ブリッジレポート
(1433) ベステラ株式会社

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ブリッジレポート:(1433)ベステラ vol.8

(1433:東証1部) ベステラ 企業HP
吉野 佳秀 社長
吉野 佳秀 社長

【ブリッジレポート vol.8】2019年1月期第2四半期業績レポート
取材概要「上期は前年同期比減収・減益となり、通期予想に対する進捗率も、売上高41.4%(通期実績ベースの前年同期47.6%)、営業利益33.1%(同42.3%)・・・」続きは本文をご覧ください。
2018年9月26日掲載
企業基本情報
企業名
ベステラ株式会社
社長
吉野 佳秀
所在地
東京都江東区平野三丁目2番6号 木場パークビル6F
決算期
1月末日
業種
建設業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2018年1月 4,496 386 373 263
2017年1月 4,182 397 404 271
2016年1月 3,846 447 464 292
2015年1月 3,060 384 388 219
2014年1月 2,056 176 178 110
株式情報(9/11現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,288円 8,226,900株 10,596百万円 11.7% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
15.00円 1.2% 34.24円 37.6倍 260.17円 5.0倍
※株価は09/11終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
ベステラの2019年1月期上期決算の概要と通期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
プラント解体のスペシャリストとして、製鉄、電力、ガス、石油等、プラント(金属構造物)の解体工事をマネジメントしている。"プラント解体の工法・技術"をコア・コンピタンスとし、国際特許も含めた21件(この他、申請中7件。2018年3月21日現在)の特許工法を有する。エンジニアリング(提案・設計・施工計画)とマネジメント(監督・施工管理)に経営資源を集中しており、実際の解体工事は協力会社に外注するため、工事用重機や工事部隊を保有せず(資産保有リスクを回避)、材料等の仕入・生産取引も発生しない(在庫リスクを回避)。社名の「べステラ(BESTERRA)」は英語の「Best(goodの最上級)」とラテン語の「Terra(地球)」を合わせたもので「素晴らしい地球を造っていこう」という思いが込められている。
 
【企業理念・行動規範】
「柔軟な発想と創造性、それを活かした技術力により地球環境に貢献します」という企業理念の下、下記の行動規範を掲げている。
 
行動規範
プロとしての責任を果たします。
我々は常に新しい技術を生み出し、「安全を何よりも優先」し、「より早く、より安く、より安全に」を合言葉に
さらに安心を加えて、お客様に提供します。
 
 
【事業の特徴】
プラント解体事業が売上高全体の98%以上を占める(この他、人材サービス等を手掛ける)。プラントの解体工事は、製鉄・電力・ガス・石油等のプラントを有する大手企業が施主であり、多くの場合、施主系列の設備工事会社あるいは大手ゼネコンが工事を元請けし、同社が一次下請け、二次下請けとなっている。18/1期の顧客業種別完成工事高(構成比)は、電力22%(17/1期20%)、鉄鋼37%(同56%)、石油・石化27%(同15%)、ガス13%(同5%)、その他1%(同4%)。
尚、工事の施工に必要な重機や職人は直接保有しないファブレス経営を徹底している(複雑な構造を持つプラントのどのような設備に対しても柔軟に対応できる)。
 
 
工事の進行に伴って発生するスクラップ等の有価物は、同社が引き取ってスクラップ業者に売却する。このため、同社は受注に際して有価物の価値を、材質、量、価格(鉄、ステンレス、銅等の材質毎の相場)等から総合的に見積り、それを反映した金額で交渉し、請負金額を決めている。会計上、有価物の売却額は解体工事に伴う収益の一部と位置付けられており、完成工事高に含めて計上している。尚、発注者(施主)が独自でスクラップ等の処分(売却)を行う事もある。
 
 
【強み -優良な顧客基盤、豊富な工事実績に基づく効率的解体マネジメント、特許工法等の知的財産-】
強みは、優良な顧客資産、豊富な工事実績に基づく効率的解体マネジメント、及び特許工法等の知的財産。顧客は、製鉄、電力、ガス、石油等の大手企業のエンジニアリング子会社等、与信の不安がない優良顧客であり、中長期にわたり継続して受注が見込める。これら優良企業から、約40年間の実績に裏打ちされたプラント解体のトータルマネジメント(低コスト・高効率)が高く評価されており、参入障壁になっている。更に、環境対策工事等で蓄積してきた様々な技術やノウハウも強みであり、発生材の再資源化も含めて、顕在的・潜在的な知的財産となっている(特許取得済14件、同申請中7件)。
 
