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(3778) さくらインターネット株式会社

プライム

ブリッジレポート:(3778)さくらインターネット 2026年3月期中間期決算

ブリッジレポートPDF

田中 邦裕 社長

さくらインターネット株式会社(3778)

 

 

企業情報

市場

東証プライム市場 

業種

情報・通信

代表者

田中 邦裕

所在地

大阪府大阪市北区大深町6-38 グラングリーン大阪 北館JAM BASE 3F

決算月

3月

HP

https://www.sakura.ad.jp/corporate/

 

株式情報

株価

発行済株式数(自己株式を控除)

時価総額

ROE(実)

売買単位

3,205円

40,022,172株

128,271百万円

15.0%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

5.00円

0.2%

5.00円

641.0倍

751.36円

4.3倍

*株価は11/12終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式および株式給付信託(J-ESOP)の保有株式を控除。

 

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主帰属利益

EPS

DPS

2022年3月(実)

20,019

763

649

275

7.55

3.00

2023年3月(実)

20,622

1,093

965

666

18.29

3.50

2024年3月(実)

21,826

884

764

651

18.26

3.50

2025年3月(実)

31,412

4,145

4,060

2,937

75.23

4.00

2026年3月(予)

36,500

350

400

200

5.00

5.00

* 予想は会社予想。単位:百万円、円。

 

 

さくらインターネット(株)の2026年3月期中間期の概要と2026年3月期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2026年3月期中間期決算概要
3.2026年3月期業績予想
4.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

今回のポイント

  • 26/3期中間期は前年同期比17.8%増収、営業損失9.2億円(前年同期は12.9億円の利益)。提供開始2年目を迎えたGPUインフラストラクチャーサービスが成長を牽引して売上高は上期として過去最高を更新した。減価償却費等の機器関連費用や販売用のサービス原価等が増加して売上総利益率が前年同期32.8%から20.1%に低下、クラウドサービスの機能開発や販売促進の強化など成長戦略に沿った人材投資を実施したことで販管費が増加した。

     

  • 26/3期は前期比16.2%増収、91.6%営業減益を計画する。期初予想は売上高404億円、営業利益38億円だったが、7月に減額修正している。継続を見込んでいた生成AI向けの大型案件終了の影響により、一時的にGPUインフラストラクチャーサービスの売上成長が遅れる見込みとなったことによるもの。多様なニーズに対応した生成AI向けサービスの拡充や新たな顧客層の獲得、組織再編による営業体制強化を通じ、期末にかけて案件数が増加する見通し。また、顧客起点の全社横断開発体制や、GPUの相互再販などパートナーとの共創型エコシステム構築による販売力を強化する方針。

     

  • 継続を見込んでいた大型案件のサービスが終了し、GPUインフラストラクチャーサービスの売上成長に遅れが生じたことにより、26/3期は減額修正となった。ただし、国内AI市場は急速に拡大、同社の高い売上成長が持続する方向性に変化は生じていない。26/3期下期から来期以降はクラウドサービスとGPUインフラストラクチャーサービスが両輪で牽引して利益も伴ったしっかりとした成長を取り戻すだろう。株価は軟調に推移、24年高値の3分の1の水準にあるが、今後の高い成長を考慮すると十分に割安な水準に来ているといえそうだ。ESG経営への取り組みにも引き続き注目、こうした取り組みも同社の潜在成長力の大きさを示していると考える。

     

     

     

1.会社概要

東京(西新宿、東新宿、代官山:フロア単位の賃借)、大阪(堂島:フロア単位の賃借)、北海道(石狩:土地建物保有)の3エリアで運営しているデータセンターを活かし、クラウド・インターネットインフラサービスを提供している。24年1月よりGPUクラウドサービス(26/3よりGPUインフラストラクチャーサービスと定義)を提供開始。26年3月から国内唯一のガバメントクラウド認定企業となる見込み。インフラを自社で保有する事で高収益を追求、稼働率を上げ固定費リスクを軽減している。

 

【ビジョン】 

「やりたいこと」を「できる」に変える

高い熱量を持って挑戦するすべての人たちが、自分のやりたいことを叶えられるような社会をインターネットとともにつくる。それが、さくらインターネットの目指す姿です。インターネットには人と社会を幸せにする力があると信じて、「やりたいこと」を「できる」に変えるアプローチを広く届けていきます。お客さまをはじめ、社員、地域のみなさまなど、つながりのあるすべての人のために、未来のあるべき姿を思い描くことを大切にしています。

 

ビジョンの実現に向けて
インターネットの普及によって社会は急速に発展を遂げ、そのスピードは今後ますます加速していくことが予想される。変化の激しい時代でありながらも、多くの人がやりたいことを叶えられるような社会をインターネットとともにつくっていくために同社が注力しているテーマは以下の通り。

 

Ⅰ.ESとCSの実現
ES:エンプロイーサクセス。社員の成功やありたい姿を実現するための取り組み、および考え方
CS:カスタマーサクセス。顧客を成功にみちびくための取り組み、および考え方

 

ESの方針
人材の成長と成功を導く「5つの柱
1.人材育成と学び合う文化づくり
2.心と体の健康
3.多様な人材の活躍促進
4.チャレンジとリーダーシップによって新しい価値を育む文化づくり
5.フレキシブルな働き方

 

3つのバリュー ~チームで共創を生むための行動指針~

肯定ファースト

本質的なコミュニケーションをするための土台として、まずは相手の話を肯定的・受容的に受け止めた上で、提案や議論することを大切にしています。

リード&フォロー

チームの成功のためには、ビジョンや目標を掲げ先頭に立ち、リーダーシップを発揮する人と、全力でサポートし、フォロワーシップを発揮する人の両方が必要です。時にはリーダーとして、時にはフォロワーとして、一人ひとりが自律して行動できることを大切にしています。

