ブリッジレポート
(1433) ベステラ株式会社

プライム

ブリッジレポート:(1433)ベステラ vol.9

ブリッジレポートPDF

吉野 佳秀 社長

ベステラ(1433)

- 会社情報 -

市場 東証1部
業種 建設業
社長 吉野 佳秀
所在地 東京都江東区平野三丁目2番6号 木場パークビル
決算月 1月
HP http://www.besterra.co.jp/index.html

- 株式情報 -

株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,434円 8,226,770株 11,797百万円 23.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
16.00円 1.1% 44.61円 32.1倍 317.49円 4.5倍

*株価は03/18終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。

- 連結業績推移 -

決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益 EPS DPS
2015年1月(実) 3,060 384 388 219 36.48 -
2016年1月(実) 3,846 447 464 292 42.85 90.00
2017年1月(実) 4,182 397 404 271 32.85 40.00
2018年1月(実) 4,496 386 373 263 31.69 15.00
2019年1月(実) 4,927 497 495 621 75.25 15.00
2020年1月(予) 5,700 525 521 367 44.61 16.00

*予想は会社予想。単位は百万円、円。
*2019年1月期より連結決算。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益(以下、純利益については同様)。
*株式分割 2015年5月 1:4株、2016年2月 1:2。2017年2月 1:3(EPSは遡及修正済み)。

 

ベステラの2019年1月期決算の概要と2020年1月期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。

 

- 目次 -

今回のポイント

1.会社概要

2.2019年1月期決算

3.2020年1月期業績予想

4.中期経営計画2021(20/1期~22/1期)

5.今後の注目点

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

今回のポイント

  • 19/1期は前期の非連結決算との比較で9.6%の増収、同28.8%の営業増益。大型案件が前期の完工高を押し上げた石油・石化向けが減少したものの、設備効率の見直しを進めている電力向けが大きく伸びた他、鉄鋼向け・ガス向け等も増加。好採算案件の寄与による売上総利益率の改善で販管費の増加を吸収した。10円の期末配当を予定(上期末配当と合わせて年15円)。
  • 20/1期は前期比15.7%の増収、同5.5%の営業増益予想。売上面では、電力業界向けが引き続き伸びる他、前期減少した石油・石化が増加に転じる見込み。利益面では、積極的な採用に伴う人件費・採用費の増加に加え、研究開発や安心して働ける仕組みづくり等の投資を吸収する。配当は1円増配の16円を予定。
  • 当面の業績は人材育成との見合いになるが、事業環境は良好だ。高度成長期以降に建設された設備の老朽化に加え、経済的陳腐化、企業の再編、海外移転等により、解体・更新の増加が見込まれる。また、新規制基準適合性の審査が進む事で廃炉となる原子炉の増加も予想される。原子力発電設備の解体作業は放射線による被ばくを防止しながら効率的に進める必要があり、難易度が高いが潜在需要は大きい。廃炉に際しては、先ず原子炉の周辺設備を解体する必要があるが、この作業は火力発電設備の解体と同じ。廃炉に伴う原子力発電設備の解体作業を念頭に提携した(株)日立プラントコンストラクション及び第一カッター興業(株)との提携効果の早期顕在化が課題であり、今後の注目点でもある。

1.会社概要

プラント解体のスペシャリストとして、製鉄、電力、ガス、石油等、プラント(金属構造物)の解体工事をマネジメントしている。“プラント解体の工法・技術”をコア・コンピタンスとし、国際特許も含めた特許工法を多数有する。エンジニアリング(提案・設計・施工計画)とマネジメント(監督・施工管理)に経営資源を集中しており、実際の解体工事は協力会社に外注するため、工事用重機や工事部隊を保有せず(資産保有リスクを回避)、材料等の仕入・生産取引も発生しない(在庫リスクを回避)。社名の「べステラ(BESTERRA)」は英語の「Best(goodの最上級)」とラテン語の「Terra(地球)」を合わせたもので「素晴らしい地球を造っていこう」という思いが込められている。

【企業理念・行動規範】

「柔軟な発想と創造性、それを活かした技術力により地球環境に貢献します」という企業理念の下、下記の行動規範を掲げている。

 

行動規範

プロとしての責任を果たします。
我々は常に新しい技術を生み出し、「安全を何よりも優先」し、「より早く、より安く、より安全に」を合言葉に
さらに安心を加えて、お客様に提供します。