※ 2つの収益計上基準と同社収益計上の季節性について
工事契約における収益の計上基準には、工事が完成した時に収益を計上する完成基準と工事の進捗に応じて収益を計上する進行基準がある。スクラップなど有価物の引き取りがあるプラント解体工事は工事の収益が最終のスクラップ売却時まで確定しないため、同社においては、請負金額50百万円超、工事期間3ヶ月超の大型工事について原則工事進行基準を適用しており(18/1期以降)、上記に該当しない工事については完成基準を適用している。完成基準適用工事の収益計上(完工)時期は顧客(施主)の設備投資計画の影響を受ける事が多く、同社の場合、第1四半期(2月~4月)と第4四半期(11月~1月) に収益が計上される割合が高い(収益計上の季節性)。しかし、四半期業績の変動が投資家をミスリードする可能性があるため、同社は工事進行基準の適用範囲を段階的に広げており、収益計上の平準化に継続的に取り組んでいる。
 
 
中期経営計画(19/1期~21/1期)
 
 
同社の中期経営計画は経営環境の変化等に柔軟に対応するためローリング方式が採用されており、毎期、見直し・改定が行われている。18/1期(中期経営計画:18/1期~20/1期)は、成長戦略の推進、制度・仕組みの革新、新しい社会価値の創造、及びM&A等の提携促進、という4つの課題に取り組んだが、着工・完工の遅れ、人材採用の未達と育成の遅れ、及び新規事業の伸び悩みにより、売上高・利益共に計画値(期初予想)を下回った。この結果を踏まえ、19/1期は、収益構造改革と人事構造改革に取り組むと共に、改めて3D事業の価値を追求する。また、M&A等による資本提携を積極的に進める。
 
【19/1期の取り組み 収益構造改革、人事構造改革、3D事業の価値追求、M&A戦略】
収益構造改革
受注案件数・規模の拡大、工法の充実、及び営業力強化に取り組んでいく。
 
受注案件数・規模の拡大
下記の通り、電力、鉄鋼、石油・石油化学、及びガスその他の分野毎にターゲットを定め個別戦略を推進する。
 
 
<電力業界>
ターゲットは、環境負荷が大きい火力発電分野。ボイラ、煙突、タンクの解体での豊富な実績と独自の特許工法を強みに解体需要を取り込んでいく。
 
<鉄鋼業界>
粗鋼生産の4分の3を高炉メーカーが占め、4分の1を電炉・単圧等のメーカーが占めるが、同社は高炉、電炉、単圧等、全てのメーカーと取引実績がある。高度経済成長期に建設された溶鉱炉(コークス炉)が今後10年以内に改修時期を迎える事に加え、高炉各社は価格競争力強化のため生産拠点の集約と集約先の設備強化を進めている。同社は特許工法やこれまでに培ってきた安全かつ効率的な解体工事を強みに解体需要を取り込んでいくと共に、3D技術を用いた工事の提案にも力を入れる。
 
<石油・石油化学業界>
国内の製油所は14地域に22箇所あるが、人口減少や低燃費自動車の普及に加え、燃料転換等もあり、需要減少が続いている。このため、石油・石油化学業界は企業再編や設備縮小等の対応に迫られており、政府もエネルギー供給構造高度化法や産業競争力強化法等で再編を後押ししている。また、国内9地域に15箇所の石油化学コンビナートも、コスト競争力や規模の面で海外勢に押されており、企業再編や設備縮小等の必要に迫られている。同社は、製油所やエチレンプラントに加え、川下のプラント設備の解体でも豊富な実績を有することを強みに解体需要を取り込んでいく。具体的には、いわゆる「太平洋ベルト地帯」と呼ばれる港湾地域に事業所を設置し、独自の解体技術の提案営業に注力していく。
 
工法の充実
コスト競争力を有する「リンゴ皮むき工法」及び「りんご☆スター」(タンク類の解体)、独自の無火気工法(トランス等の電力関係設備)、国際特許として申請中の発電用風車解体工法(風力発電)等、競争力のある特許工法による解体方法を提案し、実用化に繋げていく。
 
<「リンゴ皮むき工法」と溶断ロボット「りんご☆スター」>
「リンゴ皮むき工法」とは、ガスホルダーや石油タンク等の大型球形貯槽の解体において、リンゴの皮をむいていくように、外郭天井部の中心から渦巻状に切断する工法。切断された部分は重力に従って、渦巻きを描きながら徐々に地上に落ちていく。工期、コスト、安全性に優れ、競合優位性の高い工法であり、「より早く、より安く、より安全に」を実現する。また、「リンゴ皮むき工法」を自動化する溶断ロボット「りんご☆スター」も提供している。
 
