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ブリッジレポート:(4709)インフォメーション・ディベロプメント vol.30

(4709:JASDAQ) インフォメーション・ディベロプメント 企業HP
舩越 真樹 社長
舩越 真樹 社長

【ブリッジレポート vol.30】2010年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「銀行・生損保など大手金融機関を中心にした優良な顧客基盤を有する事が同社の強みだが、金融機関はサブプライムローン関連の影響に加え、リーマ・・・」続きは本文をご覧ください。
2009年11月17日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社インフォメーション・ディベロプメント
会長
尾﨑 眞民
社長
舩越 真樹
所在地
東京都千代田区二番町 7-5
決算期
3月
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2009年3月 18,458 1,057 1,109 563
2008年3月 18,032 1,200 1,191 594
2007年3月 14,692 1,024 1,024 550
2006年3月 13,028 851 845 430
2005年3月 11,378 550 557 119
2004年3月 11,203 625 628 203
2003年3月 11,668 598 591 274
2002年3月 11,081 548 546 272
2001年3月 9,738 756 735 242
2000年3月 8,468 640 586 320
株式情報(11/5現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
610円 7,428,375株 4,531百万円 10.3% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
19.00円 3.1% 40.39円 15.1倍 779.12円 0.8倍
※株価は11/5終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
インフォメーション・ディベロプメントの2010年3月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
金融向けITアウトソーシング業務に強みを持つ独立系の情報サービス会社。優良顧客との継続的な取引を特徴としており、好不況の波の大きいIT業界にあって、相対的に安定した収益基盤を有する。事業は、システム運営管理、ソフトウェア開発・保守、ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)、その他に分かれ、各事業の概要は次の通り。
 
システム運営管理(ITO)
1,000名規模の技術者を擁する専門部隊が、導入後のシステム運営管理をサポート。ミドルウェアのカスタマイズからハードウェアの保守、24時間体制のオペレーションまで、トータルかつ高付加価値のアウトソーシングを実現している。
 
ソフトウェア開発・保守(SI)
「独立系SE集団」として、特定のマシン、OS、ツール、開発言語にとらわれず、顧客の開発ニーズに合わせたシステム構築をサポート。大型汎用機から携帯端末まで、金融、公共、サービス分野を中心に豊富な実績を誇る。
 
ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)
金融機関等へ「データ入力」、「バックオフィス」、「電話」、「ヘルプデスク」、「要員派遣」、「デジタルソリューション」などのサービスを提供している。
 
その他
セキュリティ&コンサルティングを中心に展開している。「セキュリティ・マネジメント」、「外部からの攻撃対策」、「内部不正への対策」の3つの側面から企業をサポート。世界の大手ベンダーと提携し、各種セキュリティ製品の提供からコンサルティング、セキュリティ環境の構築・導入・運用・サポートまで一貫したサービスを提供している。
 
 
<IDグループ>
連結子会社5社と共に企業グループを形成している。具体的には、日本ユニシス(株)との合弁会社(株)ソフトウエア・ディベロプメント(SD)、情報システム設計・開発の方法論の保有・販売及びコンサルティング等を手掛ける(株)プライド、中国のソフトウェア生産拠点として、04年4月に設立した艾迪系統開発有限公司(ID武漢)、06年12月に業容の拡大及び営業拠点の拡充を目的に子会社化した(株)日本カルチャソフトサービス(以下、CS)、及び08年8月に子会社化した紙データの電子化技術を有する(株)シィ・エイ・ティ(CAT)である。
 
 
<IDグループの強み>
(1)金融機関に強いデータセンターの運営管理サービス
同社は金融機関向けで強固な営業基盤を有するが、その中心をなすのがデータセンターの運営管理サービスである。
 
 
(2)売上高の80%を超えるプライマリー契約
メガバンク、大手生保・損保、農林系金融機関、信託銀行、大手地方銀行、空運会社、エネルギー関連等を中心としたエンドユーザーとの直接契約が売上高全体の80%を超えており、強固な収益基盤を有する。
 
 
2010年3月期上期決算
 
 
外注費の削減等で、ほぼ前年同期並みの営業利益を確保
売上高は前年同期比2.9%減の8,634百万円。主力のシステム運営管理が堅調に推移したものの、ソフトウェア開発・保守の受注減やビジネスプロセスアウトソーシングでの大口案件の終了が響いた。利益面では、売上が減少する中、(株)シィ・エイ・ティ(以下、CAT)を連結した影響(09/3期下期より連結。今上期は90百万円の販管費及びのれん償却費増加要因)等で販管費が増加したものの、固定費の削減による売上総利益率の改善で吸収、営業利益はほぼ前年同期並みの水準を確保した。尚、今期よりソフトウェア開発業務の売上計上基準を、完成基準から工事進行基準に変更している。これにより、売上高が232百万円、売上総利益、営業利益、経常利益及び税金等調整前四半期純利益が、それぞれ76百万円押し上げられた。

期初予想との比較では、継続案件の受注単価下落に加え、開発案件の減少や一部延期に伴う技術者稼働率の低下で売上総利益が予想比3.8%減少。経費削減に努めた結果、販管費も同じく3.8%減少したものの、営業利益は期初予想を3.2%下回った。
 
 
システム運営管理   売上高: 4,909百万円(前年同期比4.5%増)
従来から安定したビジネス基盤を有する事に加え、既存顧客との更なる連携の強化により継続案件を中心に受注が堅調に推移した。
 