【業績推移】

 

【事業の特徴】

プラント解体事業が売上高全体の約97%を占める(この他、人材サービス等を手掛ける)。プラントの解体工事は、製鉄・電力・ガス・石油等のプラントを有する大手企業が施主であり、多くの場合、施主系列の設備工事会社あるいは大手ゼネコンが工事を元請けし、同社が一次下請け、二次下請けとなっている。19/1期の顧客業種別完成工事高(構成比)は、電力35%(18/1期22%)、鉄鋼41%(同37%)、石油・石化9%(同27%)、ガス14%(同13%)、その他1%(同1%)。
尚、工事の施工に必要な重機や職人は直接保有しないファブレス経営を徹底している(複雑な構造を持つプラントのどのような設備に対しても柔軟に対応できる)。

 

受注・外注フロー図

 

工事の進行に伴って発生するスクラップ等の有価物は、同社が引き取ってスクラップ業者に売却する。このため、同社は受注に際して有価物の価値を、材質、量、価格(鉄、ステンレス、銅等の材質毎の相場)等から総合的に見積り、それを反映した金額で交渉し、請負金額を決めている。会計上、有価物の売却額は解体工事に伴う収益の一部と位置付けられており、完成工事高に含めて計上している。尚、発注者(施主)が独自でスクラップ等の処分(売却)を行う事もある。

 

完成工事高(金額は概算値)

18/1期 非連結 構成比 19/1期 連結 構成比 増減率
電力 975 22% 1,667 35% +71%
製鉄 1,639 37% 1,952 41% +19%
石油・石化 1,196 27% 429 9% -64%
ガス 576 13% 667 14% +16%
その他 44 1% 48 1% +9%
完成工事高 4,429 100% 4,761 100% +7%

*単位:百万円

【強み - 優良な顧客基盤、豊富な工事実績に基づく効率的解体マネジメント、特許工法等の知的財産 -】

強みは、優良な顧客資産、豊富な工事実績に基づく効率的解体マネジメント、及び特許工法等の知的財産。顧客は、製鉄、電力、ガス、石油等の大手企業のエンジニアリング子会社等、与信の不安がない優良顧客であり、中長期にわたり継続して受注が見込める。これら優良企業から、約40年間の実績に裏打ちされたプラント解体のトータルマネジメント(低コスト・高効率)が高く評価されており、参入障壁になっている。更に、環境対策工事等で蓄積してきた様々な技術やノウハウも強みであり、発生材の再資源化も含めて、顕在的・潜在的な知的財産となっている。

 

※2つの収益計上基準と同社収益計上の季節性について
工事契約における収益の計上基準には、工事が完成した時に収益を計上する完成基準と工事の進捗に応じて収益を計上する進行基準がある。プラント解体工事はスクラップなど有価物の引き取りがある工事の収益が最終のスクラップ売却時まで確定しないため、同社においては、請負金額50百万円超、工事期間3ヶ月超の大型工事について原則工事進行基準を適用しており(18/1期以降)、上記に該当しない工事については完成基準を適用している。完成基準適用工事の収益計上(完工)時期は顧客(施主)の設備投資計画の影響を受ける事が多く、同社の場合、第1四半期(2月~4月)と第4四半期(11月~1月) に収益が計上される割合が高い(収益計上の季節性)。しかし、四半期業績の変動が投資家をミスリードする可能性があるため、同社は工事進行基準の適用範囲を段階的に広げており、収益計上の平準化に継続的に取り組んでいる。

2.2019年1月期決算

(1)業績

18/1期 非連結 構成比 19/1期 連結 構成比 18/1期比 同 個別 ‘18/1期比
売上高 4,496 100.0% 4,927 100.0% +9.6% 4,826 +7.3%
売上総利益 904 20.1% 1,054 21.4% +16.6% 1,041 +15.2%
販管費 518 11.5% 556 11.3% +7.3% 532 +2.8%
営業利益 386 8.6% 497 10.1% +28.8% 509 +31.9%
経常利益 373 8.3% 495 10.0% +32.7% 506 +35.6%
当期純利益 263 5.9% 621 12.6% +136.1% 632 +139.8%

