ブリッジレポート:企業の変革を促進する日本発独立系コンサルティング企業。「デジタル時代のベストパートナー」を目指し、コンサルティングを主軸としたプロフェッショナルサービスと、IT業界の企業や人材をつなぎ新しいビジネス機会を創出するプラットフォーム事業を運営
![]() 樺島 弘明 社長 | 株式会社エル・ティー・エス(6560) |
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企業情報
市場 | 東証プライム市場 |
業種 | サービス業 |
代表取締役 社長執行役員 | 樺島 弘明 |
所在地 | 東京都港区元赤坂1丁目3-13 赤坂センタービルディング |
決算月 | 12月 |
HP |
株式情報
株価 | 発行済株式数(期末) | 時価総額 | ROE(実) | 売買単位 | |
2,014円 | 4,658,575株 | 9,382百万円 | 24.5% | 100株 | |
DPS(予) | 配当利回り(予) | EPS(予) | PER(予) | BPS(実) | PBR(実) |
35.00円 | 1.7% | 140.30円 | 14.4倍 | 975.03円 | 2.1倍 |
*株価は9/3終値。2025年12月期第2四半期決算短信より。ROE、BPSは前期実績。
業績推移
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 | EPS | DPS |
21年12月(実) | 7,375 | 600 | 579 | 388 | 93.24 | 0.00 |
22年12月(実) | 9,637 | 501 | 489 | 232 | 55.35 | 0.00 |
23年12月(実) | 12,242 | 712 | 748 | 454 | 100.80 | 0.00 |
24年12月(実) | 16,592 | 1,107 | 1,069 | 973 | 216.44 | 30.00 |
25年12月(予) | 18,280 | 1,180 | 1,230 | 650 | 140.30 | 35.00 |
*単位:百万円。予想は会社側予想。当期純利益は親会社の所有者に帰属する当期利益、以下同様)。2024年12月期において、企業結合に係る暫定的な会計処理の確定を行っており、2024年12月期上期に係る各数値については、暫定的な会計処理の確定の内容を反映させている。
株式会社エル・ティー・エスの2025年12月期第2四半期決算概要、2025年12月期業績予想などをお伝えします。
目次
今回のポイント
1.会社概要
2.中期成長シナリオ
3.2025年12月期上期決算概要
4.2025年12月期業績予想
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
今回のポイント
- 企業の変革を促進する日本発独立系のコンサルティング企業。「デジタル時代のベストパートナー」を目指し、顧客の変革実行能力を高めるためのコンサルティングを主軸とした「プロフェッショナルサービス事業」と、IT 業界の企業や人材をつなぎ新しいビジネス機会を創出するプラットフォーム事業を運営している。
- 2025年12月期上期の売上高は前年同期比6.9%増の85億72百万円。プロフェッショナルサービス事業は増収、プラットフォーム事業は減収。営業利益は同16.6%増の4億73百万円。プロフェッショナルサービス事業の一部案件で採算が悪化したため売上総利益の伸びは同2.4%にとどまり営業利益を2億66百万円押し下げたが、販管費が前年並みとなったため、前年同期比で2桁の増益。中間純利益は同36.1%減の2億26百万円。採算悪化案件について一過性の損失として特別損失を計上した。会社側計画に対して売上高はほぼ計画通り。営業利益は第1四半期(1‐3月)上振れたものの、第2四半期(4‐6月)に一部案件の採算悪化で下振れ幅が上回った。
- 2025年12月期の通期業績予想を修正した。売上高に変更は無く前期比10.2%増の182億80百万円、営業利益は同6.5%増の11億80百万円の予想。プロフェッショナルサービス事業における採算悪化案件の影響は第4四半期(10-12月)前半まで継続する見込み。事業環境は引き続き良好であり、今後も業績は堅調に推移する見込みであること等を踏まえ、売上高は上方修正し、営業利益は下方修正した。プラットフォーム事業においては、「プロフェッショナルハブ」による稼働人員数が伸び悩み、収益性が低下していることを踏まえ、売上高、営業利益ともに下方修正した。配当予想に変更は無い。業績見通しの下方修正は特殊要因に拠るものであるため、株主還元方針に基づき期初計画通り実施する。前期比5.00円/株の35.00円/株を予定している。予想配当性向は25.0%。
- 同社では、2021年12月期から2030年12月期までの10年間を「1st Growth Plan」(21年12月期~24年12月期)、「2nd Growth Plan」(25年12月期から27年12月期)、「3rd Growth Plan」(28年12月期から30年12月期)の3期に分け、2027年12月期、オーガニックにより「売上高222億円、営業利益20.2億円」を目指す。25年12月期予想を下方修正したが、事業成長の基本的な基調は変わっていないため、「2ndGrowth Plan」の数値計画に変更はない。2030年12月期の目標は「売上高500億円、営業利益率10%超(M&Aを加味)」。
- 上期の進捗率は売上高46.9%、営業利益40.1%。過去数年と比較し、若干低水準にある。上期収益を圧迫した案件の影響は第4四半期前半まで継続する見込みであり、プラットフォーム事業において稼働人員数の減少に伴い収益性が低下していることも重なり、下期の業績進捗は限定的となるとのこと。収益性の回復を目指す「2nd Growth Plan」のスタートに残念ながらトラブル発生となってしまったが、第3四半期、第4四半期でどれだけ上積みできるか注視していきたい。
1.会社概要
企業の変革を促進する日本発独立系のコンサルティング企業。「デジタル時代のベストパートナー」を目指し、顧客の変革実行能力を高めるためのコンサルティングを主軸とした「プロフェッショナルサービス事業」と、IT 業界の企業や人材をつなぎ新しいビジネス機会を創出する「プラットフォーム事業」を運営している。同社、連結子会社7社、持分法適用関連会社2社でグループを構成。

