ブリッジレポート
(5162) 株式会社朝日ラバー

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ブリッジレポート:(5162)朝日ラバー vol.8

(5162:JASDAQ) 朝日ラバー 企業HP
横山 林吉 社長
横山 林吉 社長

【ブリッジレポート vol.8】2009年3月期第3四半期業績レポート
取材概要「世界経済の急激な悪化が同社の事業分野である自動車業界や情報通信業界に波及しており、当面厳しい事業環境が続く見込みだ。このため、同社が示・・・」続きは本文をご覧ください。
2009年2月24日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社朝日ラバー
社長
横山 林吉
所在地
埼玉県さいたま市大宮区土手町2-7-2
決算期
3月 末日
業種
ゴム製品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2008年3月 6,284 414 325 211
2007年3月 5,314 399 375 176
2006年3月 4,578 366 353 209
2005年3月 4,057 251 251 147
2004年3月 3,449 233 211 112
2003年3月 3,154 172 159 75
2002年3月 2,907 98 85 10
2001年3月 3,582 315 336 189
2000年3月 3,140 313 300 141
株式情報(2/12現在データ)

株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
280円 4,551,540株 1,274百万円 7.2% 500株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
12.0円 4.3% - - 646.25円 0.4倍
※株価は2/12終値。発行済株式数は直近四半期の発行済株式数から自己株式を控除。
 
朝日ラバーの2009年3月期第3四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
小型電球やLEDに被せる事で様々な発色を可能にする被覆用ゴム製品を主力とする。自動車の内装用照明の他、携帯用通信機器、電子・電気機器、産業機器、文房具用・スポーツ用等、幅広い分野で利用されている。ベースとなるのはシリコーン材料の配合技術と調色技術で、前者を活かして、医療・衛生用ゴム製品や硬質ゴムと軟質ゴムの複合製品等も手掛けている。

グループは、同社の他、ゴム・プラスチック等の研究開発を行う(株)ファインラバー研究所、米国の販売会社ARI International Corp.、及び中国・東莞市に工場(来料加工工場)を持つ朝日橡膠(香港)有限公司の連結子会社3社からなる。

<事業内容と主要製品>
事業は、自動車の内装照明の光源向けや各種センサ向け、或いは液晶表示装置のバックライトで使われる冷陰極蛍光管(CCFL)ホルダー、Oリング、電池用ゴム等に使われる工業用ゴム事業、点滴用ゴム栓や腰部クッション等の医療・衛生用ゴム事業、及び複合製品等のその他事業に分かれる。 08/3期の売上構成比は、それぞれ、87.3%、12.7%。

工業用ゴム事業は、更に彩色用ゴム製品(売上構成比50.8%)、弱電用高精密ゴム製品(同 21.2%)、卓球のラケット用ラバー等のスポーツ用ゴム製品(同 5.3%)、その他工業用ゴム製品(同 10.0%)に分かれる。
 
彩色用ゴム製品のラインアップ
 
2009年3月期第3四半期決算
 
 
前年同期比11.4%の減収、同62.2%の経常減益。
医療・衛生用ゴム製品が堅調に推移したものの、自動車の大幅な減産の影響を受けて、昨秋以降、工業用ゴム製品の受注が急減した。利益面では、売上の減少に加え、販売単価の下落や減価償却費の増加(349→472百万円)等による固定費負担の増加もあり、売上総利益率が悪化。コスト削減を進めたものの、営業利益は同60.2%減少した。
 
 
工業用ゴム事業
売上高3,539百万円(前年同期比12.8%減)、
営業利益218百万円
彩色用ゴム製品
売上高:2,140百万円( 同 9.8%減)
「ASA COLOR LED」は同9.1%増の1,631百万円。自動車生産の減少による影響を受けているものの、新規車種の内装照明向けで採用が進んだ。一方、透明シリコーン製品は、同55.3%減の217百万円。携帯ゲーム機向け応用製品の減少及び高輝度LEDと組み合わせた「ASA COLOR LENS」の既存取引が縮小した。また、車載機器の光源のLED化及び自動車生産の減少により、「ASA COLOR LAMPCAP」も290百万円と同24.3%減少した。
弱電用高精密ゴム製品
売上高:654百万円( 同 34.3%減)
顧客の仕様変更による受注減により液晶テレビのバックライト用ホルダー製品が291百万円と同50.8%減減少した他、自動車生産の減少で自動車関連製品の売上高も減少した。

