ブリッジレポート
(4290) 株式会社プレステージ・インターナショナル

プライム

ブリッジレポート:(4290)プレステージ・インターナショナル vol.19

(4290:東証1部) プレステージ・インターナショナル 企業HP
玉上 進一 社長
玉上 進一 社長

【ブリッジレポート vol.19】2016年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「同社の玉上社長は11月9日の上期決算説明会で「伸び代は大きいが、リスクも顕在化してきた」と上期決算を総括した。事実、主要事業が揃って・・・」続きは本文をご覧ください。
2015年12月22日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社プレステージ・インターナショナル
社長
玉上 進一
所在地
東京都千代田区麹町2-4-1
決算期
3月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2015年3月 24,619 2,952 2,983 1,758
2014年3月 22,223 2,809 2,704 1,981
2013年3月 24,225 2,380 2,158 1,409
2012年3月 23,385 2,621 2,651 1,543
2011年3月 19,210 2,291 2,360 1,145
2010年3月 16,174 2,390 2,434 1,587
2009年3月 14,729 2,316 2,311 1,410
2008年3月 13,438 1,806 1,817 1,074
2007年3月 12,829 1,631 1,634 877
2006年3月 10,040 1,298 1,206 655
2005年3月 8,306 1,052 1,055 566
2004年3月 7,101 458 387 353
株式情報(11/11現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,159円 31,360,640株 36,347百万円 13.3% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
12.00円 1.0% 67.12円 17.2倍 514.60円 2.3倍
※株価は11/11終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
プレステージ・インターナショナルの2016年3月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
「エンド・ユーザー(消費者)の不便さや困ったことに耳を傾け、解決に導く」と言う経営理念の下、国内外でBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業を展開している。サービスの主なものは、自動車保険加入者にサービスを提供するロードアシスタンスサービス(電話対応から現場でのサービスまで)、海外旅行損害保険加入者向けの日本語緊急コンタクトセンターサービス、物件の管理会社等と契約しマンションの入居者に提供するホームアシストサービス(水漏れ、鍵開け、ハウスクリーニング等)、駐車場管理会社向けのパークアシストサービス等。いずれのサービスも馴染みはあるが、B2Bの事業形態をとっているため、言い換えると、サービス提供の際はクライアント企業(損害保険会社、自動車関連会社、不動産管理会社等)の社名を名乗って対応するため、“プレステージ・インターナショナル”と言う同社の社名を耳にする事は少ない。
連結子会社25社、持分法適用関連会社1社とグループを形成している。
 
【グループ経営理念とグループ事業方針】
グループ経営理念
エンド・ユーザー(消費者)の不便さや困ったことに耳を傾け、解決に導く事業創造を行い、その発展に伴い社会の問題を解決し、貢献できる企業として成長する。
 
グループ事業方針
プレステージ・インターナショナルグループは、社会に必要とされ、クライアント企業から信頼され、エンド・ユーザから感謝されるソリューションを提供できるグループを標榜し、社会貢献を常に念頭におきながらクライアント企業、株主、社員、地域と共に繁栄できるグローバルカンパニーを目指します。
 
【2015年4月より、新コーポレートロゴマークを導入】
シンボルマークの外形である正方形は、世の中をトリミングしている窓を表している。社会をよく見てみると、そこここに、"P"の文字が見え隠れしている。時には目に見え、時には目に見えないところで、プレステージ・インターナショナルは社会のために貢献したい。
このシンボルマークはそのようなプレステージ・インターナショナルのあり方を形にした。

(同社資料より)
 
【事業セグメントの概要】
15/3期の売上構成比は、ロードアシスト35%、プロパティアシスト12%、インシュアランスBPO12%、ワランティ12%、ITソリューション4%、カスタマーサポート21%、派遣・その他4%。
 