【1-1上場までの沿革】
大学生時代、ベンチャー企業経営に関心を持っていた樺島 弘明氏(現株式会社エル・ティー・エス 代表取締役 社長執行役員)は、まず金融の経験が必要と考え、アイエヌジー生命保険株式会社に入社し地方支社の立ち上げなどに携わり経験を積んだ後、教育専門のポータルサイトを運営するベンチャー企業に入社。会社の方針変更にあたり、既存顧客の変革プロジェクトを完遂するとともに、e-ラーニングやチェンジマネジメント事業の成長を目的に、同社のメンバー4名とともに、2002年3月、株式会社エル・ティー・エスを創業した。当初は企業変革を定着させるための教育:チェンジマネジメントをフィールドとしていたが、より本質的に変革の支援を提供するために、ITコンサルティング、ビジネスコンサルティングに領域を拡大する。在籍していたベンチャー企業の関係から大手外資系コンサルティング会社のプロジェクトへ参画したり、個人的な人脈を活用して案件を獲得したりしながら顧客開拓を進めるとともに、顧客からの評価は着実に向上していく。
顧客基盤が着実に強化される中、単なる経営コンサルティングにとどまることなく、顧客が求める様々な変革支援機能を社内に保有できるよう事業規模及び組織規模を拡大するには、協業やM&Aが不可欠と考え、2017年12月、東証マザーズに上場。2020年7月に東証1部に市場変更した後、2022年4月、市場再編により東証プライム市場に移行した。
【1-2 経営理念】
以下のようなMISSION、VISION、VALUEを掲げている。
MISSION | 可能性を解き放つ ~人の持っている可能性を信じ、自由で活き活きとした人間社会を実現する~ |
VISION | 世界を拡げるプロフェッショナルカンパニー |
VALUE | 私たちのありたい姿 *「お客様」「社会」にとってのよつば:Commit as a Professional プロフェッショナルとしてあり続ける *「チーム」にとってのよつば:Collaborate across Barriers 協働を加速させる *「一人ひとり」にとってのよつば:Color Your Own Life 自身の人生を彩っていく
7つの行動規範/CLOVERS Change 変える・変わる Learn 学び続ける Ownership 自ら決め、やり抜く Venture 未知に踏み出す Enjoy & Energize 楽しむ、活力をもたらす Respect 尊重する Surprise 「枠」を超え、心を動かす |
VALUEでも表現されている四つ葉のクローバーをかたどったロゴマークには、『お客様の課題解決や成長に向けて単なる外部支援ではなく、LTSが一枚の葉としてお客様と一体化し三つ葉を四つ葉に変化させる、「質的な変化」をもたらす存在であること』『一枚の葉としてお客様と同じ立ち位置で、共に変革を進めていく真のパートナーであること』という意味が込められている。
MISSION、VISION、VALUEのベースとなる考え方は創業当初に定めたものであるが、社内外の環境変化に合わせた適切な表現とするため、10年タームで表現をアップデートしており、現在のMISSION、VISION、VALUEは創業20周年となる2023年に掲げたものである。

(同社ウェブサイトより)
【1-3 事業環境】
同社では、コンサルティングファームの過去・現在・未来を以下のように考えている。
1990年代までのいわゆる「コンサル1.0」の時代において、コンサルタントは専門領域における有識者であり、当該領域における戦略を提言し、ベストプラクティスを提供するアドバイザーとしての立場が中心であった。
しかし、提言した戦略は必ずしも成功・実現する保証はなく、画に描いた餅に終わることも多々あった。
2020年代までの「コンサル2.0」になると、総合コンサルティングとして実行支援が進み、アイデアやアドバイスだけではなく、テクノロジーやシステムを提供し、ビジネスの実行力を提供することがコンサルティングの価値と考えられるようになった。
ただ一方で、顧客側が変革のための企画・推進力を外部に依存することとなり、社内にそうしたノウハウや経験が蓄積されないという課題が残った。取り組みが全社視点ではなく、単発に終わるケースも見られた。
「コンサル3.0」の現在、コンサルティング会社は成長プログラムを提供するだけでなく共有・推進する「協創パートナー」としての役割が求められている。「コンサル2.0」の課題であった「変革推進力の内製化」が重視され、ビジネスの成果にもコミットすることが必須となっている。
また現代の企業は、DX(デジタル・トランスフォーメーション)・SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)・GX(グリーン・トランスフォーメーション)など様々な変革に取り組む必要があり、その頻度や数量はともに増加中である。
そうした中、企業の変革を支えるコンサルティング業界は、周辺市場も含めて拡大中であり、コンサルティング企業の活躍の場や市場開拓の余地は益々増大すると、同社では考えている。

(同社資料より)
【1-4 事業内容】
(1)ビジネスモデル
報告セグメントは「プロフェッショナルサービス事業」と「プラットフォーム事業」の2つ。

①プロフェッショナルサービス事業
企業、官公庁、NPOといったさまざまな組織に対して、顧客の課題や変革テーマに応じた各種支援をワンストップで提供し、変革やDXを実行支援する企業向けコンサルティングを提供。顧客企業内での変革推進力の内製化を目標に、協創を推進している。
サービスの提供領域は「戦略・ビジネスモデルを含めた成長戦略の構築」「IT導入プロジェクトにおける基本構想策定やシステム企画・選定など上流フェーズ支援」「ビジネスプロセスの可視化・改善」「改善後のビジネスプロセスの実行支援」等。
昨今のDXの流れの中で、企業においてデジタルテクノロジーの活用・導入を前提としたビジネスモデル・ビジネスプロセスへの転換が増えてきているため、顧客の事業環境に合わせたテクノロジーリサーチ及び事業戦略・データ戦略の策定、IoTやマーケティングデータ等の分析によるバリューチェーンの改善、生成AIの活用による業務革新等、顧客の事業・業務に適した新たな手段を提供し、顧客の「デジタル時代の経営と変革」を支援している。
◎サービスドメイン
3つのサービスドメインを設定している。
サービスドメイン | 概要 | 主なサービス |
Strategy & Innovation:非連続的成長のデザイン | 変化に的確に対応して勝ち残るための企業戦略・事業戦略を顧客と共に考え、立案・実行する。テクノロジーやデータの利用に基づいた新規事業創造の支援やM&A実行についてもアドバイスする。 | ・戦略策定/M&A支援 ・事業創造/事業再生 ・データアナリティクス
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Architecture & Digital:デジタルビジネスの構築 | 戦略や事業のアイデアを実現するための事業構造構築を、ビジネスプロセスやデジタルテクノロジー、アーキテクチャデザインといったあらゆる側面から整理・組成する。また、変革に不可欠な人的資本の育成・強化についてのコンサルティングも行っている。 | ・ビジネスコンサルティング ・ITコンサルティング ・人的資本コンサルティング
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Social & Public:豊かな社会の形成基盤の創出 | 「豊かな社会の実現」に向け、企業のSDGsやCSR実現に向けたコンサルティング、地方創生のための官民連携支援のほか、起業家育成にも取り組んでいる。 | ・CSR/SDGs推進 ・官民連携/地方創生 ・社会的起業家育成
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◎収益モデル
幅広い業種の企業変革を顧客の現場に入り込み、顧客の課題や同社グループが支援する顧客の変革テーマに応じて、各サービスの支援内容を組み合わせてワンストップで提供しているが、契約単位はサービス毎・フェーズ毎に分かれており、企業変革の進行過程で段階的にサービスフィーを対価として受け取っている。
コンサルティングサービスは一般的に、「単価・稼働率・人数」が変数となるが、同社の中心的なコンサルティングサービスは、以下のような特徴がある。
戦略コンサルティング:単価は比較的高く、稼働率は中程度。
DXコンサルティング:単価は中程度、稼働率は高水準。
◎顧客
特定の業種に偏ることなく幅広い顧客層を有しており、同社の企業価値を構成する重要な「見えない資産」となっている。
稼働顧客数はおおよそ300~400社。顧客平均単価は4,000~5,000万円/年間。
主要顧客30社で売上高のほぼ8割を構成。平均的な契約期間は10年程度と長期間にわたって顧客との協創を進めている。