*単位:百万円
*数値には(株)インベストメントブリッジが参考値として算出した数値が含まれており、実際の数値と誤差が生じている場合があります(以下同じ)。

 

前期の非連結決算との比較で9.6%の増収、同28.8%の営業増益
売上高は前期の非連結決算との比較で9.6%増の49億27百万円。エチレン製造設備解体の大型案件が前期の完成工事高を押し上げた。石油・石化向けが64%減少したものの、設備効率の見直しを進めている電力向けが70%増と大きく伸びた他、鉄鋼向けも20%弱増加。売上高が過去最高を更新した。
利益面では、資産効率化(自社ビル⇒賃借)を目的とする本社移転・賃貸費用の計上等で販管費が増加したものの、売上の増加と利益率の高い案件が多かった事による売上総利益率の改善で吸収。営業利益が同28.8%増の4億97百万円と過去最高を更新した。当期純利益が経常利益を上回ったのは、本社ビル売却に伴う固定資産売却益3億88百万円を特別利益に計上したため。

 

1株当たり10円の期末配当を予定しており、上期末配当と合わせて年15円となる。

 

完成工事高・受注高(概算値)

完工高 構成比 前期比 受注高 構成比 前期比
電力 1,659 35% +70% 275 27% -69%
製鉄 1,928 41% +18% 429 42% -52%
石油・石化 429 9% -64% 224 22% +40%
ガス 699 14% +21% 51 5% -81%
その他 48 1% +9% 40 4% +82%
合計 4,761 100% +8% 1,019 100% -54%

*単位:百万円

 

受注高・受注残高

  18/1期 19/1期 前期(末)比
期首受注残高 2,303 2,218 -3.7%
受注工事高 4,344 3,565 -17.9%
完成工事高 4,429 4,761 +7.5%
期末受注残高 2,218 1,021 -53.9%

*単位:百万円

 

期末にかけての完成工事の増加で期末の受注残高が一時的に減少したものの、足元、受注見込案件が多く、引き合いも堅調に推移している。

 

販管費の内訳(カッコ内は個別)

18/1期 非連結 対売上比 19/1期 連結 対売上比 前期比 主な増減要因
人件費 271 6.0% 280(268) 5.7% 5.7% 工事監督以外の人員増及び子会社
研究開発費 8 0.2% 9(9) 0.2% 0.2% ロボット開発
支払手数料・報酬 66 1.5% 52(51) 1.1% 1.1% 上場市場変更費用減少
採用費 15 0.3% 12(12) 0.2% 0.2% 広告媒体・紹介手数料の減少
広告宣伝費 13 0.3% 17(17) 0.3% 0.3% 展示会実施回数の増加
その他 142 3.2% 182(172) 3.7% 3.7% 本社移転・賃貸費用
販管費合計 518 11.5% 556(532) 11.3% 11.3% ※ 個別ベースでは前期比2.8%増

*単位:百万円

 

 

(2)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
財政状態

18年1月 19年1月   18年1月 19年1月
現預金 752 2,032 仕入債務 820 1,357
売上債権 2,570 1,785 未払法人税等 23 250
流動資産 3,521 4,112 借入金・社債 450 7
有形固定資産 325 265 負債 1,572 1,949
投資その他 46 159 純資産 2,332 2,614
固定資産 383 451 負債・純資産合計 3,905 4,564

*単位:百万円

 

現金決済される電力向け売上構成比が高かった事及び固定資産の売却で前期は3億65百万円だったフリーCFが20億51百万円に増加した。借入金の返済を進めた他、一部を安全資産による余資運用(投資有価証券)に充当したが現預金が大幅に増加した。仕入債務の増加は工事量の増加による。自己資本比率57.2%。

 

キャッシュ・フロー(CF)

18/1期 非連結 19/1期 連結 増減
営業キャッシュ・フロー(A) 369 1,753 +1,384 +374.5%
投資キャッシュ・フロー(B) -4 298 +302 -
フリー・キャッシュ・フロー(A+B) 365 2,051 +1,686 +462.0%
財務キャッシュ・フロー -314 -777 -462 -
現金及び現金同等物期末残高 752 2,031 +1,278 +169.8%

*単位:百万円

 

