ブリッジレポート
(5162) 株式会社朝日ラバー

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ブリッジレポート:(5162)朝日ラバー vol.26

(5162:JASDAQ) 朝日ラバー 企業HP
伊藤 潤 社長
伊藤 潤 社長

【ブリッジレポート vol.26】2014年3月期第3四半期業績レポート
取材概要「同社を取り巻く事業環境が好転している。当第3四半期の業績は、ここ数年の四半期業績と比較して売上、利益ともに高い水準まで回復した。顧客・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年3月4日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社朝日ラバー
社長
伊藤 潤
所在地
埼玉県さいたま市大宮区土手町2-7-2
決算期
3月 末日
業種
ゴム製品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2013年3月 4,789 135 139 76
2012年3月 5,010 243 211 72
2011年3月 4,806 161 117 21
2010年3月 4,667 125 91 41
2009年3月 4,904 46 14 -80
2008年3月 6,284 414 325 211
2007年3月 5,314 399 375 176
2006年3月 4,578 366 353 209
2005年3月 4,057 251 251 147
2004年3月 3,449 233 211 112
2003年3月 3,154 172 159 75
2002年3月 2,907 98 85 10
2001年3月 3,582 315 336 189
2000年3月 3,140 313 300 141
株式情報(2/24現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
383円 4,547,620株 1,741百万円 2.6% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
8.00円 2.1% 32.98円 11.6倍 652.12円 0.59倍
※株価は2/24終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期実績。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
小型電球やLEDに被せる事で様々な発色を可能にする被覆用ゴム製品を主力とする。自動車の内装用照明を中心に、携帯用通信機器、電子・電気機器、産業機器、スポーツ用等、幅広い分野で利用されている。シリコーン(ゴム状の合成樹脂)材料の配合技術と調色技術に強みを有し(色と光のコントロール技術)、シリコーンゴムに蛍光体を配合したLED用ゴムキャップは、LEDの光を波長変換して色調や輝度を調節できるため、10,000色以上の光を出す事やLEDの課題である光のばらつきを均一化する事が可能。また、医療・衛生用ゴム製品や硬質ゴムと軟質ゴムの複合製品等も配合技術を活かしてそれぞれの用途にあったゴム質を実現している。

グループは、同社の他、ゴム・プラスチック等の研究開発を行う(株)朝日FR研究所、米国の販売会社ARI INTERNATIONAL CORP.、及び工業用ゴム製品の販売を手掛ける朝日橡膠(香港)有限公司、10年7月に設立した工業用ゴム製品の製造・販売を手掛ける東莞朝日精密橡膠制品有限公司、及び12年1月に設立した工業用ゴム製品の開発・設計・販売を手掛ける朝日科技(上海)有限公司の連結子会社5社からなる。
 
 
【事業内容と主要製品】
事業は、自動車のスピードメーターや内装照明の光源向けの「ASA COLOR LED」や各種センサ向けのレンズ製品「ASA COLOR LENS」、或いは弱電製品に使われる応用製品、更にはスポーツ用ゴム製品(反発弾性、高摩擦抵抗等を追及した高品質の卓球ラケット用ラバー)等の工業用ゴム事業、点滴輸液バッグ用ゴム栓や真空採血管用ゴム栓、プレフィルドシリンジ(薬液充填済み注射器)向けガスケット等、使い捨てのディスポーザブル用ゴム製品の医療・衛生用ゴム事業に分かれ、13/3期の売上構成比は、それぞれ79.2%、20.8%。
今後は、白色レジスト材、RFIDタグ向け新製品、マイクロTAS製品などの新製品の販売拡大が期待される。
 
・ASA COLOR LED
ASA COLOR LEDとは、LEDの光と色のばらつきを解消する商品。ASACOLOR LED は青色LEDに蛍光体を配合したキャップを被せたもの。各青色LEDに合わせて、キャップに配合する蛍光体の種類、量を調整することで、色調を均一にコントロールすることが可能。シリコーンゴムキャップ内の蛍光体を調合する事で多彩な色度を創りだす事ができ、カラーバリエーションは10,000色以上。
 
 
・卓球ラケット用ラバー
球を高速で弾く反発弾性、強烈なスピンをかける高摩擦抵抗などを追及した高性能、高品質の製品。
 
 
・医療用ゴム製品
点滴輸液バッグ用ゴム栓、真空採血管ゴム栓、薬液混注ゴム栓など、医療現場で用いられるディスポーザブル商品に使用される。 医療機器及び医療用具に用いられることから、各種法規に準拠し、素材の安全性や医療事故を防止する機能など、厳しい品質基準を満たした製品。
 
 
 
