ブリッジレポート
(6089) 株式会社ウィルグループ

東証1部

ブリッジレポート:(6089)ウィルグループ vol.2

(6089:東証1部) ウィルグループ 企業HP
池田 良介 社長
池田 良介 社長

【ブリッジレポート vol.2】2015年3月期業績レポート
取材概要「同社は、セールスアウトソーシング、コールセンターアウトソーシング、ファクトリーアウトソーシングの主力3事業で市場の成長を大きく上回る実績を・・・」続きは本文をご覧ください。
2015年6月30日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社ウィルグループ
社長
池田 良介
所在地
東京都中野区本町1-32-2
決算期
3月末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2015年3月 32,586 939 950 547
2014年3月 26,798 808 774 384
2013年3月 22,174 618 631 289
2012年3月 19,049 478 472 161
株式情報(6/26現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,800円 4,754,318株 8,557百万円 19.7% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
13.00円 0.72% 126.61円 14.2倍 641.97円 2.8倍
※株価は6/26終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
ウィルグループの2015年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
販売支援スタッフ、コールセンターオペレーター、食品を中心とした製造ラインスタッフの人材派遣、人材紹介等を手掛ける持ち株会社。フィールドサポーターと呼ばれる社員が現場に常駐する「ハイブリッド派遣」が特長。現場第一主義を掲げ他社との差別化を図る。中期的に売上高1,000億円を目指し新規市場創出にも注力。グループ会社は、セールス及びコールセンターのアウトソーシングを手掛ける(株)セントメディア、製造業に特化したサービスを手掛ける(株)エフエージェイ、小・中学校等へのALT(Assistant Language Teacher:外国語指導助手)派遣や幼児・児童向け語学教室運営等の(株)ボーダーリンク、シンガポールの人材サービス会社Scientec Consulting Pte. Ltd.とGood Job Creations (Singapore) Pte.Ltd.、ミャンマーでのコンサルティングサービスを目的に2015年6月に設立したGJC Myanmar Ltd.等、国内4社、海外4社。
 
【沿革】
同社グループの前身は、1997年1月に大阪市北区において設立されテレマーケティング業を営んでいた、現在は連結子会社である(株)セントメディアである。一方、同じく1997年8月、大阪市浪速区に短期型の業務請負業を手掛ける(株)ビッグエイドが設立され、現在の代表取締役社長池田良介氏は創業メンバーの一人として同年10月に(株)ビッグエイドに入社した。2000年2月、テレマーケティング業と業務請負業の相乗効果を図ることを目的として、両社が(株)セントメディアを存続会社として合併し、池田良介氏が合併後の会社の社長に就任。以降、(株)セントメディアを中核会社として人材サービス分野の事業を展開し、市場の変化に対応する形で新規事業の創出や既存事業の再編を重ねてきた。2006年4月に純粋持株会社として(株)ウィルホールディングス(2012年6月、(株)ウィルグループに商号変更)を設立し、事業会社の専門性の向上と経営資源の最適化を図るべく、グループ経営体制に移行。2013年12月に東証二部に上場後、1年後の2014年12月、東証一部に指定された。2015年6月にはミャンマーでコンサルティングサービスを提供するGJC Myanmar Ltd.、及びコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)「ウィルグループファンド投資事業有限責任組合」を設立した。CVCは、既にアクティビティ・マッチング・プラットフォーム「Travee(トラビー)」を運営する(株)Travee(神奈川県川崎市)、及びホームセキュリティサービスを手掛ける(株)Secual(東京都渋谷区)への投資実績を有する。
 
 
池田社長はITバブル崩壊後の苦難の時期、ある著名な上場企業の創業経営者に、そうした際にどんなVISION やMISSION を掲げれば部下や社員が付いてきてくれるかを相談したところ、「まだその若さであれば、言葉を掲げるのではなく、自分の仕事の現場に没頭しなさい。何年かそうやって必死にやっていれば本当に自分の言葉によるVISION やMISSONが生まれてくる。それからでも遅くない。」とのアドバイスを受け、派遣の現場でスタッフと共に仕事に邁進したという。

