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ブリッジレポート:(4634)東洋インキSCホールディングス 2019年12月期決算

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北川 克己 社長

東洋インキSCホールディングス株式会社(4634)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

化学(製造業)

代表取締役社長

北川 克己

所在地

東京都中央区京橋2-2-1

決算月

12月末日

HP

https://schd.toyoinkgroup.com/ja/index.html

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,992円

60,621,744株

120,758百万円

3.9%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(倍)

90.00円

4.5%

171.22円

11.6倍

3,757.35円

0.5倍

*株価は3/6終値。各数値は19年12月期決算短信より。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期利益

EPS

DPS

2017年3月(実)

268,484

19,222

19,257

12,687

42.95

16.00

2017年12月(実)

240,344

16,823

17,528

10,424

35.71

16.00

2018年12月(実)

290,208

15,337

15,508

11,899

203.81

85.00

2019年12月(実)

279,892

13,174

13,847

8,509

145.72

90.00

2020年12月(予)

290,000

15,000

15,500

10,000

171.22

90.00

*単位:百万円、円。予想は会社側予想。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下同様。2017年12月期は9カ月決算。
2018年7月1日付で株式併合(5株を1株)を実施。遡及修正はしていない。

 

 

東洋インキSCホールディングス株式会社の2019年12月期決算概要などをご紹介致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2019年12月期決算概要
3.2020年12月期業績予想
4.中期経営計画「SIC-Ⅰ」(2018年度‐2020年度)の進捗
5.今後の注目点
<参考1:中期経営計画「SIC-Ⅰ」(2018年度-2020年度)>
<参考2:コーポレートガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 2019年12月期の売上高は前期比3.6%減の2,798億円。オフセット印刷や自動車市場の需要減により販売数量が低迷。パッケージ以外は減収だった。営業利益は同13.8%減の131億円。価格改定(+19億円)、固定費削減(+4億円)のプラス要因はあったが、メディア材料のCFペーストなど高機能製品の販売数量減少(‐34億円)、メディア材料の販売価格下落(‐7億円)などが影響した。

     

  • 20年12月期の売上高は前期比3.6%増の2,900億円の予想。印刷・情報以外は増収。成長ドライバーと位置付けるパッケージセグメントを中心に増収を目指す。営業利益は同13.9%増の150億円の予想。固定費増加(-10億円)、販売価格下落(-10億円)などを高機能製品の拡販など販売数量の増加(+35億円)、オフセットインキや顔料の価格改定(+10億円)で吸収する。新型コロナウィルスの影響は織り込んでいない。今期も原材料価格高騰の影響を考慮し、リスク対策を継続する。配当は前期と同じく90.00円/株を予定。予想配当性向は52.6%。

     

  • 残念ながら、中期経営計画「SIC-Ⅰ」(2018年度‐2020年度)の数値目標達成は、原料価格の高騰・高止まり、市場構造の急激な変化、新製品の実績化不十分、既存事業の構造改革の進捗遅れなどにより未達が確実となってしまった。加えて、新型コロナウィルの影響もあり、同社に限ったことではないが短期的には収益見通しの不透明感は強まっている。

     

  • 一方で、今後のドライバーと位置付けるパッケージセグメント、ポリマー・塗加工セグメントは着実に利益面での柱となってきている点は心強い。優れたコア技術をベースに、グローバルベースで環境調和型製品を開発するとともに、5G・IoTなど時代の潮流にも沿った新製品をどれだけスピーディーに市場投入していくことができるのかを引続き注目していきたい。

     

1.会社概要

国内印刷インキ首位。インキ製造の原材料である顔料や樹脂加工技術を活かし、液晶用カラーフィルター材料、電磁波シールドフィルムなど多角的に製品を展開。国内外62社の連結子会社、7社の持分法適用関連会社でグループを構成。世界23か国の拠点を基盤に様々な国や地域で事業を展開(2019年12月末)。
社員一人一人が革新的に発想し、科学的に実行、加えてそれぞれの活動を連鎖させることで生活者・生命・地球環境の持続可能性向上に貢献していくことをコンセプトとした長期構想「Scientific Innovation Chain 2027 (SIC27)」の下、2027年に向け持続的成長を可能にする企業体質への変革を目指している。

 

【1-1 沿革】

1896年(明治29年)、創業者 小林鎌太郎が東京日本橋で個人経営の「小林インキ店」を開業したのが始まり。1907年(明治40年)に東洋インキ製造株式会社に改組。明治期に入り、読売新聞(1874年創刊)、朝日新聞(1879年創刊)を始めとした多数の新聞や雑誌が創刊されたほか、富国強兵の下、教育水準向上のための教科書の制作を始めとした政府関係の印刷物も増加し印刷用インキの需要は急拡大していった。

 

当初は輸入品が中心であったが、良質な国産インキへの転換が国策として推し進められる中、高い技術力を持った同社は、民間印刷会社に加え、大蔵省印刷局を始めとした政府機関への納入も拡大し、輸出も増加した。また、原材料の顔料・樹脂から印刷用インキまでの一貫製造にもいち早く取り組んだこと、創業時から、印刷会社最大手の1社となった凸版印刷株式会社との関係が深かったことなども成長の背景として挙げられる。関東大震災、太平洋戦争といった困難な時期を切り抜け、戦後高度経済成長期に再び急成長を遂げ、1961年(昭和36年)東証2部上場を経て、1967年(昭和42年)、東証1部に上場した。

 

印刷インキにとどまらず、顔料、樹脂など原材料の生産・加工で培った多様な技術を活かし、液晶用カラーフィルタなど他分野に事業領域を拡大している。グループ力の拡大とさらなる成長のため2011年(平成23年)持株会社制度に移行し、社名を東洋インキSCホールディングス株式会社とした。

 

