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(7089) フォースタートアップス株式会社

グロース

ブリッジレポート:(7089)フォースタートアップス 2024年3月期決算

ブリッジレポートPDF

 

 

 

志水 雄一郎 代表取締役社長

フォースタートアップス株式会社(7089)

 

 

企業情報

市場

東証グロース市場

業種

サービス業

代表取締役社長

志水 雄一郎

所在地

東京都港区六本木1丁目6-1 泉ガーデンタワー 36F

決算月

3月

HP

https://forstartups.com/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,090円

3,646,244株

3,974百万円

19.6%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

0.00円

-

85.02円

12.8倍

596.43円

1.8倍

*株価5/22終値。発行済株式数は24/3期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROEとBPSは前期実績。
*EPSは今期の会社予想。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2021年3月(実)

1,273

76

79

38

11.59

0.00

2022年3月(実)

2,348

488

492

382

110.68

0.00

2023年3月(実)

2,998

585

586

442

124.76

0.00

2024年3月(実)

3,416

423

428

385

107.92

0.00

2025年3月(予)

4,100

450

450

310

85.02

0.00

*単位:百万円、円。予想は会社側予想。2022年3月期より連結決算。
*過年度決算訂正後の数値。

 

 

フォースタートアップス株式会社の2024年3月期決算の概要等をブリッジレポートにてご報告致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2024年3月期決算概要
3.2025年3月期業績予想
4.中期業績目標
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 24/3期決算は前期比13.9%の増収、同27.6%の営業減益となった。売上面では、新規顧客開拓、子会社「シングレス」設立、上場後の関係が希薄だった大型顧客との取引再開などタレントエージェンシーの施策が奏功した。資金調達市場が悪化する中でも、採用ニーズを維持した企業のニーズを捉えることができ会社計画を上回った。利益面では、営業投資有価証券の評価損や本社移転に伴う加速償却等の計上により営業利益が減少したものの、期初計画と修正計画をともに上回った。

     

  • 25/3期の会社計画は前期比20.0%の増収、同6.3%の営業増益。売上面では、Pre-IPOの新規顧客開拓、 人材採用・育成など従来の施策を継続する。経営資源をタレントエージェンシーに集中し、オープンイノベーションとのシナジーを創出する。利益面では、本社移転に伴う一時的な費用が約1.8億円発生するものの営業利益が増加する見込みである。一時費用を除けば、中期業績目標で掲げた利益率15%を維持する水準となる。

     

  • 同社は3月11日付で株式会社ウィルグループとの資本関係及び親子上場の解消を行った。ウィルグループとは資本関係以外の相乗効果は低かったが、新規株主であるVCや事業会社とはスタートアップへの人材支援強化をはじめ様々な業務提携による事業シナジーの創出が期待できそうである。新規株主と今後どの様な事業シナジーを創出できるのか、業務提携の成果が注目される。

     

1.会社概要

日本の競争力を回復させ明るい未来をもたらすためにはスタートアップの成長が不可欠との想いから「for Startups」という経営ビジョンを掲げ、必要な支援を行う成長産業支援インフラとなることを目指している。
「成長産業支援事業」として「タレントエージェンシー」「オープンイノベーション」の2つのサービスを展開。人材支援に加え資金支援も実施することでハイブリッドキャピタル化を図り、スタートアップ企業の早期成長を促している。「イノベーションに関わるプレイヤーとのネットワーク」「国内最大級の成長産業データベース『STARTUP DB』」などが競争優位性。

 

(1)上場までの沿革

1996年に大手人材紹介会社に入社後キャリアを重ね、新規事業の立ち上げなどトップクラスの実績を上げてきた志水雄一郎氏(現 フォースタートアップス株式会社 代表取締役社長)に、自らの存在意義を改めて問い直す機会が訪れる。そこでこれまでの自身の人生と日本社会の変化を振り返ると同時に、これからの日本の将来を見通して見ると、日本経済およびこれまでの日本経済を支えてきた大企業が「失われた20年」と呼ばれる長期低迷に喘ぎ、今後も明るい未来を予想し難いと考える。
一方で、世界に目を向けるとベンチャー企業の躍進が国富の大きな部分を創出していることを知り、人材関連事業に携わっていた自分および業界は、「本来取り組むべき課題解決=人の力を活用することによる企業の成長」に向き合わず、自分や自社の成長、営業成績のみを目標としていたことを痛感。そこで、人材関連事業に携わるものとして、「人の可能性を信じ、人を最適に組み合わせることで日本企業および日本の競争力を復活させ、明るく最高の未来を次世代に繋いでいく」ことへの挑戦を決意する。

 

2013年4月、志水氏の想いに共感し協力を申し出た(株)ウィルグループ(東証1部、6089)は、子会社の(株)セントメディア(現(株)ウィルオブ・ワーク)の一事業部門としてネットジンザイバンク事業部を発足させ、志水氏はそこでスタートアップ企業に対する人材支援サービス提供を開始した。国内有数のベンチャーキャピタルであるグロービス・キャピタル・パートナーズの投資先であったスマートニュースのCXO(経営チーム)組閣を手掛けたことを始めとした数々の実績から、VCや起業家における認知度や評価は急上昇し、案件数も拡大していく。経営判断のスピードアップのため2016年9月に会社分割により株式会社ネットジンザイバンクを新設。2018年3月、フォースタートアップス株式会社に商号を変更した。企業規模を拡大し、スタートアップに対する支援スピードをさらに加速させるため、2020年3月、東京証券取引所マザーズ市場に上場。2022年4月、市場再編に伴い、東証グロース市場に移行した。なお、同社は2024年3月11日付で株式会社ウィルグループとの資本関係及び親子上場の解消を行った。

 