参考:ROE・ROAの推移

15/1期 16/1期 17/1期 18/1期 19/1期
ROE 21.89% 18.43% 12.81% 11.7% 23.81%
ROA 9.41% 10.26% 7.28% 6.49% 13.63%
売上高当期純利益率 7.18% 7.60% 6.59% 5.96% 12.62%
総資産回転率 1.31回 1.35回 1.10回 1.09回 1.08回
レバレッジ 2.33倍 1.80倍 1.76倍 1.80倍 1.75倍

*ROE =売上高当期純利益率×総資産回転率×レバレッジ
*ROA = 売上高当期純利益率×総資産回転率
*総資産及び自己資本は連結決算に移行した19/1期を除き、期中平残(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。

3.2020年1月期業績予想

連結業績

  19/1期 実績 構成比 20/1期 予想 構成比 前期比
売上高 4,927 100.0% 5,700 100.0% +15.7%
営業利益 497 10.1% 525 9.2% +5.5%
経常利益 495 10.0% 521 9.1% +5.2%
当期純利益 621 12.6% 367 6.4% -41.0%

*単位:百万円

 

前期比15.7%の増収、同5.5%の営業増益予想
売上高は前期比15.7%増の57億円。効率化に向け設備の見直しを進めている電力業界向けが引き続き伸びる他、前期減少した石油・石化が増加に転じる見込み。

 

営業利益は同5.5%増の5億25百万円。事業拡大に向けた積極的な人材採用により期末従業員を前期末の66名から92名(工事監督:32名→47名)に増員する計画。増員に伴う人件費及び採用費の増加に加え、新たな工法に関する研究開発、採用活動及び就労環境の整備(安心して働ける仕組みづくり)、効率的な業務管理を実現するシステム導入等の成長投資も織り込んだ。このため、営業利益の伸びが前期の実績を下回るものの、最高益更新が続く見込み。

 

尚、同社は解体工事の施工管理に特化しているため、全ての工事に監督を配置する必要がある。このため、持続的成長には工事監督の増員が不可欠であり、中期経営計画の達成に向け、全社を挙げて採用活動に取り組んでいく考え。

 

配当は、上期末6円(1円増配)、期末10円の年16円を予定している(配当性向35.9%)。同社は配当性向40%を目処に安定配当を実施していく考え。

4.中期経営計画2021(20/1期~22/1期)

【数値目標】

20/1期 予想 21/1期 目標 22/1期 目標
売上高 5,700 6,400 7,200
営業利益(営業利益率) 525(9.2%) 570(8.9%) 650(9.0%)
経常利益 521 566 645
当期純利益 367 403 457

*単位:百万円

 

同社の中期経営計画は経営環境の変化等に柔軟に対応するためローリング方式が採用されており、毎期、見直し・改定が行われている。20/1期を初年度とする「中期経営計画2021」は、収益構造改革、人事構造改革、3D事業の価値の追求、及びM&A戦略を基本戦略とし、売上高・利益の年率10%超の成長と最終の22/1期に売上高72億円、営業利益6.5億円の達成を目指している。

 

【19/1期の取り組み 収益構造改革、人事構造改革、3D事業の価値追求、M&A戦略】
(1)収益構造改革
受注案件数・規模の拡大、工法の充実、及び営業力強化に取り組んでいく。

 

受注案件数・規模の拡大
日本の産業を支える重厚長大なプラント企業へ安全で革新的な解体工事を提案し、プラント解体事業の最大化を図る考え。具体的には、電力、鉄鋼、石油・石油化学、及びガスその他の分野毎にターゲットを定め個別戦略を推進する。

 

<電力業界 市場規模13.6兆円(同社試算)>
エネルギーミックス(望ましい発電方法)の実現に向けて、環境負荷が低く高効率な発電設備への見直しが進むとみられている。資源エネルギー庁「電力調査統計」によると、環境負荷が高い火力発電の出力比率は、2030年にかけて、現在の63%から56%に低下する見込み。この過程で効率の悪い設備の見直しが進むとみられている。また、原子力は15%から21%に増加する見込み。現在19個所(60基)ある原子力発電所の半数が運転開始より30年以上が経過しており、廃炉の増加が予想される。
同社は、ボイラ、煙突、タンクの解体で豊富な実績と多数の特許工法を有する(特に、タンク類については「リンゴ皮むき工法」、「りんご☆スター」による圧倒的な安全性、価格競争力を有する)。また、電力関係設備(トランス等)についても、独自の無火気による解体(有害な気化物質を発生させない)を行っている。