多くの苦労もしたが、そうした経験の中から、自らの価値を磨いて自信を付け、自分を成長させ前向きに進めば、自分の周りの人間をも前向き、ポジティブにすることができるという事を学んだ。そうした自分の周りの人間はもとより、自らがかかわる組織にもポジティブな影響を与えることが、池田社長及び同社の社会的存在意義であると確信し、MISSION、VISION、VALUE を自らの言葉として掲げることとした。
 
【事業内容】
「セールスアウトソーシング事業」、「コールセンターアウトソーシング事業」、「ファクトリーアウトソーシング事業」の3つが中心事業。各事業とも、市場を上回るスピードで成長してきた。この他、次の成長の柱として、様々な人材関係ビジネスの種蒔きを行っており、セグメントのその他には、オフィスへの人材派遣、介護士派遣、海外人材サービス、小・中学校等への外国語指導助手の派遣等の収益が計上されている。
 
 
セールスアウトソーシング事業
家電量販店、携帯ショップ等における販売業務を通して、顧客の商品・サービスの拡大を支援している。
取扱商品は、スマートフォン等のモバイルデバイスやブロードバンドが中心であり、接客、商品説明、申込み等の販売業務、販売スタッフのマネジメント、販売情報の収集・報告等の業務に従事するスタッフをチーム型で派遣(ハイブリッド派遣)するほか、一般派遣や業務請負を行っている。また近年では対象分野拡大のため、アパレル業界への派遣にも取り組んでいる。
同社の資料によると、13年度(13年4月~14年3月)のセールスアウトソーシング市場の規模は2,410億円。09年度からの平均成長率は0.5%成長だったが、この間の同社の売上高は年平均で26.7%増加した。
 
コールセンターアウトソーシング事業
コールセンターを運営する企業やテレマーケティングサービスを展開する企業に対してオペレータを派遣している。
コールセンターの中でも、通信会社向けを中心としており、情報提供、配送、アフターサービス、相談、苦情の受付、処理、解決等の業務に従事するスタッフをチーム型で派遣(ハイブリッド派遣)または一般派遣している。また、自社でコールセンターを保有し、顧客のテレマーケティングの業務請負も行っている。
同社の資料によると、13年度のコールセンターアウトソーシング市場の規模は6,792億円。09年度からの平均成長率は3.3%成長だったが、この間の同社の売上高は年平均で21.5%増加した。
 
ファクトリーアウトソーシング事業
製造業の生産過程において、技術や人材管理ノウハウを提供し、顧客の生産性の向上を実現するサービスを提供している。同事業を行っている(株)エフエージェイでは、製造業の中でも、比較的景気変動の影響が少ない食品製造業を中心に、製造、検査、品質管理、仕分け、梱包等の業務に従事するスタッフをチーム型で派遣(ハイブリッド派遣)するほか、一般派遣や業務請負を行っている。
同社の資料によると、13年度のファクトリーアウトソーシング市場の規模は1兆3,500億円。09年度からの平均成長率は△1.9%成長だったが、この間の同社の売上高は年平均で18.7%増加した。
 
 
 
*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE =売上高当期純利益率×総資産回転率×レバレッジ
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。
 
19.72%と15/3期も高水準のROEを維持した。13/3期からは3期連続の低下となるが、これはIPO(13年12月東証2部上場)と好業績で自己資本の充実が急ピッチ進んだため。この間、収益性(売上高当期純利益率)は一貫して向上しており、資産全体の効率性を示すROA(当期純利益を総資産で割って求める)も3期連続で向上した(13/3期6.9%→14/3期7.2%→15/3期7.8%)。
 
【市場環境】
労働者派遣市場は5 兆円台で安定して推移
厚生労働省の「労働者派遣事業報告書の集計結果」によれば、一般派遣、特定派遣を合計した「労働者派遣事業に係る売上高」はリーマン・ショックによって大きく減少したが、足元は5 兆円台で安定して推移している。
円安の進展による個人消費への影響などが懸念されるが、企業収益の拡大に伴い人材派遣サービスに対する需要は短期的には底堅く推移すると見込まれている。また、2020 年東京オリンピックの開催も、景気を支える大きなファクターと見られている。