 
【特徴】
玉上社長が、7年間にわたる海外生活で言葉や文化の違いにより不便な思いをした経験から、「海外でも日本にいるときのように高品質で心のこもったサービスを受ける事ができればいいのに…。」と言う思いが会社設立(1986年10月)の動機。その翌年にニューヨークへ進出し、トラブルに遭った日本人からの問い合わせに24時間日本語で対応するサービスを開始した。その後、アジア、ヨーロッパの主要都市にネットワークを広げると共にサービス内容を拡充。国内でのサービスも育成して業容を拡大した。
 
 
2001年7月にヘラクレス市場に上場を果たし、2003年10月には、秋田県秋田市に緊急要請を24時間年中無休で受け付けるコンタクトセンターを開設(現「秋田BPOキャンパス」WEST棟650席)。「長期的かつ安定した人材の確保によってはじめて顧客への安定したサービスの提供が可能になる」との考えから開設した同キャンパスは、その後、07年EAST棟(550席)、12年サテライト棟(300席)と規模を拡大。高品質のインフラに対するクライアントからの評価は高く、ショールームとしての役割に加え、秋田での新たな雇用創造の一翼も担っている。2012年12月の東証2部上場を経て、2013年12月に東証1部指定を達成した。
 
【強み】
同社の強みは、安定したストックビジネス、高品質なサービスを支えるサービス拠点、そして、この結果としての高い収益性と経営効率を実現している事。
 
(1)安定したストックビジネス
クライアント企業である損害保険会社等の既存顧客向け付加価値サービス(保険特約)が中心のため、外部環境による収益の振れが比較的小さい。主たる業務委託契約フィーは、サービス対象者数×予想利用率によって算出され、サービス対象者やサービス対象者一人当たりの利用が増えると、翌期の委託契約フィーに反映される。特に自動車のトラブル対応は認知度の向上で導入企業や利用者が増加しており、継続的なサービス対象者数の増加と利用率の向上につながっている。自動車メーカーや販売会社がサービス収入の拡大に力を入れている事も追い風となっている。不動産関連サービスも同様に、フローの物件売り切りビジネスに依存していたマンションデベロッパー等がストックビジネスとして強化している事が追い風になっている。また、海外事業として手掛けているヘルスケア・プログラム(海外赴任での健康トラブル対応)は、業績改善による企業活動の活発化で需要が増えている。
 
(2)高品質なサービスを支えるサービス拠点
人材の安定化を求め地方都市に展開するコンタクトセンター
高品質なサービスの提供を実現するべく、国内にコンタクトセンターを保有し現場部隊を内製化すると共に、世界14ヶ国17拠点のグローバルネットワークを有する。コンタクトセンターは人材の安定化を念頭に地方都市に開設しており、現在の稼働施設は、秋田BPOキャンパス(秋田県秋田市)、山形BPOガーデン(山形県酒田市)、開設した秋田BPOキャンパスにかほブランチ(秋田県にかほ市)、及び2015年4月にサービスを開始した富山BPOタウン(富山県射水市)、の4施設。
 
 
富山BPOタウンは、東日本大震災以降のBCP(事業継続計画)に対する意識の高まりに応えるべく、秋田BPOキャンパスや山形BPOガーデンから遠く離れた富山県射水市に開設された。2015年4月に130名(700席)でサービスを開始しており、現在、建築中のオペレーション棟1棟が完成する同年12月には1,000席体制が整う。3~5年後のフル稼働を目指して継続的にオペレーターの増員を図っていく考え。託児所、カフェテリア、社員寮、研修施設、自家発電装置、駐車場(1,010台)を備え、2015年6月23日には同社の定時株主総会を開催した。
 
 
全国主要都市において現場部隊を内製化  - 独自ブランドPremierAssist(プレミアアシスト)の展開 -
全国主要都市に内製化した現場部隊を展開しており、拠点数は、ロードアシスト24拠点、ホームアシスト11拠点、パークアシスト8拠点の計43拠点。トラブル現場で顧客対応するスタッフは清潔感のあるユニフォームで統一された正社員である。スタッフには定期的にマナー講習等が実施され、サービス品質向上に取り組みには余念がない。同社グループ企業の正社員による現場対応への評価は高く、競争力の源泉となっている。また、世界14ヶ国17拠点のグローバルネットワークを有し、各海外拠点では、海外で病気・ケガをした際の医療費の査定やキャッシュレスで受診可能な病院ネットワークの開拓を行っている。
 
