ブリッジレポート:(142A)ジンジブ 2025年3月期決算
![]() 佐々木 満秀 社長 | 株式会社ジンジブ(142A) |
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企業情報
市場 | 東証グロース市場 |
業種 | サービス業 |
代表取締役社長 | 佐々木 満秀 |
所在地 | 大阪府大阪市中央区南本町2-6-12 サンマリオンタワー14階 |
決算月 | 3月 |
HP |
株式情報
株価 | 発行済株式数(期末) | 時価総額 | ROE(実) | 売買単位 | |
585円 | 2,902,600株 | 1,698百万円 | -47.3% | 100株 | |
DPS(予) | 配当利回り(予) | EPS(予) | PER(予) | BPS(実) | PBR(実) |
0.00円 | - | 32.08円 | 18.2倍 | 134.32円 | 4.4倍 |
*株価は7/3終値。各数値は2025年3月期決算短信より。
業績推移
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 | EPS | DPS |
24年3月(実) | 2,082 | 272 | 253 | 141 | 65.23 | 0.00 |
25年3月(実) | 2,400 | 62 | 58 | -184 | -63.69 | 0.00 |
26年3月(予) | 2,818 | 85 | 79 | 93 | 32.08 | 0.00 |
*単位:百万円。予想は会社側予想。
株式会社ジンジブの会社概要、業績動向、佐々木社長へのインタビューなどをお伝えします。
目次
今回のポイント
1.会社概要
2.中期経営計画
3.2025年3月期決算概要
4.2026年3月期業績予想
5.佐々木社長に聞く
6.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
今回のポイント
- 深刻化する若手人材不足という日本社会の社会課題解決に貢献すべく、高校生に特化した新卒採用支援事業、高卒社会人の教育・転職支援サービス事業及び人材の育成・研修サービス等教育事業を展開。高卒就職というニッチ市場へ特化したほぼ唯一の企業であり、全国の高校との強いネットワークが競争優位性の源泉である。
- 25年3月期の売上高は前期比15.2%増の24億円。掲載売上については、掲載数が伸長。掲載売上以外のオプション売上は、特に高校生向け大規模合同企業説明会や企業の採用を目的としたSNS運用代行等が好調に推移した。営業利益は同77.0%減の62百万円。増収に伴い売上総利益も同16.3%増加したが、積極的な人材採用に伴う人件費や広告投資などによる販管費の増加を吸収できなかった。
- 26年3月期は増収増益を予想。売上高は前期比17.4%増の28億18百万円、営業利益は同35.9%増の85百万円を見込む。中期経営計画に掲げている5つの成長戦略「紹介獲得件数の向上」「営業効率の向上」「全社生産性の向上」「付加価値の向上」「学校への普及促進」を着実に実行していく。
- 28年3月期を最終年度とする3ヵ年の中期経営計画では、参入障壁が高く、今後の成長が見込まれる「ブルーオーシャン」の高卒求人広告市場において、自社の競争優位性をベースに、上記の5つの成長戦略により収益及び企業価値拡大を図る考えだ。生産性向上を通じた労働集約型からの脱却により、「高卒第1新卒市場の着実な成長」を推進し、28年3月期「売上高48.1億円、営業利益率22.0%」を目指す。
- 佐々木 満秀社長に、同社の目指す姿、競争優位性、成長戦略、成長実現の課題、株主・投資家へのメッセージを伺った。「私は社会のためにこの事業を始めました。明るい未来づくりに貢献することを当社の根底としています。ですので、あまり目先の収益ばかりにフォーカスすると、同じ目線での挑戦が難しくなってしまうと思っています。ただ、私自身は、決して小さく収まることはないと決めている人間です。今は売上高、時価総額ともまだまだの小さな上場企業ですが、グロース市場の上場維持基準の100億円といったレベルで戦おうとは一切思っておらず、それをはるかに超えた水準を目指して必ずや実現したいと思っています。当社の想いをご理解くださり、長い目で応援していただける投資家の方、株主の方に是非当社の挑戦を長い目で見守っていただきたいと思います。」とのことだ。
- 超大企業を含め多数のプレーヤーが存在する大卒求人広告市場が「レッドオーシャン」であるのに対し、ニッチで制約が多い高卒求人広告市場は参入障壁が高く「ブルーオーシャン」であり、大卒求人広告市場とは対極に位置し、黎明期から成長期に向かう有望なマーケットであると同社では考えている。ただ、インタビューの中で佐々木社長が言及しているように、完全な競争優位性を構築しておかないと、せっかくフロントランナーとして走ってきたのに、マーケットが広がったときに大手企業が参入してきて追い抜かれることになりかねない。その競争優位性が、「リアルでの学校現場との関係構築」による全国の高校とのネットワークである。もちろんまだまだネットワーク拡大の余地は大きい。高校・高校生向けサービスのブラッシュアップなどにより、「28年3月期 ジョブドラフトTeacher導入校数2,700校(25年3月期801校)、ジョブドラフトCareer導入校数1,800校(同692校)」という目標を前倒しで達成できるか、そのスピード感に注目していきたい。
1.会社概要
深刻化する若手人材不足という日本社会の社会課題解決に貢献すべく、高校生に特化した新卒採用支援事業、高卒社会人の教育・転職支援サービス事業及びDX人材の育成・研修サービス等教育事業を展開している。高卒就職というニッチ市場へ特化したほぼ唯一の企業であり、全国の高校との強いネットワークが競争優位性の源泉である。

【1-1上場までの沿革】
佐々木満秀氏(現株式会社ジンジブ 代表取締役社長)は、高校卒業後、個人事業としての運送業や、優れた営業実績を残した求人広告会社での就業など経て、1998年、携帯電話業界に特化したプロモーション会社、株式会社ピーアンドエフを創業した。「倒産しない会社を作りたい」というモチベーションの下、同社を財務的に超優良企業に育て上げ、金銭面でも十分な余裕を得た状態に経営を続けてきたが、佐々木氏自身は猛烈に働き詰めの時期に体調を壊してしまう。これをきっかけに、これからの人生をどうすべきかを見つめ直した結果、幸いにも体調が回復した2013年、「お金だけが幸せではない。社会に対して残りの人生を使おう」と決意する。