ソフトウェア開発・保守  売上高: 2,897百万円(同11.0%減)
エネルギー、運輸分野の受注が堅調に推移したものの、金融・保険関連の受注の減少や一部連結子会社の苦戦をカバーできなかった。
 
ビジネスプロセスアウトソーシング  売上高:538百万円(同23.2%減)
CATの連結子会社化が増収要因となったものの、株券電子化の施行に伴う大型証券代行案件の終了が響いた。
 
その他     売上高:288百万円(同23.7%増)
セキュリティ業務の受注好調に加え、コンサルティング業務も堅調に推移した。
 
 
リーマンショック以降、金融業界は厳しい経営環境にさらされている。同社もこの影響を少なからず受けており、銀行・保険で、ソフトウェア開発を中心にメガバンク向けが減少した他、大手生保向けが大きく落ち込んだ。一方、情報・通信・サービスは、大手情報サービス会社向けが伸びた事でほぼ前年同期並みの売上を確保。その他では、空運会社、エネルギー等の公共サービス会社向けのソフトウェア開発が大きく伸びた。
 
 
(4)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
上期末の総資産は前期末比821百万円減の9,234百万円。売上の減少に伴い運転資金が減少したため、有利子負債の削減を進めた。CFの面では、利益の減少で営業CFが減少したものの、前年同期にM&Aでかさんだ投資CFのマイナス幅が縮小したため、フリーCFが改善した。
 
 
業界動向と同業他社の状況
 
(1)業界動向
経済産業省発表の「特定サービス産業動態統計調査」(09年10月9日発表)によると、08年9月に前年同月比減少に転じた情報サービス産業の売上高は、09年1月と5月を除いて、前年同月比でマイナス成長が続いている。
 
 
(2)同業他社の状況
IT投資の落ち込みを受けて、10/3期上期は同業他社も厳しい決算となった。同社も減収・減益を余儀なくされたが、システム運営管理事業が下支えとなり、相対的には健闘したと言える。
 
 
(3)下期の見通し
IT投資は最悪期を脱した感があるものの、依然としてその水準は低く、企業のIT投資の抑制や経費節減傾向が続いている。このため、同社では下期以降も厳しい事業環境が続くとみている。
 
 
(4)同業他社の通期予想
同業他社も総じて、下期も厳しい事業環境が続くと見ている。
 
 
2010年3月期業績予想
 
 
前期比7.9%の減収、同39.6%の経常減益予想
事業環境が依然として厳しく受注の先行きが不透明な上、単価下落や案件の縮小・中止の傾向が続く見通しであるとして通期の業績予想を下方修正した。
ビジネスプロセスアウトソーシングの大口案件の終了、連結子会社を含むソフトウェア開発業務の受注不振、更には運営管理業務の単価下落等で売上高が17,000百万円と前期比7.9%減少。利益面では、受注の減少により技術者稼働率が低下する中、CATの子会社に伴うのれん償却費等で販管費が増加するため、営業利益は680百万円と同35.7%減少する見込み。
配当は前期と同額の1株当たり19円を予定している。
 
(2)長期的な成長プロセスと同社グループの取り組み
同社では、「グローバル化と技術進化により、今後のIT業界は再編が避けられず、買収や提携が活発化する」と考えている。そして、「この再編の波に乗り一段の飛躍を期するためには、売上高500億円規模の事業規模が不可欠」と言う。同社グループは売上高500億円企業を目指して、BOO戦略を進める事で既存顧客の深耕を図ると共に、ITプラットフォームソリューション業務の拡大でスケールメリットを追求。並行して生産性向上や人材育成にも努める考え。
 
 
①売上拡大戦略
・BOO戦略の展開
既存3事業(ITO、SI、BPO)をコア事業とし、高付加価値サービスの提供や新規顧客の開拓、更には最先端のシステム運営管理技術の利用による新サービスの提供等、BOO戦略の展開により既存顧客の深耕を図る。尚、BOO(ビジネス・オペレーションズ・アウトソーシング)とは、川上から川下まで一括サービスを提供する事(一顧客複数取引)。
 
 
・ITプラットフォームソリューション業務の拡大
同社グループの強みであるデータセンターの安定運営により、基盤業務系ソリューション(開発環境と運用環境の提供)を拡大させる。
 
 
②生産性向上戦略
海外生産拠点の活用による収益性の安定に加え、将来的には海外子会社においても、国内標準の高品質な運営管理業務やデータ入力を含むトータルなビジネスサービスを展開していく考え。
 
 
③人材戦略
女性比率を意識した人材採用と人材育成制度の充実により、ナレッジの蓄積と品質の維持・向上を図る。
 
 
④CSR経営
「私たちは、わくわくする未来創りに参加する情報サービス企業です」をスローガンに掲げ、法令順守を徹底すると共に、環境保護や各種支援活動に取り組む。
 
 
取材を終えて
銀行・生損保など大手金融機関を中心にした優良な顧客基盤を有する事が同社の強みだが、金融機関はサブプライムローン関連の影響に加え、リーマンショック以降の更なる事業環境の悪化で厳しい経営を迫られている。こうした中、上期は何とか前年同期並みの売上を確保した同社だが、下期は業績の悪化が避けられない見通しだ。
しかし、優良な顧客基盤を有する同社は既存客深耕の余地が大きい事に加え、市場成長が期待できるSaaSやクラウドコンピューター系データセンター運営等でシステム運営管理のビジネスチャンスが広がっている。短期的な業績は事業環境いかんだが、中期的には効果的なM&Aを含めた受注能力の拡大と営業力の強化が成長のポイントとなろう。