 
新中期経営計画(16/3期~18/3期)
 
(1)新中期経営計画の骨子と基本戦略
骨子として、「継続的・安定的な成長」、「プレステージ・インターナショナルでしか実現できないサービスの創造」、「地方都市での雇用の創造・継続」、及び「女性の雇用機会の創出」、の4つを掲げており、この4つを効果的に融合させ、バランスのとれた経営を行う事で、成長・収益性・効率性の向上・維持と強固な組織の構築を目指す。4つの骨子に基づく戦略は次の通り。

「継続的・安定的な成長」では、同社サービスの価値を認めるクライアント企業と長期的な関係を構築し、併せて雇用の継続も実現する(当面の売上確保を目的とする短期的・事務的な業務の受託はしない)。「プレステージ・インターナショナルでしか実現できないサービスの創造」では、エンド・ユーザの「感謝・感動」につながる同社ならではの差別化されたサービスの創造に取り組むと共に、価格競争にさらされない同社でしか実現できない品質と独自性を追求する。「地方都市での雇用の創造・継続」では、職場環境の快適性に工夫を盛り込んだBPO拠点を整備すると共に、長期的なクライアントとの関係と劣化しない独自性・差別化を追求する。「女性の雇用機会の創出」では、託児所やカフェテリア等、女性が長く働ける環境に配慮した施設の整備と、女子スポーツチーム等、女性の活躍の場の創造に継続的に取り組んでいく。
 
 
(3)セグメント別の戦略  各セグメントで横展開と縦展開及び新規分野の開拓を進める
ロードアシスト事業
横展開では、フィールドワーク専門子会社「プレミアアシスト」のサービス体制の充実とパッケージ化した商品構成により、ダイレクト系損保会社への訴求力を高める。2014年4月にダイレクト系損保1社向けの新規業務がスタートした事で、2014年4月に3.5だった1日当たりの平均稼働率が2015年4月には4.0に上昇した(稼働率の改善は業務効率の向上につながる)。
一方、縦展開及び新規分野の開拓では、ロードサービス モバイルアプリ「Premier Call」等のアプリを活用した付加価値サービスを提供すると共に、事故予防分野への展開を視野に、IoT(Internet of Things)やビッグデータ分野の研究を進める。ロードサービス モバイルアプリ「Premier Call」を利用すると、位置情報と車両状態を瞬時にオペレーターへデータ送信する事ができるため迅速で的確な事故対応等が可能になる。
 
プロパティアシスト事業
横展開では、ホームアシストにおいて、ホームアシスト開発企業としての新たな価値創造に取り組むと共に、ストックマーケットへ展開する(新築物件だけでなく、既存物件へも展開)。また、強みであるグループでの一貫サービスに磨きをかけるべく、ホームアシスト、パークアシスト共に、フィールドワーク専門子会社の規模と地域の拡大を図る。一方、縦展開及び新規分野では、ホームアシストにおいて、シルバー世代(点検を兼ねた安否確認)、中古住宅売買(居住者と接する事でいち早く情報を入手できる)、スマートシティ(IoT活用等によるホームアシストサービスの提供)へ展開し、「住まい」の問題解決企業から「社会」の問題解決企業への進化に取り組む。そのためには、ホームアシストはもちろん、パークアシストも含めて、フィールドワーク専門子会社の機能強化が不可欠であり、機能修繕と美的修繕が一体となったサービスの提供、警備、見守り、環境整備等をキラーコンテンツとして個々の機能を強化していく(この結果として、総合力の向上につなげる)。
 
