、この課題を解決するために、ベンチャーキャピタルや起業家、大手企業、政府、エコシステムビルダー等と密な連携を行う情報収集ネットワークを構築している。未公開企業への投資活動を専門に行っているベンチャーキャピタルは、投資背景等のスタートアップ企業に関する客観的な情報を保有している。一方、起業家は企業の将来的な展望や起業背景等の内面的な情報を保有していることから、ベンチャーキャピタル及び起業家と緊密な連携を行うことで、スタートアップ企業に関する様々な情報をタイムリーにキャッチアップすることができる。
具体的には、株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズやインキュベイトファンド株式会社等の複数のベンチャーキャピタルと定期的に情報交換を実施するとともに、起業家との勉強会も定期的に開催し、起業家とヒューマンキャピタリストが直接連携できる仕組みを構築している。
同社では、同一のヒューマンキャピタリストがクライアント企業及び候補者を担当する両面型の運営方式を採用している。
そのため、キャッチアップされたスタートアップ企業情報をヒューマンキャピタリストはタイムリーかつ正確に候補者に説明することができ、それにより候補者のヒューマンキャピタリストへの信頼感は一段と強まることとなる。
これが結果として難易度が高いCEO、CFO、事業責任者等の経営幹部層の採用に結びついている。

 

(同社資料より)
◎国内最大級の成長産業データベース「STARTUP DB」の活用
①概要
「STARTUP DB」は、大手の事業会社・CVCを中心に、VCや外資系企業にも導入されている、会員数が11,000名を超え、会員限定のオフラインコミュニティを発足し、オープンイノベーションを推進している。

(同社資料より)

 

データベースの掲載内容は、スタートアップ企業の事業内容のほか、役員情報、資金調達情報、登記簿情報から算出した評価額等。マスコミや世界最大級のベンチャーデータベース「Crunchbase」とも連携してスタートアップ企業に関する情報を積極的に発信している。これらの公開情報に加え、ベンチャーキャピタルや起業家との情報収集ネットワークを通じて収集した情報を基に、独自のアルゴリズムを用いて各スタートアップ企業を数値化し、その情報を整理・序列化し、データベースとして蓄積。成長産業を可視化している(こちらは非公開)。
その上で、特に成長性が高いと同社が考える有力スタートアップ企業に対し優先的に人材紹介サービスを提供している。
これは、有力スタートアップ企業は調達資金額も多く、人材ニーズが旺盛なため収益機会が大きいことに加え、有力スタートアップ企業に人的資源を最適配置することが、結果的に次のユニコーン企業を生み出し、新サービスや成長産業の創出、日本の競争力回復にもつながると考えているためである。
ヒューマンキャピタリストは、「STARTUP DB」にいつでもアクセス可能であり、有力スタートアップ企業に優先的に候補者をマッチングできる環境が出来上がっている。
また2021年7月には、スタートアップとの事業創造をサポートするための新サービス「ENTERPRISE」の有償提供を開始した。
スタートアップとの接点を創出するだけではなく、事業会社とスタートアップ双方の健全な関係性の中で、速やかに事業創造を進め、さまざまな形で利益を生み出すためのプラットフォームを目指す。

 

(ENTERPRISE 4つの特徴)
◆全ての検索機能が利用可能
現在、「STARTUP DB」の無料ユーザーは検索結果の閲覧や一部機能に制限がかかっているが、ENTERPRISEユーザーは全ての検索機能が利用可能。ソート機能は累計調達金額の金額順や最終資金調達金額順などさまざまな条件で並び替えができる。今後のアップデートでは、ソート機能や条件付き検索の強化、データ取得などを予定している。
◆類似サービスの閲覧検索
協業・共創パートナーをリサーチする際に重要となる近しい領域の類似サービス閲覧も可能となる。リリース時は約1,500サービスを対象としているが、今後、類似サービスは順次アップデート予定。この機能により、1社のスタートアップ情報をもとに、類似サービスをリサーチすることが可能で検索効率を高めることができる。
◆リストアップ
ENTERPRISEユーザーの希望テーマにマッチしたコンタクトしたいスタートアップを同社専門チームがリストアップする。
専門チームはタレントエージェンシー、外部コミュニティマネージャーやアクセラレーションプログラムに携わってきたメンバーで構成されている。明確な定義が決まっていない調達シリーズの絞り込み、累計資金調達額のレンジや所在地など、データベース上での絞り込みが難しい条件にも柔軟に対応する。
◆商談オファー
協業・共創に向けた商談をスタートアップと行うにあたり、700社以上のスタートアップとの取引実績や、これまで培ってきたネットワークを通じて、接触希望のスタートアップへ専門チーム経由で商談を打診する。

