ブリッジレポート
(8061) 西華産業株式会社

プライム

ブリッジレポート:(8061)西華産業 2021年3月期第2四半期決算

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櫻井 昭彦 社長

西華産業株式会社(8061)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

卸売業

代表取締役社長

櫻井 昭彦

所在地

東京都千代田区丸の内3-3-1 新東京ビル

決算月

3月末日

HP

http://www.seika.com/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,270円

12,820,650株

16,282百万円

-4.7%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

45.00円

3.5%

134.51円

9.4倍

2,058.12円

0.53倍

*株価は12/8終値。発行済株式数、DPS、EPSは21年3月期第2四半期決算短信より。ROE、BPSは前期実績。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2017年3月(実)

150,742

3,046

3,390

2,140

161.29

55.00

2018年3月(実)

165,585

2,598

2,877

1,655

128.38

55.00

2019年3月(実)

157,145

2,118

2,418

1,587

125.50

45.00

2020年3月(実)

140,677

2,809

3,122

-1,262

-100.73

45.00

2021年3月(予)

135,000

2,400

2,700

1,650

134.51

45.00

*単位:百万円、円。2017年10月1日付で5:1の株式併合を実施。EPS、DPSは遡及して調整。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
以下同様。

 

西華産業株式会社の2021年3月期第2四半期の決算概要などをお伝えします。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2021年3月期第2四半期決算概要
3.2021年3月期業績予想
4.中期経営計画「Re-SEIKA 2023」
5.今後の注目点
<参考1:長期経営ビジョン>
<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 2021年3月第2四半期の受注高は前年同期比15.6%減の634億11百万円。マスク製造装置や飛沫分析装置の受注など新型コロナウイルス感染症予防対策関連の受注があったものの、既存顧客設備向け定期検査工事の延期や設備投資計画が中止されるなどの影響を受け受注減。売上高は同13.2%増の709億35百万円。主に社会インフラを担う電力事業の大口案件の売上増が寄与し増収。営業利益は同10.9%増の9億53百万円。一般産業向けに機械販売を展開する産業機械事業が収益面で寄与し増益。また、一部業績不振の海外子会社があったものの、子会社全体の業績は堅調に推移し増益。当期純利益は同12.7%増の5億30百万円。

     

  • 2021年3月期の業績見通しは変更なし。売上高は前期比4.0%減の1,350億円、営業利益は同14.6%減の24億円の予想。新型コロナウイルス感染症の拡大が当社グループに与える影響については精査中であり、現時点で入手可能な情報に基づき業績予想を算定。今後の新型コロナウイルス感染症の収束時期や国内外の市況などにより予期せぬ変動が生じる可能性があり、同社グループの業績に影響を及ぼす事象が生じ、業績予想の修正が必要となった場合には、速やかに公表予定。配当は前回と変わらず45円/株の予定。予想配当性向は33.5%。

     

  • 2020年10月1日にセイカダイヤエンジン社を設立。三菱重工エンジン&ターボチャージャ社(MHIET)からMHIETの100%子会社である三菱重工エンジンシステム社の国内舶用エンジン販売・サービス事業の譲渡契約に基づき株式を取得し、セイカダイヤエンジン株式会社を設立。洋上風力発電設備用の作業船など商工船向けエンジンや大型船の補助エンジン等の新たな分野への進出を図っている。

     

  • 前中期経営計画である「中期経営計画 CS2020」が目標未達だったため、今中期経営計画「Re-SEIKA 2023」は世界的な新型コロナウイルスの感染拡大に直面するという多難な船出となったが、市場の評価・信頼を得るためには目標達成が必須となる。高成長を見込んでいる産業機械事業およびグローバル事業の進捗が注目される。

     

  • 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の中で、厳しい出足となった中期経営計画「Re-SEIKA 2023」だが、今中計期間中に各営業プロジェクト(再生可能エネルギー、ライフサイエンス、モビリティ)を具現化できるのかが注目される。とりわけ新たな収益源をこの期間に開拓できるのかが重要な課題である。また、同社が得意とする電力事業では、老朽化が進む火力発電設備のリプレイスなどを如何に取りこぼすことなく収益に取り込んでいけるのかもポイントとなろう。

