ブリッジレポート
(7776) 株式会社セルシード

グロース

ブリッジレポート:(7776)セルシード 2025年12月期決算

ブリッジレポートPDF

 

 

橋本 せつ子 社長

株式会社セルシード(7776)

 

 

企業情報

市場

東証グロース市場

業種

精密機器(製造業)

代表者

橋本 せつ子

所在地

東京都江東区青海二丁目5番10号 テレコムセンタービル

決算月

12月

HP

https://www.cellseed.com/

 

株式情報

株価

発行済株式数(期末)

時価総額

ROE(実)

売買単位

328円

35,557,719株

11,662百万円

-64.7%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

0.00

-

-30.51

-

35.37円

9.3倍

*株価は3/9終値。25年12月期決算短信より。

 

業績推移(非連結)

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2022年12月

126

-743

-754

-759

-36.31

0.00

2023年12月

190

-697

-710

-846

-29.43

0.00

2024年12月

193

-846

-847

-859

-25.72

0.00

2025年12月

83

-1,046

-1,051

-1,104

-31.82

0.00

2026年12月(予)

71

-1,225

-1,250

-1,320

-30.51

0.00

*予想は会社予想。単位:百万円。

 

 

(株)セルシードの2025年12月期決算概要、橋本社長へのインタビュー等をご報告致します。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2025年12月期決算概要
3.2026年12月期業績予想
4.橋本社長に聞く
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 2025年12月期の売上高は前期比1億9百万円減の83百万円。再生医療支援事業:細胞培養器材事業において、米国における研究機関の予算が大幅に削減されるなど研究環境の急激な変化や欧州や中東などにおいて継続する地政学的な混乱などの影響により海外市場での売上が低迷した。営業利益は10億46百万円の損失。同1億99百万円の損失拡大。同種軟骨細胞シートの第3相試験の治験開始・症例登録開始による研究開発費を中心に、販管費が同1億32百万円増加した。当期純利益は11億4百万円の損失。同2億44百万円の損失拡大。固定資産について減損の兆候が認められたため、減損損失52百万円を特別損失に計上した。

     

  • 2026年12月期は減収減益を予想。売上高は前期比12百万円減の71百万円、営業損失は同1億78百万円拡大の12億25百万円を見込む。再生医療支援事業では、不透明な事業環境ではあるが、引き続き器材製品を中心に特に海外の販売の拡大を図る。再生医療CDMO(開発・製造受託機関)としての活動及び再生医療に関わる総合的なサポートを通じて、再生医療の研究開発・事業化を支援する再生医療受託製造等を推進する。再生医療支援事業のセグメント売上高71百万円を見込んでいる。細胞シート再生医療事業では、同種軟骨細胞シートなどの開発を推進する。引き続き研究開発費は増大する見込み。パイプラインの技術導出に向け新規事業先候補とも積極的に交渉を重ねていく。

     

  • 橋本せつ子社長に、同社の競争優位性、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。「ゴールに辿り着くのに時間がかかっており、株主の皆様には見守っていただいている状況ですが、同種軟骨細胞シートの開発については、第3相試験が開始されました。治験の進捗は様々な決まりごとがありますから随時公開というわけにはいきませんが、予定通り進んでいます。」「創立25周年を機に新たなMission&Visionを掲げました。5年後の2030年頃までには大きな展開をお見せするべく、全社一丸となって取り組んでおりますので、今しばらく暖かく見守っていただきたいと思います」とのことだ。

     

  • 再生医療支援事業のうち、「細胞培養器材事業」については、米国トランプ政権の国家予算見直しを受け、ライフサイエンス関連予算も大幅に削減されており、同社も大きな影響を受けている。自社ではコントロールできない部分もあるため、細胞回収に関する常識を覆す細胞シート工学の認知度を国内外で広げていくことに注力していく考えだ。2026年1月にはクオリプス株式会社(東証グロース、4894)と、細胞培養器材に関する取引基本契約を締結するなど、温度応答性細胞培養器材製品の需要は着実に高まりつつあるようだ。

     

  • 一方、再生医療支援事業の「再生医療受託事業」では、これまでも、自己軟骨細胞シート、先天性食道閉鎖症術後の小児を対象とした自己上皮細胞シートや歯根膜細胞シートの製造受託を行ってきたが、2025年は東京都立多摩北部医療センターが実施する自由診療のための食道再生上皮シート製造受託を行うこととなったほか、株式会社NPTとNPTが再生医療等製品として開発を進める、食道がんを対象とした個別化樹状細胞ワクチンの治験製品の製造受託に向けた技術開示等に係る契約を締結するなど、事業基盤がより強固になってきた。「細胞シート再生医療事業」の一本足ではない、同社の優位性を更に強化できるか、その進捗を注視していきたい。

     

     

1.会社概要

【1-1 経営理念】

創立25周年を機に新たなMission&Visionを掲げた。経営陣と社員により今後のありたい姿や何が必要なのか等を議論して文言を決定した。世界へ広がる再生医療のさらなる発展に貢献する考えだ。

MISSION

細胞の力で、世界に笑顔と希望を提供します。

VISION

私たちは細胞シート工学を基盤に新たな医療の未来を創造します。

 

【1-2 再生医療とは】

再生医療とは、失われた臓器や損傷あるいは機能が低下した臓器を細胞や、細胞外マトリクスや成長因子などを用いて再生して治療する新たな医療。アンメットメディカルニーズ(未だ有効な治療法がない治療ニーズ)の高い疾患に対する根本的な治療を可能にするため、高齢化、技術革新、規制緩和といった環境の変化を受け、再生医療市場の顕在化が進むと言われている。

 