伝わるまで話そう

人間関係のトラブルの多くはお互いの合意のない期待から生まれると言われています。相手に伝わるまで話すこと、わかるまで聞くことを通して、お互いの期待を明確化し、すれ違いを起こさないことを大切にしています。

 

CSの方針

ビジョンを語り合う関係性

さくらインターネットが一番大切にしているのは、お客さまとともにビジョンを語り合い、思いを共有する関係性です。お互いに気兼ねなく話せる信頼関係を築くことができて初めて、本当にやりたいことへの挑戦ができるのだと思います。ただサービスを提供するだけでは終わらず、変化し続ける事業に対して、やりたいことを一緒にやりましょうと声を掛け合う。そして掴んだ成功をお客さまと一緒に喜ぶことが、当社のカスタマーサクセスです。

人と人のつながりを太く結ぶ

お客さまと長期的なお付き合いをしていくためには、人と人とのつながりが欠かせないと考えています。サービスの使い方を学び合う勉強会は、まさに距離を近づけるための場です。今までは聞きづらかったようなことを聞きやすくして、わたしたちからも一歩踏み込んだサービスを提案させていただく。そして、良い知らせも悪い知らせも一緒に向き合っていける状態をつくり、連続的な支援によってお客さまの大きな成功を生み出していきます。

 

Ⅱ.クラウドビジネスへの集中
デジタル庁設立に象徴されるような国の取り組みをはじめ、地方自治体や民間企業においてもDX推進を掲げるデジタル時代が到来している。この大きなビジネスチャンスに踏み出していくには、会社のあり方を大きく変革することが必要だと考えた。それが「クラウドビジネスへの集中」。
物理基盤からクラウドが主体となる事業構造へと変革し、クラウドサービスの機能強化、ソフトウェアサービスの開発などに注力している。さらに、サーバーに詳しいこれまでの顧客層から裾野を広げ、デジタルを熟知されていない一般の方や企業にもサービスの提供範囲を広げていき、誰もがインターネットで「やりたいこと」を「できる」に変えられるよう支援する。

 

Ⅲ.さらに成長するための重点テーマ
さくらインターネットが社会の変化に対応してデジタルを主軸とした課題解決を提供できるよう、注力するテーマを設定。

デジタル化

デジタル化は効率化という文脈で語られることが多いですが、生活、ビジネス、社会のあり方そのものを変える力があります。デジタルを主軸にしながら、日本が抱える低成長などの課題を解決していくことが、わたしたちの命題です。

スタートアップ

高い熱量をもちながら、精神的にも、考え的にも、新しい人が世界の常識を壊して、よりよい世の中にしてくれると信じています。さくら自身もスタートアップとして始まったので、事業で得られた知見や資金を次世代のスタートアップに投資して挑戦を応援します。

地方創生

リモートワーク前提の働き方に転換するとともにオフィスを東京に集中させず、全国各地に拠点を構えて地域の人材を雇用しています。また、その土地ならではのデジタル化がより活発になるよう、地域の方々との交流を通じて取り組んでいきます。

教育

誰でもITを活用できるように、そして活発なコミュニティが生まれるように。社員に限らず、これからクラウド化に取り組む一般企業の方、ITの学びを深めたい学校の先生、次世代を担う子どもたちなど、広範囲に渡る教育体制の構築を目指していきます。

 

【事業内容】

事業は、クラウドサービス(クラウドインフラストラクチャー、クラウドアプリケーション)、GPUインフラストラクチャーサービス、物理基盤サービス、及び子会社事業等のその他サービスに分かれる。なお、GPUインフラストラクチャーサービスは25/3期から新たに加わった(当初はGPUクラウドサービス)。25/3期の売上構成比は、クラウドサービス44.6%(うち、クラウドインフラストラクチャー30.7%、クラウドアプリケーション13.8%)、GPUクラウドサービス(26/3期からGPUインフラストラクチャーサービス)20.2%、物理基盤サービス11.8%、その他サービス23.4%。

 

クラウドサービス
幅広いサービスラインアップを提供して培ってきた同社の技術力・ノウハウを活用し、顧客の利用シーンや成長フェーズにあわせた新たなクラウドサービスの開発を加速させている。
クラウドインフラストラクチャー
仮想化技術により、物理サーバー上に複数の仮想サーバーを構築し、そのひとつひとつが専用サーバーのように利用できるサービス。基本的に仮想サーバー1台毎の単体契約となるサービス(「さくらのVPS」)と、契約の中で複数台サーバーの申し込みとそのネットワーク設定を可能とし、日割や時間割での課金が可能なサービス(「さくらのクラウド」)等を提供。
クラウドアプリケーション
同社が所有する物理サーバーと豊富な機能をメンテナンス不要で複数の顧客が共同で利用するサービス(「さくらのレンタルサーバ」)をはじめとした自社やパートナー企業と開発したSaaSサービス等を提供。

 

GPUインフラストラクチャーサービス
24年1月からサービスの提供を始めた。25/3期から独立した事業として加わる。高性能なGPUを利用可能な生成AI向けクラウドサービス「高火力シリーズ」を提供。大企業やAIメガベンチャー、研究機関だけでなく、AIアプリケーション開発者や機械学習のスポット利用者など多様なニーズに応える。

 

物理基盤サービス
同社が運営するデータセンター内に、顧客所有の通信機器類を自由に設置できるスペースと、インターネット接続に必要な回線や電源などを貸与するハウジングサービス、及び同社が所有する物理サーバーを専用で利用できる専用サーバーサービスがある。

 