 

<鉄鋼業界市場 規模1.7兆円(同社試算)>
高度な技術が要求される製鉄業界は常に企業再編や技術革新に迫られており、これに伴う設備の更新需要が見込まれる。
粗鋼生産は、4分の3を高炉メーカーが占め、4分の1を電炉・単圧等のメーカーが占めるが、同社は高炉、電炉、単圧等、全てのメーカーと取引実績がある。高度経済成長期に建設された溶鉱炉(コークス炉)が今後10年以内に改修時期を迎える事に加え、高炉各社は価格競争力強化のため生産拠点の集約と集約先の設備強化を進めている。同社は特許工法やこれまでに培ってきた安全かつ効率的な解体工事と3D技術を用いた工事計画の提供により解体需要を取り込んでいく。

 

<石油・石油化学業界 市場規模28.5兆円(同社試算)>
国内の製油所は14地域に22箇所あるが、人口減少や低燃費自動車の普及に加え、燃料転換等もあり、需要減少が続いている。このため、石油・石油化学業界は企業再編や設備縮小等の対応に迫られており、政府もエネルギー供給構造高度化法や産業競争力強化法等で再編を後押ししている。また、国内9地域に15箇所の石油化学コンビナートも、ナフサ由来(石油精製物)のエチレンを原料としているため、安価なエタン由来(天然ガスや石油の副産物)の原料を主流とする海外の石油化学コンビナートに対してコスト競争力で劣る。規模的にも海外の超巨大コンビナートとの競争が難しいため、企業再編や設備縮小等の必要に迫られている。
同社は、製油所やエチレンプラントに加え、川下のプラント設備の解体でも豊富な実績を有する強みを活かして解体需要を取り込んでいく。いわゆる「太平洋ベルト地帯」と呼ばれる港湾地域に事業所を設置し、独自の解体技術の提案営業に注力していく。

 

解体設備 戦略 売上高(構成比)
19/1期
売上高(構成比)
22/1期
電力 ボイラ、煙突、タンク、変圧器(PCB) 火力発電所案件の獲得、PCB関連案件の獲得、風力発電案件の獲得、原発案件への参入 16億59百万円
(35%)
24億円
(33%)
鉄鋼 溶鉱炉、煙突、リクレーマー(機械装置) 既存顧客(高炉事業者)との関係強化、新規顧客(電炉事業者)の開拓 19億28百万円
(41%)
20億円
(28%)
石油・石油化学 製油所、エチレンプラント 製油所案件の獲得、エチレンコンビナート案件の獲得 4億25百万円
(9%)
19億円
(26%)
ガスその他 ガスホルダー、各種製造工場 リンゴ皮むき工法の営業展開の拡充、各種工場案件の獲得 7億47百万円
(15%)
9億円
(13%)

 

工法の充実
コスト競争力を有する「リンゴ皮むき工法」及び「りんご☆スター」(タンク類の解体)、独自の無火気工法(トランス等の電力関係設備)、国際特許として申請中の発電用風車解体工法(風力発電)等、競争力のある特許工法による解体方法を提案し、実用化に繋げていく。

 

<「リンゴ皮むき工法」と溶断ロボット「りんご☆スター」>
「リンゴ皮むき工法」とは、ガスホルダーや石油タンク等の大型球形貯槽の解体において、リンゴの皮をむいていくように、外郭天井部の中心から渦巻状に切断する工法。切断された部分は重力に従って、渦巻きを描きながら徐々に地上に落ちていく。工期、コスト、安全性に優れ、競合優位性の高い工法であり、「より早く、より安く、より安全に」を実現する。また、この工法を自動化する溶断ロボット「りんご☆スター」も提供している(「りんご☆スター」については、新アタッチメント開発による用途拡大にも取り組んでいる)。

 