【1-2 経営理念など】

企業グループとしてのブランドの原点を示すとともに、グループの社員各人が常に心に留め、企業人として相応しく行動するための規範として、経営哲学・経営理念・行動指針の三部からなる「東洋インキグループ経営理念体系」を、1993年4月に制定した。2014年4月には、行動指針に新たに「株主の満足度向上」を追加。すべてのステークホルダーの満足度向上を目指してゆく。

 

<東洋インキ経営理念>

経営哲学

人間尊重の経営

 

 

経営理念

私たち東洋インキグループは、世界に広がる生活文化創造企業を目指します。

◇ 世界の人びとの豊かさと文化に貢献します。

◇ 新しい時代の生活の価値を創造します。

◇ 先端の技術と品質を提供します。

 

 

行動指針

◇ 顧客の信頼と満足を高める知恵を提供しよう。

◇ 多様な個の夢の実現を尊重しよう。

◇ 地球や社会と共生し、よき市民として活動しよう。

◇ 株主権を尊重し、株主価値の向上に努め市場の評価を高めよう。

 

この理念体系は理念カード(クレド)として全社員が常に携帯し、毎週部単位で行われる5分間ミーティングで読み合わせ、ディスカッションを行うなどして繰り返し確認し、より深い理解、実践を図っている。
また、海外も含めたグループ企業一体化のためにグローバル社内報を発行しているが、そのトップページには必ず「東洋インキグループ経営理念」を掲載。上記クレドも、「日・英」版に加え、「中・英」版もあり、経営理念の全世界的な共有・浸透に注力している。

 

【1-3 市場環境】

◎概要
(市場動向)
日本の印刷産業の生産金額はデジタル化の進展、活字離れ等の要因を背景に、新聞、雑誌など出版印刷を中心に減少傾向にある。
一方で、ポスター、カタログ、チラシ、POPなど商業印刷は底堅く、食品・医薬品などの包装紙、プラスチック容器に使われる包装印刷は2004年から2018年までのCAGR(年平均成長率)は+2.1%と堅調に拡大している。

 

 

一方、海外、特に新興国では、紙を対象物とした印刷(オフセット印刷)、食品パッケージなど主にフィルムを対象物とした印刷(グラビア印刷・フレキソ印刷)、共に今後の成長が予想されており、同社もその需要取り込みに注力している。
印刷機のイノベーションが進む中、クオリティーの向上に伴いローカルインキでは対応しきれない部分も多く、優れた日本製インキ需要は今後も高まることが予想されるという事だ。

 

(印刷会社と印刷インキ会社)
経済産業省「平成30年工業統計表・産業別統計表データ」によれば、2017年の印刷・同関連業の事業所数は全国で22,210だが、うち98.1%にあたる21,798事業所は従業員数100人未満の中小企業である。

 

 

同社の顧客である印刷会社は印刷インキを購入して印刷を行うが、単純に印刷インキと紙をセットして機械を動かせば印刷できるというものではない。印刷会社が直面する「初めての紙を使用する際のインキの選択」、「特別な色を出す」、「今まで以上の高級感を出す」といったニーズや、印刷効率の向上や環境対策といった課題に対し、印刷インキ会社は顧客ニーズに合致した新製品の紹介や、様々なアドバイスを印刷会社に提供している。
国内約22,000社のうち、殆どの印刷会社は、こうしたソリューション無しにはスムーズに業務を進める事は難しく、印刷産業において印刷インキ会社は極めて重要な役割を担っている。
このため顧客である印刷会社は同社との直接取引を求めており、その結果、同社国内売上の8割近くが顧客への直接販売となっている。こうした顧客との強固な関係性は同社の大きな特徴となっている。

 

◎同業他社
インキ事業を展開する主な上場企業は同社を含め6社。
(4631)DICは世界規模でトップ企業であるのに対し、同社は国内インキ首位で、各品目別でもほとんどが1位か2位となっている。グローバルベースでは3位にランキングされている(2位は欧州企業)。(4633)サカタインクスは同社の第2位株主で、主に物流面での相互補完を図り2000年に資本業務提携契約を締結している。

 

 

 

売上高

増収率

営業利益

増益率

営業利益率

時価総額

PER

PBR

ROE

4116

大日精化工業

157,000

-7.9%

6,000

-31.2%

3.8%

41,228

8.2

0.4

4.1

4631

DIC

810,000

+5.4%

45,000

+8.9%

5.6%

237,321

10.0

0.8

7.7

4633

サカタインクス

171,000

+2.2%

7,500

+20.5%

4.4%

55,151

8.9

0.7

5.5

4634

東洋インキSCHLD

290,000

+3.6%

15,000

+13.9%

5.2%

120,758

11.6

0.5

3.9

4635

東京インキ

43,600

-2.3%

900

-27.4%

2.1%

7,236

10.2

0.3

5.1

4636

T&K TOKA

49,250

-0.8%

860

+133.5%

1.7%

18,591

17.4

0.4

1.4

*売上高、営業利益は各社の今期予想。ROE、PBRは前期実績。単位:百万円、倍。時価総額は2020年3月6日終値ベース。

 

【1-4 事業内容】

◎「印刷インキ」について
同社の主要製品のひとつである印刷インキについて、「原材料」、「種類と用途」などを以下にまとめてみた。

 

<印刷インキの構成要素>

顔料(有機顔料、無機顔料など)

水、油に不溶の着色に用いる粉末。

ワニス(合成樹脂、油脂類、溶剤など)

油脂類、天然樹脂、合成樹脂等を溶剤に溶かしたもので、顔料を分散し、印刷素材に転移、固着させる。

添加剤(滑剤、硬化剤など)

乾燥性や流動性等いわゆる印刷適性や印刷効果を調整する。

 

この3つの原材料を混ぜ合わせて各種インキを製造する際に高度な分散技術が必要となる。
また、同社は創業以来これら原材料の製造を手掛ける過程で、様々な用途開発を進めて事業領域を拡大してきた。

 