(2)理念

同社では、『「進化の中心」にいることを選択する挑戦者達』をスタートアップスと呼んでいる。
沿革にあるように、志水社長の「日本に明るい未来をもたらすためには多くのスタートアップスの成長が不可欠」との強い想いをベースに創業以来スタートアップスを支援してきたが、2021年7月、新ミッション「(共に)進化の中心へ」を掲げた。
新ミッションは、「進化の中心とは何か」を、時代に合わせて常に問い、その目標をアップデートし続けていく姿勢を表現している。また、「(共に)」とすることで、「支援者」という立ち位置にとどまらず、時には自らも時代を創る「主体者・創造主」となる覚悟を示しており、スタートアップスと(共に)進化の中心であり続けることが、日本の成長、次世代にとっての未来のアップデートにつながると考えている。

 

Mission

(共に)進化の中心へ

Vision

for Startups

Value

Startups First

全ては日本の成長のために。スタートアップスのために。

 

Be a Talent

スタートアップスの最たる友人であり、パートナーであり、自らも最たる挑戦者たれ。

そして、自らの生き様を社会に発信せよ。

 

The Team

成長産業支援という業は、TEAMでしか成し得られない。仲間のプロデュースが、日本を、スタートアップスを熱くする。

 

日本では、スタートアップが生まれ続けるエコシステムの構築と既存スタートアップの成長の両者が必須である。同社はその両者を複数サービスでスタートアップを支援していく。

(同社資料より)

(3)同社を取り巻く環境

①日本経済・日本企業の凋落「失われた30年」 
下の表はフォースタートアップス株式会社が運営する「STARTUP DB」より引用した、平成元年(1989年)および令和5年(2023年)の世界時価総額ランキング(一部抜粋)を比較したものである。
1989年の世界時価総額No.1はNTTで、上位20社中日本企業は14社。上位50社でも32社が日本企業で、まさに「Japan as No.1」という、日本にとって輝かしい時代であった。しかし、1989年12月に記録した日経平均38,915円をピークに、バブル経済は崩壊。失われた30年という長期低迷に入り、日本企業の競争力は低下。2022年の世界時価総額ランキングでは上位20位はおろか、50位以内にランクインしたのがトヨタ1社という凋落ぶりである。
また、2022年の顔ぶれ(上位20社)を見ると、GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon,Microsoft)を始めとした米国企業15社のほか、中国IT企業のBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)の一角であるTencentがランクイン。30年間における産業構造の変化および国家の浮沈を明確に表している。

 

(フォースタートアップス株式会社 STARTUP DB :2023年世界時価総額ランキング。世界経済における日本のプレゼンスは?より)

 

また、IMD(国際経営開発研究所:International Institute for Management Development)が作成する「世界競争力年鑑」によれば、バブル期に1位だった日本の総合順位は最新2022年では34位まで落ち込んだ。8,000円台を下回った日本株は現在3万円台を回復したが、それでもピークの約8割の水準に過ぎず、史上最高値更新を続ける米国株とは対照的である。これも現在の両国の国力のみならず将来に対する見通しや期待を映し出しているといえよう。

 

②スタートアップ支援に力を入れ始めた日本政府
ただ、こうした状況について日本政府も手をこまねいているわけではない。2018年6月には「未来投資戦略2018」を発表。「我が国の強みを活かし、官民が一丸となってあらゆる政策を総動員すること等を通じて、我が国のベンチャー・エコシステムの構築を加速し、グローバルなベンチャー企業を生み出していく」との方針を打ち出している。2020年7月に閣議決定した「成長戦略フォローアップ」では、「4.オープンイノベーションの推進」の項で「企業価値または時価総額が10億ドル以上となる未上場ベンチャー企業(ユニコーン)または上場ベンチャー企業を2025年までに50社創出」という目標を掲げた(2019年末時点では16社)。
また、2022年11月28日、首相官邸において、「第13回 新しい資本主義実現会議」が開催され、スタートアップ育成5か年計画が決定された。この日議長である岸田総理は、スタートアップ育成5か年計画について、今回決定した「スタートアップ育成5か年計画」は、官民によるスタートアップ育成策の全体像と5年間の具体的なロードマップを示したものであり、人材、資金供給、オープンイノベーションの3本柱を一体として推進し、スタートアップへの投資額を5年後の2027年度には10兆円規模と10倍増にすることを目標にすると述べている。

 

スタートアップ支援の中核省庁である経済産業省では、新規産業の創出、ベンチャーの創業・成長促進のために、支援人材のネットワーク構築、起業応援の税制・融資制度の整備、起業家教育の推進などの取り組みを実施。新しい事業やベンチャーが次々と生まれ成長するエコシステム(※)の形成を目指している。
※エコシステム
スタートアップや大企業、投資家、研究機関など、産学官のさまざまなプレイヤーが集積または連携することで共存・共栄し、先端産業の育成や経済成長の好循環を生み出すビジネス環境を、自然環境の生態系になぞらえたもの。

 

(経済産業省の主な施策)

オープンイノベーション促進税制

国内の対象法人等が、オープンイノベーションを目的としてスタートアップ企業の株式を取得する場合、取得価額の25%を課税所得から控除できる制度

エンジェル税制

ベンチャー企業への投資を促進するためにベンチャー企業へ投資を行った個人投資家に対して税制上の優遇措置を行う制度

女性、若者/シニア起業家支援資金

新規開業後概ね7年以内の女性や若者(35歳未満)、シニア(55歳以上)という、民間金融機関のみでは長期的・安定的な資金供給が難しい起業家に対し、日本政策金融公庫が低利融資を行う制度

J-Startup

世界で戦い、勝てるスタートアップ企業を生み出し、革新的な技術やビジネスモデルで世界に新しい価値を提供することを目指す経済産業省が、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とともに推進するスタートアップ企業の育成支援プログラム

(同省ウェブサイトより)

 

