ブリッジレポート
(8912) 株式会社エリアクエスト

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ブリッジレポート:(8912)エリアクエスト vol.19

(8912:東証2部) エリアクエスト 企業HP
清原 雅人 社長
清原 雅人 社長

【ブリッジレポート vol.19】2016年6月期上期業績レポート
取材概要「上期の業績が大きく上振れしたものの、通期予想を据え置いた。ストック収入型ビジネスがけん引する同社の収益構造を考えると、下期に先行投資・・・」続きは本文をご覧ください。
2016年3月1日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社エリアクエスト
社長
清原 雅人
所在地
東京都新宿区西新宿六丁目5番1号 新宿アイランドタワー7階
決算期
6月 末日
業種
不動産業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2015年6月 1,498 188 183 140
2014年6月 1,147 100 102 143
2013年6月 819 49 50 37
2012年6月 646 4 5 19
2011年6月 595 -45 -43 -50
2010年6月 735 12 14 3
2009年6月 879 -182 -179 -381
2008年6月 1,015 -311 -307 -556
2007年6月 1,530 -95 -94 -118
2006年6月 1,580 18 18 -139
2005年6月 2,091 240 236 189
株式情報(2/25現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
97円 22,500,000株 2,183百万円 17.7% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
2.00円 2.1% 9.77円 9.9倍 48.10円 2.0倍
※株価は2/25終値。
 
エリアクエストの2016年6月期上期決算について、同社代表取締役社長 清原 雅人氏 講演(2月20日開催 ブリッジサロン)の概要と共に、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県の駅前商業地において、サブリースやビル管理・メンテナンス(清掃、設備保守、警備管理等)を中心に売買仲介や契約更新・契約管理等も手掛ける「ストック収入型ビジネス」と、テナント誘致等の「成功報酬型ビジネス」を展開。グループは、グループマネジメントが中心の同社の他、テナント誘致等を手掛ける(株)エリアクエスト店舗&オフィス、ビル管理等の(株)エリアクエスト不動産コンサルティングの連結子会社2社。「エリアクエスト」と言う社名には、「地域に根差して(エリア)、不動産の価値を追求する(クエスト)」と言う思いが込められている。
 
【沿革】
創業者である清原雅人氏(1991年4月、明治大学法学部卒業)が野村證券(株)を経て、1998年4月に友人と起業。2000年1月に独立してエリアリンク(株)を設立し、01年3月に社名を(株)エリアクエストに変更した。
 
2000年1月 会社設立テナント誘致事業開始
2003年2月 東京証券取引所マザーズ上場
2003年3月 ビル管理事業開始
2006年6月 赤字転落
2007年7月 更新及び契約管理事業開始
2011年5月 サブリース事業、パノラマクリーニング開始
2012年6月 黒字化
2014年11月 東京証券取引所2部上場
 
 
 
代表取締役社長 清原 雅人氏 講演 (2016年2月20日開催のブリッジサロンを要約)
 
【1都3県の駅前商業地においてテナント誘致に強いビル管理サービスを提供】
 
特徴1 ビル管理事業 
   (サブリース事業含む)
パノラマクリーニングによる清掃業務は「顧客満足度No.1」を自負
特徴2 更新及び契約管理事業 
   (売買仲介部門含む)
トラブルの未然防止と、トラブルが起きてしまった場合の迅速対応
特徴3 テナント誘致事業 ビル管理事業とのシナジー
 
競合が少ない商業ビル特化の更新・契約管理及び仲介
当社は、アパートやマンション等の住居系不動産は手掛けず、JR及び私鉄主要駅の駅前に立地する商業ビルに特化して、ビル管理、売買仲介を含む更新・契約管理、及びテナント誘致事業を手掛けている。住居系不動産の同業務を手掛ける不動産会社は、テレビCMでよく目にする大手に加え、中小の不動産会社など数多いが(身近にある駅前不動産はこの分類)、当社のように商業ビル特化型の不動産会社は希少性が極めて高い。
 
創業事業であるテナント誘致が強みに
当社がターゲットとする規模の商業ビルでは、管理にせよ、テナント付けにせよ、ビルオーナー等と付き合いのある駅前不動産等が強かった。しかし、小売りの現場において全国規模でチェーン展開する小売業者が優勢な昨今、こうした不動産業者はテナント確保で苦戦するケースが目立つようになってきた。一方、テナント誘致は同社にとって創業ビジネスであり、コーヒーチェーン、ドラッグストアチェーン、居酒屋チェーン等の出店需要を取り込み、会社設立から3年の2003年2月にマザーズ上場を果たし、04/6期に過去最高となる経常利益4億03百万円を計上した。当社は独自に分類した63業種・約3,000社の店舗テナントをデータベース化しており、物件毎にチームを組んで複数の社員がテナント誘致に従事しており、他社が一朝一夕に真似できるものではない。
 
