ブリッジレポート
(4849) エン・ジャパン株式会社

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ブリッジレポート:(4849)エン・ジャパン vol.43

(4849:JASDAQ) エン・ジャパン 企業HP
越智 通勝 会長
越智 通勝 会長
鈴木 孝二 社長
鈴木 孝二 社長
【ブリッジレポート vol.43】2015年3月期業績レポート
取材概要「15年3月の雇用データを見ると、厚生労働省発表の国内有効求人倍率(季節調整値)は、前月から横ばいの1.15倍。1992年3月(1.19倍)以来、23年・・・」続きは本文をご覧ください。
2015年6月23日掲載
企業基本情報
企業名
エン・ジャパン株式会社
会長
越智 通勝
社長
鈴木 孝二
所在地
東京都新宿区西新宿 6-5-1
決算期
3月
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2015年3月 19,623 3,943 4,259 2,531
2014年3月 16,755 3,441 3,747 2,789
2013年3月 13,563 2,783 2,840 1,545
2012年3月 15,687 3,047 2,884 1,135
2010年12月 9,991 1,774 1,803 875
2009年12月 10,209 1,259 1,212 459
2008年12月 21,329 5,943 5,906 3,090
2007年12月 22,686 7,564 7,573 4,168
2006年12月 16,919 5,605 5,607 3,105
2005年12月 11,491 3,791 3,826 2,203
2004年12月 6,980 2,245 2,254 1,253
2003年12月 4,372 1,749 1,754 1,038
2002年12月 3,107 1,305 1,283 663
2001年12月 1,876 933 898 464
2000年12月 620 254 249 132
株式情報(6/5現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,760円 22,502,300株 39,604百万円 13.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
33.00円 1.9% 116.43円 15.1倍 874.34円 2.0倍
※株価は6/5終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
エン・ジャパンの2015年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
「人材採用・入社後活躍」を支援する企業として、採用事業のほか、顧客企業の社員に対する集合型研修サービスを中心とした教育・評価事業も展開。創業以来、「独自性」、「社会正義性」、「収益性」という考え方を背景に求職者に徹底的に尽くすというスタンスを貫いてきたことで優位性を確立。現在は、更なる成長を実現すべく人材紹介サービスと海外展開を推進している。より組織・事業にフィットした人材の採用から、入社後の活躍・定着までを一貫して実現するサービスを提供することで継続的な成長につなげていく考え。
 
 
※15年3月期より事業セグメントを「採用事業」及び「教育・評価事業」に変更。
 
 
 
ビジネスモデル
<求人情報サイト>
企業に対して求人広告を企画・提案。同社の営業員が求人企業を取材し、その情報をもとに同社のコピーライターが求人原稿を制作した後、求人サイトに求人原稿を掲載。
掲載課金型求人広告:求人広告を掲載した際に「広告掲載料」が発生。
成功報酬型求人広告:求人広告を掲載し、同社求人サイトを通じて人材採用できた際に「成功報酬料」が発生。
(同社HPより)
 
 
<人材紹介>
求職者のこれまでのキャリアや転職意向を確認し、今後のキャリアプランに沿った求人を紹介。企業に対しては採用ニーズにマッチしていると思われる人材を紹介。紹介した人材が入社した際に「成功報酬料」が発生。報酬料は概ね年収の30%。
(同社HPより)
 
 
 
中期経営計画(16/3期~18/3期)
 
同社は、今後3ヵ年の中期経営計画を策定した。中期経営計画においては、①求人サイト、②人材紹介、③海外、④新規事業の4分野を注力領域と掲げ、事業の拡大を目指す。最終年度である18/3期の数値目標は、売上高360億円(15/3期比84%増)、営業利益76億円(15/3期比93%増)。3ヵ年中計の最終年度で、過去最高の営業利益(2007/12期:75.6億円)の更新を目指している。
 