<主な印刷インキの種類と用途>

種類

特徴・用途

平版インキ

対象物を紙とする代表的な印刷インキ。雑誌、ポスター、チラシなど。

グラビアインキ

微細な濃淡が表現できるので、写真画像の印刷等に適している。現在では主に食品包装材などフィルムへの印刷に使用される。

スクリーンインキ

他の印刷方式では印刷が困難な被印刷物を中心に、自動車の計器類、基板回路形成、CD・DVDといった工業製品などで使用される。

フレキソインキ

ダンボールやフィルム、布などの表面印刷に利用される。

UV硬化型インキ

乾燥工程で、熱風ドライヤーを使用せずに瞬間乾燥することから、CO2を直接発生させないUV硬化印刷に用いられる。VOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)を発生しない環境調和型インキである。

 

◎事業セグメント
「色材・機能材関連事業」、「ポリマー・塗加工関連事業」、「印刷・情報関連事業」、「パッケージ関連事業」の4セグメントで構成されている。
このうち、「印刷・情報関連事業」は主に紙への印刷に使用する平版用インキ(オフセットインキ等)、「パッケージ関連事業」は食品包装などフィルムへの印刷に使用するグラビアインキやフレキソインキなど、「色材・機能材関連事業」は印刷インキの原料でもある顔料をコア素材とし展開した製品、「ポリマー・塗加工関連事業」はこれもインキの主原料である樹脂とその設計技術から展開した事業である。

 

 

☆色材・機能材関連事業

 

19/12期

売上高

67,400

営業利益

3,386

利益率

5.0%

*単位:百万円

 

サブセグメント

主な製品

汎用化成品

顔料、顔料分散体

高機能化成品

高機能顔料、CF(カラーフィルター)ペースト

表示材料

液晶カラーフィルター用レジストインキ

着色剤

着色剤、機能性着色剤

その他色材・機能材

記録材塗料、機能性分散体、開発品

 


 

印刷インキの主たる原材料である有機顔料を母体として、色材技術、有機化学合成技術、高度な分散技術との融合によって様々な分野で使用される材料を提供している。中でもインキや塗料の製造で蓄積された技術の結集によるナノレベルの分散加工技術から、さらに機能を高めた液晶カラーフィルター材料を生み出した。
さらに分散加工技術は、有機顔料だけではなくCNT(カーボンナノチューブ)などの無機素材にも展開され、二次電池材料など新たなエネルギー分野への事業拡大にも繋がっている。

 

☆ポリマー・塗加工関連事業

 

19/12期

売上高

65,887

営業利益

6,013

利益率

9.1%

 

サブセグメント

主な製品

塗工材料

粘着テープ、接着テープ、マーキングフィルム、電磁波シールドフィルム

接着剤

粘着剤、接着剤、ラミネート接着剤、ホットメルト

塗料樹脂

製缶塗料、樹脂、機能性ハードコート

その他ポリマー・塗加工

メディカル製品、天然材料、開発品

*単位:百万円

 

 

中核素材の機能性樹脂にさまざまな機能を付与した製品を開発している。長年にわたって培われた独自技術を用いて新たな機能を創造し、エレクトロニクス、エネルギー、ヘルスケア関連などの分野において、新たな需要の開拓、市場の創造を目指している。

 

☆パッケージ関連事業

 

19/12期

売上高

68,071

営業利益

3,058

利益率

4.5%

*単位:百万円

 

サブセグメント

主な製品

リキッドインキ

グラビアインキ、フレキソインキ、グラビア溶剤

グラビア機器・製版

グラビア機器、グラビア・フレキソ製版

 

 

グラビア印刷、フレキソ印刷などの、パッケージ向け印刷用インキおよび機器・製版を取り扱っている。
食品包装などの分野では消費者の安心・安全のためにインキの水性化など環境に配慮した製品開発にも注力している。

 

☆印刷・情報関連事業

 

19/12期

売上高

76,680

営業利益

314

利益率

0.4%

*単位:百万円

 

サブセグメント

主な製品

オフセットインキ

オフセットインキ、新聞インキ、UV(紫外線硬化型)インキ、金属インキ

印刷材料機器

印刷機器、印刷材料

インクジェット・その他

インクジェットインキ、スクリーンインキ、その他開発品など

 

 

創業以来の中心セグメント。紙への印刷に使用する印刷インキが中心製品。

 

印刷インキの提供だけに留まらず、機械・機器の販売、印刷工程の効率化サポート、カラーマネジメントやカラーユニバーサルデザインに関する支援やツールの提供なども行っている。

 

◎海外展開
大きな成長を期待し難い国内市場では高付加価値製品による収益性向上を進める一方、今後成長が期待できる海外市場の開拓に製造、販売両面で積極的に取組んでいる。
海外生産体制は前中期経営計画中にほぼ完成し、原料調達、生産共に現地で行っている。
2019年12月末現在、約44の海外連結対象子会社を有し、幅広い国や地域で事業を展開している。

 

 

売上高

前期比

営業利益

前期比

日本

1,755

-3.4%

78

-19.0%

アジア・オセアニア

1,012

-5.0%

57

+4.1%

ヨーロッパ

198

-1.8%

-2

-

北米・中南米

140

-1.9%

-2

-

調整

-306

-

1

-

連結計

2,798

-3.6%

131

-13.8%

*単位:億円

 

<地域別セグメント動向:2019年12月期>

 

【1-5 ROE分析】

 

13/3期

14/3期

15/3期

16/3期

17/3期

17/12期

18/12期

19/12期

ROE (%)

5.8

7.3

6.9

5.9

6.0

4.8

5.4

3.9

 売上高当期純利益率(%)

3.50

4.39

4.64

4.30

4.93

4.34

4.10

3.04

 総資産回転率(回)

0.85

0.88

0.82

0.78

0.74

0.65

0.77

0.75

 レバレッジ(倍)

1.94

1.88

1.80

1.75

1.73

1.70

1.71

1.72

*17年12月期は12カ月換算値では6.8%。

 

一般的に日本企業が目標とすべきと言われている8%へ達するためには引き続き一段の収益性および効率性の改善が望まれる。

 