<環境関連工法>
火気を使用しない「無火気工法」により、数々の環境関連工事の実績を重ねている。例えば、PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、現在、有害物質として全廃されているが、優れた熱安定性や化学的安定性(電気絶縁特性)から、長年、トランス(変圧器)やコンデンサ(蓄電器)に使われてきた。プラントの解体時にトランスやコンデンサを処理するケースが多いが、PCBを高温で処理するとガス化するため吸引する恐れがあり、解体・撤去に際して火器(ガス溶断等)が使えない。同社はセーバーソー(往復運動する鋸刃により切断する)等による無火気工法・準無火気工法を得意としており、モーター焼きつき対策や刃を再生利用する等の工夫で業界常識を超える厚みを切る事が可能だ。
 
<風車解体工法>
同社の資料によると、世界の風力発電量は486,790MWと年率約20%の成長を続けており(陸上約340,000基、洋上約4,000基)、国内でも2017年末で2,225基を数え、毎年約90基のペースで増加している。一方、耐用年数は15~20年程で初期に設置された発電用風車は使用限界を迎えている。また、落雷・台風等により破損や致命的な故障が起きて解体が必要となっている機体も少なくない。発電用風車の解体は、通常、支柱の外側に足場を組んで行われるが、山岳部や洋上等にも設置されているため、解体の難易度は高い。同社は、足場を必要としない風車解体工法を考案し、「発電用風車の倒し方法(国際出願)」、「基礎部を活用した搭状構造物の倒し方法」、及び「塔型風力発電設備の解体方法(国際出願)」として特許を出願中である。これらの特許に基づく工法を使う事で、作業員の安全性が飛躍的に向上し、工期も短縮できる。
 
 
営業力強化
元請工事の比率を高めると共に営業拠点を拡充する。現在、同社は、元請会社からの1次請けの受注割合が多いが、直接受注を増やし元請工事の比率を高め、収益率の向上につなげる。このため、展示会への出展に加え、ホームページ、販促物、各種メディア等、広告媒体の充実に取り組む。また、ストック型(顧客グループ単位からの継続的受注や構内常駐等)案件の受注拡大のため、京浜地区及び仙台の工業地帯での拠点開設も検討していく。18/1期末現在の拠点は、東京本社(18/1期売上高35億61百万円)、JFE千葉港内事務所(千葉県千葉市、同5億50百万円)、千葉事務所(千葉県市原市、同2億21百万円)、西日本事務所(広島県福山市、同1億64百万円)。
 
人事構造改革
解体工事の施工管理に特化している同社は全ての工事に監督を配置する必要がある。持続的成長には工事監督の増員が不可欠だが、建設技能労働者は慢性的に不足している。このため、完全週休2日制を導入すると共に育成プログラムの確立に取り組み、採用と育成を強化する。完全週休2日制の導入にあたり、「マネジメント層によるシフト(時間)管理」と「現場(労務)ローテーション」を強化し、余裕のある働き方による工事品質の向上を図っていく。一方、育成プログラムの確立では、工事監督の実態に即した評価を念頭に、工事専門職コース及びマネジメント職コースの導入と資格取得推進制度の拡充により、個人の働き方を重視した人事制度を策定・運用していく。また、経験豊富な技術者から経験の浅い技術者への技術継承制度「育成プログラム」も推進していく。
 
 
3D事業の価値の追求
解体工事に伴う3D計測・データサービスの提供(3D解体シミュレーションの強化)と現場3Dデータ活用サポート(リモートサポート導入)により、プラント解体工事業の付加価値として3D技術を活用していく他、3D計測技術と解体計画・ロボット・マニピュレータの制御技術を組み合わせて原子力廃炉分野に参入する。
3D解体シミュレーションの強化の一環として、大規模設備見積り時の3D計測サービス及び設備改修に伴う解体計画作成サービスを提供する。3Dレーザー計測は精度の高い解体計画と見積り書の短期間での作成を可能にする上、設備改修に伴う解体作業の際には、3D-CADによる重機や機器入替作業・干渉シミュレーションを実施・提供できる。また、リモートサポートを導入し、現場での3Dデータ活用を本社からリモートサポートする体制を整える(これまで3Dデータを現場で利用する際には、ソフトウェアの習熟やPCスペックの制限等から3D技術者を常駐させる必要があった)。
更に、3D技術とロボティクスを融合し、原子炉の廃炉分野にも参入する。遠隔解体ロボット「りんご☆スター」で実績のあるロボティクス(ロボット工学)と3D技術を融合し、ロボット等によって取得した各種3Dデータを廃炉となる原子力発電所の解体に活用する自律・遠隔解体技術の確立に取り組んでいく。
 