このうち、「未来投資戦略2018」を受けて経済産業省が立ち上げたベンチャー支援プログラムが「J-Startup」である。
「J-Startup」では、トップベンチャーキャピタリスト、アクセラレーター、大企業のイノベーション担当などが、日本のスタートアップ企業約10,000社の中から一押し企業を推薦し、外部審査委員会がその推薦内容を尊重しつつ企業をチェック。厳正な審査で選ばれた企業をJ-Startup企業として選定する。
選定されたスタートアップ企業に対しては、民間支援機関・NEDO・JETRO・METIによる事務局が中心となり支援するコミュニティを構築し、「J-Startup企業」とサポーター、政府機関を結びつけ、タイムリーかつスピーディな支援を実現する。
フォースタートアップス株式会社もサポーター企業の1社である。

 

 

 

(J-Startup資料より)

 

また、2020年7月には、内閣府・文部科学省・経済産業省が「スタートアップ・エコシステム形成に向けた支援パッケージ ~コロナを乗り越えて新たな成長軌道へ~」を発表した。新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、スタートアップ向けのリスクマネー供給の減少、事業展開や研究開発の停滞等、自律的なエコシステム形成に向けたリスクが顕在化し、大きな分岐点にあるとの危機意識の下で、スタートアップは、その機動性で、今後の社会変革に対応するイノベーションを牽引するキープレイヤーであると改めて位置付け、今後3年間を集中支援期間としてスタートアップ・エコシステム支援パッケージ(事業規模約1,200億円)を実行している。具体的には、アントレプレナーシップ教育の推進(大学における講座の開設など)、SBIR(Small Business Innovation Research)制度改革(研究開発型スタートアップ等への補助金等の支出機会の拡大や、初期段階の技術シーズから事業化までの一貫した支援)、J-Startup地域版の立ち上げ、JETRO等による海外発信等である。
経済産業省、内閣府、文部科学省以外に、総務省、厚生労働省、国土交通省、農林水産省、環境省、防衛省、財務省の各省もスタートアップ支援プログラムを打ち出しており、「ALL Japan」でのスタートアップ支援体制構築が加速している。

 

スタートアップ支援は国策となった。

政府の動き

2020年

◆エコシステム拠点都市 選定

2022年

◆スタートアップ創出元年 宣言

◆骨太の方針に組み込まれる

◆スタートアップ育成5カ年計画

◆補正予算1兆円を計上

2023年

◆骨太の方針に組み込まれる(2年連続)

 

③経団連の提言
企業側もスタートアップの育成について積極的な姿勢を示している。
2022年3月、日本経済団体連合会(経団連)は「スタートアップ躍進ビジョン ~10X10Xを目指して~」との提言を公表した。
同提言では、「わが国の持続的成長の新たな牽引役として、グローバル級のスタートアップを継続的に創出することを目標とする。GAFAMのように既存産業にとって代わりグローバル市場を席巻するスタートアップは、全体の中のほんの一部であることから、母数すなわち起業の数自体を格段に増やすとともに、成長のレベルも引き上げる必要がある」との認識の下、以下のような目標を掲げている。
5年後(2027年)までにスタートアップの裾野、起業の数を10倍にするとともに、最も成功するスタートアップのレベルも10倍に高める。目標を確実に達成するために、それぞれについて以下のKPIを設定し、実現状況をモニタリングする。

 

◆裾野=起業の数を10倍にする
スタートアップの数を10倍=約10万社に
スタートアップへの年間投資額を10倍=約10兆円に
◆高さ=レベルを10倍にする
ユニコーン企業数を10倍=約100社に
ユニコーンから更に飛躍したデカコーン企業((時価評価額が100億ドル超の上場後1年以内の企業)数を2社以上に

 

(4)事業内容

22年3月期より、「タレントエージェンシー&オープンイノベーション事業」と「ベンチャーキャピタル事業」の2つを報告セグメントとしている。

 

【タレントエージェンシー&オープンイノベーション事業】
「2024年3月期 売上高 3,416百万円、セグメント利益 5億67百万円」
「タレントエージェンシーサービス」と「オープンイノベーションサービス」の2つのサービスで構成されている。

 

 

<成長産業支援における各事業系統図>

(同社資料より)

 

◎タレントエージェンシーサービス
スタートアップ企業に対して人材支援サービスを提供し、支援内容は、成功報酬型の転職支援サービスと固定報酬型の採用支援コンサルティングを行う①人材紹介と、起業潜在層の発掘・起業サポートを行う②起業支援に区分される。

 

<サービス概要>
①人材紹介
(プロセス)
スタートアップ企業に対して、主として雇用期間の定めのない候補者を紹介する。
同社のコンサルタントであるヒューマンキャピタリストがスタートアップ企業から求人情報を獲得し、求人内容に合致する候補者を発掘し、ヘッドハンティングする。スタートアップ企業に人的資源を最適配置することを重視しているため、国内の人材紹介会社の多くが採用する登録型(求職者の登録媒体を設け求職者を集めるスタイル)ではなく、求人ニーズに合致した人材を効率的に発掘できるハンティング型を採用している。発掘にあたっては、主として株式会社ビズリーチ等が運営する外部の人材データベースを利用している。

 

同社が支援するスタートアップは独立系大手のベンチャーキャピタルである株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズを中心としたVCからの紹介案件が中心。VCは投資ポートフォリオの中でも、同社がCXO(経営チーム)の組閣を始めとした人材確保を支援することで、今後更に急成長すると期待するスタートアップを紹介するため、同社にとっても成功確率の高い案件を手掛けることとなる。また、紹介されるスタートアップは既にVCから出資を受けているため、支援にあたっての資金面での問題は無い。

 