     

     

1.会社概要

「社業の発展を通じ社会に貢献する。これを我社の信条とする。」を企業理念に、機械総合商社として、電力、化学・エネルギー、産業機械分野の機械設備や機器等の販売およびサービスの提供を行っている。
現場密着の営業力、各事業における専門性の高さ、国内外103拠点に上る広範なネットワークの3つが特長及び強み。

 

【1-1 沿革】

太平洋戦争終戦後の1947年7月、連合国最高司令官ダグラス・マッカーサーの覚書により旧三菱商事株式会社が解体を命ぜられると同時に、同年10月、初代社長中林恒治氏ら同社門司支店機械部門関係者が中核となり福岡県門司市(現・福岡県北九州市門司区)に西華産業株式会社を設立。
「商道の精華:商いの本質を極める。自分も儲けるが、相手にも便宜を与える。」、「西の花形:西日本の花形企業を目指す。」、「華:将来、対中国貿易が盛んになるときに役立つかもしれない。」の3つが社名の由来である。
東京、大阪を含む国内各地に支店を開設した後、1954年10月には当時日本人が数名しか在住していなかったドイツ(旧西ドイツ)・デュッセルドルフに海外事務所を開設するなど、積極的な事業展開を行い、1961年10月には東証1部に上場した。
その後も、西日本を中心とした営業基盤の強化と、米国、欧州、アジア各地への拠点展開により機械総合商社として発展してきた。
設立80周年にあたる2027年に向け、長期経営ビジョン「10年後の西華産業グループ像」および3カ年計画のセカンドステップとなる「中期経営計画Re-SEIKA 2023」を推進中である。

 

【1-2 企業理念等】

以下のような企業理念及び行動規範を掲げている。

企業理念

「社業の発展を通じ社会に貢献する。これを我社の信条とする。」

 

社会がどのように変化しようとも、あらゆるステークホルダーに報いる経営を行い、豊かな社会の実現に貢献する「価値のある企業」であり続けたいと考えております。

行動規範

1. 信用は、なにものにも代え難い財産である。

2. 常に存在意義を高く評価されるようにすることが、商社活動の基本である。

3. 迅速、適確な情報活動と効果的な対応は、すべてを制する。

4. 直観的思考に偏することなく、客観的考察と必然性、合理性の追及を行い諸事判断処置すべきものとする。

5. 開拓精神に燃え、あらゆる困難、障害、激動に挑戦し、これを克服することを誇りとすべきである。

 

また、西華産業グループとしての結束力やグループ経営を推進していくため、「グループポリシー」、「グループ行動規範」、「グループミッション」を定め、グループに属する各社および、そこで働く社員一人ひとりがこれらを共有し、 日々の行動に繋げ、グループ全体で企業価値の向上を目指している。

グループ

ポリシー

私たち西華産業グループは、お互いが連携し、高め合い、 公明正大な企業活動を通じて持続可能な社会の発展に貢献します。

グループ

行動規範

一人ひとりが法令を遵守すると共に 社会から信頼されるよう倫理観を持って行動します。

グループ

ミッション

グループ全体で豊かな社会を実現します。

 

【1-3 事業内容】

(1)事業セグメント
機械総合商社として、電力、化学・エネルギー、産業機械分野の機械設備や機器、附帯製品の販売およびサービスの提供を行っている。
報告セグメントは、2021年3月期より「電力事業」「化学・エネルギー事業」「産業機械事業」「グローバル事業」の4セグメント。

 

