ブリッジレポート
(4709) 株式会社IDホールディングス

プライム

ブリッジレポート:(4709)インフォメーション・ディベロプメント vol.15

(4709)インフォメーション・ディベロプメント/尾崎 眞民社長
2005年5月17日(火)

インフォメーション・ディベロプメントの決算説明会に出席しました。
船越専務が決算概要、今後の取り組みについて説明されました。


尾崎社長と舩越専務

 

2005年3月期決算概要

<連結> 

(単位:100万円)
 
実績
対前期比
売上高
11,378
+1.60%
営業利益
550
-12.00%
経常利益
557
-11.30%
当期純利益
119
-41.30%

増収・減益となりましたが、ほぼ計画通りでした。

 

<セグメント別動向>
(単位:100万円)
 
売上高実績
前期比
BPO
1,951
+5.50%
ITO
4,607
+3.70%
SI
4,025
-3.50%
セキュリティ
793
+7.30%

ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)
株券移行業務、事務代行業務などの受注が増加しました。

ITアウトソーシング(ITO)
金融関連はほぼ前期並で、情報関連は大幅に増加しました。10年間増収で推移しています。

システム開発
前期に統合の大型案件があった反動で、保険関連が大幅に減少しました。
(前期比 -43%)

セキュリティ
パッケージ単価の下落で製品販売は減少しましたが、コンサルティングは伸びました。


全てのセグメントで一人当たり売上高を伸ばすことができました。またSIを除き、一人当たり粗利益も増加しました。今期以降は開発も粗利増を期待しています。

 

<顧客別動向>           
保険関連を除き、金融、情報・通信・サービス、その他ともに増収でした。
金融・保険分野の売上高を維持・拡張しながら、他業種の売上拡大を目指していますが、「その他」は前期比+6.7%と順調な伸びでした。
2-3年前からの取組みが花開いてきたと見ており、今期以降に続く明るい材料です。

<株主構成など>
・ 2005年3月末の株価は、PER 33.8倍、PBR0.80倍、配当利回り2.49%と、いずれもJASDAQ指数よりも割安な水準となっています。
・ 3月末の株主に、JPモルガンチェース(米国の機関投資家)が第5位株主として登場しました。(株数252千株、比率4.11%)、船越専務がここ数年継続して行ってきた海外IRの効果が現れたということです。また、割安株投資で有名な個人投資家「竹田 和平氏」も買い増しを行いました。
・ 2005年3月期配当は、記念配当3円増配の15円となる予定です。

2005年3月期の経営レビュー
このレポートでも何度か紹介していますが、同社は売上高拡大のために、「戦略的協業パートナーの開拓」を目指してきましたが、大きな実績が実現しました。

A社は、旧体制において「システム開発」を行う子会社と、「事務代行」、「システム運用」を行う子会社の2社を所有していました。
これに対し、新体制では同社のコアパートナーである大手アウトソーサーB社がA社と「アウトソーシング契約」を締結し、子会社から「システム運用部分の業務移管」を受けました。
A社にとってのメリットは以下の2点です。
・ グループ資産の有効活用と効率化
・ 安定的なシステム品質レベルの維持

さらにIDがコアパートナーのB社と業務委託契約を結び、子会社から「システム運用部分の人の移転」を受け、実際の「システム運用」業務を受託し、システム運用サービスを子会社に提供することとなりました。

今回のケースでは、実際の売上寄与は今期からとなりますが、「システム運用」という同社の強みを生かし、戦略的協業パートナーとお互いの強みを補完し合い売上拡大を目指すこの戦略を積極的に推進していく考えです。

業界動向
情報サービス産業の売上高は、昨年終盤からプラスに転じています。
また、今後3ヶ月の見通しでも上昇するとの見方が増加しています。
業務別では、受注ソフトウェア、管理運営受託などは先行きの明るさが見込まれています。業種別では、製造業は好調、金融・保険が底入れの兆しが出ているようです。

 

2006年3月期業績見通し

<連結>
(単位:100万円)
見通し
対前期比
売上高
12,300
+8.10%
営業利益
610
+10.70%
経常利益
600
+7.70%
当期純利益
310
+158.80%

増収・増益を見込んでいます。
ビジョンとしては「競争力を高め業界100位以内」をめざし、戦略としては「既存顧客における売上拡大」を図ります。
・ 前述の「大手アウトソーシング」案件が寄与します。
・ 現在のところ、特損の予定はありません。
・ 不採算案件も発生していません。

踊り場から次の段階を目指し、攻めの姿勢に転じていきたいと考えています。
また記念配による増配を維持したいとも考えています。


CSR経営について


事業のリスクについて

同社では事業上のリスクを以下のように認識しています。
1. 会社の経営方針にかかわるもの
・ 人材の確保:景気回復で採用が難しくなっています。サービス力向上のための研修に力を入れていきます。
・ 個人情報の管理について
2. 財政状態および経営成績の変動にかかわるもの
・ 上期と下期の業績について:下期偏重
・ 保有土地の減損会計の影響について:保有土地20億円(全て社員寮等の厚生施設用地)
・ 適格退職年金制度について
3. 特定の取引先への依存にかかわるもの
みずほグループ向け売上が、全体の約4割を占めます。
4. 会社の業務遂行にかかわるもの
・ ソフトウェア開発業務遂行上のリスクについて
・ システム運営管理業務遂行上のリスクについて

CSR経営の取組み
法令遵守、倫理的な事業活動は最も基本的な事項と認識し、全社で法令遵守のための組織体制作りを実施しています。

・ CSR経営会議
・ 勉強会の実施
・ コンプライアンス窓口の設置


情報紛失事故について

2005年3月30日に、みずほ信託銀行の口座情報の一部(約6800人分)を紛失しました。(個人情報は一切含まれていませんでした。)
同社は、この事実を速やかに公表するとともに、全ての顧客先に状況および今後の対策を説明しました。
緊急対策として一斉リスク実態調査を実施するとともに、再発防止策として業務改善室の新設、教育の徹底を実施。また関係役職員について訓戒、減俸などの処分を下しました。
大変敏速な対応のため、顧客における混乱や信用力の低下などは見られなかったようです。


取材を終えて

増収・減益とはなりましたが、「顧客の業種分散=ビジネスエリアの拡大」や「戦略的協業パートナーの開拓」も進展し、今期以降に繋がる決算であったようです。
特に戦略的協業パートナーの開拓に関しては、日本ではじめての運用アウトソーシングのケースだそうで、この実績を手がかりに更なる拡大が期待できるようです。
積極姿勢に転換する同社をこれからもフォローしていきたいと思います。

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