中期経営計画と今後の事業戦略
 
「“新しい価値”を提供する真の中堅企業へ」をビジョンとする3ヵ年の中期経営計画(12/3期~14/3期)が進行中である。中期経営計画では、強みであるシリコーン材料の配合技術と調色技術(色と光のコントロール技術)を活かして、「照明関連事業」、「医療関連事業」、及び「機能製品関連事業」を育成・強化すると共に、海外ビジネスの拡大に取り組んでいく考え。当初の中期経営計画の数値目標は、14/3期に売上高62億円、営業利益4億円、経常利益3億円であったが、今期の業績計画は、売上・利益とも中期計画を下回る見込みとなった。
 
 
(1)進捗状況と今後の事業戦略
照明関連事業
車載用途ではLEDメーカーと協力しニーズを満たす新タイプのLEDを開発・用途提案していくことや、レンズや反射材を周辺部材とセットし付加価値を高める計画。また、より一層の原価低減に取り組み、製品競争力を高める。また、照明用途では、低色温度、カスタム色、演色性領域などに対応し超高級照明分野でのシェアアップを図ることや、耐熱性や耐紫外性に優れたシリコーン特性が発揮できる分野での販売拡大を目指す。
医療関連事業
新しいサイズの受注を獲得したプレフィルドシリンジ用ガスケット(薬剤が予め充填された注射器の気密性・液密性を持たせるために用いるシール材)やキャップにおいて、13年の7月頃設備を導入し下期の量産を目指す。また、薬品対応力を向上する材料や表面改質技術を深堀し、新製品の適用範囲の拡大を目指す。更に、事業部制を導入し、顧客連携強化と事業計画の策定を行う。
機能製品関連事業
受注が拡大してきたRFIDタグ用ゴム製品の増産体制の確立と製造工程改善による価格対応力の強化を計画。また、ポテンシャルの高いマイクロTAS製品は、来期以降の本格量産に備え、要素技術の深堀と生産技術の確立を目指す。
 
(2)今後期待される機能製品関連事業
マイクロ流体チップ事業
一つのチップもしくはデバイスで血液やDNAをはじめさまざまな液体や気体を分析する生化学分析デバイスであるマイクロTAS(Total Analysis System)の要となるマイクロ流体チップ事業の拡大を目指す。マイクロ流体チップは、基板に微細な幅と深さの流路を形成し、様々な生学的検体を流して試薬との反応や分析を行うチップで、化学・生化学分野において研究機関や実用現場で検出器具として使用されている。
同社のマイクロ流体チップは、以下の特徴を有する。
① シリコーンゴム製の特徴
・ゴム製で弾性があることから外部応力により変形させることが可能
・気体透過性が高いので、液体中の気泡を除去できる
・一般的な樹脂に比べ耐熱、耐光、耐候性に優れる
 
 
② 分子接着技術の特長
・高濃度の接着剤塗布を必要としない
・分子接着は、分子に近い膜であるためガラスや樹脂に転写した極微な溝を
 潰すことなく封止することができる
・プラスチックの熱融着と違い、被着体の融点以下の温度しかかけないため
 形状変更の恐れが少ない
・難接着性のプラスチックとシリコーンゴムを接着することができる
 
 
同社では、2014年度からの本格量産開始とDNA解析、医療、生物工学などの市場への参入を予定している。
 
RFIDタグ用ゴム製品
折り曲げに強く、耐水性・耐熱性に優れ、小型化された新ソフトICタグ。表面改質技術である、溶剤を使わずに接着させる「無溶剤接着」により、IC チップやアンテナ部をゴム素材で覆い、折り曲げに強く、耐水性、耐熱性に優れた、柔らかい小型のIC タグを実現。
 
 
今後受注が拡大してきたRFIDタグ用ゴム製品の増産体制の確立と製造工程改善による価格対応力の強化が急がれる。
 
 
2014年3月期第3四半期決算
 
 
前年同期比16.6%の増収、同129.2%の経常増益
売上高は、前年同期比16.6%増の41億92百万円。売上高は、北米や欧州市場向けに日系自動車メーカーの販売・生産台数が増加したことから、「ASA COLOR LED」を始めとする自動車関連製品の販売が好調であったことに加え、スポーツ用ゴム製品やRFIDタグ用ゴム製品の販売も堅調に推移し、工業用ゴム事業が同17.7%増加した。また、医療・衛生用ゴム事業も下期より量産を予定していた新製品が当第3四半期より量産開始となったこと、加えて、前期まで顧客の在庫調整等に減少していた一部の医療用ゴム製品が在庫調整の完了により販売が回復したことから同12.4%増加した。
営業利益は、前年同期比109.9%増の2億39百万円。セグメント利益は、売上増加による量産効果などにより工業用ゴム事業が同64.8%の増益となったもの新製品立上げに伴う費用増加などにより医療・衛生用ゴム事業は同31.3%の減益となった。原価改善活動によるコスト削減効果などにより、売上総利益率は、27.2%と前年同期比0.6ポイントの改善した他、売上高対販管費率も同1.9ポイント低下した。更に、補助金収入16百万円や為替差益15百万円(前年同期9百万円)がなかったことなどから、経常利益は同129.2%増の2億59百万円と増益率が高まった。
 
