ブリッジレポート
(4849) エン・ジャパン株式会社

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ブリッジレポート:(4849)エン・ジャパン vol.47

(4849:JASDAQ) エン・ジャパン 企業HP
越智 通勝 会長
越智 通勝 会長
鈴木 孝二 社長
鈴木 孝二 社長
【ブリッジレポート vol.47】2016年3月期業績レポート
取材概要「同社の16/3期決算は、33.2%の増収、29.8%の営業増益と非常に好調な内容となった。同社では、好調の背景として、①構造的な要因(少子高齢化・・・」続きは本文をご覧ください。
2016年6月21日掲載
企業基本情報
企業名
エン・ジャパン株式会社
会長
越智 通勝
社長
鈴木 孝二
所在地
東京都新宿区西新宿 6-5-1
決算期
3月
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2016年3月 26,135 5,118 5,047 2,756
2015年3月 19,623 3,943 4,259 2,531
2014年3月 16,755 3,441 3,747 2,789
2013年3月 13,563 2,783 2,840 1,545
2012年3月 15,687 3,047 2,884 1,135
2010年12月 9,991 1,774 1,803 875
2009年12月 10,209 1,259 1,212 459
2008年12月 21,329 5,943 5,906 3,090
2007年12月 22,686 7,564 7,573 4,168
2006年12月 16,919 5,605 5,607 3,105
2005年12月 11,491 3,791 3,826 2,203
2004年12月 6,980 2,245 2,254 1,253
2003年12月 4,372 1,749 1,754 1,038
2002年12月 3,107 1,305 1,283 663
2001年12月 1,876 933 898 464
株式情報(5/27現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,903円 45,500,360株 86,587百万円 14.0% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
23.30円 1.2% 81.76円 23.2倍 460.56円 4.1倍
※株価は5/27終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
※2016年4月1日付で、普通株式1株につき2株の割合で株式分割。上記は分割後の数値。
※BPS、ROEは前期実績。
 
エン・ジャパンの2016年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
「人材採用・入社後活躍」を支援する企業として、採用事業のほか、顧客企業の社員に対する集合型研修サービスを中心とした教育・評価事業も展開。創業以来、「独自性」、「社会正義性」、「収益性」という考え方を背景に求職者に徹底的に尽くすというスタンスを貫いてきたことで優位性を確立。現在は、更なる成長を実現すべく人材紹介サービスと海外展開を推進している。より組織・事業にフィットした人材の採用から、入社後の活躍・定着までを一貫して実現するサービスを提供することで継続的な成長につなげていく考え。
 
 
※15年3月期より事業セグメントを「採用事業」及び「教育・評価事業」に変更。
 
 
 
 
 
ビジネスモデル
<求人情報サイト>
企業に対して求人広告を企画・提案。同社の社員が求人企業を取材し、その情報をもとに同社のコピーライターが求人原稿を制作した後、求人サイトに求人原稿を掲載。
課金形態は求人広告を掲載した際に「広告掲載料」が発生する掲載課金型求人広告が中心。
一部、求人広告を掲載し、同社求人サイトを通じて人材採用できた際に「成功報酬料」が発生する成功報酬型求人広告を提供。
(同社HPより)
 
 
<人材紹介>
求職者のこれまでのキャリアや転職意向を確認し、今後のキャリアプランに沿った求人を紹介。企業に対しては採用ニーズにマッチしていると思われる人材を紹介。紹介した人材が入社した際に「成功報酬料」が発生。報酬料は概ね年収の30%。
(同社HPより)
 
 
 
中期経営計画(16/3期~18/3期)
 
同社は、2015年5月に今後3ヵ年の中期経営計画を策定している。中期経営計画においては、①求人サイト、②人材紹介、③海外、④その他(新規事業を含む)の4分野を注力領域と掲げ、事業の拡大を目指す。最終年度である18/3期の数値目標は、売上高360億円(15/3期比84%増)、営業利益76億円(15/3期比93%増)。3ヵ年中計の最終年度で、過去最高の営業利益(2007/12期:75.6億円)の更新を目指している。
 