どの領域で社会に貢献するべきかを考えた佐々木氏において最も関心の高かったのが日本の少子高齢化・人口減少問題であった。自身も高卒である佐々木氏は、自分の高校卒業時から30年近くたっているにもかかわらず、「1人1社の応募」「学校斡旋による就活」「情報はハローワークの求人票のみ」といった閉鎖的な就活環境が一切変わっていないことを知り、愕然とする。そこで、高校生の可能性を花開かせ希望が持てる社会を創ることこそが少子高齢化・人口減少問題解決の一助となると考え、その変革に挑戦することを決意。2015年、高校生のための新卒求人サイト「ジョブドラフトNavi」を立ち上げ、高校生のための新卒採用支援事業をスタートさせた。これまでにない独自サービスの提供により求人企業及び高校双方の需要を着実に取り入れ収益が拡大。2024年3月、東証グロース市場に上場した。
【1-2 パーパス】
以下のパーパス、ビジョンの下、高校生と中小企業の出逢いを創出することで、将来に不安の大きい若者や中小企業にとって夢や希望を与えていくことを目指している。また、就職活動支援にとどまらず、これからを生きる人の夢を増やすという視点で、新規事業も拡大していく考えだ。
パーパス | これからを生きる人の夢を増やす
私たちは、若者をはじめとするこれからを生きていく人々にさまざまなチャンスを提供します。 そして、それらの人々の可能性の芽をつぶさない社会づくりのために存在しています。 頑張る人が評価され、仕事や人生に夢が持てる世界の実現を目指します。 |
ビジョン | 若者に希望を与えるNo.1企業
高卒新卒でのファーストキャリアから始まるご縁を大切に、仕事はもちろんのこと、結婚、すまい、お金のことなど、人生のすべてのシーンに寄り添い希望を与える、パートナーになっていきます。 |

(同社資料より)
また、社員の人間力向上のために、行動規範として、笑顔・自主的な行動力・素直・正直・誠実など25の項目からなる「人間力25」を掲げている。
01 | 笑顔 | 素敵な笑顔で対応すること。それによって得られるのは「笑顔」 |
02 | 自主的な行動力 | 自ら主体的に行動すること。それによって得られるのは「リーダーシップ力」 |
03 | 素直 | 素直に受け止めること。それによって得られるのは「成長」 |
04 | 正直 | 正直に伝えること。それによって得られるのは「信用」 |
05 | 誠実 | 誠実に対応すること。それによって得られるのは「信用」 |
(同社HPより一部抜粋)
【1-3 事業環境】
(1)高卒求人市場の現状
①高卒求人市場
高卒の求人倍率は2011年以降上昇傾向が続いている。25年3月卒業予定者の求人倍率は3.91倍と、大卒求人倍率1.66倍(26年3月卒業予定者)を大きく上回った。25年3月卒業者では4.1倍とさらに上昇。高卒就活市場の採用支援ニーズは着実に拡大している。

(同社資料より)
②就職活動の制度・仕組に課題
両者の就職活動に関する制度や仕組みは大きく異なり、高卒は大卒と比較し、制約が多いのが現状である。
例えば、大卒の就活ルールは、厚生労働省等が定めてはいるものの、厳格に守られているわけではないのに対し、高卒においては、「応募時の学校内選考を経た1人1社制(生徒1人は1社にしか応募できない)」「7月~9月の短期間で厳密なスケジュール」「ハローワークへ申し込みする文字情報のみの求人票が主な情報源」「企業への直接連絡の禁止」といった、各都道府県の行政(文部科学省・厚生労働省)、主要経済団体、学校組織の3者間で結ばれた高校生の就職活動についてのルール「三者協定」(厚生労働省各都道府県労働局発布の採用活動ガイドライン)が厳格に守られ続けている。
就活時期に関しても、大卒では早い学生では大学1年生からインターンを開始するのに対し、高卒の就活の場合は、高校3年生の7月から本格化するため、余裕をもって自身の将来を決めることが難しい。
9割の大学が授業に取り入れ、大卒では現在では一般的となっているキャリア教育についても、多くの高校で計画はされているものの、大学進学や就職など、卒業後の進路選択に関する指導に偏る傾向があり、社会の事を学ぶキャリア教育になっていないほか、高卒の場合はインターンの機会も少なく、社会に出た後の自身の姿を想像できる環境は不十分である。3年内の離職率が高卒は38.4%と、大卒の34.9%を上回っている(特に1年目離職率は、高卒16.7%、大卒12.3%と、超早期の離職に差が発生)のも、こうしたことが一因と考えられる。

(同社資料より)
③社会課題解決の必要性
上記のような高卒就活の仕組み・制度のため、職業体験の不足、乏しい応募先企業の選択肢、就業後のキャリア形成機会の不足などから、高卒が自身の職業人生に希望を持ち、18歳という若さの可能性を十分に発揮するのは難しい環境である。
一方で、人口減少に伴い、労働力確保が一段と困難になることが予想されているなか、高卒人材の活躍は労働人口問題の解決の一助となると考えられている。内閣総理大臣の諮問組織である規制改革推進会議が2025年5月にまとめた答申では、「高卒就職者向けの求人情報の一般公開」や「就職活動開始時期の1~2カ月の前倒し」等を検討することを盛り込んでおり、求職者と企業のミスマッチ解消、より良いキャリアの実現に向け、生徒が十分な情報を得て、企業研究などに割く時間を増やして就職先を主体的に判断できる環境を整備する必要性を訴えている。
④市場規模と今後
現在の市場規模は、大卒が約45万人に対し、高卒は約20万人と半分以下のニッチな市場であるが、同社では、高校生の進路選択が進学に偏重しており様々な進路の選択肢が平等に取り扱われていないこと、その中で就職を選択しても三者協定が厳格適用されることがニッチである要因と考えている。
現在の大卒就活市場規模は約1,460億円、就職者数1人当たりでは約32万円。同社では、今後高卒採用支援がより効率化・活性化し、現在の大卒採用支援の1人当たり市場規模約32万円と同等となった場合、高卒就活支援市場規模は646億円強に拡大すると見ている。
また、超大企業を含め多数のプレーヤーが存在する大卒就活市場が「レッドオーシャン」であるのに対し、ニッチで制約が多い高卒就活市場は参入障壁が高く「ブルーオーシャン」であると考えている。