この他、卓球ラケットの新機種向け等が寄与したスポーツ用ゴム製品の売上高が280百万円と同21.7%増加した他、新製品の量産化に向けた試作品開発等を進めた結果、その他の工業用ゴム製品の売上高も464百万円と同0.8%増加した。
医療・衛生用ゴム事業
売上高554百万円(前年同期比0.3%減)、
営業利益は52百万円
自社開発の新製品の受注が増加した医療用ゴム製品が520百万円と同1.8%増加したものの、衛生性、通気性、衝撃吸収性を追求した衛生用ゴム製品が在庫調整の影響等で34百万円と同23.9%減少した。
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー
前期末及び第2四半期末と比べて、財政状態に大きな変化はなく、第3四半期末の総資産は、前期末比127百万円減の7,756百万円。売上債権の回収が進んだ事や借入金が若干増加した事もあり、現預金が増加した。
売上債権の回収が進んだため、キャッシュ・フローも良好。営業CFが627百万円の黒字となり、フリーCFは63百万円の黒字。尚、定期預金の預け入れを考慮すると、実質的なフリーCFの黒字は2億円を超えている。長期借入金を増やした事等で、財務CFは298百万円の黒字。この結果、現金及び現金等同等物の第3四半期末残高は877百万円と前期末比361百万円増加した。
 
2009年3月期業績予想
 
 
前期比22.1%の減収、同96.9%の経常減益見込み。
スポーツ用ゴム製品及び医療・衛生用ゴム事業がほぼ計画通りに推移しているものの、世界的な自動車や電子機器製品の大幅な減産により彩色用ゴム製品及び弱電用高精密ゴム製品の受注が想定以上に減少しているとして、通期の業績予想を下方修正した。当期純損失となるのは、固定資産除却損等の特別損失約78 百万円が織り込まれているため。尚、1株当たり7円を予定していた期末配当を未定とした。
 
(2)経営合理化に向けた取り組み
同社では、現在の事業環境に対応していくためには、「一層の経営合理化により収益力を強化する事が不可欠である」との考えから、以下の施策の実施を決定した。
 
①役員等報酬の減額(09年3月度まで)
代表取締役社長を含む全ての取締役の月額報酬額の50%を減額する他、全ての監査役が月額報酬額の30%を自主返上する(監査役からの申し出による)。
 
②ワークシェアリング及び従業員給与等の減額支給(09年2月1日~3月31日)
正社員、準社員において業務を分担するワークシェアリングを実施し、同社の一日の所定労働時間を現行の7.5 時間から5時間に短縮して従来給与の70%を支給する。ただ、特殊技能が必要な部署で量産対応が必要な部署については、一日の所定労働時間を現行どおり7.5 時間として、従来どおりの給与を支給する。また、一部の準社員は一日の所定労働時間を6時間として、従来給与の80%を支給する。この他、工場の生産グループを中心に、交替で一日当たり55 名を自宅待機として、一日につき平均賃金の60%の休業手当を支給する。尚、準社員とは、一年間の範囲内で会社と雇用契約を結ぶ期間契約社員である。
 
取材を終えて
世界経済の急激な悪化が同社の事業分野である自動車業界や情報通信業界に波及しており、当面厳しい事業環境が続く見込みだ。このため、同社が示した第4四半期の予想は極めて厳しいものとなった。ただ、第3四半期決算からは、健全な財務内容が維持されており、足下のキャッシュ・フローも良好である事が確認できた。また、役員報酬の減額や監査報酬の自主返上に加え、話題にはなるものの、「実際に導入するのは難しい」とされているワークシェアリングにいち早く取り組む等、厳しい事業環境にあって、監査役を含めた役職員のモラルは高い。