【1-6 特徴と強み】

①高い技術力
前述の様に、同社は印刷インキの原材料である顔料や樹脂も自社で生産を続けてきた。こうした技術力が高品質な印刷インキ生産のベースとなっているのはもちろんのこと、液晶用カラーフィルター材料や接着剤・粘着剤など、事業領域や製品の拡大に繋がっている。

 

②優れた課題解決能力
同社が印刷インキ国内首位の地位を築いている大きな背景の一つが印刷会社に対する高い課題解決能力だ。
印刷インキの製造・供給のみでなく、版作り、画像など「印刷」に関連する要素全般に関して古くから研究を続けており、これが顧客に対する技術提案力やサービス力、ひいては顧客満足度の向上に繋がっている。

 

③環境に対する取り組み
同社では、CO2の削減とともに、Non-VOCインキや水性インキ、UVインキなどの環境調和型インキにもいち早く取り組んできた。新興国においても環境規制は一段と強化されており、ニーズは拡大している。また化学物質管理への取り組みや他社に先駆けたスイス条例対応製品のラインナップ化など安全・安心への取り組みも進んでいる。

 

④経営戦略の独自性
M&Aについては、同社がもつ技術力を新しい市場に展開するうえで、シナジー効果が期待できる場合には選択肢のひとつとして考えている。ただ、単にボリュームアップを目的としたM&Aは志向していない。また、輸送マイレージの削減、現地品の利用など、効率性向上と社会的貢献の両面から海外市場における「地産地消」のポリシーを印刷インキ業界ではいち早く打ちたてて実践してきた。

 

2.2019年12月期決算概要

(1)業績概要

 

18/12期

構成比

19/12月期

構成比

前期比

期初予想比

売上高

290,208

100.0%

279,892

100.0%

-3.6%

-6.7%

売上総利益

62,293

21.5%

60,333

21.6%

-3.1%

-

販管費

47,017

16.2%

47,159

16.8%

+0.3%

-

営業利益

15,276

5.3%

13,174

4.7%

-13.8%

-24.7%

経常利益

15,429

5.3%

13,847

4.9%

-10.3%

-23.1%

当期純利益

11,847

4.1%

8,509

3.0%

-28.2%

-29.1%

単位: 百万円。

 

減収減益
売上高は前期比3.6%減の2,798億円。オフセット印刷や自動車市場の需要減により販売数量が低迷。パッケージ以外は減収だった。
営業利益は同13.8%減の131億円。価格改定(+19億円)、固定費削減(+4億円)のプラス要因はあったが、メディア材料のCFペーストなど高機能製品の販売数量減少(‐34億円)、メディア材料の販売価格下落(‐7億円)などが影響した。

 

(2)セグメント別動向

売上高

18/12期

構成比

19/12月期

構成比

前期比

色材・機能材

74,660

25.7%

67,400

24.1%

-9.7%

ポリマー・塗加工

66,099

22.8%

65,887

23.5%

-0.3%

パッケージ

68,047

23.4%

68,071

24.3%

+0.0%

印刷・情報

79,378

27.4%

76,680

27.4%

-3.4%

その他

7,228

2.5%

7,291

2.6%

+0.9%

調整

-5,205

-

-5,439

-

-

合計

290,208

100.0%

279,892

100.0%

-3.6%

営業利益

 

 

 

 

 

色材・機能材

5,329

7.1%

3,386

5.0%

-36.4%

ポリマー・塗加工

6,035

9.1%

6,013

9.1%

-0.4%

パッケージ

1,491

2.2%

3,058

4.5%

+105.0%

印刷・情報

931

1.2%

314

0.4%

-66.3%

その他

1,481

20.5%

424

5.8%

-71.4%

調整

6

-

-23

-

-

合計

15,276

5.3%

13,174

4.7%

-13.8%

単位:百万円。利益の構成比は売上高利益率。

 

☆色材・機能材関連事業
減収減益。

 

(顔料)
減収減益。
プロダクトミクスが改善し、アライアンスによるコストダウンを推進したが、インキ市場の縮小や自動車分野の需要低調で伸び悩んだ。インクジェットインキ用分散体は海外でスペックインした。

 

(メディア材料)
減収減益。
レジストの日本でのシェアは維持した。中国の売上は拡大したが単価下落で減益となった。
CFペーストは主要顧客の事業撤退、OLED化の影響で低調となった。
センサー材料は拡販が進展、評価設備を増強した。

 

(着色剤)
減収減益。
容器・キャップ分野は年度後半に需要が減少した。
建材・自動車分野は需要が低調で、 海外ではプリンター市場の低迷により販売が伸び悩んだ。

 

(機能性分散体)
増収増益。
日本では自動車用途が好調に推移した。アジア・欧米では自動車用電池メーカーに対して拡販が進展した。中国でCNT(カーボンナノチューブ)分散体の生産拠点を構築した。

 

☆ポリマー・塗加工関連事業
減収減益。

 

(塗工材料)
減収減益。
5G対応やディスプレイ用途の拡販が進んだが、モバイル市場の不調により既存品が伸び悩んだ。
低誘電関連製品は評価が進んだが、市場の立ち上がりは想定より遅延しており、今後に期待している。

 

(接着剤)
増収増益。
ディスプレイやライフサイエンス用の粘着剤が国内外で伸長したことを受け海外拠点のSCM整備を推進した。
リチウムイオン電池用ラミネート接着剤が伸長した。

 

(塗料樹脂)
減収増益
環境対応塗料は国内での展開が遅延した。 ニッチ市場への高付加価値樹脂の拡販が進展した。

 

☆パッケージ関連事業
増収増益。

 

(軟包装材)
増収増益。
バイオマスインキは様々な用途で拡販が進んだ。
フレキソインキの拡販は一部に留まった。
グラビアインキでは価格改定が浸透し、 ミドルグレードはアジア・中国共に拡販が進んだ。

 

(建材)
減収減益。
国内は堅調だったが、海外は伸び悩む。
中国で建材用水性インキを開発した。

 

