ブリッジレポート
(8275) 株式会社フォーバル

スタンダード

ブリッジレポート:(8275)フォーバル vol.2

(8275)フォーバル/大久保 秀夫社長
2001年
12月13日(木)

大久保 秀夫社長

 

 

フォーバルの中間決算発表会に出席してきました。
当日は決算説明の他、子会社フォーバルテレコムが11月に発表した中期経営計画「GET51」に関しても説明がありました。

1. 2002年3月期中間業績と通期見通し

2002年3月期中間業績(連結) 
単位:百万円
売上高
22,221
(前期比 マイナス16.7%)
営業利益
△728
(前期比 マイナス969百万円)
経常利益
△818
(前期比 マイナス925百万円)
純利益
△3,727
(前期比 マイナス3,820百万円)

売上高の減少は、通信機器、OA機器などハードの売れ行き不振に加えて、通信事業子会社のフォーバルテレコムにおいて、国内、国際、移動体とも競争激化で売上が減少したことが主な要因です。
このため、フォーバル単体および他主要子会社2社(AJOL、フォーバルクリエーティブ)は経常黒字でしたが、フォーバルテレコムは1,120百万円の経常赤字となり、連結でも経常赤字となりました。
またフォーバルテレコムは、在日外国人向けの移動体電話サービスを行っていましたが、この不況による外国人労働者の雇用悪化(ユーザーの主体を占める在日ブラジル人の失業率は約30%と推定)による収入減の影響で、解約、未払いが発生。赤字となり今後も収益性を大きく改善させることは難しいと判断したことから事業撤退を決め、連結ベースで約17億円の事業整理損を特別損失として計上しました。その他にも、下半期および来期以降を展望しての事業構造改革に着手し、貸倒引当繰り入れ7億円など合わせて、29億円の特別損失を計上しました。

2002年3月期通期業績見通し(連結)
 単位:百万円
売上高
42,000
(前期比 マイナス10,045百万円)
営業利益
△300
(前期比 マイナス 1,326百万円)
経常利益
△600
(前期比 マイナス 1,299百万円)
純利益
△4,300
(前期比 マイナス 4,386百万円)

単体では機器関連売上に関して減少傾向に歯止めがかかってきた感があるということで、通期では営業利益、経常利益は前年を上回ると見ています。
ただ連結では事業整理の影響が大きく、赤字は避けられない模様です。

 

2. フォーバルテレコムの中期経営計画「GET51」

電話など音声通信サービスへの収益依存度低減とインターネット関連サービスへの取り組み強化を経営課題として掲げてきたフォーバルテレコムでは、ダイナミックな事業環境の変化が予想されるインターネット関連市場に積極的かつ機敏に対応し、今後加速度的に進展していくブロードバンド時代に適応したサービスメニューを確立することにより、中長期的な成長力・収益力を再構築すべく、2001年11月21日に中期経営計画「GET51」を策定、発表しました。
「選択と集中」というキーワードのとおり、従来の事業の収益性、成長性を見直したうえで、新たなサービス展開もふまえて、経営資源を同社の基幹事業、得意分野に集中していく方針です。

「概要」
(1)期間:平成13年度下半期から平成16年度までの3.5年間
(2)基本政策

  1. 新サービスへの集中的な経営資源の投入(後述)
  2. 小規模法人向け以外の既存サービスにおける推進体制の見直し
    (上に述べた在日外国人向けサービスからの撤退などです。)
  3. 債務超過の回避
    (2001年12月13日フォーバルテレコムの第三者割当32億円をフォーバルが引き受けることを発表しました。中期経営計画達成のために必要な販売、資金、人材面での協力・支援を行うもので、今回の増資はその一環です。)
  4. 平成16年度における欠損金の解消
    平成13年度末欠損金(見込み)48億円を、3年間で解消することを目指しています。
*単位:百万円
平成14年度
平成15年度
平成16年度
売上高
9400
9500
9500
経常利益
1020
2250
1700
純利益
1017
2247
1574
剰余金
△3774
△1527
47

 

 