「自己(自家:じか)」と「同種(他家:たか)」
再生医療に使用される細胞としては、「自己(自家:じか)」と「同種(他家:たか)」の2種類がある。
「自己(自家:じか)」は患者本人から細胞を採取して加工・培養し、元の患者に投与するもの。自分の細胞であることから拒絶反応が無いというメリットがある一方、治療が決まってから細胞を採取して培養するので、投与できるまでに時間がかかるというデメリットがある。
「同種(他家:たか)」はドナーの細胞を採取し、加工・培養後に患者に投与する。「自己(自家:じか)」とは反対に、患者からの細胞採取が不要で、細胞をストックしたり、常に同じ品質の細胞製品を製造できたりするなどのメリットがあるが、デメリットとして、拒絶反応が起こる可能性がある。
再生医療等製品の具体的な投与方法としては、患者に注射や点滴で血管から全身に投与する方法や、、手術や内視鏡で直接「再生」したいところに投与(移植)する方法があり、一口に再生医療製品といってもさまざまな投与方法がある。

【1-3 セルシードの再生医療】

セルシードが手掛けているのは、上記のうち「同種(他家)」で手術や内視鏡で直接「再生」したいところに投与(移植)するというもの。東京女子医科大学の岡野光夫名誉教授が開発した日本発・世界初の「細胞シート工学」を基盤技術とし、技術移転を受け、同技術に基づいて作製した「細胞シート(シート状の培養細胞)」を用いた再生医療等製品の開発を行う「細胞シート再生医療事業」を展開している。

 

「細胞シート工学」 - 再生医療の基盤技術 -

(同社資料より)

 

一般に細胞は増殖にあたって自分で細胞外マトリックスと呼ばれる、細胞同士の間を埋め、細胞が活動するための「足場」や「骨組み」となる組織、接着蛋白質を分泌する。細胞外マトリックスは、細胞へ情報を伝え、組織の形成、成長、修復に不可欠な役割を果たしている。通常の培養器材上で細胞を培養する際には、増殖して器材表面に付着した細胞を回収するためにはタンパク質加水分解酵素を使うが、酵素処理によって培養細胞はバラバラになってしまう。

 

これに対し、東京女子医科大学の岡野光夫名誉教授は従来技術とは全く異なるコンセプトの「温度応答性細胞培養器材」及びそれを利用した細胞培養方法を開発し、細胞シート工学という新しい分野を開拓した。これは、日本発・世界初のプラットフォーム技術である。
温度によって分子構造を変える性質を持つ温度応答性ポリマーで表面を加工した細胞培養皿「UpCell®」で細胞を培養すると、回収に際し、従来技術のように酵素処理を必要とせず、培養温度を変えるだけで、細胞外マトリックス(接着蛋白質)を保持したまま、バラバラになることなく有機的に結合した「細胞シート」を培養皿から回収することができる。

 

回収した細胞シートは接着性タンパク質が壊されず保持されているため、生体組織へ速やかに生着する。酵素処理を受けていないので細胞本来の機能も失われることなく保持しているという点も大きな特徴である。
また、生体内のさまざまな組織、臓器の細胞を使って作製することができる。移植用組織として、単独で使用したり、他の細胞からなる細胞シートと組み合わせて使用したり、さらには細胞シートを一枚で使用したり、複数枚の細胞シートを積層させて使用するなど、様々に設計することが可能である。
こうした細胞シートを活用した技術を「細胞シート工学」と呼ぶ。日本において承認された再生医療等製品(条件および期限承認含む)は2026年3月時点で累計26品目。そのうち4品目が細胞シート工学を用いた製品である。

 

巨大な再生医療マーケット
再生医療の市場規模は、2040年には国内市場1.1兆円、世界市場12兆円と予想されており、今後極めて大きな経済効果が期待される(出典:国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)「2019年度 再生医療・遺伝子治療の市場調査 最終報告書」)。

 

【1-4 セルシードのビジネスモデル】

細胞シートを使った大学の研究成果をシーズとして、同社が治験を行い再生医療等製品として製品化し、患者に届ける。

(同社資料より)

 

【1-5 事業内容】

報告セグメントは、「細胞シート再生医療事業」と「再生医療支援事業」の2つ。再生医療支援事業は「細胞培養器材事業」と「再生医療受託事業」で構成されている。

 

(同社資料より)

 

(1)細胞シート再生医療事業
「細胞シート工学」を基盤技術とする治療の開発は様々な部位に用いられているが、同社では、膝軟骨の「同種軟骨細胞シート」に注力しつつ、中枢神経損傷関連疾患に対する新規治療について北海道大学との共同研究も進めている。

 

(同社資料より)

 

◎同種軟骨細胞シート
➀概要
患者以外の細胞を基にした細胞シートである「同種軟骨細胞シート」は、東海大学医学部医学科整形外科学 佐藤正人教授が開発。技術移転を受けた同社が再生医療等製品としての開発を進めており、現在は変形性膝関節症を適応症とする。

 

変形性膝関節症とは、緩徐に進行する難治性の関節軟骨変性で、根本治療がない。国内における患者数は潜在的に約3,000万人、そのうち自覚症状を有する患者数は約1,000万人と推定されている。また、高齢化により患者数の増加が予測され、国民健康寿命・介護費・医療費の観点から喫緊に対処すべき疾患であると言う。「同種軟骨細胞シート」は軟骨表面の根本的な再生を目的としている。膝の軟骨は、硝子(しょうし)軟骨と言い、耳や鼻等の軟骨とは異なり、クッション性と対摩耗性に優れた硬い軟骨で再生が難しい。しかし、「同種軟骨再生シート」は、硝子軟骨として膝の軟骨を再生できる事が東海大学での臨床研究で確認されている。

(同社資料より)

 