①電力事業
関西電力、九州電力、中国電力、四国電力、電源開発の電力会社および、和歌山共同火力を含めた共同電力会社など、 西日本地域の電力会社を顧客とし、ボイラー、ガスタービンなどの事業用発電設備、排水や排ガスを処理する環境保全設備の販売やアフターサービスを提供している。
また、原子力発電所向けにセキュリティ設備や消火設備などの防犯・防災設備などを販売している。
この他にも、小型水力、風力、バイオマス等の再生可能エネルギー向けの発電設備やアフターサービスを提供している。
仕入先は、三菱重工グループである三菱パワー株式会社(MPW)などであり、西華産業は、MPWの火力発電設備の販売代理権を有している。

 

 

 

(同社資料より)

 

②化学・エネルギー事業
石油精製、化学、製紙、鉄鋼等の事業会社向けにボイラー、タービンなどの自家用発電設備、排水や排ガスを処理する環境保全設備などの販売やアフターサービスを行っている。電力事業と同じくMPWなどから仕入れて販売している。
また、環境負荷低減商材やバイオマス発電向け設備および燃料の販売を行っている。

 

 

 

(同社資料より)

 

③産業機械事業
幅広い産業分野の顧客に対して、国内または海外メーカー製の繊維設備、食品加工設備、醸造設備、各種プラント設備、液晶関連設備、環境関連設備、無停電電源装置(UPS)、電子機器用プリント基板などを販売するほか、官公庁や研究機関向けに、レーザー計測機器や細孔径測定装置など先端技術を駆使した計測機器を納入。
また、中国におけるEV(電気自動車)向けリチウムイオン電池用関連設備やモーター製造設備などの販売も行っている。
子会社の日本ダイヤバルブ株式会社では、各種産業用バルブの製造・販売を行っている。

 

(同社資料より)

 

 

④グローバル事業
(欧州)
自動車分野として車載関係の顧客に産業用ロボットを販売しているほか、社会インフラ分野として公共工事などで使用される水中ポンプの販売及びレンタルも行っている。いずれも仕入先は日本メーカーが中心。
(北米)
自動車分野として主に自動車部品業界向けに日本メーカー製のエレクトロニクス基板実装関連機器を販売している。
(アジア)
産業機械分野として主に自動車、化学、繊維業界向けに日本メーカー製の機械設備を販売しているほか、繊維メーカーに対し繊維原材料を海外で調達し販売している。

 

(同社資料より)

 

(2)地域別売上高
国内売上が9割以上を占めるが、伸びしろの大きい海外市場の開拓、海外売上高比率の拡大が課題である。

 

2020年3月期地域別売上構成

 

(同社HPより)

 

 

【1-4 特長と強み】

(1)現場に近い営業力
70年の歴史の中で培われてきた現場に近い営業力が同社最大の強み。
きめ細かい対応で、人脈を形成し、信頼関係を構築することが安定的な受注獲得に繋がっている。

 

(2)各事業における専門性の高さ
商社中抜き論なども言われるが、同社は豊富な情報収集力と、顧客の先を行く提案力など、高度な専門性を有する必要不可欠なビジネスパートナーと評価されている。

 

(3)国内外103拠点に上る広範なネットワーク
10年前には30拠点程度であったが、M&Aを通じて国内拠点の拡充に加え、グローバル化を見据えヨーロッパおよび東南アジアを中心に急速に拠点を拡大させてきた。情報のスピード、網羅性はさらに高まっており、有効に活用することで存在価値を更に高めていきたいと考えている。

 

(4)社員教育・営業力強化施策
社員の育成・強化はOJTが中心で、先輩社員や上司がビジネスに必要な基本動作を重点的に教育しており、また、各種階層別研修や海外研修制度にも力を入れている。
加えて、最近はメーカーや顧客のOBにコンサルティングおよび営業現場の支援を依頼している。
各種アドバイスは同社の専門性を更に高め、更なる営業力強化に繋がっている。

 

【1-5 ROE分析】

 

15/3期

16/3期

17/3期

18/3期

19/3期

20/3期

ROE(%)

8.5

6.6

7.9

5.9

5.6

-4.7

 売上高当期純利益率(%)