インシュアランスBPO事業
横展開では、日本人駐在員向け「ヘルスケア・プログラム」の拡充と海外拠点の拡充を進める考えで、インド、インドネシア、ベトナム、メキシコ等での現地法人化を計画している。また、海外拠点は海外拠点でしかできないサービスに集中させるため、バックオフィス業務を「にかほブランチ」(秋田県にかほ市)で集中処理させる(海外拠点が最も有効に機能するオペレーション体制を構築する)。一方、縦展開及び新規分野では、東南アジアや中南米等、日本と医療事情が異なる地域において、手厚いサポートのニーズが高まっている事に対応して、ヘルプデスクモデルを導入する。具体的には、各拠点にサービス受付を設置すると共に主要病院に専用デスクを設置し、日本人駐在員や帯同家族のサポートを強化する。
 
ワランティ事業
横展開では、自動車延長保証や家賃保障・住宅設備保証といった既存サービスで業界トップシェアを目指し、縦展開及び新規分野では、総合保証サービスへの挑戦として、「生活の安心=保証」を切り口に、介護費用保証、医療費用保証、管理費保証等へ、モバイル活用も含めて、ノウハウを活かした他分野展開を進めていく。
 
カスタマーサポート事業
クライアント企業エンド・ユーザの満足度をより高い水準で実現するべく、横展開として、富山BPOタウンを拠点として独創的な新しいサービスの創造に取り組み、縦展開及び新規分野の一環として、オペレーションにおける意識を「処理」から「ノウハウの蓄積」へ変革する。
 
(4)経営課題への取り組み
事業拡大に不可欠な人財採用と人財育成は、同社にとって永遠の課題である。人財採用における取り組みとしては、BPO拠点(秋田、山形、富山)において、女性従業員が長く活躍できる職場を提供するために企業内託児所をはじめとした環境の整備や、若年層や育児休業明けの雇用を積極的に促進するため、ワークライフバランスのとれる環境の整備を進める。また、女性活躍推進の取り組みの一環として、女子スポーツチームを設立し、2015年4月に始動させた。一方、人財育成における取り組みでは、「高品質かつホスピタリティのあるサービスを提供するため、新人研修やマナー研修、階層に応じたスキル研修、管理職研修を実施する」と言う教育方針の下、失敗を恐れずチャレンジして結果を出して成長できる人財を評価する人事制度を構築する。
 
(5)財務戦略
18/3期にかけて、業容の拡大と成長・効率化投資により、財務内容の改善を伴いつつ、総資産が増加する見込み。借方では、成長・効率化投資の一環としての秋田BPOキャンパスリニューアルや山形・富山拠点の機能拡充で有形固定資産が、効率化に向けたシステム投資で無形固定資産が、アライアンス等の推進で投資その他が増加する他、新規成長投資準備、事業拡大のための運転資金、更には株主還元の原資として流動資産も増加する。貸方では、収益の拡大を反映して利益準備金が増加する一方、富山BPOタウンの建設資金として調達した借入金の返済が進む。
 
(6)株主還元戦略
15/3期に17.3%(個別ベースでは52.3%)だった連結配当性向が16/3期は17.8%に上昇する見込み。同社は、現状の配当性向に満足している訳ではないが、同社グループでは医療費や保険金の立替金を行っている海外連結子会社において一定のキャッシュポジションが必要であり、その他の国内で保証を行っているグループ会社での資金ニーズもあるため、常にある程度のキャッシュを手元に確保しておく必要がある(海外事業は立て替え期間の長さが参入障壁の一つとなっている)。このため、新中期経営計画においては、グループ会社各社で適正なキャッシュポジションのコントロールに努めると共に、将来の投資を勘案した余剰資金のプレステージ・インターナショナル単体への還流スキームの構築に取り組む事で、プレステージ・インターナショナル単体のキャッシュポジションを向上させ連結配当性向20%の実現を目指す考え。
 
 
 