<環境関連工法>
火気を使用しない「無火気工法」により、数々の環境関連工事の実績を重ねている。例えば、PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、現在、有害物質として全廃されているが、優れた熱安定性や化学的安定性(電気絶縁特性)から、長年、トランス(変圧器)やコンデンサ(蓄電器)に使われてきた。プラントの解体時にトランスやコンデンサを処理するケースが多いが、PCBを高温で処理するとガス化するため吸引する恐れがあり、解体・撤去に際して火器(ガス溶断等)が使えない。同社はセーバーソー(往復運動する鋸刃により切断する)等による無火気工法・準無火気工法を得意としており、モーター焼きつき対策や刃を再生利用する等の工夫で業界常識を超える厚みを切る事が可能だ。変圧器の解体では、「トランス解体方法並びにトランス解体用冶具、及びトランス解体用切断装置」の特許を(株)日立プラントコンストラクションとの共同で出願している。

 

<風車解体工法>
発電用風車は世界的に年間20%程度の成長が続いているが、今後、使用期限や経済的陳腐化による解体需要の増加が予想される。同社の資料によると、世界の風力発電量は486,790MWと年率約20%の成長を続けており(陸上約340,000基、洋上約4,000基)、国内でも2017年末で2,225基を数え、毎年約90基のペースで増加している。一方、耐用年数が15~20年程のため初期に設置された発電用風車は使用限界を迎えている。また、落雷・台風等により破損や致命的な故障が起きて解体が必要となっている機体も少なくない。

 

発電用風車の倒し方法(国際出願)
発電用風車の解体は、通常、支柱の外側に足場を組んで行われるが、山岳部や洋上等にも設置されているため、解体の難易度は高い。同社は、足場を必要としない風車解体工法を考案し、「発電用風車の倒し方法」の国内特許を既に取得しており、「基礎部を活用した搭状構造物の倒し方法」及び「塔型風力発電設備の解体方法」の国際特許を出願中である。これらの特許に基づく工法を使う事で、作業員の安全性が飛躍的に向上し、工期も短縮できる。

 

 

営業力強化
元請工事の比率を高めると共に営業拠点を拡充する。現在、同社は、元請会社からの1次請けの受注割合が多いが、直接受注を増やし元請工事の比率を高め、収益率の向上につなげる。このため、展示会への出展に加え、ホームページ、販促物、各種メディア等、広告媒体の充実に取り組む。また、新たな拠点開設も検討している。
19/1期末現在の拠点と実績は、東京本社(18/1期:売上高35億61百万円→19/1期:35億90百万円)、JFE千葉構内事務所(千葉県千葉市、5億50百万円→4億61百万円)、千葉事務所(千葉県市原市、2億21百万円→2億71百万円)、西日本事務所(広島県福山市、1億64百万円→2億57百万円)。現在、西日本事務所の拡充を予定している他、京浜事務所(19/1期の同地区で売上高1億80百万円)の開設準備を進めている。また、仙台での事務所開設も検討している。新たな拠点の開設は、ストック型(顧客グループ単位からの継続的受注や構内常駐等)案件の受注拡大につながる。

 

(2)人事構造改革
慢性的な人手不足に対応するために、①M&Aによる人員増加、②安心して働ける仕組みづくり、及び③「育成プログラム」確立、の3施策を実施し、成長の根幹となる人員数の増加及び早期戦力化を図る。①M&Aによる人員増加では、施工管理職の人員不足に対応するべく、プラントに関わる会社との業務提携やM&Aにより相互の人員を融通する。②安心して働ける仕組みづくりでは、業界に先駆けて、全社員を対象に完全週休2日制を導入した(建設業は、早期完工を望む産業特性から、土曜日の施工が一般的)。加えて、働きやすさを推進するための施策として、「マネジメント層によるシフト(時間)管理」・「現場(労務)ローテーション」の導入や「健康経営」への取り組み等、様々な制度の導入や取り組みにより、社員が安心して長く働く事ができる環境を整えていく。③「育成プログラム」確立では、工事監督の実態に即した評価制度としての「工事専門職コース」・「マネジメント職コース」の導入や資格取得推進制度の拡充により、個人の働き方を重視した人事制度を策定し、運用していく。また、経験豊富な技術者から経験の浅い技術者へ技術継承を図るための制度として、「育成プログラム」も推進していく。

 

 