その他サービス
ゲヒルン(株)のセキュリティサービス、アイティーエム(株)の大規模法人向けMSP(マネージメント・サービス・プロバイダ:サーバーやネットワークの監視運用保守を請負う)、ビットスター(株)の小中規模法人向けMSP、プラナスソリューションズ(株)のハイパフォーマンスコンピューティング領域のインテグレーション、IzumoBASE(株)のストレージ仮想化サービス等の収益が含まれている。

2.2026年3月期中間期決算概要

2-1 連結業績

 

25/3期

中間期

構成比

26/3期

中間期

構成比

前年同期比

会社予想

予想比

売上高

13,271

100.0%

15,631

100.0%

+17.8%

16,000

-2.3%

売上総利益

4,349

32.8%

3,148

20.1%

-27.6%

-

-

販管費

3,053

23.0%

4,069

26.0%

+33.3%

-

-

営業利益

1,295

9.8%

-920

-

-

-1,150

-

経常利益

1,102

8.3%

-811

-

-

-1,100

-

親会社株主帰属利益

710

5.4%

-626

-

-

-800

-

* 単位:百万円、会社予想は2025年7月時点の予想。

 

17.8%増収、営業損失9.2億円、売上高は上期として過去最高
売上高は前年同期比17.8%増の156.3億円。提供開始2年目を迎えたGPUインフラストラクチャーサービスが成長を牽引して上期として過去最高を更新した。
営業損失9.2億円(前年同期は12.9億円の利益)。減価償却費等の機器関連費用やその他サービスにかかる販売用のサービス原価等が増加して売上総利益率が前年同期32.8%から20.1%に低下、クラウドサービスの機能開発や販売促進の強化など成長戦略に沿った人材投資を実施したことで販管費が増加した。

 

サービスカテゴリー別売上高

 

25/3期 中間期

構成比

26/3期 中間期

構成比

前年同期比

クラウドサービス

6,812

51.3%

7,509

48.0%

+10.2%

内訳

クラウドインフラストラクチャー

4,716

35.5%

5,152

33.0%

+9.2%

クラウドアプリケーション

2,096

15.8%

2,356

15.1%

+12.4%

GPUインフラストラクチャーサービス

2,240

16.9%

2,820

18.0%

+25.9%

物理基盤サービス

1,646

12.4%

1,577

10.1%

-4.1%

その他

2,572

19.4%

3,723

23.8%

+44.8%

合計

13,271

100.0%

15,631

100.0%

+17.8%

* 単位:百万円

 

なお、GPUをベアメタル型で提供するサービスを「GPUインフラストラクチャーサービス」として新たに定義している。GPUをクラウド型で提供するサービスについては「クラウドサービス」として計上。
以下の様に再整理されている。

(同社説明資料より)

 

営業利益の変動要因


(同社説明資料より)

 

財政状態

 

25年3月

25年9月

 

25年3月

25年9月

流動資産

41,744

19,694

流動負債

40,347

34,194

有形固定資産

33,469

51,190

固定負債

10,814

16,453

無形固定資産

1,259

1,565

株主資本

29,931

29,228

投資その他

4,945

7,808

純資産

30,257

29,611

固定資産

39,674

60,565

負債・純資産合計

81,419

80,260

* 単位:百万円

* 株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

中間期末の総資産は前期末との比較で11.5億円減少し802.6億円。主な要因は、生成AI向けサービス用機材にかかる債務の支払いによる現預金の減少、売掛金の減少等によるもの。負債は同5.1億円減少し506.4億円。主な要因は、生成AI向けサービス用機材にかかる債務の減少等によるもの。純資産は6.4億円減少し296.1億円。主な要因は、親会社株主に帰属する中間純損失の計上に伴う利益剰余金の減少等によるもの。自己資本比率は36.6%(前期末36.9%)。

 

設備投資・人員
投資は通期予算401億円に対して277億円。内訳はデータセンター668億円(通期予算107億円)、サーバー、ネットワーク機器206億円(同290億円)、その他(システム、事務所関連等)1億円(同3億円)。サーバー、ネットワーク機器の内、生成AI向けは181億円。生成AI向けGPUインフラストラクチャーサービス提供拡大に向けた早期のGPU確保とデジタルインフラへの積極投資を実行し需要拡大へ先手を打つ。サービス提供基盤となるコンテナ型データセンターの構築も進行中。
人員については、期末のグループ従業員数が1,116名と前期末との比較で119名増加した。

 

2-2 第2四半期(7-9月)連結業績

 

25/3 1Q

2Q

3Q

4Q

26/3 1Q

2Q

前四半期比

売上高

5,935

7,335

8,125

10,015

7,492

8,139

+8.6%

売上総利益

1,698

2,650

2,966

3,914

1,543

1,604

+3.9%

営業利益

231

1,064

1,289

1,560

-457

-463

-

経常利益

95

1,006

1,386

1,571

-438

-373

-

四半期純利益

41

668

932

1,295

-324

-302

-

EBITDA

1,032

2,212

2,712

3,127

1,205

1,463

-

売上総利益率

28.6%

36.1%

36.5%

39.1%

20.6%

19.7%

-

営業利益率

3.9%

14.5%

15.9%

15.6%

-

-

-

* 単位:百万円

 

前四半期比8.6%の増収、営業損失は横這い
2Qの売上高は前四半期比8.6%増の81.3億円。営業損失は前四半期と概ね横這いの4.6億円。
また、サブスクリプション型売上の主要KPIとして、22/3期からARR(Annual Recurring Revenue:各期月末のMRR(Monthly Recurring Revenue)継続課金による月次収益を12倍して算出)を開示している。26/3期2QのARRは146.8億円となり、前年同期(132.8億円)との比較で10.5%増加した。
カスタマーサクセス(Customer Success)・エンプロイーサクセス(Employee Success)を最優先とする経営方針に転換しており、ユーザーに長く利用してもらうため、短期的な売上というよりは、LTV(Life Time Value)をいかに高めていくかに力を入れており、この一環として、ARRが重視されるようになった。