(段ボール)
増収増益。
バイオマスインキの販売が着実に増加した。 価格改定の浸透は限定的だった。

 

☆印刷・情報関連事業
減収減益。

 

(オフセットインキ)
減収減益。
業務効率化・人材配置転換により固定費を削減した。新聞インキは日本新聞インキとのアライアンスを検討中である。
墨インキの生産移管を開始した。 価格改定が一部で進んだほか、インド・中南米などの新興国市場で販売が伸長した。

 

(機能性インキ)
増収減益。
商業印刷用途は好調に推移した。 価格改定を推進したが原材料価格の高止まりで効果は限定的となった。
欧州では段ボール・ラベル、中国ではサイン・出版、日本では商業印刷市場向けに拡大が進んだ。
新規顧客開拓が進み、生産現地化も進んだ。

 

(3)財務状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS

 

18年12月末

19年12月末

 

18年12月末

19年12月末

流動資産

203,063

199,969

流動負債

100,839

106,747

 現預金

52,706

56,691

 買入債務

62,460

59,543

 売上債権

95,553

90,173

 短期借入金

20,593

30,315

 たな卸資産

48,779

48,508

固定負債

49,679

42,490

固定資産

168,547

176,161

 長期借入金

38,845

27,460

 有形固定資産

94,013

99,577

負債合計

150,518

149,237

 無形固定資産

4,649

4,202

純資産

221,091

226,892

 投資その他の資産

69,883

72,381

 株主資本

202,600

205,891

資産合計

371,610

376,130

負債純資産合計

371,610

376,130

 

 

 

自己資本比率

57.6%

58.3%

*単位:百万円

 

売上債権の減少などで流動資産は前期末に比べ30億円減少したが、有形固定資産、投資その他の資産の増加で資産合計は同45億円増加の3,761億円となった。
長期借入金の減少等で負債合計は同12億円減少の1,492億円。利益剰余金の増加で純資産は58億円増加の2,268億円となった。
この結果、自己資本比率は前期末の57.6%から0.7ポイント上昇し、58.3%となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

18/12月期

19/12月期

増減

営業CF

19,197

19,673

+476

投資CF

-10,828

-10,404

+424

フリーCF

8,369

9,269

+900

財務CF

-5,695

-6,247

-552

現金同等物残高

50,958

53,765

+2,807

*単位:百万円

 

フリーCFのプラス幅は拡大。キャッシュポジションは上昇した。

 

3.2020年12月期業績予想

(1)業績見通し

 

19/12月期

対売上比

20/12月期(予)

対売上比

前期比

売上高

279,892

100.0%

290,000

100.0%

+3.6%

営業利益

13,174

4.7%

15,000

5.2%

+13.9%

経常利益

13,847

4.9%

15,500

5.3%

+11.9%

当期純利益

8,509

3.0%

10,000

3.4%

+17.5%

*単位: 百万円。予想は会社側発表。

 

増収増益を目指す。
売上高は前期比3.6%増の2,900億円の予想。印刷・情報以外は増収。成長ドライバーと位置付けるパッケージセグメントを中心に増収を目指す。
営業利益は同13.9%増の150億円の予想。固定費増加(-10億円)、販売価格下落(-10億円)などを高機能製品の拡販など販売数量の増加(+35億円)、オフセットインキや顔料の価格改定(+10億円)で吸収する。
新型コロナウィルスの影響は織り込んでいない。今期も原材料価格高騰の影響を考慮し、リスク対策を継続する。
配当は前期と同じく90.00円/株を予定。予想配当性向は52.6%。

 

(2)セグメント別動向

売上高

19/12月期

20/12月期(予)

前期比

色材・機能材

674

725

+7.6%

ポリマー・塗加工

659

705

+7.0%

パッケージ

681

700

+2.8%

印刷・情報

767

760

-0.9%

その他・調整

19

10

-47.4%

合計

2,798

2,900

+3.6%

営業利益

 

 

 

色材・機能材

34

38

+11.8%

ポリマー・塗加工

60

65

+8.3%

パッケージ

31

35

+12.9%

印刷・情報

3

15

+400.0%

その他・調整

4

-3

-

合計

131

150

+13.9%

*単位:億円。

 

(各セグメントの主要課題と重要施策)
☆色材・機能材関連事業
(顔料)
市場環境変化に対応するグローバルSCMを整備する。
デジタル印刷材料の開発を継続する。

 

(メディア材料)
中国市場へ本格参入する。
センサー関連事業を次世代の柱へと育成する。

 

(着色剤)
メディカル材料の実績を積み上げる。
環境対応製品の開発に取り組む。

 

(機能性 分散体)
車載用リチウムイオン電池用材料の事業を拡大する。

 

重要施策
メディカル分野において光線制御材料の開発を進める。コア技術である色素合成・分散樹脂合成・ポリマー合成技術を活かし、光線制御材料を用いた光線カット輸液バッグを開発。紫外線吸収剤の開発により遮光カバー不要でビタミン劣化抑制が可能となる。

 

また、次世代事業としてセンサー周辺材料の開発に取り組む。モビリティにフォーカスし、マーケティング強化によりセンシングに向けた一歩先の先端材料開発を目指す。

 

☆ポリマー・塗加工関連事業
(パッケージ・工業材料)
環境調和型製品群のグローバル展開を進める。
グローバルサプライチェーンの見直しと海外生産拠点の拡充にも取り組む。

 

(エレクトロニクス)
5G ・IoT市場への展開に加え、新ディスプレイ周辺材料の開発を進める。

 

(メディカル・ヘルスケア)
貼付薬の新パイプラインを拡充するほか、ヘルスケア用接着剤の拡大を目指す。

 

重点施策
CO2削減、省エネ、脱石化、廃プラ・リサイクルなど、世界のブランドオーナーのニーズに対応した環境調和型製品群(水性・無溶剤、ハイソリッド、バイオマスなど)のグローバル展開と海外生産拠点の拡充を進める。