2016年3月期上期
 
【会計処理方針の変更  -家賃保証事業における収益及び対応する費用の処理方法の変更-】
16/3期より、連結子会社(株)イントラストの家賃保証プログラム(ワランティ事業)における収益とこれに対応する費用について、大手クライアントの商品設計の変更及び企業会計における昨今の傾向を踏まえて、会計処理方針を変更した。具体的には、従来、契約の締結及び更新時に収益及び費用を一括計上していたが、16/3期より契約期間にわたって分割計上する方法に変更した。
15/3期業績については、上記の会計処理方針の変更に基づき遡及修正してある。
 
 
前年同期比16.3%の増収、同13.1%の経常増益
売上高は前年同期比16.3%増の134億70百万円。損害保険会社や自動車メーカー等にロードサービスを提供しているロードアシスト事業が同24.4%増、分譲・賃貸マンション・戸建て占有部の一次修繕等のサービスを提供しているプロパティアシスト事業が同17.9%増、海外旅行者や海外駐在員向けの保険関連サービス等を手掛けるインシュアランスBPO事業が同20.0%増、と主要事業の売上が大きく伸びた他、家賃保証プログラム等のサービスを提供するワランティ事業の売上も同8.5%増加した。

利益面では、減価償却費等、新拠点「富山BPOタウン」の稼働に伴うコスト増加に加え、インシュアランスBPO事業における海外バックヤード業務の国内移管、更にはプロパティアシスト事業におけるフィールドワーク専門子会社の拠点拡充や機能強化のための先行投資負担等で営業費用が増加したものの、家賃保証プログラムの好調と自動車延長保証プログラムの収支管理体制強化によるワランティ事業の大幅な損益改善や円安効果等で吸収して営業利益が15億20百万円と同4.7%増加。持分法投資利益の増加(68百万円→80百万円)や為替差損益の改善(△62百万円→41百万円)等で営業外収支も改善し、経常利益は16億72百万円と同13.1%増加した。

尚、対米ドルの為替レートは前年同期の109.45円から10.51円円安の119.96円。また、15/3期業績は、前述の会計処理方針の変更に伴い、ワランティ事業の売上が10百万円増額修正される一方、同事業の営業利益が66百万円減額修正された事を反映している。
 
(2)セグメント別動向
ロードアシスト事業
売上高50億24百万円(前年同期比24.4%)、営業利益4億79百万円(同11.8%減)。認知度の向上によるサービス利用の増加等で既存受託業務が拡大した他、新たに獲得したクライアントの寄与もあり売上が増加した。売上が増加する中、オペレーションのシステム化による原価削減効効果もあったが、新拠点である富山BPOタウンへの業務移管費用等が利益を圧迫した。
 
プロパティアシスト事業
売上高15億65百万円(前年同期比17.9%増)、営業利益1億06百万円(同5.8%増)。当事業は、分譲・賃貸マンション・戸建ての占有部の一次修繕(ホームアシスト)とコインパーキングのメンテナンス(パークアシスト)を手掛けている。16/3期上期は、パークアシストが伸び悩んだものの、ホームアシストにおける既存受託業務の拡大で売上が増加。フィールドワーク専門子会社の拠点拡充や機能強化のための先行投資負担を吸収して営業利益も増加した。
 
インシュアランスBPO事業
売上高16億45百万円(前年同期比20.0%増)、営業利益1億66百万円(同22.0%減)。当事業は、保険に関するサービス(保険会社から保険に関連するフィールドワーク等を受託している)を提供している。16/3期上期は、クレームエージェントサービスやヘルスケア・プログラムといった海外関連事業が順調に伸びたが、構造改革(海外拠点で実施していたバックヤード業務の「にかほブランチ」(秋田県にかほ市)への移管・集中)費用が利益を圧迫した。
 
ワランティ事業
売上高16億82百万円(前年同期比8.5%増)、営業利益3億66百万円(前年同期は23百万円の利益)。当事業は、保証に関するサービスを提供している。16/3期上期は、家賃保証プログラムをけん引役とする売上増と収支管理体制強化による自動車延長保証プログラムの収益性改善で営業利益が約16倍に拡大した。
尚、既に説明した通り、15/3期上期の当事業は売上高が10百万円増額修正される一方、営業利益が66百万円減額修正されている(修正前:売上高15億40百万円、営業利益89百万円)。
 
