ブリッジレポート
(7046) TDSE株式会社

グロース

ブリッジレポート:(7046)TDSE 2026年3月期決算

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東垣 直樹 社長

TDSE株式会社(7046)

 

 

企業情報

市場

東証グロース市場

業種

サービス業

代表者

東垣 直樹

所在地

東京都新宿区西新宿3-20-2東京オペラシティタワー27階

決算月

3月

HP

https://www.tdse.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(期末)

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,301円

2,200,000株

2,862百万円

7.6%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

10.00円

0.8%

40.65円

32.0倍

1,134.83円

1.1倍

*株価は7/15終値。各数値は26年3月期決算短信より。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

ROE

EPS

DPS

2023年3月(実)

2,415

265

267

168

9.4

81.76

10.00

2024年3月(実)

2,521

271

274

200

10.2

96.59

10.00

2025年3月(実)

2,699

198

201

136

6.4

65.56

10.00

2026年3月(実)

3,005

214

232

174

7.6

83.49

10.00

2027年3月(予)

3,200

130

130

85

3.6

40.65

10.00

*単位:百万円、円。予想は会社予想。予想ROEは予想当期純利益を前期末自己資本で除した比率。

 

TDSE株式会社の2026年3月期の決算概要、2027年3月期業績予想及び新中期経営計画などをお伝えします。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2026年3月期決算概要
3.2027年3月期業績予想と取組
4.新中期経営計画「SHIFT2028」
5.今後の注目点・総括
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 26/3期の売上高は前期比11.4%増の30億5百万円と2025年10月31日開示の修正計画(30億円)を上回り、創業以来最高となった。プロダクト事業とAIエージェント事業の急成長が全体を牽引し、コンサルティング事業が横ばいにとどまるなか2桁増収を達成した。営業利益は同7.8%増の2億14百万円。売上総利益率は前期の34.3%から36.7%へ2.5ポイント向上したが、営業・技術人材の採用強化により販管費が増加したことで、営業利益率は7.4%から7.1%に低下した。期末配当(中間配当なし)は前期と同額の10.00円/株を維持した。4Qの売上高は8億34百万円と四半期として過去最高を記録、下期にかけて成長ペースが加速した。

     

  • 事業別では、コンサルティング事業は前期比1%減の22億80百万円。既存顧客の主要プロジェクトが一部収束した影響を大きく受けた一方、新規売上は同92%増の1億42百万円と大きく伸びた。プロダクト事業は前期比23%増の4億12百万円。QUID製品の優位性を軸とした継続収益の積み上がりが寄与した。AIエージェント事業は前期比343%増の3億13百万円。修正計画(2億20百万円)に対する達成率は142%。Dify関連売上が2億38百万円と全体の7割強を占めた。

     

  • 27/3期の会社予想は売上高が前期比6.5%増の32億円、営業利益は同39.3%減の1億30百万円。新中期経営計画「SHIFT2028」の初年度として構造改革のための戦略投資を大きく積み増すことにより、大幅減益を余儀なくされる見通し。「変革の一年」と位置づけられる。戦略投資として、①労務人件費(昇給・賞与含む)約2.0億円、②採用費約0.3億円、③商品仕入約1.1億円、④情報処理費・広告宣伝費各約0.3億円の計約4.0億円増加を見込む一方、減価償却費や外注削減による約1.2億円のコスト低減を合わせて実行することで、戦略投資の純増加額は約2.8億円となる。

     

  • 2026年4月より、27/3期〜29/3期を対象期間とする新中計「SHIFT2028」が始動。前中計「MISSION2025」(24/3期〜26/3期)は、M&A込みで売上高33億円・営業利益率10%以上を最終目標として掲げたが、M&Aが不成立に終わりオーガニック成長へ集中を余儀なくされ、当初目標の33億円には届かなかった。SHIFT2028はこの総括を踏まえ、①成長軸の転換(従来型AI→生成AI)、②収益構造の転換(フロー型→ストック型)、③実行体制の転換(分散組織→集約・融合)の3つを掲げる「構造改革型の中計」として策定された。2028年度に売上高38〜43億円・生成AIエージェント売上比率60%・ストック型売上比率30%・営業利益率8%を目指す。

     

  • 前中計では、プロダクト事業・AIエージェント事業が計画を上回り、コンサルティング事業の横ばいを補完する「三位一体の事業モデル」への転換が進んだ一方、計画精度への市場の懸念は継続している。本レポートでは、SHIFT2028の成長シナリオを検証し、4点の着眼点を示す。第1に、DS/ENG BPO事業の生産性向上である。営業管掌の池野取締役が「1人の作業がAIエージェントを組み合わせることによって2倍でも3倍でも増加していく」と説明した人月型業務のレバレッジ効果が実際に機能し、営業利益率の構造改善につながるかどうかだ。第2に、顧客ポートフォリオ多様化の進捗である。ファーストリテイリング・リクルートの大口2社向け売上の割合がコンサルティング事業内訳を大きく占めるなか、大口依存からの脱却が進むかどうかだ。第3に、マルチベンダー戦略と自社プロダクト戦略の深化である。「ツールの目利き力」を強みに、業務特化型AIエージェントの製品化がAPI・ライセンス・SaaSモデルへ展開し、同社固有のストック収益基盤として育つかどうかだ。第4に、ストック型収益基盤の質的向上である。解約率抑制・単価向上を伴う形で顧客基盤の定着・深耕が進み、目標達成につながるかどうかだ。詳細は「5.今後の注目点・総括」を参照されたい。