 

今後の急成長が見込まれる5G ・IoT市場においてテクノロジー変革を捉えノイズ対策や工程改善などを訴求した製品群(高周波電磁波シールド材、低誘電関連部材、センサー関連部材・システムなど)を展開する。

 

☆パッケージ関連事業
(パッケージ・建材)
国内需要は19年並みで推移すると見込む。環境調和型製品の開発・拡販、生産の効率化、建装材分野の開発推進、新 製品展開によるフレキソインキのシェア拡大を図る。
海外においては、中国・アジア地区ではエリアニーズに合った製品開発を強化し、新興エリアでの生産設備の増強、グローバル拠点の収益改善を目指す。

 

(段ボール)
価格改定の浸透 、クラフト分野の拡販推進、各種コストダウン施策による収益性向上を図る。

 

重点施策
バイオマスインキ等、環境対応製品群の更なる性能向上による拡販のほか、品種統合を推進し、環境調和型製品の事業を拡大する。中でもクラフト用バイオマスインキは大きな成長を期待している。

 

今後の需要拡大が見込まれる西アジアから東アジア、東南アジアにおいて、ミャンマー、トルコ、インド、インドネシアなど、各エリアの個別ニーズに対応しながら広くプレゼンスを向上させるため生産設備の増強を図る。

 

☆印刷・情報関連事業
(オフセットインキ)
利益確保が最優先事項。国内外ともに構造改革を推進し、原材料の見直しなどコストダウンを進め、収益を向上させる。
厳しい事業環境が継続すると見ており、価格改定の浸透を図る。
国内外ともに地域に合った新製品投入やSCMを展開する。

 

(機能材性インキ)
UVインキにおいては印刷機メーカーと連携を深め、中南米・インド市場へ展開し、環境調和型製品を拡大する。
インクジェットインキにおいては、海外生産設備の増強、新興国向け製品群拡充によりグローバル展開を加速する。
金属インキは製缶用塗料と連携し、海外市場においてUV硬化型インキを拡大させる。

 

重点施策
環境調和型製品としてバイオマスインキの品揃えを拡充し、用途を拡大する。

 

インクジェットインキは、日本・米国に加え、欧州・インド・中国で設備を増強し5極での生産・物流体制を構築。印刷・サイングラフィックス市場での占有率をさらに拡大する。

 

4.中期経営計画「SIC-Ⅰ」(2018年度‐2020年度)の進捗

2018年1月にスタートし、今期が最終年度となる「中期経営計画SIC-Ⅰ(2018-2020年度)」の進捗は以下の通りである。

 

<数値目標について>

◎全社

 

2018年12月期

 

2019年12月期

2020年12月期

(予想)

2020年12月期

(当初計画)

売上高

2,902

2,798

2,900

3,500

営業利益

152

131

150

280

* 単位:億円。

 

残念ながら、下記の要因により、当初計画数値達成には至らないこととなった。
*原料価格の高騰・高止まり
*市場構造の急激な変化
*新製品の実績化不十分
*既存事業の構造改革の進捗遅れ

 

ただ、重点領域と位置付けるポリマー・塗加工セグメントおよびパッケージセグメントの営業利益総額に占める割合は着実に増加している。

 

(その他・調整を含む営業利益総額に占める割合の推移)

 

2018年

2020年

(計画)

色材・機能材

34.9%

25.3%

ポリマー・塗加工

39.5%

43.3%

パッケージ

9.8%

23.3%

印刷・情報

6.1%

10.0%

 

重点領域であるパッケージ、ポリマー・塗加工セグメントの成長へ向けた設備投資や人的投資は緩めることなく継続していく考えだ。

 

<投資計画>
パッケージセグメント、ポリマー・塗加工セグメントを中心に重点領域への投資を積極的に実施していく。
SIC-Iにおける投資総予算420億円(発注ベース)のうち、18年度102億円、19年度133億円に合計235億円を投資したが、19年度に着手が遅れた分もあるため、20年度は残り185億円を使い切る計画である。

 

(20年度設備投資計画 総額185億円の内訳)

 

2020年

(計画)

色材・機能材

13%

ポリマー・塗加工

31%

パッケージ

37%

印刷・情報

8%

その他

11%

 

パッケージセグメントにおいては、トルコに新工場を建設する。
新工場の建設によりグラビアインキおよびラミネート接着剤の生産キャパシティ増強と各種規制対応を実現する。
トルコ市場におけるトップシェア獲得と周辺国への輸出拡大により、2026年度までに拠点売上倍増を目指す。

 

ポリマー・塗加工セグメントにおいては、海外拠点の粘着剤生産能力強化を進める。
米国では稼働率100%近くとなっている溶剤系粘着剤生産設備を増強するほか、中国では珠海拠点に環境対応として水性粘着剤生産設備を新設する。
米国では生産能力を2倍とし更なる事業拡大を図り、中国では生産現地化による競争力向上を目指す。

 

<目指す姿:環境製品群の強化>
すべての生活者・生命・地球環境がいきいきと共生する世界に貢献するために、社会課題の解決にむけた価値を提供する。
具体的には、SDGs(持続的開発目標)の中から12の目標を取り上げて、VOC(揮発性有機化合物)対策、CO2削減、フードロス削減、廃プラ・リサイクルにおける環境調型製品の開発を進めている。
同製品の2018年度売上高は2014年度比8.2%増となった。
今後も低環境負荷にとどまらない、持続可能な社会の実現を可能とする製品開発に注力していく。

 

5.今後の注目点

残念ながら、中期経営計画「SIC-Ⅰ」(2018年度‐2020年度)の数値目標達成は、原料価格の高騰・高止まり、市場構造の急激な変化、新製品の実績化不十分、既存事業の構造改革の進捗遅れなどにより未達が確実となってしまった。
加えて、新型コロナウィルの影響もあり、同社に限ったことではないが短期的には収益見通しの不透明感は強まっている。
一方で、今後のドライバーと位置付けるパッケージセグメント、ポリマー・塗加工セグメントは着実に利益面での柱となってきている点は心強い。

