ブリッジレポート
(4709) 株式会社IDホールディングス

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ブリッジレポート:(4709)インフォメーション・ディベロプメント vol.52

(4709:東証1部) インフォメーション・ディベロプメント 企業HP
舩越 真樹 社長
舩越 真樹 社長

【ブリッジレポート vol.52】2016年3月期第1四半期業績レポート
取材概要「同社の16/3期第1半期決算を振り返ると、外注費の増加や本社移転にともなう賃料や減価償却費の増加などにより販管費が増加し、営業利益は前年・・・」続きは本文をご覧ください。
2015年9月8日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社インフォメーション・ディベロプメント
社長
舩越 真樹
所在地
東京都千代田区二番町 7-5
決算期
3月
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2015年3月 18,868 966 998 508
2014年3月 17,578 735 765 372
2013年3月 16,446 427 448 -490
2012年3月 16,137 629 659 365
2011年3月 16,450 839 892 447
2010年3月 17,263 850 864 155
2009年3月 18,458 1,057 1,109 563
2008年3月 18,032 1,200 1,191 594
2007年3月 14,692 1,024 1,024 550
2006年3月 13,028 851 845 430
2005年3月 11,378 550 557 119
2004年3月 11,203 625 628 203
2003年3月 11,668 598 591 274
2002年3月 11,081 548 546 272
2001年3月 9,738 756 735 242
株式情報(8/10現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,000円 7,200,345株 7,200百万円 8.1% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
30.00円 3.0% 80.55円 12.4倍 934.31円 1.1倍
※株価は8/10終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
インフォメーション・ディベロプメントの2016年3月期第1四半期決算概要等についてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
金融向けITアウトソーシングに強みを持つ独立系の情報サービス会社。システム運営管理とソフトウエア開発・保守を二本柱とし、一つの顧客に対し、コンサルティングからソフトウエア開発、システム運営管理等の複数のサービスを提供するBusiness Operations Outsourcing(BOO)戦略を推進しており、好不況の波の大きいIT業界にあって、相対的に業績の変動が小さく、高配当を継続している。
尚、2013年12月17日、JASDAQから東証2部に市場変更。2014年9月8日、東証1部に上場した。
 
【事業セグメント】
事業は、システム運営管理、ソフトウエア開発・保守、及びその他に分かれ、各事業の概要と売上構成比は次の通り。
 
システム運営管理  (15/3期売上構成比59.7%)
1,200名規模の技術者を擁する専門部隊が、ミドルウエアのカスタマイズからハードウエアの保守、24時間体制のオペレーションまで、トータルかつ高付加価値のアウトソーシングを実現している。
 
ソフトウエア開発・保守 (15/3期売上構成比37.0%)
500名を超える技術者が、顧客の開発ニーズに合わせたシステム構築をサポート。金融機関、エネルギー、運輸をはじめとする幅広い分野のお客様へ、多くの開発実績を築いている。
 
その他 (15/3期売上構成比3.3%)
BPO、セキュリティ、コンサルティングなどを展開している。海外の大手ベンダーと提携し、各種セキュリティ製品の提供からコンサルティング、セキュリティ環境の構築・導入・運用・サポートまで一貫したサービスを提供している。

また、顧客別では、メガバンク、有力地銀、生損保、農林系等の金融機関が53.2%、SIer、情報通信機器ベンダー、或いは通信キャリア系情報サービス大手等の情報・通信・サービスが29.3%、製造、輸送、公共団体、エネルギー等のその他が17.5%。
 