     

     

1.会社概要

国内最高峰のデータサイエンティスト集団。AI技術を核に、メンバーそれぞれが持つ業界トップクラスの経験・実績と高度な専門スキルにより、顧客企業の経営改革を支援している。データ経営を目指す企業向けにAI技術を中心とした統合型ソリューションを提供。26/3期(前中計「MISSION2025」の最終年度)まではコンサルティング事業・プロダクト事業・AIエージェント事業の3区分で業績を開示・運営してきたが、新中計「SHIFT2028」の始動(2026年4月)に伴い、コンサルティング事業とAIエージェント事業は生成AI・エージェント領域を一体で推進する体制に統合された。一方、ストック型収益の主柱であるQUID製品を軸としたプロダクト事業は従来の区分を維持している。本レポートでは26/3期実績の説明については従来の3区分を用い、27/3期以降の展望については新体制の2区分で説明する。

 

【1-1沿革】

2013年10月企業経営にAIやデータ活用が求められる時代の到来を予見し、ビッグデータ事業を展開するために株式会社テクノスジャパンが同社を設立。
同年  12月早稲田大学とビッグデータ活用研究に関する産学連携を開始。
2014年 9月米国QUID社(旧NetBase Solutions社)と業務提携し、グローバル規模のソーシャルデータ分析サービスを開始するため、AI製品「Quid Monitor」(旧Netbase)の取扱いを開始。
2015年 1月統計アルゴリズムを活用した同社独自のAI製品「scorobo」の販売を開始。
同年 9月日本マイクロソフト株式会社とMicrosoft Azureを活用したIoT分野での協業を開始。
2016年 4月エンジニアリング事業強化を目的にテクノスデータサイエンス・エンジニアリング株式会社に社名変更。
2017年 9月株式会社エヌ・ティ・ティ・データ、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社が資本参加し、業務提携契約を締結。
2018年11月Cognigy GmbH社と業務連携し、対話型AIプラットフォーム「Cognigy」のグローバル販売契約を締結。
同年  12月東証マザーズに上場。
2021年12月TDSE株式会社に商号変更。
2022年 4月市場再編に伴い東証グロース市場に移行。
2023年 4月中期経営計画「MISSION2025」(2023〜2025年度の3ヶ年計画)を開始
同年   同月OpenAI社のGPTを活用した「Cognigy」最新バージョンをリリース。
同年   7月SNS上の競合分析を可能とする「Rival IQ」(現Quid Compete)の提供を開始。
2024年 3月Databricks Inc.のサービスパートナー認定を取得し統合データ分析基盤「Databricks」のサービス提供を開始。
2024年 4月リサーチ型テキストマイニングツール「TDSE KAIZODE」の提供を開始。
2024年 9月生成AIプラットフォーム「Dify」の開発元LangGenius社と国内初パートナー契約を締結し同製品の提供を開始。
2025年 4月AIエージェント本部を設立。
同年 6月株式会社ジーデップ・アドバンスとの協業によりNVIDIA DGX B200プライベートクラウドサービスを開始。
2026年 4月新中期経営計画「SHIFT2028」始動、生成AIエージェント領域への事業展開を強化するため営業・技術組織再編。

 

~ビジネス変革~

 (同社資料より)

【1-2ミッション・ビジョン・バリュー】

国内最高峰のデータサイエンティスト集団として、以下のようなビジョン・ミッション・バリューを掲げている。

Vision:

データを活用した可能性に溢れた豊かな社会

私たちは、「データに基づいて、最善の選択肢と仕組みを提供し、非効率が効率化され、人々の自由な時間とより良い選択肢がある、人々が幸せに暮らせる社会をつくる。」

Mission:

データに基づいて意思決定を高度化する

私たちは、「データとテクノロジーによって、勘や経験による属人的な意思決定を高度化し、人々がより効率的に、より最善の選択ができるようにする。」

Value:プロフェッショナルの追求/チームワークと成長/変化を楽しむ

・ プロフェッショナルの追求: お客様にとって真に価値のあることを追求する。

・ チームワークと成長: 互いの考え方・働き方・生き方を尊重し、常に協力して、自分とチーム全体を成長させる。

・ 変化を楽しむ: 同じ仕事はない、世の中は常に変化していく。変化を味方につけ、変化を楽しむ。

 

【1-3 事業内容】

売上高構成(26/3期)はコンサルティング事業75.9%(22億80百万円)、プロダクト事業13.7%(4億12百万円)、AIエージェント事業10.4%(3億13百万円)。データ及びAI活用のノウハウをコアバリューとするデータサイエンティストやエンジニアが、データ経営を目指す企業の業務改革や新事業構築を支援する。生成AIエージェントに関連するコンサルティングやDifyをはじめとする生成AIエージェント関連製品の強化を進めており、これら生成AIエージェント関連の割合を相乗的に高めることが事業成長の基本的な方向性である。

 

~事業全体像~

(同社資料より)

 

~事業体系図~

(同社資料より)

 

~サービス提供における系統図~

生成AIエージェント領域においては、コンサルティングサービスとプロダクトサービスを複合させたハイブリッドサービスを展開

(同社資料より)

 