(同社資料より)
◎営業手法
新規顧客開拓においては、プッシュ型の営業では同社の特長や考え方が伝わりにくい部分もあるため、書籍、セミナーの開催、講演などを通じて、企業の抱える課題を明確にするとともに、それに対する同社のソリューションを示すことで理解促進を図っている。
マーケティング成果に加えて、既存顧客からの紹介も多いほか、大手SIerや外資系コンサルティング会社のパートナーとしてプロジェクトに参画後、仕事ぶりが評価され新たに取引が開始するケースもある。

(同社資料より)
②プラットフォーム事業
中小ベンチャー企業、IT企業、フリーランスを対象とした各種プラットフォームを運営し、IT業界全体の協働促進基盤を提供している。「(IT企業間の) 案件 × プロフェショナル」「案件 × フリーランス」「事業会社× DX企業」のマッチングによる企業のIT人材不足を解消している。
◎主なプラットフォーム
*「アサインナビ」
プロフェッショナルサービス事業を展開する中で、DX等により市場の変化が加速度的に進み、企業各社が自前のリソースだけでは変革を実現できない状況が存在するとの問題意識を持った。そこで、「課題を抱える顧客企業と解決手段を持つテクノロジー企業が出会えていない」「顧客企業の旺盛なIT投資に応えるIT人材が不足している」「自社のIT人材を十分に活用するプロジェクト機会がない」といった課題を解決することを目的として、2014年7月よりプラットフォームサービスとして、「アサインナビ」の提供を開始した。「アサインナビ」では、IT人材とITプロジェクトに取り組む顧客企業が直接つながるプロフェッショナルクラウドソーシングの場を提供することで、IT業界の多重下請け構造の改善及び高単価案件の提供を実現している。
会員数は2025年6月末時点で、法人・個人を合わせ、14,618会員。

*成長IT企業向け会員制コミュニティ「グロースカンパニークラブ」
自社・顧客・IT業界の成長を目指すIT企業向けの会員制コミュニティ。
IT業界をよりよくしたいという想いを持った先輩経営者や最先端のサービス提供を行う経営者との交流を通して、グロースサイクルモデルを循環させるための経営のヒントや刺激を得る事ができる。
IT企業がともに学び、実践し、情報交換するために、以下の3つのイベントを開催している。
人材育成分科会 | 顧客満足度向上に繋がるハイパフォーマーの育成を目指し、コンサルタントやエンジニアが顧客の成果に貢献し自社の成長を支えるために、各企業がどのような取組みをしているのか、どのような課題があるのかを参加者全員で議論している。ここでしか聞けない具体例を通じて、自社が取組むべき人材育成の仕組みや制度を整えるためのインサイトを得ることができる。 |
交流イベント | IT企業とクライアント企業が交流する「グロースカンパニー・ミニサミット」、上場など、共通の課題を抱えるIT企業が集まる意見交換会「テーマ別交流イベント」など、IT企業や顧客企業がよいパートナーと出会うことを目的としたイベントを開催している。 |
サービスグロース勉強会 | グロースサイクルモデル(※)に沿って、自社のサービスを磨く方法を学ぶことができる。「サービスサイエンス(※)」の考え方を用い、自社のサービスに活かすための方法を学ぶ。 |
※「グロースサイクルモデル」
同社グループが東証プライム上場、売上70億円規模に至るまでの事業成長を分解・整理した成長モデル。同社のみでなく、成長しているIT企業にも共通する成長サイクル。
※「サービスサイエンス」
これまで現場での経験や勘に頼りがちだったサービスをロジカルに捉え直し、様々な課題へのアプローチを明らかにするもの。
*「プロフェッショナルハブ」
フリーコンサルタントのマッチングに特化し、案件紹介やキャリアアップの支援を通して専門性を持ったフリーコンサルタントが活躍できるよう長期的なサポートを提供している。
案件紹介においては、グループ会社や同社運営サービスなど幅広いネットワークから独自案件を多数保有しており、低稼働、スポット稼働、地方や副業・顧問案件など広い種類の案件から専門性や志向に合った案件を紹介している。
キャリアアップ支援においては、勉強会や研修を通してスキルや知見の幅を拡げる機会を提供している。プロフェッショナルがさらなるスキルを身につけ、様々な案件にチャレンジできるような成長を支援している。
◎収益モデル
「アサインナビ」及び「プロフェッショナルハブ」では、顧客より主に以下の料金を受領している。
会費 | IT人材やITプロジェクトの検索ができるプロフェッショナルクラウドソーシングの利用(データベース利用と商談打診)、交流会など各種イベント参加、研修プログラムへの参加など、各種利用形態に応じたメニューを用意しており、それらについて一定の会費を受領している。
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マッチング収益 | 案件・人材のマッチングの結果、顧客との間に締結した役務提供契約に基づき、対価を受領している。 |
イベント/研修(参加費) | 「アサインナビ」が主催し、会員間の交流会イベントや勉強会、研修サービスを提供しており、対価として参加費を受領している。 |
【1-5 特長・強み・競争優位性】
(1)協創パートナー
同社は、顧客の変革推進力の強化を支援する「変革パートナー」、変化適応力の強化を支援する「事業パートナー」、変化創出力の強化を支援する「組織パートナー」、それぞれの立場を掛け合わせた「協創パートナー」を目指している。
協創パートナーを目指すうえで必要な要素の中でも、特に大事にしていることは顧客との関係性の「質」である。
「質」の追求においては、「顧客組織の価値観や文化・風土を理解し、パーパスやビジョンに共感すること」「プロジェクト推進につきものの失敗や困難など苦しい局面でも逃げずに、挑戦を楽しみながら最後まで顧客と一緒に完遂すること」「多様な取り組みを一緒に進めながら、お互いに学び合える、共に成長できる互恵関係・共育関係を築くこと」が重要であると考えている。
こうしたスタンスを重視して行動することが顧客からの信頼に繋がり、結果として長い関係維持に繋がっている。