 

優れたコア技術をベースに、グローバルベースで環境調和型製品を開発するとともに、5G・IoTなど時代の潮流にも沿った新製品をどれだけスピーディーに市場投入していくことができるのかを引続き注目していきたい。

 

 

<参考1:中期経営計画「SIC-Ⅰ」(2018年度‐2020年度)>

持続的な成長を実現する2027年に向けた10年の長期構想「Scientific Innovation Chain 2027 (SIC27)」の下、3年ごと3段階の中期経営計画に落とし込み、課題と役割を明確にし、目指す未来に向けて着実に行動していこうと考えている同社は、第1段階である「中期経営計画SIC-Ⅰ(2018-2020年度)」を2018年1月にスタートさせた。

 

<基本方針>

テーマは「挑戦を繰り返す。」
更なる100年レンジでの持続的成長の礎を創り上げる期間と位置付け、変革のための施策を立て続けに打つ。
①成長に向けた既存事業の変革と新事業への挑戦
②持続可能性向上に向けたモノづくり革新の推進
③経営基盤の刷新

 

<セグメント別主要課題>

色材・機能材

◆独自顔料とナノ分散技術を活かした製品群の開発・拡販

*LiB関連材料:EV化の加速を追い風に、カーボン分散体をはじめとしたLiB関連材料の拡大をはかる。

*高機能製品:独自素材とナノ分散技術を活かし、これまでにない光学・絶縁機能を有する製品の開発を進める。

 

◆カラーフィルター材料・センサー材料のさらなる拡大

*拡大する中国市場の需要を確実に取り込み、パネル向けカラーフィルター材料の拡販を進める。

*トリリオン・センサー時代の到来に向けた開発強化

ポリマー・塗加工

◆モノづくりを基点としたソリューション提案型マーケティングによる新規市場の創出

*エレクトロニクス:オープンイノベーションを活用し、熱や電磁波の制御を核とした新素材の開発を加速する。

*包装・工業材:環境・省力化に寄与する安心安全な材料の提案。

 

◆メディカルサイエンス事業を次の成長の柱に育てる

*貼付型医薬品の開発強化。

*細胞培養コーティング剤や医療用テープに使用する粘着剤など、ヘルスケア関連製品の拡販を進める。

パッケージ

◆市場の変化に応じた製品開発の加速

*顧客視点での評価技術環境整備を進め、待ち受け型新製品開発を推進

*インクジェットインキ:市場の裾野拡大に対応した製品開発加速

*金属インキ:海外市場展開加速

 

◆環境に配慮した製品群の強化

*バイオマス:バイオマス製品群ラインナップの拡充

*水性:パッケージ製品群高機能化によるグローバル展開加速

*UV:パッケージ分野へのグローバル展開推進

 

◆地域ごとのニーズに応じた生産体制の構築

*グローバル生産体制再構築による供給基盤強化、及びCS向上

*海外技術センター、技術サービス強化によるCS向上

*国内成熟事業における抜本的構造改革の推進による事業基盤強化

印刷・情報

*2018年度よりコーティング材料の一部は印刷・情報関連事業からポリマー・塗加工関連事業にセグメントを変更した。

 

 

<主要施策>

①成長に向けた既存事業の変革と新事業への挑戦
【1-1既存事業の変革】
■グローバル展開
海外市場での成長力を高めるため、これまでに進出した拠点の複合化・製品の拡充を進め、多彩なビジネスを展開していく。
インクジェットインキ・インキ用顔料分散体では、環境対応製品の生産を中国(珠海)で着手するほか、日米仏で品目を拡充する。
ラミネート接着剤では、食品パッケージ市場に対して、リキッドインキビジネスを展開するグローバル拠点と連携して拡販を図る。
2017年度比で530億円の増収を目指す。

 

■新製品の拡大
顔料・樹脂を核に新規素材の開発を進め、コア技術である合成・分散・成膜技術と組み合わせることで新しい価値を創造し、新市場・新規エリアでの拡大をはかる。
中でも、ポリマー・塗加工関連事業においてエレクトロニクス関連材料やメディカルヘルスケアに注力する。
2017年度比で160億円の増収を目指す。

 

【1-2新事業への挑戦】
SIC-Iで注力する6つの重点ドメインを設定した。持続的成長に向け、単なる製品の提供にとどまらないソリューション提案を中心とした新しいビジネスモデルの開発に挑戦し、「SIC-Ⅱ」、「SIC-Ⅲ」に繋げていく。

 

フィールド

ドメイン

Life

*パッケージ

*モビリティ

*メディカルヘルスケア

Communication

*IoT

Sustainability

*天然材料

*エネルギー

 

以下、4つのビジネスに注力する。

 

[センサー関連ビジネス]
ドメインは、モビリティ、メディカルヘルスケア、IoT。
成長著しいIoT市場において、急速に増加する「センサー」に着目。ケミカルを軸とした「モノづくり」に加え、新しいテクノロジーを取り入れて「情報・システム」までを提供するセンサー関連ビジネスの開発に挑戦する。
(主要製品・サービス)
イメージセンサー材料、センサーデバイスなど。「SIC-Ⅱ」、「SIC-Ⅲ」ではセンシングデータに基づくデータビジネスの展開も視野に入れている。

 

[生活余熱関連ビジネス]
ドメインは、モビリティ、IoT、エネルギー。
生活周辺で未利用となっている「生活余熱」に着目し、これを高効率で無駄なく再生・利用する技術開発を進め、エネルギーの循環利用ソリューションを提供するビジネスに取り組む。
(主要製品・サービス)
耐熱接着シート、超耐熱絶縁・熱伝導シート、高耐熱マネジメント部材群など。

 