(1) コンサルティングサービス
データ経営を目指す企業向けにAIを中心とした統合型ソリューションを提供するサービス。DX/AIアセスメントからデータ分析・AIモデル構築・システム実装・教育まで一気通貫した支援を行う。従来型のAIモデル構築・データ分析に加え、生成AIを活用したコンサルティング、AIエージェントの設計・構築・業務組み込みまで対応範囲を広げている。

 

~サービスメニュー概要~

以下のメニューを企業ニーズに応じて展開している。

 

1 DX/AIアセスメント

・業務ヒアリング・・・・ビジネス視点、業務効率化視点

・データ/AI活用・分析テーマの抽出・・・テーマの価値×難易度抽出

・データ/AI活用・分析テーマの解決手法・・・DS or ツール活用等含む設計

・優先順位付け

2 DX/AIコンサルティング

・組織設計

・全社システム基盤方針策定

・活用ツールの選定

3 分析設計/分析

・分析設計と実行

・暫定分析基盤の構築

・OJT

4 システム構築/実装

・分析基盤設計と構築

・AIモデルのインプリメンテーション

・生成AIプラットフォーム設計と構築

5 保守/チューニング

・システム保守

・AIモデルチューニング

6 データサイエンティスト、AIエンジニア教育

・エグゼクティブ教育

・データサイエンティスト教育(基礎~実践)

・生成AI導入教育

  (同社資料より)

 

(2)プロダクトサービス
同社独自のAI製品「TDSEシリーズ」や他社AI製品等の製品販売、または業務特有のAIモジュールを顧客企業向けに提供するサービス。継続利用・契約に基づくストック型収益を担う領域として位置づけており、生成AIエージェント関連製品の拡充によりストック比率を高めていく方針。
①自社AI製品「TDSEシリーズ」:TDSE KAIZODE(レビュー分析特化型)、QAジェネレーター、TDSE Eye(画像解析)等を展開。
②海外等他社AI製品:Quid Monitor・シリーズ(ソーシャルメディア分析)、Cognigy(対話型AIプラットフォーム)、Dify(生成AIアプリ構築PF)、Databricks(データ活用基盤)等を展開。Difyの新ライセンス「Essential」「Standard」やQuid Monitorの新機能「Quid Terminal」等、製品ラインナップを拡充している。

~プロダクトサービスの展開~

 (同社資料より)

~生成AI領域での製品構成~

(同社資料より)

【1-4 競争優位性】

同社のコアコンピタンス(競争優位の源泉)は、①国内最高峰のデータサイエンティスト集団、②ビジネス課題ファーストな技術力と実績、③コンサルティングからプロダクト開発まで一気通貫の実現体制である。

 

~コアコンピタンス~

 

(1)多種多様なバックグラウンドを持つ技術集団
役職員194名(2026年4月現在)のうち、約8割(150名)をデータサイエンティスト・エンジニアが占める(データサイエンティスト100名、エンジニア50名)。データサイエンティスト職の8割が理系修士以上、そのうち5割が後期課程進学者・博士学位取得者で構成され、欧州原子核研究機構(CERN)・宇宙航空研究開発機構(JAXA)等の先進国研究所出身者も擁する。

 

~データサイエンティスト・エンジニア人材構成~

(同社資料より)

(2)優秀な技術者の採用/育成と組織活性化に向けた環境
組織・・・技術要員の採用及び育成を強化するため、「人財強化組織」を設置し、採用と教育のクオリティを高め、業務のスピードアップを図る。
風土・・・人財強化につながる教育ノウハウが豊富に蓄積されており、技術習得に関する教育カリキュラムが充実。また社外メンバーとも渡り合えるよう自律的人材へ促す風土作りを進める。
取組・・・スキル獲得と業績成果に応じた解像度の高い人事評価/報酬制度を運用。社員満足度を定期的に確認し、各階層とのコミュニケーションを通じて各種施策を見直し、会社と社員間においてフラットな風土作りを目指す。

 

~人財強化の取組~

                                                                            (同社資料より)

(3)ビジネス課題解決に活かす技術のノウハウ
ビジネス課題ファーストで、多様なデータからアルゴリズムや分析手法の最適な解決方法を見つけ出し、企業が抱えてきたビジネス課題の解決に結び付ける。生成AIエージェント×データ分析(予測)×画像解析×自然言語処理(NLP)×最適化問題にわたる技術のノウハウを有する。

 

(4)創業以来蓄積してきた技術ライブラリー
創業以来、プロジェクト実績・技術・ノウハウの基礎情報を蓄積し、プロジェクト運営の効率化及びAIモジュールの整備を進めている。300を超えるライブラリー『scorobox』を有し、経験の浅い技術社員も活用できるビジネスモデルを確立している。

 

~コンサルティング×プロダクト一気通貫体制~

(同社資料より)

 

 

2.2026年3月期決算概要

【2-1業績概要】

 

25/3期

構成比

26/3期

構成比

前期比

会社予想

予想比

売上高

2,699

100.0%

3,005

100.0%

+11.4%

3,000

0.2%

売上総利益

925

34.3%

1,104

36.7%

+19.4%

-

-

販管費

726

26.9%

890

29.6%

+22.5%

-

-

営業利益

198

7.4%

214

7.1%

+7.8%

200

7.1%

経常利益

201

7.5%

232

7.7%

+15.4%

204

14.0%

当期純利益

136

5.1%

174

5.8%

+27.8%

137

27.4%

*単位:百万円、予想は2025年10月31日発表の会社予想。

 