唯一の上場企業としての圧倒的なパワー
最高益更新後は、収益構造改革に伴う苦しい時期があったが、これを乗り越えて、今16/6期は5期連続の増収・増益が見込まれる。安定収益を生むストック収入型ビジネスの好調を考えると、達成はほぼ確実と言える(上振れ期待が大きい)。業績の急拡大は偶然の結果ではなく、根拠がある。具体的には、競合が減った事、そして仮に競合したとしても、この分野で唯一の上場企業としてのパワーと積み重ねてきたデータベース及びノウハウで圧倒できるからだ。しかも、ビル管理(メンテナンス)も手掛けているため、ビルオーナーにワンストップの利便性も提供できる。
 
事業間シナジーの追求
テナント誘致は他のサービスと独立して提供されるのではなく、他のサービスと密接に関係している。当社は、テナント誘致事業部(テナント誘致)、更新及び契約管理事業部(トラブルの未然防止・解決)、ビル管理事業部(日常対応・設備等臨時対応)、の3事業部による三位一体型の管理サポート(テナント誘致力・トラブル対応力・設備対応力)を特徴としている(上記部門毎に担当を配し、3事業部が連携して対応している)。こうした事業間シナジーに、「パノラマクリーニング」と言う“日本一”を自負する清掃サービスを加える事で、ビルオーナーの心をつかみ、サブリース契約につなげている。
 
(参考)「パノラマクリーニング」とは、清原社長が自ら作成したビル清掃業務の作業指示と結果報告システムである。パノラマスケッチ、項目指示書、抜き打ちチェック、及び月次報告書からなり、パノラマスケッチに基づく丁寧な清掃作業と詳細な業務報告がビルオーナー等から高い評価を得ている。
 
パノラマスケッチ、項目指示書、抜き打ちチェック、月次報告書を特徴とする「パノラマクリーニング」
パノラマスケッチ
建物共用部全体のスケッチを作成し、清掃箇所を明記。これを利用する事により、オーナー、清掃員、同社が何処を清掃するかひと目で理解できる。
項目指示書
清掃箇所毎に作業項目(何処を、何曜日に作業するか)を設定し一覧化。
抜き打ちチェック
同社社員が不定期に清掃チェックを実施。チェック箇所を写真に撮り毎月提出。
月次報告書
パノラマスケッチ、項目指示書で明確にした清掃箇所について、抜き打ちチェック時に撮影した写真を添付して毎月、月次報告書を提出します。共用部の使用状況も報告。
 
共用部分の不正使用や設備面でのトラブルにも迅速に対応しサービス領域を拡大
清掃にとどまらず、消防法上問題となる共用部分の不正使用等、ビルオーナー等の貸主共通の悩み事の解決や対応した事に加え、漏水を含む水回り、電気、空調、ガス、エレベーターといった設備面でのトラブル等に対しても、連絡を受ければ即時対応(問題が発生すれば、いち早く駆けつけ)で臨んだ事がビルオーナー等の更なる評価につながった。
 
仲介、アフターフォロー、掃除・メンテナンスをワンセットで提供
 
サブリース物件の開拓が順調に進み、想定を上回るペースで収益が拡大しているため、先行投資を拡大させていく考えだ。この一環として、広告看板の設置を積極化している他、Webサイトのリニューアルも実施した。露出度向上による認知度アップとエリアクエスト・ブランドの刷り込みが目的である。また、サブリース物件の開拓を加速するべく、資産価値を高めるリノベーションサブリースの提案営業にも取り組んでいる。
 
(1)広告看板の設置で露出度向上
16/6期に入り、広告看板の設置を積極化している。「フロアに空きが生じた時等にエリアクエストを思い出してもらおう」という作戦であり、先ず、首都高3号線(用賀付近)、同5号線(池袋付近)、更には、同4号線(清原社長の母校明治大学泉校舎付近)に設置した。現在、オーナーの同意を得てサブリース物件150物件を含めた当社の管理物件300物件への広告看板設置を進めており、今後は袖看板を中心に設置を進めていく(既に50か所程度で内諾を得ていると言う。掲載料無料のため看板費用のみ)。
 