 

サービス別売上高

 

25/3期

26/3期

前四半期比

1Q

2Q

3Q

4Q

1Q

2Q

クラウドサービス

3,368

3,444

3,543

3,650

3,698

3,810

+3.0% 

クラウドインフラストラクチャー

2,346

2,370

2,436

2,506

2,529

2,623

+3.7%

クラウドアプリケーション

1,021

1,074

1,107

1,144

1,169

1,187

+1.6% 

GPUインフラストラクチャー

497

1,742

1,834

2,697

1,363

1,456

+6.8% 

物理基盤サービス

825

820

825

822

802

775

-3.3%

その他サービス

1,243

1,328

1,922

2,844

1,627

2,095

+28.7% 

* 単位:百万円

 

売上原価の内訳

 

25/3 1Q

2Q

3Q

4Q

26/3 1Q

2Q

賃料

325

323

363

472

474

485

減価償却費・リース料

1,080

1,303

1,384

1,594

1,640

1,802

労務費

1,025

1,082

1,193

1,472

1,396

1,368

通信費

405

388

389

412

397

379

電力費

266

342

327

318

336

339

修繕費

218

214

265

301

443

535

販売商品原価等

495

607

710

745

583

574

その他

419

423

525

784

675

1,048

* 単位:百万円

3.2026年3月期業績予想

3-1 連結業績予想

 

25/3期 実績

構成比

26/3期 予想

構成比

前期比

売上高

31,412

100.0%

36,500

100.0%

+16.2%

営業利益

4,145

13.2%

350

1.0%

-91.6%

経常利益

4,060

12.9%

400

1.1%

-90.1%

親会社株主帰属利益

2,937

9.4%

200

0.5%

-93.2%

* 単位:百万円

 

26/3期は前期比16.2%の増収、同91.6%の営業減益を計画
26/3期は、売上高が前期比16.2%増の365億円、営業利益は同91.6%減の3.5億円を計画する。期初予想は売上高404億円、営業利益38億円だったが、7月に減額修正している。継続を見込んでいた生成AI向けの大型案件終了の影響により、一時的にGPUインフラストラクチャーサービスの売上成長が遅れる見込みとなったことによるもの。GPUインフラストラクチャーサービスの売上予想を158億円から85億円に引き下げた。一方で、売上計上方法の変更やグループ会社による案件獲得等により、その他サービスの売上予想を57億円から87億円に引き上げている。多様なニーズに対応した生成AI向けサービスの拡充や新たな顧客層の獲得、組織再編による営業体制強化を通じ、期末にかけて案件数が増加する見通し。大規模クラスターや推論利用などの多様なニーズに対応し、8月にベアメタル型GPUクラウドサービス 「高火力 PHY B200プラン」、9月にクラウド型スーパーコンピュータ「さくらONE」、生成AI向けのプラットフォーム「さくらのAI Engine」の提供を開始している。より高付加価値なサービスの提供で、GPUの収益性を向上させる。また、顧客起点の全社横断開発体制や、GPUの相互再販などパートナーとの共創型エコシステム構築による販売力を強化する方針。
配当は、前期比1.00円/株増配の5.00円/株の期末配当を予定。

 

営業利益の変動要因(修正前と修正後との比較)


(同社説明資料より)

 

3-2 重点施策への取り組み

引き続き、生成AI向けサービスを強化させるとともに、ガバメントクラウド対応を軸にパートナーとの共創で市場開拓を一層加速させていく方針。
重点施策への取り組み状況サマリー

成長戦略の実践

成長戦略を支える基盤強化

サービスラインアップを充実

生成AIの旺盛な需要に応える多様なサービスをリリース

高火力PHY B200プラン(8月)

さくらのAI Engine(9月)

さくらONE(9月)

人材獲得

137名を採用(年度内入社予定者を含む)

優秀人材の採用と社内異動を組み合わせ、成長領域に人材を重点的に配置し、注力事業の拡大と、それを支える基盤体制の強化を加速

信頼できるプラット フォームを 提供

㈱Preferred Networks、同社、NICT*の3社間で国産生成AIのエコシステム構築に向け、 基本合意を締結(9月)

26年3月末のガバメントクラウド正式認定に向け社内の開発リソースを集中し順調に進捗

体制強化

成長戦略を着実に推進するため、上級執行役員のリーダーシップのもと成果志向の経営体制を強化。顧客の声(VoC)を起点としたプロダクト開発を実現する社内連携を加速

顧客・パートナーとの接点を

拡大

9件の展示会にブースを出展。認知拡大、リード・案件の獲得を推進。「さくらのクラウド」 セールスパートナー数は10月時点で63社に拡大

大口顧客への往訪、さくらのクラウドのプレミアムサポートの提供(11月予定)

データ

センターの

拡張

コンテナ型データセンターにNVIDIA B200 GPU約400基を設置(8月)

26年1月より第2期コンテナ型データセンターでのサービス提供に向け、構築を進行

*国立研究開発法人情報通信研究機構

 

生成AI向けサービス
日本の生成AIインフラ市場で独自のポジションの確立を目指す。国内完結型のサービスを強みとして、海外依存に代わる新たな選択肢を提供する。
取り組み内容
大規模クラスターや推論利用などの多様なニーズに対応した生成AI向けサービスを続々とリリース
・ 8月「高火力 PHY B200プラン」
・ 9月「さくらのAI Engine」「さくらONE H200プラン」
・10月「さくらONE B200プラン」
㈱Preferred Networks、さくらインターネット、NICTの3社間で、安心・安全で日本社会と調和する国産生成AIのエコシステム構築に向けた基本合意を締結(9月)
日本の法制度や商習慣に適合し、ビジネスで高い信頼性と安全性を備えた独自の生成AI基盤を提供

