ブリッジレポート
(5290) 株式会社ベルテクスコーポレーション

スタンダード

ブリッジレポート:(5290)ベルテクスコーポレーション 2021年3月期決算

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土屋 明秀 社長

株式会社ベルテクスコーポレーション(5290)

 

 

企業情報

市場

東証2部

業種

ガラス・土石製品(製造業)

代表取締役社長

土屋 明秀

所在地

東京都千代田区麹町五丁目7番地2

決算月

3月

HP

https://www.vertex-grp.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

3,080円

10,184,450株

31,368百万円

15.3%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

65.00円

2.1%

433.64円

7.1倍

2,986.87円

1.0倍

*株価は7/5終値。発行済株式数は2021年6月30日現在。各数値は21年3月期決算短信より。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2019年3月(実)

29,701

2,516

2,694

5,934

712.28

70.00

2020年3月(実)

39,014

3,788

3,959

2,336

262.01

60.00

2021年3月(実)

37,763

5,290

5,635

3,759

428.41

90.00

2022年3月(予)

39,000

5,500

5,700

3,800

433.64

65.00

*単位:百万円、円。予想は会社側予想。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下同様。21年3月期の配当には記念配当30.00円/株を含む。

 

株式会社ベルテクスコーポレーションの2021年3月期決算概要、中期経営計画、土屋社長へのインタビューなどをお伝えします。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2021年3月期決算概要
3.2022年3月期業績予想
4.第2次中期経営計画
5.土屋社長へのインタビュー
6.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

 

今回のポイント

  • 「安心のカタチを造る。」を掲げ、コンクリート製品を始めとした社会資本・生活インフラの整備に欠かせない各種製品の供給や据付工事などを行なう。製品の優位性・技術提案力・豊富な知的財産を強みに、業界内で有数の高い収益性を実現している。グループによる幅広い対応力も強み。

     

  • 21年3月期の売上高は前期比3.2%減の377億63百万円。全社では新型コロナウイルスの影響は軽微であったが、パイル事業セグメントが民間需要低調で減収。営業利益は同39.6%増の52億90百万円。コンクリート事業の収益性向上などで粗利額が同10.9%増加(粗利率も3.8ポイント改善)した一方、営業方法の見直しなどで販管費が同6.3%減少した。各利益とも、期初予想、修正予想を上回った。

     

  • 22年3月期の売上は前期比3.3%増の390億円、営業利益は同4.0%増の55億円の予想。コンクリート事業、防災事業は引き続き堅調。前期低調だったパイル事業は回復を見込む。第2次中期経営計画の初年度であり、中計最終年度24年3月期の目標「売上高410億円、営業利益61億円」達成に向け、確実に業績予想達成を目指す。配当は普通配当65.00円/株を予定。記念配当30.00円/株を含んだ前期からは実質5.00株/株の増配となる。予想配当性向は21.0%。

     

  • 2022年3月期から2024年3月期までの3か年を対象とする第2次中期経営計画を策定・公表した。「主力事業の深堀りによるオーガニック成長の推進」「成長事業の育成と新たな収益機会の獲得」「持続的成長を可能とするための経営基盤整備」を基本方針に、「持続的成長を確実にするため事業、経営基盤の両面の強化に取り組む期間」と位置付け、最終24年3月期「売上高410億円、営業利益61億円、営業利益率14.9%、ROE10%維持」を目指す。

     

  • 土屋社長に、自身のミッション、自社の競争優位性、課題、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。「2014年、2018年の経営統合による効果はもちろん生まれているのですが、シナジー効果の発現は、登山に例えるならまだ1合目、2合目。本領発揮はこれからです。グループとしてやるべきこと、やりたいことはまだまだたくさんあります。更なるシナジー効果を期待していただきたいと思います。業界リーダーとしての自負を持ちながら、全社員が自律的に動き、同じベクトルで「安心・安全」を提供する企業ブランド力No.1を目指してまいりますので、是非中長期の視点での応援をよろしくお願いいたします」とのことだ。

     

  • 2014年以降の経営統合によるシナジー効果発現に向けたシミュレーション、シナリオを中心となって練り上げ、なおかつそのシナリオに沿って収益改善に結びつけたリーダーが土屋社長であるという点は、同社の今後を見ていく上で重要なポイントと思われる。同社グループの改革を推進してきた社長自身が、「シナジー効果の発現はまだ1合目、2合目」と明言していることに対しては、大きな期待を寄せたい。

     

  • もちろん、2014年および2018年時点で想定していた事業環境と、今後の事業環境は非連続的であり、今回の新型コロナウイルスのように、想定不可能な事態が生じる可能性は否定できない。そうした不確実性に対する対応も含めて、新中期経営計画における各種施策の具体的な進捗を注目していきたい。課題の一つとしている人材の確保に向けた業界の理解促進、ブランディングも業界トップの同社に課せられた重要な責務であろう。

     

1.会社概要

「安心のカタチを造る。」を掲げ、コンクリート製品を始めとした社会資本・生活インフラの整備に欠かせない各種製品の供給や据付工事などを行なう。製品の優位性・技術提案力・豊富な知的財産を強みに、業界内で有数の高い収益性を実現している。グループによる幅広い対応力も強み。

 

【1-1 沿革】

2014年、日本ゼニスパイプ株式会社、株式会社ハネックス(羽田ヒューム管株式会社が商号変更)、株式会社羽田コンクリート工業の3社が合併し、ゼニス羽田株式会社が発足し、その後「ゼニス羽田ホールディングス株式会社に商号変更。

 

2018年10月1日、ゼニス羽田ホールディングス株式会社と株式会社ホクコン(福井県)が共同株式移転により株式会社ベルテクスコーポレーションを設立(ゼニス羽田ホールディングス株式会社と株式会社ホクコンは完全子会社)。
両社が新たな事業グループを創設した。

 

2019年4月、ゼニス羽田株式会社が存続会社として、ゼニス羽田ホールディングス株式会社(消滅会社)を吸収合併。

 

2021年4月1日、株式会社ベルテクスコーポレーション傘下の中核事業会社であるゼニス羽田株式会社と株式会社ホクコンが、株式会社ホクコンを消滅会社、ゼニス羽田株式会社を存続会社として吸収合併を行い「ベルテクス株式会社」が誕生。

 

事業シナジー創出、経営効率化等を進め、成熟市場であるコンクリート及びパイル、並びに成長市場である防災領域でのシェア拡大、収益性向上による売上・利益の成長を目指している。

 

【1-2 存在意義】

ステートメントとして「安心のカタチを造る。」を掲げている。

自然災害の絶えないこの国で、どこに住んでいても安心して暮らせるように。

遠く離れた家族や友人の無事を信じられるように。

子どもたちが心豊かに成長できるように。

 

私たちは、追求し続けなければならない。

 