増収増益、売上高は創業以来最高
26/3期の売上高は前期比11.4%増の30億5百万円と2025年10月31日開示の修正計画(30億円)を上回り、創業以来最高となった。プロダクト事業とAIエージェント事業の急成長が全体を牽引し、コンサルティング事業が横ばいにとどまるなか2桁増収を達成した。営業利益は同7.8%増の2億14百万円。売上総利益率は前期の34.3%から36.7%へ2.5ポイント向上したが、営業・技術人材の採用強化により販管費が増加したことで、営業利益率は7.4%から7.1%に低下した。
経常利益は同15.4%増の2億32百万円、当期純利益は同27.8%増の1億74百万円。
期末配当(中間配当なし)は前期と同額の10.00円/株を維持した。

 

 

(四半期推移)

 

24/3期

25/3期

26/3期

 

1Q

2Q

3Q

4Q

1Q

2Q

3Q

4Q

1Q

2Q

3Q

4Q

売上高

618

628

629

645

615

649

696

737

670

745

755

834

増収率(Y-Y)

+22.2%

+7.8%

-4.6%

-3.3%

-0.4%

+3.5%

+10.7%

+14.1%

+8.9%

+14.7%

+8.5%

+13.2%

増収率(Q-Q)

-7.5%

+1.6%

+0.2%

+2.7%

-4.6%

+5.5%

+7.2%

+5.8%

-9.0%

+11.1%

+1.3%

+10.5%

営業利益

38

77

64

91

32

48

64

53

6

36

104

66

増益率(Y-Y)

-6.9%

-6.6%

-41.4%

+186.4%

-14.6%

-37.8%

+0.4%

-41.8%

-80.0%

-24.7%

+62.5%

+25.1%

増益率(Q-Q)

+20.5%

+100.6%

-16.7%

+42.2%

-64.1%

+46.1%

+34.4%

-17.6%

-87.7%

+450.6%

+189.9%

-36.5%

*単位:百万円

 

売上高は、1Qこそ前期4Qを牽引した既存顧客プロジェクトの収束により前期比9.0%減となったが、2Q以降はAIエージェント事業の案件獲得加速と共に回復。4Qは四半期として過去最高の8億34百万円を達成し、下期(15億89百万円)は上期(14億15百万円)を上回り、成長ペースは下期にかけて加速した。

 

【2-2 事業別動向】

(1)コンサルティング事業
①概況
売上高は前期比1%減の22億80百万円。修正計画(23億70百万円)に対する達成率は96%。
既存顧客の主要プロジェクトが一部収束した影響を大きく受け、既存売上は同4%減の21億38百万円にとどまった。一方、重要課題として取り組んできた営業強化策の効果が表れ、新規売上は同92%増の1億42百万円と大きく伸びた。
②営業面での振返り
26/3期は、①既存顧客からの売上向上、②新規顧客開拓による売上向上、③アライアンス強化による売上向上、の3つの切り口で目標を設定して営業活動を進めてきた。
既存顧客からの売上向上では、主要顧客(年間売上1億円以上)からの売上アップ率が対前期維持の目標を下回る前期比4%減となった一方、25/3期に新規開拓した顧客(年間売上1千万円以上)からの売上アップ率は目標30%以上を上回る同47%増となった。新規顧客開拓による売上向上では、営業強化策の継続により掲げていた売上アップ率50%以上の目標に対し同92%増と大幅に上回った。アライアンス強化による売上向上では、強化アライアンス(Databricks、三菱総合研究所など)が1億円の目標に対し遂行率50%にとどまり目標を大きく下回った一方、既存アライアンス(大型印刷製造系・メディアコンサル・NTTデータなど)は3億円の目標に対し遂行率98%とほぼ目標を達成した。
生成AI・AIエージェントへのニーズの高まりを背景に、従来型の分析プロジェクトの案件獲得機会は減少傾向にある。既存顧客に対してはニーズの変化を踏まえた提案が追い付かず、一部で案件縮小が生じた。
今後は営業機能を集約し、アライアンスも含めた組織力を最大限に活かしながら、AIエージェント事業とも連携したデリバリー体制の構築を進める方針。

 

③技術人員に関する状況
26/3期の目標として技術人員141名、リーダー人員44名を掲げてきた。25年4月時点では技術人員136名・リーダー人員40名で推移しており、その後リーダー数は昇格要件を満たす社員の増加により当初計画を上回る水準まで積み上がった。生成AI・AIエージェント領域に対応できる人材については、需要に対してなお不足傾向が続いているとしている。

 

(2)プロダクト事業
①概況
売上高は前期比23%増の4億12百万円。AIエージェント本部組成により、プロダクト事業にあったカンバセーショナルAIソリューション事業が同本部へ移管されたため、ソーシャルメディアマーケティング事業のみで前期比を算出。修正計画(4億10百万円)に対する達成率は100%。
既存売上は同59%増の3億74百万円、新規売上は同62%減の38百万円。QUID製品の優位性を軸とした継続収益(ストック収益)の積み上がりが寄与した一方、新規開拓には課題が残る。件数ベースでは新規開拓件数が26件と目標(15件以上)を上回り達成率173%、既存案件継続率も80%で目標(80%以上)を達成した。

 