カスタマーサポート事業
売上高25億53百万円(前年同期比7.1%増)、営業利益3億06百万円(同34.4%減)。当事業は、国内のカスタマーコンタクトサービスと日本人駐在員向けクレジットカードサービスを手掛けている。16/3期上期は、売上面ではカスタマーコンタクトサービスでの一部の業務終了(選択と集中の結果)による影響を日本人駐在員向けクレジットカードサービスの売上増で吸収したが、利益面では減収によるカスタマーコンタクトサービスの利益減少や富山BPOタウンへの業務移管に伴うコスト増等の影響を吸収できなかった。

上記の他、持分法適用会社(株)プライムアシスタンスに対する人材派遣業務を中心とする派遣・その他事業が、売上高5億49百万円(前年同期比23.8%増)、営業利益70百万円(同15.2%増)。ITソリューション事業は前期の受注減少の影響と規事業の立ち上げで、売上高4億49百万円(同4.4%減)、営業利益23百万円(44.3%減)。
 
 
上期末の総資産(資産合計)は前期末に比べて10億37百万円増の246億20百万円。借方では、業容拡大に伴い立替金(流動資産)が増加した他、富山BPOタウンの稼働等で有形固定資産が増加。貸方では、資産除去債務で固定負債が、子会社関連で資本剰余金が、上期の利益計上で利益剰余金が、それぞれ増加した。CFの面では、税金費用の減少等による運転資金の減少で営業CFが前年同期の6億93百万円から9億51百万円に増加。フリーCFは29百万円の黒字となった(前年同期は2億31百万円の赤字)。
 
 
2016年3月期業績予想
 
 
業績予想に変更はなく、通期で前期比9.7%の増収、同10.1%の営業増益予想
上期決算を踏まえて各セグメントの売上・利益予想を見直したが(後述)、連結ベースでの売上高及び利益の予想に変更はなかった。

利益重視の観点からの選択と集中の結果としてカスタマーサポート事業の売上が減少するものの、その他の全セグメントで売上が増加する見込み。利益面では、富山BPOタウンの稼働に伴う減価償却費の増加(2億円)に加え、人員増強や拠点拡充等、ロードアシスト事業やプロパティアシスト事業におけるフィールドワーク専門子会社への先行投資も増加するが、増収効果で吸収して増益基調を維持する。営業外では、持分法投資利益1億50百万円を織り込んだ(前期の実績は1億50百万円)。

対ドル為替レートは若干の円高を前提としている(15/3期120.17円→16/3期119.96円)。設備投資は、富山BPOタウン第2期工事6億円の他、秋田BPOキャンパスリニューアル費用やシステムの更新費用等で12億円を予定(前期は30億43百万円)。減価償却費は9億24百万円(同6億99百万円)を織り込んだ。

配当は、1株当たり上期末配当を1円増配し、上期末6円、期末6円の年12円を予定している。
 
 
ロードアシスト事業は既存業務の増加と新規業務で売上・利益共に期初予想を上回る見込み。一方、プロパティアシスト事業は、人材確保の遅れを踏まえてパークアシストの見直しを下方修正した。コールセンターやフィールド子会社への成長投資は期初の計画通りに実施する考え。インシュアランスBPO事業は上期の傾向を踏まえて新規案件の見通しを下方修正する一方、富山BPOタウンの負担を増額修正した。上期好調だったワランティ事業は売上・利益を上方修正。ITソリューション事業は子会社事業の見通し引き下げを反映した。カスタマーサポート事業は、カード、カスタマーコンタクトサービスの見通しを引き上げた事に伴い売上予想を上方修正したものの、カスタマーコンタクトサービスの富山BPOタウンへの移管コスト増等で営業利益予想を下方修正した。派遣・その他事業も、人材派遣の堅調な伸びを反映して売上予想を上方修正したものの、研修事業の見直しに伴い営業利益予想を下方修正した。
 