(マッチングに際してのノウハウ)
スタートアップの要望に合う適切な人材を発掘、マッチングするにはノウハウが必要である。
同社では社内における情報の共有を重視している。ヒューマンキャピタリストは現在手掛けている案件について、「スタートアップの要望」「候補者の発掘およびマッチングの進捗」などを社内システムに随時登録し、他のヒューマンキャピタリストもそうした情報を共有できるようにしている。このため、仮に自分の手掛けている案件ではマッチングの可能性が低そうな場合でも、候補者を他のヒューマンキャピタリストの案件に紹介することで、マッチングの確率が向上し、結果的にスタートアップ、候補者双方が満足することとなる。
また、スタートアップの要求は時として、やや現実的ではないケースもあるが、そうした際、ヒューマンキャピタリストはスタートアップと会社の現状・今後の方針や見通しなどを深くディスカッションし理解したうえで、「このフェーズであればこの人で」「少しハードルを下げてこういう能力の人を2名採用してはどうか」等、現実的な提案を行うことも重要な役割である。

 

(収益)
候補者がスタートアップ企業に入社した事実を企業等に確認した上で、入社日を基準に成功報酬としてのコンサルティングフィーを収受している。成功報酬型以外にも、毎月一定数の候補者の提案や、ターゲット人材の設定等のコンサルティングサービスも提供している。売上は入社日が基準となるため、例えば2-3月に内定が出れば4月に入社することが多いなど、期間収益に影響を与えるため、同社内では内定を承諾した時点で計上する「受注」を重視している。主な原価は、候補者発掘にあたって使用する外部データベースの利用料など。

 

(同社資料より)

 

②起業支援
日本のスタートアップ・エコシステムの形成には、起業家数の増加が必要不可欠であると考えており、以下のような起業支援サービスを行っている。

ベンチャーキャピタルと連携した起業家創出プログラム

ベンチャーキャピタルと提携し、起業家の創出を行っている。

具体的には、同社が発掘した起業希望者を提携するベンチャーキャピタルに紹介し、そのベンチャーキャピタルが相談や起業サポートを行う。

研究機関と連携した起業家創出プログラム

国内の研究機関(大学等)には、高い技術力をベースにした優れたアイディア・人材が多く存在しているが、そのアイディアをビジネスとして実行できるケースは決して多くない。

そこで、日本が誇る優れた技術を成長産業へ成長させるため、大学系ベンチャーキャピタルと連携して経営陣等の人材支援を行う等、起業サポートを行っている。

 

いずれも、紹介した起業希望者や支援した経営陣等が実際に起業に至った場合には、同社はベンチャーキャピタルや研究機関から成功報酬を収受するほか、そのスタートアップ企業に対して継続的な人材支援を行う。

 

◎オープンイノベーションサービス
データベース「STARTUP DB」を活用し、大手企業や官公庁・自治体とスタートアップ企業の連携を促進している。
具体的なサービス内容は以下の通り。

Public Affairs

官公庁・自治体におけるスタートアップ関連事業を受託して産学官の連携を支援

STARTUP DB

同社グループが運営するデータベース「STARTUP DB」の大手企業向け有料会員サービス

カンファレンス

日本のスタートアップとグローバルの接点を模索するイベントを開催

 

(サービスの状況)
Public Affairsは、官庁・地方公共団体のスタートアップ関連事業を伴走支援しており、福岡に進出した。また、STARTUP DBの利用者は、年々着実に増加中であり、期中に開始した会員限定の交流会が好評を得ている。加えて、カンファレンスは、日本のスタートアップが世界と接続するためのイベントを年1回開催している。同社は、各サービスを通じて、スタートアップ・エコシステムの発展に寄与している。
なお、24/3期まで実施していた資金調達支援は、売上規模及び投資の優先順位を踏まえ、25/3期より案件発生時のスポットの対応へ変更した。

 

【ベンチャーキャピタル事業】
「2024年3月期 営業損失 1億43百万円」
起業支援または人材支援中の企業に対しスタートアップ投資を行うとともに、タレントエージェンシーとのシナジー効果を創出している。
22年3月期からスタートした新事業。2021年5月、投資事業を行う連結子会社「フォースタートアップスキャピタル合同会社」を設立した。創業以来、成長産業を「人材」から支援してきた同社だが、中長期の目標である「成長産業の支援インフラの構築」を実現するために、これまでの「人材」の支援に加え、「資金」の支援を行うことを目的としている。主力サービスであるタレントエージェンシーサービスとのシナジーを創出し、成長産業支援をより強固なものとする。
起業時や成長期における資金調達の支援にとどまらず、自ら資金提供者となることで責任と覚悟を持って起業家を支え、加えて人材支援で培ってきた同社の組織的能力を注入することによって投資先企業の成長速度と成功確度を高め、日本を代表するグローバルスタートアップ企業を創出する。
21年8月には最初のファンドとなる「フォースタートアップス1号投資事業有限責任組合」を設立。24/3期末現在で投資先企業は6社。

 

(5)特長と強み

中長期的に良好な事業環境にある同社の特長・強み、競争優位性は以下の通りである。

 

◎日本を代表するプレイヤーとのネットワークが強み
Forbes起業家ランキングのトップ10にランクインする起業家・スタートアップの9割が同社の顧客であり、様々な定性情報を得られる環境にある。同社は、起業家や投資家との勉強会を高頻度で開催しており、最新の情報共有と相互のディスカッションを通じて、一次情報にもとづく深い理解をもとに支援を推進している。また、同社は、感謝祭も開催している。日本を代表する起業家・投資家・行政・メディアを同社のグループオフィスへ年に数回招待し、感謝祭での情報交換を通じて成長産業コミュニティを強化している。更に、同社は、世界最大級のスタートアップカンファレンスの投資家向け交流会や大企業のオープンイノベーションイベントを同社のオフィスにて開催している。

 

◎同社の強みである「情報」を軸に業務提携・協業を推進
ステークホルダーにとって常に最新のスタートアップ情報が集まる同社との業務提携・協業のニーズは根強い。同社は、今後も同社をハブとしたスタートアップ・エコシステムの最大化を目指す。