(同社資料より)
(2)ミッドサイズの協創コンサルティング
コンサルティング市場を「プロジェクト規模」と「サービス内容」の2軸に分解すると、同社の独自のポジショニングが明確になる。
*プロジェクト規模
超大手のグローバル総合コンサルファームが手掛ける1件30億円以上の大規模プロジェクトと、1億円未満の小規模プロジェクトの間の1億円から30億円までの中規模プロジェクトがメインフィールドである。
この領域はグローバル総合コンサルファームにとっては必要な工数と収益規模のバランスの観点から参入することは極めて少ない。また、100名程度のブティック型のコンサル会社では十分なコンサルティングを行うことができずデリバリ体制の壁が存在する。
*サービス内容
多くのコンサルティング会社は、「IT」「人材」「教育」「PMO」「戦略」「人事」といったような専門領域に特化してコンサルティングを行う「コンサル1.0」のステージにとどまっている。
これに対し同社は、2020年代に入り、専門コンサルティングから総合コンサルティング「コンサル2.0」及び協創コンサルティング「コンサル3.0」への進化を目指し、「エンジニアリング」機能の強化を図って人材を増強。1,000名超の規模に成長してきた。
今後は顧客企業の成長と同社の実力の更なる強化によりプロジェクト規模の拡大を、顧客関係の深化や進化により、本格的な協創コンサルティング「コンサル3.0」ステージへのステップアップを目指していく。

(同社資料より)
(3)人的資本の強化
連結ベースの社員数は2025年6月末で1,072名。コンサルタントとエンジニアの双方を強化する方針の下、2023年12月期の株式会社HCSホールディングス(現 株式会社日比谷コンピュータシステム)子会社化と、コンサルタントの積極採用により、1,000名を超える体制となっている。
同社では、従業員数1,000人超えは、一つの重要なマイルストーンであり、これまで以上に多くの顧客へサービスを届けるための原動力であると考えている。
人手不足の中ではあるが、同社ではコンサルタント、エンジニアともに順調な採用を進めることができている。離職率も業界内では低水準である。
この背景の一つは報酬体系の見直し。事業内容や組織の魅力では優位にあっても、給与水準で他社に劣後していたために採用に至らないというケースが多かったため、報酬水準を見直したことが、採用率向上につながった。
また、同社では中規模かつ様々なテーマのプロジェクトを支援することが多いため、少人数のチームでこれまで以上の責任を負い、自身のさらなる成長に繋げたいという意欲のある人材、特に大手コンサルティング会社出身者の転職が増加している。
総合コンサル「コンサル2.0」、協創コンサル「コンサル3.0」への進化により、多様な活躍の場をグループ内で提供できる点は求職者及び従業員にとっては大きな魅力となっている。
リーマンショック時、やむを得ず希望退職募集を行った同社だが、今後は絶対に行わないとの経営方針の下、成長の源泉である人的資本の強化に一段と注力していく考えだ。
【1-6 株主還元】
中長期でのEPS成長により、企業価値(株価)を向上させていくことを、株主還元施策の中心として位置づけている。
配当については、配当性向20%を目安に、安定的かつ継続的に株主還元を実施する。
成長投資と資本効率のバランスを取りながら自己株式取得についても都度検討し、必要に応じて機動的に実施する考えだ。
24年12月期に配当を開始。25年12月期は5.00円/株増配の35.00円/株を予定している。予想配当性向は25.0%。

(同社資料より)
2.中期成長シナリオ
同社では、2021年12月期から2030年12月期までの10年間を「1st Growth Plan」(21年12月期~24年12月期)、「2nd Growth Plan」(25年12月期から27年12月期)、「3rd Growth Plan」(28年12月期から30年12月期)の3期に分け、2030年12月期の目標を「売上高500億円、営業利益率10%超(M&Aを加味)」「デジタル時代のベストパートナー」「プロフェッショナル2,000名」とし、その実現に向け、成長を追求している。

(同社資料より)
【2-1 「1st Growth Plan」の振り返り】
24年12月期は「1st Growth Plan」の最終年度であった。
当初計画は24年12月期「売上高120億円(CAGR20%超)、営業利益18億円(売上高営業利益率15%)」というものであったが、着地は「売上高165億円(CAGR31.1%)、営業利益11億円(売上高営業利益率6.7%)」と、売上高は想定を上回ったが、営業利益・営業利益率は計画未達となった。
若手社員の積極採用増加、M&Aによるエンジニアの増加など人員のボリュームアップは着実に進展し、ビジネスとテクノロジーを一体的に支援できるサービス体制を構築することができ、新規顧客の開拓が進んだほか、顧客単価も上昇したが、メンバー層に対するプロジェクトマネジメント層、エンジニアに対するコンサルタントがそれぞれ過小で、人財ポートフォリオに歪みが発生。このため、収益性・利益創出力が低下した。
【2-2 「2nd Growth Plan」の概要】
(1)成長イメージ:積層型事業成長戦略
「2nd Growth Plan」では、サービス競争力と報酬水準引き上げを含む従業員エンゲージメントの向上を図るとともに、顧客関係を強めることで、「1stGrowth Plan」期間に低下した収益性の回復を目指している。
様々な「X」(トランスフォーメーション)を総合的に支援し、デジタル時代のベストパートナーを目指す。また、既存事業の強化によって収益性を高め、周辺領域・海外事業の探索によって次の飛躍の土台を整備する。
既存事業の深化と進化の上に、周辺事業・海外事業を積み上げる「積層型事業成長戦略」を推進する。

(同社資料より)
(2)既存事業の成長シナリオ
「2nd Growth Plan」の最大の目標である「収益性回復」に向けて、既存事業の棚卸を行った。これまでの意欲的なサービス開発の結果、複雑化しているサービス群を、「戦略コンサル」「DXコンサル」「SI(System Integration)」「パブリックサービス」「リソースマネジメント」の5領域に整理し、収益性向上のポイントを明確にした。

(同社資料より)
この整理された5領域毎に、異なる考え方・アプローチで事業成長を計画し、進捗を管理していく。

(同社資料より)
既存事業の中でもウェイトが大きく、成長が期待される領域である「DXコンサル」における収益性向上のポイントは、マネージャ層の採用とBA・PM教育によって柔軟な体制構築力を確保し、稼働率を適正水準で維持•するほか、外部リソースを活用しデリバリ力を強化すること。事業成長に向けては、PM・BA等のコア専門力の育成体系を整備し体制を増強するほか、産業やソリューションを軸に事業ユニットを組成し、各事業ユニットの成長と事業ユニット数の拡大を並行して推進する。想定成長率は、「2nd Growth Plan」(25年12月期から27年12月期)で約20%、「3rd Growth Plan」(28年12月期から30年12月期)で約25%と、中長期的な更なる成長力アップを計画している。
次にウェイトの大きい「SI(System Integration)」では、DXコンサルの後続フェーズをグループ一体で担当し、多数の中規模・中リスク案件を積み上げること、生成AIなどのテクノロジーを活用した生産性向上を図ることが収益性向上のポイントであると考えている。事業成長に向けては、パブリッククラウドの活用とアジャイル型開発の推進を図るほか、深い顧客理解(事業・業務・組織)とアーキテクチャ管理の専門能力を組み合わせて顧客価値を最大化する。想定成長率は、「2nd Growth Plan」では約5%と低成長も、仕込みのフェーズとし、「3rd Growth Plan」では約15%と他の領域と同程度の成長水準に移行する。
(3)M&A
オーガニックでの成長を基本としながらも、過去のPMI実績を踏まえ、重要な成長戦略オプションとして非連続的成長に向けM&Aを積極的に活用する。
方向性としては、既存企業強化に向けた「戦略コンサルティング、SX/GXコンサルティング、データコンサルティング、AIコンサルティング、DXコンサルティング、ERPコンサルティング」、先端技術やプロダクト取り込みのための「生成AI、デジタルツイン、エッジコンピューティング、ブロックチェーン、サイバーセキュリティ」など。
既存事業の深化及び進化のための5億円程度までの小型M&Aを優先して実行する。