一方、中期的な観点からは、人材派遣業界における「2018年問題」が指摘されている。2018年4月は、2013年4月に施行された「改正労働契約法(有期労働契約)」の5年目に当たる。有期労働契約の「5年ルール」により、有期雇用で5年を迎えた労働者は、本人の申込みにより、無期雇用(無期労働契約)への切り変えが可能になる。
また、2015年6月19日に衆院本会議で可決された労働者派遣法の影響も注目されている。
 
 
改正労働者派遣法のポイント
この度の労働者派遣法改正のポイントは、派遣期間の上限が「業務」から「人」へ、無期雇用(常用雇用)派遣労働者の派遣期間の撤廃、専門26業務の撤廃、及び派遣事業者の許可制への移行と教育義務である。
 
 
派遣期間の上限が「業務」から「人」へ、無期雇用(常用雇用)派遣労働者の派遣期間の撤廃、及び専門26業務の撤廃
改正前の制度では、ソフトウェア開発、機械設計、通訳・翻訳・速記等の「専門26業務」以外では、一つの「業務」で派遣労働者を活用できる期間が最長3年に制限されていた(派遣労働者、つまり「人」を変えても最長3年)。しかし、今回の改正で、「専門26業務」の業務区分が撤廃され、派遣会社に無期雇用(常用雇用)されている派遣労働者は「業務」に関係なく派遣先で期限なく働く事ができるようになり、有期雇用の派遣労働者も最長3年まで働く事が可能になる。派遣労働者を受け入れている企業側から見ると、無期雇用派遣労働者であれば期限なく、有期雇用の派遣労働者であっても、派遣労働者が交代すれば、一つの「業務」で期限なく派遣労働者を使い続ける事ができるようになる(交代回数の制限もない)。

今回の改正により、企業が派遣労働者を活用しやすくなるため派遣会社のビジネスチャンスが拡大する可能性があり、また、派遣労働者にとってはキャリア形成の実現機会が増えるとみられている。
 
派遣事業者許可制への移行と教育義務
また、今回の改正により派遣会社に一定以上の規模と質が求められるようになる。具体的には、改正前の制度では、無期雇用社員を派遣する特定派遣の派遣会社は届出だけで開業できたが(有期雇用社員を派遣する一般派遣の派遣会社は許可が必要だった)、今回の改正で、特定派遣、一般派遣を問わず、派遣会社の開業には全て許可が必要になる。許可要件には、純資産額 2,000万円以上、現預金 1,500万円以上等の財務的な基準に加え、教育訓練の実施も含まれるため派遣会社は人材育成に今より大きな責任を負う事になる。

許可基準の充足は中小派遣会社には負担が大きいため、現在、5万社を超えると言われる派遣会社の淘汰が進み、上場企業を中心とした大手によるM&A等を通じた寡占が進むとみられている。
 
 
特徴と強み
 
(1)フィールドサポーターを核とした「ハイブリッド派遣」
ハイブリッド派遣の概要
人材派遣業界において同社を特長づけ、成長のドライバーとなっているのが「ハイブリッド派遣」というシステム。
 
人材派遣とは、派遣会社と雇用契約を締結したスタッフを、派遣会社が労働者派遣契約を締結した顧客企業に派遣することをいう。雇用関係と指揮命令関係が分かれていることが特徴で、派遣会社は、労働者派遣契約に基づき派遣先企業から派遣料金を受領し、雇用契約に基づき派遣スタッフに給与を支払う。
また派遣先では顧客企業の担当者の指揮命令に従って派遣スタッフは働くことになる。

一般派遣では、複数の派遣会社から派遣されたスタッフが現場に入り交じっているケースが多く、顧客企業の現場担当者による派遣スタッフへの指揮命令や情報共有が複雑になってしまう傾向がある。
派遣会社にはコーディネーターという職種の正社員が、派遣スタッフのフォローを行うのが一般的だが、コーディネーターは現場にいるわけではないので、家電量販店の現場やコールセンターの電話ブース等で日々起こる様々な問題に正社員が即応することはできない。
また、派遣先の職場環境や職種、スタッフ個々の資質等の条件によって違いはあるが、一般派遣の場合はスタッフのロイヤリティやチームワーク意識の低さが、スタッフの高離職率やトラブル発生の頻度の高さに繋がりやすく、顧客企業、派遣会社双方にとって課題が多い面もある。