②開発の経過
佐藤正人教授が2017年に世界で初めて移植手術を実施。2017年から2019年の3年間で10名の患者に移植手術を実施した。
同種軟骨シートによる治療は、AMED「再生医療の産業化に向けた評価化基盤技術開発事業(再生医療シーズ開発加速支援)」に採択された(事業期間:2018年10月~2021年3月)。

 

同種細胞による軟骨細胞シートの開発には、指が6本ある多指(趾)症患者の廃棄組織を使用するため、倫理上の課題を解決する必要があるが、2020年12月には国立成育医療センターの倫理委員会より多指症患者から採取した軟骨組織提供の承認を取得した。これにより、国内での細胞の安定供給体制が構築された。
2021年7月には、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が公募した補助事業である「再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開発事業(再生・細胞医療・遺伝子治療産業化促進事業)」に、セルシードが提案した研究開発課題が採択を受けた(事業期間:2021年8月~2023年3月)。
また、2022年8月には産業利用に対応した多指(趾)症手術時の切除組織の継続的な供給と事業化に向けた体制の構築を目的に、同医療センターと検体提供に関する契約の基本的事項について合意し、今後は同種軟骨細胞シートの治験および製造販売に向けて、原料となるヒト組織の供給を継続的に受けることが可能となった。
2022年4月には、日本において「組織再生培養細胞シート、製造方法及びその利用方法」に関する特許が特許査定となり登録
された。
2023年1月には、東海大学の佐藤正人教授らの研究グループが2017年から実施した変形性膝関節症の臨床研究において、膝関節の軟骨欠損部へ同種軟骨細胞シートを移植した患者10名の全例で、術後一年の安全性及び有効性が確認され、その研究成果がネイチャー姉妹誌の『npj Regenerative Medicine』(オンラインジャーナル)に掲載された。
加えて、2023年3月には上記AMED事業(再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開発事業(再生・細胞医療・遺伝子治療産業化促進事業)の成果として、日本再生医療学会総会で発表する等、有効性についてのエビデンスを積み上げている。

 

一方治験開始までには、有効性に加え、安全性の確認や、細胞シートの品質管理及び輸送方法の確立等、品質の担保のための体制作りにも取り組んでいる。
組織から作成したセルバンクについては、細胞数、生細胞率、無菌試験、エンドトキシン試験、マイコプラズマ否定試験、ウイルス否定試験等を実施し、合計20項目の試験で安全性を確認しているほか、細胞シートについても細胞形態、シートの性状、タンパク質発現、ウイルス否定試験、染色体異常の有無の確認等10項目の試験を実施している。

 

これらの実績をベースに、同社では、2023年、9月に治験届を医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出し、その後、PMDAによる治験届の30日調査が終了した。今後の治験の進展に応じたマイルストンの支払金額についての東海大学との交渉に時間を要していたが、2025年3月に合意に至った。各治験実施施設との契約締結も終了し、手術を行える体制を整えてきた結果、2025年10月に、第1例目の症例が登録され、現在、各治験実施施設にて計画通り治験が進行中である。

 

(第3相試験概要)
*試験デザイン:多施設共同、単盲検、無作為化、並行群間の比較試験
*対象患者:変形性膝関節症を有しており、脛骨近位骨切り術の適応となる患者
*目標症例数:96症例(脛骨近位骨切り術48症例、脛骨近位骨切り術+細胞シート移植48症例)
*主要評価項目:患者報告アウトカム(症状や QOLに関して、患者が自分自身で判定し、その結果に医師を始め他の者が一切介在しない評価方法)
*実施施設:東海大学医学部付属病院、横浜石心会病院、海老名総合病院、順天堂大学医学部附属順天堂医院、横浜市立大学附属市民総合医療センター、横浜南共済病院の全6施設
登録された患者は検査等の後に移植手術を受け、約1カ月で退院。術後1年で抜釘手術となる。移植手術から抜釘手術までの1年間が観察期間となる。

 

同社では、特許戦略も推進している。同種軟骨細胞シートに関する「組織再生培養細胞シート、製造方法及びその利用方法」についての米国特許出願が、特許査定となった。東海大学と実施してきた同種軟骨細胞シートに関する共同研究の成果である。
ビジネスの商流としては、同社が自ら製造販売を行うケースと、同社が製造し、提携先が販売を行うケースの2つを想定している。

 

(2)再生医療支援事業
細胞シート製品の製法開発・受託製造、施設管理・申請支援、コンサルティングを行う「再生医療受託事業」と、「UpCell®」「RepCell®」「HydroCell®」等の細胞培養器材等の開発・製造・販売を行う「細胞培養器材事業」で構成されている。

 

①再生医療受託事業
再生医療においては、再生医療促進法の下、臨床研究・先進医療・自由診療によりアカデミアの研究開発を促す「再生医療等安全性確保法(安確法)」と、非臨床試験及び治験後の製造販売の承認取得の手続きを定めている「医薬品医療機器等法(薬機法)」が運用されているが、現実的には、アカデミアの研究開発と製造販売承認の間には大きなギャップが存在している。
再生医療受託サービスでは、同社は再生医療CDMO((開発・製造受託機関))として、アカデミアが抱える課題、ギャップを解決し、再生医療を患者に届ける懸け橋になることを目指している。

 

製薬会社・研究機関からの委託を受けて、主に細胞シートの受託開発・製造を行う。日本再生医療学会認定の臨床培養士が複数名所属しており、培養の経験豊富なスタッフによる再生医療等製品の製法開発・製造を、特定細胞加工物の製造許可及び再生医療等製品製造業許可を受けた細胞培養センターで行っている。
2017年3月に特定細胞加工物製造の許可(施設番号:FA3160008)を、2018年10月には再生医療等製品製造業許可をそれぞれ取得している。
加えて、製品の開発から製造販売に至るまでの各段階に応じた当局対応承認申請書作成、製造業・製造販売業許可取得支援、技術者の教育等を支援している。