 
今後の注力領域
(1)求人サイト (18/3期業績計画:売上高180億円、営業利益42億円)
主力サイトである「エン転職」が最大の成長ドライバーであるが、その他サイトも安定成長を目指す。「エン転職」はサイトのリニューアルと営業体制の強化が奏功し足元の業績は好調に推移している。中でも、サイトのリニューアルは、掲載課金型求人広告件数の増加、顧客企業向けのサイト効果の向上(広告1掲載あたり応募数の増加)、ユーザー会員数の増加などに結びついている。エン転職が好調な今こそ投資を行い、今後の大きな飛躍につなげる。
 
(エン転職の今後の成長戦略)
① 営業体制の整備
・新卒社員を中心に営業人員数の拡大を図る。
・取材に基づいた詳細原稿は変えず、高いクオリティを維持した形で、代理店制を導入。
② 生産性の向上
・1営業人員あたりの業務工程を分業化し、営業に特化することで生産性を向上。
③ プロモーションの強化
・TVCM等オフラインプロモーションを強化し、更なるサイト価値向上を図る。
・16/3期は、全社ベースで前期比約1.6倍の広告宣伝を実施。営業面のバックアップを図り、エン転職の優位性を確立。
 
(2)人材紹介 (18/3期業績計画:売上高100億円、営業利益20億円)
エンワールド・ジャパン(EWJ)とエンエージェント等で売上高100億円を目指す。EWJは、外資系企業・グローバル人材領域でトップクラスの規模。採用・転職をする際に第一想起されるブランド力を有するものの、更なる成長には人員・システムの強化が課題。エンエージェントは、エン転職の求職者データベースを活かし、一定規模へ成長したものの、先行投資期間のため、収益面への貢献はこれから。
 
(EWJの今後の成長戦略)
① 独自の教育システムにより、競合他社と比べ人員増を優位に進める。
② 新たな成長領域である日系グローバル企業へ拡販。
③ システム関連への投資により更に高いフィッティングを実現。
(エンエージェントの今後の成長戦略)
① 16/3期に黒字化を実現。生産性を向上し、18/3期に営業利益率20%を目指す。
② エン転職とのシナジーを拡大。
 
(3)海外 (18/3期業績計画:売上高33億円、営業利益6億円)
18/3期は、15/3期比で売上高倍増、のれん控除後での利益貢献を目指す。海外子会社全体では、15/3期に黒字化を実現。現地企業や外資系企業の現地人材の転職支援において成果を上げている。
(海外の今後の成長戦略)
① 日系企業のアジア進出活発化に伴い、日系企業向けサービスを新たな成長機会にする。
② 進出国だけではなく、アジア全体での成長を目指すためグループ各国の連携を強化。共通のシステム導入などインフラ面を整備。
 
(4)新規事業
主力事業は景気変動の影響が大きい。市場環境の見通しが良好である今後数年の内に、新規事業のラインナップ拡充と採用以外の新規事業の創出を行い、事業ポートフォリオの安定化を目指す。
 
 
2015年3月期決算
 
 
売上高は17.1%増収、営業利益は14.6%増益
売上高は前期比17.1%増の196億23百万円(約28.7億円増)。売上面は、新卒サイトのサービス終了に伴うマイナスのインパクト(約10.5億円)があったものの、8月にリニューアルを実施した「エン転職」が好調であった他、企業の求人ニーズが旺盛であったことから、全求人サイトが前期を上回った。更に、子会社のエンワールド・ジャパンが好調に推移したことに加え、ベトナムとタイの子会社の連結化により海外子会社が増加した他、昨年6月に買収したインド(NEW ERA)の業績が第3四半期より加わった。
利益面では、人員の増加や子会社のオフィス移転などにより費用(売上原価+販管費)が同17.8%増加したことから、営業利益が同14.6%の増加にとどまった。売上総利益率が同1.7ポイント上昇したものの、売上高対販管比率が2.1ポイント上昇した。また、前期に投資有価証券売却益20億30百万を計上した反動減により純利益は同9.2%減少した。
 