②製品拡充の状況
QUID製品では、業界ごとにチューニングしたLLMにより自動で調査レポートを生成する新機能「Quid Terminal」を26/3期中に搭載し、2026年6月には本格提供を開始した。生成後のレポートについても対話形式で深掘り分析ができる「Ask Q」機能も追加した。一方、レビュー分析に特化したAIエージェント「KAIZODE」では、収集データとLLMを連携させた対話形式の分析を可能としたほか、収集対象データを拡充し海外ECサイトのレビューにも対応、LLM経由での日本語分析にも対応した。
27/3期にはKAIZODEにMCP機能の実装を予定しており、AIエージェントとの連携を容易にすることで競争力向上を図る考え。

 

(3)AIエージェント事業
①概況
売上高は前期比343%増の3億13百万円。AIエージェント本部組成により、コンサルティング事業及びプロダクト事業から移管された案件をベースに前期比を算出。修正計画(2億20百万円)に対する達成率は142%。
既存売上は同525%増の1億55百万円、新規売上は同245%増の1億58百万円となった。Dify関連売上は2億38百万円と全体の7割強を占めた。生成AI市場の追い風に加え、一昨年から採用してきたDifyを軸とする提案力が顧客から高く評価された。2026年6月にはDify新ライセンス「Essential」「Standard」の提供を開始し、部門・チーム単位でのスモールスタートを希望する企業層の取り込みを図った。

 

②今後に向けた取組
AIエージェントプラットフォームの環境構築ニーズが高いことを踏まえ、パートナー企業を含めたAIエンジニア人材の増強・教育強化を進めている。また複雑な業務を自動化するために必要な複数のAIモジュール開発や、データサイエンティストが提供してきたBPOサービスをAIエージェントに代替する選択肢を検討しているほか、得意領域を持つ企業との連携強化によるエコシステム構築も進めている。AIエージェント本部組成から1年間の活動を通じて、生成AI市場開拓、LLM、AIエージェント構築、ガードレール(AIの誤作動・逸脱を防ぐ制御技術)など幅広い経験・ノウハウが蓄積されており、これらとコンサルティング事業で培った分析実績を組み合わせたサービス展開につなげていく考え。

 

【2-3 財務状態】

◎主要B/S

 

25年3月末

26年3月末

増減

 

25年3月末

26年3月末

増減

流動資産

2,465

2,728

+262

流動負債

502

558

+55

現預金

1,955

2,143

+188

固定負債

20

44

+24

売上債権

330

357

+26

負債合計

522

603

+80

固定資産

266

250

-15

純資産

2,209

2,375

+166

投資その他の資産

211

222

+11

利益剰余金合計

1,081

1,234

+153

資産合計

2,731

2,979

+247

負債純資産合計

2,731

2,979

+247

*単位:百万円

 

自己資本比率は79.7%(前期末80.8%から1.1ポイント低下も高水準を維持)。流動比率は488.4%と流動性は十分に確保されている。現預金は2,143百万円(前期末比188百万円増)。

 

◎CF

 

25/3期

26/3期

増減

営業CF

197

193

-3

投資CF

-11 

7

+19

フリーCF

185

201

+15

財務CF

-22

-22

0

現金同等物残高

1,955

2,143

+188

*単位:百万円

 

フリー・キャッシュ・フローは201百万円(前期比15百万円増)と改善した。

 

3.2027年3月期業績予想と取組

【3-1 業績予想】

 

26/3期

構成比

27/3期(予)

構成比

前期比

売上高

3,005

100.0%

3,200

100.0%

+6.5%

営業利益

214

7.1%

130

4.1%

-39.3%

経常利益

232

7.7%

130

4.1%

-44.1%

当期純利益

174

5.8%

85

2.7%

-51.3%

*単位:百万円。予想は会社側予想。

 

27/3期の会社予想は売上高が前期比6.5%増の32億円、営業利益は同39.3%減の1億30百万円。SHIFT2028の初年度として構造改革のための戦略投資を大きく積み増すことにより、大幅減益を余儀なくされる見通し。戦略投資として、①労務人件費(昇給・賞与含む)約2.0億円、②採用費約0.3億円、③商品仕入約1.1億円、④情報処理費・広告宣伝費各約0.3億円の計約4.0億円増加を見込む一方、減価償却費や外注削減による約1.2億円のコスト低減を合わせて実行することで、戦略投資の純増加額は約2.8億円となる。
会社側は27/3期を「変革の一年」と位置づけている。この先行投資が成長加速につながるかが、最終年度(29/3期)の収益目標を売上高38〜43億円・営業利益率8%とするSHIFT2028の評価軸となる。

 

【3-2 事業別取組】

(1)コンサルティング事業+AIエージェント事業
①生成AI提案の増幅
テーマ別標準提案資料を整備し担当者が社内生成AIを活用し自律的・迅速に提案できる体制を構築。生成AI・AIエージェントの活用提案を多くの担当者が実施できるよう体系的に情報連携する。

 

②顧客との継続的関係構築の制度化
顧客ごとにアカウントプランを設定し、CS調査の定期実施と経営層への接点強化で上流から参画できる案件を格段に増やす。営業統括×技術統括×社長の定期レビュー体制で計画精度を向上させる。

 

③顧客視点の価値提案型営業への転換
導入後の利用状況・成果・課題の構造的把握と次の打ち手設計を確立。生成AIトレーニング〜アセスメント〜AI基盤構築〜エージェント構築〜技術伴走の横断的複合提案でLTV最大化を図る。アライアンスパートナーとの共同マーケティング・共同提案の仕組みも構築する。