 
今後の注力領域
(1)求人サイト (18/3期業績計画:売上高180億円、営業利益42億円)
主力サイトである「エン転職」が最大の成長ドライバーであるが、その他サイトも安定成長を目指す。「エン転職」はサイトのリニューアルと営業体制の強化が奏功し足元の業績は好調に推移している。中でも、サイトのリニューアルは、掲載課金型求人広告件数の増加、顧客企業向けのサイト効果の向上(広告1掲載あたり応募数の増加)、ユーザー会員数の増加などに結びついている。エン転職が好調な今こそ投資を行い、今後の大きな飛躍につなげる。
(エン転職の今後の成長戦略)
 ① 営業体制の整備
・新卒社員を中心に営業人員数の拡大を図る。
・取材に基づいた詳細原稿は変えず、高いクオリティを維持した形で、代理店制を導入。
 ② 生産性の向上
・1営業人員あたりの業務工程を分業化し、営業に特化することで生産性を向上。
 ③ プロモーションの強化
・TVCM等オフラインプロモーションを強化し、更なるサイト価値向上を図る。
・16/3期は、全社ベースで前期比約1.6倍の広告宣伝を実施(2015年5月中期経営計画公表時)。営業面のバックアップを図り、エン転職の優位性を確立。
 
(2)人材紹介 (18/3期業績計画:売上高100億円、営業利益20億円)
エンワールド・ジャパン(EWJ)とエンエージェント等で売上高100億円を目指す。EWJは、外資系企業・グローバル人材領域でトップクラスの規模。採用・転職をする際に第一想起されるブランド力を有するものの、更なる成長には人員・システムの強化が課題。エンエージェントは、エン転職の求職者データベースを活かし、一定規模へ成長したものの、先行投資期間のため、収益面への貢献はこれから。
 
(EWJの今後の成長戦略)
 ① 独自の教育システムにより、競合他社と比べ人員増を優位に進める。
 ② 新たな成長領域である日系グローバル企業へ拡販。
 ③ システム関連への投資により更に高いフィッティングを実現。
 
(エンエージェントの今後の成長戦略)
 ① 16/3期に黒字化を実現。生産性を向上し、18/3期に営業利益率20%を目指す。
 ② エン転職とのシナジーを拡大。
 
(3)海外 (18/3期業績計画:売上高33億円、営業利益6億円)
18/3期は、15/3期比で売上高倍増、のれん控除後での利益貢献を目指す。海外子会社全体では、15/3期に黒字化を実現。現地企業や外資系企業の現地人材の転職支援において成果を上げている。
(海外の今後の成長戦略)
① 日系企業のアジア進出活発化に伴い、日系企業向けサービスを新たな成長機会にする。
② 進出国だけではなく、アジア全体での成長を目指すためグループ各国の連携を強化。共通のシステム導入などインフラ面を整備。
 
(4)新規事業
主力事業は景気変動の影響が大きい。市場環境の見通しが良好である今後数年の内に、新規事業のラインナップ拡充と採用以外の新規事業の創出を行い、事業ポートフォリオの安定化を目指す。
(新規事業例)
 
 
2016年3月期決算
 
 
売上高は33.2%増収、営業利益は29.8%増益
売上高は前期比33.2%増の261億35百万円(約65.1億円増)。主力のエン転職でリニューアル施策の浸透及びプロモーション強化が奏功し、販売拡大が想定以上に進んだ。その結果、第3四半期に更新した過去最高の納品掲載件数を第4四半期に大幅に更新し、売上高が大幅に増加した。また、人材紹介会社向け・人材派遣会社向け求人サイトの応募数も好調に推移した。人材紹介は、エンエージェントが順調に規模を拡大した一方で、エンワールド・ジャパンはスペシャリスト派遣事業の苦戦が影響し若干成長が鈍化した。海外子会社は、ベトナム及びインドにおいて人員の定着が進み、生産性が向上したこと、前期に比べて国内の政治・経済環境が改善したタイの子会社が好調だったこと等から、前期を大幅に上回る売上高となった。
利益面では、人員の増加や広告・宣伝費などを中心に費用(売上原価+販管費)が同34.0%増加したものの、増収効果により営業利益は同29.8%増加した。売上総利益率は前期比0.6ポイント上昇したものの、売上高対販管比率も同1.1ポイント上昇した。その他、前期に営業外収益で計上した為替差益(1.6億円)が当期は為替差損(0.6億円)に転じたことや、営業外費用で貸倒引当金繰入額(1.4億円)を計上した影響などにより経常利益の増益率が営業利益の増益率を下回った。また、非連結子会社2社(INNOBASE株式会社、エン・エグゼクティブサーチ株式会社)を吸収合併したこと等により、特別損失を5.3億円計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は同8.9%増となった。
配当は、16年4月に実施した1対2の株式分割を考慮したベースで、実質1.25円増配の17.25円の予定。
 