【1-4 事業内容】
深刻化する若手人材不足という日本社会の社会課題解決に貢献すべく、高校生に特化した新卒採用支援事業、高卒社会人の教育・転職支援サービス事業及び人材の育成・研修サービス等教育事業を展開している。
(1)事業領域
高卒人材採用支援事業の単一セグメント。その中で、採用領域として「採用支援サービス」、「企画制作サービス」、「代行支援サービス」、教育領域として「教育研修サービス」の区分を設け、主要提供サービスについて開示している。2025年3月期の各領域・サービスの売上高構成は以下のとおりである。

(同社資料より)
①採用支援サービス
企業の高校新卒採用をサポートするサービス。主なサービスは、「ジョブドラフトNavi」「おしごとフェア/ジョブドラフトFes/先生Fes」「ジョブドラフトSurvey」。
◎高校生の就職を支援する就職求人サイト 「ジョブドラフトNavi」
文字情報のみである「求人票」に記載されている情報だけでなく、高校生が知りたい会社の雰囲気や1日の仕事の流れ、先輩社員インタビューなどを写真や動画を用いて紹介する、高校生向け求人情報メディア。
高校生は、スマートフォンやパソコンなどからいつでも情報にアクセスでき、求人企業の特徴や職種、就業地域など自分が大切にしたい軸で、全国の求人情報を調べることが可能である。簡単な質問に答えるだけでできる適職診断を使って自分に向いている職業を見つけることも可能。
掲載社数は2025年3月末で2,056社。これに対し、ハローワーク経由で高卒求人(24/3卒生)を申し込んだ事業所数実績は87,555ヶ所(23年7月時点)であり、掲載企業拡大の余地は極めて大きい。
企業は、従来の高校訪問や求人票発送とした採用活動に加え、「ジョブドラフトNavi」上で高校生に直接自社求人の魅力をアピールすることができる。「ジョブドラフトNavi」の掲載企業の内、サポートプランでの掲載企業においては、同社のカスタマーサポート部門による顧客フォローアップを行い、採用アクションの進捗確認を目的とした定期ミーティングの開催、時期別アクション、高校・高校生への対応方法などの高校新卒採用ノウハウの提供、高校別の就職関連情報の提供、企業求人票の添削アドバイス、高校教員を招いたカンファレンスセミナーの開催等を通じて、高校新卒採用の可能性を高めるためのサービスを提供している。

(同社資料より)
◎高校に届く紙の求人票をデジタル化するシステム「ジョブドラフトTeacher」
「ジョブドラフトNavi」と連携して利用可能。「ジョブドラフトTeacher」上で高校教員のアカウントと生徒の個人アカウントを紐づけ、高校に届く紙ベースの求人票をスキャンしデジタル保存することで、高校教員はマイページから、生徒は「ジョブドラフトNavi」から、高校に届いた求人情報を閲覧・検索することができる。高校教員にとっては進路指導の作業の減少に繋がるだけでなく、生徒にいち早く会社の求人情報を見せることができる。生徒にとっては自身の興味関心をもとに企業の検索が可能になり、いつでもどこでも情報収集ができるため、保護者へもスムーズに相談することが可能になる。同社にとっては、対象となる高校数を更に拡大するための有用なツールである。
◎高校生のための職業体験・就職イベント運営 「おしごとフェア/ジョブドラフトFes/先生Fes」
企業が採用活動として行っている1校1校への高校訪問や求人票発送は、リソース負担も大きく、リソースを確保できない企業にとって不利な状況が生まれる。「おしごとフェア」「ジョブドラフトFes」「先生Fes」に参画することで、企業の規模に関係なく、1回のイベントで多くの高校生・高校教員に対して自社求人の魅力を直接アピールすることが可能である。出展企業から参画料を受領しイベント運営を行っている。
おしごとフェア | 高校生のための大規模職業体験イベント。求人情報解禁前の5月・6月に開催する。企業ブースでの仕事体験を通じた仕事理解・社会理解の促進、7月からの就職活動へのモチベーションの向上につなげる。高校生は高校教員の引率での参加が多く、企業にとっては高校教員との関係性構築が可能。 |
ジョブドラフトFes | 高校生と企業が直接交流できる高校生向け合同企業説明会。求人情報解禁後の7月・9月に開催。求人票だけでは得られない会社の雰囲気、働く人や情報を知ることができるため、業界・企業理解や就職活動へのモチベーションの向上、就職希望先の企業の発見、進路指導教員の負担軽減、就職活動における高校生の自己選択意識の醸成などを支援する。 |
先生Fes | 高校教員と企業が直接交流できる職業体験イベント。2月に開催。高校生に対する進路指導の精度向上のため、進路指導を行う高校教員が、実際の仕事体験を通じて職業理解を深めるイベント。 |

(同社資料より)
◎入社後のミスマッチ防止をサポートする 「ジョブドラフトSurvey」
受検者の特性を明らかにする適性検査アプリと、面接を体系的に進めるためのマニュアルを企業向けに提供している。適性検査では、性格特性と仕事における優先軸を見える化することで、個々の企業の採用人物像に沿った人材の見極めを可能にする。面接マニュアルを提供することで、面接官によってバラバラになりがちな面接内容を体系化し、より適切な人材見極めが可能になる。
②企画制作サービス
企業の高校新卒採用における求人ナビ原稿作成、DTP制作(採用パンフレット制作・イベントブース装飾制作)、Web制作(企業紹介動画制作・採用ホームページ制作)を行い、「ジョブドラフトNavi」掲載企業の魅力に関する訴求力を強化することで、企業の採用活動をサポートしている。
◎パンフレット制作
「ジョブドラフトNavi」の掲載内容を基に、高校新卒採用専門のパンフレットの制作を行っている。求人票発送に同封する、高校訪問時の説明資料として活用することで、自社求人の魅力をよりわかりやすくアピールすることが可能になる。
◎企業紹介動画制作
アニメーションや、撮影映像を元にした動画の制作を行っている。求人票や「ジョブドラフトNavi」だけでは伝わらない自社求人の魅力を動画にまとめ、自社のホームページやSNSにアップロードすること、及び高校訪問時に高校教員に視聴してもらうことで、自社求人の魅力をよりわかりやすくアピールすることが可能。
③代行支援サービス
