ブリッジレポート
(4290) 株式会社プレステージ・インターナショナル

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ブリッジレポート:(4290)プレステージ・インターナショナル vol.15

(4290:東証1部) プレステージ・インターナショナル 企業HP
玉上 進一 社長
玉上 進一 社長

【ブリッジレポート vol.15】2015年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「ロードアシスト事業、プロパティアシスト事業、及びインシュアランスBPOの3事業は来期以降の見通しも明るい。ロードアシスト事業では、国・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年12月16日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社プレステージ・インターナショナル
社長
玉上 進一
所在地
東京都千代田区麹町1-4
決算期
3月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2014年3月 22,223 2,809 2,704 1,981
2013年3月 24,225 2,380 2,158 1,409
2012年3月 23,385 2,621 2,651 1,543
2011年3月 19,210 2,291 2,360 1,145
2010年3月 16,174 2,390 2,434 1,587
2009年3月 14,729 2,316 2,311 1,410
2008年3月 13,438 1,806 1,817 1,074
2007年3月 12,829 1,631 1,634 877
2006年3月 10,040 1,298 1,206 655
2005年3月 8,306 1,052 1,055 566
2004年3月 7,101 458 387 353
株式情報(11/21現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,057円 30,862,340株 32,621百万円 16.1% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
10.00円 1.0% 66.53円 15.9倍 435.87円 2.4倍
※株価は11/21終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
プレステージ・インターナショナルの2015年3月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
連結子会社23社、持分法適用関連会社1社とグループを形成し、国内外でBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業を展開している。サービスの主なものは、損害保険会社、自動車関連会社、不動産管理会社等を主な取引先とし、実際のサービスは自動車保険加入者に提供するロードアシスタンスサービス、海外旅行損害保険加入者向けの日本語緊急コンタクトセンターサービス、物件の管理会社等と契約しマンション等の入居者に対するホームアシストサービス(水漏れ、鍵開け、ハウスクリーニング等)、駐車場管理会社向けのパークアシストサービス等。
 
【事業セグメントの概要】
成長分野の情報をより明確に数値化する事を目的に、15/3期より下記の通りセグメントを変更した。
 
 
ロードアシスト事業では、損害保険会社及び自動車メーカー等との契約に基づき、その顧客であるエンド・ユーザーに対してロードアシスタンスサービスを提供している。同社が秋田BPOキャンパス等のコンタクトセンターにおいて緊急要請を24時間年中無休で受け付け、実際のサービスは、関係会社である(株)プレミアアシスト東日本・西日本や協力会社等に委託している。
また、プロパティアシスト事業では、分譲マンション等の入居者へ一次修繕サービス(水漏れ、鍵開け、ハウスクリーニング等)を提供する「ホームアシスト」及び駐車場管理会社向けサービス「パークアシスト」を手掛けており、実際のサービスは関係会社(株)プレミア・プロパティサービス等が提供している。この他、ITソリューション事業では、(株)プレミアITソリューション が、グループ各社の事業に関連するシステム開発を手掛けている。
 
【国内外での需要増に対応 -コンタクトセンターの整備-】
同社の成長を支えてきたのが、「秋田BPOキャンパス」である(緊急要請を24時間年中無休で受け付けるコンタクトセンター)。「長期的かつ安定した人材の確保によってはじめて顧客への安定したサービスの提供が可能になる」との考えから03年10月に開設した秋田BPOキャンパス(WEST棟550席)は、その後、07年EAST棟(650席)開設、12年サテライト棟(300席)開設と規模を拡大。高品質のインフラに対するクライアントからの評価は高く、ショールームとしての役割も担っている。
しかし、「秋田BPOキャンパス」は既にフル稼働に近く、加えて、BCP(事業継続計画)の観点からオペレーションの分散(2拠点化)を求める声が増えていた事もあり、現在、富山県射水市に「富山BPOキャンパス」を建設中である(竣工:15年2月、稼働:15年4月、総席数:1,000席を予定)。14年10月には同市内に仮センターを開設し、約40名体制で業務研修を開始した。15年4月の開設までに150~200名規模に拡大させる計画。また、「富山BPOキャンパス」の業務開始までのキャパシティ不足に対応するため、13年11月に山形県酒田市に「山形BPOガーデン」を開設した(総席数:500席、13年2月に仮センターとして稼働開始)。

更に、14年8月、「秋田BPOキャンパス」と「山形BPOガーデン」の中間点に位置する秋田県にかほ市に、「秋田BPOキャンパス にかほブランチ」を開設した(210席規模)。「にかほブランチ」は、(株)DIOジャパンの関係会社が運営していたコールセンターの設備と人員を、2社のクライアント共に引き継いだもの。運営会社の経営が悪化し、「給与支払いの遅延」等の問題が発生していたため、にかほ市から要請を受けていた。継続的な事業・収益モデルの構築が可能と判断できた事に加え、地域の雇用危機に対する社会的な意義も大きい事から、委託契約を締結した。「にかほブランチ」は、「秋田BPOキャンパス」と「山形BPOガーデン」の補完センターとして、バックヤード業務を中心に移管・拡大を計画している。
尚、同社グループは社会貢献方針として「地方都市にサービス業としての雇用を創造し、継続する企業」である事を掲げ、拠点に関しては「継続可能な事業モデルと収益モデルであること」を設置の条件としている。
 