 

これまでの主な受託案件
*自己軟骨細胞シート
再生医療等安全性確保法の法律の下で行われる先進医療Bとして2019年1月に承認され、2020年には東海大学が先進医療Bを開始。セルシードによる自己軟骨細胞シートの製造受託が始まり、2024年まで継続して受託していた。

 

(同社資料より)

 

2023年5月、医療法人社団松和会 池上総合病院より、膝関節軟骨損傷に対する自己軟骨細胞シート移植に用いる細胞シートの製造を受託した。池上総合病院は、再生医療等新規医療の取り組みの一環として、外傷や変形性膝関節症により膝関節軟骨に損傷がある患者を対象に自身の軟骨細胞をシート状に培養して膝関節の軟骨の傷んだ部分に貼りつけることで、痛みや関節機能を改善させることを目的とした再生医療を提供する。この再生医療は、東海大学医学部付属病院が実施する先進医療(自己細胞シートによる軟骨再生治療)の適応対象外の患者や海外からのインバウンドを対象に自費診療で実施するもの。
池上総合病院では、再生医療の実施に必要な提供計画を厚生労働省に提出し受理されたことを受け、患者の受け入れ体制の準備を進めている。セルシードでは、自費診療領域に用いる細胞シートの製造受託による、受託事業の拡大にも期待している。

 

*小児自己上皮細胞シート
先天性食道閉鎖症術後の小児を対象とした再生医療に供する自己上皮細胞シートの受託製造を行っている。

 

*歯根膜細胞シート
医師主導治験で用いる細胞シート受託製造の第1号案件である。

 

食道再生上皮シート
地方独立行政法人東京都立病院機構 東京都立多摩北部医療センターの食道がん治療後の食道狭窄に対する細胞シートによる治療について、自由診療の開始に必要な当局への手続きを支援し、今後は同センターから食道再生上皮シートによる食道狭窄治療の自由診療に用いる細胞シートの製造を受託することになっている。
食道再生上皮シートはESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)を行った直後の患者や ESD 後の難治性狭窄の治療にも用いられている。

 

*その他
2025年8月には、株式会社NPTとNPTが再生医療等製品として開発を進める食道がんを対象とした個別化樹状細胞ワクチンの治験製品の製造受託に向けた技術開示等に係る契約を締結した。NPTは、樹状細胞ワクチンを用いた食道がんに対する第I/II相臨床治験(企業治験)の治験計画届書をPMDAに提出し、PMDAから受理されている。 現在、NPTは同ワクチンの製造工程において新規機器を導入し治験の準備を進めており、セルシードは、この契約に基づき NPTの技術情報の開示を受け、同ワクチンの製造管理に係る技術及び情報を検証の上、NPTとの同ワクチンの治験製品の製造受託契約締結に向けた準備を進めている。

 

再生医療受託事業では、細胞培養技術者教育にも力を入れている。青海セルカルチャーイノベーションセンター内でUpCell®のユーザー向けトレーニングを行っており、実際に細胞シートの作製や細胞の剥離を行う際のコツ等をレクチャーしている。

 

②細胞培養器材事業
1989年に東京女子医科大学の岡野名誉教授が発明した温度応答性細胞培養器材は、温度を下げるだけで細胞を剥離することができるため、世界で初めて無傷な細胞シートを回収することを可能とした。
温度応答性細胞培養器材は世界中に販売され、多くの研究者により細胞シートを用いた治療法の研究・開発が盛んに進められている。

 

これまでも大学、研究機関、製薬企業等ユーザーのニーズに合わせ、様々な器材製品を開発・供給してきたが、2022年9月には新製品UpCell®フラスコの販売を開始した。2025年には海外販売開始に向けた製造を行い、売上を計上した。
UpCell®は、温度応答性ポリマーを器材表面に固定し、細胞に損傷を与える酵素を用いることなく、無傷な細胞がシート状に回収可能な器材。従来のUpCell®ディッシュよりも培養面積を拡大した製品も販売予定で、ダメージを受けていない状態の細胞をより大量に回収が可能となり、免疫研究や細胞治療に関連する研究に最適である。UpCell®6ウェル用セルカルチャーインサートを用いた共培養等、生体環境に近い培養により、生体機能をより高いレベルで維持した細胞シートの回収が可能となる。
様々な感染症やがん疾患等の予防法や治療法を開発するための研究用細胞の大量培養を目的とした新たな需要の取り込みを期待しており、中長期的な事業の成長を見込んでいる。

 

2022年12月には温度応答性細胞培養器材製品 「UpCell® ADVANCE」 が、米国食品医薬品局(FDA)のメディカルデバイスマスターファイル(MAF)に登録された。
MAFは、供給メーカーが、企業情報、製造ノウハウ等の企業秘密や各種データをあらかじめFDAにMAFとして登録しておく制度。これにより、医薬品・医療機器等メーカーは、MAF番号を引用するのみで、FDAに販売承認申請することが可能となる。
MAF登録完了は、FDAによる、品質および安全性に関する確認または評価が完了したことを必ずしも意味するものではないが、医薬品・医療機器等メーカーが「UpCell® ADVANCE」を使用した製品についてFDAに申請する際に、セルシードに秘密情報の提出を求める必要がなくなるため、MAF登録は「UpCell® ADVANCE」の普及に貢献するものとして期待される。

 

◎主要施設・設備
*細胞培養センター
先進医療に使用される細胞シートは同社の細胞培養センターで培養(受託加工)している。
延床面積約763㎡で、自動モニタリングシステムによって、清浄度、室圧、温湿度、機器(培養器や保冷庫等)が自動管理され、監視カメラシステムも完備。また、羽田空港まで車で約20分と至近で空輸にも対応しやすい。