 
 
(2)Webサイトのリニューアル
2015年4月入社の新卒社員によるプロジェクトチームを結成し、ビルオーナーが管理を任せたくなるようなWebサイトを目指してリニューアルを実施した(2016年1月31日にリニューアル・オープン)。
 
 
賃料滞納解決  無料!
当社は、賃料査定を無料で行っている。独自の賃料決定メカニズムと豊富な実績に基づき、無料で賃料を査定する。テナント募集、賃料減額請求、賃料滞納、ビル売却時には先ず査定。全て無料で行っている。
 
賃料滞納解決  無料!
これまでの実績を基にした解決率は98.6%!他の不動産業者が仲介したテナント、または他社が管理をしているビルでも、無料で受ける。弁護士法に触れない使用代理の範囲内での対応ではあるが、他社は無料どころか、対応する事自体が不可能だ。
 
テナント管理  無料!
BM(ビル管理:清掃・エレベーター・法定点検)を同社に委託すると、PM(テナント管理)のサービスが無料で提供される。通常、BMとPMは別料金だが、顧客思いの当社は無料である。既に説明した通り、当社は、テナント誘致、更新及び契約管理、そしてビル管理が三位一体となったサービスを特徴としている。
 
建物調査    無料!
これは他社でも無料で対応している。専門家が、坪数の実測→建物躯体・設備のチェック→図面作成を無料で行い、不具合箇所の工事見積りも無料で提出する。
 
(3)リノベーションサブリースの提案営業を継続
当社はサブリース物件の獲得を加速するべく、地域特性や立地に応じて物件の用途や機能を変更して性能を向上させたり価値を高めたりするリノベーションの提案を合わせて行っている。サブリースの対象となる物件には、フロアの一部やフロア全部が不稼働になっているケースが少なくない。当社は、こうした不稼働部分の有効活用も含めてサブリースの提案を行っている。

不稼働部分は原状回復がなされていないケースも多く、稼働するに当たって必要となるリフォーム、或いは高熱水道関係の修繕や新たな敷設等も当社が対応し、費用も負担する(時には鉄骨を入れ補強等も行う)。ビルオーナーは自ら負担する事なく、資産価値を高めると共に安定収益を享受できるようになる。

ターゲットを一等地の物件に絞り込んでいるため、サブリースでビルオーナーを説得する事は簡単ではないが、こうした提案営業によってオーナー側のメリットを示す事で契約につなげている。一方、当社は先行投資負担を織り込んだ収益性を試算した上で提案を行っているため、テナントが埋まれば先行投資を吸収して確実に利益を上げる事ができる。
 
 
サブリース契約後のオーナーの満足度は高く、解約は物件の売却等を理由に年に1~2件あるかどうか(15/6期はサブリース売上高7億74百万円を計上したが、預り保証金の返還は187万円にとどまった:(株)インベストメントブリッジ補足)。
また、サブリースは、当然、空室リスクを伴うが、当社は、人の流れが多い一等地(乗降客の多い駅周辺)に絞り込む事で、リスクを極小化している。解約が発生しても、概ね1カ月程度で次のテナントが決まっている(テナントが解約する場合は、6か月前までに同社に連絡する必要がある)。駅前一等地(5万人以上の乗降客)はリーマン・ショック後もテナント需要に影響はなく、家賃も下がらなかった。逆に景気が良過ぎると、オーナーが強気になり、契約がまとまり難くなる。
 
 
中期事業計画
 
 
サブリースをけん引役に業容を拡大させていく考えで、当面の目標として18/6期に売上高25億22百万円、経常利益4億49百万円を掲げている。尚、上記計画に表向き変更はないが、実際には、足元の状況を鑑みて、ストック収入型ビジネスの計画を引き上げる一方、成功報酬型ビジネスの計画を引き下げた。

当期の配当は1株当たり2円を予定しており、過去最高と並ぶ。17/6期には売上高が過去最高を更新し、18/6期には経常利益が過去最高を更新する見込みだ。ストック収入型ビジネスの収益が中心になっているため、1年半程度先の業績までかなり高い精度で見通す事ができる事が当社の特徴だ。実際、現在は、期末に稼働する物件のテナント付けと17/6期後半から18/6期に稼働する物件の開拓に取り組んでいる。18/6期の計画の達成に自信を持っている。
 