(同社資料より)
(4)キャピタル・アロケーション
中長期的な企業価値向上に向けて、「積極的な事業成長投資」と「株主還元の最大化」を目指す。財務健全性を維持しながらも、M&Aなど大型投資実施時には借入を活用する予定で、増資は計画していない。具体的な金額配分は現在精査中であり、今後開示する予定だ。
(5)業績目標
2027年12月期、オーガニックにより「売上高222億円、営業利益20.2億円」を目指す。下方修正を行ったが、事業成長の基本的な基調は変わっていないため、「2ndGrowth Plan」の数値計画に変更はない。
「2nd Growth Plan」の3年間は収益性の回復を最優先課題とする。営業利益のCAGRは22%を計画している。
計画には織り込まないものの、オーガニック成長に加え、M&Aによる非連続的な成長も視野に入れており、2030年12月期のM&Aを加味した成長目標を「売上高500億円、営業利益率10%超」としている。
◎業績目標(オーガニックでの成長イメージ)
| 21/12期 | 22/12期 | 23/12期 | 24/12期 | 25/12期 | 26/12期 | 27/12期 | 28/12期 | 29/12期 | 30/12期 |
売上高 | 7,375 | 9,637 | 12,242 | 16,592 | 18,280 | 20,150 | 22,200 | 25,700 | 29,800 | 34,500 |
営業利益 | 600 | 501 | 712 | 1,107 | 1,180 | 1,680 | 2,020 | 2,430 | 2,920 | 3,510 |
営業利益率 | 8.1% | 5.2% | 5.8% | 6.7% | 6.5% | 8.3% | 9.1% | 9.5% | 9.8% | 10.2% |
CAGR (売上高) | +31.0% | +10.2% | +15.8% | |||||||
CAGR (営業利益) | +22.7% | +22.2% | +20.2% |
*単位:百万円。25/12期以降は計画。
3.2025年12月期上期決算概要
【3-1業績概要】
| 24/12期上期 | 構成比 | 25/12期上期 | 構成比 | 前年同期比 |
売上収益 | 8,020 | 100.0% | 8,572 | 100.0% | +6.9% |
売上総利益 | 2,814 | 35.1% | 2,881 | 33.6% | +2.4% |
販管費 | 2,407 | 30.0% | 2,408 | 28.1% | +0.0% |
営業利益 | 406 | 5.1% | 473 | 5.5% | +16.6% |
経常利益 | 424 | 5.3% | 525 | 6.1% | +23.9% |
中間純利益 | 354 | 4.4% | 226 | 2.6% | -36.1% |
*単位:百万円。
増収増益も一部案件の採算悪化で会社側計画を下回る
売上高は前年同期比6.9%増の85億72百万円。プロフェッショナルサービス事業は増収、プラットフォーム事業は減収。
営業利益は同16.6%増の4億73百万円。一部案件で採算が悪化したため売上総利益の伸びは同2.4%にとどまり営業利益を2億66百万円(第1四半期61百万円、第2四半期2億5百万円)押し下げたが、販管費が前年並みとなったため、前年同期比で2桁の増益。中間純利益は同36.1%減の2億26百万円。採算悪化案件について一過性の損失として特別損失(契約損失引当金)1億88百万円を計上した。
会社側計画に対する達成率は売上高99.1%、営業利益93.4%。売上高はほぼ計画通りも、四半期ベースでは、第1四半期(1‐3月)は上振れたものの、第2四半期(4‐6月)に一部案件の採算悪化で下振れ幅が上回った。
第2四半期(4‐6月)売上高は、第2四半期の過去最高を更新。営業利益は一過性損失が無ければ同じく第2四半期の過去最高を更新した。