これに対し、同社の「ハイブリッド派遣」では、フィールドサポーター(FS、現場常駐社員)と呼ばれる同社の正社員が現場に入り派遣スタッフと一緒に同じ仕事をすると共に、同社の派遣スタッフを現場で日々管理・指導・教育している。
 
 
顧客担当者は、FSに指揮命令すれば、各スタッフ個々に指導する必要は無いため、指揮命令がスムーズになると共にスピーディーな情報共有も可能になるため、業務を効率的に進めることが出来る。
一方同社においては、同じ現場に正社員が常駐することで派遣スタッフの士気が向上するため、良いチームワークが生まれ、派遣スタッフの責任感も強くなる。加えて、即時に顧客のニーズへの対応ができるため、現場の急な増員計画にも柔軟に対応することができるなど、顧客企業からの評価も高まり、オーダーの増加等の新たな人材派遣の引き合いや、さらには業務請負契約に進むケースも多く見られる。
また、優秀なスタッフには、派遣先顧客企業から直接雇用の要望があることもあり、その場合は人材紹介を行うなど、事業機会の拡大にも繋がっている。
「1人のFSに平均して約50名のスタッフ」というのが平均的なチームの形だが、同社が有望顧客と考える先には、その後のビジネス拡大のために少数からスタートし、「ハイブリッド派遣」のメリットを理解してもらい、その後のオーダー拡大につなげることもある。
2015年3月末のFS数は185名と前期末に比べ4名増加した。今後も拡大を続けていく。
 
ハイブリッド派遣を可能にするもの
同社を特徴づける「ハイブリッド派遣」ではあるが、「他社でもやろうと思えばできるのではないか?」という疑問を投資家であれば当然抱くだろう。
それに対する池田社長の説明は以下の様なものであった。
 
・派遣の現場というのは、実にいろいろなことが起こる。スタッフのミスに対し、謝罪、改善策の提案、実行の繰り返しといって良い。また、スタッフの性格や人間性なども多種多様でそれを取りまとめ、仕事を進めて行くのは苦労も多いのは確かだ。
・そうした派遣の現場でハイブリッド派遣の力を発揮するためには、優秀なFSが不可欠なのは言うまでもない。
・「現場で正社員であるFSがスタッフとしても一番になったうえで、現場を指導する。」という形にしなければチームを機能させることはできない。当社の場合、創業時から私も含め全員が現場に入ってきた。現在の部長やマネージャーのほとんどは新卒で入社し、スタッフとして現場で働き、派遣の現場で起こることを全て経験している。そうした人間がFSを育成しているわけで、この「現場第一主義」がハイブリッド派遣を可能にするカギと言える。
・逆に、こうした現場感覚の無い人間がチームという形を整えるために上司として現場に入っても、課問題解決にはつながらない。スタッフがすぐ辞める、現場に入った正社員がスタッフ化してしまう(本社に対するロイヤリティを低下させる。)といった問題が起きるのは明らかだ。
・同業他社がチームという形だけ整えても当社と同じクオリティを顧客に提供するには数年はかかるだろう。
・ただ、現時点で当社が先行はしているが、他社がこれから本気で取り組めばできない話ではないので、当社としては派遣スタッフの早期育成・戦力化を進めるための仕組み作りにいち早く取り組んでいる。
 
(2)さまざまなカテゴリーに特化して事業を展開
同社は3つの主要事業で9割以上の売上を占めているが、それぞれの事業においてカテゴリーを特化している。各カテゴリーにおいて、共通の戦略は、ハイブリッド派遣、カテゴリーに特化しているからこそ可能な研修プログラムの提供、及びスタッフ満足度の向上であり、セグメント別の戦略は下記の通り。
 
 
セールスアウトソーシング事業では現在のモバイル端末販売に加え、現在アパレル分野もカテゴリーに加え強化を行っている。
それぞれの事業において、特化したカテゴリーの現場を熟知している強みを活かし、特徴を持った取り組みにより顧客企業の事業拡大に貢献しており、同社自身も、上場以来、増収・増益を続けている。
 