(同社資料より)

 

*青海セルカルチャーイノベーションセンター
2021年9月より本格稼働を開始した。フラスコ製品の開発・製造等、細胞培養器材の開発・製造を行っている。

 

【1-6 再生医療支援事業の成長戦略】

「細胞培養器材のビジネス拡大」「世界展開に向けた事業提携推進」の2つを中心的な成長戦略としている。

 

(1)細胞培養器材のビジネス拡大
1989年東京女子医科大学の岡野名誉教授が発明した温度応答性細胞培養器材は、前述のように、温度を下げるだけで細胞を剥離できるため、無傷な細胞シートを回収することが世界で初めて可能となり、多くの研究者により細胞シートを用いた治療法の研究・開発が進められている。
再生医療への応用を目的とした研究開発フェーズ向けへの製品販売が順調に拡大しているのと並行し、研究用細胞の大量培養を目的とした新たな用途での製品販売が海外を中心に急拡大しており、2020年に同社では、器材ビジネスとして初めて売上高が1億円を突破。現在売上の約8割が海外向けとなっている。
更なる拡大に向け、同社では、従来の再生医療市場における製品展開に留まらず、細胞培養器材新製品開発・製造施設の新設等、新市場のニーズを満たすソリューションを提供するための製品開発に注力中である。
2021年9月には細胞培養器材製品専用の開発・製造施設を新設。2022年12月には温度応答性細胞培養器材製品 「UpCell® ADVANCE」 が、米国食品医薬品局(FDA)のメディカルデバイスマスターファイル(MAF)に登録された。また、2022年に国内で販売を開始した細胞の大量培養・回収に適した製品「UpCellフラスコ」は、2026年から海外でも展開する予定だ。

 

近年は大量に培養した細胞を利用してバイオ医薬品の製造や、細胞そのものを用いた免疫療法、更には食料問題や環境問題の解決に向けた取り組みが盛んに行われている。
ただ、現在一般的に使用される細胞回収技術であるタンパク質分解酵素では、細胞はダメージを受けた状態で回収され、細胞が有する本来の機能、成分を完全に維持する事が困難である。一方で、同社製品を導入すれば細胞を無傷で回収する事が可能となり、細胞本来が有する全ての機能、成分を維持したまま利用できるため、新市場における産業面での効率や有効性改善に大きく寄与するものと期待されている。

 

(同社資料より)

 

こうした状況を背景に、細胞培養器材事業の2024年の売上高は2016年の3.5倍へと急拡大し、2024年12月期は過去最高を記録したが、一転して2025年12月期は、米国における研究機関の予算が大幅に削減されるなどの研究環境の急激な変化、並びに欧州や中東などにおいて継続する地政学的な混乱などの影響により海外売上は低迷した。2026年12月期も事業環境の好転は見込みにくいが、同社の競争優位性を発揮できる領域だけに、今後も拡大に向けて取り組んでいく。

 

(2)世界展開に向けた事業提携推進
同事業売上高の約8割が海外向け。海外での販路をさらに拡大するべく、販売体制も強化している。海外における器材製品拡販のアライアンス先であるサーモフィッシャーサイエンティフィック社と販売契約を延長し、連携を更に強化するほか、一貫した品質・サービスの提供と、より一層の顧客満足を充実させるため品質マネジメントシステムを構築し、2020年1月に国際規格であるISO9001:2015の認証を取得した。
このほか、世界展開に向け、ベルリンで開催された「Translate! 2021 – Metrics and Milestones of Success」での講演(2021年1月)等、日本だけでなくアジアや欧州で開催されている展示会へ参加し事業提携を推進している。今後も各地で開催される展示会へ参加し事業提携先の獲得を目指す。

 

 

2.2025年12月期決算概要

【2-1 非連結業績】

 

24/12期

 

25/12期

 

前期比

予想比

売上高

193

83

-109

+3

売上総利益

110

42

-67

 

販管費

956

1,088

+132

 

 うち、研究開発費

573

720

+146

 

営業利益

-846

-1,046

-199

-6

経常利益

-847

-1,051

-204

-11

当期純利益

-859

-1,104

-244

-9

*単位:百万円。

 

売上高は前期比1億9百万円減の83百万円。再生医療支援事業:細胞培養器材事業において、海外市場での売上が低迷した。営業利益は10億46百万円の損失。同1億99百万円の損失拡大。同種軟骨細胞シートの第3相試験の治験開始・症例登録開始による研究開発費を中心に、販管費が同1億32百万円増加した。当期純利益は11億4百万円の損失。同2億44百万円の損失拡大。固定資産について減損の兆候が認められたため、減損損失52百万円を特別損失に計上している。

 

【2-2 セグメント別動向】

 

24/12期

 

25/12期

 

前期比

再生医療支援事業

192

81

-110

細胞シート再生医療事業

1

1

+0

売上高

193

83

-109

再生医療支援事業

-20

-104

-84

細胞シート再生医療事業

-595

-722

-127

調整額

-230

-218

+11

営業利益

-846

-1,046

-199

*単位:百万円。

 

再生医療支援事業
売上高81百万円、営業損失1億4百万円(前期は売上高1億92百万円、営業損失20百万円)。

 

◎細胞培養器材事業
国内市場への取り組みとして器材製品の拡販に向けた既存代理店との更なる協業強化を進め、プロモーション活動として、日本再生医療学会、日本薬学会、日本毒性学会、日本培養食料学会にブースを出展して情報収集及び器材製品の積極的な販売促進活動を行った。海外市場への取り組みとしては、UpCell®フラスコの海外販売開始に向けた製造を行い、売上を計上した。一方で、米国における研究機関の予算が大幅に削減されるなど研究環境の急激な変化、並びに欧州や中東などにおいて継続する地政学的な混乱などの影響により海外売上は低迷した。