<一過性損失について>
24年12月期第4四半期(10-12月)に受注したシステム開発領域の請負契約案件において、利益押し下げとなる事象(品質、納期に課題)が発生した。
同社では課題解決に向け、人員・工数を追加投入した。このため、上半期の費用が増加した。現時点では 終了に向けた最終調整段階にあり、関連費用の見積額を損失計上した。
上期実績についての影響額は前述のとおり。通期業績見通しを修正した(詳細は後述)。同案件に関連する損失は全て今期業績に織り込み済みで、追加的な影響は限定的であると同社では見込んでいる。来期26年12月期見通し「売上高201億50百万円、営業利益16億80百万円」に変更は無い。
対応工数が大幅に増加し不採算化に至った背景としては、成果物の完成責任やQCD(品質・コスト・納期)に関するリスクを請負側が包括的に負うという、「請負契約」特有のリスク負担構造が影響している。このようなリスク構造を持つ案件について、同様の事象が発生する可能性を精査している。
当該案件を除く、2025年7月末時点におけるシステム開発領域の「請負契約」案件は11件、売上規模の合計は2億78百万円。また、契約種別は異なるものの、リスク構造が類似する「準委任契約(成果完成型)」案件についても状況を確認しており、1件、3億13百万円)が該当する。これらの案件については、提案・見積内容、現時点でのプロジェクト損益、今後のデリバリー上のリスク等を精査し総合的に評価を行った結果、当該不採算案件と同様のリスクが顕在化する可能性は限定的であると認識している。配当及び還元施策についてもこれまでの方針に変更は無い。
【3-2 セグメント別動向】
| 24/12期上期 | 構成比 | 25/12期上期 | 構成比 | 前年同期比 |
売上高 |
|
|
|
|
|
プロフェッショナルサービス事業 | 7,218 | 90.0% | 7,787 | 90.8% | +7.9% |
プラットフォーム事業 | 802 | 10.0% | 785 | 9.2% | -2.1% |
売上高合計 | 8,020 | 100.0% | 8,572 | 100.0% | +6.9% |
セグメント利益 | 24/12期上期 | 利益率 | 25/12期上期 | 利益率 | 前年同期比 |
プロフェッショナルサービス事業 | 374 | 5.2% | 470 | 6.0% | +25.6% |
プラットフォーム事業 | 32 | 4.0% | 3 | 0.4% | -90.6% |
セグメント利益合計 | 406 | 5.1% | 473 | 5.5% | +16.6% |
*単位:百万円。売上高は外部顧客への売上高。セグメント利益は、連結財務諸表の営業利益と調整を行っている。
(1)プロフェッショナルサービス事業
増収増益。
一部のシステム開発案件で発生したプロジェクト進行上の課題解決に向けた対応費用が収益を圧迫したものの、旺盛なDXに関するニーズが追い風となり、従来型のコンサルティング案件(業務分析・設計、IT導入支援・現場展開)の受注は堅調に推移した。鈴与システムテクノロジー株式会社との業務提携による静岡県を中心とする自治体・企業向けのコンサルティングサービスやDX支援の提供、SAP Service Partnerとして、SAP S/4HANA Cloudの導入コンサルティングサービス提供の本格開始等、外部企業との連携も強化した。
加えて、ITファイナンスの高度化支援サービスやプロダクト企画開発の伴走支援を行うコンサルティングサービス「Product Climb」の提供開始、気候変動対応をはじめとする企業のGX(Green Transformation)支援等を行う株式会社ME-Lab Japanによる「人工衛星データと転移学習を用いた広域ブルーカーボンポテンシャルの推定サービス」の衛星データ活用アワード2024最優秀賞受賞など、先端領域における新たな提供サービスの拡充にも積極的に取り組んだ。
(2)プラットフォーム事業
減収減益。
「アサインナビ」の会員数は法人・個人を合わせ前期末比395増の14,618会員(2025年6月末現在)と順調に増加。クラウドビジネスにおけるサブスク型プラットフォームの導入・運用支援の継続など、IT事業者とプロフェッショナル人財とのつながりをベースとするプラットフォームサービスも堅調に推移したものの、「プロフェッショナルハブ」による稼働人員数低下により、収益が悪化した。このため、営業体制の見直しをはじめとする組織体制の強化や既存業務の効率化等、収益性の改善に向けた構造改革にも取り組んだ。
【3-3 財務状態とキャッシュ・フロー】
◎主要BS
| 24年12月末 | 25年6月末 | 増減 |
| 24年12月末 | 25年6月末 | 増減 |
流動資産 | 8,281 | 6,651 | -1,630 | 流動負債 | 3,653 | 3,294 | -359 |
現預金 | 5,447 | 3,968 | -1,479 | 仕入債務 | 921 | 1,023 | +102 |
売上債権 | 2,591 | 2,337 | -254 | 短期借入金 | 900 | 772 | -128 |
固定資産 | 3,120 | 3,065 | -55 | 固定負債 | 3,182 | 1,784 | -1,398 |
有形固定資産 | 1,237 | 1,216 | -21 | 長期借入金 | 2,981 | 1,591 | -1,390 |
無形固定資産 | 876 | 828 | -48 | 負債合計 | 6,835 | 5,078 | -1,757 |
投資その他の資産 | 1,006 | 1,019 | +13 | 純資産 | 4,566 | 4,637 | +71 |
投資有価証券 | 560 | 453 | -107 | 利益剰余金 | 2,944 | 3,034 | +90 |
資産合計 | 11,402 | 9,716 | -1,686 | 負債純資産合計 | 11,402 | 9,716 | -1,686 |
*単位:百万円。売上債権には電子記録債権を含む。
現預金の減少などで資産合計は前期末比16億円減少。長期借入金の減少などで負債合計は同17億円減少。純資産はほぼ変わらず。
自己資本比率は前期末から7.5ポイント上昇し46.6%。
◎キャッシュ・フロー
| 24/12期上期 | 25/12期上期 | 増減 |
営業CF | 141 | 112 | -29 |
投資CF | 27 | 71 | +44 |
フリーCF | 168 | 183 | +15 |
財務CF | -5 | -1,655 | -1,650 |
現金同等物残高 | 4,003 | 3,968 | -35 |
*単位:百万円
長期借入金の返済による支出の増加等で財務CFのマイナス幅拡大。
キャッシュポジションはほぼ変わらず。
【3-4 トピックス】
◎自己株式の取得
2025年8月、株主還元および資本効率の向上、経営環境に応じた機動的な資本政策の遂行のため、自己株式の取得を決議した。一部、役職員向けに導入している株式報酬制度で活用する予定である。
取得上限は24万株、5億円。期間は2025年8月15日から2025年12月30日まで。
◎プライム市場維持基準への適合状況について
同社は現在東証プライム市場に上場しているが、2025年6月末日時点の流通株式時価総額は50.2億円と、上場維持基準の「流通時価総額100億円以上」を満たしていない。
経過措置適用期限である2025年12月末までの基準適合が、未達となる可能性は否定できないと、同社では認識している。
そのため、プライム市場の上場維持基準への適合を目指した取組を継続することと並行し、バックアッププランとして、東証スタンダード市場への変更を第一候補とする市場変更に関する調査・検討を開始した。