安心して働ける仕組みづくり
退職金制度、持株会への手厚い助成、保存年次有給休暇、新たに設けた日本最高水準の所得補償保険等、社員が安心して長く働ける環境づくりの一環として様々な制度を導入している(社員の定着率向上はもちろんだが、採用活動にも役立ていく考え)。従業員持株会への助成では、社員の資産形成を支援するべく、従業員が積み立て方式により自社株式を保有する持株会を設置し、積立額の15%の助成を行っている(奨励金の支給)。保存年次有給休暇とは、傷病により療養する場合に備えて、80日まで有給休暇を保有できる制度である(労働基準法上の有給休暇の一般的な最大保有日数は40日)。所得補償保険とは、傷病により長期間働けない際の収入減少を補うための全額会社負担による保険であり、同社においては月額報酬の50%が定年時(60歳)まで補償される。

 

(3)3D事業の価値の追求
レイアウトシミュレーション、歪み・曲がり・ねじれ計測、Before/After形状比較、ウォークスルー動画等のサービスにより、建設時(30年以上前)の紙データを最新鋭の3Dデータに変換し、工程を「視える化」した解体工事を提供していく。また、2次元への図面化、モデリングBIM/CIM対応、パーフェクト3D、3Dプリント等、最高水準の計測技術とシミュレーションシステムによる、解体工事に伴う独自の3D計測サービスも提供していく。

 

解体工事の工程を「視える化」
レイアウトシミュレーション
3D CADで作成した機器のモデルを3Dデータ上に配置し、入替シミュレーションが可能。機器のモデルを動かしながら、動的な干渉・衝突チェックができる。
歪み・曲がり・ねじれ計測
形状変化の計測が可能。地震や経年劣化等で建物に歪みが発生していないか等、躯体の一時的診断に役立つ。
Before/After形状比較
配管・コンベア・炉等、熱や振動の影響を受けて変化する設備の設置時と稼動後の形状を比較する。3Dデータにより全体の変化を直感的に把握できる。
ウォークスルー動画
合成した点群データを利用して、ウィークスルー動画を作成する。施工計画や物件情報に関するプレゼンテーションや広報用動画として活用できる。

 

独自の3D計測サービス
2次元への図面化
点群データを基にモデリングした3D CADモデルを図面化する。簡易的に点群データを直接、図面化する事もできる。
モデリングBIM/CIM対応
点群データを基に3D CADで対象をモデリングする。施工・改修に必要な部分をBIMデータ(Building information modeling)として作成する事もできる。
パーフェクト3D
自動車によるMMS(Mobile Mapping System)や航空レーザー計測、水域計測等を組み合わせた大規模3次元データ計測サービス。
3Dプリント
点群データからのモデリングを経て、3Dプリンターで造形できるようにデータを加工・デフォルメする。積層ピッチ15μmという微細な出力を実現する。

 

(4)M&A戦略
M&A等を含めた提携を積極的に進めており、これらの提携を通じて様々なシナジーを生み出していく。特に原発の廃炉に関しては、業務提携を通じて「廃止措置関連ビジネスプラットフォーム」を構築していく(当同社がプラットフォーマーとなり、提携先各社が互いの強みを活かした提携を進め、廃止措置関連ビジネスのための仕組みを作る)。
2018年7月に原子力発電所の廃炉関連ビジネスの競争力強化を目的に、原子力発電設備(廃止措置・改修他)の営業・現場管理・工事のノウハウと技術を有し、大型バンドソー等の工事技術による解体作業や放射線管理等も手掛ける(株)日立プラントコンストラクションと、9月にはダイヤモンド工法やウォータージェット工法といった技術と高い工事施工品質を有する第一カッター興業(株)と、それぞれ業務提携契約を締結した。

 

(同社資料より)

 

【利益配分方針・株主還元】
既に説明した通り、「将来の成長への投資(人材、技術開発、システム、M&A等)」と「事業基盤強化のための内部留保」に配慮しつつ、配当性向40%を目途に配当を実施していく考え。配当の他に、1単元(100株)以上保有の株主に1,000円分の、3単元(300株)以上保有の株主に2,000円分の、QUOカードを贈呈する株主優待を実施している。

5.今後の注目点

当面の業績は人材育成との見合いになるが、事業環境は良好だ。高度成長期以降に建設された設備の老朽化に加え、経済的陳腐化、企業の再編、海外移転等により、解体・更新の増加が見込まれる。また、日本には19ヶ所60基の原子炉があり、このうち24基の廃炉が決定しているが、新規制基準適合性の審査が進む事で廃炉となる原子炉の増加が予想される。原子力発電設備の解体作業は放射線による被ばくを防止しながら効率的に進める必要があるため難易度が高いが、潜在需要は大きい。廃炉に際しては、先ず原子炉の周辺設備を解体する必要があり、この作業は同社が豊富な実績を有し、ノウハウの蓄積も進んでいる火力発電設備の解体と同じ。タンク、ボイラ、煙突、クレーン等を解体する際の特許工法が強みを発揮する。(株)日立プラントコンストラクション及び第一カッター興業(株)との提携効果の早期顕在化が当面の課題であり、今後の注目点でもある。