 

(2)プロダクト事業
①QUID製品の生成AI機能充実と拡販継続
ソーシャルリスニング領域での国内上位ポジションを維持しつつ、Quid Terminal等の新機能を活用した顧客の付加価値向上を図る。離反率低減と新規開拓の両輪でライセンス継続率を高め、ストック型収益の主柱として成長を継続する。

 

②Dify新ライセンス展開とDatabricks本格展開
2026年6月に投入した新ライセンス「Essential」「Standard」を軸にDifyの顧客基盤の裾野拡大を継続するとともに、Databricksのデータ統合基盤による継続収益積み上げを図る。Databricksについて池野取締役は「AI活用を前提に設計されたプラットフォームであり、同社の事業との親和性が高い」として、専門部隊を設け重点領域として注力する方針を説明した。国内プライムベンダーの地位確立を目指し、協業企業との共同ソリューション構築を推進する。

 

4.新中期経営計画「SHIFT2028」

【4-1 新中期経営計画「SHIFT2028」の概要と背景】

同社は2026年4月より、27/3期〜29/3期を対象期間とする新中期経営計画「SHIFT2028」を始動させた。前中期経営計画「MISSION2025」(24/3期〜26/3期)は、M&A込みで売上高33億円・営業利益率10%以上を最終目標として掲げたが、M&Aが不成立に終わりオーガニック成長へ集中を余儀なくされた。最終年度(26/3期)は修正計画(30億円)を上回る30億5百万円で着地したものの、当初目標の33億円には届かなかった。コンサルティング事業における生成AI対応の遅れも重なり、計画精度への市場の懸念が続く結果となった。一方、AIエージェント事業・プロダクト事業は計画を大幅に超過し、新たな成長軸としての事業ポテンシャルを示した。SHIFT2028はこの総括を踏まえ、①成長軸の転換(従来型AI→生成AI)、②収益構造の転換(フロー型→ストック型)、③実行体制の転換(分散組織→集約・融合)の3つを掲げる「構造改革型の中計」として策定された。
東垣社長は2026年6月の決算説明会でビジョンとして「次世代労働力となるエージェントとの共存共創社会へのシフト」を掲げ、「AIエージェントを単なるツールではなく、人と協働する次世代の労働力として位置づけ、社会実装していく」と述べた。
生成AI市場はCAGR40%強(特にAIエージェント市場はCAGR85%強)で急拡大しており、同社に固有の転換機会(従来型AI×生成AIの組み合わせによる高付加価値化、需要予測領域での実績を活かした生成AIへの展開、既存大手顧客との強固な信頼関係、Dify・Cognigy・Databricksとのアライアンスという差別化要素)を今こそ確立するタイミングとの認識のもと、全社で3つの転換を推進する。なお、前中計で実現しなかったM&A等の非連続事業は新中計に含めず、オーガニック成長のみで目標達成を目指す方針である。

 

~3つの転換~

①成長軸の転換

②収益構造の転換

③実行体制の転換

従来型AI → 生成AIへのシフト

従来型AIで培ったノウハウを基盤に生成AIの活用領域へ事業の重心を移す。判断・実行・運用までを含めた意思決定支援を強化。

フロー型 → ストック型へのシフト

プロダクト・プラットフォームを含むストック型収益の比重を段階的に高める。QUID・Dify・Databricksを軸に継続課金型収益を積み上げる。

分散組織 → 集約・融合へのシフト

営業機能をトップマネジメント直下に全社集約。コンサル事業とAIエージェント事業を統合。技術組織を4職種体制に再設計し、知見を全社で共有・活用。

(同社資料より)

 

【4-2 数値目標と経営管理指標】

指標

2025年度実績

2026年度計画

2028年度目標

方針・根拠

売上高(最重要KGI)

30億円

32億円

38〜43億円

CAGR 8.2%〜12.7%(2025→2028)

生成AIエージェント売上比率

約30%

取材時は非開示

60%

Difyを中核とするAIエージェント事業が牽引

ストック型売上比率

約20%

取材時は非開示

30%

プロダクトSaaS(QUID)・AIエージェント(Dify)・データ活用基盤(Databricks)の継続収益拡大

売上高営業利益率(目安)

7.1%

4.0%

8.0%以上

初年度は構造改革投資で一時低下、最終年度に回復

*2026年度及び2027年度の生成AIエージェント売上比率・ストック型売上比率の数値目標は非開示(期中に適切な粒度で開示予定)。

(同社資料より)

 

【4-3 3ヶ年ロードマップ】

(同社資料より)

 

【4-4 営業戦略・技術戦略と実行体制】

①営業戦略: トップマネジメント主導の全社集約体制へ
「MISSION2025」では事業部別の独立体制により意思決定が速い反面、サイロ化・機能重複という弊害があった。SHIFT2028では、DS/ENG BPO・Dify/Cognigy・Databricks・QUID/KAIZODEの4商材に対する営業機能を全社集約しトップマネジメント(社長)直轄とすることで、重点業界・重点顧客への機動的な意思決定を担保する。顧客情報を一元管理し複合提案を組織的に実現することで事業間の相乗効果を最大化し、部門の壁を越えた連動提案を制度化する。
各商材の役割分担・対象顧客・成功要因・管理KPIは以下の通りである。DS/ENG BPOによるアカウント営業(既存大手顧客の深耕)と、Dify/Cognigy・Databricks・QUID/KAIZODEによるプロダクト営業を組み合わせたハイブリッド型が、部門横断の複合提案を可能にする設計だ。