 
 
*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。
 
 
2015年3月期上期決算
 
 
前年同期比11.0%の増収、同30.1%の経常増益
売上高は前年同期比11.0%増の115億76百万円。ロードアシスト事業及びインシュアランスBPO事業が高い売上の伸びを見せる等、全てのセグメントで売上が増加した。

利益面では、原価抑制等の成果に加え、円安も追い風となり、売上総利益率が24.1%と0.8ポイント改善。人員増等による販管費の増加を吸収して営業利益が同18.5%増加した。合弁会社(株)プライムアシスタンスの寄与(持分法投資利益68百万円を計上)等で営業外損益も改善し、経常利益は同30.1%増加した。四半期純利益が同6.8%の増加にとどまったのは、前年同期に投資有価証券売却益4億29百万円を特別利益に計上した反動である。対ドルレートは、1ドル=109.45円だった(予想103.2円、前期実績97.75円)。
尚、営業外費用に為替差損を計上したが、これは同社本体及び国内外子会社の外貨支払いのための準備金(20億円程度)為替予約に関わるもの(前年同期:△79百万円、当期:△62百万円)。1ドル=1円の変動で年間10百万円程度の影響を受けると言う。

期初予想との比較では、地方においても有効求人倍率が1倍を超える等、採用環境の悪化から適正人員を確保する事ができなかった事で人件費等が下振れする一方、円安が海外収益を押し上げたため、営業利益以下の各利益が期初予想を大きく上回った。
 
 
ロードアシスト事業は、売上高40億39百万円(前期比13.4%増)、セグメント利益5億43百万円(同67.6%増)。認知度向上とサービスの利用増等で既存受託業務を中心に売上が増加。利益面では、サービス利用に伴う費用の抑制やシステム化による手配工数削減など原価低減及び原価管理の徹底で利益率も改善した。

プロパティアシスト事業は、売上高13億28百万円(前期比8.0%増)、セグメント利益1億円(同12.9%増)。不動産向けサービス(ホームアシスト)を中心に既存受託業務の売上が増加。フィールドワーク専門子会社における拠点拡充等の先行投資負担を売上の増加で吸収した。

インシュアランスBPO事業は、売上高13億71百万円(同21.1%増)、セグメント利益2億13百万円(同25.9%増)。海外関連事業(クレームエージェントサービス、ヘルスケア・プログラム)が増収をけん引。海外拠点拡充等による先行投資負担を吸収して利益も高い伸びを示した。

ワランティ事業は、売上高15億40百万円(前年同期比2.7%増)、セグメント利益89百万円(同32.5%減)。家賃保証プログラムの好調で売上が増加したものの、自動車延長保証・メンテナンスプログラムにおける既存受託業務終了の影響と新規プログラムの立ち上げ費用の増加で利益が減少した。

ITソリューション事業は、売上高4億69百万円(前期比7.7%増)、セグメント利益42百万円(同45.1%減)。既存受託業務を中心にした売上が増加したものの、新規事業の立ち上げで利益率が悪化した。

カスタマーサポート事業は、売上高23億82百万円(前年同期比6.9%増)、セグメント利益4億67百万円(同3.0%増)。売上面では日本人駐在員向けクレジットカードサービスが増収をけん引。国内カスタマーコンタクトサービスにおける一部の業務終了で利益率が悪化したものの増益基調を維持した。

派遣・その他事業は、売上高4億44百万円(前期比30.9%増)、セグメント利益61百万円(同77.3%増)。合弁会社(株)プライムアシスタンスへの人材派遣の好調で売上が増加。増収効果と間接費用の抑制で利益率も改善した。
 
 
コンタクトセンターへの投資で、上期末の総資産は204億02百万円と前期末に比べて17億88百万円増加した。同社は実質無借金経営であり、100%超であれば短期的な支払い能力は安全とされる流動比率が260%、100%未満であれば長期的に安全と言われる固定比率が48%、と財務内容は極めて健全。自己資本比率は71.9%。
 
 
 
2015年3月期業績予想
 
 
前期比8.0%の増収、同14.6%の経常増益予想
一部のクライアントとの契約内容変更の影響を織り込み、売上予想をわずかに引き下げた。利益面では、上期の実績が予想を大きく上回ったものの、通期予想は経常利益及び当期純利益をわずかに上方修正するにとどめ、営業利益については据え置いた。対ドルレートの前提は1ドル=103.2円。

下期予想は、売上高124億23百万円(前年同期比5.3%増)、営業利益14億81百万円(同3.0%減)、経常利益15億54百万円(同2.5%増)、純利益9億77百万円(微減)。適正人員の確保に向けた採用活動の強化で採用費及び人件費の増加が見込まれる上、15年4月の稼働に向けた富山BPOタウンの先行投資を前倒しで実施する。