 
【IDグループ】
IDは、2015年7月1日付で、国内子会社であった(株)日本カルチャソフトサービスと(株)ソフトウエア・ディベロプメントを吸収合併した。現在の国内外の連結子会社は6社。このうち国内(2社)は、情報システム・コンサルティング等の(株)プライド(出資比率85.9%)、障がい者雇用を促進するための子会社愛ファクトリー(株)(同100%)。一方、海外(4社)は、中国でソフトウエア開発、システム運営管理等を手掛ける艾迪系統開発(武漢)有限公司(同100%、ID武漢)、シンガポールでソフトウエア開発やシステム運営管理等を手掛けるINFORMATION DEVELOPMENT SINGAPORE PTE. LTD.(同100%、IDシンガポール)、及びアメリカで人材採用・育成、現地市場調査、情報収集等を手掛けるINFORMATION DEVELOPMENT AMERICA INC. (同100%、IDアメリカ)。また、2015年8月にシステム運営管理の企画ならびに運用を手掛けるPT. INFORMATION DEVELOPMENT INDONESIA(IDシンガポール51%、ID49%、IDインドネシア)を設立した。
このほか、ミャンマーに現地企業との合弁会社、Infinity Information Development Co., Ltd. (IDシンガポール出資比率49%)を有している。
 
 
【IDグループのサービスの特徴  - i-Bos24®(ID's Business
 Operations-Outsourcing Service 24)-】
同社グループはコンサルティングからソフトウエア開発、システム運営管理、クラウド・セキュリティ、BPOまで、トータルなITアウトソーシングサービスを「i-Bos24®」のブランドで提供している。ソフトウエア開発事業ではユーザーの立場に立った柔軟な発想と姿勢でシステムを構築し、システム運営管理事業では24時間365日システムをノンストップで運営管理。セキュリティ事業ではセキュリティ製品の販売やネットワークセキュリティに関わる業務を行う。更にクラウドサービス「iD-CLOUD」では、コンテンツやセキュリティの運用・遠隔監視、Web会議システムの導入等のニーズに応え、BPO事業ではITを活用した事務作業を代行する事で顧客の業務効率化に貢献する。
 
 
 
【情報サービス業の動向と同社の業績推移】
(1)情報サービス業の動向
 
内閣府が6月8日に発表した15年1-3月の国内総生産(GDP)第2次速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比1.0%増、年率換算で3.9%増と、5月発表の第1次速報値を上回った。情報サービス産業との関連性が深い民間企業設備(実質)の前期比も、2.7%増と第1次速報値の0.4%を大きく上回った。
また、経済産業省発表の「特定サービス産業動態統計調査」(15年8月10日発表。6月分確報値)を見ると、情報サービス全体、受注ソフトウエア、システム等管理運営受託ともに売上高は好調に推移している。
 
(2)同社の取り組み
キーワードは、「BOO戦略」、「グローバル推進」、及び「iD-CLOUD」。具体的には、一つの顧客に対し、コンサルティングからソフトウエア開発、システム運営管理、BPOまで、複数のサービスを提供する「Business Operations Outsourcing」を“i-Bos24®” のブランドで展開し、既存顧客1,000社から抽出した13企業グループを深耕する。また、「グローバルの推進」では、ITの導入支援から運用・保守までのワンストップサービスを日本水準で提供する事でグローバル展開を進める日本企業のニーズを取り込んでいく。この一環として、100%子会社 ID武漢が、武漢、上海、無錫及び東京を活動拠点とし、日本と中国において、ソフトウエア開発からシステム運営管理、BPOまでのトータルITサービスを提供している他、米国、シンガポールでの子会社設立、英国における支店設立、業務提携に加え、2015年2月にミャンマーに合弁会社を設立。また、同年8月にはインドネシアに子会社を設立し、グローバルなITサポート体制の構築を進めている。

一方、顧客企業のIT投資額に占めるクラウドコンピューティングへの投資比率は今後ますます増加することが予想されるため、「iD-CLOUD」の拡大に積極的に取組んでいく。
特に、クラウドの採用にあたり顧客企業が注視するのはセキュリティレベルの高さであるため、新しいセキュリティ商品、技術を積極的に取り入れ、クラウドおよびセキュリティとオペレーションを組み合わせた、より専門的なサービス提供を機動的に推進していく。
また、クラウド環境の設計・構築に欠かせないプラットフォーム系開発業務においては、要員育成による体制強化を進め、売上拡大を目指す考えだ。なお、プラットフォーム系開発業務とは、ハードウエア、OS、ミドルウエアの機能を最適な手段で活用し、低コストかつ信頼性の高いシステム稼働環境を設計・構築するサービスのこと。