 
第4四半期にオンライン広告・CM等のプロモーションを積極的に実施した。
 
 
採用事業
当事業には、求人サイトの運営、人材紹介、海外子会社等が属している。求人サイトは、 主力のエン転職において、サイトの応募効果が好調に推移し、リピート受注及び新規求人広告の獲得が進んだ結果、下期に過去最高の掲載件数を更新し、売上が大幅に増加した。その他の求人サイトも、サイトリニューアルを実施したミドルの転職、エン派遣及びエンバイトの応募効果が向上し、各サイトともに前期を上回る好調な売上高となった。また、人材紹介は、エン・ジャパンの人材紹介であるエン エージェントにおいて、営業・コンサルタントへの教育体制を強化したこと等により生産性が向上し、売上が前期を大幅に上回った他、子会社のエンワールド・ジャパンにおいても、候補人材の獲得競争の激化はあるものの、国内外資系企業及び日系グローバル企業の旺盛な採用ニーズを背景に、売上が前期を上回った。更に、海外子会社においても、ベトナム及びインドの子会社において人員の定着が進み、生産性が向上したこと、前期に比べて国内の政治・経済環境が改善したタイの子会社が好調だったこと等から、売上が大幅に前期を上回った。
以上の結果から、採用事業セグメントの売上高は、252億49百万円と前期比33.3%増加した。また、人件費、プロモーション費用などを中心とした販管費が35.1%増加したものの、営業利益は52億20百万円と同32.1%の大幅増益となった。
 
 
採用事業の四半期売上高は、エン転職(求人広告)、その他求人サイト、エンワールド・ジャパンなどの拡大に加え、海外子会社の連結開始により、順調に拡大している。
 
 
エンワールド・ジャパンは、候補人材の獲得競争が激化しているものの、国内外資系企業及び日系グローバル企業の旺盛な採用ニーズを背景に前期を上回る売上高となった。しかし、メインビジネス以外のスペシャリスト派遣事業が苦戦した。グループ入り後、売上高・人員など事業規模は倍以上に拡大している。今後は更なる拡大を目指し体制を再強化する方針。
 
 
海外子会社は、ベトナム及びインドの子会社において人員の定着が進み、生産性が向上したこと、前期に比べて国内の政治・経済環境が改善したタイの子会社が好調だったこと等から、前期を大幅に上回る売上高となったものの、オーストラリアなど一部の国が苦戦したことなどから、利益は計画を下回った。
 
教育・評価事業
当事業には、定額制研修サービスの実施、採用・人事関連システムの提供等が属している。定額制研修サービスでは、リピート受注及び新規受注を強化したほか、派遣法改正に対応した人材派遣会社向けオンライン講座をリリースする等、サービスラインアップの拡充に取り組んだことが奏功し、前期比で売上高が増加した。また、採用・人事関連システムでは、子会社のシーベースにおいて引き続きリピート受注及び新規受注が進んだこと等から、前期を上回る売上高となった。
以上の結果から、16/3期期の教育・評価事業の売上高は964百万円(前期比29.0%増)となった。一方、営業利益は、新規事業開発等の先行コストの発生により101百万円(前期営業損失9百万円)の営業損失となった。
 
 
16/3月末の総資産は前期末比33億17百万円増の285億58百万円。資産サイドでは、現預金が、負債・純資産サイドでは、未払金や親会社株主に帰属する当期純利益の計上等による利益剰余金が主な増加要因。総資産の約70%を流動資産が占める等、資産の流動性が高い。自己資本比率も約73.4%と、高水準を維持している。
 
 
CFの面から見ると、法人税等の支払額の減少や未払金の増加などにより営業CFのプラス幅が拡大したことに加え、有価証券の売却による収入や子会社株式の取得による支出がなくなったことなどにより投資CFがプラスへ転じ、フリーCFも大幅なプラスとなった。一方、配当金の支払額増加などにより財務CFのマイナス幅は拡大した。
 