1.66

1.38

1.42

1.00

1.01

-0.90

 総資産回転率(回)

1.76

1.52

1.45

1.53

1.71

1.58

 レバレッジ(倍)

2.90

3.13

3.82

3.83

3.42

3.32

 

前期ROEのマイナスは減損損失計上による一時的なもの。今期の売上高当期純利率を1.2%とすれば、5-6%台のROEへ復帰するが、一般的に日本企業に要求される8%水準を安定的に維持するには至っていない。
レバレッジは比較的高水準であるため、利益率の向上を期待したい。
中計経営計画「Re-SEIKA 2023」における2023年3月期の当期純利益目標25億円を達成するとROEは8%以上となる。

 

【1-6 ESGへの取り組み】

<E:環境>
環境方針として「地球環境の保護に努め、持続可能な社会の実現に貢献する」という基本理念を掲げている。その一環として、2005年にISO14001を取得しており、環境配慮型商品の拡販に努めている。
同社が取り扱う環境配慮型商品は、ボイラーおよび焼却炉用排ガス処理設備や、化学・半導体工場向け有機溶剤回収装置など多岐に亘り、下記のように2020年3月期の受注実績は13,479件(前期比10.4%増)、947.5億円(同8.6%減)。
引き続き、単なる社会貢献という観点のみでなく事業活動を通じて地球環境の保全に寄与する考えだ。

 

(同社資料より)

 

<S:社会責任>
「社会責任」として、以下のような働き方改革に取り組んでいる。

 

「女性の活躍推進」
・女性総合職採用の強化
・女性社員のキャリア形成支援
・女性管理職の登用

 

「従業員の健康促進」
・プレミアムフライデー制度(カジュアルデー同時実施)の導入
・有給休暇の取得推進
・健康診断におけるがん検診(腫瘍マーカーオプション)費用の会社負担
・インフルエンザ予防接種費用の会社負担

 

「人材育成」
・各種階層別研修
・海外研修派遣制度

 

<G:ガバナンス>
コーポレートガバナンス・コード全項目に対する取り組みをホームページで開示している。
「取締役会の実効性評価」を行うと共に、コーポレート・ガバナンス改訂に対応し、任意の仕組みとして社外取締役および  社外監査役で構成される「指名審査委員会」「報酬審査委員会」を取締役会のもとに設置した。
また、招集通知の一部英訳や、決算説明会資料やファクトブック作成による英語での情報提供にも取り組んだ。
持続的な成長と中長期的な企業価値向上のために引き続きコーポレート・ガバナンスの充実を図ると共に、健全で透明性の高い経営体制を追求する。

 

【1-7 株主還元】

株主に対する利益還元を経営の最重要課題の一つとしており、安定的な配当を基本方針としている。
営業・財務両面の効率的な業務運営により、経営基盤の強化を図るとともに、新しい事業の開発等の資金需要に対応しながら、連結配当性向35%を目途としている。
2021年3月期は、中間20円、期末25円の合計45円/株を予定しており、予想配当性向は33.5%。
配当方針および通期の業績等を総合的に勘案して積極的に株主還元に取り組む。

 

 

 

2.2021年3月期第2四半期決算概要

(1)連結業績概要

 