(同社資料より)
4.2025年12月期業績予想
【4-1 業績予想】
| 24/12期 | 構成比 | 25/12期(予) | 構成比 | 前期比 | 修正率 | 進捗率 |
売上収益 | 16,592 | 100.0% | 18,280 | 100.0% | +10.2% | 0.0% | 46.9% |
営業利益 | 1,107 | 6.7% | 1,180 | 6.5% | +6.5% | -15.7% | 40.1% |
経常利益 | 1,069 | 6.4% | 1,230 | 6.7% | +15.0% | -8.9% | 42.7% |
当期純利益 | 973 | 5.9% | 650 | 3.6% | -33.2% | -27.8% | 34.9% |
*単位:百万円。予想は会社側予想。
業績予想を修正
業績予想を修正した。売上高に変更は無く前期比10.2%増の182億80百万円、営業利益は同6.5%増の11億80百万円の予想。
配当予想に変更は無い。業績見通しの下方修正は特殊要因に拠るものであるため、株主還元方針に基づき期初計画通り実施する。前期比5.00円/株の35.00円/株を予定している。予想配当性向は25.0%。
<業績予想の修正について>
プロフェッショナルサービス事業において、採算悪化案件の影響は第4四半期(10-12月)前半まで継続する見込み。事業環境は引き続き良好であり、今後も業績は堅調に推移する見込みであること等を踏まえ、売上高は4億円上方修正し、営業利益は1億5百万円下方修正した。
プラットフォーム事業においては、「プロフェッショナルハブ」による稼働人員数が伸び悩み、収益性が低下していることを踏まえ、売上高を4億円、営業利益を1億15百万円、それぞれ下方修正した。
【4-2 セグメント動向
| 24/12期 | 構成比 | 25/12期 (予) | 構成比 | 前期比 | 修正率 |
売上高 |
|
|
|
|
|
|
プロフェッショナルサービス事業 | 14,883 | 89.7% | 16,900 | 92.5% | +13.5% | +2.4% |
プラットフォーム事業 | 2,237 | 13.5% | 2,000 | 10.9% | -10.6% | -16.7% |
調整額 | -528 |
| -620 |
|
| - |
売上高合計 | 16,592 | 100.0% | 18,280 | 100.0% | +10.2% | 0.0% |
セグメント利益 | 24/12期 | 利益率 | 25/12期(予) | 利益率 | 前期比 | 修正率 |
プロフェッショナルサービス事業 | 1,031 | 6.9% | 1,175 | 7.0% | +13.9% | -8.2% |
プラットフォーム事業 | 76 | 3.4% | 5 | 0.3% | -93.5% | -95.8% |
セグメント利益合計 | 1,107 | 6.7% | 1,180 | 6.5% | +6.5% | -15.7% |
*単位:百万円。セグメント利益は、連結財務諸表の営業利益と調整を行っている。
(1)プロフェッショナルサービス事業
増収増益を予想。売上高を上方修正、セグメント利益を下方修正。
(2)プラットフォーム事業
減収減益を予想。売上高・セグメント利益ともに下方修正。
5.今後の注目点
上期の進捗率は売上高46.9%、営業利益40.1%。過去数年と比較し、若干低水準にある。上期収益を圧迫した案件の影響は第4四半期前半まで継続する見込みであり、プラットフォーム事業において稼働人員数の減少に伴い収益性が低下していることも重なり、下期の業績進捗は限定的となるとのこと。収益性の回復を目指す「2nd Growth Plan」のスタートに残念ながらトラブル発生となってしまったが、第3四半期、第4四半期でどれだけ上積みできるか注視していきたい。