 
2017年3月期業績予想
 
 
前期比22.8%の増収、同12.5%の経常増益予想
17/3期通期の会社計画は、売上高が前期比22.8%増の321億円、営業利益が同11.4%増の57億円。
同社グループが属する人材ビジネス市場の環境は、生産年齢人口の減少や産業構造の変化等により、企業の採用需要は高い状況が続くものと予想される。こうした中、同社は求人サイト、人材紹介のユーザビリティ向上に注力し、質の高いサービス提供による競争力の向上に取り組む。また、引き続き積極的な広告宣伝費の投入により、サービスの認知度向上を図り、市場内でのシェア向上と各サービス領域における確固たるポジションの構築を目指す方針。
こうした中、売上面では、主力のエン転職に加えて、サイトの強化を行う派遣会社向け求人サイトが売上の増加を牽引する見込み。更に、人材紹介においてもエン エージェントの拡大とエンワールド・ジャパンのテコ入れによる拡大を計画している。
一方、利益面では、引き続き求人サイト拡大に伴う人件費の増加やプロモーション強化の継続により、営業利益の増益率は売上の伸び率を下回る計画となっている。売上高総利益率は前期比0.3ポイント低下の90.5%、売上高対販管費率は、1.5ポイント上昇の72.7%の計画。17/3期の広告宣伝費は66.4億円と16/3期から18.7億円(前期比+39.4%)増加する見込み。
また、17/3期の1株当たりの配当は、前期末から6.05円増配の23.3円の予定(16年4月1日付の普通株式1株につき2株の株式分割考慮ベース)。
 
 
 
 
 
今後の注目点
同社の16/3期決算は、33.2%の増収、29.8%の営業増益と非常に好調な内容となった。同社では、好調の背景として、①構造的な要因(少子高齢化に伴う就業者数減少)による継続した企業の採用需要の増加、②差別化要素を持ったユーザーファーストなサービスの提供がユーザーに評価されたこと、③プロモーション投資の強化により会員数が拡大したことと分析している。求人サイトのリニューアルと積極的なプロモーションが、会員数の増加と掲載件数の拡大に結びついており、同社の積極的な投資の成果と言えよう。
同社では、サービスの認知度を向上し、更なる市場でのシェアアップを加速することで各サービス領域において確固たるポジションを構築するため、17/3期においても積極的な広告宣伝費の投入を計画している。引き続き積極的なプロモーションが、どれ位のインパクトでエン転職の会員数の増加と掲載件数の拡大に結びつくのか楽しみである。さし当たり16/3期の第4四半期に実施したプロモーションが、17/3期第1四半期決算においてどの様な成果に結びつくのか注目される。
また、同社は17/3期に派遣会社向け求人サイトの強化を計画している。エン転職で成功を収めたサイト強化のスキルの高さを考えると派遣会社向け求人サイトにおいても相当高い成果を生むものと期待される。この強化がどのような形で業績拡大に結びつくのかこちらも注目したい。
更に、同社は前期、成長が鈍化したエンワールド・ジャパンのテコ入れを計画している。鈴木社長直轄のもと、各種の施策が打ち出される模様である。豊富な求人サイト会員数をいかにエンワールド・ジャパンの拡大に結びつけていくのか、今後の鈴木社長の経営手腕にも注目していきたい。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書
コーポレート・ガバナンス・コード適用以降のコーポレート・ガバナンス報告書提出日、2015年11月16日。

<基本的な考え方>
当社は、当社の人材に係る事業を通じて、株主やクライアントなど様々なステークホルダーをはじめ、広く社会に役立つ存在でありたいと考えております。そのために、経営環境の変化に対応できる組織体制を構築することを需要な施策と位置付けており、当社の健全な成長のため、コーポレート・ガバナンスの強化と充実を図り、公正な経営システムづくりに取り組んでおります。
また、当社社員の倫理観・誠実さを高めることは、様々なステークホルダーの真の信頼を得るうえで、基本的な前提となると考えております。当社の経営理念の一つに、社会に対して正しいことを行い、社会に役立つ存在たることが当社の存在意義であることを謳った「社会正義性」があります。今後もこの理念・考え方を当社役職員の行動の支柱据えて、コンプライアンスに関する教育の徹底等内部管理体制の更なる整備を進め、これを適正に機能させることによって、健全な経営を確保してまいります。

<コーポレート・ガバナンス・コード各原則の実施について>
ジャスダック上場企業として、基本原則をすべて実施している。

<その他>