 

クラウドサービス
積極的な情報発信によりブランド認知と顧客接点を拡大させる。顧客起点で課題を解決する日本発クラウドで市場のシェアを高めていく方針。
取り組み内容
認知拡大・リード獲得を強化
自治体リード、共創パートナーの獲得に向け展示会へ積極的に出展。クラウド乗り換えキャンペーンの実施やパートナー連携により新規顧客を獲得
石狩リージョンに第3ゾーンを開設、開設を記念した割引キャンペーンも開始
大規模案件も北海道で受け入れ可能に。災害分散と環境配慮を両立し、柔軟な選択肢を提供
26年3月末のガバメントクラウド正式認定に向け開発は順調。国産クラウドの信頼を基に公共分野での成長基盤を確立

 

LTV向上
サポート体制と営業体制を強化し、顧客起点の価値創出サイクルにより、LTVを最大化させる。
取り組み内容
顧客接点の拡大
営業体制を強化するとともに大口顧客との対話を拡大し、ニーズや課題を的確に把握。VoC(顧客の声)をプロダクト改善へとつなぐ仕組みを構築し、顧客起点の価値創出サイクルを加速
顧客ビジネスに伴走するサポートを開始
「さくらのクラウド」向けの有償オプションサービスとして、プレミアムサポートを11月より提供開始予定

 

販路拡大・共創
パートナーとの協働を通じて、新たな顧客層の獲得を推進する。共創型エコシステムの強化により、提供価値の向上と市場シェアの拡大を目指す。

セールスパートナーは63社に拡大(同社HP公開数)
展示会への共同出展や11月開催のパートナーカンファレンスを通じて急速に変化するIT市場をパートナーと共に開拓
「国産クラウド×新たな選択肢」を軸にパートナーとの協創による市場シェアと顧客価値の拡大を推進

 

KDDI㈱、同社、㈱ハイレゾの3社で、GPUの相互再販を行う「日本GPUアライアンス」を設立(10月)する。日本におけるGPUコンピューティングリソースの安定供給体制を確立するとともに同社単独では難しかった大規模GPU需要へのアクセスを実現し、案件を獲得していく。

 

取次店の登録数1,500社を突破し、ネットワークは着実に拡大している。今後は制度のベネフィット拡充を通じ、レンタルサーバ事業の顧客基盤を強化させる。

 

生成AI向けサービス 投資スケジュール
生成AI市場の成長を見据えた先行投資を着実に実行していく。既存GPUリソースを最大限に活かしながら、競争力強化に向けた戦略的投資を継続する。

 

(同社説明資料より)

 

3-3 今後の成長戦略

3-3-1生成AI向けサービス
市場環境
国内AI市場は23年度1兆1,414億円から28年度には2兆7,780億円へ拡大する見通し。なかでも、生成AI市場は1,416億円から1兆7,397億円へ、プラットフォームインフラ領域が高い成長率(CAGR:65.2%)で牽引して大幅に拡大する見込み。
基盤モデルや、AIアプリケーションを支えるインフラが市場をけん引し、今後も市場は拡大する
利用(推論)フェーズへの移行で、アプリケーションへの基盤モデルの組み込みが拡大する予想

 

事業環境の変化
想定より早期に推論ニーズが急拡大している。先行準備していた多様な生成AI向けサービス(クラウド型の自社スパコンや生成AI向けプラットフォームなど)を早期に市場投入していく。

利用者層の拡大により、多様化するニーズへの対応と高付加価値サービスに対する期待が高まる
●利用者のすそ野が広がる中、ユースケースの多様化と高度化が進展。それに伴い高性能で、柔軟性の高いインフラへの需要が高まっている
●国内外でのGPUサービス提供が加速し、国内の支援施策や海外勢による積極的な価格戦略が市場に登場。スペックや価格による差別化が困難な状況

生成AIの活用フェーズ本格化により、「推論」ニーズが急拡大し、国産プラットフォームへの期待と信頼が一層高まる
●AI活用の本格フェーズへと移行が進む中、実運用レベルでの「推論」ニーズが急速に拡大。特に機密性・国産志向の高いセグメント(自治体・金融・医療等)において、国内基盤上での安全かつ柔軟な運用が可能なプラットフォームサービスや国産LLM活用への関心が高まっている

 

全体方針
高付加価値型生成AIインフラで、収益性と成長を両立する提供モデルへ進化。通期に向けた成果の最大化を見据え、重点施策を着実に推進する。提供価値の深化と、提案力・展開力の強化により、持続的な成長を実現させる。

 

高付加価値戦略の実行
同社の強みであるクラウド型サービスへリソースを集中させる。多様なニーズに応える高付加価値サービスラインアップを提供。高成長・高収益領域への注力で計算基盤の収益性の最大化を目指す。

 

重点施策

大口・エンタープライズニーズへの取り組み

高性能GPU・クラウド型自社スパコンを売上成長の主要ドライバーと位置づけ、大口案件の獲得とGPUリソースの稼働率向上を目指す。

生成AIプラットフォームサービスの取り組み

推論需要の拡大に対して、国内完結・機密性・即応性・拡張性を兼ね備えた「使える」サービスを提供する。利用者のすそ野拡大を通じて、収益性の向上と継続的な収益基盤の構築を図り、日本発・信頼性の高いインフラ基盤としての地位を確立させる。