M&A戦略
事業規模の最大化と革新的な新サービスの開発を念頭に、プラント解体事業における設計、クラウド、ロボット等の関連性の高い分野、人材サービス事業分野、及び3D計測・BIM・CIM分野で、業務提携やM&Aに積極的に対応していく。2018年3月には、機械・電気計装・制御・システム・デザイン等の技術支援(人材サービス)を手掛ける(株)ヒロ・エンジニアリングを連結子会社化した他、7月に原子力発電所の廃炉関連ビジネスの競争力強化を目的に(株)日立プラントコンストラクションと、プラント設備解体事業に関して9月に第一カッター興業(株)と、それぞれ業務提携契約を締結した。
 
【利益配分方針・株主還元】
既に説明した通り、「将来の成長への投資」と「事業基盤強化のための内部留保」に配慮しつつ、配当性向40%を目途に配当を実施していく考え。
 
 
2019年1月期上期決算
 
2018年3月30日付けで(株)ヒロ・エンジニアリング(東京都新宿区、代表取締役社長 戸坂 功)を子会社化(議決権の90%を45百万円で取得)した事に伴い、19/1期より連結決算に移行した。
(株)ヒロ・エンジニアリングは、航空・宇宙・プラント・産業機器業界等向けの機械・電気計装・制御・システム・デザイン等の技術者派遣を中心に事業展開しており、ベステラ(株)が原子力発電所向け3D計測を実施した際に高度な人材の提供と技術支援を受けた。高度な技術や人材サービスのノウハウを、ベステラ(株)のサービス品質の向上や技術労働者の確保につなげていく考え。
 
 
前年同期の非連結決算との比較で1.4%の減収、同14.3%の営業減益
売上高は前年同期の非連結売上高との比較で1.4%減の21億10百万円。このうち完成工事高は同3.3%減の20億34百万円。プラント解体工事は順調だが、顧客の要望による追加工事への対応で完工が下期にずれ込んだ案件が発生した。業界別では、電力やガスが伸びた他、高炉の解体案件で製鉄も増加したが、エチレン製造設備の工事一巡で石油・化学が大きく減少した。
 
営業利益は同14.3%減の1億39百万円。上記の要因による完工の遅れで売上が一時的に伸び悩む中、工事監督の育成に力を入れているため人件費(売上原価に計上される)が増加し売上総利益率が18.6%と0.1ポイント低下。3D計測関連の研究開発投資や元請工事の拡大に向けた広告宣伝(展示会出展)等の戦略的事業投資に加え、本社移転費用の計上もあり、販管費が同6.1%増加した。工事監督は通期で8名の増員を予定しており、上期決算発表日現在(2018年9月7日)、3名増の32名。計画達成に向け、引き続き積極的な採用活動を行っていく考え。また、中期経営計画の進捗に伴う規模拡大と人員増加に備え、2018年8月に本社を移転した。
 
受注工事高は前年同期にあった長期大型工事(12億40百万円)の反動で11億63百万円と同55.7%減少。この影響と工事が順調に進捗した事で上期末の受注残高も、13億46百万円と同52.4%減少した。下期は製鉄や電力を中心に受注が伸び、通期の受注工事高は前期比で増加する見込み。
 
 
 
 
 
 
 
前期末の非連結の財政状態との比較で連結資産合計は35億66百万円と3億39百万円減少した。売上債権の回収が進む一方、未払金の決済、配当金・法人税等の支払い、自己株式の取得等で現預金が減少した。自己株式の取得については、2018年4月17日から6月15日にかけて、普通株式128,700株を2億円弱で取得した。自己資本比率60.0%(前期末の非連結自己資本比率59.7%)。
 
 
(3)株式会社日立プラントコンストラクションとの原子力発電設備解体事業に関する業務提携
2018年7月6日、原子力発電所の廃炉関連ビジネスにおける競争力強化を目的に、株式会社日立プラントコンストラクション(株式会社日立製作所100%子会社)と業務提携契約を締結した。
 