 

②エンジニア組織「TechLab.」のテクノロジー
「STARTUP DB」を構築しているのが、社内のエンジニア組織「TechLab.」である。
「TechLab.」は、スタートアップ企業を支援する「STARTUP DB CLUB」、大企業向けデータ提供サービスの「STARTUP DB ENTERPRISE」のシステム運営・サービス提供を行っている。また、社内のヒューマンキャピタリスト向けの「業務支援ツール」や、転職者向けの「TALENTSHIP」の開発にも従事している。
同社の事業は、「Startups Data Platform」を基盤としたサービス開発を実現するテクノロジーの力で支えられている。

 

(6)実績

(同社資料より)

 

(同社資料より)

 

 

(同社資料より)

 

(同社資料より)

 

また、ベンチャーキャピタル事業も行っている。投資先はミドル・レイターステージのタレントエージェンシーサービスの人材支援企業。スタートアップ企業に対し、人材と資金の両面で支援(ハイブリッドキャピタル)を実行している。

(同社資料より)

 

2.2024年3月期第2四半期決算概要

(1)業績概要

 

23/3期

第2四半期累計

構成比

24/3期

第2四半期累計

構成比

前年同期比

売上高

1,437

100.0%

1,609

100.0%

+11.9%

売上総利益

1,176

81.8%

1,349

83.9%

+14.7%

販管費

858

59.7%

1,045

64.9%

+21.7%

営業利益

317

22.1%

304

18.9%

-4.3%

経常利益

318

22.2%

303

18.9%

-4.6%

親会社株主に帰属

する四半期純利益

226

15.7%

214

13.4%

-5.1%

*単位:百万円

 

前年同期比11.9%増収、同4.3%営業減益
第2四半期連結累計期間におけるスタートアップ業界を取り巻く環境は、米国をはじめとする主要国の金融市場の引き締めや、シリコンバレー銀行の破綻等を受けたリセッション懸念から、米国のスタートアップの資金調達額が大きく減少した。米国の状況を受け、日本のスタートアップの資金調達額も前年同期比で約3割減(参照:STARTUP DB)となった。引き続き不透明な経済環境と事業環境となっているものの、スタートアップ政策を受け中長期的な市場拡大が期待される。こうした環境下、同社はグループがもつ情報やノウハウをベースに、スタートアップ企業に対しての人材紹介並びに産官学を巻き込んだスタートアップ関連サービスを展開した。
売上高は前年同期比11.9%増の16億9百万円、営業利益は同4.3%減の3億4百万円。売上面では、第1四半期の好調な受注高を背景に第2四半期の売上高がタレントエージェンシーを中心に堅調に推移した。営業戦略を柔軟に変えたことが奏功し、当初の想定よりも外部環境の影響を受けなかった。利益面では、利益率の高いタレントエージェンシーが計画を大きく上回ったことに加え、第1四半期の採用活動抑制や一定の離職により人件費が計画を下回ったことも寄与した。
売上総利益率は、前年同期比2.1ポイント上昇の83.9%となった一方、売上高対販管費率が前年同期比5.2ポイント上昇し64.9%となった。以上により売上高営業利益率は、前年同期比3.2ポイント低下の18.9%となった。
また受注は、前年同期比で15.9%の増加となった。第1四半期に引き続き、人材紹介の受注が高水準を維持した。顧客開拓が前年同期の2倍以上のペースで推移し、新規顧客への紹介実績も着実に積み上った。更に、Public Affairsが東京都と福岡市の案件で採択された。

 

タレントエージェンシーとオープンイノベーションの両事業が成長し過去最高の四半期売上高となった。

 

過去最高の第1四半期より減少したものの、第2四半期も力強い受注実績となった。

 