 

◎再生医療受託事業
東京都立多摩北部医療センターの食道がん治療後の食道狭窄に対する細胞シートによる治療について、再生医療の実施に必要な提供計画を厚生労働省に提出する際に、関連書類の作成支援など自由診療の開始に必要な手続きの支援を行った。2025年8月には、株式会社NPTとNPTが再生医療等製品として開発を進める食道がんを対象とした個別化樹状細胞ワクチンの治験製品の製造受託に向けた技術開示等に係る契約を締結し、それに係る売上を一部計上した。

 

細胞シート再生医療事業
売上高は1百万円、営業損失7億22百万円(前期は売上高1百万円、営業損失5億95百万円)。

 

同種軟骨細胞シートは、各治験実施施設における体制の構築など、治験開始に向けた準備を進めてきた結果、2025年10月に第3相試験において、第1例目の症例が登録された。治験実施施設の追加を行い、現在、第3相試験は計画に従い進行している。2025年11月には同社主催の「第4回細胞シート工学イノベーションフォーラム」を開催した。社外からの参加者は100名を超え、「細胞シート工学」の認知度向上に向けた機会となり、盛況のうちに終了した。
事業提携活動については、事業化の加速、また将来の同種軟骨細胞シートの販売に向けて、引き続き、国内外の複数の企業との事業提携に向けた協議を行っている。

 

【2-3 財政状態】

◎要約BS

 

24年12月

25年12月

増減

 

24年12月

25年12月

増減

流動資産

2,312

1,521

-790

流動負債

103

248

+144

 現預金

2,134

1,318

-815

短期借入金

10

27

+16

 売上債権

37

6

-30

固定負債

166

139

-27

 たな卸資産

45

78

+32

長期借入金

132

105

-27

固定資産

120

134

+13

負債合計

269

387

+117

資産合計

2,433

1,655

-777

純資産

2,163

1,268

-894

*単位:百万円。

 

 

 

負債・純資産合計

2,433

1,655

-777

 

現預金の減少などで資産合計は前期末比7億77百万円減の16億55百万円。
未払金の増加等で負債合計は同1億17百万円増の3億87百万円。
当期純損失の計上などにより純資産は同8億94百万円減の12億68百万円。
自己資本比率は前期末比12.5ポイント低下の76.0%。

 

【2-4 トピックス】

(1)第三者割当による新株予約権を発行
2025年12月8日を割当日、割当先をバークレイズ・バンクとして、第25回新株予約権(行使価額修正条項付)を発行した。
行使期間は2年間(2025年12月9日~2027年12月8日)、資金調達額は約32億円の見込み。
資金使途は、研究開発資金約20億円、器材事業運営資金約5億円、運転資金約7億円。

 

(2)細胞培養器材に関する取引基本契を約締結
2026年1月、クオリプス株式会社(東証グロース、4894)と細胞培養器材に関する取引基本契約を締結した。
クオリプスは2025年4月に厚生労働省に対し、虚血性心筋症による重症心不全を適応としたヒト(同種) iPS 細胞由来心筋細胞シートの製造について再生医療等製品製造販売承認申請を行った(2026年3月に条件及び期限付き製造販売承認を取得)。
今回の契約は、同シート製造において使用される温度応答性細胞培養器材製品(UpCell® ADVANCE)をセルシードがクオリプスに安定的に提供することを目的としたものである。

 

(3)日立製作所の再生医療等製品バリューチェーン統合管理プラットフォームの導入を決定
2025年12月、再生医療等製品の商業生産に向けて、同種軟骨細胞シートの第3相試験において、治験業務の効率化と各治験実施施設との円滑な連携を目的として、株式会社日立製作所が提供する再生医療等製品バリューチェーン統合管理プラットフォーム「Hitachi Value Chain Traceability service for Regenerative Medicine」を導入することを決定した。

 

(「Hitachi Value Chain Traceability service for Regenerative Medicine」概要)
株式会社日立製作所が提供する再生医療等製品のバリューチェーン全体の細胞・トレース情報を管理するプラットフォーム技術。バリューチェーンに関わる全てのステークホルダー(医療機関、製薬・物流・製造企業など)が利用可能な国内初の再生医療等製品に関する共通サービス基盤である。

 

(導入の狙い・効果)
第一段階として、「Hitachi Value Chain Traceability service for Regenerative Medicine」における各治験実施施設との症例登録の管理に関する機能を導入する。その後、再生医療等製品は、ドナー由来の細胞・組織を原料とするため、GCTP 省令(※)において、原料採取から最終製品出荷までの全工程を追跡可能にする仕組みが必要なため、第二段階以降として、厳格な品質管理と情報のトレーサビリティの確保を実現するためのシステムの構築を進める考えだ。

 

※GCTP 省令
再生医療等製品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令

 

(3)第4回細胞シート工学イノベーションフォーラムを開催
同社では日本発、世界初の細胞シート工学をより多くの研究者に知ってもらうために、2019年に第1回細胞シート工学イノベーションフォーラムを開催した。2025年11月に開催した第4回細胞シート工学イノベーションフォーラムも、周辺技術に関わる特に若い研究者に画期的なアイデアを発表してもらうなど、再生医療や新たな分野への応用を語るフォーラムとなった。

 

講演者
・清水 達也(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 所長、教授)
「細胞シート工学の新たなる展開を目指して」

 

・梅澤 明弘(国立成育医療研究センター研究所 所長)
「小児疾病に対する細胞シート工学」

 