参考:コーポレート・ガバナンスについて

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態 監査役会設置会社
取締役 7名、うち社外2名
監査役 3名、うち社外3名

◎コーポレート・ガバナンス報告書
更新日:2018年10月16日
基本的な考え方
当社では、健全な経営の推進と社会的信頼に十分に応えるべく、コーポレート・ガバナンスを最も重要な経営課題として位置付け、経営の健全性・透明性および公平性を高めることに重点を置き、法令遵守を社内に徹底させることは当然のこととし、役員全員が常に「法令違反は即経営責任に直結する」との危機感を持ち経営に臨んでおります。具体的には、経営の意思決定、職務執行および監督ならびに内部統制等について、適切な体制を整備・構築することにより、法令・規程・社内ルールに則った業務執行を組織全体に周知徹底しております。また、株主重視の経営に徹するべく、「適正な株価形成」・「株価の持続的上昇」のための経営改革を実現し、経営のチェック機能を強化することでグローバルに通用するコーポレート・ガバナンスを確立することも重要であると考えております。その結果が、社会からの信頼の獲得に繋がることとなり、自ずと企業価値も高まり、株主の皆様にも満足して頂けるものと考えております。

 

<実施しない主な原則とその理由>
【補充原則4-1-3】
最高経営責任者の後継者の具体的な計画はございません。取締役会における後継者選定の方針としては、人格・識見・実績を勘案して適当と認められる者の中からその人物を選定することとしています。後継者計画を策定・運用する場合には、取締役会が積極的に関与してまいります。

 

【補充原則4-3-3】
当社は社長やCEOを解任するための客観性・適時性・透明性ある手続を明確に確立しておりませんが、取締役会の実効性評価を適切に行うため、取締役の指名、報酬に関する評価に社外取締役が関与することで取締役の相互評価を実現してまいりたいと考えております。

 

【補充原則4-10-1】
当社は、独立社外取締役を2名選任しており、企業経営者としての専門的な知識と豊富な経験を活かして、取締役会や各取締役へ意見を述べるとともに、必要に応じて助言を行っております。任意の諮問機関としての委員会は設置しておりませんが、現時点では、取締役会の場において、独立社外取締役から適切な関与・助言を得られていると考えております。

 

【補充原則4-11】
当社の取締役会は、各部門に精通した取締役等と企業経営者である社外取締役で構成されています。規模については適正であると認識しておりますが、ジェンダーや国際性の面を含む多様性については、十分に確保されているとは言えないことから、多様性の確保という視点に重きを置いた取締役候補者の選定に努めてまいります。加えて、社外取締役を加えた取締役会の中で取締役会のあり方・運営につき定期的に議論することを通じ、取締役会の実効性、機能の向上に努めてまいります。当社の監査役会は、企業経営経験者、税理士からなる独立役員3名で構成され、経営、財務、会計、営業、監査等の専門知識と経験を有した者であります。

 

【補充原則4-11-3】
当社の取締役会は毎月開催され、取締役会規程に定める重要事項について適時・適切に審議・決定されております。また、経営状況についても定期的に報告を受け、適切なリスク管理および業務執行の監督を行っております。重要な案件については、社外取締役・社外監査役に事前に内容を説明し、取締役会で十分な審議時間を確保して活発な議論が行われております。以上のとおり当社の取締役会は、実効的に運営されていると判断しておりますが、更に実効性を向上させるべく努めてまいります。

 

<開示している主な原則>
【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】
当社は、株主からの対話(面談)の申込みに対しては、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するよう、合理的な範囲で前向きに対応すべきと考えております。当社は、株主との建設的な対話を促進するため、企画部をIR担当部署として、金融機関や投資家に対して決算説明会を半期に1回開催し、適宜会社情報をホームページ、東証の任意開示を活用し、情報公開を行っております。

 

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