人員数は、2023年9月末日時点で187名となった。第1四半期に採用活動を抑えたことと一定の離職が発生したことにより、第1四半期末比で1名の増加にとどまった。

 

営業利益の増減要因

タレントエージェンシーを含め各サービスが順調に推移したことで、利益計画を上回って着地した。

 

(2)セグメント別動向

 

23/3期

第2四半期累計

構成比

24/3期

四半期累計

構成比

前年同期比

タレントエージェンシー&

オープンイノベーション事業

1,437

100.0%

1,609

100.0%

+11.9%

ベンチャーキャピタル事業

-

-

-

-

-

連結売上高

1,437

100.0%

1,609

100.0%

+11.9%

タレントエージェンシー&

オープンイノベーション事業

320

22.3%

308

19.1%

-4.0%

ベンチャーキャピタル事業

-2

-

-3

-

-

連結営業利益

317

22.1%

304

18.9%

-4.3%

*単位:百万円。営業利益の構成比は営業利益率。

 

【タレントエージェンシー&オープンイノベーション事業】

 

23/3期

第2四半期累計

構成比

24/3期

第2四半期累計

構成比

前年同期比

タレントエージェンシーサービス

1,376

95.8%

1,483

92.2%

+7.8%

オープンイノベーションサービス

61

4.2%

125

7.8%

+104.9%

売上高合計

1,437

100.0%

1,609

100.0%

+11.9%

*単位:百万円

 

◎タレントエージェンシーサービス
前年同期比7.8%増収の14億83百万円。
人材紹介サービスは、第1四半期における好調な受注活動を受け、紹介件数が大幅に増加した。また、継続的に需要が高い幹部候補やエンジニアといった希少人材にフォーカスした支援を実行したことで、高年収帯での成約の割合は高い状況にあり、高単価を維持した。コンサルティングサービスは、事業環境を受けニーズが落ち込むものと想定していたものの、営業努力による新規開拓が進んだこと等により前四半期を上振れる結果となり、今第2四半期(7-9月)のタレントエージェンシーサービスの売上高が過去最高を更新した。
また、スタートアップ企業のエグゼクティブ領域の人材支援サービス強化を目的として、100%子会社のシングレス株式会社を設立した。今後収益が発生した場合には、タレントエージェンシーサービスとして開示を行う。

 

タレントエージェンシーの第2四半期(7-9月)の売上高は、人材紹介サービスが牽引し、過去最高の四半期業績を達成した。また、タレントエージェンシーの第2四半期(7-9月)の受注は、人材紹介サービスにおいて引き続き高い水準となった。

 

第2四半期(7-9月)人材紹介の受注単価は、過去最高の第1四半期(4-6月)の単価に比べ若干低下したものの、人材紹介件数が大幅に増加した。
また、紹介件数増加に伴って平均決定年収は下がると見込んでいたものの、第2四半期(7-9月)の平均決定年収は年収1,000万円以上の比率が30%超を維持している。

 

◎オープンイノベーションサービス
前年同期比104.9%の大幅増収の1億25百万円。
オープンイノベーションサービスは、同社グループが運営するデータベース「STARTUP DB」の大手企業向け有料会員サービス、官公庁・自治体におけるスタートアップ関連事業を受託して産学官の連携を支援する「Public Affairs」、大手企業とスタートアップ企業の提携を推進する「資金調達支援」といった、スタートアップエコシステムの構築を推進する各種サービスを提供している。「STARTUP DB」や「Public Affairs」が計画どおり進捗したことが売上高の増加に寄与した。

オープンイノベーションサービスの売上高は、Public Affairsを中心に、前年同期比で着実に成長を続けている。

 

【ベンチャーキャピタル事業】
24/3期第2四半期累計は、現時点ではイグジットの実績及び予定がないため、前年同期同様に管理費用のみが発生し、ベンチャーキャピタル事業のセグメント損失は3,831千円(前年同期2,977千円の損失)となった。なお、当セグメントには、子会社であるフォースタートアップスキャピタル合同会社、及び同社を通じて組成したフォースタートアップス1号投資事業有限責任組合が含まれている。また、今第2四半期連結会計期間末日時点でのフォースタートアップス1号投資事業有限責任組合の投資先銘柄は、株式会社フェズ、ユアマイスター株式会社、READYFOR株式会社、ポケトーク株式会社、株式会社カケハシの計5社となっている。当事業は、投資先がイグジット(IPO・M&A等による株式売却)した場合に、株式売却額が売上高、株式取得額が売上原価に計上される。