 
株主還元も積極的に行っていく考えだ。当社の発行済み株式数は22,500千株である。このため、1円の増配に必要な資金は22,500千円。今期は1円増配の2円を予定しているが、新たに発生する配当負担は軽い。来期以降の利益計画と合わせて見てもらえば、配当余力が高い事がわかるだろう。現在の株価水準であれば、仮に毎期1円の増配を実施した場合、ゼロ金利でなくても、極めて魅力的な配当利回りになる。
 
 
15/6期までの計画と実績の推移をみると、ストック収入型ビジネスの営業が軌道に乗り始めた13/6期以降、売上面では常に期初予想(各期初の予想売上高は従前の中期事業計画の計画値と同じか、計画値を上方修正)を上回る実績を残しており、利益面では、上振れ分を先行投資に充てる事で予想に沿った実績を残してきた。安定した収益が見込めるサブリースの契約が着実に積み上がっている事と、有言実行となった過去3年間の実績を考えると、18/6期の計画を達成する確度は高そうだ。
 
 
2016年6月期上期業績
 
 
前年同期比26.0%の増収、同34.6%の経常増益となり、期初予想を上回る着地
人員増強による営業強化の成果もあり、ストック収入型ビジネスの核となるサブリースが拡大し、売上高が前年同期比26.0%増の8億97百万円と伸びた。利益面では、売上構成比の変化とリノベーションサブリースへの積極的な対応で原価率が1.9ポイント上昇したものの、増収効果で売上総利益が3億23百万円と同19.8%増加。求人費や広告宣伝費を中心にした販管費の増加を吸収して営業利益は1億26百万円と同32.1%増加した。
 
 
 
 
上期末の総資産は前期末に比べて4億25百万円増の26億15百万円。新規事業を念頭に置いた事業用不動産の購入に伴い有形固定資産が増加し(土地:2億27百万円→5億08百万円)、これに対応して長期借入金を積み増した。また、サブリースが順調に拡大し、長期預り保証金が増加した。自己資本比率41.4%(前期末45.1%)。
 
 
主に税引き前利益と減価償却費で前年同期の90百万円を上回る1億30百万円の営業CFを確保した。投資CFは、預り保証金の受入による収入1億01百万円等があったものの、事業用不動産の購入(支出額4億18百万円)等で3億34百万円のマイナスとなった。長期借入金の積み増しで財務CFは2億16百万円の黒字となった。
 
 
 
2016年6月期業績予想
 
 
通期で前期比20.1%の増収、同36.5%の経常増益予想。配当予想を、1円から2円に引き上げ
通期の業績予想に変更はなかった。前期までの契約でストック収入型ビジネスの売上は、ほぼ確定しており、先行投資を吸収しながらの、5期連続の増収・増益となる見込み。下期の営業は再来期を見据えた新規物件の獲得と、来期稼働物件のテナント誘致が中心になる。
 
(2)利益還元
配当は1株当たり2円の期末配当を予定している。期初予想は1円だったが、上期の業績が期初予想を上回り、下期もサブリースを中心に堅調な推移が見込まれる事から配当予想を引き上げた。
 
 
今後の注目点
上期の業績が大きく上振れしたものの、通期予想を据え置いた。ストック収入型ビジネスがけん引する同社の収益構造を考えると、下期に先行投資の積み増し等がなければ、通期の営業利益及び経常利益は3億円近くに上振れすると思われる(恐らく、利益の上振れ分は先行投資に充てるだろうが)。ちなみに、現在、新規物件については、オーナーとの契約が終わり、賃料を払いながらテナントを探している状態。言い換えると、新規物件の売上が上がらない中でコストが先行している状態で、これを吸収しての大幅な増益である。
尚、「現在の事業規模に対してマーケットが極めて大きいため、同社の業績が不動産市況の影響を受ける事はほとんどない」(清原社長)と言う(実際、100年に1度の不況と言われたリーマン・ショック時も影響を受けなかったそうだ)。中国をはじめとする新興国経済の先行き不透明感や金融市場及び為替市場での混乱等、マクロ面での懸念材料があり、国内景気への影響を通して同社の業績も影響を受けるのでは?と不安を持っていたが、ブリッジサロンでの清原社長の講演を聞き、表情を見ていたら、杞憂である事がわかった。しっかりしたビジョンを持ち、現状を冷静に分析し、過去の苦い経験を振り返った50分間の講演は興味深いものであり、社員と顧客を思いやり、そして株主を大切にする清原社長がそこにいた。