中長期的な経営戦略として「継続的成長」という基本的考え方のもと、重点戦略として①ダイバーシティの推進、②BOO戦略の推進、③クラウドサービスの推進、④グローバル推進、⑤グループ経営の効率化と業務プロセス改善を掲げる。18/3期に売上高235億円、営業利益率8.0%を目指す。
 
これまでの業績推移と今後のイメージ
 
 
 
2016年3月期第1四半期決算概要
 
 
16/3期第1四半期は、前年同期比5.4%の増収、同6.7%の経常減益
売上高は前年期比5.4%増の47億46百万円。情報サービス産業の改善が継続する中、既存顧客へのグループ横断的な営業展開を積極的に行ったことなどから、システム運営管理、ソフトウエア開発共に増加した。
一方、営業利益は前年期比10.6%減の1億88百万円。売上高の増加要因があったものの、外注費の増加や本社移転にともなう賃料や減価償却費の増加により販管費が増加したことが影響した。グループ経営資源の共有と活用による業務効率化などの成果などにより、売上総利益率は、19.6%と前年同期比0.8ポイント向上、売上高対販管費比率は、15.7%と前年同期比1.6ポイント上昇した。経常利益は、為替差益の発生(5百万円)はあったが同6.7%の減少、親会社株主に帰属する四半期純利益は、投資有価証券売却益の計上(33百万円)などにより、同0.2%増加した。本社移転にともなう費用発生を含め当第1四半期の業績は概ね予定通りの着地となった模様。
 
 
システム運営管理事業の売上高は前年同期比2.2%増の28億35百万円。企業のIT投資回復を背景に、金融系や運輸系のプラットフォーム系開発業務が堅調に推移した。

ソフトウエア開発事業の売上高は前年同期比4.7%増の16億91百万円。公共系の案件が制度改正、法改正対応等によって好調に推移した他、システム統合や更改対応により、金融系の案件が堅調に推移した。

その他事業の売上高は前年同期比94.6%増の2億20百万円。セキュリティ販売やコンサルティングの売上が増加した。
 
 
15年第1四半期は、本社移転にともなう賃料や減価償却費の増加により販管費が増加したものの、グループ経営資源の共有と活用による業務効率化などの成果などにより、売上総利益率は19.6%と、ここ数年で最高水準となった。
 
 
15/6月末の総資産は前期末比6億12百万円減の96億90百万円。資産面では売上債権が、負債・純資産面では未払法人税等と賞与引当金が主な減少要因。自己資本比率は69.1%と前期末比3.8ポイント上昇した。
 
(3)トピックス
◎株式信託制度を導入
取締役および執行役員に対する新たな株式報酬制度「株式給付信託(BBT(=Board Benefit Trust))」を導入する。
2015年6月18日開催の第47期定時株主総会において役員報酬として決議され、2015年7月31日に詳細が決定となった。

<導入の背景>
取締役等の報酬と同社の業績および株式価値との連動性をより明確にし、取締役や執行役員が株価上昇によるメリットのみならず、株価下落リスクまでも株主と共有することで、中長期的な業績の向上と企業価値の増大に貢献する意識を高めることを目的としている。

<概要>
同社が拠出する金銭を原資として設定された信託が同社株式を取得。同社が定める役員株式給付規程に従って、取締役や執行役員の業績達成度等に応じて同社株式が信託を通じて取締役・執行役員に給付される。
株式の給付を受ける時期は、原則として退任時となる。中立性確保の観点から、信託が保有する株式の議決権は一切行使しないこととし、対象には社外取締役、監査役は含まない。

<本株式給付における同社株式の取得内容>
(1)取得する株式の種類:同社普通株式
(2)株式の取得資金として信託する金額:99,999,900円
(3)取得株式数:99,900株
(4)株式の取得の方法:同社の自己株式処分を引き受ける方法により取得
(5)株式の取得日:平成27年8月17日
 