困難なニーズに応え続ける、オンリーワンの技術を。

誰も思いつかなかった、ユニークな発想を。

あらゆる事態に対応する、全国規模のネットワークを。

 

いかなる災害にも打ち勝つために。

まだここにない安心を生み出すために。

 

造るのは、モノだけじゃない。

知恵を絞って、安心の新しいカタチを造ろう。

これからも、すべての人が笑顔で暮らせるように。

 

社会資本・生活インフラの整備に欠かせない各種製品の供給を通じて安心・安全な日常の実現に貢献することを自社の社会的な存在意義であると認識している。

 

【1-3 市場環境】

同社を取り巻く事業環境を見ていくうえでは、下記のような点を踏まえておく必要がある。

 

(1)加速する国土強靭化計画
兵庫県南部地震、東北地方太平洋沖地震等の大地震や毎年のように各地で被害をもたらす大型台風等の対策として2014年6月に閣議決定された「国土強靱化基本計画」は、4年経った2018年12月に見直しが行われ、2021年6月17日には「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」が発表された。
これにより国土強靱化は加速化・深化する段階に入った。

 

年次計画2021では、「国土強靱化の取組をパワーアップさせるとともに、ハード・ソフトを組み合わせた対策を総動員できる態勢を整えていく。その上で、令和4年度以降も、基本計画に基づき、必要な予算を確保し、オールジャパンで防災・減災、国土強靱化を進め、国家百年の大計として、災害に強いふるさとを創り上げていく」(いずれもP2 (1)年次計画策定の趣旨より)と述べている。

 

また、令和3年度から7年度までの「5か年加速化対策」の実施にあたっては、2050年までのカーボンニュートラルの実現に資することも目指しており、具体的な施策として、「気候変動、大規模地震等への対応」「インフラ老朽化対策」「デジタル技術等最新の科学技術の活用、イノベーションの導入」などを挙げている。

 

このように、国土強靭化計画は、気候変動、カーボンニュートラルというキーワードにも結びついた、最も重要な政策の一つとして今後も加速していくものと思われる。

 

(2)老朽化が進む社会資本
国土交通省によれば、我が国の社会資本ストックは高度経済成長期に集中的に整備され、今後急速に老朽化することが懸念されている。道路橋、トンネル、河川、下水道、港湾等は今後20年間で、建設後50年以上経過する施設の割合は加速度的に高くなる見込みである。

 

(建設後50年以上経過する主な社会資本の割合)

 

2018年3月

2023年3月

2033年3月

道路橋(約73万橋)

約25%

約39%

約63%

トンネル(約1万1千本)

約20%

約27%

約42%

河川管理施設(水門等約1万施設)

約32%

約42%

約62%

下水道管きょ(総延長:約47万km)

約4%

約8%

約21%

港湾岸壁(約5千施設)

約17%

約32%

約58%

*国土交通省「インフラメンテナンス情報」より。

 

また、約52万基の防火水槽は2035年に58%が、約5万kmに及ぶ農業用の用排水路は2027年に約40%が建設後50年を経過する。

 

このように一斉に老朽化するインフラを戦略的に維持管理・更新することが求められており、国土強靭化計画では、下水道について浸水被害の防止・軽減のための雨水排水施設など下水道による都市浸水対策を2040年度までに100%実施、砂防について2045年度までに土砂災害対策を100%実施する計画である。

 

(3)建設事業従事者の高齢化・人手不足:プレキャスト工法の拡大
建設業就業者の減少が続いている。また、国土交通省資料によれば建設業就業者は、55歳以上が約3分の1なのに対し、29歳以下が約1割と高齢化が進行し、2025年時点で技能労働者数は最低でも約50万人不足するとの試算もあり、少子高齢化による人手不足は、建設業界において大きな課題となっている。

 

この課題解決に向け、様々な取り組みがなされており、工場であらかじめ製造した側溝、管、マンホール、くい、橋げたや建物の一部などのコンクリート製品である「プレキャストコンクリート」を工事現場に運搬し、建設現場での据付けと組立てを行う工法である「プレキャスト工法」もその一つである。

 

これに対し、現在の主流工法が、建設現場で木製や鉄製の型枠を組み、型枠の中にコンクリートを打設し固めることで、現場でコンクリート製品を完成させる「現場打ち工法」。
直接工事費のみの比較から現場打ち工が経済性で優位とされているが、設計費、施工期間、通行規制とそれに関連する経済損失に加え、品質の優位性といった点で優れている「プレキャスト工」の施工比率は今後確実に上昇すると見られる。

 

【1-4 事業内容】

報告セグメントは「コンクリート事業」「パイル事業」「防災事業」「その他事業」の4つ。

 


 

各事業、以下のグループ会社が事業を担っている。

セグメント

グループ会社

コンクリート事業

ベルテクス株式会社(東京都)

ベルテクス建設株式会社(大阪府)

株式会社ホクコンプロダクト(福井県)

北関コンクリート工業株式会社(群馬県)

ユニバーサルビジネス企画株式会社(福井県)

東北羽田コンクリート株式会社(山形県)

九州ベルテクス株式会社(福岡県)

菊一建設株式会社(東京都、持分法適用関連会社)

パイル事業

ホクコンマテリアル株式会社(福井県)

防災事業

ベルテクス株式会社(東京都)

ベルテクス建設株式会社(大阪府)

その他事業

株式会社ウイセラ(岐阜県)

株式会社M・T技研(大阪府)

アイビーソリューション株式会社(福井県)

株式会社ハネックス・ロード(東京都)

株式会社エヌエクス(東京都、持分法適用関連会社)

 

 

(1)コンクリート事業
「浸水対策事業/下水道事業」「道路事業」「メンテナンス事業」「鉄道事業」「住宅・開発事業」の各事業において、コンクリート二次製品の製造・販売、その関連商品の販売、製品の据付工事を行っている。

 

事業名

概要・主要製品

浸水対策事業/下水道事業

水災害対策や下水道施設の耐震化など「防災・減災」に対し、ニーズを反映した豊富なラインナップとオンリーワンの技術により最善の提案を行っている。

 

(主要製品)

◎プレキャスト遊水池(地下貯留槽)

河川への雨水流出を抑制する施設である。地下式プレキャスト遊水池は雨水流出抑制施設を地下に設け、地上を公園、運動場、駐車場等多目的に利用できる。

 

 

◎ボックスカルバート

主に地中に埋設され、水路や通信線などの収容に使われる箱型のコンクリート構造物。用途は多岐に渡り、地下道・貯留槽など様々なインフラ事業で活用されている。

 

 

◎組立式円形マンホール

「組立マンホールのパイオニア」として、マンホール設置工事のさまざまなニーズに応えるため、小型(内径300mm)から特大型(内径2200mm)まで幅広いラインナップを有する。