(同社資料より)

 

(6)実績

(同社資料より)

 

(同社資料より)

 

(同社資料より)

 

(同社資料より)

 

また、同社はベンチャーキャピタル事業を通じて、人材支援先スタートアップの更なる成長可能性に投資を行っている。スタートアップの成長に最も重要な人材と資金の両面で支援(ハイブリッドキャピタル)を実行している。

(同社資料より)

 

(7)人的資本の状況

(同社資料より)

 

(同社資料より)

 

同社は、「志経営」の第一人者であるグロービス経営大学院副学長の田久保善彦氏を顧問に迎え、約1年間をかけて同社の人的資本経営の在り方を議論し、社員に長く活躍してもらうことを目的に、人材・制度に関する基本的な考え方となる人事ポリシーの策定や、独自エンゲージメント指数「Kokorozashi指数」を開発し、運用を開始した。志の高いスタートアップの起業家・VCと共に、社員も志をもって挑戦することが重要と考え、社員の「志」を5つの視点から定点観測する独自指標「Kokorozashi指数」では、志をもつ社員の割合が74.2%と比較的高い水準となっている。

 

人的資本経営フレームワーク】
同社は、人的資本経営フレームワークに基づき、同社の強みである環境を最大限に活用し、個人へのアクションをより強化する方針である。

(同社資料より)

 

2.2024年3月期決算概要

(1)業績概要

 

23/3期

構成比

24/3期

構成比

前期比

会社予想

1/19修正計画

予想比

売上高

2,998

100.0%

3,416

100.0%

+13.9%

3,300

+3.5%

売上総利益

2,457

82.0%

2,723

79.7%

+10.8%

-

-

販管費

1,872

62.4%

2,299

67.3%

+22.8%

-

-

営業利益

585

19.5%

423

12.4%

-27.6%

370

+14.4%

経常利益

586

19.6%

428

12.5%

-27.0%

370

+15.8%

当期純利益

442

14.8%

385

11.3%

-12.7%

340

+13.5%

*単位:百万円

 

前期比13.9%増収、同27.6%営業減益
24/3期におけるスタートアップ業界を取り巻く環境は、米国をはじめとする主要国の金融市場の引き締めや、シリコンバレー銀行の破綻等を受けたリセッション懸念から、米国のスタートアップの資金調達額が大きく減少した。米国の状況を受け、日本のスタートアップの資金調達額も前年比で約20%減(参照:STARTUP DB)となった。引き続き不透明な経済環境と事業環境となっているものの、スタートアップ政策を受け中長期的な市場拡大が期待される。こうした環境下、同社はグループがもつ情報やノウハウをベースに、スタートアップ企業に対しての人材紹介並びに産官学を巻き込んだスタートアップ関連サービスを展開した。
売上高は前期比13.9%増の34億16百万円、営業利益は同27.6%減の4億23百万円となった。売上面では、新規顧客開拓、子会社「シングレス」設立、上場後の関係が希薄だった大型顧客との取引再開などタレントエージェンシーの施策が奏功した。資金調達市場が悪化する中でも、採用ニーズを維持した企業のニーズを捉えることができ会社計画を上回った。利益面では、営業投資有価証券の評価損や本社移転に伴う加速償却等の計上により営業利益が減少したものの、期初計画と修正計画をともに上回った。
売上総利益率は、前期比2.3ポイン低下の79.7%となった。また、売上高対販管費率が前期比4.9ポイント上昇し67.3%となった。以上により売上高営業利益率は、前期比7.1ポイント低下の12.4%となった。
受注は、前期比で19.1%の増加となった。また、社員数は、前期末比28名増の194名となった。採用活動は通期で会社計画を下回ったものの、下期は採用活動が好調推移した。 退職者数は退職者が会社計画を少し上回った。一方、育成施策の効果により生産性が向上したことにより利益率が会社計画を上回った。

 

24/3期第4四半期(1-3月)は、オープンイノベーションの季節性があるものの、タレントエージェンシーとオープンイノベーションの両事業が成長し過去最高の四半期売上高となった。

 

タレントエージェンシーは1月が少ない受注高であったものの、2月と3月は順調に推移した。受注高が多い12月との月ズレと認識しており、前年同月比では着実に成長している。

 

人員数は、2024年3月末日時点で194名となった。上期に採用活動を抑制し、退職者が想定を少し上回って発生したことにより純増数は28名にとどまった。一方で下期の採用活動と入社数は順調に推移しており、採用力は健在である。

 

営業利益の増減要因

人材採用が想定を下回ったものの、生産性向上により、ベンチャーキャピタル営業有価証券評価損と本社移転に伴う減価償却費等の増加による一時要因を除けば増益の水準となった。

 

(2)セグメント別動向

 

23/3期

構成比

24/3期

構成比

前期比

タレントエージェンシー&

オープンイノベーション事業

2,998

100.0%

3,416

100.0%

+13.9%

ベンチャーキャピタル事業

-

-

-

-

-

連結売上高

2,998

100.0%

3,416

100.0%

+13.9%

タレントエージェンシー&

オープンイノベーション事業

592

19.8%

567

16.6%

-4.3%

ベンチャーキャピタル事業

-7

-

-143

-

-

連結営業利益

585

19.5%

423

12.4%

-27.6%

*単位:百万円。営業利益の構成比は営業利益率。

 

【タレントエージェンシー&オープンイノベーション事業】

 

23/3期

構成比

24/3期

構成比

前期比

タレントエージェンシーサービス

2,664

88.8%

2,908

85.1%

+9.2%

オープンイノベーションサービス

334

11.2%

507

14.9%

+51.8%

売上高合計

2,998

100.0%

3,416

100.0%

+13.9%

*単位:百万円

 