(3)経営課題と戦略
同社は「人財の確保」と言う大きな経営課題に直面している。景況感の改善でBPO拠点の所在地地域での有効求人倍率が上昇しており、採用環境が悪化している。特に進出して間もない富山は北陸新幹線の開業に伴いホテルや飲食と言ったサービス業での求人が増加しており、人財確保が難しくなっている。このため、富山BPOタウンの16/3期末の従業員目標を300名から200名に引き下げた。
 
 
人事戦略
地域正社員登用の促進  :地域での安定した雇用の提案
地域に愛される環境創り :スポーツ事業の活用

人事戦略の骨子は上記の2点。正社員転換制度により契約社員の地域限定正社員への登用を促進する事で地域での安定した雇用を提案すると共に、スポーツ事業を活用して地域に愛される環境創りに取り組んでいく考えだ。
 
地域正社員登用の促進
地域と共に繁栄できるグローバルカンパニーを目指し、成長戦略の一環として無期雇用化を促進している。同制度は、契約社員として2年間経過する社員を対象に、勤務実績・能力・適正等の判断基準を基に地域限定正社員として登用するものである。今回は、15年10月1日から16年3月31日にかけて、有期契約社員339名を無期雇用の地域限定正社員として雇用転換する予定。
 
 
地域に愛される環境創り
2015年4月に地域を元気にしたいという想いから、同社は女子スポーツ実業団チーム「Aranmare」を設立した。現在は秋田BPOキャンパスでバスケットボール、山形BPOガーデンでバレーボールの活動を行っている。富山BPOタウンにおいても2015年11月19日にハンドボールチームを設立することを発表し、2017年4月に活動を開始する予定である。各チームの選手は、1日8時間のうち、午前中の4時間は社員として通常業務に従事し、残りの4時間を選手として活動する。地域のスポーツ教室の開催や地域イベントへの参加等を通じて、地域との一体感の醸成を目指している。
 
 
 
今後の注目点
同社の玉上社長は11月9日の上期決算説明会で「伸び代は大きいが、リスクも顕在化してきた」と上期決算を総括した。事実、主要事業が揃って高い売上の伸びを示しており、確かに伸び代は大きそうだ。特にインシュアランス事業は、毎期5~6社のペースで顧客が増えており、既に顧客ポートフォリオは50社程度に膨らんでいるようだ。国内の人口が頭打ちから減少に向かう中、損害保険業界はもちろん、自動車業界や住宅・不動産業界等も、収益源の多様化を図るべく、サービスラインナップの拡充に力を入れている事がその要因。同社のように、安心してフィールドサービスを任せる事ができる企業が必要になるからだ。
ただ、こうした需要に対応するためには人財が必要。有効求人倍率の上昇は既に説明した通りだが、実際、同社においてもその影響が出ており、上期に秋田、山形で採用した人財は前年同期の50%にとどまった。また、進出して間がなく、地元地域での認知度が高まっていない富山BPOタウンについては期末予定人員を期初計画の2/3に引き下げた。上期は想定以上のサービス利用ニーズで売上が上振れする一方(残業や休日出勤等で対応した)、採用人員が計画を下回った事で採用・教育費が下振れしたため利益が期初予想を上回った。しかし、中長期で投資家の期待に応えていくためには、人財を確保して旺盛なアウトソーシングニーズを余す事無く取り込んでいく必要がある。人事戦略として示された①地域正社員登用の促進(地域での安定した雇用の提案)と②地域に愛される環境創り(スポーツ事業の活用)という2つの戦略の進捗に期待したい。
尚、仮に第3四半期以降、採用が進むと、採用・教育費が増えて利益を圧迫する事になる。このため、16/3期下期の見通しは慎重なものとなった(更なる売上の上振れで吸収できるかもしれないが)。