(株)日立プラントコンストラクションは、日立グループのプラント建設会社。原子力分野では、沸騰水型原子炉を中心に原子力発電設備やその他の主要設備の施工及び予防保全サービス事業を手掛けており、原子力発電や放射線に関する高い専門知識を有する。また、プラント等の解体工事も手掛け、大型バンドソー機器等を使った工事技術等を強みとする。
(株)日立プラントコンストラクションが有する原子力発電設備の解体工事に係る実績や経験と、ベステラ(株)が持つ独自の解体技術を組み合わせ、今後、増加が予想される原子力廃炉関連案件の取込みにつなげていく考え。ベステラ(株)は今回の提携により、(株)日立プラントコンストラクションの営業力と顧客基盤を、原子力発電や放射線に関する高い専門知識、更には現場管理のノウハウ等と共に取り込む事ができる。
 
日本には19ヶ所60基の原子炉があるが、このうち22基は既に廃炉が決定している。新規制基準適合性の審査が進み、更に廃炉となる原子炉の増加が予想され、廃炉ビジネスの拡大が期待されている。ただ、原子力発電設備の解体作業については、放射線による被ばくを防止しながら効率的な解体工法が求められ、難易度が高い。廃炉に当たっては、先ず原子炉の周辺設備を解体する必要があり、周辺設備の解体が徐々に始まる見込みで、株式会社日立プラントコンストラクションとの提携効果が顕在化してくる。
 
 
 
2019年1月期業績予想
 
 
通期予想に変更はなく、前期比13.4%の増収、同9.3%の営業増益予想
「計画通りに順調に進捗している」として通期予想に変更はなかった。下期は、ずれ込み案件が完工し売上計上される事に加え、前年同期にあった長期大型工事の反動で上期は減少した受注が製鉄・電力を中心に伸びる。この結果、通期の売上高は前期比13.4%増の51億円が見込まれ、大型チャレンジ案件の影響がなくなる事もあり、原価率も0.3ポイント改善する見込み。売上総利益が同15.0%増加し、人材投資(人員増)や3D計測事業への研究開発投資等の先行投資による販管費の増加を吸収。営業利益が4億22百万円と同9.3%増加する見込み。
 
配当は1株当たり10円の期末配当を予定しており、上期末5円と合わせて年15円となる(予想配当性向43.8%)。
 
(2)第一カッター興業株式会社(東証1部:1716)との業務提携
2018年9月7日に第一カッター興業(株)と業務提携契約を締結した。第一カッター興業(株)は専門施工会社として、独自のダイヤモンド工法やウォータージェット工法による切断穿孔工事事業を展開し、橋梁、道路、ビル等、社会インフラの解体・維持・補修ニーズに応えている。
 
ベステラ(株)が金属分野に強みを持つのに対して、第一カッター興業(株)はセラミック・セメント分野に強みを持ち、これまでも協力関係にあったが、今回の提携を機に、人的リソースやエンジニアリング等の事業リソースも含めて相互活用する事で、大規模プラント設備の解体に加え、(株)日立プラントコンストラクションとの廃炉への対応等、高難易度の工事案件の受注拡大につなげていく。
 
 
今後の注目点
上期は前年同期比減収・減益となり、通期予想に対する進捗率も、売上高41.4%(通期実績ベースの前年同期47.6%)、営業利益33.1%(同42.3%)、経常利益34.3%(同43.9%)、純利益31.7%(同41.9%)、と前年同期と比べて遅れ気味。このため、見栄えは良くないが、悲観的に考える必要はない。実際、上期決算説明会での吉野社長の表情は明るかった。
プラント解体工事に限らず、建設工事等もそうだが、工事には顧客の要望による追加工事が付きもの。一通り工事が終わった後で清算業務的な作業が必要になり、この作業が終わらないと工事が完成せず、売上を計上する事ができない。この上期の同社においては、こうした中で、人件費、研究開発費、広告宣伝費、本社移転経費等が当初の計画通りに計上された。

同社は信用力の向上等を背景に案件の規模が大型化しつつあるが、現在の事業規模では1案件の振れで業績全体が大きく影響を受けてしまう。業容拡大と共に解消されていくのだろうが、こうした事を踏まえて、当面は、定量的な進捗よりも、定性的な進捗に注目した方が良い。同社の課題の一つに「工事監督の確保」があり、即戦力の確保では苦戦しているが、2~3年の育成期間が必要な新卒・第2新卒社員の採用は進んでいる。前期は工事監督が7名増加し、今期は8名の増員を予定しており、20/1期以降、若手社員の戦力化により徐々にボトルネックの解消が進むとみられ、人件費要因による原価率の改善も期待できる。また、技術系人材サービスを手掛ける(株)ヒロ・エンジニアリングの子会社化に加え、9月には第一カッター興業(株)と業務提携により工事技術や人的リソースの相互活用を可能にした。7月には日立プラントコンストラクションと業務提携契約を締結し、社会貢献としての意義も大きい原子炉の廃炉関連ビジネスへの布石を打った。
 