企業は従来、進路指導を担当する高校教員から自社求人を高校生に紹介してもらうために、高校を訪問して進路指導を担当する高校教員に自社求人の紹介をしたり、自社求人の求人票を高校へ発送したりしている。
同社では、企業の高校新卒採用における活動の代行を行い、「ジョブドラフトNavi」掲載企業の採用活動の効率化・企業負担の軽減をサポートしている。高卒採用の支援にとどまらず、中小企業の人事にまつわる業務をサポートするサービス「人事部パック」の提供も開始した。
◎高校訪問代行サービス
企業人事担当者に代わって、訪問高校リストの作成から実際の高校訪問までを代行し、企業の魅力アピールを行っている。リソースが不足していても、より多くの高校に直接自社求人をアピールし高校教員との関係を持つことが可能になる。
◎求人票発送代行サービス
企業人事担当者に代わって、発送リストの作成から実際の求人票発送までを代行している。企業内にリソースがなくとも、より多くの高校に求人票を発送し自社求人をアピールすることが可能になる。
◎人事部パック
これまでの「高卒採用」の支援にとどまらず、「採用戦略策定」「教育」「定着」「評価」「福利厚生」など、中小企業の「人的資本経営」を支える人事にまつわる業務のサポートをする月額サービス。プランが4段階あり、それぞれに応じた業務提供を行う。高卒・大卒・中途採用の採用アドバイスや運用、教育体系や研修動画の提供、評価制度の策定、福利厚生の活用、従業員サーベイなどを提供する。
◎その他
採用活動の効率化・企業負担の軽減の側面から、応募受付窓口代行サービス、「ジョブドラフトFes」用ブースの当日運営代行サービス、採用活動としてのTikTok運用代行サービスを行っている。
④教育研修サービス
高校生及び高卒社会人に向けた教育研修プログラムを提供している。サービス導入希望の企業又は一部の高校から委託費を受領している。
◎高校向けキャリア教育支援 「ジョブドラフトCareer」
高校1年~3年生向けに、自己肯定感の醸成、自己理解・社会理解・仕事理解を育むキャリア教育コンテンツを提供している。
進学や就職だけに捉われず、将来を見据えた目的意識を持った進路選択を実現してもらうために、将来や自分の興味関心を自ら主体的に考え気付く「きっかけ」を創り出す。高校から委託を受けて、体系的なキャリア教育の提供や個別相談等の就職サポート等、総合的に支援している。原則、年間5コマ(講師1名)かつ「ジョブドラフトFes」に高校教員引率で卒業学年度生が参加する場合は無料で提供している。同社にとっては、対象となる高校数を更に拡大するための有用なツールである。
◎企業向け新人育成定着支援研修 「ルーキーズクラブ」
高校新卒に特化した、企業向け新人育成集合研修+定着支援プログラム。受講者の社会人マインドやスキルの成長を促し、離職防止、定着を支援することで企業との関係を強化すること、社外同期のつながりを通じた安心できる場づくりを目的としている。
高校新卒が陥りやすい躓きポイントを時期に応じて押さえたアウトプット中心型の集合研修を1年間行うとともに、チームに1名のファシリテーターが付き研修期間中サポートを行う。 企業は、受講者の現在のメンタルサーベイや、ファシリテーターが吸い上げた今の状況や、強み・弱みに関するレポートを通じて、離職率の高い1年目において人事担当者や上司の感覚だけに頼らない状況把握が可能である。
③社会人向けデジタルマーケティング人材育成研修「DMU」
「DMU」(Digital Marketing Unit)は、オンライン完結型の「デジタルマーケティング研修プログラム」。未経験からでもマーケティングに関する専門スキルを身に着けることができる。
そのほか、高卒第二新卒・既卒生の就職・転職を支援する「ジョブドラフトNext」の提供も行っている。若手人材不足に悩む企業においては、高校新卒や大学新卒以外の1つの採用ルートとなり、 若手人材不足の解消を実現することが可能となる。
(2)顧客企業・学校
顧客企業の業種は多岐にわたる。企業規模では、8割程度が構造的な人手不足の中、高卒人材への需要が高い中小企業である。ただ、25年3月期にはソフトバンク株式会社および一部の代理店が運営するソフトバンクショップおよびワイモバイルショップのクルーについて、2026年3月卒の高卒採用の支援を開始。大企業への広がりも見え始めている。
新規法人開拓にはウェブ広告などの資料請求に加え、全国の都市銀行・地方銀行・信用金庫や、中小企業を顧客に持つ金融機関以外の企業とのアライアンスにも注力している。
同社サービスを利用する企業のリピート率は約6割で、大半の企業が継続的に高卒人材採用において同社サービスを利用している。
学校は、サービス利用に関する意思決定の自由度が高い私立高校が多数ではあるが、高校向けキャリア教育支援 「ジョブドラフトCareer」が東京都のプログラムに選定されるなど、公立高校への実績も積み上がっている。学校提案のスタッフ増強などで、全国的な横展開を進めていく考えだ。
学校向けサービスは無料であることに加え、サービス内容の拡充が評価されている。2025年3月期の「ジョブドラフトTeacher」導入校数は801校、「ジョブドラフトCareer」の導入校数は692校。
(3)収益モデル
高校、高卒社会人に対しては基本無料でサービスを提供。「ジョブドラフトNavi」への掲載料、「ジョブドラフトFes」への参画料、各種素材の制作料などを企業から収受している(高校生及び高卒社会人に向けた教育研修プログラムに関しては、一部の高校から委託費を受領している)。

(同社資料より)
【1-5 特長・強み・競争優位性】
(1)高卒就職というニッチ市場へ特化したほぼ唯一の企業
高卒の就活支援を行っている企業は、上場企業では同社のみ。非上場では、1社が全国規模で展開しているが、求人件数は150~200社程度と、2,000社を上回る同社とは規模が圧倒的に異なる。他にはエリア限定で事業を行っている企業が複数存在するものの、高卒就職というニッチ市場に特化した、突出したリーディングカンパニーとしてのポジショニングを確立している。
こうしたポジショニング構築を可能にしたのは、企業・学校双方への手厚いサービス提供であるが、満足度の高いサービスを両者に継続的に提供するのは、決して容易ではない。同社の場合、創業時に掲げたパーパス・ビジョン実現に向けいち早く、かつ愚直に各種施策に取り組んできたことが、独自のポジショニング構築に結びついているといえるだろう。
