ブリッジレポート
(8275) 株式会社フォーバル

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ブリッジレポート:(8275)フォーバル vol.42

(8275:JASDAQ) フォーバル 企業HP
大久保 秀夫 会長
大久保 秀夫 会長
中島 將典 社長
中島 將典 社長
【ブリッジレポート vol.42】2013年3月期業績レポート
取材概要「新たなビジネスモデルの中核をなすITコンサルティングサービス「アイコン」が順調に拡大している。売上高の増加と共に利益率の改善にも寄与し・・・」続きは本文をご覧ください。
2013年7月2日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社フォーバル
会長
大久保 秀夫
社長
中島 將典
所在地
東京都渋谷区神宮前 5-52-2 青山オーバルビル
決算期
3月
業種
卸売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年3月 34,695 843 846 587
2011年3月 32,287 681 665 464
2010年3月 32,206 523 478 449
2009年3月 34,358 112 17 -1,879
2008年3月 34,323 -933 -1,264 -532
2007年3月 26,216 -1,878 -2,012 -1,390
2006年3月 27,500 3 14 1,063
2005年3月 40,089 1,962 1,962 1,174
2004年3月 32,981 1,446 1,360 660
2003年3月 37,402 1,522 1,334 443
2002年3月 44,411 -860 -1,027 -4,756
2001年3月 52,045 1,026 699 86
2000年3月 54,668 1,278 1,281 1,122
株式情報(6/5現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
555円 13,263,164株 7,361百万円 14.0% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
17.50円 3.2% 55.79円 9.9倍 436.41円 1.27倍
※株価は6/5終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
フォーバルの2013年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
中小・中堅企業を対象とした経営コンサルティングサービスや海外進出支援サービスの他、ITを活用し経営を高度化・効率化する手段として、オフィス向けの光ファイバー対応IP電話サービスやFMCサービス(固定通信と移動体通信を融合したサービス)、ならびにそれらとネットワークセキュリティを融合したIP統合ソリューションなどの通信・インターネット関連サービス、OA・ネットワーク機器の販売、携帯端末の取次、Web構築などのサービスを提供している。また導入後の利活用等、経営をサポートする「アイコン」サービスを、お客様との接点を強化するサービスと位置付け、その普及に特に注力している。社名のFORVAL(フォーバル)は、「For Social Value」を語源とし、「社会価値創出企業を目指す」という経営理念が込められている。
 
【沿革】
1980年9月、新日本工販として設立され、電気通信機器やコンピュータ等の販売、及び設置工事、保守管理のサービスを開始。以来、一貫して情報通信分野における「新しいあたりまえ」創りに挑戦を続けている。同社の提案する「新しいあたりまえ」とは、商品・サービスを提供する大手メーカーやキャリアではなく、これらを実際に利用するユーザーの立場から情報通信業界が抱える矛盾、問題点を打破するために考えた新しいビジネスモデル。88年11月に株式を店頭登録した(現ジャスダック上場)。

その後は、OA・ネットワーク機器のリース販売を中心に事業が拡大し、91年10月に現商号の(株)フォーバルに商号を変更。95年4月には(株)フォーバルテレコムを設立し電話サービス事業に参入し、03年10月にサービスを開始したIP電話&ブロードバンドサービスの「FTフォン」の拡大でフォーバルグループの業容も拡大した。

ただ、近年のハード販売における付加価値の低下を踏まえ、現在、差別化が可能で付加価値も高いコンサルティングサービスへのシフトを進めており、08年4月にサービスを開始したITコンサルティングサービス「アイコン」がその中核となっている。また、コンサルティングサービスの一環として、中小企業の情報化の支援やASEAN展開の支援にも取り組んでおり、前者ではIP統合ソリューションを展開。後者では、10年5月にFORVAL(CAMBODIA)CO.,LTD.(カンボジア・プノンペン)を設立し、以後、11年7月のPT FORVAL INDONESIA(インドネシア・ジャカルタ)及び同年8月のFORVAL VIETNAM CO., LTD.(ベトナム・ホーチミン)の設立、更には12年3月のミャンマー駐在員事務所(ミャンマー・ヤンゴン)の開設とネットワークの拡充を進めている。
 