・渕本 康史(国際医療福祉大学 医学部小児外科学 教授(代表))
「小児食道狭窄に対する自己口腔粘膜シート移植を用いた再生治療」

 

・升本 英利(京都大学 医学部附属病院 心臓血管外科 特定教授)
「細胞シート技術に基づく心臓オルガノイドによる次世代循環器医療の展望」

 

講演以外にもポスター演題を募集し、細胞シートの基礎研究や新規応用で優れた成果もしくは将来性を示した発表に対し、最優秀演題賞1名、優秀演題賞3名を表彰した。

 

3.2026年12月期業績予想

【3-1 業績予想】

 

25/12期 実績

26/12期 予想

前期比

売上高

83

71

-12

営業利益

-1,046

-1,225

-178

経常利益

-1,051

-1,250

-198

当期純利益

-1,104

-1,320

-215

*単位:百万円。

 

減収減益を予想
売上高は前期比12百万円減の71百万円、営業損失は同1億78百万円拡大の12億25百万円の予想。
再生医療支援事業では、不透明な事業環境ではあるが、引き続き器材製品を中心に特に海外の販売の拡大を図る。再生医療CDMO(開発・製造受託機関)としての活動及び再生医療に関わる総合的なサポートを通じて、再生医療の研究開発・事業化を支援する再生医療受託製造等を推進する。再生医療支援事業のセグメント売上高71百万円を見込んでいる。
細胞シート再生医療事業では、同種軟骨細胞シートなどの開発を推進する。引き続き研究開発費は増大する見込み。パイプラインの技術導出に向け新規事業先候補とも積極的に交渉を重ねていく。

 

 

【3-2 継続企業の前提に関する重要事象等】

25年12月末の手元資金(現金及び預金)残高は13億18百万円。新株予約権の行使により2026年1月において4億円の資金調達を実施した。未行使新株予約権も相当数残っていることから財務基盤については当面の資金繰りに支障はないものと同社では判断している。
一方で事業面においては細胞シート再生医療事業の重要課題である細胞シート再生医療第1号製品の早期事業化の道程を示すまでには至っておらず、同社では25年12月末において、引き続き継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在していると判断している。
同社では当該状況の解消を図るべく、同種軟骨細胞シートの開発を推進し、細胞シート再生医療第1号製品の早期事業化の実現、事業提携先の開拓を通じた更なる収益機会の獲得に取り組んでいく考えだ。

 

4.橋本社長に聞く

橋本せつ子社長に、同社の競争優位性、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。
橋本社長は九州大学理学部生物学科卒業後、ダートマス医科大学留学、九州大学理学研究科生物学科修士課程修了、ハイデルベルグ大学博士課程修了等を経て、外資系製薬会社で研究員として遺伝子組換え医薬品の研究や医薬品製造プラント建設などに携わる。その後、研究用機器や試薬のマーケティングに従事。ユーザーである研究者側からユーザーに商品を提供する側へと「180度」立ち位置を変えることとなったが、これまでに培った知識と経験を活かして研究者のニーズが理解できるマーケティングを行うことにビジネスとしての面白さを味わうこととなった。スウェーデンのベンチャー企業では日本法人の立ち上げ及びマーケティングの責任者として日本及びアジア市場の開拓に取り組む。2009年にスウェーデン大使館投資部のライフサイエンス担当主席投資官に就任。ノーベル医学生理学賞の選考委員会のあることで有名なカロリンスカ研究所(スウェーデン)と東京女子医科大学先端生命研究所を引き合わせたことをきっかけに、両者による「細胞シート工学」の共同研究が開始された。こうした出会いを契機に、東京女子医科大学から「細胞シート工学」の技術移転を受けていたもののビジネス的に苦境にあったセルシードへ招聘され、2014年3月に取締役副社長として同社入社、同年6月に代表取締役社長に就任した。細胞工学シート技術の事業化と第2の創業の成功を目指してリーダーシップを発揮している。

 

 

Q:バイオベンチャー企業であるセルシードの競争優位性についてお話しください。
一般に細胞は増殖にあたって自分で細胞外マトリックスと呼ばれる、細胞同士の間を埋め、細胞が活動するための「足場」や「骨組み」となる組織、接着蛋白質を分泌します。細胞外マトリックスは、細胞へ情報を伝え、組織の形成、成長、修復に不可欠な役割を果たしています。通常の培養器材上で細胞を培養する際には、増殖して器材表面に付着した細胞を回収するためにはタンパク質加水分解酵素を使うのですが、それだと培養細胞はバラバラになってしまいます。

 

これに対し、東京女子医科大学の岡野光夫名誉教授は従来技術とは全く異なるコンセプトの「温度応答性細胞培養器材」と、それを利用した細胞培養方法を開発し、細胞シート工学という新しい分野を開拓しました。これは、日本発・世界初のプラットフォーム技術です。
温度によって分子構造を変える性質を持つ温度応答性ポリマーで表面を加工した細胞培養皿「UpCell®」で細胞を培養すると、回収に際し、酵素処理は不要で、培養温度を変えるだけで、細胞外マトリックス(接着蛋白質)を保持したまま、バラバラになることなく有機的に結合した「細胞シート」を培養皿から回収することができます。

この「細胞シート工学」は再生医療のための独自性の高い、画期的な技術であり、その事業化のために技術移転を受けて設立されたのがセルシードです。競合はほぼ見当たらない状況であり、競争優位性は極めて強固です。
また、当社は細胞シートを用いた再生医療製品の開発のみではなく、「再生医療支援事業」において、シートを作るための培養器材の製造販売を行う「細胞培養器材事業」や、細胞シート製品の製法開発・受託製造、施設管理・申請支援、コンサルティングを手掛ける「再生医療受託事業」も展開しているという点が、創薬一本足で事業を展開している他のバイオベンチャーとの大きな違いです。