3. 新サービスについて

中期経営計画において、新たに取り組むサービスの選定基準として、「独占販売またはそれに類した取り扱いが可能な商材」と「価格訴求型商材と付加価値提供型商材の両面展開」をあげています。
その中で当面は、以下のサービスを取り扱っていきます。

①インターネットキーワードサービス
ブロードバンド時代に対応した新サービスとして同社がまず注力するのがこの「インターネットキーワードサービス」です。
あるホームページへアクセスしようと思えば、長いURLを記憶し、入力しなければならないケースがよくあります。これに対してこのサービスでは、日本語のキーワードをマイクロソフトのブラウザのアドレスバーに入力するだけで目的のホームページに簡単にアクセスできるというものです。
キーワードに「社名」、「商品、サービス名」などを登録しておけば、より簡単により多くの人にアクセスしてもらえるわけで、ブロードバンドインフラの整備に伴い、ホームページへのアクセスニーズ拡大を側面から支援し、情報媒体としてのサイトの重要性・効果を飛躍させることが可能と考えています。
ある雑誌においてこのキーワードを使用したところ、1ヶ月のアクセス件数が8―10倍と飛躍的に増大したそうです。

これは米リアルネームズ社との独占販売権契約となっています。(2001年10月から2005年3月まで)売上はキーワードを登録する企業からの利用料(例:1キーワード 年額39800円)、主たる原価はリアルネームズ社に支払う登録費用および独占契約権利金(10億円)となります。
フォーバルテレコムが日本総代理店となり、代理店網を構築中で昨年11月時点で大手含め40の第一次代理店契約を締結しています。また、2004年3月末時点で15万キーワードの登録を目指しています。
リアルネームズ社はマイクロソフトと独占契約をしているので、マイクロソフトのブラウザにおいては競合はないということです。

②インターネット高速接続サービスおよびVoIPサービス
高速アクセスを実現するインターネット接続サービスを競争力のある価格で提供することと、それに付帯して実現される廉価なVoIPサービスを提供していきます。
VoIPとは、「IPネットワークで、音声を伝える」技術のことです。
今まで、電話(音声)の信号の伝送は、電話専用のネットワークを使用していましたが、代わりに、データ通信で使用されているIPネットワークを使用します。専用ネットワークが不要なことから従来型電話よりも低コストで音声通信が可能になります。ADSL、FTTHなどの急速な普及でVoIPも今後個人、法人を問わず普及していくことが考えられます。
フォーバルテレコムでは、従来型電話の置き換え需要を狙い、同社の強みである法人向け営業力を生かし、高速接続用機器の販売にこのサービスを付加価値として乗せ、顧客獲得を促進する計画です。
提携先企業、具体的な目標数値などは提携交渉が終了し、販売契約を締結次第開示する予定です。

 

取材を終えて

前回(2001年8月)の取材で大久保社長は、グループ全体の問題点を整理し、次の変化の為の準備を進めており、2001年中にはメリハリの効いた方向付けを発表したいとおっしゃっていました。そのアウトプットとして策定されたのが「GET51」です。
たしかに足元は厳しく、また新たなサービスの販売動向についてもまだ未知数の部分が多く、現時点での判断は難しいといわざるをえないのが現実でしょう。
ただ、ユーザーオリエンテッドのポリシーの下、常に顧客の利益代表者として川上を選ぶ立場に立ち顧客をつかんでいる足腰の強さ、情報通信全般に対応できるといったフォーバルの強み、特徴は再度注目すべきでしょう。
加えて、直販体制強化のために新人を含めた営業職員の教育体制の確立を図り子会社FBF(フォーバルビジネスフロンティア)を設立。新規開拓に特化して営業力の向上を図っています。昨年10月のスタートですが、当初の予想以上に成果が上がっているとのことです。また、情報通信コンサルタントとして小規模事業者のIT化の実態調査をレポートとしてまとめ、提案を行い、顧客ニーズに対するアプローチを強化するなど、フォーバル本来の強みである営業力の強化にも力を入れています。
「事業の選択と集中」をキーワードに、事業構造の改革に着手した同社。新サービスの展開動向など、引き続きフォローしていきたいと考えています。