(2)全国の高校との強いネットワーク
高卒就職市場と大卒就職市場の決定的な違いは、学校の存在である。高校生の就職活動には高校が必ず関与するため、採用検討企業が就職希望高校生へ自社の魅力を訴求するには高校との共同歩調が不可欠となる。
同社では、利用企業拡大のためには、高校ネットワークの構築が最も重要と考えており、「ジョブドラフトCareer」や「ジョブドラフトTeacher」を無料で提供している。2025年3月期には全国5,098校の4割強にあたる2,214校の高校と接触の機会を持つ。今後も各教育員会との関係構築なども含めた施策を実施し、さらなるネットワーク強化を図る。
(3)採用支援サービスと企画制作サービスの相乗効果
求人企業には、自社の魅力を高校生に訴求する方法への知見が乏しいケースも多い。そういった企業に対して、「ジョブドラフトNavi」掲載や「ジョブドラフトFes」参画といった採用支援サービスだけでなく、採用パンフレット・イベントブース装飾・企業紹介動画制作・採用ホームページなどの提供とともに、希望がある場合はカスタマーサクセス機能を通じて、幅広く高卒就活生に訴求するノウハウを提供している。その結果、採用活動に手応えがあれば、採用支援サービスのビジネス機会拡大にも連携する好循環システムを構築している。
2.中期経営計画
28年3月期を最終年度とする3ヵ年の中期経営計画が進行中である。
(1)市場分析
「1.会社概要 【1-3 事業環境】」で述べたように、現在の高卒就活市場は、大卒の半分以下のニッチな市場ではあるが、今後高卒採用支援がより効率化・活性化し、現在の大卒採用支援の1人当たり市場規模約32万円と同等となった場合、高卒就活支援市場規模は646億円強に拡大すると見ている。
また、超大企業を含め多数のプレーヤーが存在する大卒求人広告市場が「レッドオーシャン」であるのに対し、ニッチで制約が多い高卒求人広告市場は参入障壁が高く「ブルーオーシャン」であり、大卒求人広告市場とは対極に位置し、黎明期から成長期に向かう有望なマーケットであると同社では考えている。

(同社資料より)
(2)成長戦略
参入障壁が高く、今後の成長が見込まれる「ブルーオーシャン」の高卒求人広告市場において、自社の競争優位性をベースに、5つの成長戦略により収益及び企業価値拡大を図る考えだ。
成長戦略①~③に関しては、25年3月期に明確になった課題を解決するための方針を打ち出している。
成長戦略①:紹介獲得数の向上
(課題)
同社では、顧客企業の開拓において、金融機関などとのアライアンスを中心的な施策としており、新規提携先の拡大を図っている。
25年3月期は、新規提携の73%が証券会社および拠点外の地方銀行で占められていたが、証券会社の顧客企業では経験者採用が主流となり、新規提携数の拡大が顧客紹介数に直結していない。また、拠点外の地方銀行では支店訪問や勉強会が未実施の状況であるため、提携数の増加に応じた顧客紹介数の伸びを十分に実現できていない。
(方針)
①組織体制の強化 | 担当部署の人員を、2025年3月期末の5名 から 2026年3月期初で14名へ増員する。同時に、法人営業の幹部層を部署責任者として配置。この組織力強化により提携拡大への対応力を向上させる。 |
②提携先ごとの目標設定と重点施策の推進 | 過去の実績を基に、各金融機関ごとの来期目標を設定する。また、提携成果に応じて金融機関の棚卸を行い、優先して深耕すべきターゲットを特定する。さらに支店単位での認知拡大だけでなく、金融機関本部のビジネスマッチング担当部署に対して積極的な提案を行い、連携深化を図る。 |
③新規提携ターゲットの明確化 | 新規提携先からの成果最大化を図り、新規提携は同社拠点で対応可能なエリアに限定し、信用金庫や、企業顧客を多く抱えるサービス提供会社を主なターゲットとして開拓を進める。 |
成長戦略②:営業効率の向上
(課題)
企業に対する商談において、営業メンバーのキャリアステップが明確ではなく、マネジメント層が新人教育に想定以上の時間とリソースを割いている。また、訪問による営業活動は、時間効率が低く、これらが要因となって営業成果の低下を招いている。
(方針)
①Web商談チームの新設とキャリアステップの明確化 | 入社後の営業メンバーのキャリアステップを業務難易度に基づき再定義し、「テレアポチーム→Web商談チーム→フィールドセールスチーム(FS)」の3段階を設定する。これにより、明確な成長プロセスを提示し、営業メンバーのモチベーション向上を図る。 |
②Web商談専用トークスクリプトの導入 | Web商談に特化したトークスクリプトを作成し、経験の浅い営業メンバーでも一定のパフォーマンスを発揮できる環境を整備する。これにより新人教育の負担を軽減し業務の効率化を促進する。 |
③離職防止と受注率の向上 | 上記施策を通じて営業メンバーの離職を防止。また商談内容に応じてFSチームとWeb商談チームへ振り分けを行うことで、効率的に営業リソースを活用し、受注率の維持及び向上を目指す。 |
成長戦略③:全社生産性の向上
(課題)
売上高の拡大に向けた人員増加に伴い、教育コストが想定以上に増大。また、労働集約型の業務設計に依存しているため、利益率が停滞している。
(方針)
①AIシステムと外部業務委託の活用 | AIシステムや外部業務委託を積極的に活用し、正社員が顧客対応に専念できる時間を増やす。これにより、業務効率を向上させつつ、事務コストの抑制を目指す。 |
②Web商談チームの新設とテレアポ業務の外部委託化 | Web商談チームを新設し、テレアポ業務を原則として外部委託する。この仕組みにより、商談獲得成果に応じた柔軟なコストコントロールを行い、収益性向上を図る。 |
③委託ワーカーの活用によるエリア拡大 | 新たな支店を出店することなく、対象エリアにおいて現地で稼働する委託ワーカーを活用する。これにより、地方や支店のないエリアでの法人営業・金融機関営業が可能となり、エリアの拡大とコスト効率化を同時に実現する。 |
成長戦略④:付加価値の向上
短中期目標として、更なる単価向上を目指す。
*施策1:アップセル推進
ジョブドラフトNavi利用企業への企画制作・代行支援業務(オプション)の販売を強化する。
人事部パックの併売やフリープラン増加に伴うアップセルルートの確保など、ジョブドラフトNavi内における高付加価値・高単価プランへのアップセルを推進する。