20/3期2Q

構成比

21/3期2Q

構成比

前年同期比

計画比

売上高

62,651

100.0%

70,935

100.0%

+13.2%

-5.4%

売上総利益

6,866

11.0%

6,619

9.3%

-3.6%

-

販管費

6,006

9.6%

5,665

8.0%

-5.7%

-

営業利益

860

1.4%

953

1.3%

+10.9%

-4.7%

経常利益

986

1.6%

1,098

1.5%

+11.3%

-0.2%

四半期純利益

471

0.8%

530

0.7%

+12.7%

-11.7%

*単位:百万円。四半期純利益は親会社株主に帰属する四半期純利益。
増収増益
2021年3月第2四半期の受注高は前年同期比15.6%減の634億11百万円。マスク製造装置や飛沫分析装置の受注など新型コロナウイルス感染症予防対策関連の受注があったものの、既存顧客設備向け定期検査工事の延期や設備投資計画が中止されるなどの影響を受け受注減となった。売上高は同13.2%増の709億35百万円。主に社会インフラを担う電力事業の大口案件の売上増が寄与し増収。営業利益は同10.9%増の9億53百万円。一般産業向けに機械販売を展開する産業機械事業が収益面で寄与。また、一部業績不振の海外子会社があったものの、子会社全体の業績は堅調に推移し増益当期純利益は同12.7%増の5億30百万円。会社計画に対して売上高は未達となったものの、営業利益以下はおおむね会社計画並みとなった。

 

(2)セグメント別概要

2021年3月よりセグメントの変更を行っている。
従来のセグメント区分の電力事業、化学・エネルギー事業、産業機械事業、素材・計測事業、グローバル事業の5セグメントから、産業機械事業と素材・計測事業を統合し、新たに産業機械事業とした。

この結果、2021年3月期よりセグメントは電力事業、化学・エネルギー事業、産業機械事業、グローバル事業の4セグメントになったため、セグメント別概況について、2020年3月期の実績は新セグメントに換算している。
また、セグメント利益の合計額と差異調整項目であった「全社費用、のれんの償却額」を各セグメントに合理的な基準に従って配分し、セグメント利益の算出方法の変更を行っている。

 

◎売上・利益

 

20/3期2Q

構成比

21/3期2Q

構成比

前期比

売上高

 

 

 

 

 

電力事業

21,203

33.8%

31,263

44.1%

+47.4%

化学・エネルギー事業

14,951

23.9%

12,396

17.5%

-17.1%

産業機械事業

21,015

33.6%

21,810

30.7%

+3.8%

グローバル事業

5,480

8.7%

5,463

7.7%

-0.3%

売上高計

62,651

100.0%

70,935

100.0%

+13.2%

セグメント利益

 

 

 

 

 

電力事業

722

3.4%

452

1.4%

-37.4%

化学・エネルギー事業

73

0.5%

44

0.4%

-39.6%

産業機械事業

123

0.6%

600

2.8%

+386.8%

グローバル事業

-84

-

-117

-

-

セグメント利益計

835

1.3%

979

1.4%

+17.3%

*単位:百万円。外部顧客への売上高。利益の構成比は売上高利益率。

 

①電力事業
増収・減益。
電力会社向け発電設備更新工事等の大口案件の受渡が増加したことにより増収となったが、火力発電設備および原子力発電設備の中・小口案件の減少により減益。

 

②化学・エネルギー事業
減収・減益。
一般産業向け発電設備の受渡が減少したことにより減収。舶用エンジンを取り扱う敷島機器株式会社の収益が拡大したが、西華産業単体の一部取引において追加工事の負担が生じたことなどにより減益。

 

③産業機械事業
増収・大幅増益。
国内合繊、プラント向け産業機械販売および日本ダイヤバルブ社の業績が堅調に推移したことにより増収。西華デジタルイメージ株式会社の業績改善および半導体製造会社向け配電設備工事の大口商談などにより大幅増益。

 

④グローバル事業
微減収・赤字拡大
Tsurumi (Europe)GmbH グループの公共工事用水中ポンプ販売をはじめ、米国および東南アジア各国子会社の業績が堅調に推移したことにより売上高は、ほぼ前年並となったが、プリント基板製造販売のSeika YKC Circuit(Thailand)Co., Ltd.および西曄貿易(上海)有限公司の業績低迷により赤字拡大。

 

(3)財務状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS

 

20年3月末

20年9月末

 