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
◎組織形態、取締役、監査役の構成
組織形態 | 監査等委員会設置会社 |
取締役 | 7名、うち社外取締役3名(うち独立役員3名) |
監査等委員 | 3名、うち社外取締役3名(うち独立役員3名) |
◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2025年3月31日
<基本的な考え方>
当社は、次の「Mission」、「Vision」、「Value」を掲げ、健全かつ公正な事業活動を通じて、当社グループの持続的な成長と企業価値の向上を図るとともに、社会の持続的発展に貢献することを目指しており、その実現のための基盤として、コーポレート・ガバナンスを経営上の重要な課題に位置付けております。企業統治の体制及び内部統制システム等のコーポレート・ガバナンスの仕組みについては、株主をはじめとする各ステークホルダーからの要請や社会動向などを踏まえて、透明、公正かつ迅速な意思決定を行うことができるよう、毎年検証を行い、適宜必要な施策を実施していきます。
■Mission
可能性を解き放つ
~人の持っている可能性を信じ、自由で活き活きとした人間社会を実現する~
■Vision
世界を拡げるプロフェッショナルカンパニー
■Value
【私たちのありたい姿】
・「お客様」「社会」にとってのよつば
Commit as a Professional(プロフェッショナルとしてあり続ける)
・「チーム」にとってのよつば
Collaborate across Barriers(協働を加速させる)
・「一人ひとり」にとってのよつば
Color Your Own Life(自身の人生を彩っていく)
【7つの行動規範】
・Change 変える・変わる
・Learn 学び続ける
・Ownership 自ら決め、やり抜く
・Venture 未知に踏み出す
・Enjoy & Energize 楽しむ、活力をもたらす
・Respect 尊重する
・Surprise 「枠」を超え、心を動かす
<コーポレート・ガバナンス・コードの各原則を実施しない理由(抜粋)>
【補充原則1-2④】
現在、当社は、海外投資家の持株比率が低いため、招集通知の英訳は行っておりませんが、海外投資家の持株比率の変動状況を勘案しながら、2025年12月期(第24回定時株主総会)からの対応を目指し、検討を進めてまいります。
なお、議決権電子行使プラットフォームの利用につきましては、2023年3月開催の第21回定時株主総会より導入済みです。
【補充原則3-1②】
現在、当社は、ホームページ内の一部情報について英語での情報開示を行っております。また、決算短信及び決算説明資料の英語版サマリーについて、決算発表時に同時提供を行うとともに、後日、決算短信及び決算説明資料の英語版全文の提供を行っております。
今後、決算情報を除く適時開示情報の日英同時開示等、英語での情報開示の更なる充実については、海外投資家の持株比率の変動状況を勘案しながら、2026年3月中の対応を目指し、検討を進めてまいります。
【補充原則3-1③】
当社は、取引先や従業員、株主の皆様はもちろん、地域、地球環境ともより良い関係性を築き、社会的責任を果たす必要性があると考え、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを実施しております。また、当社のビジネス特性上、研究開発目的の知的財産への投資は馴染みませんが、人的資本への投資(確保及び育成)が売上成長に直結するビジネスモデルであるため、従業員の能力開発やキャリア開発を通じた人財育成に対し、積極的に取り組んでおります。
具体的な取り組みは、以下のとおりです。
<環境>
ペーパーレス、エネルギー使用量削減、再生可能エネルギー由来の電力利用、環境に配慮した製品の利用
事業活動を通じた直接排出量であるScope1は、排出量実質ゼロとなっております。事業活動を通じた間接排出量であるScope2は、人員増に伴うオフィス増床やコロナ禍を経た出社率の上昇等もあり、オフィスにおける電力消費量が増加しておりますが、赤坂オフィスでは再生可能エネルギー由来の電力を導入するなど、排出量削減に向けた取り組みを推進しております。
<社会>
①地域、社会とともに
地域社会とのつながり、スポンサーシップ、プロボノ活動、LTS Family Day、大学への出張講義、職場訪問の受け入れ、外部団体連携
②お客様、お取引様とともに
顧客満足度調査
③従業員とともに
健康経営、ダイバーシティ&インクルージョンの推進、人財育成
また、人的資本への投資について、適切な水準でサービスを提供する人財が最重要の経営資源であるとの認識のもと、採用力の向上、企業内研修の充実、人事評価制度の改善、働きやすい環境の整備等、上記の戦略に基づく各種取組みを推進し、社員のエンゲージメントを高め、企業価値の増大を目指します。
従業員の能力開発やキャリア開発に関する主な取り組みは、以下の通りです。
・1on1、メンター制度
・各種教育研修
・自己啓発支援
・キャリアリンク制度(社内FA制度)
・従業員満足度調査
具体的な活動については、当社ホームページをご覧ください。
https://lt-s.jp/sustainability
一方、当社グループは、IT及びコンサルティングービスの提供を主とする事業の特性上、気候変動リスクによる財務インパクト(リスク及び収益機会が自社の事業活動や業績に与える影響)は限定的であると考えており、TCFD提言に沿ったシナリオ分析は実施しておりませんが、今後、関連するデータの収集及び分析を行い、開示の充実を目指します。
<コーポレート・ガバナンス・コードの各原則に基づく開示(抜粋)>
【原則1-4 政策保有株式】
当社では、取引や事業上必要である場合を除き、純投資目的以外の目的で他社の株式を取得・保有しないことを基本方針としております。
取引先との関係強化や情報収集等を目的とし、中長期的に企業価値の向上に資すると取締役会において判断した場合には、他社の株式を政策的に保有する可能性がありますが、その場合においては、担当取締役による取引内容のスコアリングなどに基づく保有メリットの検証等を適宜実施し、必要に応じて取締役会に諮り、中長期的な企業価値向上の観点を踏まえて議決権を行使することとし、単なる安定株主としての保有は行いません。また、保有の効果及び合理性について継続的に検証を行い、定期的に保有方針の確認を行ってまいります。
【補充原則2-4①】
■多様性の確保についての考え方
当社は、会社の成長のためには、ジェンダー、人種、民族等に関わらず、多彩な人材を重要なポジションに登用し、グローバル展開や顧客サポートなどに多彩な人材を活かしていくべきと認識しております。デモグラフィック(年齢・性別・国籍・学歴・職歴)な多様性も重要ですが、ピープルビジネスを展開する当社においては、サイコグラフィック(職業観・組織観・キャリア志向・ライフスタイル・性格)な多様性も重視しています。社員のエンゲージメントを高めていくために、多様なキャリア開発、多様なワークスタイル実現を推進しています。
■多様性の確保に向けた方針、目標と取組の状況
<女性>
当社では、特に男女の区別なく、当社の理念に共感し、業務成果に貢献できる人材を採用・配置・育成していくことを基本方針としております。ライフステージの変化(育児や介護など)や、自身のコンディションなど、さまざまな個人的事情によって、一時的に業務に集中することが難しいケースにおいては、属性による区別なく、すべての従業員に対するサポートを充実させ、企業業績と組織成長に貢献できる人材が、長く安心して活躍できる会社を目指してまいります。
女性社員が長期的にキャリアを構築し、活き活きと活躍できる環境の構築に向けた主な取り組みは、以下の通りです。
・メンター制度
・産前休暇取得前・取得後支援
・女性専用の相談窓口設置
・女性学生向けのイベントの開催
なお、2024年12月末時点の管理職に占める女性社員の比率は16.2%となっております。
<外国人>
当社では、人種・国籍に関わらず、多様な人材が活躍できる環境づくりを積極的に進めており、管理職については、国籍は一切関係なく、職務遂行に必要な人格・経験・能力及び知見を有している人物を登用しております。2025年2月末時点で外国人管理職はおりませんが、既に複数名の外国人社員が在籍・活躍しており、将来の外国人管理職登用を目指し、社内環境の整備に引き続き取り組んでまいります。
<中途採用者>
当社では、新卒採用と並行し、事業発展の基軸として、毎年継続的に経験者採用を行っております。管理職について、採用経験等とは一切関係なく、職務遂行に必要な人格・経験・能力及び知見を有している人物を登用しており、多くの中途採用者が管理職として活躍しております。当社では、将来を担う人材として、また組織成長の基軸として、毎年継続的に新卒者を採用することとしており、中長期的に、新卒入社者の管理職比率が高まる可能性はありますが、管理職への登用は、中途・新卒を区別することなく行ってまいります。
なお、具体的な取り組みについては、当社ホームページをご覧ください。
https://lt-s.jp/sustainability/social/employees
【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】
当社では、社長室がIR業務を担当しております。株主向け決算説明会を半期毎に開催するとともに、逐次、各種メディアの取材対応や国内外の機関投資家とのスモールミーティングを実施しており、主に、代表取締役社長やIR部門担当役員が対応しております。今後は、当社の株主構成、比率等の状況に応じて、機関及び個人投資家向け説明会の更なる充実や海外投資家対応の実施等、株主との建設的な対話促進に向けた取り組みを推進してまいります。
また、これまで、社外取締役が株主との面談に臨んだ実績はありませんが、株主の意向や関心事を踏まえ、社外取締役も含めて合理的な範囲で対応者を決定し、面談に臨むことを基本としております。
【資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応(検討中)】
当社は、長期目標である2030年への道筋として設定した「1st Growth Plan」期間(2021年12月期~2024年12月期)において、売上高成長率を重要な経営指標として事業運営を行ってきた結果、積極採用やM&Aを通じ、ビジネスとテクノロジーを一体支援するサービス体制を構築することができましたが、エンジニアリング機能の獲得を収益力強化に結び付けきれませんでした。このため、「2nd Growth Plan」期間(2025年12月期~2027年12月期)においては、サービス競争力と従業員エンゲージメントを高め、顧客関係を強化することで、「1st Growth Plan」期間に低下した収益性の回復を目指しております。
具体的な指標としては、連結営業利益の年平均成長率目標値を20%以上とし、オーガニック成長に加え、M&Aによる非連続的な成長も視野に入れております。
2024年12月期末時点の資本コストに関連する指標は、以下のとおりとなっております。
・PBR(株価純資産倍率) :2.4倍
・PER(株価収益率) :10.9倍
・ROE(自己資本利益率) :24.5%
従来より、ROEについて目標値は設定しておりませんが、概ね10~20%程度で推移しております。
CAPM(Capital Asset Pricing Model)により算定される株主資本コストは7.9%程度と認識しており、ROEから株主資本コストを差し引いたエクイティスプレッドはプラスで推移しております。
一方で、PBRは1倍を上回っているものの、業界平均との比較では、相対的に低い水準にとどまっているものと認識しております。
これを改善していくため、現在、弊社株式売買の中心となっている個人投資家向けの対話及び情報発信を増やし、当社の事業及び計画への理解を深め、信頼感を高めて頂くことや、中長期的な企業価値向上に向けた事業成長投資と株主還元との両立を目指してキャピタルアロケーションに係る各種施策を推進することにより、株主資本コストの低減及び期待成長率の向上を通じ、PER及びPBRを高めてまいります。
上記を踏まえた「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する開示については、2025年12月までに対応する予定です。
本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。また、本レポートに記載されている情報及び見解は当社が公表されたデータに基づいて作成したものです。本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。当該情報や見解の正確性、完全性もしくは妥当性についても保証するものではなく、また責任を負うものではありません。本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあり、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。 Copyright(C) Investment Bridge Co.,Ltd. All Rights Reserved. |