 

(3)財政状態及びキャッシュ・フロー

財務状態

 

23年3月

23年9月

 

23年3月

23年9月

現預金

1,745

1,622

未払金

426

240

売上債権

331

459

短期有利子負債

66

25

営業投資有価証券

463

463

流動負債

779

563

流動資産

2,567

2,575

長期有利子負債

-

-

有形固定資産

123

117

固定負債

-

-

無形固定資産

0

0

純資産

2,190

2,399

投資その他

278

270

負債・純資産合計

2,969

2,963

固定資産

402

387

有利子負債合計

66

25

*単位:百万円

*単位:百万円

 

23年9月末の総資産は前期末比6百万円減の29億63百万円。資産サイドでは、売上債権などが主な増加要因となり、現預金、投資有価証券などが主な減少要因となった。負債・純資産サイドでは、四半期純利益の計上に伴う利益剰余金などが主な増加要因となり、未払金、1年内返済予定の長期借入金などが主な減少要因となった。総資産の約87%を流動資産が占める等、資産の流動性が高い。23年9月末の自己資本比率は、66.9%と前期末から7.4ポイント上昇した。
なお、ベンチャーキャピタル事業からの投資額が、営業投資有価証券として表示される。基本的に投資先が未上場会社の場合は取得原価、上場会社の場合は時価により評価される。また、ベンチャーキャピタルの出資持分のうち、外部出資者に帰属する部分が非支配株主持分として計上される。

 

キャッシュ・フロー

 

23/3期

第2四半期累計

24/3期

第2四半期累計

前年同期比

営業キャッシュ・フロー

91

-92

-184

-

投資キャッシュ・フロー

-89

9

+99

-

フリー・キャッシュ・フロー

2

-83

-85

-

財務キャッシュ・フロー

32

-39

-71

-

現金及び現金同等物の当期末残高

1,752

1,622

-129

-7.4%

*単位:百万円

 

*単位:百万円

 

売上債権の増加額の拡大、未払金の減少などにより営業CFがマイナスに転じた。また、投資事業組合からの分配による収入などにより、投資CFはプラスに転じたものの、フリー・キャッシュ・フローもマイナスへ転じた。その他、非支配株主からの払込みによる収入がなくなったことなどにより、財務CFもマイナスへ転じた。以上により、24/3期第2四半期末のキャッシュポジションは、前年同期比7.4%減少した。

 

(4)主なトピックス

◎タレントエージェンシー事業-シングレス株式会社を設立
スタートアップのエグゼクティブ領域に特化した子会社、シングレス株式会社を設立した。

(同社資料より)

 

◎オープンイノベーション事業-STARTUP DB トップページリニューアルSTARTUP DB のトップページにて、ユーザー要望をもとに資金調達状況を可視化した。

(同社資料より)

 

◎オープンイノベーション事業-Public Affairs-23年度の取組み
新たに東京都・福岡市の案件に採択。各地域のスタートアップ・エコシステムの構築を推進した。

(同社資料より)

 

 

◎オープンイノベーション事業-Public Affairs-各拠点都市との取り組みスタートアップ・エコシステム拠点都市8拠点中6拠点で関連事業受託・協力機関として参画した。

(同社資料より)

 

◎オープンイノベーション事業-カンファレンス開催11月16日に第4回目となるオープンイノベーションカンファレンスを開催した。

(同社資料より)

 

3.2024年3月期業績予想

(1)連結業績

 

23/3期

構成比

24/3期

構成比

前期比

売上高

2,998

100.0%

3,300

100.0%

+10.0%

営業利益

585

19.5%

330

10.0%

-43.6%

経常利益

586

19.6%

330

10.0%

-43.8%

親会社株主に帰属

する当期純利益

442

14.8%

240

7.3%

-45.8%

*単位:百万円

 