20年3月末

20年9月末

流動資産

79,417

70,073

流動負債

62,141

52,450

現預金

15,062

16,962

仕入債務

32,883

24,437

売上債権

38,693

28,598

短期有利子負債

7,026

7,000

前渡金

18,823

18,127

固定負債

4,616

4,650

固定資産

13,251

13,812

長期有利子負債

1,963

1,843

有形固定資産

2,473

2,448

負債合計

66,757

57,100

無形固定資産

467

509

純資産

25,911

26,785

投資その他の資産

10,310

10,855

利益剰余金

15,738

15,962

資産合計

92,668

83,886

負債純資産計

92,668

83,886

*単位:百万円。有利子負債にはリース債務を含まない。

 

売上債権の減少が響き資産合計は前期末に比べ87億82百万円減少し838億86百万円となった。仕入れ債務の減少などで負債合計は同96億57百万円減少し571億円。
利益剰余金の増加などで純資産は同8億74百万円増加し267億85百万円。
自己資本比率は前期末比3.7%上昇し30.9%。

 

(4)トピックス

◎セイカダイヤエンジン社を設立
2020年10月1日付で三菱重工エンジン&ターボチャージャ社(MHIET)からMHIETの100%子会社である三菱重工エンジンシステム株式会社の国内舶用エンジン販売・サービス事業の譲渡契約に基づき株式を取得し、セイカダイヤエンジン社(SDE)を設立。
西華産業は2016年にMHIETの北海道総代理店である敷島機器株式会社を子会社化しており、今回、国内25拠点を有するSDEが加わることで全国展開による舶用エンジン販売・サービス事業の拡大を見込む。
また、洋上風力発電設備用の作業船など商工船向けエンジンや大型船の補助エンジン等の新たな分野への進出を図る。

 

◎タイのプリント基板製造販売のSeika YKC Circuit (Thailand)Co., Ltdの株式譲渡
Seika YKC Circuit (Thailand) Co., Ltd(SYC)については、9月10日の取締役会で事業を休止することを決定し、今後の方向性について検討してきたが、事業再建には更なる投資と時間を要することから、同事業から撤退することとし、同社資産を活かすことが出来る相手先に株式譲渡することを決定。なお、譲渡日は2021年1月6日。これによる業績への影響については詳細判明次第開示予定。

 

3.2021年3月期業績予想

◎連結業績予想

 

20/3月期

構成比

21/3月期(予)

構成比

前期比

売上高

140,677

100.0%

135,000

100.0%

-4.0%

営業利益

2,809

2.0%

2,400

1.8%

-14.6%

経常利益

3,122

2.2%

2,700

2.0%

-13.5%

当期純利益

-1,262

-

1,650

1.2%

-

*単位: 百万円。予想は会社側発表。

 

減収減益。予想に変化なし
2021年3月期の業績見通しは変更なし。売上高は前期比4.0%減の1,350億円、営業利益は同14.6%減の24億円の予想。
新型コロナウイルス感染症の拡大が当社グループに与える影響については精査中であり、現時点で入手可能な情報に基づき業績予想を算定。今後の新型コロナウイルス感染症の収束時期や国内外の市況などにより予期せぬ変動が生じる可能性があり、同社グループの業績に影響を及ぼす事象が生じ、業績予想の修正が必要となった場合には、速やかに公表予定。配当は前回と変わらず45円/株の予定。予想配当性向は33.5%。

 

4.中期経営計画「Re-SEIKA 2023」

2020年4月から2023年3月までの3年間を対象とする中期経営計画「Re-SEIKA 2023」が始動。

 

同社グループとしての結束力やグループ経営を推進していくため、「西華産業グループポリシー」、「グループ行動規範」、「グループミッション」を定め、同社グループに属する各社および、そこで働く社員一人ひとりがこれらを共有し、日々の行動に繋げ、グループ全体で企業価値の向上を目指す。

 

◎グループポリシー
西華産業グループは、お互いが連携し、高め合い、公明正大な企業活動を通じて持続可能な社会の発展に貢献します。

 

◎グループ行動規範
一人ひとりが法令を遵守すると共に社会から信頼されるよう倫理観を持って行動します。

 

◎グループミッション
グループ全体で豊かな社会を実現します。

 

 