【事業内容】
事業は、(株)フォーバルを中心に、中小法人向けOA・ネットワーク機器の販売、サービスの取次、コンサルティングサービス等を手掛けるフォーバルビジネスグループ、(株)フォーバルテレコムを中心に、VoIP・モバイル等の通信サービス、インターネット関連サービス、普通印刷、及び保険サービス等を手掛けるフォーバルテレコムビジネスグループ、(株)リンクアップを中心にモバイルショップにおいて携帯端末の取次等を手掛けるモバイルショップビジネスグループ、の3セグメントに分かれる。

売上高・営業利益10年間の推移(2005/3~2014/3)
 
 
 
成長戦略
 
同社グループのビジョンは、「『情報通信コンサルタント』として企業経営を支援する集団となり、中小・中堅企業の利益に貢献する」である。中小・中堅企業に対する質の高い経営支援とサポートの拡充と販売力の拡充を通じて、差別化されたポジショニングの確立を目指している。
 
 
また、企業経営を支援する集団になるためには、社員のスキル向上・意識改革が大切であることから、営業やサポート要員のみならず、一般の社員にまで、情報通信に関連する各種の資格取得を奨励しており、2013年4月時点では、インターネット検定ドットコムマスターについては全社員のうち75%以上の社員が資格を取得している。
 
 
同社グループは、機器販売からコンサルティングを中心にした経営支援へビジネスモデルの転換を進めている。機器販売を中心とした保守・サポートビジネスは参入障壁が低く、周辺事業へのビジネスチャンスも限られてしまう。そこで、同社グループが取り組んでいるのは、ARPUの上昇とビジネス範囲の拡大が期待できる、ITコンサルティングサービス「アイコン」を通しての進化である。
企業経営そのものを支援する。「アイコン」においては様々なサービスを提供しているが、特に情報通信分野の知識・技術を駆使した経営コンサルとASEAN地域への進出ノウハウを活用した経営コンサルに経営資源を投入して行く。
 
 
(1)情報通信の知識・技術を駆使した経営コンサルの拡大
「アイコンサービス」開始以降、利用する顧客数やアイコン関連の売上高は順調に拡大している。また、よろず経営相談の件数も増加しており、情報通信コンサルタントとしての同社の認知度も高まっている。アイコンサービスの増加は、よろず経営相談の増加につながり、更には、本格的な経営コンサルの増加へつながり、差別化、顧客囲い込み、高付加価値化などにつながる可能性が高い。そのため、同社では、アイコン事業の更なる拡大・強化のため、今期からパートナー展開を積極化する予定である。情報通信コンサルタント業界の拡大に向け協力してくれる企業へ「アイコンサービス」のビジネスモデルを提供したり、大手通信キャリアやメーカーへの働きかけを強め「アイコンサービス」の更なる充実を行う。
 
 
「アイコン」を通して、取引先紹介・売り込み、売上拡大・販路拡大・新規開拓、或いはホームページやWeb関連等の様々な相談が寄せられており、受けた相談を基に同社のビジネスチャンスが広がっている。
 
 
(2)独自の海外進出ノウハウによる経営コンサルの強化
同社の大久保会長は、十分な教育の機会が無いカンボジアにおいて、自らが設立し理事長を務める公益財団法人CIESF(シーセフ)を通して、教育インフラの構築から人材教育に至る広範な支援活動に取り組んできた。
ASEAN進出支援事業は、このCIESFの活動を通じて培った経験や人脈が活きている。「同社グループ及び顧客である中堅・中小企業の事業の成長を考える上で、アジア地域の成長を取り込む事が重要」と言う考えの下、既に、カンボジア(10年5月)、インドネシア(11年7月)、及びベトナム(11年8月)に現地法人を設立しており、12年3月にはミャンマーに駐在員事務所を開設した。中でも、最も早期に進出したカンボジアでは、同社グループのメンバーが150人以上働いている。
 
 
同社のASEAN進出支援事業である「グローバルアイコンサービス」は、海外進出前と進出後の様々な問題や障害を、ワンストップでサポート・支援するビジネスモデルである。情報提供から始まり、FS支援、現地法人の設立代行、採用・教育支援、バックオフィスの整備をトータルでサポートすることで、同社が最も得意とする情報通信技術を活用した日本と変わらない快適なオフィス空間を提供するビジネスヘつなげていく。
 
 
また、同社は、国内の行政機関、地域金融機関や海外の行政機関、各国工業団地などとのアライアンスを積極的に拡大することで、「グローバルアイコンサービス」の潜在顧客を発掘・育成している。
 
 
 