 
 
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
 
 
◎コーポレート・ガバナンス報告書      更新日:2018年04月26日
基本的な考え方
当社では、健全な経営の推進と社会的信頼に十分に応えるべく、コーポレート・ガバナンスを最も重要な経営課題として位置付け、経営の健全性・透明性および公平性を高めることに重点を置き、法令遵守を社内に徹底させることは当然のこととし、役員全員が常に「法令違反は即経営責任に直結する」との危機感を持ち経営に臨んでおります。具体的には、経営の意思決定、職務執行および監督ならびに内部統制等について、適切な体制を整備・構築することにより、法令・規程・社内ルールに則った業務執行を組織全体に周知徹底しております。また、株主重視の経営に徹するべく、「適正な株価形成」・「株価の持続的上昇」のための経営改革を実現し、経営のチェック機能を強化することでグローバルに通用するコーポレート・ガバナンスを確立することも重要であると考えております。その結果が、社会からの信頼の獲得に繋がることとなり、自ずと企業価値も高まり、株主の皆様にも満足して頂けるものと考えております。
 
<実施しない原則とその理由>
【補充原則4-10-1】
当社は、独立社外取締役を2名選任しており、企業経営者としての専門的な知識と豊富な経験を活かして、取締役会や各取締役へ意見を述べるとともに、必要に応じて助言を行っております。
任意の諮問機関としての委員会は設置しておりませんが、現時点では、取締役会の場において、独立社外取締役から適切な関与・助言を得られていると考えております。
 
<開示している主な原則>
【原則1-4 いわゆる政策保有株式】
当社は、取引先との長期的・安定的な取引関係の維持・強化及び関係強化による当社事業の拡大等の観点から、当社の中長期的な企業価値の向上に資すると判断した場合、取引先等の株式を取得及び保有する場合があります。当社は、前項に基づき保有する株式(政策保有株式)に関し、定期的に取締役会において、当社の企業価値向上に繋がるかを検証し、これを反映した保有のねらい・合理性の確認を行ってまいります。当社は、政策保有株式について、当社の企業価値向上の観点から総合的に判断し、適切に議決権を行使いたします。

【原則1-7 関連当事者間の取引】
当社は、役員及び従業員持株会ならびに主要株主との取引に関する調査を毎年実施し、関連当事者取引の有無を確認しております。また、財務報告作成に関するマニュアルを定め、当社が役員、及び従業員持株会ならびに主要株主等との取引を行う場合には、当該取引が当社および株主共同の利益等を害することの無いよう、内部監査部門、管理部門、取締役会、監査役会において、当該取引の必要性について、十分な審議等を行うこととしております。

【原則3-1 情報開示の充実】
(i)会社の経営理念、経営戦略および経営計画
当社は、経営方針、経営戦略、経営計画については当社ホームページにて開示しておりますのでご参照ください。
(ii)コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方と基本方針
当社のコーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方と基本方針は、本報告書の「1.コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方及び資本構成、企業属性その他の基本情報」に記載のとおりです。
(iii)取締役及び監査役の報酬等の決定に関する方針
取締役の報酬は、株主総会にて決議された報酬限度額の範囲内で、業績、経営環境、職責、世間水準、従業員に対する処遇との整合性等を考慮の上、取締役会にて決定することとしております。監査役報酬については、監査役会での協議により決定しております。
(iv)取締役・監査役候補の指名を行うに当たっての方針と手続き
経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補者の指名を行うに当たっては、当社の経営陣幹部または取締役・監査役として相応しい豊富な経験、高い見識、高度な専門性を有する人物を候補者とし、取締役会において決定を行います。
(v)経営陣幹部のここの選任・指名理由
取締役、監査役の選任に関しては、定時株主総会招集ご通知に指名の理由を記載しております。

【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】
当社は、株主からの対話(面談)の申込みに対しては、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するよう、合理的な範囲で前向きに対応すべきと考えております。当社は、株主との建設的な対話を促進するため、企画部をIR担当部署として、金融機関や投資家に対して決算説明会を半期に1回開催し、適宜会社情報をホームページ、東証の任意開示を活用し、情報公開を行っております。