ブリッジレポート
(4849) エン・ジャパン株式会社

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ブリッジレポート:(4849)エン・ジャパン vol.40

(4849:JASDAQ) エン・ジャパン 企業HP
越智 通勝 会長
越智 通勝 会長
鈴木 孝二 社長
鈴木 孝二 社長
【ブリッジレポート vol.40】2015年3月期第1四半期業績レポート
取材概要「14年6月の雇用データを見ると、厚生労働省発表の国内有効求人倍率(季節調整値)は、前月比0.01ポイント上昇の1.10倍と19ヵ月連続で改善し、1992年・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年9月2日掲載
企業基本情報
企業名
エン・ジャパン株式会社
会長
越智 通勝
社長
鈴木 孝二
所在地
東京都新宿区西新宿 6-5-1
決算期
3月
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2014年3月 16,755 3,441 3,747 2,789
2013年3月 13,563 2,783 2,840 1,545
2012年3月 15,687 3,047 2,884 1,135
2010年12月 9,991 1,774 1,803 875
2009年12月 10,209 1,259 1,212 459
2008年12月 21,329 5,943 5,906 3,090
2007年12月 22,686 7,564 7,573 4,168
2006年12月 16,919 5,605 5,607 3,105
2005年12月 11,491 3,791 3,826 2,203
2004年12月 6,980 2,245 2,254 1,253
2003年12月 4,372 1,749 1,754 1,038
2002年12月 3,107 1,305 1,283 663
2001年12月 1,876 933 898 464
2000年12月 620 254 249 132
株式情報(8/21現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
2,310円 22,408,000株 51,762百万円 17.3% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
28.50円 1.2% 99.96円 23.1倍 761.38円 3.0倍
※株価は8/21終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
エン・ジャパンの2015年3月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
「人材採用・入社後活躍」を支援する企業として、採用事業のほか、顧客企業の社員に対する集合型研修サービスを中心とした教育・評価事業も展開。創業以来、「独自性」、「社会正義性」、「収益性」という考え方を背景に求職者に徹底的に尽くすというスタンスを貫いてきたことで優位性を確立。現在は、更なる成長を実現すべく人材紹介サービスと海外展開を推進している。より組織・事業にフィットした人材の採用から、入社後の活躍・定着までを一貫して実現するサービスを提供することで継続的な成長につなげていく考え。グループは、同社の他、連結子会社12社、持分法適用非連結子会社1社等。
 
 
 
 
 
 
ビジネスモデル
<求人情報サイト>
企業に対して求人広告を企画・提案。同社の営業員が求人企業を取材し、その情報をもとに同社のコピーライターが求人原稿を制作した後、求人サイトに求人原稿を掲載。
掲載課金型求人広告:求人広告を掲載した際に「広告掲載料」が発生。
成功報酬型求人広告:求人広告を掲載し、同社求人サイトを通じて人材採用できた際に「成功報酬料」が発生。
(同社HPより)
 
 
<人材紹介>
求職者のこれまでのキャリアや転職意向を確認し、今後のキャリアプランに沿った求人を紹介。企業に対しては採用ニーズにマッチしていると思われる人材を紹介。紹介した人材が入社した際に「成功報酬料」が発生。報酬料は概ね年収の30%。
(同社HPより)
 
 
同社の特徴と強み
① 求職者視点の求人広告
同社は、「求職者の視点に立った情報」を提供することに徹底的にこだわっている。独自取材による「正直」で「詳細」な求人広告は、「仕事を大切に、転職は慎重に。」というプロモーションにおけるコピーに象徴されるように、安易な転職はしてほしくないという考え方のもとに制作している。
② インターネットを最大限に活用しつつ、きめ細やかな対応も実現
8月18日にリニューアルを実施した主力サービスの「エン転職」は、ユーザー視点のサイト作りを更に強化。従来からの正直かつ詳細な原稿に加えて、企業の口コミを原稿に掲載(日本発)し、広告では表現しきれない企業情報を提供。この他、面接が決まった全ユーザーに対して同社がヒアリングした面接情報を提供するなど、サポートも拡充した。既にスマホ対応は行っているが、よりユーザーの利便性を高めるための機能改善も実施。
③ 求職者と求人企業の高いフィッティング率
「[en]社会人の転職情報」は、求職者満足度98.0%(2012年2月調査)、企業満足度92.5%(2011年12月調査)という高い評価を得ている。高い評価の背景には、「求職者視点」と「情報の質」に徹底的にこだわった求人広告と、同社のサイトを通じて入社した求職者の入社後の活躍と高い定着率が背景にあると思われる。
④ 500万人を超える会員
同社は、約500万人を超える会員(※2014年3月現在「[en]社会人の転職情報」、「エン転職コンサルタント」、「[en]ウィメンズワーク」、「[en]派遣のお仕事情報」、「[en]チャレンジ!はた☆らく」合計)を有している。また、これまでに採用を手伝った企業は延べ5万社以上にのぼる。同社のサービスに対する満足度と高い知名度によって獲得した会員と取引企業の数は、事業における大きなアドバンテージとなる。
 