道路事業

道路インフラの整備に加え、人命を守るための製品を数多く保有しており、「安全・安心」な道路づくりに貢献している。

 

(主要製品)

◎プレキャスト・ガードフェンス(PGF)

乗員の安全性を確保しつつ、車両の突破を防ぐプレキャストコンクリート製の剛性防護柵。道路の路側、分離帯、壁高欄などで使用される。

 

◎スパンザアーチ

トンネルや道路の立体交差(アンダーパス)を造る際に、分割された部材を現地でアーチ状に組み上げる超大スパン対応型のカルバート。地震や軟弱地盤、偏荷重に対して高い性能を有している。

 

メンテナンス事業

インフラ老朽化対策として、ライフサイクルコストを考慮した最適な製品・工法を提案している。豊かな国民生活、社会経済を支える基盤であるインフラの長寿命化の実現に貢献している。

 

(主要製品)

◎ダクタルパネル

塩害、凍害及び摩耗等の発生する劣悪な環境下において高い耐久性を付与できる超高強度繊維補強コンクリートを用いた高耐久性薄肉埋設パネル。構造物の長寿命化、維持管理費を削減することができる。

 

 

◎防火水槽メンテナンス

老朽化した防火水槽の地震による漏水や道路陥没事故による二次災害の対策ができる補修・補強工法。

 

鉄道事業

超高強度繊維補強コンクリートや特殊モルタルなど、材料まで突き詰めた製品もラインナップし、「安全・安心」を提供している。

 

(主要製品)

◎ホームドアスラブ

駅ホームからの転落防止設備の設置が広まっているが、既存のホーム用床版では可動式ホーム柵(ホームドア)の荷重に耐えられないなど設置が困難なケースがある。同製品は軽量化を実現するとともに、設置も容易である。

 

住宅・開発事業

地震や災害に強い街づくりのために、大地震対応の製品を数多くラインナップしている。No.1ブランドの耐震性貯水槽や独自の災害用トイレを有している。

 

(主要製品)

◎HC式防火水槽・HC式耐震性貯水槽

プレキャスト防火水槽、耐震性貯水槽。阪神大震災にも耐えた実績が、信頼性の高さと安全性を証明している。豊富な施工実績を有する。

 

 

(2)パイル事業
遠心力プレストレスコンクリートパイルの製造・販売、杭打工事を行っている。

 

(3)防災事業
高エネルギー吸収型落石防護柵や崩壊土砂、雪崩、土石流防止対策等の防災製品の製造・販売、その関連商品の販売、設置工事を行っている。

◎ループフェンス(高エネルギー吸収型落石防護柵)

大きなエネルギー吸収能力を持ちながら落石捕捉時の変異が小さい変位制御型落石防護柵

 

◎MJネット(超高エネルギー吸収型落石防護柵)

特殊ワイヤリングと支柱の組み合わせにより落石エネルギー3000kJまで対応できる世界最大級の落石防護柵

 

(同社資料より)

 

(4)その他事業
ニューセラミックス製品の製造・販売、機器レンタル及び資材販売、RFID(非接触ICタグ)の販売、コンクリートの調査・試験、システム開発・販売、不動産の賃貸等を行っている。

 

【1-5 特徴と強み】

(1)製品の優位性&技術提案力
工事案件の設計段階から製品PRや技術提案を行うことで価格競争になりにくい独自のビジネスモデルを構築している。

(同社ウェブサイトより)

 

この強みを支えているのが、「情報収集力」「開発実験」「人材力」の3つである。

 

①情報収集力
製品の販売だけではなく、設計を受け持つ設計コンサルタントや、最終顧客である官公庁に対し、常時情報収集を実施することで、川上で求められているニーズを的確に把握している。また、製品PRや技術提案も積極的に実施している。

 

②開発実験
収集した情報やニーズをもとに、新たな自社製品の開発及び実験を行ない、他社に先駆けた新製品の開発や活用法を考案している。また、大学と連携等を行うことで、効率的な開発及び実験を可能としている。
同社の源流であるゼニス羽田株式会社、株式会社ホクコンとも技術重視の社風であった点も技術に強みを持つ同社の競争優位性に繋がっているようだ。

 

③人材力
市場のニーズを的確に捉える優れた提案力のある営業スタッフや、ニーズや情報を活かした新製品開発・提案を可能とする技術スタッフ等、探求心溢れる優れた人材が「情報収集」「開発実験」を担っている。

 

(2)高い収益性とその源泉となる豊富な知的財産
技術力の高さを活かした上記のビジネスモデルにより、高い収益性を実現している。

(同社資料より。水色のバブルが同社コンクリート事業の同業。グレーのバブルがパイル事業の同業)

 

また、積極的な研究開発投資から生み出される知的財産が高収益の源泉にもなっている。

(同社資料より)

 

(3)業界をリードする数多くの高シェア製品
他社に先駆けて研究・技術開発を行ない、新製品を市場に投入し、新市場を創出。投入後は顧客の声を適宜聞きながら改善や改良を加える。他社の類似品が参入することで市場が活性化する中、先行メーカーとしてコスト・クオリティの両面で優位性を発揮し、No.1ブランドとしての地位を確立している。
こうした製品開発プロセスにより、以下のようなNo.1製品を有している。

 

浸水対策事業

下水道事業

 

住宅・開発事業

 

 

 

(4)グループによる幅広い対応力
ベルテクス株式会社を中心とした各グループ企業は様々な業務を担っており、川上から川下まで幅広い需要を取り込むことができる。今後はグループシナジーの更なる発揮・強化に取り組んでいく。

【1-6 配当政策・株主還元】

安定的な普通配当に加え、適宜、特別配当・記念配当を検討するほか、自己株式の取得により、総還元性向30%を目処として、株主還元を実施する方針。
自己株式の取得は、20万株(発行済株式総数の約1.7%)を上限とし、22年3月期中に適宜実施予定である。

 

【1-7 ROE分析】

 

20/3期

21/3期

ROE(%)

10.4

15.3

 売上高当期純利益率(%)

5.99

9.95

 総資産回転率(回)

0.91

0.86

 レバレッジ(倍)

1.91

1.80

 

中期経営計画では2024年3月期、10%以上のROE維持を目標としている。22年3月期の予想売上高当期純利益率は9.7%。総資産回転率の改善も進めることができれば、より安定的に高水準のROEを維持できるであろう。

 

2.2021年3月期決算概要

【2-1連結業績概要】

 

20/3期

構成比

21/3期

構成比

前期比

期初予想比

修正予想比

売上高

39,014

100.0%

37,763

100.0%

-3.2%

-5.6%

+0.7%

売上総利益

10,146

26.0%

11,248

29.8%

+10.9%

-

-

販管費

6,357

16.3%

5,958

15.8%

-6.3%

-

-

営業利益

3,788

9.7%

5,290

14.0%

+39.6%

+32.3%

+10.2%

経常利益

3,959

10.1%

5,635

14.9%

+42.3%

+40.9%

+10.5%

当期純利益

2,336

6.0%

3,759

10.0%

+60.9%

+50.4%

+10.6%

*単位:百万円。修正予想は21年2月発表。

 