人事部パックの販売促進・サービス提供体制の整備を進める。新たな人的リソースを確保する必要はなく、社内配置転換で対応可能である。
*施策2:媒体価値上昇
高校および高校生へのリーチ力を高め付加価値を向上させる。•
インターン分野へ新たに進出する。
掲載企業のバラエティ(多様性)確保のため、有料掲載とともに、媒体価値向上に繋がる企業のフリープラン(無料掲載)も進める。
成長戦略⑤:学校への普及促進
高校及び教師向けのサービス「ジョブドラフトTeacher」及び「ジョブドラフトCareer」の積極導入を進め、企業網構築に欠かせない学校への展開を継続して強化する。今後、「インターン」サービスを新規展開し、民間による高卒就活支援サービスの普及を狙う。
(3)数値目標
生産性向上を通じた労働集約型からの脱却により、「高卒第1新卒市場の着実な成長」を推進し、28年3月期「売上高48.1億円、営業利益率22.0%」を目指す。
計画策定当初は、「人員増加を進め、サービスエリアを拡大することで、事業拡大を実現する」方針であったが、労働集約型ビジネスモデルから脱却し、人員効率・営業効率を高めることで、利益水準を確保し、長期的視点での事業成長・投資対還元に繋がると考えたため「人員「生産性」を高め、サービスエリアを拡大することで、事業拡大を実現する」方針に転換した。
そのため、従業員の積極採用を一旦緩め、従業員の人員生産性やその他経費効率を向上させ、経費伸長率以上の売上伸長率を実現する方針へ転換した。26年3月期は、既存組織体制内での業務効率化を推進し、以降の成長及び収益性確保へと繋げる。

(主なKPI)
KPI | 25/3期(実績) | 28/3期(計画) | CAGR | |
拠点数 | 10 | 10 | - | |
従業員一人当たり売上高(百万円) | 12.9 | 20.9 | +17.5% | |
掲載社数(社) | 2,056 | 8,700 | +61.8% | |
月間平均紹介数(件) | 275 | 570 | +27.5% | |
新規商談月間平均数(件) | WEB | 0 | 665 | - |
| FS | 662 | 897 | +10.7% |
人事部パック期末稼働社数(社) | 46 | 539 | +127.1% | |
学校訪問数(※) | 43.4% | 50%超 | +4.8% | |
ジョブドラフトTeacher導入校数(校) | 801 | 2,700 | +49.9% | |
ジョブドラフトCareer導入校数(校) | 692 | 1,800 | +37.5% |
※学校訪問数は、全国5,098校に占める比率。CAGRはインベストメントブリッジが計算。
3.2025年3月期決算概要
【3-1業績概要】
| 24/3期 | 構成比 | 25/3期 | 構成比 | 前期比 | 予想比 |
売上収益 | 2,082 | 100.0% | 2,400 | 100.0% | +15.2% | +0.5% |
売上総利益 | 1,760 | 84.5% | 2,046 | 85.3% | +16.3% | - |
販管費 | 1,488 | 71.4% | 1,984 | 82.7% | +33.4% | - |
営業利益 | 272 | 13.1% | 62 | 2.6% | -77.0% | +658.6% |
経常利益 | 253 | 12.2% | 58 | 2.5% | -76.8% | - |
当期純利益 | 141 | 6.8% | -184 | - | - | - |
*単位:百万円。予想比は24年11月公表の業績予想に対する比率。
増収減益
売上高は前期比15.2%増の24億円。上期は、提携済金融機関等の深耕が進まず、金融機関等からの顧客紹介数が想定を下回った。加えて、成長のための積極的な人員採用を継続しているものの社員育成体制の整備が遅れ、新規受注率が低下。そのため、受注金額及び受注案件の役務提供に伴う売上高が伸び悩んだ。下期に入り、営業体制の見直し、金融機関対応の変更、社員育成の効果の発現により、受注状況は改善されている。掲載売上については、掲載数が伸長。掲載売上以外のオプション売上は、特に企業の採用を目的とした高校生向けの大規模合同企業説明会、SNS運用代行などが好調に推移した。
営業利益は同77.0%減の62百万円。増収に伴い売上総利益も同16.3%増加したが、積極的な人材採用に伴う人件費や広告投資などによる販管費の増加を吸収できなかった。
当期純利益は1億84百万円の損失。これは、24年11月の業績下方修正に伴い、監査法人との協議により将来の課税所得の見通しを慎重に再評価した結果、繰延税金資産の回収可能性が低下したとの判断に至り、繰延税金資産2億36百万円を取り崩すこととなったため。今後の中期経営計画の期間においては、今回同様の多額の費用計上がなされる可能性はないものと会社側は見込んでいる。
【売上高構成】
| 24/3期 | 構成比 | 25/3期 | 構成比 | 前期比 |
採用領域(掲載契約) | 745 | 35.8% | 811 | 33.8% | +9.0% |
採用領域(オプション) | 1,234 | 59.3% | 1,436 | 59.9% | +16.4% |
教育領域 | 86 | 4.1% | 132 | 5.5% | +53.7% |
その他 | 18 | 0.9% | 19 | 0.8% | +10% |
売上高合計 | 2,082 | 100.0% | 2,400 | 100.0% | +15.2% |
*単位:百万円
【3-3 財務状態とキャッシュ・フロー】
◎主要BS
| 24年3月末 | 25年3月末 | 増減 |
| 24年3月末 | 25年3月末 | 増減 |
流動資産 | 1,730 | 1,843 | +113 | 流動負債 | 1,386 | 1,339 | -47 |
現預金 | 1,554 | 1,593 | +39 | 短期借入金 | 89 | 187 | +98 |
売上債権 | 116 | 112 | -3 | 契約負債 | 1,002 | 918 | -84 |
前払費用 | 51 | 124 | +73 | 固定負債 | 306 | 361 | +54 |
固定資産 | 449 | 247 | -201 | 長期借入金 | 272 | 327 | +54 |
