ブリッジレポート
(2183) 株式会社リニカル

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ブリッジレポート:(2183)リニカル vol.12

(2183:東証マザーズ) リニカル 企業HP
秦野 和浩 社長
秦野 和浩 社長

【ブリッジレポート vol.12】2013年3月期第1四半期業績レポート
取材概要「受託案件が順調に進んだため第1四半期末の受注残が前期末に比べて減少したが、引き続き事業環境は良好であり不安は少ない。その理由として・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年8月21日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社リニカル
社長
秦野 和浩
所在地
大阪市淀川区宮原1-6-1 新大阪ブリックビル
決算期
3月
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年3月 3,110 728 723 424
2011年3月 2,512 288 278 147
2010年3月 2,404 480 473 273
2009年3月 2,036 549 515 300
2008年3月 1,273 505 494 296
2007年3月 613 186 195 114
2006年3月 118 16 19 11
株式情報(8/8現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
659円 11,394,933株 7,509百万円 45.5% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
11.00円 1.7% 44.58円 14.8倍 94.93円 6.9倍
※株価は8/8終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
リニカルの2013年3月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
臨床試験(治験)や医薬品の市販後臨床試験等に関わる業務の一部を代行する事で製薬会社の医薬品開発を支援するCRO(Contract Research Organization)事業を手掛けており、第2の柱とするべくCSO(Contract Sales Organization:医薬品の営業・マーケティング受託)事業を育成中。CRO事業では、治験の最も大切な段階である第II相試験(フェーズII)及び第III相試験(フェーズIII)における「モニタリング業務」とこれに付随する「品質管理業務」、及び「コンサルティング業務」に特化している事が特徴。また、統合失調症、うつ病、アルツハイマー等の中枢神経系(Central Nervous System:CNS)領域やがん領域といった難易度の高い領域に注力する事で他社との差別化を図っている(これに対して、生活習慣病等の領域は差別化が難しく受託競争が激しい)。主な取引先は、武田薬品工業グループ、第一三共、エーザイ、大塚製薬、塩野義製薬、小野薬品等の国内主要製薬会社。
 
【CRO事業の業務内容】
事業セグメントは、主力のCRO事業と育成中のCSO事業に分かれ、12/3期の売上構成比は、それぞれ95.6%、4.4%。また、CRO事業は「モニタリング業務」とこれに付随する「品質管理業務」、及び「コンサルティング業務」に分かれる。
 
モニタリング業務
治験が法令を遵守し計画・手順通り正確に行われているかを監視(モニタリング)する。この業務を行う者をCRA(Clinical Research Associate:臨床開発モニター)と呼び、治験薬や実施計画書についての説明から治験データの回収までを手掛ける。
品質管理業務
CRAが医療機関から回収したデータについて、定められたチェックリスト等を用いて確認する。
コンサルティング業務
製薬会社に対して、新薬開発のスケジュール作成から治験企画、承認申請に至るまでのコンサルティングを行う業務。新薬開発をスムーズに進めるための技術的なサポートも行なっている。
 
 
10/3期、11/3期は受託案件の中止で売上が伸び悩む中、CRAやQC(品質管理担当者)等の増員が負担となった。
しかし、12/3期は受注の好調と受託案件の順調な進捗で業績はV字回復。
13/3期は2期連続の最高益更新へ。
 
 
2013年3月期第1四半期決算
 
 
前年同期比39.6%の増収、同857.2%の経常増益
売上高は前年同期比39.6%増の908百万円。受託案件の中止が無く、受注残の消化が順調に進みCRO事業の売上が伸長。特定の疾患領域にフォーカスしてプロダクトマーケティング業務や市販後データの企画・収集業務の受託を手掛けるCSO事業も新規案件の受託が進んだ(他社のCSO事業はMR派遣がもっぱら)。

利益面では、CRA(Clinical Research Associate:臨床開発モニター)の稼働率が高水準で推移した事で売上総利益率が43.5%と14.3ポイント改善。一方、継続的な経費節減の取り組みの成果で販管費は同8.1%減少し、営業利益は245百万円と同9.2倍に拡大した。
 
 
CRO事業、CSO事業共に、1年から3年の受託契約期間において、契約に従い毎月売上が発生する(受託総額が毎月案分計上される)。受注残高は、既に契約締結済みの受託業務の受注金額の残高である。このため、今後1年から3年程度の期間で発生する売上高を示しており、同社グループの今後の業績予想の根拠となる指標である。
この第1四半期は、注力分野である中枢神経系領域やがん領域の受託体制を強化すると受託案件の獲得に注力した結果、武田薬品工業グループからの受注残が大きく伸びた他、前期に新規開拓した小野薬品との取引も拡大し受注残が増加した。一方、受託案件が順調に進捗した第一三共や大塚製薬については、受注残の消化が新規受託に先行した。
 
 
第1四半期末の総資産は前期末比55百万円増の2,210百万円。流動性に富んだシンプルなバランスシートが同社の特長であり、この四半期は受注の好調に伴う運転資金の増加や納税及び配当の支払いに対応するべく短期借入金を積み増しした。
 
 
前期に利益が急拡大したため税金費用が大幅に増加したものの(△28百万円→△255百万円)、営業CFは黒字を確保。借入金の積み増しもあり、現金及び現金同等物の第1四半期末残高は1,146百万円と前年第1四半期末の515百万円から大きく増加した。
 
 
2013年3月期業績予想
 
8月8日に上期業績予想が上方修正された。
期初に発表した上期業績予想(売上高1,517百万円、経常利益301百万円)に対して、第1四半期の進捗率は、それぞれ59.9%、81.1%と、特に利益面で進捗していたが、第1四半期決算発表時に業績予想は修正されなかった。
今回の修正発表の資料によると、主力のCRO事業において第2四半期(7-9月)早々に中止となった案件があったため修正には至らなかったようだが、8月に入り、中止案件を上回る新規及び増員の受託業務契約を正式に締結し、また、CSO事業においても、新たに受託業務契約を締結できた、としている。

尚、通期予想は、期初予想(売上高3,483百万円、経常利益848)を精査中としている。事業の特性上、不意に受託案件が中止になる事があり、業績に与える影響も大きい。このため、同社の業績予想は慎重であり、投資家もこうしたリスクを認識する必要がある。しかし、現状考え得る範囲では、下期の業績は期初予想をベースに考えていいのではないか。

配当は1株当たり期末11円を予定している。
 
 
 
 
今後の注目点
受託案件が順調に進んだため第1四半期末の受注残が前期末に比べて減少したが、引き続き事業環境は良好であり不安は少ない。その理由として、医薬品開発・販売のアウトソーシング化及び国際共同治験の増加を背景にCRO市場及びCSO市場の緩やかな成長が続いている事、既存企業の規模拡大、事業譲渡、廃業等でCRO事業者の淘汰が進んだ事等を挙げる事ができる。また、薬価基準の引き下げや後発品の普及促進等の薬剤費削減策の強化に加え、主力製品の特許切れ問題及び世界的な新薬の承認審査の厳格化等で医薬品開発の競争が激化している事も追い風だ。実際、同社は足元でも既存・新規の顧客から受託案件の打診を多数受けており、現在、CRAの増員等による受託体制の強化を進めている。受注残は今後の業績予想の根拠となる重要な指標であるが、四半期毎での増減は避けられない。短期的な変動ではなく、趨勢的な動向について、内容も含めて検証していきたい。