◎タレントエージェンシーサービス
前期比9.2%増収の29億8百万円。
人材紹介サービスは、マクロ環境の不透明さを背景に、既存顧客スタートアップの採用ニーズの減少を確認した。複数の顧客が採用活動を停止したことを受け、①ミドル・アーリーステージのスタートアップ顧客拡大、②人材育成の強化、③別ブランドの組成の3つの方針を立て注力した。①ミドル・アーリーステージのスタートアップ顧客拡大では、後のユニコーン企業候補の支援を拡充する方針の下、2023年1月から12月の1年間における顧客開拓数が、前年比2倍以上の122社となった。また、2024年3月時点の累計契約企業数は1,265社となり、その中から実際に人材支援を行い、成功報酬を受けた累計支援企業数が600社を突破した。②人材育成の強化では、新卒3年目の女性社員をマネージャーに登用するなど、実力に応じて管理職への登用を積極的に推進しつつ、新入社員の育成を進めた。③別ブランドの組成では、スタートアップのエグゼクティブ領域特化の子会社であるシングレス株式会社を設立した。高年収人材の支援が順調に推移しており、2024年3月期第4四半期(1-3月)に初めての売上を計上した。これら重点施策に加え、上場後に一時的に関係が希薄化したPost-IPOスタートアップの複数社から、取引を再開して人材採用を強化したい旨のオーダーを受け非公開求人を含む幹部人材の支援を行うといった活動が進んだ結果、厳しい事業環境の中でも人材紹介サービスが増収となった。また、コンサルティングサービスは、厳しい事業環境を受け大幅減収を予想していたものの、新規案件の獲得が進んだ結果、減収ではあるものの会社計画を上回る着地となった。

 

 

人材紹介サービスの第4四半期(1-3月)の売上高は、過去2番目の四半期業績となった。また、タレントエージェンシーサービスの第4四半期(1-3月)の受注高は、前年同期比8.9%増となった。人材紹介サービスは12月に受注が集中した反動で1月の受注が凹んだものの、2-3月は順調に推移した。社員数が想定を下回った影響もあると考えられ、今後人材確保に力を入れ改善を図る方針である。

 

 

新規顧客開拓が進み、件数が増加傾向にあるものの、高単価を維持している。また、新規顧客開拓が進み、メンバー・ミドルクラスの件数が増加傾向にあるものの、引き続きハイレイヤー支援比率は高く推移している。

 

(同社資料より)

 

◎オープンイノベーションサービス
前期比51.8%の大幅増収の5億7百万円。
オープンイノベーションサービスは、同社グループが運営するデータベース「STARTUP DB」の大手企業向け有料会員サービス、官公庁・自治体におけるスタートアップ関連事業を受託して産学官の連携を支援する「Public Affairs」、日本のスタートアップとグローバルの接点を模索するイベントを開催する「カンファレンス」など、スタートアップ・エコシステムの構築を推進する各種サービスを提供している。「STARTUP DB」の有料ユーザー数の増加、カンファレンスの開催規模拡大に伴うスポンサー収入の増加、Public Affairsの地方自治体からのスタートアップ関連事業の受託の増加などが売上高の増加に寄与した。

 

オープンイノベーションサービスの売上高は、サービス全体が前期比で着実に成長している。オープンイノベーションサービスは、Public Affairsの収益認識の影響で第4四半期の売上高が高くなる傾向がある。

 

【ベンチャーキャピタル事業】
子会社であるフォースタートアップスキャピタル合同会社、及び同社を通じて組成したフォースタートアップス1号投資事業有限責任組合が含まれている。ベンチャーキャピタル事業では、同社のタレントエージェンシーサービスの人材支援先に対して、成長産業支援をより強固にするためのスタートアップ投資を行うファンドを運営している。投資対象は、国内のスタートアップ、ベンチャー企業のうちミドル・レイターステージ及び起業支援案件かつ人材支援取引先となる。24/3期は、フォースタートアップス1号投資事業有限責任組合が保有する非上場株式について、超過収益力を反映した実質価額が取得価額に比べて著しく低下したため、営業投資有価証券評価損として136,343千円を売上原価に計上した。会計上の評価を保守的に見積った結果であり、現時点で投資先企業の経営状態は良好である。複数企業の評価損を織り込んでいる一方で、日本有数のVCのリターン期待の高い企業に投資できており、全企業が着実に成長中である。これまでも様々な評価基準により投資を見送った案件が複数あるものの、今後はより厳格な投資判断をしていく方針である。

 

(3)財政状態及びキャッシュ・フロー

財務状態

 

23年3月

24年3月

 

23年3月

24年3月

現預金

1,745

1,655

未払金

426

235

売上債権

331

512

短期有利子負債

66

-

営業投資有価証券

463

378

流動負債

779

696

流動資産

2,567

2,582

長期有利子負債

-

-

有形固定資産

123

67

固定負債

-

-

無形固定資産

0

0

純資産

2,190

2,545

投資その他

278

591

負債・純資産合計

2,969

3,241

固定資産

402

659

有利子負債合計

66

-

*単位:百万円

*単位:百万円

 

24年3月末の総資産は前期末比2億71万円増の32億41百万円。資産サイドでは、売上債権、敷金及び保証金などが主な増加要因となり、営業投資有価証券、現預金などが主な減少要因となった。営業投資有価証券の減少はベンチャーキャピタル事業において株式を取得した一方で、営業投資有価証券評価損を計上したためである。負債・純資産サイドでは、当期純利益の計上に伴う利益剰余金、未払法人税等などが主な増加要因となり、未払金、1年内返済予定の長期借入金などが主な減少要因となった。総資産の約80%を流動資産が占める等、資産の流動性が高い。24年3月末の自己資本比率は、67.1%と前期末から7.6ポイント上昇した。
なお、ベンチャーキャピタル事業からの投資額が、営業投資有価証券として表示される。基本的に投資先が未上場会社の場合は取得原価、上場会社の場合は時価により評価される。また、ベンチャーキャピタルの出資持分のうち、外部出資者に帰属する部分が非支配株主持分として計上される。