 
今後の成長戦略
 
今後の強化ポイントとして、①求人広告の強化 ②人材紹介サービスの強化、③アジアにおいて海外展開を推進の3つを掲げている。
 
(1)求人広告の強化、人材紹介サービスの強化
国内の景気回復に伴い、企業の人材採用ニーズは高い状況が続いており、基幹ビジネスである求人サイトの受注も順調に改善している。同社はここ数年、成功報酬型求人広告に注力していたが、採用需要の増加に伴う掲載課金型求人広告へのニーズの高まりを受け、戦略を転換。営業体制も変更し、掲載課金型求人広告を伸ばせるようになった。今後は同商品を中心に拡販を進めていく考え。その一方で、企業の人材採用ニーズは多様化しており、求める人材によって採用手法の使い分けが進んでいる。
このため、同社はグローバル人材領域で強みを持つエンワールド・ジャパンを2010年に子会社化し、グループとして人材紹介領域に参入。また、エン・ジャパンにおいても、保有する国内トップクラスの求職者データベースを活かし、2013年から人材紹介「エン エージェント」を展開中。 エン・ジャパングループとして若年層からスペシャリスト、マネジメント層まで、求職者・求人企業双方の多様なニーズに対応できるサービス及び体制が構築できたことから、今後はこれらを活用し更なる業績拡大を図る方針。
 
(2)アジアにおいて海外展開を推進
2011年9月のシンガポールへの進出後、香港、韓国において「en world」ブランドで人材紹介サービスを開始。またM&Aでは、2012年のcalibrate(オーストラリア)買収後、Navigos Group(ベトナム)、Capstone Group(現社名:en world Recruitment Thairand 、タイ)、New Era(インド)と、アジアを中心に展開を広げている。今後、アジア地域の経済成長に伴い、人材採用ニーズの高まりと採用活動のボーダーレス化が予想される。今後も、中長期的な観点に立った、人材紹介を中心とする海外ビジネスの拡大を図る方針。
 
 
 
2015年3月期第1四半期決算
 
 
売上高は25.7%増、経常利益は12.9%増益
売上高は前年同期比25.7%増の45億90百万円(約9.4億円増)。売上面は、企業の求人ニーズが旺盛であったことから、主力の「[en]社会人の転職情報」の求人広告及び子会社のエンワールド・ジャパンが好調だったことに加え、ベトナムとタイの子会社の連結化により海外子会社が増加した。
利益面では、人員の増加や積極的なプロモーション活動により費用(売上原価+販管費)が同22.8%増加したものの、売上高の増加により吸収し、営業利益が同37.5%増加した。この他、前年同期に計上した為替差益1億31百万円がなくなり、今四半期に為替差損14百万円が発生したことから、経常利益は同12.9%の増加にとどまった。また、前年同期に投資有価証券売却益19億98百万を計上した反動減により純利益は同66.3%減少した。
その他、今第1四半期のトピックスとして、人材紹介サービス「[en]PARTNER」の名称を「エンエージェント」に変更したこと、インドの人材紹介会社であるNEW ERA INDIA CONSULTANCYを子会社化したことなどがある。
 
 
採用事業
当事業には、求人サイトの運営、人材紹介、海外子会社等が属している。求人サイトは、主力の「[en]社会人の転職情報」において新規顧客への販売を強化したこと等から前年同期比の掲載件数が増加した。その他のサイトでも順調に販売が進み、全サイトで前年同期を上回る売上となった。人材紹介は、グローバル企業の旺盛な採用ニーズを受けて、子会社のエンワールド・ジャパンが好調な結果となった。前期から開始したエン・ジャパンの人材紹介サービスであるエン エージェントは計画通りの進捗となった模様。また、海外子会社は、ベトナムとタイの子会社が期初から連結業績に加わったため、前年同期比の売上が大幅に増加した。
以上の結果から、採用事業セグメントの売上高は、44億43百万円と前年同期比25.8%増加した。人件費やプロモーション費用が増加したものの、販管費が同24.7%の増加にとどまりセグメント利益は9億76百万円と同40.3%増加した。
 
 
 
全般的な業種において、顧客のグローバル企業と日系企業の採用意欲は高く、エンワールド・ジャパン株式会社の四半期業績は、売上高、営業利益とも過去最高となった。第1四半期の入社承諾基準の売上高も順調な結果となった模様。
 
 
売上高は、前期の第1四半期にP/Lが非連結であったベトナムとタイの子会社が加わったことに加え、他の国の売上も増加したことから前年同期比で大幅に増加した。また、営業利益は人員の増加等により前年同期比減少したものの、概ね会社計画通りであった模様。
また、エン・ジャパングループとして7カ国目の進出先のインドにて子会社化した人材紹介会社のNEW ERA INDIA CONSULTANCYは、今第3四半期よりP/Lに連結の予定。
 