減収増益。利益予想を上回る。
売上高は前期比3.2%減の377億63百万円。全社では新型コロナウイルスの影響は軽微であったが、パイル事業セグメントが民間需要低調で減収。
営業利益は同39.6%増の52億90百万円。コンクリート事業の収益性向上などで粗利額が同10.9%増加(粗利率も3.8ポイント改善)した一方、営業方法の見直しなどで販管費が同6.3%減少した。
経常利益は同42.3%増の56億35百万円。営業外収益に補助金収入を1億33百万円計上した。
20年3月期に特別損失として計上した退職給付費用、工場閉鎖費用がなくなり、当期純利益は同60.9%増の37億59百万円。
各利益とも、期初予想、修正予想を上回った。

 

中核事業会社の合併に向け、合併新会社に相応しい人事諸制度を設計し、4月より運用を開始した。
また、会計システムを統合。2022年春以降のリリースに向けて、新基幹システム構築プロジェクトを推進している。

 

【2-2 セグメント動向】

 

20/3期

構成比

21/3期

構成比

前期比

期初予想比

コンクリート事業

28,372

72.7%

28,539

75.6%

+0.6%

-5.6%

パイル事業

4,520

11.6%

2,892

7.7%

-36.0%

-17.5%

防災事業

4,083

10.5%

4,170

11.0%

+2.1%

+1.7%

その他事業

2,039

5.2%

2,161

5.7%

+6.0%

+0.3%

売上高合計

39,014

100.0%

37,763

100.0%

-3.2%

-5.6%

コンクリート事業

3,602

12.7%

4,885

17.1%

+35.6%

+31.5%

パイル事業

128

2.8%

73

2.6%

-42.3%

-58.7%

防災事業

1,061

26.0%

1,173

28.2%

+10.6%

+9.7%

その他事業

367

18.0%

458

21.2%

+24.8%

+5.4%

調整額

-1,370

-

-1,300

-

-

-

営業利益合計

3,788

9.7%

5,290

14.0%

+39.6%

+32.3%

*単位:百万円。営業利益の構成比は売上高営業利益率。

 

◎コンクリート事業
増収増益、利益は期初予想を大きく上回る。

 

売上
新型コロナウイルスの影響は軽微で前期並みであったが、低採算製品の取り扱いを見直したこと等により、期初予想を下回った。
主力製品である耐震性貯水槽と耐震性ボックスカルバートのブランド統一、拡販を継続した。

 

利益
売価改定は当期も浸透。生産拠点間における製品の集約化、遠距離輸送のコスト削減にも継続的に取り組んだ。
営業活動の自粛、営業方法の見直しにより営業経費が減少した。
高付加価値製品の受注に注力。受注状況に応じた柔軟な生産対応も奏功した。

 

◎パイル事業
減収減益、売上・利益とも期初予想を下回る。

 

売上
公共需要は国土強靭化計画による工事発注が下支えとなったが、新型コロナウイルスの影響により、住宅着工戸数の減少や民間非住宅建設投資が大きく落ち込み、民間需要が低調。選別受注強化による減収予算に対しても大幅に下回った。

 

利益
原価、売価の見直しを進め、上期までは粗利率も改善傾向にあったが、下期に入り想定外の売上低下に見舞われ、上期に計上した利益が目減りした。

 

◎防災事業
増収増益、売上・利益とも期初予想を上回る。

 

期初受注残が少なく、上期は減収であったが、下期は順調に出荷が進み増収。なかでも、落石対策用ループフェンスの出荷が好調。利益も増益。
落石対策用製品のラインナップの拡充により、幅広いニーズに対応が可能になったほか、部材の購入先や加工先を増やすことで、納期短縮に取り組んだ。

 

◎その他
増収増益、売上・利益とも期初予想を上回る。

 

セラミックス事業は前期並みの売上・利益を確保した。
コンクリートの調査・試験事業、システム開発・販売事業、工事資材販売事業は、いずれも増収増益。
旧工場跡地を中心とした不動産賃貸も安定的な収益を計上した。

 

【2-3 財務状態とキャッシュ・フロー】

◎主要BS

 

20年3月末

21年3月末

増減

 

20年3月末

21年3月末

増減

流動資産

26,711

30,376

+3,665

流動負債

13,256

14,190

+934

現預金

8,574

11,761

+3,186

仕入債務

7,062

6,519

-543

売上債権

13,326

13,593

+266

短期有利子負債

2,843

3,687

+844

固定資産

15,335

15,888

+553

固定負債

5,775

5,826

+50

有形固定資産

11,604

11,881

+277

長期有利子負債

1,684

1,618

-66

無形固定資産

152

280

+127

退職給付に係る負債

1,974

2,068

+93

投資その他の資産

3,578

3,726

+148

負債合計

19,031

20,016

+985

資産合計

42,046

46,265

+4,218

純資産

23,014

26,248

+3,233

 

 

 

 

利益剰余金

18,506

21,708

+3,201

 

 

 

 

負債純資産合計

42,046

46,265

+4,218

*単位:百万円。売上債権には電子記録債権を、仕入債務には電子記録債務を含む。

 

現預金の増加などで資産合計は前期末比42億円増加し462億円。短期借入金の増加などで負債合計は同9億円増加し200億円。利益剰余金の増加などで純資産は同32億円増加の262億円。
自己資本比率は前期末より2ポイント上昇し56.6%となった。D/Eレシオは前期末と同じく0.20倍。

 

◎キャッシュ・フロー

 

20/3期

21/3期

増減

営業CF

2,942

4,223

+1,280

投資CF

-1,157

-397

+759

フリーCF

1,785

3,825

+2,040

財務CF

-1,504

-638

+865

現金同等物残高

7,706

10,893

+3,187

*単位:百万円。

 

税金等調整前当期純利益の増加などで営業CF、フリーCFのプラス幅は拡大。
キャッシュポジションは上昇した。

【2-4 トピックス】

◎連結子会社の合併
2021年4月1日、連結子会社のゼニス羽田株式会社と株式会社ホクコンが、株式会社ホクコンを消滅会社、ゼニス羽田株式会社を存続会社として吸収合併を行った。
各子会社の経営資源を統合する事で経営の効率化を図り、グループ全体の企業価値を向上させることを目的としている。

 

 

3.2022年3月期業績予想

【3-1 業績予想】

 

21/3期

構成比

22/3期(予)

構成比

前期比

売上高

37,763

100.0%

39,000

100.0%

+3.3%

営業利益

5,290

14.0%

5,500

14.1%

+4.0%

経常利益

5,635

14.9%

5,700

14.6%

+1.1%

当期純利益

3,759

10.0%

3,800

9.7%

+1.1%

*単位:百万円

 