 

キャッシュ・フロー

 

23/3期

24/3期

前期比

営業キャッシュ・フロー

-35

179

+214

-

投資キャッシュ・フロー

-90

-293

-203

-

フリー・キャッシュ・フロー

-125

-114

+11

-

財務キャッシュ・フロー

153

24

-128

-83.8%

現金及び現金同等物の当期末残高

1,745

1,655

-89

-5.1%

*単位:百万円

 

*単位:百万円

 

営業投資有価証券の減少、法人税等の還付額の計上などにより営業CFがプラスに転じた。敷金及び保証金の差入による支出の増加などにより、投資CFのマイナスが拡大したものの、フリーCFのマイナスは縮小した。その他、非支配株主からの払込みによる収入が減少したことなどにより、財務CFのプラスが縮小した。以上により、24/3期末のキャッシュポジションは、前期比5.1%減少した。

 

(4)親子上場の解消

同社は2024年3月11日付で株式会社ウィルグループとの資本関係及び親子上場の解消を行った。これにより、上場時からのガバナンスの課題であった親子上場が解消された。新しい経営体制となったウィルグループは、保有株式1,925,400株を0株にする売出し及び第三者譲渡を実行した。

 

【売出しの概要】

(同社資料より)

 

ウィルグループとは資本関係以外の相乗効果は低かったが、新規株主であるVCや事業会社とは業務提携による事業シナジー創出が期待できる見込みである。

(同社資料より)

 

なお、今回の売出により2023年9月30日時点で29.5%であった個人投資家比率が、2024年3月31日時点には64.4%まで上昇した。また、これにより浮動株比率が改善し、2023年9月30日時点の36.3%から2024年3月31日時点には65.6%まで上昇した。

 

3.2025年3月期業績予想

(1)連結業績

 

24/3期

構成比

25/3期

構成比

前期比

売上高

3,416

100.0%

4,100

100.0%

+20.0%

営業利益

423

12.4%

450

11.0%

+6.3%

経常利益

428

12.5%

450

11.0%

+5.0%

親会社株主に帰属

する当期純利益

385

11.3%

310

7.6%

-19.7%

*単位:百万円

 

前期比20.0%の増収、同6.3%の営業増益
25/3期の会社計画は、売上高が前期比20.0%増の41億円、営業利益が同6.3%増の4億50百万円の予想。同社グループを取り巻く国内のスタートアップ企業の事業環境には改善の兆しが出ている。同社の保有する「STARTUP DB」の集計では、2024年1月から3月の3ヶ月間の資金調達額は速報値ベースで前年比約10%減となっている。今後、資金調達に伴う登記情報の更新が進めば、前期を若干上回る見込みであり、資金調達額は回復基調にあるといえる。また、ここ1~2年採用活動を停止していた既存大型顧客の複数社が採用活動を積極化しており、同社への支援ニーズが高まっている状況にある。この2点から、同社では、タレントエージェンシーサービスを中心とする同社グループの事業環境は、好転しつつあるものと判断している。
こうした中、売上面では、経営資源をタレントエージェンシーサービスに集中し、オープンイノベーションとのシナジーを創出する。従来施策を今年度も継続し、Pre-IPOの新規顧客開拓と人材採用・育成を推進する。また、利益面では、本社移転に伴う一時的な費用を約1.8億円計上するものの増益となる見込みである。一時費用を除けば、中期業績目標で掲げた営業利益率15%を維持する水準となる。
また、期末の従業員数は前期末比56名増の250名を予定。タレントエージェンシーに自社採用担当チームを組成するとともに、麻布台ヒルズへのオフィス移転により採用力向上を見込む。加えて、今期末の従業員数には含まれないものの、2025年3月卒の新卒採用にも積極的に取り組む方針である。

 

営業利益の増減要因

本社移転に伴い一時的にかかる費用を除けば、中期業績目標で掲げた営業利益率15%となる見通しである。

 

(2)25/3期の施策

◎重点投資ポイント
中核事業のタレントエージェンシーが業界の圧倒的No.1であり続けるための投資を実行する。25/3期は人材と環境への投資を優先するものの、今後も様々な投資策を検討していく方針である。タレントエージェンシーの売上と利益の持続的な成長を達成するために、人材ではヒューマンキャピタリストの採用と育成に注力する他、人的資本経営フレームワークに基づく成長を遂げる。また、環境では急成長に伴い収容人数がギリギリの状態となったことにより、移転を通じて起業家・VCが集う魅力的なオフィスを整備する。

(同社資料より)

 

◎重点領域(継続)
◆ヒトの支援領域にリソースを集中投下
政府のスタートアップ支援に関する各種施策に基づき、ヒトの支援領域にリソースを集中投下する。特に、Pre-IPOのスタートアップが人材支援の中心となる。上場後も起業家・経営陣との関係を維持し、既存支援先上場後も幹部人材の採用ニーズを獲得しPost-IPO領域への拡充も図る。Pre-IPOスタートアップ領域についてはより顧客層を広げて支援を行う。また、上場後に同社との関係が希薄となった企業から、再度取引強化の依頼を受けるケースが増加しており、新ブランドの立ち上げでは、子会社であるエグゼクティブ領域特化の「シングレス」が着実に業績へ寄与している。

(同社資料より)

 