認知拡大

VM型GPUクラウドサービスの正式版提供開始にあわせて、生成AI向け国産クラウドサービスとして認知を拡大させる。

 

販売計画
継続見込みの生成AI向け大型案件終了の影響により、26/3期は販売計画を見直した。一方、27/3期は重点施策の展開による成長加速を見据え、従来想定の水準を据え置いている。

(同社説明資料より)

 

技術・インフラ・支援体制のすべてを磨き、顧客のAI実装をともに成功へ導くデジタルインフラトップ企業として飛躍する。

 

3-3-2クラウドサービス

売上予想
クラウドサービスの26/3期売上は期初の159億円から162億円へ修正。
販売体制の強化とサービス機能開発を加速し、中長期的な事業拡大をけん引する。
既存のクラウドサービスは、顧客理解を起点とした課題解決型の提案と営業・技術が連携した伴走支援により、売上拡大を目指す
26年3月末のガバメントクラウド正式認定に向けた機能開発は順調に進捗
クラウド型の生成AI向けサービスである「高火力 VRT」「高火力 DOK」を今期よりクラウドサービスへ分類。当初予想から+3億円の見込み

 

全体方針
戦略的な強み”と“共創型エコシステム”を掛け合わせ、顧客価値と市場開拓の両輪で成長を最大化させる方針
「売る」ではなく「共に価値をつくる」。顧客起点で未来の需要を創出する進化型ソリューション営業へ。

 

重点施策
顧客の「やりたいこと」を「できる」に変える高付加価値サービスを提供する。

 

3-4 ESG経営への取り組み

デジタル前提の社会づくりを支える事業活動を通じて、環境・社会へ貢献
Topic

Environment

環境

再エネ100%運用の生成AI向けコンテナ型データセンターが稼働開始(6月)

Social

社会

Great Place To Work® Institute Japanが実施する「働きがい認定企業」において、同社が初選出

Governance

統治

執行役員を含む女性役員比率25.0%(25年6月30日時点)

 

取り組み
環境
〇二酸化炭素排出の抑制
〇再生可能エネルギーの活用
25年8月開催のデータセンターフォーラム成果発表会で、執行役員の澤村氏が登壇。再生可能エネルギー100%達成を果たした石狩データセンターの事例をはじめ、データセンターの国内外の最新トレンドや今後の展望を発表

 

社会
〇スタートアップ支援を推進
〇デジタル分野の人材育成と、ITを活用した社会課題の解決を推進
〇地方創生とデジタルイノベーションの創出
〇人的資本経営の実践

 

統治
〇経営の透明化
〇コンプライアンスの徹底
〇リスクマネジメント
〇情報セキュリティ維持・向上

 

4.今後の注目点

継続を見込んでいた大型案件のサービスが終了し、GPUインフラストラクチャーサービスの売上成長に遅れが生じたことにより、26/3期は減額修正となった。ただし、国内AI市場は急速に拡大、同社の高い売上成長が持続する方向性に変化は生じていない。そのための投資と人材の獲得も着実に進めている。26/3期下期から来期以降はクラウドサービスとGPUインフラストラクチャーサービスが両輪で牽引して利益も伴ったしっかりとした成長を取り戻すだろう。株価は軟調に推移、24年高値の3分の1の水準にあるが、今後の高い成長を考慮すると十分に割安な水準に来ているといえそうだ。
ESG経営への取り組みにも引き続き注目している。再エネ100%運用の生成AI向けコンテナ型データセンターが6月に稼働開始したが、12月には追加で稼働する見通し。また、人的資本経営への取り組みを一段と強化しており、困難を極める人材獲得もスムーズに遂行することができるだろう。業績には現れないが、こうした取り組みも同社の潜在成長力の大きさを示していると考える。

 

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

9名、うち社外5名(うち独立役員3名)

監査役

4名、うち社外4名(うち独立役員2名)

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2025年7月1日)
基本的な考え方
当社のコーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方は、当社が企業規模を拡大していくのに並行して、経営管理組織の整備を推進し、各部門の効率的・組織的な運営及び内部統制の充実を図ることであり、その基本姿勢を基に現在まで努力してまいりました。
特に、インターネット業界は、目に見えない多数の利用者に対して通信施設を開放しており、世界中のインターネット利用者を市場として成立している事業でありますので、他業界以上の大きな社会的責任を背負っております。当社におけるコーポレート・ガバナンスの確立は、このような社会的責任を果たしていくことを可能にする経営基盤であると考えております。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由(抜粋)>
補充原則2-4-1 【中核人材の登用等における多様性の確保】
<多様性の確保についての考え方・自主的かつ測定可能な目標とその状況>
当社は、すべての社員が多様な価値観を持つダイバーシティの担い手であることを前提に、年齢・性別・国籍などの属性に区別なく、多様性を尊重した組織づくりを進めております。多様なバックグラウンドを持つ社員が、それぞれの価値観をお互いに認め合いながら協働・共創することは、新たな価値観の創出やイノベーションにつながると考えており、当社はこれを通じて、グループ全体の持続的な成長とお客様への価値提供、並びに社会への貢献を目指しております。

 

(1)女性社員の管理職への登用
当社は、2026年3月までに全管理職に占める女性の割合を、全社員における女性比率(2025年3月期:26%)と同程度に引き上げることを目標としております。しかしながら、成長戦略に伴う大幅な人員増の中で女性の中途採用者が増加した一方、管理職に占める女性の割合は2025年3月末時点で14%にとどまっており、目標との差が生じている状況です。今後は、女性社員の中からマネジメントポジションを担う人材の発掘・育成を強化し、候補者層の拡大と登用機会の明確化を通じて、目標達成に向けた取組みを一層推進してまいります。また、当社では性別を問わず、多様性を尊重した人材戦略の一環として、社員一人ひとりの志向やライフステージを踏まえたキャリア支援に取り組んでおり、社員が自立的にキャリアを形成できる環境整備を進めております。今後も、多様な人材がその能力を最大限発揮できる就業環境の構築を通じて、女性管理職比率の向上にも継続して取り組んでまいります。