増収・増益を予想
売上は前期比3.3%増の390億円、営業利益は同4.0%増の55億円の予想。
コンクリート事業、防災事業は引き続き堅調。前期低調だったパイル事業は回復を見込む。
第2次中期経営計画の初年度であり、中計最終年度24年3月期の目標「売上高410億円、営業利益61億円」達成に向け、確実に業績予想達成を目指す。
配当は普通配当65.00円/株を予定。記念配当30.00円/株を含んだ前期からは実質5.00株/株の増配となる。予想配当性向は21.0%。

 

【3-2 セグメント動向】

 

21/3期

構成比

22/3期(予)

構成比

前期比

コンクリート事業

285.0

75.4%

292.0

74.9%

+2.5%

パイル事業

29.0

7.7%

33.0

8.5%

+13.8%

防災事業

42.0

11.1%

43.0

11.0%

+2.4%

その他事業

22.0

5.8%

22.0

5.6%

0.0%

売上高合計

378.0

100.0%

390.0

100.0%

+3.3%

コンクリート事業

48.9

17.2%

50.0

17.1%

+2.2%

パイル事業

0.7

2.4%

1.3

3.9%

+85.7%

防災事業

11.7

27.9%

12.3

28.6%

+5.1%

その他事業

4.6

20.9%

4.4

20.0%

-4.3%

営業利益合計

52.9

14.0%

55.0

14.1%

+4.0%

*単位:億円。営業利益の構成比は売上高営業利益率。

 

パイル事業が2ケタの増収増益を見込む。
コンクリート事業、防災事業は今期も堅調な予想。

 

4.第2次中期経営計画

2022年3月期から2024年3月期までの3か年を対象とする第2次中期経営計画を策定・公表した。

 

【4-1 前中期経営計画の振り返り】

(1)前中期経営計画の位置付けと数値目標の達成状況
前中期経営計画(20年3月期-21年3月期)では、「既存事業の更なる深耕」「統合シナジーの早期具現化」「経営基盤整備」を重点施策として掲げ、最終2022年3月期「売上高389億円、営業利益39億円、営業利益率10%、ROE10%」を目標としていたが、「売上高389億円」に関しては2020年3月期に、「営業利益39億円、営業利益率10%、ROE10%」については2021年3月期に1年前倒しで達成することができた。

 

(2)経営統合後2年半の取組みと今後の課題
ガバナンス、グループ再編・M&A 、経営統合シナジーの具現化等において着実に成果が出ていると認識している。
経営基盤整備については今後も継続的に取り組んでいく考えだ。

 

課題

経営統合時

現在

ガバナンス強化

監査役会設置会社

役員総数15

社外役員4(比率26.7%)

監査等委員会設置会社

役員総数8

社外役員3(比率37.5%)

グループ再編&M&A

連結子会社14社

持分法適用関連会社3社

連結子会社12社

持分法適用関連会社2社

19年4月:菊一建設 持分法適用関連会社化

20年4月:ディーシー(現 九州ベルテクス) 連結子会社化

事業拠点の統廃合

営業拠点数47

生産拠点数16

営業拠点数33

生産拠点数15

製品戦略

主力製品の統一ブランド化、販売品目の選別を積極的に実施

研究開発

基礎研究から物件対応に至る様々な過程において、研究開発を推進

経営基盤の整備

*合併新会社の新人事制度を21年4月より運用開始

*人材開発プログラム・採用プログラム:ウィズコロナを前提とした再整備が必要

*新基幹システムを2022年春のリリースに向け構築フェーズを推進中

*M&A、新規領域進出、事業ポートフォリオマネジメント機能は引き続き整備・強化

 

研究開発に関しては、現在、グループで49の継続テーマと、31の新規テーマを推進中である。

 

(例)
*環境(CO2排出量削減、天然資源の温存)、耐久性、低コストを実現する「長寿命コンクリート(LLクリート)」の開発
*次世代型路面電車(LRT)用ハーフプレキャスト軌道スラブ
*落石対策製品

 

(3)セグメント別実績
「コンクリート事業」「防災事業」は計画を超えたが、パイル事業は計画未達で戦略の見直しを行った。

(同社資料より)

 

【4-2 第2次中期経営計画】

(1)事業環境についての認識
「1.会社概要 【1-3 市場環境】」で触れたように、国土強靭化計画の加速化、社会資本の老朽化、建設業界における少子高齢化による人手不足などの外部環境に加え、内部環境(自社要因)として、

 

*高い技術力・設計力・開発力・営業力と幅広い顧客基盤
*自社開発によるシェアNo1製品、差別化製品を多数保有
*健全な財務、潤沢な資金
などの強みを有する一方、

 

*社員平均年齢の上昇、採用難
*コンクリート事業に続くコア事業の育成
*資本効率を重視した事業ポートフォリオマネジメント機能の整備
といった点が課題であると認識しており、生産・販売体制を中心に、合併後のさらなる効率化に余地があると考えている。

 

こうした環境下、同社の対象市場は中長期的に拡大するものと期待している。中でも、中長期の視点では、「人手不足を背景としたプレキャスト化比率の上昇」「老朽化が進む社会資本の維持更新需要」が市場拡大のドライバーと見ている。
「プレキャスト化比率の上昇」については、コンクリート製品の需要増が期待される。
「社会資本の維持更新需要増」に関しては、グループ内で川上「インフラの点検・強化」から川下「補修・補強、更新」まで幅広く提案、材料・製品提供、工事実施が可能な優位性を活かして幅広く需要を取り込む考えだ。

(同社資料より)

 

(2)第2次中期経営計画の基本方針と位置付け
以下の基本方針を掲げている。

主力事業の深堀りによるオーガニック成長の推進

主力事業のオーガニック成長により営業キャッシュ・フローの創出力を高めることで、将来キャッシュ・フローの最大化を目指します。

成長事業の育成と新たな収益機会の獲得

更なる成長に向けて、成長事業の育成と新たな収益機会(新エリア・新カテゴリー展開、新製品、新事業)の獲得に向けた取り組みを強化します。

持続的成長を可能とするための経営基盤整備

前中計から継続して、グループガバナンスの強化、リスク管理体制の構築など経営基盤整備を進めると同時に、ESGの取組みを進め、持続的な企業価値向上を目指します。

 

今回の中期経営計画を、「持続的成長を確実にするため事業、経営基盤の両面の強化に取り組む期間」と位置付け、2028年10月の設立10周年および『「安心・安全」を提供する企業ブランド力No.1へ』という、BHAG(Big Hairy Audacious Goals:社運を賭けた大胆な目標)実現に向けて邁進していく考えである。

 