 
 
2015年3月期決算
 
 
前期比21.6%の増収、同22.7%の経常増益
主要3セグメントがそろって2ケタの増収となり、売上高が325億86百万円と前期比21.6%増加。増収効果に加え、セールスアウトソーシング事業を中心に利益率の高い業務請負も拡大して売上総利益率が19.5%と0.7ポイント改善。業容拡大に伴う従業員の増加等で販管費の伸びも大きくなったが、売上の増加と売上総利益率の改善で吸収して営業利益が9億39百万円と同16.3%増加した。IPO関連費用(株式公開費用等44百万円)が無くなった事等で営業外損益が改善し経常利益は9億50百万円と同22.7%増加。減損損失の計上がなかった事や税効果会計の影響等で当期純利益は5億47百万円と同42.5%増加した。
同社が重視している経営指標の一つであるEBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却額)は、前期の8億90百万円から10億91百万円に増加した。減価償却費は90百万円(前期は72百万円)、のれん償却額は61百万円(同9百万円)。

期末従業員数は 671名と前期末に比べて147人増加(このうちフィールドサポーター185名と同 4人増加)。主な増加要因は、新卒入社(52名)、連結対象企業の増加(新たに取得した子会社の従業員 28名)、及び新規事業要員 (36名)。

配当は、1株当たり普通配当12円に東証一部指定に伴う記念配当12円を加えた年24円となった。
 
 
※ハイブリッド派遣の売上構成比の低下は、派遣先において業務請負と新たな一般派遣先が増えたため。
 
(2)セグメント別動向
セールスアウトソーシング
売上高130億53百万円(同16.8%増)、セグメント利益6億97百万円(同40.3%増)。新機種の発売等を追い風にスマートフォン市場が拡大し、家電量販店や携帯ショップにおいて販売員の旺盛な需要が続いた。第3四半期の年末商戦及び第4四半期の年度末商戦の寄与が大きかった事、業態別では、業務請負が47億46百万円と同21.4%増加した事が15/3期の特徴である。利益面では、第1四半期に福岡支店及び札幌支店を増床した他、第3四半期に沖縄支店開設すると共に新潟支店及び仙台支店等を増床する等、営業拠点強化やエリア拡大を進めた他、業容の拡大に伴い人件費並びに採用費等も増加したが、利益率の高い業務請負の拡大で売上総利益率が改善した他、外部採用媒体を用いない採用(友人紹介やスタッフ再入社)の増加で採用費の対売上比も低下した。
 
 
コールセンターアウトソーシング
売上高81億59百万円(同17.0%増)、セグメント利益2億92百万円(同0.9%減)。高機能なスマートフォンの普及で端末の動作説明やサービス内容の説明を行うオペレータ需要が旺盛だった。引き続き通信業界を対象に新規顧客の開拓に注力した結果、人材派遣を中心に売上が増加。全国規模の大口顧客との取引もスタートした。
ただ、短期案件が増加したため、人件費率や採用費率が上昇し利益率が低下。第3四半期以降、長期案件へのシフトを進めたが、第1四半期の福岡支店及び札幌支店の増床、第3四半期の大宮支店、池袋支店、北九州支店の開設、及び新潟支店、仙台支店の増床等、営業拠点強化やエリア拡大を進めた事もあり、利益がわずかに減少した。
 
 
ファクトリーアウトソーシング
売上高75億37百万円(同19.9%増)、セグメント利益2億06百万円(同39.5%増)。食品製造業向けの売上が39億30百万円(セグメント売上全体の52.2%を占める)と同34.3%増加する等、人材派遣を中心に売上が増加した。売上増に対応した人材確保(採用費)や人員の増加(人件費)に伴う販管費の増加を吸収して利益が大きく伸びた。第1四半期の神奈川支店開設、第2四半期の東京支店移転、更には第4四半期に栃木支店、三重支店及び岡山支店を開設する等、拠点の整備・拡充も進んだ。
 