 

(2)中途採用者の管理職への登用
当社では将来の持続的成長を支える人材の確保に向けて、多様性を尊重した採用・登用を推進しており、管理職級を含む優秀な人材の採用を積極的に行っております。一方で、当社は社員のほとんどが中途採用者であることから、中途採用者の登用については、目標設定を行っておりません。

 

(3)外国人の管理職への登用
当社では、将来の持続的な成長に向け、クラウドサービス分野を中心に戦略的投資を加速しており、その一環として、国内を中心とした事業成長を支える人材採用を強化しております。そのため、現時点においては、外国人の管理職への登用に対する数値目標は設定しておりませんが、将来的には海外展開を視野に、グローバル人材の採用についても、検討も進めてまいります。また、海外展開の進捗状況に応じて、必要と判断した場合には、登用に関する目標設定を検討してまいります。

 

<多様性の確保に向けた人材育成方針、社内環境整備方針、その状況>
当社グループでは、人材の多様性の確保を含む人材の育成及び社内環境整備に関する方針として、「ES(エンプロイーサクセス。以下、「ES」)」を掲げています。これは、社員の能力発揮を後押しする学びと実践のサイクル、多様な人材が集い挑戦する機会の提供、安心して長く活躍できる基盤作りを通して、社員一人ひとりの成長と成功(ES)を実現し、社会やお客様への価値提供の源泉である人材の価値をより高めていくことを目指すものです。

 

当社は、会社が「働きやすい」環境を提供し、その中で社員個人が「働きがい」を追求できることを理想として、働き方の多様性を尊重するさまざまな取組みをおこなっています。社内環境についても、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの理解につながる機会づくり、多様な社員の活躍につながる環境づくり、成長実感を持てるキャリアや学びへの仕組みづくりなどを通して、社員一人ひとりの個性や成長する意欲と、個々の能力を最大限に発揮できる風土づくりに取組んでまいります。

 

補充原則3-1-3、4-2-2 【サステナビリティについての取組み、取組みについての基本方針の策定等】
<サステナビリティについての取組み>
当社グループは、国内で運営するデータセンターを基盤とした、クラウド・インターネットインフラサービス事業を展開しております。デジタル社会の進展に伴い、サービスの信頼性と安全性を確保する重要性はますます高まっており、サイバー攻撃やシステム障害など、社会全体に影響を及ぼすリスクが深刻化しています。当社グループは、社会基盤を担うデジタルインフラ事業者として、その責任を強く認識しており、お客様からお預かりする情報資産ならびに当社が保有する情報資産をあらゆる脅威から保護するため、サイバーセキュリティへの対応を最重要課題の一つとして位置づけております。
また、当社事業の基盤であるデータセンターは、サーバーの稼働や冷却のために、大量の電力を消費することから、気候変動・脱炭素は、当社の重要な課題の一つと認識しており、当社はこれまで、環境配慮型の外気冷房の導入や、非化石エネルギー由来の電力証書の調達を通じて、使用電力に伴うCO2排出量の実質ゼロを実現し、脱炭素社会の実現に向けた取組みを継続してまいりました。
さらに、当社の事業が持続的に成長し続けるためには、優秀な人材採用を進めるとともに、多様なバックグラウンドを持つ社員が相互に学び合い、高いパフォーマンスを安定的に発揮できる、人材の育成や就業環境の整備が極めて重要であると認識しており、当社では、社員の働きやすさと働きがいの両立を図る人的資本投資を進めております。
ここでは、当社グループの主な取組みとして、気候変動・脱炭素、サイバーセキュリティ、人的資本経営の3点について記載いたします。

 

①気候変動・脱炭素への取組み
社会・産業のデジタル化が進展する中、データ活用によるビジネス改革や社会課題の解決が期待されており、これを支えるデジタルインフラとしてのデータセンターの重要性は一層高まっています。一方で、データセンターは、サーバーの稼働や冷却のために大量の電力を消費し、近年では生成AI活用の急速な普及やVR技術の商業化の進展に伴い、高性能サーバーによる消費電力は増大しています。地球温暖化の抑制をはじめとする地球環境保全の重要性が高まる中、SDGsの観点からも、企業にはエネルギー消費の管理・削減を通じた、脱炭素実現への貢献が求められており、当社もこの認識のもと、環境負荷の低減に向けた取組みを積極的に推進しております。
2011年11月に開所した、北海道石狩市の環境に配慮した郊外型大規模データセンター(石狩データセンター)では、立地条件を活かした冷涼な外気による外気冷房の導入によって冷却効率を高めるとともに、再生可能エネルギーの自社利用を目的とした石狩太陽光発電所の開設(2015年)や、非化石証書の利用による電力の実質CO2排出量ゼロを実現(2022年)し、2023年からは、同センターの電力を再生可能エネルギー電源100%へ完全に切り替えるなど、持続可能なデータセンター運営に注力してまいりました。また、石狩データセンター以外の当社が運営するデータセンター及び事業所においても、非化石エネルギー由来の電力証書を調達することにより、使用電力に伴うCO2排出の実質ゼロを達成しており、今後も、脱炭素化に向けた取組みを継続的に行ってまいります。
2021年には、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)による提言」への賛同を行うとともに、同提言に賛同する企業・機関等による「TCFDコンソーシアム」にも参加しております。現在は気候変動を主軸とした情報整理となっておりませんが、気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、適切な開示を行えるよう、引き続き準備を進めてまいります。なお、ガバナンス及びリスク管理につきましては、有価証券報告書において開示しております。