 
2016年3月期業績予想
 
 
16/3期の会社計画は、前期比6.0%の増収、同4.1%の経常増益
16/3期の会社計画は期初予想から変更なし。
会社計画の売上高は前期比6.0%増の200億円。引き続き金融機関の統合案件等、顧客のIT投資は拡大することが期待される。エンジニアの確保状況次第だが、200億円は堅めと同社判断している。
会社計画の営業利益は同7.6%増の10億40百万円。今期の本社オフィス移転により、営業利益率の改善幅は前期比0.1ポイントにとどまるが、今期を含む3か年の中で6%超を実現し、2018年の8.0%の足場を固める。不採算案件の防止とデータセンターでのオペレーション円滑化により一層注力する方針。
配当も普通配当のみで30円/株(前期は記念配当2円を含めて30円/株)の期初予想を据え置き。予想配当性向は37.2%と高水準。
 
(2)3か年計画に向けた取り組み
今期の売上高目標200億円は通過点と考え、着実な実現を目指す。
2018年3月期の営業利益率目標を8.0%としている。ソフト開発中心の事業構造ではないので10%、20%を目標とするのは現実的ではないが、引き続き営業利益率アップにチャレンジする。
その為には、生産性向上、業務プロセス改善を含めた構造改革が不可欠であり、子会社CSおよびSDの吸収合併もそのためのアクション。
経営戦略における重点施策は①ダイバーシティの推進、②BOO戦略の推進、③クラウドサービスの推進、④グローバル推進、⑤グループ経営の効率化と業務プロセス改善の5つだが、今期のポイントは①ダイバーシティの推進と④グローバル推進と考えている。
 
(3)重点施策の取組状況
「ダイバーシティの推進」では、グローバル戦略を確実に推進していくための人材育成、および人材の多様化を通じて、組織の活性化を図っているが、女性管理職比率10.8%、従業員に占める外国籍社員の割合が7.0%まで高まった。
「BOO戦略の推進」では、ZeroTurnaround社の国内総代理店として、各事業部横断的な取組のもと、革新的なJava開発ツールを提供。更に、マカフィー社をはじめとする最新セキュリティ対策の提案を通じ、顧客のリスク軽減に全社的に取り組んでいる。
「グローバル推進」では、平成27年6月26日に当社の関連会社であるInfinity Information DevelopmentCo., Ltd.が、ミャンマー(ヤンゴン)において、ITインフラ構築のための実践技術の習得、およびビジネスマナー、コンプライアンス、リスクマネジメントの考え方を学習できるi-Technology Professional Camp を開校。また、同年8月にIDシンガポールとIDが出資し、
PT. INFORMATION DEVELOPMENT INDONESIA(IDインドネシア)を設立。システム運営管理の企画ならびに運用サービスを提供予定。
「グループ経営の効率化と業務プロセスの改善」では、同社を存続会社として、連結子会社である株式会社日本カルチャソフトサービス、および株式会社ソフトウエア・ディベロプメントを平成27年7月1日に吸収合併。更に、本社および事業部門を一拠点に移転集約。グループ内の連携をより一層充実・強化し、グループ経営効率のさらなる向上を実現。
 
 
今後の注目点
同社の16/3期第1半期決算を振り返ると、外注費の増加や本社移転にともなう賃料や減価償却費の増加などにより販管費が増加し、営業利益は前年同期比10.6%の減益となるなど一見厳しい内容となった。また、本社移転の影響がより大きくなる第2四半期は更に前年同期比で減益率が拡大する会社計画となっている。こうした一方で、今第1四半期の売上総利益率は19.6%と過去数年の中で最高水準まで上昇していることが確認された。グループ経営資源の共有と活用による業務効率化の成果と言えよう。同社では、本社オフィス移転の影響などがあることから今期の売上高営業利益率が前期比0.1ポイントの改善にとどまるものの、今期を含む3か年の中で6%超を実現し、18/3月期に8.0%の達成を目指している。非常にチャレンジングな目標ではあるものの、今第1四半期の売上総利益率の改善を見るに、目標とする売上高営業利益率の達成に向けて期待が膨らむ。舩越社長のリーダーシップのもと、各種重点施策の実行とその加速を通じて今後いかに収益性を高めていけるのか、今第2四半期の売上総利益率と売上高販管費比率の動向が注目される。