2013年3月期決算
 
 
前期比1.4%の増収、同43.7%の経常増益
売上高は前期比1.4%増の351億円。一部事業を譲渡した影響等でフォーバルテレコムビジネスグループの売上が減少したものの、ITコンサルティングサービス「アイコン」の拡大とそれに伴うセキュリティ関連商品の売上増でフォーバルビジネスグループの売上が増加した他、スマートフォン関連をけん引役にモバイルショップビジネスグループの売上も増加した。
利益面では、売上の増加と「アイコン」の拡大等による売上総利益率の改善で売上総利益が同4.4%増加。事業拡大に伴い人件費が増加したものの、事務所再編等による地代家賃の減少や通信費や交通費などの抑制等で販管費は同1.2%増と小幅な増加にとどまり、営業利益は11.6億円と同38.0%増加した。また、経常利益は、金融収支や持分法投資損益の改善で同43.7%増加。当期純利益は、投資有価証券売却益205百万円を計上したものの、訴訟関連損失の計上や法人税負担増加などにより同32.9%の増加となった。
1株当たり期末配当金は、期初予定の15円から17.5円へ上方修正された(前期比2.5円の増配)。
 
 
(1)フォーバルビジネスグループ
利益率の高いアイコン事業の拡大により増収増益。社内システムの活用により営業員の時間効率が向上したことも利益率改善に寄与。
(2)フォーバルテレコムビジネスグループ
通信サービスの新規獲得の鈍化や一部事業譲渡の影響で減収も、不採算事業の改善でセグメント利益が大幅に増加。
(3)モバイルショップビジネスグループ
スマートフォンを中心に携帯販売台数が増加したことから増収増益
 
 
広告宣伝費の増加による販売費の増加や事業拡大に伴う人件費の増加があったものの、事務所再編等による地代家賃の減少や通信費や交通費などの抑制等で一般販管費が減少。
 
(2)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
期末の総資産は前期末比4.5億円増の166.7億円。フリーCFを活用し有利子負債の削減を進めたものの、利益の増加を受け、未払法人税や純資産が増加。期末の自己資本比率は、34.7%に上昇し財務体質が向上。
CFの面では、たな卸資産の増加などから、営業CFのプラス幅が縮小したものの、投資有価証券の売却などで投資CFのマイナス幅が縮小し、フリーCFのプラス幅はわずかながら拡大した。期末の有利子負債は、前期末の15.0億円から8.7億円へ大幅に減少した。同社は、無借金かつ自己資本比率50%を目標に、財務体質の強化を進めている。
 
 
 
 
 
2014年3月期業績予想
 
 
前期比2.3%の増収、同15.1%の経常増益予想
企業経営を支援する「情報通信コンサルタント」集団として、IP統合商品の更なる普及促進、ビックデータ活用による新サービスの創出、スマートフォンなどの情報通信の活用促進の提案や東南アジア諸国の進出支援を通じて、売上の拡大を目指す。
ITコンサルティングサービス「アイコン」を中心に引き続きフォーバルビジネスグループの売上が増加する見込み。業績予想を開示しているフォーバルテレコム(9445)は、前期比ほぼ横ばいを計画。
利益面でも、利益率の高い「アイコン」の売上構成比が上昇することに加え、更なる効率化による販売管理費抑制から営業利益率が改善する計画。営業利益は13.7億円と同17.6%増加する見込み。当期純利益が減少するのは、前期に有価証券売却益(205百万円)を計上した反動。
1株当たり期末配当金は、前期と同額の17.5円を予定。
 
 
今後の注目点
新たなビジネスモデルの中核をなすITコンサルティングサービス「アイコン」が順調に拡大している。売上高の増加と共に利益率の改善にも寄与している。同社は、「アイコン」の更なる成長加速を目指し、今期よりパートナー展開を積極化する。過去順調に増加してきた「アイコン」の売上高と提供事業所数であるが、パートナー展開の成功により今後更に成長性を高めることができるのか注目したい。
更に、「アイコン」を通して様々な経営相談が寄せられており、13/3期の経営相談の件数は1,908件と前12/3期の772件を大幅に上回った。経営相談の増加は、その後、本格的な経営コンサルの増加につながり、同社に様々な収益機会をもたらす可能性が高い。前期に大幅に増加した経営相談が、今後どのような付加価値の高い売上を誘発するのかにも注目したい。

http://www.forval.co.jp/news/up_img/1353907869-893354.pdf