 
 
 
13年12月末の総資産は13年3月末比5億4百万円増の80億22百万円。主に、好調な販売を反映して、売上債権と仕入債務が増加した他、四半期純利益の増加により利益剰余金が増加した。
 
 
2014年3月期業績予想
 
 
前期比16.5%の増収、同106.4%の経常増益予想
14/3期の会社予想は、好調な販売に加え、コスト削減効果と円安などを反映したことにより、昨年11月13日に修正した公表数値から売上、利益ともに上方修正した。新しい会社予想は、売上が前期比16.5%増収の55億80百万円(修正前55億円)へ、経常利益が同106.4%増益の2億88百万円(同2億10百万円)。
工業用ゴム事業は、北米や欧州向けに自動車販売が好調に推移していることから主力ASA COLOR LEDの販売増加を予想している他、スポーツ用ゴム製品、RFIDタグ用ゴム製品などの販売増加を見込んでいる。また、医療・衛生用ゴム事業は、前期に減少した採血用・薬液混注用ゴム栓の販売回復とプレフィルドシリンジ用ゴム栓の新規サイズの下期からの量産を見込んでいる。
利益についても、高収益の医療用ゴム製品とスポーツ用ゴム製品の売上増加を見込み営業利益以下の大幅な増益を計画。医療・衛生用ゴム事業における新規製品量産立上げにかかるコスト負担や工業用ゴム事業における減損損失の計上やマイクロ流体チップ製品の試作開発にかかる経費の計上などがあるものの、原価改善活動によるコスト削減効果、為替相場の想定を上回る円安などでカバーできる見込み。新しい会社予想の売上総利益率は、26.7%と前期比0.1ポイントの改善、売上高対販管費率は、21.7%と同2.1ポイントの大幅な低下。
設備投資は、照明関連事業(1億円)、医療関連事業(1億60百万円)、機能製品関連事業(3億40百万円)の約6億円(13/3期4億10百万円)、減価償却費は3億85百万円(同3億71百万円)を計画。設備投資は、ASA COLOR LEDやRFIDタグ用ゴム製品の増産ラインの導入とマイクロ流体チップの量産ラインの導入などが主なもの。
配当は、前期と同じ1株当たり8円(上期末3円、期末5円)の期初計画を据え置き。
 
 
今後の注目点
同社を取り巻く事業環境が好転している。当第3四半期の業績は、ここ数年の四半期業績と比較して売上、利益ともに高い水準まで回復した。顧客である自動車業界の海外輸出が増加している恩恵を受け、主力の「ASA COLOR LED」を始めとする自動車関連製品の販売が好調に推移していること、スポーツ用ゴム製品やRFIDタグ用ゴム製品の販売が増加していることに加え、新製品効果と在庫調整完了により医療・衛生用ゴム事業が回復していることが重なっている。また、販売増加ににもかかわらず、原価改善活動によるコスト削減により利益率を改善させていることも確認された。これは、過去数年の厳しい環境下で新製品開発とコストダウンに取り組んできた成果と評価できる。これらにより当第3四半期業績(累計)の進捗率は、今期の修正された会社予想に対し、売上高で75%、営業利益で約85%の高水準となっている。新規製品量産立上げやマイクロ流体チップ製品の試作開発にかかるコストの増加などが予想されるものの、保守的な計画と言えよう。一方で、来期の事業環境を考えると、米国においては雇用の改善を通じた景気回復の継続が、欧州ではドイツ・フランスの景気回復が少しずつ欧州域内へ波及していくことが期待され、自動車関連製品分野の急速な環境の悪化は想定し難い。加えて、RFIDタグ用ゴム製品の成長や今期投資してきた医療用ゴム製品分野の新製品の量産化やマイクロ流体チップ製品の寄与も予想される。業界環境が好転する中、いかにして来期の成長の礎を築いていくのか、来期を見据えた第4四半期の新たな施策とその試金石となる第4四半期の決算内容が注目される。また、中長期の同社の成長ドライバーと期待されるマイクロ流体チップ製品の今後の事業展開にも引き続き注目したい。