(3)各セグメントにおける施策・目標
①コンクリート事業

事業環境見通し

*新型コロナウイルスの影響により、民間投資は先行き不透明感が残るものの、公共投資は堅調に推移する

*甚大化する自然災害への対策として、遊水池(雨水貯留槽)や雨水排水施設の整備、耐震化やインフラの老朽化対策などに対し、今年度から5年間で総事業費15兆円程度の「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」が始まる

主な施策・取組方針

1. 強みとなる技術開発力を活かした高付加価値製品群の提案

2. 顧客満足度を高める汎用品出荷対応センターの充実

3. 既設インフラの維持更新事業への深耕、浸水・減災製品、交通インフラ関連製品群の販売促

4. 工場集約化による生産および出荷効率の向上

 

②パイル事業

事業環境見通し

*新型コロナウイルスの影響により、民間建設投資は低迷

*今期の回復は緩やかと見られ、前期並みに回復するのは’23/3期頃と想定する一方で、ドラッグストア等の郊外型店舗や物流施設・倉庫等の需要は見込まれる

*防災・減災の観点から、建物基礎への安全性要求は高まる傾向

主な施策・取組方針

1. 高採算製品群(高支持杭・SC杭)の販売促進と、低採算製品群の選別受注の推進

2. Withコロナに対応した営業活動の強化・推進

3. 既存工法の改良・新規工法の開発

 

③防災事業

事業環境見通し

*激甚化・頻発化する自然災害への対策として、流域治水対策(砂防)、山地災害危険地区等における治山対策、道路の法面・盛土の土砂災害防止対策、豪雨による鉄道隣接斜面の崩壊対策などに対し、今年度から5年で総事業費15兆円程度の「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」が始まる

*各交通インフラの自然災害対策への取り組みが強化される

主な施策・取組方針

1. 落石対策、崩壊土砂対策、雪崩対策分野での新製品開発

2. 既存製品の改良及びラインナップの充実

3. 交通インフラ分野への営業強化

 

④その他事業

事業

主な施策

セラミックス事業

新たな業界や成長分野への参入と生産技術の進化

例)電波吸収セラミックス

コンクリートの調査・試験事業

防火水槽点検の事業拡大と調査業務に係る基礎研究ならびに技術の確立

システム開発・販売事業

ネットワークやセキュリティ関連と特殊業務向け開発による事業拡大

RFID事業

保守・予防保全向けに加え、現場帳票のペーパレス化市場全体をターゲットに拡販

 

(4)グループ共通施策
持続的成長を実現するため、以下の施策を中心に経営基盤の整備・強化に取り組む。

 

*人材開発プログラム・採用プログラムの再整備
*情報システム・ICTインフラの整備、DXの推進
*グループガバナンス体制・リスク管理体制の構築
*事業ポートフォリオマネジメント機能の整備 ・強
*サステナビリティ推進体制の整備

 

(5)財務・投資戦略
3か年累計の営業キャッシュ・フローを140億円と想定。
「設備更新投資」「高付加価値化・競争力強化のための設備投資」「研究開発投資」「生産性向上のためのDX投資」「スタートアップ投資、M&A」など、主力事業の強化・成長事業の育成・新たな収益機会の獲得に98億円を振り向ける。
総還元性向30%を目途に、42億円の株主還元を行う。

 

(6)研究開発投資と知的財産
ビジネスモデルの進化に向けて、積極的な研究開発投資を行う。

 

事業セグメントを横断したR&Dを強化する。既存事業の強化 、将来の収益につながる研究・製品開発・生産技術開発などを産学官民と連携して進める。
また、対顧客において、保有する数多くのノウハウや実績、パテントなどをベースに、新たな営業スタイルを確立していく。

 

研究開発投資のアウトプットとして成長・収益力を支える重要な経営資源である「知的財産」を重視。
「知財創出力」を更に強化し、事業競争力の維持・強化を図る。

 

(7)数値目標
◎全社

 

21/3期

22/3期(予)

23/3期(計画)

24/3期(計画)

CAGR

売上高

377.0

390.0

400.0

410.0

2.8%

営業利益

52.9

55.0

58.0

61.0

4.9%

営業利益率

14.0%

14.1%

14.5%

14.9%

-

経常利益

56.3

57.0

60.0

63.0

3.8%

当期純利益

37.5

38.0

40.0

42.0

3.8%

*単位:億円。CAGRは21/3期から24/3期までの年平均成長率。同社資料もとにインベストメントブリッジが計算。

 

ROEは10%以上を維持することを目標としている。

 

◎セグメント別
*コンクリート事業

 

21/3期

22/3期(予)

23/3期(計画)

24/3期(計画)

CAGR

売上高

285.0

292.0

296.0

298.0

1.5%

営業利益

48.9

50.0

51.2

52.0

2.1%

営業利益率

17.1%

17.1%

17.3%

17.5%

-

*単位:億円。CAGRは21/3期から24/3期までの年平均成長率。同社資料もとにインベストメントブリッジが計算。

 

 

*パイル事業

 

21/3期

22/3期(予)

23/3期(計画)

24/3期(計画)

CAGR

売上高

29.0

33.0

36.0

40.0

11.3%

営業利益

0.7

1.3

1.8

2.4

50.8%

営業利益率

2.5%

4.0%

5.0%

6.0%

-

*単位:億円。CAGRは21/3期から24/3期までの年平均成長率。同社資料もとにインベストメントブリッジが計算。

 

*防災事業

 

21/3期

22/3期(予)

23/3期(計画)

24/3期(計画)

CAGR

売上高

42.0

43.0

45.0

47.0

3.8%

営業利益

11.7

12.3

13.1

14.1

6.4%

営業利益率

28.1%

28.5%

29.0%

30.0%

-

*単位:億円。CAGRは21/3期から24/3期までの年平均成長率。同社資料もとにインベストメントブリッジが計算。

 

 

*その他事業

 

21/3期

22/3期(予)

23/3期(計画)

24/3期(計画)

CAGR

売上高

22.0

22.0

23.0

25.0

4.4%

営業利益

4.6

4.4

4.9

5.6

6.8%

営業利益率

21.2%

20.0%

21.0%

22.0%

-

*単位:億円。CAGRは21/3期から24/3期までの年平均成長率。同社資料もとにインベストメントブリッジが計算。

 

 

5.土屋社長へのインタビュー

土屋社長に、自身のミッション、自社の競争優位性、課題、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。

 

Q:「土屋社長は、2005年に日本ゼニスパイプに入社され、2011年日本ゼニスパイプ常務執行役員、2013年にゼニス羽田ホールディングス取締役、2014年ゼニス羽田常務取締役、2017年ゼニス羽田ホールディングス社長、2018年ベルテクスコーポレーション社長就任と、一連の経営統合に経営陣の一員として携わってこられました。そのプロセスでどんな役割を担われてきたのでしょうか?」