 
採用事業
当事業には、求人サイトの運営、人材紹介、海外子会社等が属している。求人サイトは、主力のエン転職において、サイトリニューアル後の応募効果が好調に推移し顧客への拡販が進んだ結果、掲載件数及び売上高が前期比で増加した。その他の求人サイトでも堅調に販売が進み、全サイトで前期を上回る売上となった。人材紹介は、グローバル企業の採用意欲が高かったこと、日系グローバル企業の採用ニーズが増加したこと、人員の増加及び戦力化が進んだこと等から、子会社のエンワールド・ジャパンが好調な結果となった。前期から開始したエン・ジャパンの人材紹介サービスであるエンエージェントは、期初から人員体制及び人員の育成を強化したこと等から四半期毎の入社決定人数及び売上高が増加し、前期を上回る売上高となった。また、海外子会社は、ベトナムとタイの子会社が期初から、インドの子会社が当第3四半期から連結業績に加わったことに加え、ベトナムとオーストラリアの子会社が順調に推移し売上高は前期比で大幅に増加した。
以上の結果から、採用事業セグメントの売上高は、189億42百万円と前期比17.1%増加した。また、人件費、プロモーション費用、オフィス拡張のための移転関連費用などを中心とした販管費が増加したものの、営業利益は39億53百万円と同19.5%増加した。
なお、同社は2015年3月末をもって大学生向けの就活サイトである「[en]学生の就職情報」の運営を終了した。
 
 
15/3期のエン転職の売上高は、前期比10.1億円(同19%増)増加した。8月に実施したサイトの全面リニューアル後の応募効果が好調に推移し、掲載件数・売上高が共に前期比増加となった。また、積極的な拡販や1年目営業社員の戦力化により四半期ベースの掲載課金型求人広告件数は、2015年第4四半期に2008以来の水準に回復した。
 
 
15/3期のエンワールド・ジャパン株式会社は、売上高が前期比31.0%の増加、営業利益が同36.6%の増加となった。外資系企業に加え、日系企業のグローバル人材採用ニーズが高かったこと、積極的な人員の増加と戦力化が寄与し、大幅な増収増益となった。一方で、業容拡大により8月にオフィス拡張のために移転をした関連費用などを含めコストが増加した。
 
 
15/3期の海外子会社は、売上高が前期比119.8%の増加、営業利益が1億14百万円の増加となった。売上高は、今第1四半期にベトナムとタイの子会社が、今第3四半期にインドの子会社のP/Lが新たに連結に加わったことに加え、ベトナムとオーストラリアの子会社が好調に推移したこと等から、前期比で大幅に増加。また、営業利益も海外全体で黒字化を達成した。
 
教育・評価事業
当事業には、定額制研修サービスの実施、採用・人事関連システムの提供等が属している。定額制研修サービスでは、「エンカレッジ」が複数の拠点で新たなサービスを開始した他、新講座の開発や既存講座の内容改定を行うなど、受講者の満足度向上に向けた取り組みを強化した。また、採用・人事関連システムでは、子会社のシーベースにおいてリピート受注及び新規受注が進んだこと等から、前期を上回る売上となった。
以上の結果から、15/3期の教育・評価事業の売上高は前期比17.4%増の7億47百万円となった。一方、営業利益は、業容拡大に伴う人員の増加等、先行コストが発生したことから9百万円の営業損失となった(前期は1億32百万円の営業利益)。
 
 
15/3月末の総資産は前期末比25億7百万円増の252億41百万円。資産サイドでは、有価証券の取得などにより現金及び預金が減少したものの、のれんや投資有価証券、ソフトウエア等が増加した。一方、負債・純資産サイドでは、未払法人税が減少したものの、当期純利益の計上で株主資本が増加した。総資産の約57%を流動資産が占める等、資産の流動性が高い。自己資本比率も約78%と、高水準を維持している。
 