(1)基本方針

「今までの考え方や行動を変え(改革 Re-formation)、あらゆる困難に何度でも挑戦しながら(再挑戦 Re-challenge)、持続的な成長サイクルを構築し(回復 Re-gain)、更なる企業価値の向上を実現する新たなステージ(再出発 Re-start)とする。」とした。

 

(2)基本戦略

①グループ収益の拡大

西華産業単体の各事業とグループ各社を事業内容毎に「事業ユニット」としてグルーピングし、一体化した事業運営を図る。

②収益基盤の強化

各事業を基礎収益分野と成長収益分野とに区分する。事業ポートフォリオの最適化を進め、経営資源の効率的な投入を適宜実施、推進する。

③新たな収益源の開拓

 

新たな収益源の開拓のため継続的に経営資源を投入する。

そして、当社グループの持続的な成長基盤構築を促進する。

④経営基盤の強化

財務体質の安定化を図る。IT化・DX推進等による業務の効率化、職場環境の充実、人財育成などにより、組織力を強化する。

 

(3)営業プロジェクト

①再生可能エネルギー

同社は従来より火力発電所を中心とした電力事業を推進してきたが、世界的な脱炭素の流れをうけ変わりゆく電力供給のあり方を踏まえ、新たな収益源(事業)を構築するために、本プロジェクトを立ち上げた。

具体的には、自然エネルギーの不安定さを水素や蓄電池に置換しエネルギーを貯留するシステムなど安定電源供給システムの販売を推進。

また、地域における電力供給について小型水力発電や間伐材を利用したバイオマス発電等をベースに地域マイクログリッドの構築にも取り組んでいく。

②ライフサイエンス

少子高齢化社会が到来している中「よりよく生きる・食べる・暮らす」がキーであるライフサイエンス分野に着目し、本プロジェクトを立ち上げた。

同社は医薬品製造設備において世界有数の技術を有する独メーカーとの協業を進めており、さらに子会社である日本ダイヤバルブ株式会社の医薬品分野向け販路を活用することで、成長が見込まれる医薬品市場の深耕に取り組んでいく。

③モビリティ

 

オートモーティブ、第5世代移動通信システム、燃料電池、水素関連製品といったモビリティ関連インフラ事業向け商材開拓を目的とし、本プロジェクトを立ち上げた。

技術動向や市場の成長性の観点から具体的な商材選別を行い、早期の事業化を目指す。

 

(4)企業価値向上のためのプロジェクト

①人財活用

同社グループ全体での人財活用を推進するために、グループ内人事交流の仕組み作りをはじめ、社内研修の共有化や担当者レベルでの実務情報交換会の実施など、グループの「人財力アップ」のための諸施策を企画・検討していく。

②社会貢献活動

これまでに同社グループ各社では、国内外の災害復興支援、地域への貢献活動に加え、難病児の夢の実現とその家族の楽しい思い出づくりを支援する公益社団法人「ア・ドリーム ア・デイ IN TOKYO」への活動支援に取り組んできた。

今後は同社グループ全体で社会貢献活動をプロジェクト化し、引き続き豊かな社会の実現に努めていく。

 

(5)経営数値目標

 

20/3期

23/3期(予)

CAGR

営業利益

28.0

37.0

+9.7%

エネルギー事業ユニット

17.8

19.5

+3.1%

産業機械事業ユニット

7.9

13.1

+18.4%

グローバル事業ユニット

2.4

6.9

+42.2%

新事業開発

-

-2.5

-

当期純利益

-12.6

25.0

-

*単位:億円

 

成長収益分野である産業機械事業ユニット、グローバル事業ユニットが大きく伸張し成長を牽引する。
2023年3月期の当期純利益目標25億円を達成するとROEは8%以上となる。

5.今後の注目点

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の中で、厳しい出足となった中期経営計画「Re-SEIKA 2023」だが、今中計期間中に各営業プロジェクト(再生可能エネルギー、ライフサイエンス、モビリティ)を具現化できるのかが注目される。とりわけ新たな収益源をこの期間に開拓できるのかが重要な課題である。また、同社が得意とする電力事業では、老朽化が進む火力発電設備のリプレイスなどを如何に取りこぼすことなく収益に取り込んでいけるのかもポイントとなろう。