 

当時のコンクリート二次製品業界は水平統合してシナジー効果を追求しようという発想が全くない業界でした。全国に500から800社あるといわれるコンクリート会社のほぼ全てがオーナー企業ですので、致し方ないことではあるのですが。
ただ、高度成長時代は既に終焉し市場時代は縮小が続いている。
日本ゼニスパイプの常務だった私はこのままではいけないという問題意識を持っていたのですが、当時の社長から経営統合についての意見を求められた際、是非やるべきだとお答えし、シミュレーションを重ねて拠点や製品の活用によってこのようなシナジー効果を産むことができるという絵を描いたのが、経営統合スタートのきっかけでした。

 

シミュレーションの中では、「より多くの数量を製造して原価を下げる」という業界の常識に対し、市場が成熟した中ではスケールメリットを追求するのではなく、数量は減少してもいいので、付加価値の高い製品を製造して利益を上げようという方針を掲げたところ、これをトップに受け入れていただくことができました。
2014年の経営統合後、当然反対や軋轢もあったのですが、実際に取り組んでみると、どんどん利益が出てくるようになっていきました。自分でも驚いたほどでしたが、明確なシナジー効果を実際に体験することができました。

 

2018年のホクコンとのベルテクスコーポレーション設立においては、地域、事業領域の観点からゼニス羽田とホクコンの相互補完は両社にとって大きな意味があると考え、協業によってこれだけの利益が期待できるというシナリオを描き、先方と話を進めていきました。
ホクコンは未上場ですが、規模も大きく豊富な実績もあることから、社内に反対意見はあったかと思いますが、大変ありがたいことにホクコンの経営者がこのスキームの意義を説き、全社員を鼓舞していただいたことでスムーズにベルテクスコーポレーション設立を実現させることができました。深く感謝しています。
実際に動き出してからは、当初戸惑いもあったかと思いますが、潜在能力の高いホクコン社員のおかげで想定以上のスピードで変化が生まれていると感じています。

 

 

Q:「ありがとうございます。御社を理解するためには大変重要なお話であると思います。では次に、ご自身の社長としてのミッション、なすべきことはどんなこととお考えでしょうか?」

 

当社はステートメントとして「安心のカタチを造る。」を掲げています。社員には常日頃、ベルテクスと言えば「安心・安全」、「安心・安全」といえばベルテクスという存在になる、それもこのコンクリート2次製品業界に限らず、あらゆるジャンルにおいて安心・安全を具現化する代表的な企業を目指すんだという話をしていますので、そのビジョンを実現するリーダーというのが私のミッションの一つと考えています。

 

そのためには、全社員が一丸となってビジョン実現に邁進する会社としなければならない、その環境造りが私の重要な役割です。社員一人一人が高いモチベーションを持ちながら、この会社で働くことを楽しいと思ってもらえるような会社にしていかなければなりません。

 

売上が大きくは伸びない中でも利益を着実に上げることができる体制が出来つつありますが、2018年のベルテクスコーポレーション設立からまだ日も浅く、残念ながら全社員が同じ方向を向いているとは言えません。ただ、日本ゼニスパイプ出身の私が約10年かけてハネックスと羽田コンクリート工業との融合に取り組んだ結果、今では元2社のみなさんも自律的に働いてくれるようになっています。
時間は少々かかるかもしれませんが、自律的でモチベーションの高い組織作りには自信がありますので、ホクコンとの経営統合においても、しっかりと取り組み、成果を上げてまいります。

 

Q:「御社の競争優位性はどんな点にあるとお考えですか?」

 

営業力、企画力、技術力や製品品質といった当社の個々の能力・クオリティーは押しなべて業界平均をはるかに上回っていると思います。特に特許取得数が示す技術の優位性は大きなアドバンテージです。
しかし、我々が取り扱っているのは、ICTとか高性能な電子デバイスなど先端的な技術の集積といったものではないので、他のメーカーに比べて飛び抜けた製品が生まれてくることは難しいし、競合製品も出てきます。その点は自覚し、慢心してはいけないと思っています。

 

個々の能力それぞれではなく、その高い能力を連携しながら仕事を進めていく能力、私は「全員力」と呼んでいるのですが、これが当社の本当の強み・競争優位性であると考えています。

 

我々の業界では一般的に、営業は一生懸命販売する、製造は一生懸命製造する。当たり前と言えば当たり前なのですが、これでは「1+1=2」の力しか発揮できません。
当社では、縦割りではなく、部門間の横の連携を大変重視しています。
例えば、当社の営業は設計も理解しながら発注者や設計コンサルタントに提案する必要がありますから設計との連携は必須です。また、営業が収集した製品に関する情報を工場に伝えたり、工場からも営業に提案が行われたりもします。
このように、縦割りを排し、各部署が有機的につながり、情報を共有しながら仕事に臨むことで能力以上のものが発揮できる、「1+1が2以上になる」、これが「全員力」です。

 

当社には設計コンサルを対象にする営業部隊があり、その他にも官公庁を対象とした営業部隊、建設業者を対象とした営業部隊があります。
官公庁案件は一般的に、官公庁が設計コンサルに設計を発注する、設計コンサルの設計を基に官公庁が入札を経て建設業者に発注する、建設業者が当社製品を購入するという流れとなります。
営業対象は、官公庁、設計コンサル、建設業者の3社ですが、情報は1つですから、それぞれを個別バラバラに営業をかけてしまうと結局は全体が見えずに効率が極めて悪くなります。こうした点からも、当社では営業間での横の連携も大変重視しています。
設計コンサルに強い当社を見て、設計コンサル向け営業を増員・強化する同業者もあるのですが、結局はそれだけ真似しても上手く機能していないのが現実です。
形だけでなく、「全員力」という組織力があって初めて機能するものなのです。

 

 

Q:「合併によるシナジー効果をより強力に発揮するためにはこの全員力をさらに磨き上げなければならないと思いますが、そのためには何が必要でしょうか?」

 

全社員が自らの役割を明確に意識することが必要です。
私の一番好きな言葉の一つが「役職は役割」です。
社長や部長といった役職名は上下関係を示すものではなく、それぞれの役職が果たすべき役割が示されているに過ぎません。
自分の役割は何か?自分は今何をなすべきか?を、自分で考え自分で決めて自分で実行する、自律的な人間になることが、「全員力」強化には不可欠ですので、常に社内でメッセージを発信しています。

 

 

Q:「続いて新たな中期経営計画についてお話伺いたいと思います。まず『「安心・安全」を提供する企業ブランド力No.1へ』という目標を掲げた背景・理由は何でしょうか?」

 

端的に言うと、自分たちが得意とするもの、強みとするものに頑なに取り組んできたら、時代や世の中がそれを求めるようになってきたということです。

 