 
CFの面から見ると、法人税等の支払額の増加などにより営業CFのプラスが減少したことに加え、有価証券の取得や連結範囲の変更に伴う子会社株式の取得などにより投資CFのマイナスが増加したことから、フリーCFがマイナスへ転じた。また、配当金の支払額増加などにより財務CFのマイナスも拡大した。
 
 
2016年3月期業績予想
 
 
前期比24.9%の増収、同1.4%の増益予想
16/3期の会社計画は、売上高が前期比24.9%増の245億20百万円、営業利益が同1.4%増の40億円。
同社グループが属する人材ビジネス市場の環境は、特に国内において人材が不足している業界も多く、企業の人材採用ニーズは引き続き堅調に推移すると同社では予想している。こうした中、売上面においては、求人サイト・人材紹介へ注力し、全社で高い売上成長を目指す。求人サイトにおいてはエン転職を中心にリニューアル等で改善した求人サイトの競争力を更に高めることで市場を上回る成長を目指す。また、人材紹介においてはEWJが人員増強と日系グローバル企業への拡販により、エンエージェントがエン転職とのシナジー効果の拡大などにより大幅に増加する計画。一方、利益面では、海外における既存子会社の収益性の向上を図るものの、事業の優位性を強固なものにすべく、人材の積極的な採用に加え、今期に積極的な広告宣伝やシステム関連等の先行投資を実施する影響で、営業利益は前期比1.4%増の40億円となる計画。また、16/3期の1株当たりの配当は、前期末から1円増配の33円の計画。
 
 
 
 
プロモーションの強化
同社は、サイトの更なるサイト価値向上や営業面でのバックアップを図り、エン転職の優位性を確立するために、今期(16/3期)は前期比1.6倍(全社ベース)の広告宣伝を実施する。タレントを起用したTVCMを行い、関東・関西・東海・福岡の各エリアにおいて6月以降順次放送される予定である。
こうした先行投資の影響で、今上期の営業利益は前期比11.6%減少する会社計画となっている。一方、CM効果により下期の売上の増加が見込めるため今下期の営業利益は同11.7%増加し、通期の営業利益も同1.4%増加する計画となっている。
 
 
今後の注目点
15年3月の雇用データを見ると、厚生労働省発表の国内有効求人倍率(季節調整値)は、前月から横ばいの1.15倍。1992年3月(1.19倍)以来、23年ぶりの高い水準を維持している。また、総務省発表の3月の完全失業率(季節調整値)も前月比0.1ポイント低下の3.4%と、2カ月連続で改善するなど、引き続き企業の人材採用意欲は旺盛であることが明らかとなった。こうした好調な雇用環境の中、求人サイトとエンワールド・ジャパンなどの拡大により、同社の業績も拡大が継続するものと期待される。
主力のエン転職は昨年8月に実施したサイトの全面リニューアル後の応募効果が好調に推移し、掲載件数及び売上高が大幅に増加している。こうした中、同社ではエン転職の優位性を確立し、更なる高成長を達成するため、今期積極的なCMプロモーションを実施する予定である。CMプロモーションは、営業面でのバックアップやサイト価値の更なる向上につながるものと期待される。
しかし、CMプロモーションは、その費用対効果の評価が難しいとの問題がある。同社の中期経営計画によると、こうした積極的な広告宣伝費の投入の影響で今期は低成長となるものの、来期以降はサイト価値の向上により成長力が高まっていく内容となっている。今後のCMプロモーションが、サイト価値の向上につながり、同社の売上拡大にどのような規模で結び付くのか、その費用対効果が注目される。また、エン転職の優位性の向上は、エンエージェントの成長拡大にもつながるものと期待される。エン転職の豊富な求職者データベースを活かし、エンエージェントの拡大に結び付けることができるのか、エン転職とエンエージェントのシナジー効果についても注目していきたい。