教育・評価事業
当事業には、定額制研修サービスの実施、採用・人事関連システムの提供等が属している。定額制研修サービスは、「エンカレッジ」を5月にリニューアルし、より個々の受講者に合った講座の提供を行ったこと、更にリニューアルに合わせて新規顧客の販売を強化したこと等から前年同期を上回る売上となった。また、採用・人事関連システムも子会社のシーベースにおいてリピート受注が進んだこと、新規顧客への販売を強化したこと等から、前年同期を上回る売上となった。
以上の結果から、教育・評価事業の売上高は前年同期比25.4%増の1億58百万円となった。一方、セグメント利益は、業容拡大に伴う人員増により人件費が増加したこと等から、同76.3%減の4百万円となった。
 
 
当期末の総資産は前期末比17億57百万円減の209億76百万円。これは、未払法人税等の納付等により現預金が減少したことが主な要因。総資産の約46%を現預金が、約62%を流動資産が占める等、資産の流動性が高い。自己資本比率も約80.9%と、高水準を維持している。
 
 
2015年3月期業績予想
 
 
前期比14.6%の増収、同5.9%の経常増益予想
第1四半期の終了時点で、15/3期の会社計画は、売上高が前期比14.6%増の192億円、経常利益が同5.9%増の39億70百万円の期初予想から修正なし。
消費増税による国内経済への影響や新興国の経済成長鈍化が懸念されるものの、企業の人材採用ニーズは引き続き堅調に推移すると同社では見ている。こうした中、売上面では、新卒サイト終了に伴う減少があるものの、エン・ジャパンの中途採用領域及びEWJ社を中心に拡大を目指す。また、海外はベトナム子会社が通期で寄与するほか、新規にタイの子会社の連結が開始される。
利益面では、人件費、広告宣伝費・販売促進費を中心にコストが増加するものの、売上高の増加による吸収や海外子会社の収益改善等による増益を目指す。売上総利益率は、1.9ポイント上昇の90.4%、売上高販管費率は1.8ポイント悪化の69.8%の前提で、営業利益は前期比14.8%増の39億50百万円となる予想。また、経常利益の増益率が低下するのは前期に為替差益が発生した反動であり、当期純利益が減益となるのは前期に投資有価証券売却益を計上した反動。
1株当たりの配当も、前期末から4円増配の28.5円の計画から変更なし。
 
 
 
新卒サイトの運営終了に伴い、15/3期より旧採用関連の2事業を統合し、「採用事業」に変更。
 
 
 
15/3期より、掲載課金型求人広告及びSH広告を「求人広告」へ、「[en]PARTNER」及び「SSS」を「人材紹介」へ区分する。
 
 
 
今後の注目点
14年6月の雇用データを見ると、厚生労働省発表の国内有効求人倍率(季節調整値)は、前月比0.01ポイント上昇の1.10倍と19ヵ月連続で改善し、1992年6月(1.10倍)以来22年ぶりの高い水準となった。景気の緩やかな回復を背景に労働市場の需給はひっ迫しつつある。また、公益社団法人全国求人情報協会の調査データによると、求人サイト(インターネットの求人専門サイトで提供されるもの、アルバイト等も含む)へ掲載された求人掲載件数は6月に前年同月比で58.4%増加した。こうした雇用環境の改善は、ネット求人広告大手の同社の業績へ引き続き好影響を与えるものと予想される。同社の15/3期第1四半期の決算を見ると、主力の「[en]社会人の転職情報」に加え、各求人サイトの売上高が前年同期を上回っていること、加えて、顧客であるグローバル企業や日系企業の採用意欲の強さにより、エンワールド・ジャパンの業績拡大が加速していることが確認された。好調な業界環境をしっかりと収益に取り込めている点評価が高い。加速する労働市場の改善を追い風に、今後も求人サイトとエンワールド・ジャパンの拡大が同社の業績拡大をけん引していくものと期待される。一方、現在拡大を目指しているエン・ジャパン単体による人材紹介サービス「エン エージェント」がどこまで伸びていくのかに注目したい。現在は立ち上げ期によるコストがかさむが、元来は収益性が高い事業であり、同社の今後の成長ドライバーと期待されるだけに、国内トップクラスの求職者データベースを武器に、大手人材紹介会社との差別化を図り、第2四半期以降いかに事業を拡大できるかがポイントとなりそうだ。
また、同社は14年6月に25日に簡易株式交換によるINNOBASE株式会社の完全子会社化を発表した。今回新設分割を行う株式会社SOOLが行っている新卒スカウトサービスの「Iroots事業」は、定額料金で企業の採用ニーズに合った学生へアプローチするサービスが支持され、大手企業や有力ベンチャー企業を中心に現在100社以上の顧客を抱えている。2015年3月をもって「[en]学生の就職情報」のサイト運営を終了する新卒採用領域におけるビジネスモデル変更の第一弾となる。今後の新卒採用サービス拡大に向けた新たな取り組みにも注目していきたい。