有形固定資産 | 91 | 83 | -8 | 負債合計 | 1,693 | 1,700 | +7 |
無形固定資産 | 47 | 38 | -8 | 純資産 | 486 | 389 | -96 |
投資その他の資産 | 309 | 125 | -184 | 利益剰余金 | -62 | -246 | -184 |
資産合計 | 2,179 | 2,090 | -88 | 負債純資産合計 | 2,179 | 2,090 | -88 |
*単位:百万円。
現預金、前払費用が増加した一方、投資その他の試算(繰延税金資産)の減少で資産合計は前期比88百万円減少の20億90百万円。純資産は同96百万円減少の3億89百万円。
自己資本比率は前期末から3.7ポイント低下し18.6%となった。
◎キャッシュ・フロー
| 24/3期 | 25/3期 | 増減 |
営業CF | 499 | -128 | -627 |
投資CF | -116 | -72 | +44 |
フリーCF | 382 | -200 | -583 |
財務CF | 26 | 240 | +213 |
現金同等物残高 | 1,554 | 1,593 | +39 |
*単位:百万円
税引前当期純利益の減少等で営業CF、フリーCFはマイナスに転じた。
キャッシュポジションは前期末同水準。
【3-4 トピックス】
①大手企業との取引を開始
ソフトバンク株式会社および一部の代理店が運営するソフトバンクショップおよびワイモバイルショップのクルーについて、2026年3月卒の高卒採用の支援を開始した。高校生向けの求人件数の割合が1%あまりの情報通信業でも、スマートフォンやテクノロジー面で活躍できる人材が不足している。ソフトバンクと連携し、 高校生の主体的な職業選択に向けて職種の幅を広げていく。
②高校とのキャリア教育に関する取り組み
高卒生のキャリア育成に関する高校との取り組みも実施している。
2024年9月~12月の3か月間、大同大学大同高等学校(愛知県)の1年生約40名を対象に、キャリア育成の特別授業を開催した。毎年約 100 名の就職希望者がいる大同高校では、今年度よりキャリア教育強化の方針を立てていた。その一環で、今回の特別授業では、愛知県の地元企業を中心に取材や職業体験を通して企業の魅力を 発見する探究をテーマに企画実施で支援した。3カ月を通して7社の地元の協力企業に職場見学や職業体験を実施し、協力企業に対して探究成果を「魅力アッププレゼン」と「SNS 用動画制作」として発表会を開催した。 2025年2月には振り返りの授業を実施した。
また、2025年1月~2月の3 日間、広島県立広島工業高等学校において、進路選択を控えた2 年生を対象としたキャリア育成の特別授業を開催した。この特別授業は、地域の製造・建設業の企業と高校生が直接交流し、企業の魅力や仕事内容を深く理解する ことを目的とするもの。最終日には高校生が主体となり、担当企業の魅力を発信するパネル展示とプレゼ ンテーションを実施した。高校生が実際に働く人や仕事に触れることで、業界理解や自己理解のきっかけを創り、次年度の就職活動に繋げていく。
4.2026年3月期業績予想
【業績予想】
| 25/3期 | 構成比 | 26/3期(予) | 構成比 | 前期比 |
売上収益 | 2,400 | 100.0% | 2,818 | 100.0% | +17.4% |
営業利益 | 62 | 2.6% | 85 | 3.0% | +35.9% |
経常利益 | 58 | 2.5% | 79 | 2.8% | +34.7% |
当期純利益 | -184 | - | 93 | 3.3% | - |
*単位:百万円。予想は会社側予想。
増収増益を予想
売上高は前期比17.4%増の28億18百万円、営業利益は同35.9%増の85百万円の予想。
「2.中期経営計画」で述べた5つの成長戦略「紹介獲得件数の向上」「営業効率の向上」「全社生産性の向上」「付加価値の向上」「学校への普及促進」を着実に実行していく。
5.佐々木社長に聞く
佐々木 満秀社長に、同社の目指す姿、競争優位性、成長戦略、成長実現の課題、株主・投資家へのメッセージを伺った。
Q:まず初めに、社長が考える御社の目指す姿についてお聞かせください。
少子高齢化・人口減少、なかでも労働人口の減少により日本の未来・将来は危機的な状況を想定せざるを得ません。私には子供、孫がいますが、この子達の未来が本当に心配です。
しかし、高卒の就活が自由化され、いままでは出会うこともなかったベンチャー企業や大企業で、IT、営業、マーケティングのような仕事に就くチャンスも生まれれば、希望を持って社会に飛び立つことができる。また、現在は働きながらでもインターネットを活用して学ぶことができる時代ですから、スキルアップすることも可能な時代です。高校を卒業して就職して7年働いた25歳ごろには、経済的な自立ができると、お金がないので結婚できないとか、子供を産めないといったことも無くなるのではないかと思います。
そして、若い人にも、様々な挑戦が可能で、将来に対し夢や希望を持つことができる、そんな社会創りに向けて先頭を切って走っていく会社にしたいと思っています。
Q:こうした考え方をどのようにして社員に浸透させているのですか。
パーパス、ビジョン、理念の浸透には永遠に語り続けることが必要です。ですので、当社では社員教育を非常に重視しています。
年間を通した教育体系の計画を立てて価値観についての教育を行っているほか、毎月の全体朝礼や定期的に行っている社長メッセージの動画配信など、様々な機会を通じて必ず、パーパス、ビジョン、理念について私の考えを伝えています。
教育という点では、次世代の経営者教育については、毎月1回私が講師を務めて経営層候補生に経営者になるための心構え、考え、行動などについて話をしています。幹部教育については、役員が毎月1回、幹部候補生に向けて研修を行っています。
Q:続いて御社の強みや特長、競争優位性についてお話しください。
完全な競争優位性を構築しておかないと、せっかくフロントランナーとして走ってきたのに、マーケットが広がったときに大手企業が参入してきて追い抜かれることになりかねません。ですので、当社では事業開始以来、他社ではできないことをどうやって作り上げるかに注力してきました。