◎重点施策
◆Pre-IPOスタート顧客の顧客開拓(継続)
起業家とともに歩むPre-IPO時の人材支援が、将来の大型求人獲得の可能性を秘めている。顧客開拓ペースについては同社の人材採用ペースとのバランスを加味する。同社は、これまでPre-IPOフェーズからスタートアップ企業と起業家の志を人材面で支援してきた。最近では、同社が支援した人材が経営幹部に登用されるケースが増えており、IPO後のより高い成長のために非公開求人を含む幹部人材を同社が支援するケースも増えている。将来は、TOPIX500に入る成長企業の最大のHRパートナーとなるべく、顧客基盤の強化を図る。

 

(同社資料より)

 

◆人材育成の強化(継続)
スタートアップは採用基準が高く難易度も高い。そのため求職者対応及び求人企業担当の両方を担うヒューマンキャピタリストの人材育成が最重要課題となっている。市況やトレンドの変化により、経営戦略の変更等も含めた採用活動が激しく変化する環境となっている。また、担当するヒューマンキャピタリストの実力の差が、実績や顧客満足度等に影響してしまうケースが増加している。こうした環境下、同社は勉強会と進化塾を開催し、起業家や有識者が来社することで、ヒューマンキャピタリストに対し、スタートアップ企業の求人に関する基本情報に加え、経営戦略などをインプットできる機会を提供している。更に、活躍する人材を積極的にマネジメントに登用し、転職候補者だけでなく起業家・VCとの面談の場に同席(OJT)させている。一時的に生産性は低下するものの、ヒューマンキャピタリストの育成に効果が出始めている模様である。

 

◎オフィス移転
人員増により現オフィスの収容人数をオーバーする見込みとなった。また、起業家とVCが頻繁に来社するワンフロアの環境の整備も必要となっている。そのため、同社は今秋に麻布台ヒルズへ移転する予定である。面積と賃料がともに約2倍となるものの、採用力向上(ブランディング)、VCとの連携強化、起業家・経営陣が毎日訪れる環境整備などの効果が期待される。なお、オフィス転移に伴い、二重家賃4ヶ月分、減価償却費等約55百万円、消耗品・引越し費用等で合計1.8億円の一時的な費用の計上が予定されている。

 

◎新経営体制
副社長に恒田有希子氏が就任することとなった。恒田副社長は、既存収益事業を管掌し、スタートアップ企業向け人材支援におけるリーディングカンパニーとしての立ち位置を確固たるものにするとともに、オープンイノベーションとのシナジー創出により高い成長を目指す役割を担う。なお、志水社長は、新しく株主となった事業会社やVCとの提携強化や、今後株主になり得る事業会社等とのスタートアップ・エコシステムの最大化に加え、人材領域をブーストさせる新規事業・業務提携等の推進の役割を担う。

 

4.中期業績目標

中期業績目標は、ローリングを行わず、26/3期に連結売上高50億円超を目指す方針(変更なし)である。25/3期は、オフィス移転に伴う一時費用が発生する予定である。

 

5.今後の注目点

24/3期決算は、前期比13.9%の増収、同27.6%の営業減益となった。一見すると厳しい決算に見えるものの、売上面では、新規顧客開拓、子会社「シングレス」設立、上場後の関係が希薄だった大型顧客との取引再開などタレントエージェンシーの施策が奏功し、資金調達市場が悪化する中でも、採用ニーズを維持した企業のニーズを捉えることができ会社計画を上回った。また、利益面でも、営業投資有価証券の評価損や本社移転に伴う加速償却等の計上により営業利益が減少したものの、期初計画と修正計画をともに大きく上回る結果となった。同社が重点的に推進してきたタレントエージェンシーにおける施策の成果と言えよう。続く25/3期は、前期比20.0%の増収、同6.3%の営業増益の会社計画となった。売上面では、経営資源をタレントエージェンシーに集中し、オープンイノベーションとのシナジーを創出する。利益面では、本社移転に伴う一時的な費用を約1.8億円計上することが利益の押し下げ要因となるものの、一時費用を除けば中期業績目標で掲げた営業利益率15%を維持する水準となる見込みである。同社グループを取り巻く国内のスタートアップ企業の事業環境には改善の兆しが出ている。資金調達額が回復基調にあることに加え、ここ1~2年採用活動を停止していた既存大型顧客の複数社が採用活動を積極化し、同社への支援ニーズが高まっている模様である。こうした環境下、同社では今年度においても継続してPre-IPOの新規顧客開拓と人材採用・育成を推進する方針である。外部環境が好転する中、重点施策の成果により今後成長率が高まってくるのか注目される。来期の中期業績目標の達成に向けどこまで今期に貯金作れるのか、上期のスタートダッシュに期待したい。
また、同社は3月11日付で株式会社ウィルグループとの資本関係及び親子上場の解消を行った。ウィルグループとは資本関係以外の相乗効果は低かったが、新規株主であるVCや事業会社とは業務提携による事業シナジーの創出が期待できそうである。中でも、新規株主のエムスリー社とはスタートアップの起業家・経営陣向けの未病・予防医療で協業する他、エムスリー社が投資するスタートアップへの人材支援強化と情報連携を実施する予定である。加えて、ストライク社とは、スタートアップM&A案件の創出によるエコシステムの推進や STARTUP DBでのソーシングや共同イベントの開催が予定されている。これら新規株主と今後どの様な事業シナジーが創出されるのか、今から楽しみである。新規株主との業務提携の成果にも注目したい。

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査等委員会設置会社

取締役

9名、うち社外5名

監査等委員

3名、うち社外3名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2023年6月19日

 

<基本的な考え方>
当社は、「for Startups」という経営ビジョンのもと、ユーザー、クライアント、株主、従業員、取引先、社会等のステークホルダーに対する責任を果たし、全てのステークホルダーからの信頼を獲得することを基本的な考え方としております。当該基本的な考え方のもと、経営のさらなる効率化と透明性の向上、業務執行の監督機能の強化等のコーポレート・ガバナンスの充実を図り、企業価値を安定的かつ継続的に向上に努めていく方針であります。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則を全て実施しております。

 

 

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