 

~SHIFT2028 における4商材の役割~

(同社資料より)

 

実行を担保する4つの仕掛けとして、①経営層による案件管理とKPIモニタリング(全案件の進捗可視化・停滞案件への即時介入)、②生成AI起点のハイブリッド型営業の定着(プロダクトとコンサルを連動した複合提案の標準化)、③定期的な戦術見直し会議(営業統括×技術統括×社長による定期レビュー)、④既存顧客支援によるリレーションシップ強化(アカウントプラン設定・定期フォロー)を組み込む。

 

②技術戦略: コンサル×AIエージェントの一体化と4職種体制
技術面では、コンサルティング事業とAIエージェント事業を統合し、構想策定から業務適用設計(BPR)、実装、運用定着まで連続的に提案できる体制を構築する。職種体系を従来の2職種から「コンサル/DS(データサイエンティスト)/ML・LLMエンジニア/データエンジニア」の4職種に細分化し、クロスファンクショナル・チーム体制でデリバリーの品質と実行力を同時に強化する。
AIエージェント産業の5層レイヤー構造(Infrastructure → Data/Knowledge → Foundation Model → AI Agent/Implementation → Application)において、同社はLayer4(AI Agent/Implementation)を中核にすべてのレイヤーを強化軸として推進する方針だ。実際、技術管掌である結束取締役は「大手通信業においてオンプレミスサーバーといったクローズドな環境でのDify構築を支援し、複数のエージェントが協働し合うマルチエージェントアプリケーションの先進的な開発検証を進めている」としている。

 

③ストック型収益への転換ロードマップ
既にQUID製品が安定ストック収益として機能している。これに加え、Dify/Cognigy継続利用(26/3期売上約3億円、AIエージェント継続利用・アプリ展開拡大)、Databricks継続利用(基盤収益積み上げ、26/3期はビジネス準備段階)、業務特化型エージェント(需要予測・営業支援・カスタマーサポート等、26/3期は要件整理段階)の3つを積み上げることで、29/3期にストック型売上比率30%(26/3期実績は約20%)達成を目指す。実行の仕組みとして、導入後の定期フォロー・顧客スコア管理、サブスク展開、代理店・アライアンス経由の流通拡大、継続月数・顧客ROI改善率を焦点とした提案を組み込む方針だ。

 

5.今後の注目点・総括

【MISSION2025の総括とSHIFT2028の評価】 
26/3期は売上高30億5百万円(修正計画比100%)・営業利益2億14百万円(同107%)と修正計画を達成し、売上高が創業以来最高を更新した点は評価できる。プロダクト事業・AIエージェント事業が計画を大幅に上回り、コンサルティング事業の横ばいを補完する「三位一体の事業モデル」への転換が着実に進行した。特にAIエージェント事業の修正計画対比142%という超過達成は、Dify・Cognigyなど生成AIエージェントプラットフォームの国内初パートナーとしての先行者優位(Dify関連売上が全体の7割強を占める)を改めて裏付ける結果となった。
一方、前中計「MISSION2025」を振り返れば、コンサルティング事業の成長鈍化・M&A案件の見送りが続き、計画精度への市場の懸念は継続している。新中計「SHIFT2028」が掲げる「生成AI・エージェント領域への事業の重心移行」と「ストック型収益構造への転換」は、生成AI市場の潮流を的確に捉えた合理的な戦略として評価できる。この評価軸に照らせば、初年度(27/3期)の大幅な利益減少(営業利益△39.3%)が市場に受け入れられるには、売上高の伸長はもとより、生成AIエージェント売上比率などKPIの進捗を通じて、先行投資の効果を示していく必要があろう。同社としても、こうした計画精度への市場の懸念を受け止めたうえで、SHIFT2028では構造改革に必要な時間を織り込みながら生成AI・AIエージェント領域への事業シフトと収益構造転換を進める方針であり、初年度を次の成長段階に向けた基盤整備を進める意向である。

 

【今後の着眼点】
SHIFT2028を実行するにあたっては、大口顧客との関係性・海外ベンダーとの力関係といった現実的な制約も影響しよう。本レポートでは、こうした背景を踏まえ、SHIFT2028をより確かな成長軌道に乗せるための4点の着眼点を示したい。

 

●<DS/ENG BPO事業の生産性向上 : AIエージェント活用によるレバレッジ効果>
主力事業であるコンサルティング事業(26/3期売上高22.8億円、SHIFT2028の新体制では「DS/ENG BPO」と位置づけられる)は、データサイエンティストを軸とした人月型の受託・準委任モデルが中心だが、決算説明会において営業管掌の池野取締役は「1人の作業がAIエージェントを組み合わせることによって2倍でも3倍でも増加していく」と説明した。東垣社長も「データサイエンティストとAIエージェントを組み合わせたモデルを今年度中に顧客との検証を進め、変革の可能性を見極めながら最適な形へ調整していきたい」と述べており、SHIFT2028においても「従来の人月依存からの脱却」が明示されている。このモデル転換が定着すれば、売上規模を維持しながら人件費コストを圧縮し、営業利益率を構造的に改善するレバレッジ効果が期待できよう。こうしたレバレッジ効果を測る指標(1人当たり売上高など)を管理KPIとして設定し、投資家との対話において進捗を示していくことが期待される。