 

 

<参考1:長期経営ビジョン>

同社は、2027年に向けた長期経営ビジョン「10年後の西華産業グループ像」を掲げている。

 

◎長期経営ビジョン「10年後の西華産業グループ像」
*策定の目的
2027年は設立80周年を迎える節目の年であり、長期的な視点に立ってグループの進むべき方向性を明確にし、グループ社員一丸となり大きな変革を目指していく為に、それまでは3年おきに策定していた中期経営計画に加えて、長期経営ビジョンとして「10年後の西華産業グループ像」を策定した。

 

*概要
グループ像及びそれを実現するための長期方針を以下のように設定した。

10年後の西華産業グループ像

 

事業環境の変化に適応し、強固な経営基盤を有したグローバルな企業グループとなっている。また、グループ社員は開拓精神に燃え、各々の会社で働き甲斐を感じ、活力に溢れて一人一人が成長を実感している。

長期経営方針

 

1、ビジネスモデルの変革と進化を進め、さらにグループの収益力を向上させる。

2、時代の変化に対応し、新規事業を創り出せる人材並びに、国内外で活躍できる人材の発掘と育成を行うと共に、経営資源を最適投入する。

3、社員にとって働きがいがあり魅力溢れる職場環境を作り、生産性を向上させる。

 

<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査役会設置会社

取締役

8名、うち社外3名

監査役

4名、うち社外2名

 

2020年6月開催の定時株主総会にて独立社外取締役が1名増(総勢3名)となり、取締役の3分の1以上を確保。ガバナンスの強化を図っている。

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2020年10月20日

 

<基本的な考え方>
当社は「社業の発展を通じ社会に貢献する。」を企業理念に掲げ、あらゆるステークホルダーと良好な関係を築きながら、中長期的な企業価値の向上に取り組んでおります。こうした取り組みを実行していくため「経営の健全性と透明性」「迅速な意思決定と実行」が必要不可欠であると考え、コーポレート・ガバナンスの強化に努めております。
なお、当社は独立社外取締役および独立社外監査役による経営の監督体制の強化を図っております。

 

<実施しない主な原則とその理由>

原則

実施しない理由

【補充原則1-2-4】

議決権行使プラットフォーム利用、招集通知の英訳

当社は、議決権の電子行使に関し、その導入を検討して参ります。

また招集通知の英訳につきましては、2017年開催の定時株主総会より招集通知の一部を英訳し、当社ホームページに掲載しております。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示>

原則

開示内容

【原則1-4 政策保有株式】

「政策保有株式に関する方針」

当社は、取引先との取引内容や取引の規模・期間等を鑑みて、取引関係の維持・強化のために必要と判断する企業の株式を保有しております。

当社は、保有の意義が希薄と考えられる政策保有株式については、できる限り速やかに処分・縮減していくことを基本方針とし、毎年、取締役会で個別の政策保有株式について、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているかを精査し、検証の結果を有価証券報告書に開示しております。

なお、当社では、2020年3月期に一部保有株式を売却致しました。

 

「政策保有株式に係る議決権行使に関する方針」

当社が保有する株式の議決権の行使については、当該企業の経営方針を尊重した上で、当社の中長期的な企業価値向上に資するものであるかを議案毎に確認し、総合的に判断致します。

 

【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】

当社は、株主、機関投資家との積極的な対話を通じ、中長期的な企業価値の向上を図るため、年二回の決算説明会において社長自ら決算状況や中期経営計画の進捗状況を説明している他、株主総会においては、質疑応答時間を十分に設け、株主からの質問に対して丁寧な対応に努めております。

また当社は、個人株主からの対話(面談)の申込みに対しては総務・人事部が、機関投資家等の法人株主に対しては企画部が対応しております。

 

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