 

②サイバーセキュリティへの取組み
近年、社会におけるデジタル技術の進展に伴い、インターネット上の個人情報や機密情報の保護は一層重要性を増しており、不正アクセスや情報漏えいなどのリスクも複雑化しています。
当社は、デジタルインフラを提供する企業として、インターネット上の安全性や品質の確保を重要な責務と捉えており、インフラの停止が社会や顧客に重大な影響を及ぼすことを踏まえ、顧客の情報資産および当グループの経営資源としての情報資産をあらゆる脅威から保護するためのセキュリティ体制の強化に取り組んでいます。特に、公共分野における信頼性の高いクラウドサービスの提供を目指し、政府の定める厳格なセキュリティ要件に準拠したガバメントクラウドへの対応にも注力しており、その一環としてより強固なセキュリティ基盤の構築を進めるとともに、日々の運用と見直しを重ねながら改善を推進しています。
一方、「個人情報」「表現の自由」「通信の秘密」の重要性も認識し、捜査機関等からの要請に対応する際には、個人情報保護法、電気通信事業法、プロバイダ責任制限法等をはじめとする関係法令やガイドラインを遵守することでこれらの保護に努めており、インターネットの安全性や品質の向上への取組みの一環として、2023年8月より、当社が要請を記録した数と対応の概要を「透明性レポート」として公開し、情報の取扱いに関する透明性を確保しております。
また当社では、生成AIなどのインターネット上の技術の進歩やサイバーセキュリティなどに係わる法律上及び行政上の諸問題について、加盟・協賛団体を通じて広く情報を収集して的確に対応できる体制を整備し、必要に応じて意見を述べることも、クラウド・インターネットインフラサービス事業者としての責務であると認識しております。

 

③人的資本への投資
社員の能力を高めその能力を最大限に引き出す環境づくりに取り組んできた当社にとって、人材の確保や育成は強みであり、お客さまと社員の成功を支援することで共に成長していく関係を構築する「CS(カスタマーサクセス)・ES(エンプロイーサクセス)の実現」という、重点テーマにも沿ったものと言えます。当社では、社員一人ひとりが当社の資本であり、その成長や成功こそが事業やお客さまへの価値提供の源泉であるという考えから、お客様の「やりたいこと」を「できる」に変え、サステナブルな企業経営及びESを実現するために以下の取組みを行っており、詳細は有価証券報告書において開示しております。
・人材育成と学び合う文化づくり
・こころと身体の健康
・多様な人材の活躍促進
・チャレンジとリーダーシップによって新しい価値を育む文化づくり
・フレキシブルな働き方

 

<知的財産への投資>
当社は、知的財産への投資を事業の発展のために重要なものと位置付け、社内の創造的活動を積極的に支援し、当社の知的財産の適切な保護、管理及び活用を推進しております。第三者の知的財産権を尊重することの重要性を社内に周知し、知的財産権侵害の防止を徹底するよう努めるとともに、インターネット上の知的財産の適切な保護が重要であるという考えから、コンテンツの制作・提供会社ではないものの、一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)に所属し、同会の主催する各種委員会への参加などを通じ当社の知見を高めるとともに、情報交換や著作権の権利保護等の活動を行っております。

 

サステナビリティについての取組みにおいては、当社の持続的な成長に資するよう引き続き監督を行うとともに、積極的な情報開示に努めてまいります。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示(抜粋)>
原則1-4 【政策保有株式】
(1)政策保有株式に関する考え方
当社は、保有の意義・合理性が認められる場合を除き、原則として上場株式を政策保有株式として保有しません。
保有の意義・合理性については、発行会社との企業連携や事業シナジーが見込めるか、また保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているかを毎年個別銘柄ごとに検証したうえで判断します。その結果、保有の意義・合理性が乏しいと判断される株式については、適宜株価や市場動向その他の事情を考慮しつつ売却いたします。
(2)議決権行使について
当社は、上場株式の保有意義を踏まえ、当社と投資先企業双方の持続的成長と中長期的な企業価値の向上に適うか否かを基準に、議決権を行使することとしております。

 

原則5-1 【株主との建設的な対話に関する方針】
当社は、IR担当部署を設置し、株主や投資家に対しては、年2回以上の決算説明会を開催するとともに、ご要望により、代表取締役社長・取締役最高財務責任者等による個別面談等を行うことで、適切に対話の機会を設けております。また、対話にていただいたご意見については、適宜経営陣に共有する仕組みを構築しております。
なお、対話にあたっては、対話のテーマに留意し、インサイダー情報を厳重に管理しております。

【株主との対話の実施状況等】
当事業年度においては、代表取締役社長を筆頭に、最高財務責任者、IR担当執行役員やIR担当者等が窓口となり、株主の対話を積極的に推進しており、ステークホルダーの皆さまの興味・関心の高まりとともに、個別面談の回数は増加傾向にあります。
(1) 実施内容・回数
・決算説明会  2回
・スモールミーティング  7回
・投資家との個別面談等  203回
(2) 対話を行った株主の概要
アナリスト、ファンドマネージャー、国内機関投資家、海外機関投資家等
(3) 対話の主なテーマ、株主の関心事項
・通期業績予想、来期業績について
・生成AI向けクラウドサービスについて(投資、業績貢献、今後の動向)
・ガバメントクラウドについて(投資、業績への貢献時期、今後の動向)
・その他外部要因について(市場動向、競争優位性)
(4) 取締役会へのフィードバックの状況
IR活動状況とトピックについて、月次で報告を行っております。

 

 

 

 

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