期末配当については、期初に意発表した1株当たり5円の配当を実施する考えで、上期末配当5円と合わせて年10円となる見込み。
尚、同社は連結ベースで15%~20%を目安に配当を実施していくい考えで、15/3期の連結配当性向は15.4%となる見込み(14/3期;15.2%、13/3期:15.8%)。
 
 
ロードアシスト事業は上期の好調に加え、第4四半期からサービスの提供が始まるクライアントもあり、前期比増収・増益。プロパティアシスト事業も同増収・増益が見込まれる。予想との比較では、パークアシストの委託料変更の影響で売上が下振れするものの、利益は期初予想を上回る。来期以降の事業拡大に向け、人員の増強と体制の再構築に取り組むインシュアランスBPO事業も同増収・増益が見込まれる。ワランティ事業は同減収・減益。売上計上方法の変更(一括計上 ⇒ 分割計上)の影響で家賃保証の売上が一時的に減少。自動車延長保証も、自動車販売が想定を下回る中、新規プログラムの立ち上がりが遅れている。ITソリューション事業は売上が増加するものの、システムの更新に伴う負担増で利益は減少する。カスタマーサポートは富山BPOタウンへの業務移管コストを織り込んだため、増収ながら減益。ただ、円安が追い風となり、売上・利益共に期初予想を上回る見込み。
 
(2)下期の重点施策
①「エンド・ユーザーのお困りごとを解決する」と言うコンセプトに基づき事業を展開する、②地方都市にサービス業としての雇用を創造し、継続する事で社会に貢献する、③夢を持って働ける職場を創造し、女性の社会進出を応援する、と言う3つの基本戦略(大切にしている思い)の下、この下期は、3拠点(秋田・山形・富山)運営に向けた体制の整備に取り組む。ポイントとなるのは、人材、システム、及び組織の3点で、人材については、「適正人員の確保」と「オペレーション及びフィールドの品質確保」を念頭に採用及び教育を強化する。システムについては、人でしかできない仕事へ集中するべく、基幹システム及びPBX(電話交換機)のバージョンアップを実施すると共に、モバイル端末やアプリの活用による業務の効率化も進める。また、組織では、秋田、山形、富山の差別化とグローバル拠点も含めた役割分担の構築に取り組む。
 
適正人員の確保に向けた取り組み
認知度向上を図るべくBPO拠点において実業団チームを結成する他、地域限定社員の積極登用にも乗り出す。
 
BPO拠点において実業団チーム結成
若者が安心して地元に戻ってくる事のできる環境や女性がより一層活躍できる場を整備する事で、企業の認知度向上及び企業ブランドの確立につなげていく考え。この一環として、2015年4月の活動開始を目指して、女子バスケットボール(秋田)と女子バレーボール(山形)の実業団チームを結成する。地方都市はスポーツをしたい若者の活躍の場が限られてしまうが、バスケットボールやバレーボールの強豪校が揃う地域特性も踏まえて、今回、環境整備に一役買った。
 
地域限定社員の積極登用
BPO拠点の従業員は、通常、契約社員での採用が大半を占めるが、優秀かつ意欲の高い従業員を積極的に地域限定正社員へ登用する事で従業員の士気を高めていく。また、入社時の研修や階層別研修の充実等、社内で「育てる」環境づくりにも注力する。
 
 
今後の注目点
ロードアシスト事業、プロパティアシスト事業、及びインシュアランスBPOの3事業は来期以降の見通しも明るい。ロードアシスト事業では、国内の車両販売が頭打ちとなる中、自動車メーカーや販売会社がサービス収入の拡大に力を入れている事が追い風となる。大手損保の系列色が無い事が同社の強みであり、独立系の競合先はタイムズレスキュー等に限られ、この上期は来期スタートの新規大手顧客案件の獲得に成功している。プロパティアシスト事業でも同じような事が言え、マンションデベロッパーが新築物件の販売だけでなく、サービス収入の拡大に力を入れている。同社は24時間対応で電気・ガス・水道・建具等、家庭内の様々なトラブルに対応できる数少ない企業であり、しかも、国内の主要マンションデベロッパー全てにサービスを提供している。「駆け付けサービスなら、プレステージ」というイメージも浸透しつつあり、トータルサービスによる既存取引先の深耕余地は大きい。一方、インシュアランスBPOは海外旅行保険クレームエージェントやヘルスケア・プログラムでのニーズに応えるべく、子会社設立による海外拠点の拡充が進んでいる。
一方、課題は国内外での旺盛な需要に応えるためのマンパワーの確保である。同社グループが目指す「感謝・感動」を追求したサービスの実現にはサービス品質の向上が不可欠であり、人の確保と人のマネジメントがポイントになる。上期決算は比較的大きな利益の上振れとなったものの、各拠点での採用計画の未達がその主な要因だったため、決算説明会における玉上社長の表情は厳しかった。現在100名程度不足しており、16/3期以降の成長を担保するために下期の人材確保は必達である。もっとも、円安による収益圧迫に苦労する企業もあれば、消費税率引き上げ後の需要の低迷で苦戦する企業も少なくない中、同社の課題は前向きで健全だ。