 
その他
売上高38億35百万円(同62.3%増)、セグメント損失3億25百万円(前期は損失1億50百万円)。オフィス等への人材派遣が堅調に推移する中、介護士派遣・看護師紹介、海外人材サービス、ネット人材紹介の売上が増加。営業体制の再構築を行ったALT(外国語指導助手)派遣等の減収の影響を吸収した。利益面では、人材紹介を中心とした海外人材サービスやネット人材紹介が利益貢献したものの、新たに開始した2つの新規事業(シェアハウス、3Dプリンタ関連)への先行投資が負担になった。2014年8月にはシンガポールで人材派遣サービスを手掛けるScientec Consulting Pte. Ltd.(以下、Scientec Consulting社)を買収した。
 
 
期末総資産は前期末に比べて19億31百万円増の80億22百万円。業容の拡大と好業績を背景に、売上債権、派遣スタッフの給与である未払費用、未払法人税・消費税等、更には純資産が増加。2014年2月に設立したシンガポール子会社(WILL GROUP Asia Pacific Pte. Ltd.)が2014年8月にシンガポールで人材サービスを手掛けるScientec Consulting社.の株式60%を取得し子会社化した事で、のれんも増加した(7百万円→4億37百万円)。
流動比率142.0%(前期末158.0%)、固定比率35.9%(同20.8%)、と流動性、財務の長期的な安全性共に高い。実質無借金で自己資本比率38.0%(同41.1%)。投下資本利益率(ROIC)は前期の16.2%から18.5%に上昇した。
 
 
利益の増加と売上債権の回収が順調に進んだ事等による資金効率の改善で12億35百万円の営業CFを確保。M&A等の資金を賄って、前期は4億67百万円のマイナスだったフリーCFも5億50百万円の黒字を確保した。借入金の約定返済が進んだ事や配当金の支払い等で財務CFはマイナスになったものの(前期は公募増資を実施した)、現金及び現金同等物期末残高は24億44百万円と前期末に比べて15.4%(3億26百万円)増加した。
 
 
2016年3月期業績予想
 
 
前期比20.1%の増収、同15.2%の経常増益
売上高は前期比20.1%増の391億20百万円。通信キャリア間で激しいシェア争いが続くスマートフォン販売や新規分野として力を入れているアパレル業界等を中心にセールスアウトソーシング事業の売上が同10.1%増加する他、通信キャリアからのスマートフォン関連のオペレータ需要を中心にコールセンターアウトソーシング事業の売上も同15.0%増加する見込み。また、成長市場である中食分野の食品製造業との取引が過半を占めるファクトリーアウトソーシング事業も、全国に複数の生産拠点を有する顧客の他拠点への展開等で売上が同18.0%増加する見込み。この他、育成中の事業では、積極的に拠点開設を進める介護士派遣・看護師紹介、シンガポールに橋頭堡を築いた海外人材サービス、更にはネット人材紹介等で順調な売上の増加が見込まれ、その他の売上が同68.7%増と伸びる。

利益面では、介護士派遣・看護師紹介、海外人材サービス、ネット人材紹介等での先行投資負担や採用費(効率化は進むが絶対額は増加)の増加等で営業費用が増加するものの、増収効果で吸収して営業利益が10億94百万円と同16.5%増加する見込み。EBITDAは12億84百万円と同17.7%(1億93百万円)の増加が見込まれる。

配当は、1株当たり記念配当12円を落とし、普通配当を1円増配の年13円を予定している。
同社は成長を維持させるための事業展開と財務体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、経営成績と経営全般を勘案して株主に対して株主還元を実施していく考え。連結配当性向10%以上の株主還元を方針としている。
 
 
(2)成長戦略
シェアの拡大、エリアの拡大、新市場の創出、という3つの戦略を推進する。シェアの拡大では一般派遣で需要を取り込み、その後ハイブリッド派遣や業務請負へのシフトを進め、エリアの拡大では未開拓エリアへの更なる出店に取り組む。また、新市場の創出では非正規雇用から正規雇用への流れの中で「キャリアパス人材市場」を創出し人材紹介事業を展開して行く。
 