[ヘルスケア関連ビジネス]
ドメインは、メディカルヘルスケア。
貼付型医薬品事業プラットフォームをベースに、医薬事業基盤を着実に拡大し、周辺のヘルスケア関連材料の開発・拡販も強化していく。
(主要製品・サービス)
血糖値検査チップ用テープ、医療用粘着剤、生体適合ポリマー、次世貼付型医薬品など。

 

[天然素材関連ビジネス]
ドメインは、天然素材。
可食色素や笹関連製品の事業プラットフォームを活かした新たな機能性天然素材のビジネス化や、バイオマス製品の拡充を進め、低炭素社会への一層の貢献を目指す。
(主要製品・サービス)
可食色素製品、クマザサ関連製品、バイオマスインキ、機能性食品素材など。

 

②持続可能性向上に向けたモノづくり革新の推進
同社ではこれまで、積極的な海外拠点拡大によるモノづくりネットワーク構築、環境に配慮した安心・安全なモノづくりの構築、グローバルでの化学物質管理・貿易管理体制の整備に取り組んできた。
SIC-Iでは、生活者・生命・地球環境の持続可能性向上に貢献するため、自らの持続的成長も見据えたモノづくり革新に取り組み、持続可能性への貢献と収益確保の両立を目指す。

 

(取り組み例)
*パートナーとの共存共栄によるグローバル・サプライチェーンの構築
*デジタル技術融合による生産プロセス革新
*地球環境と共生するモノづくり(省エネ、CO2排出量削減等)の推進

 

③経営基盤の刷新
既存事業の変革、新規事業の創出、モノづくりの変革に向け、業務システムのグローバル統合推進や、変革に向けた人材採用、制度改革(確定拠出年金制度への完全移行、65歳定年制開始)などの経営基盤強化を進めるとともに、経営と一体となったCSR活動を推進し、生活者・生命・地球環境の持続可能性向上に貢献していく。
イノベーションを立て続けに創出するための基盤を強化する。

 

(取組み例)
*グローバルでのERP統合推進、AI活用による業務効率化推進
*変革に必要な人材の積極採用、イノベーションを促す人事制度への刷新
*東洋インキグループの重要課題(マテリアリティ)の達成に向けた積極的なCSR活動の推進

<参考2:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査役会設置会社

取締役

14名、うち社外4名

監査役

5名、うち社外3名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2019年4月4日

 

<基本的な考え方>
当社グループは、2011年4月1日をもって持株会社体制へ移行いたしました。持株会社体制のもと、グループ戦略機能を強

 

化し、スピード経営を推進し、グループ全体最適と各事業最適をバランスさせることを通じてグループ全体としての価値向上を目指しております。

 

当社グループにおける経営の枠組みは、グループ企業経営における基本的な考え方を体系化した経営哲学及び経営理念ならびに行動指針からなる「東洋インキグループ理念体系」と、社会的責任への取組み姿勢を明確にしたCSR憲章及びCSR行動指針からなる「CSR価値体系」で構成されております。
当社グループは、「東洋インキグループ理念体系」と「CSR価値体系」を実践することにより、サイエンスに基づくモノづくりを通して、生活者・生命・地球環境の持続可能性向上に貢献し、経営理念に掲げる「世界にひろがる生活文化創造企業」を目指してまいります。
そのためにはステークホルダーと同じ視点で自身の企業活動を評価し、経済、社会、人、環境においてバランスの取れた経営を遂行することこそが、企業としての有形、無形の価値を形成し、社会的責任を果たすための最重要課題として位置付けております。

 

この実現のために、

事業執行機能を各事業会社に委譲するとともに、コーポレート・ガバナンスを強化するため、グループ各社に適用される稟議規程及び関係会社管理規程の適切な運用

内部統制システムの整備

株主総会、取締役会、監査役会、会計監査人など法律上の機能制度の強化による指導・モニタリング機能の向上

迅速かつ正確、広範な情報開示による経営の透明性の向上

コンプライアンス体制の強化・充実

地球規模の環境保全の推進

などを進め、株主や取引先、地域社会、社員などの各ステークホルダーと良好な関係を構築し、コーポレート・ガバナンスを充実させております。

 

<実施しない主な原則とその理由>
当社は、コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しております。

 

<各原則に基づく主な開示>

原則

開示内容

原則1-4.

当社は、政策保有上場株式について、毎年、取締役会において、経済合理性を検証しております。資本コストと比較した保有に伴う便益や取引状況などを個別銘柄毎に検証し、保有が適切ではないと判断した銘柄は、当該企業の状況や市場動向を勘案した上で縮減を進めてまいります。なお、前期は3銘柄の全量売却を実施いたしました。

政策保有上場株式の議決権行使については、各議案が発行会社の中長期的な企業価値の向上に資するものであるか否か、当社を含む株主共同の利益に資するものであるか否か、また当社グループの経営や事業に与える影響等を定性的かつ総合的に勘案したうえで、議案毎に適切に行使いたします。なお、発行会社において企業価値の著しい毀損、重大なコンプライアンス違反の発生等、特別な事情がある場合や、株主としての当社の企業価値を損なうことが懸念される場合は、発行会社との対話等により十分に情報収集したうえで、慎重に賛否を判断いたします。

原則5-1.

当社では株主・投資家を重要なステークホルダーと考えており、行動指針の一つとして「株主様満足度の向上」(SHS:ShareHolder Satisfaction)を掲げ、株主権の尊重と株主価値の向上に取り組んでおります。その中でも株主や投資家との建設的な対話は重要なファクターと位置付けております。財務・総務・IR担当の取締役を指定し、関係各部門の有機的連携により情報共有を確実に行い、株主にはグループ総務部、投資家にはグループ広報室が窓口となって対話の促進を図っており、対話を通じて把握した意見のうち重要性が高いと判断したものについては担当取締役に適宜報告しております。

インサイダー情報の管理については、インサイダー取引防止管理規程、情報保護管理規程などを定めているほか、ビジネス行動基準に具体的な行動指針として定め、ガイドブックを全グループ社員に配布するとともに、定期的な教育を行うことで周知徹底を図っております。

 

 

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