それが「リアルでの学校現場との関係構築」です。高卒の就活は全ての局面をデジタルに置き換えるのは簡単ではありませんので、学校現場・先生とのネットワーク、高校生徒のリアルな繋がり、ここに時間とお金を投資し続けてきました。この点が当社の圧倒的な優位性であるとご理解ください。
現在も多くの高校との繋がりがありますが、まだまだ拡大していきます。
Q:そうした競争優位性を更に磨き上げるためには何が必要でしょうか
やはり社員の人間力の向上に尽きると思います。
当社には人としての魅力に溢れている社員が多数在籍しています。彼ら彼女らが働きやすく、様々な挑戦ができ、それをしっかりと評価してあげる環境を提供することによって人間力を向上させていきます。
そうした中で、高卒で採用した新入社員が活躍する成功事例を多く創り出すことで、当社の競争優位性はさらに強いものになると考えています。
Q:中期経営計画、成長戦略について伺います。社長が最も重要と考えているポイントはどこになりますか
やはり、当社の競争優位性である、全国規模での高校との関係構築を更に強化することが最も重要な成長戦略となります。
高校の先生は授業以外にも、部活・進学・就職と兼任し、大変多忙です。8割の生徒は大学や専門学校に進学するので、そちらに時間を割くことになりますから、就活に関しては行政、学校とも民間を活用することが絶対的に必要です。そうした中、当社では高校生や高校向けに「ジョブドラフトCareer」及び「ジョブドラフトTeacher」を提供しています。高校生・高校が民間を活用することで、これらのサービス導入件数が増えれば増えるほど、掲載企業も増加する、そして就職を希望する高校生の活用が増えるという流れを作り上げることで、他社にはまねのできない、成長を追求する道筋が出来上がります。
今後取り組みを始める、「インターン」サービスも、高校生・高校へのリーチ力向上に繋がるものと考えています。
Q:成長を実現するための課題は何でしょうか
現在200名強の従業員規模となりましたが、まだまだ中小企業からの脱皮の最中です。今後、300人の壁、500人の壁といったような経営、マネジメントにおける課題に向き合うことが想定されますので、全社的な更なる教育の強化が必要と考えています。
外的環境で言いますと、民間の活用も進みつつありますが、やはり学校現場や国、行政など大きな変化については慎重な姿勢を示す方は多くいらっしゃいます。その意見も十分に理解できますが、時間はかかったとしても、経団連のメンバーにもなったこともありますので、規制改革も含めて様々な提言をして社会の変化を促していかなければならないと認識しています。
Q:ありがとうございます。では最後に株主・投資家へのメッセージをお願いいたします。
最初に申し上げたように、私は社会のためにこの事業を始めました。明るい未来づくりに貢献することを当社の根底としています。ですので、あまり目先の収益ばかりにファーカスすると、同じ目線での挑戦が難しくなってしまうと思っています。
ただ、私自身は、決して小さく収まることはないと決めている人間です。今は売上高、時価総額ともまだまだの小さな上場企業ですが、グロース市場の上場維持基準の100億円といったレベルで戦おうとは一切思っておらず、それをはるかに超えた水準を目指して必ずや実現したいと思っています。当社の想いをご理解くださり、長い目で応援していただける投資家の方、株主の方に是非当社の挑戦を見守っていただきたいと思います。
6.今後の注目点
超大企業を含め多数のプレーヤーが存在する大卒求人広告市場が「レッドオーシャン」であるのに対し、ニッチで制約が多い高卒求人広告市場は参入障壁が高く「ブルーオーシャン」であり、大卒求人広告市場とは対極に位置し、黎明期から成長期に向かう有望なマーケットであると同社では考えている。ただ、インタビューの中で佐々木社長が言及しているように、完全な競争優位性を構築しておかないと、せっかくフロントランナーとして走ってきたのに、マーケットが広がったときに大手企業が参入してきて追い抜かれることになりかねない。その競争優位性が、「リアルでの学校現場との関係構築」による全国多くの高校とのネットワークである。もちろんまだまだネットワーク拡大の余地は大きい。高校・高校生向けサービスのブラッシュアップなどにより、「28年3月期 ジョブドラフトTeacher導入校数2,700校(25年3月期801校)、ジョブドラフトCareer導入校数1,800校(同692校)」という目標を前倒しで達成できるか、そのスピード感に注目していきたい。
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
◎組織形態、取締役、監査役の構成
組織形態 | 監査役設置会社 |
取締役 | 6名、うち社外取締役2名(うち独立役員2名) |
監査等委員 | 3名、うち社外取締役3名(うち独立役員3名) |
◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2025年6月27日
<基本的な考え方>
当社は、経営環境が変化する中において、持続的な成長及び長期的な企業価値の向上を目指し、株主をはじめとする全てのステークホルダーからの信頼を得るため、コーポレート・ガバナンスの強化を重要な課題として認識し、その充実に取り組んでおります。
<コーポレート・ガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社は、コーポレート・ガバナンス・コードの基本原則をすべて実施しております。
本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。また、本レポートに記載されている情報及び見解は当社が公表されたデータに基づいて作成したものです。本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。当該情報や見解の正確性、完全性もしくは妥当性についても保証するものではなく、また責任を負うものではありません。本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあり、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。 Copyright(C) Investment Bridge Co.,Ltd. All Rights Reserved. |