 

●<顧客ポートフォリオ多様化の進捗 : 大口2社依存からの脱却度合い>
ファーストリテイリング・リクルートの大口2社向け売上は、26/3期においてコンサルティング事業売上全体でも大きく占める。一方で、人事、物流、物販、飲食、金融など幅広い領域での支援実績を有しており、特定顧客への深耕と業種横断での展開を並行して進めており、製造業・インフラ領域についても強化を目指すとしている。生成AIエージェント需要が幅広い業種・規模に拡大するなかで、顧客ポートフォリオの多様化が進むか、注目していきたい。

 

●<マルチベンダー戦略と自社プロダクト戦略の深化 : 「ツールの目利き力」と業務特化型AIエージェントの製品化>
同社はDify・Cognigy・Databricksといった海外AI・データプラットフォームの販売・実装を主軸とするが、特定の基盤モデルに依存せず顧客の課題を起点に最適なアーキテクチャを選定・提案・実装する「ツールの目利き力」が、AI技術の急速な変化に対応し続けるための持続的競争優位となりうる。加えて、長年のデータサイエンス案件で蓄積した業界・業務別の知見を業務特化型AIエージェントとして製品化、API・ライセンス・SaaSモデルへ展開していくことは、同社固有のストック収益基盤の構築に直結する取り組みである。KAIZODE等の既存自社製品と合わせた自社プロダクト戦略の深化に注目したい。

 

●<ストック型収益基盤の質的向上 : 顧客基盤の定着・深耕>
SHIFT2028が掲げる「ストック型売上比率」30%目標(26/3期実績は約20%)は、前述の通り新規顧客層の開拓が今後進むとしても、その裾野拡大と並行して既存顧客の解約率抑制・単価向上が伴わなければ、獲得した顧客基盤が定着せず、目標達成は一時的なものにとどまる。QUIDへの生成AI機能追加(「Quid Terminal」等)、KAIZODE等の機能拡充、Difyの無償版から有償エンタープライズ版への移行促進に加え、解約率抑制に向けた取り組みを通じて、拡大した顧客基盤の定着・深耕が伴う成長が実現されるか注目していきたい。

 

【総括】
同社は生成AIエージェント市場という巨大な成長機会の真只中にあり、国内最高峰の技術人材集団・500社強の支援実績・Dify・Cognigyの国内初パートナーとしての先行者優位という三重の競争優位を持つ。
今後は、SHIFT2028初年度(27/3期)の戦略投資先行による大幅減益局面において、四半期ごとの売上高積み上げとKPI(生成AIエージェント売上比率・ストック型売上比率)の進捗が計画通りに推移するか、そして本稿で示した4点の着眼点—DS/ENG BPO事業の生産性向上・顧客ポートフォリオ多様化の進捗・マルチベンダー戦略と自社プロダクト戦略の深化・ストック型収益基盤の質的向上—が確認できるかが問われる。SHIFT2028の定性的目標が投資家にとって検証可能な指標として具体化されるか否かが、同社への評価を左右しよう。
また、中長期的な構造リスクとして技術一般化の問題がある。AIエージェントの技術革新は急速に進んでおり、企業が自ら容易にAIエージェントを構築できる環境が整えば、AIエージェント実装支援を主力とする同社の付加価値は相対的に低下しうる。こうした「技術コモディティ化」への対応として、①業務特化領域における深い知見を業務特化型AIエージェントとして製品化する取り組み、②プラットフォーム導入後の継続支援によるLTV最大化、③複数商材の組み合わせ提案によるアカウント深耕——これら3軸が同社の差別化を支える鍵となろう。汎用LLMベンダーによる業務領域への展開が進む一方、企業実装では業務理解やデータ設計理解、運用知見が不可欠であり、同社が蓄積してきた成功・失敗双方の事例知見が差別化要素となる。市場成長を過度に喧伝するのではなく、顧客課題を見極めながら生成AI・AIエージェント領域を拡大していく姿勢が重要である。
生成AI市場の急拡大を追い風に、SHIFT2028の3つの転換(成長軸・収益構造・実行体制)が進行するか、計画精度の向上と実行力の証明を通じて市場評価の再構築が実現するかに注目したい。

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査等委員会の構成 

組織形態

監査等委員会設置会社

取締役

7名、うち社外取締役3名(うち独立役員2名)

監査等委員会

3名(うち社外委員2名)

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2026年6月30日

 

<基本的な考え方>
当社は、「データに基づいて、意思決定を高度化する」というミッションのもと、「データを活用した可能性溢れた豊かな社会」の実現に向けて、持続的に成長し、株主、取引先、従業員等のステークホルダーの信頼を得、継続的な企業価値の向上を実現するため、コーポレート・ガバナンスの充実が経営上の重要な課題であると認識しております。経営環境の急速な変化やコンプライアンスの重要性が増大する中、コンプライアンス体制及びリスク管理体制の構築・強化を図り、取締役会を中心に「経営の効率化」及び「監督機能の強化」に主眼を置き、健全で透明性が高く、経営環境の変化に迅速に対応できる経営体制の構築に努めております。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社はコーポレートガバナンス・コードの基本原則をすべて実施しております。

 

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