前期比10.0%の増収、同43.6%の営業減益
第2四半期が終わり、24/3期の会社計画は、売上高が前期比10.0%増の33億円、営業利益が同43.6%減の3億30百万円の予想から修正なし。期初時点で、『スタートアップ冬の時代』と称される逆風の事業環境にあり、スタートアップ各社の採用ニーズが減少していることを考慮し、同社は保守的な通期見通しを作成していた。しかし、タントエージェンシーサービスの受注と売上高が計画を大きく上回っていること、更に、不透明な事業環境を考慮し、今第1四半期の人材採用活動を抑制する中、一定の退職者が出たため人件費の増加が当初計画を下回ったことにより、各段階利益で通期予想の達成がほぼ確実な水準となっている。
こうした中、同社は、下期において成長力強化のための投資を推進する。1つ目は、2024年9月(予定)の本社移転である。本移転に伴い、移転後利用見込みのない固定資産の耐用年数の短縮及び敷金の償却期間の短縮により、今期の販管費が約64百万円増加する見込みであり、本移転後の現本社未使用期間の家賃約31百万円を今期の特別損失に計上する見込みでる。2つ目は、来期以降の売上高成長を見据えた人材の確保あり、採用活動の強化と人員数拡大を目指す。更に3つ目は、採用した人材の育成強化とSTARTUP DBのユーザー数拡大を見据えた広告投資等の実施である。加えて、同社子会社が運営しているスタートアップ企業への投資を行うベンチャーキャピタル事業において、一部の投資先評価に関する不確実性も増している。これらを踏まえ、同社は、現時点での業績予想の変更を見送った。第3四半期の受注状況等を勘案し、今後の業績予想の見直しを検討する方針である。

 

営業利益の増減要因

期初時点の計画では、厳しい事業環境を受け、タレントエージェンシーとオープンイノベーションの売上総利益は緩やかな増加にとどまる中、23/3期下期の社員増加や既存社員の昇給による人件費の増加が影響する見通しとなっている。

 

(2)通期会社計画に対する進捗率

【連結業績】

 

24/3期第2四半期累計 実績

24/3期 会社計画

進捗率

売上高

1,609

3,300

48.8%

営業利益

304

330

92.2%

経常利益

303

330

92.1%

当期純利益

214

240

89.5%

*単位:百万円
売上は順調に推移し、各段階利益は計画を上回るペースで進捗している。

 

(3)24/3期の重点施策

①ヒトの支援領域にリソースを集中投下
政府のスタートアップ支援に関する各種施策に基づき、ヒトの支援領域にリソースを集中投下する。特に、Pre-IPOマーケットの人材紹介シェアで『圧倒的No.1』を目指す。最重要領域は「ヒト」で、『人の無限大の可能性を最も信じた事業創造・社会創造・未来創造』がテーマとなる。付加価値と利益率の高い領域に経営資源を集中する。既存のPre-IPOスタートアップ領域については、顧客層を広げて支援を行いシェアを確立し、『圧倒的No.1』だからこそできるVCやオープンイノベーションへの波及をも視野にいれる。加えて、新ブランドの立ち上げも検討する。

(同社資料より)

 

②Pre-IPOスタートアップの顧客拡大(タレントエージェンシー)
タレントエージェンシーでは、社内リソースの観点から、直近ではレイターステージの厳選顧客への支援を中心に行っていたものの、人員増加を背景に、次のユニコーン企業になりうるチームを支援するための『種まき』を進める。
アーリー期でハイレイヤーやボードメンバーを支援すると数年後、採用ニーズの拡大やVC事業からの資金支援へ結びつく。更に数年後には、IPO後の継続的な支援にもつながる。これらの好循環を通じて、グロース企業の経営層の人材紹介でシェアNo.1を獲得する。

 

(同社資料より)

 

③人材育成の強化(タレントエージェンシー)
優秀かつ伸びしろのある人材採用は継続的にできているものの、タレントエージェンシーでは入社後2年未満の社員が全体の約64%を占め、在籍年数が短い社員の割合が増加している。一時的に生産性が下がるものの、チームの総合力向上のために人材育成の強化を図る。

 

【具体的な施策】
◎スタートアップ企業の情報に加え、経営に関する知識や最新ビジネストレンドのインプット
◆起業家・有識者等から学ぶ「進化塾」の開催
◆各スタートアップの経営戦略を学ぶ「勉強会」◎転職希望者との面談時、ベテラン・エース社員の同席
◎両面型として担当企業を積極的に任せ、ヒューマンキャピタリストとして担当企業支援の責任を負うとともに、将来のマネジメ
  ント候補を育成
◎人材紹介業における重要な法令、契約内容等も踏まえた総合的な育成研修の充実化