シェアの拡大
引き続きハイブリッド派遣を軸にシェア拡大を図っていく。具体的には、一般派遣の市場を開拓し、その後、強みであるハイブリッド派遣へシフトさせる事でインストアシェア(特定の顧客における派遣・請負スタッフ数のうち、自社の派遣・請負スタッフが占める割合)の向上につなげる。ハイブリッド派遣によってチームとしての顧客の信頼を得た後、業務請負に移行させ収益性を高めると共に顧客との関係を一段と強化していく。
 
 
エリアの拡大
11/3期以降、新規出店ペースを加速しており、15/3期末における同社グループの拠点数は50拠点を数える。ただ、いずれの事業セグメントにおいても未開拓エリアが残っているため、引き続きエリア拡大に取り組む考え。16/3期末には拠点数が60拠点に拡大する見込み。
16/3期は、セールスアウトソーシング事業において長野や岡山での拠点開設を計画しており、コールセンターアウトソーシング事業では千葉や北海道(旭川市)での拠点開設を計画。また、育成中の介護士派遣・看護師紹介では、神戸、広島、京都、東京(足立区北千住)での拠点開設を計画している。
 
 
新市場の創出
現状では非正規雇用(派遣社員・契約社員)から正規雇用(正社員)への移行は簡単ではないが、パフォーマンスの高いスタッフであれば、どの企業も正規雇用したいと考えるもの。同社グループでは、この非正規雇用と正規雇用の重なり合う市場を「キャリアパス人材市場」と定義しており、この市場を創出して人材紹介事業を展開していく考え。具体的には、派遣スタッフとして教育し、実務経験を積ませた上で、派遣先等に派遣期間終了とは関係なく正社員として紹介する。顧客は、仕事のパフォーマンスを確認した上での採用であるためミスマッチのない採用となり、同社グループにとっては、収益性の高い事業であり、スタッフに対して正社員へのキャリアパスを示せる事で、スタッフの確保や定着率の向上につながる。また、スタッフにとっては、正社員への道が開ける事でキャリアにおける可能性が拡がる。

契約が継続するビジネスである人材派遣や業務請負等のストック型人材サービスは安定した収益が見込めるが、収益性は必ずしも高くない。一方、契約が単発となるビジネスである人材紹介やエグゼクティブサーチ等のフロー型人材サービスはスポット的な収益ではあるが、収益性が高い。両事業を組み合わせる事で収益の安定性を高めると共に、高収益化を図っていく。
 
 
 
今後の注目点
同社は、セールスアウトソーシング、コールセンターアウトソーシング、ファクトリーアウトソーシングの主力3事業で市場の成長を大きく上回る実績を残してきた。この原動力となったのが「ハイブリッド派遣」であり、その背景にあるのが「現場第一主義」の経営理念である。「現場が一番大事。現場で一番になれない人間は営業もコーディネーターも、ものにならない」と言うのが同社の考えだ。また、「ハイブリッド派遣」の肝となるフィールドサポーターは育成というより資質のある人間をいかに採用できるかが重要で、8割くらいは採用で決まると言う。このため、採用の際に、MISSION、VISION、VALUEに関する理解促進を徹底して適性を見極めている(入社後もこれらが記載された「グループ手帳」をグループ全社員に配布し、ミーティングやディスカッションの場で利用している他、経営幹部が繰り返しメッセージを発信している)。(株)インベストメントブリッジでは、「現場第一主義」の経営理念や、MISSION、VISION、VALUEが浸透し、独自の企業文化が醸成されている事が同社の強みであり、高成長の背景にあると考える。このため、他社が「ハイブリッド派遣」の形だけを真似しても、成果をあげるには多くの時間を要するだろう。

同社は売上高1,000億円(既存事業500~600億円、新規事業400~500億円)を目指してチャレンジを続けている。このため先行投資も必要であり、現在の配当性向は10%に満たないが、売上・利益の拡大と企業価値の向上で株主の期待に応えていきたい、と考えている。「更なる成長やブランド力増強を目指し、東証2部上場から1年で東証1部にステップアップしたが、これがゴールであるはずもなく、これからも中長期の視点で当社の成長を応援していただきたい」と言うのが同社からのメッセージである。