 

 

Q:そうした競争優位性をさらに磨き上げ、事業化に繋げていくためには何が必要なのでしょうか
「細胞シート工学」はユニークで有用な技術なのですが、事業化に向けては、例えば食道では、角膜ではといったように、実際の医療の現場で、どんな部位でどういう風に役に立つかをより具体的に示す必要があり、そうしたケースをどれだけたくさん提示できるかがカギであると思っています。
そこで取り組んでいるのが2年に1度、当社が主催し、当社の技術のみを紹介する「細胞シート工学イノベーションフォーラム」というシンポジウムです。
年々参加者は増加しており、研究者、臨床医の皆様から様々な成果をご報告いただいています。また、そうした報告を受けて、自分でもこの分野で使ってみようという研究者も増えており、相乗効果も生まれ始めています。より若い研究者の方々を支援するために、ポスター発表や表彰にも力を入れています。

 

競争優位性の強化及び事業化成功には言うまでもなく優秀な人材確保も重要です。
大学の研究室レベルで培養器材を作ることができたということと、企業が同じ品質の培養器材を作り続けるということには、非常に大きな差がありますから、そのための研究開発、生産管理が可能な人材が必要です。また、厚生労働省の承認を得るためにも、細胞の研究、データマネジメント、臨床試験、製造など、それぞれの領域の専門家も確保しなければなりません。
当社の技術は全く新しい技術ですから、新たなことにチャレンジしてみたい方、アカデミアの方でビジネスの方面から患者様のお役に立ちたいといった方を採用する方針で取り組んでいます。

 

 

Q:再生医療支援事業の足元及び今後の事業展開についてお話しください。
再生医療支援事業のうち、「細胞培養器材事業」については、米国トランプ政権の国家予算見直しを受け、ライフサイエンス関連予算も大幅に削減されており、当社の細胞培養器材ビジネスも大きな影響を受けています。残念ながら当社ではコントロールできない部分もありますが、当社が手掛ける細胞回収に関する常識を覆す新たな方法の認知を国内外で広げていくことに注力してまいります。
再生医療支援事業の「再生医療受託事業」では、これまでも、自己軟骨細胞シート、先天性食道閉鎖症術後の小児を対象とした自己上皮細胞シートや歯根膜細胞シートの製造受託を行ってきましたが、2025年は東京都立多摩北部医療センターが実施する自由診療のための食道再生上皮シート製造受託を行うこととなったほか、株式会社NPTとNPTが再生医療等製品として開発を進める、食道がんを対象とした個別化樹状細胞ワクチンの治験製品の製造受託に向けた技術開示等に係る契約を締結するなど、事業基盤がより強固になってきましたので、今後もより一層事業の幅を広げてまいります。

 

 

Q:それでは最後に、株主・投資家へのメッセージをお願いいたします。
「細胞シート再生医療事業」はゴールに辿り着くのに時間がかかっており、株主の皆様には見守っていただいている状況ですが、同種軟骨細胞シートの開発については、計画通り第3相試験が開始されました。治験の進捗は様々な決まりごとがありますから随時公開というわけにはいきませんが、予定通り進んでいます。
創立25周年を機に新たなMission&Visionを掲げました。日本企業は多くの優れた技術を持っているのですが、残念ながらリスクを取ってなかなか海外に出ていかない傾向があります。我々は「細胞シート工学」を海外にも広めていくことで、日本企業のそうした課題の解決にも貢献していきたいと考えています。
「再生医療支援事業」の拡大に取り組みつつ、5年後の2030年頃までには大きな展開をお見せするべく、全社一丸となって取り組んでおりますので、今しばらく暖かく見守っていただきたいと思います。

 

5.今後の注目点

再生医療支援事業のうち、「細胞培養器材事業」については、米国トランプ政権の国家予算見直しを受け、ライフサイエンス関連予算も大幅に削減されており、同社も大きな影響を受けている。自社ではコントロールできない部分もあるため、細胞回収に関する常識を覆す細胞シート工学の認知度を国内外で広げていくことに注力していく考えだ。2026年1月にはクオリプス株式会社(東証グロース、4894)と、細胞培養器材に関する取引基本契約を締結するなど、温度応答性細胞培養器材製品の需要は着実にたかまりつつあるようだ。
一方、再生医療支援事業の「再生医療受託事業」では、これまでも、自己軟骨細胞シート、先天性食道閉鎖症術後の小児を対象とした自己上皮細胞シートや歯根膜細胞シートの製造受託を行ってきたが、2025年は東京都立多摩北部医療センターが実施する自由診療のための食道再生上皮シート製造受託を行うこととなったほか、株式会社NPTとNPTが再生医療等製品として開発を進める、食道がんを対象とした個別化樹状細胞ワクチンの治験製品の製造受託に向けた技術開示等に係る契約を締結するなど、事業基盤がより強固になってきた。「細胞シート再生医療事業」の一本足ではない、同社の優位性を更に強化できるか、その進捗を注視していきたい。

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査等委員会設置会社

取締役((監査等委員を除く)

3名、うち社外0名(うち、独立役員0名)

監査等委員

3名、うち社外3名(うち、独立役員1名)

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2025年4月7日)

 

基本的な考え方
当社は、技術革新と創造性を発揮し、質の高い優れた製品とサービスの提供を通じ、人々の健康と福祉に貢献していくことを使命とし、全ての企業活動において品質を高めるべく企業統治の整備を進めています。適時適切な情報公開の実施、意思決定の透明性の確保、説明責任の充実とともに、業務管理及び監査の体制を整え、経営のチェック機能強化に取り組んでまいります。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社は、東証グロース上場企業としてコーポレートガバナンス・コードの基本原則をすべて実施しております。

 

 

 

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