(同社資料より)

 

④STARTUP DBへの投資(オープンイノベーション)
STARTUP DBをハブとした事業展開を見据えた投資を実行する。

(同社資料より)

 

⑤成長産業支援のシナジーを創出するビジネスモデルを構築
さまざまな情報を集約し、成長産業支援の各ビジネスへ展開する。

(同社資料より)

4.中期業績目標

同社は、中期業績目標の修正を行った。当初想定していた事業環境から大きく変化している状況をふまえ、公表していた25/3期連結売上高50億円の目標値を繰り延べ、25/3期に連結売上高40~45億円、26/3期に50億円~55億円を目指す。また、営業利益率については、短期的には厳しい環境にあるものの、中長期的には大きな拡大余地が見込めることから、中長期視点での投資を重視し、24/3期は10%、25/3期以降は15%を基準とし、上振れ分については翌年度以降の売上高拡大に向けた再投資に充当する。

 

 

5.今後の注目点

24/3期第2四半期累計決算は、前年同期比11.9%の増収、同4.3%の営業減益となった。期初時点で、『スタートアップ冬の時代』と称される逆風の事業環境にあり、スタートアップ各社の採用ニーズが減少していることを考慮し、同社は保守的な通期見通しを作成していた。しかし、タレントエージェンシーサービスの受注と売上高が計画を大きく上回っていること、更に、不透明な事業環境を考慮し、今第1四半期の人材採用活動を抑制する中、一定の退職者が出たため人件費の増加が当初計画を下回ったことにより、通期計画の達成に向け高水準の進捗となっている。通期の会社計画に対する上期の進捗率は、売上高で48.8%ながら、営業利益で92.2%、経常利益92.1%となっており、各段階利益が通期予想を超過するのはほぼ確実な状況となっている。こうした環境下、同社は、下期において本社移転、採用活動の強化と人員数拡大、STARTUP DBのユーザー数拡大を見据えた広告投資等の先行投資を実施することから、現時点において通期業績予想の修正を見送った。今後の成長に向けた先行投資であり致し方ないものの、非常に保守的な計画と判断される。同社のタレントエージェンシーにおける人材紹介料は、内定の決定から平均2.5ヶ月後に売上高が計上される。そのため、続く第3四半期の受注状況が、今期業績の着地点の鍵を握る。第3四半期の受注が確定した段階で、通期見通しを修正するかの判断を下すものと想定される。積極的な先行投資負担をカバーし、今期の利益計画をどれ位超過し着地できるのか、第3四半期のタレントエージェンシーの受注状況が注目される。
また、世界各国の金融資本市場変動の影響を受け、減少傾向にあったスタートアップの資金調達額に上げ止まりの兆しが出てきている模様である。スタートアップの資金調達額の増加は、採用の拡大を通じて、同社のタレントエージェンシーにおける人材紹介料の増加に結びつく他、起業支援や資金調達支援などの増加にもつながる。底打ちから回復傾向が鮮明となるのか、今後のスタートアップの資金調達額の動向が注目される。
更に、来期以降の成長に向けては、人員の増加が不可欠である。不透明な環境における採用抑制と退職により、第1四半期比で第2四半期は1名の純増のみとなった。同社は、下期より再度採用活動を強化する方針である。将来の売上高の拡大につながる人員をどれ位増加させることができるのか、下期の採用状況にも注目していきたい。

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査等委員会設置会社

取締役

9名、うち社外5名

監査等委員

3名、うち社外3名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2023年6月19日

 

<基本的な考え方>
当社は、「for Startups」という経営ビジョンのもと、ユーザー、クライアント、株主、従業員、取引先、社会等のステークホルダーに対する責任を果たし、全てのステークホルダーからの信頼を獲得することを基本的な考え方としております。当該基本的な考え方のもと、経営のさらなる効率化と透明性の向上、業務執行の監督機能の強化等のコーポレート・ガバナンスの充実を図り、企業価値を安定的かつ継続的に向上に努めていく方針であります。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則を全て実施しております。

 

 

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