その代表例が、ボックスカルバートです。
主に地中に埋設され、水路や通信線などの収容に使われる箱型のコンクリート構造物「ボックスカルバート」に耐震性を付加した耐震性ゴムリング付きボックスカルバート「SJ-BOX」は日本ゼニスパイプが2007年に社会インフラを地震から守るために開発したものでした。その後、新潟県中越地震、東日本大震災などで建築物や構造物に耐震性能が強く求められるようになり、現在では当社の耐震用ボックスカルバートは業界No.1製品で、すべてのボックスカルバートにおいてもNo.1となっています。
また近年は毎年のように落石、土砂崩れといった豪雨の被害が発生する中で、以前から供給していた落石防護柵の需要が拡大しています。

 

このように決して時代の先取りをしたわけではなく、自らの得意分野が世の中に求められるようになってきた。ですので、自信をもって我々の取り組みは世の中の安心・安全に大きく貢献しているということを改めてメッセージとして伝えたいと考えました。
このあるべき姿に向けて、まずはこの3年間に取り組むべき施策・数値目標を掲げたのが今回の中期経営計画です。

 

 

Q:「中期経営計画の中で社長がキーポイントと考えている点についてお話しください」

 

基本方針の一つ目、「主力事業の深堀りによるオーガニック成長の推進」に関しては、浸水、土砂崩れ、落石といった喫緊の課題に対して様々な提案が可能という点で、当社は引き続きトップランナーだと思いますので、この需要を確実に取り込みつつ世の中に安心・安全を提供していきます。
また、先程申し上げたように、統合によるシナジー効果の更なる発現にも注力していきます。

 

二つ目の「成長事業の育成と新たな収益機会の獲得」に関して言えば、現在取り扱っている成長分野を伸ばすということもありますが、ここ5年程度だけではなく、もっと先を見据え、ビジネスモデルの転換にも取り組んでいかなければならないと考えています。
差別化できる製品を作ってもそれを売り放しにするのではなく、調査・診断という川上から、計画の提案、実際の工事施工・メンテナンスやRFIDによる管理といった川下までをワンストップで手掛けることができる幅広い対応力を活かして、ソリューション提供ビジネスも追求していきたいと考えています。
その他に、まだ本格的に動き出しているとは言えませんが、オープンインベーションにも力を入れていきたいと思います。

 

 

Q:「一方で、不足しているリソースなど、現在社長が認識している課題、その克服に向けた対応についてもお話しください」

 

1つは収益構造の多様化です。
4つのセグメントがあるといっても、コンクリート事業と防災事業の2つで売上、利益とも構成比は約9割を占めます。
先程申し上げたような、この会社で安心して働くことを楽しいと思ってもらえるような会社にするには、この2つのセグメントのみでは難しい。ただ、コンクリート事業にも我々が手掛けていないジャンルもありますし、面白い領域もあるので、M&A含めて投資機会を探していきたいと思います。
また、営業推進室を新設し、コンクリート事業と防災事業以外で新規事業のシーズ探索も始めました。

2つ目は人材の確保です。
コンクリート業界は大変地味な業界ですので、新卒採用は苦戦しています。
ただ、我々は日本国民の安心・安全な日常の実現に貢献していることには自信を持っていますので、そうした点をもっと理解してもらうためのブランディング活動が必要と考えています。
それも、当社だけで展開するのではなく、コンクリート業界全体で盛り上げていくような動きも必要です。残念ながらこの業界は日本全国500社以上と大変多くの企業が活動しているのですが、そうした意識が極めて薄い業界です。
ただ、私がそういう問題意識をもって他社の経営者とお話ししていると、同じ思いを持つ社長もいらっしゃることがわかりました。
そういう輪を広げて、メッセージの発信力を強化することも業界トップの当社の責務ですので、これにも注力していきます。

 

また、人材確保・育成・定着という観点からは「働き方改革」も重要なポイントです。
就業時間とか有給休暇といった制度面のみではなく、この2年半程度で、取扱製品の整理を大幅に進めています。
1つの製品でも様々なサイズや型式があるのですが、汎用品を廃して高付加価値品に絞ることで、営業、設計の負担を大幅に軽減することができました。
ホクコンとの合併もあり、まだ「働き方改革」は緒に就いたばかりですが、2022年5月には基幹システムが統一されるので、それを機に着実に進めていきたいと考えています。

 

 

Q:「ありがとうございます。では最後に株主や投資家へのメッセージをお願いいたします」

 

21年3月期は減収ではありましたが、利益は大幅な増益で、予想も上回りました。
一連の経営統合による効果は生まれているのですが、シナジー効果の発現は、登山に例えるならまだ1合目、2合目。本領発揮はこれからです。グループとしてやるべきこと、やりたいことはまだまだたくさんあります。更なるシナジー効果を期待していただきたいと思います。

 

業界リーダーとしての自負を持ちながら、全社員が自律的に動き同じベクトルで「安心・安全」を提供する企業ブランド力No.1を目指してまいりますので、是非中長期の視点での応援をよろしくお願いいたします。

 

6.今後の注目点

2014年以降の経営統合によるシナジー発現に向けたシミュレーション、シナリオを中心となって練り上げ、なおかつそのシナリオに沿って収益改善に結びつけたリーダーが土屋社長であるという点は、同社の今後を見ていく上で重要なポイントと思われる。同社グループの改革を推進してきた社長自身が、「シナジー効果の発現はまだ1合目、2合目」と明言していることに対しては、大きな期待を寄せたい。
もちろん、2014年および2018年時点での想定する事業環境と、今後の事業環境は非連続的であり、今回の新型コロナウイルスのように、想定不可能な要素が生じる可能性は否定できない。そうした不確実性に対する対応も含めて、新中期経営計画における各種施策の具体的な進捗を注目していきたい。
課題の一つと挙げている人材の確保のための理解促進、ブランディングも業界トップの同社に課せられた重要な責務であろう。

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査等委員会設置会社

取締役

8名、うち社外3名

監査役

-

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2021年5月21日

 

<基本的な考え方>
当社は、高品質で安価な価値ある製品を供給していくことを通じ、生活環境の向上と安定に貢献するとともに、企業として持続的な成長と発展を目指すものであります。そのため、的確かつ迅速な意思決定と業務執行を行い、株主を重視した透明性の高い健全な経営を行うことをコーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方といたしております。

 

<実施しない主な原則とその理由>

原則

実施しない理由

【原則 5-1 株主との建設的な対話に関する方針】

当社におけるIRは経営企画部を中心としておりますが、決算短信の開示では経営管理部を中心として連携し、適宜対応しております。また、経営陣幹部が投資家説明会を実施するだけでなく、株主、投資家、アナリスト等との個別面談を実施したうえで、投資家等から寄せられた意見等を社内で共有し、開示を通じて当社グループの事業環境に関する理解を深めていただくよう努めてまいります。

 

 

<開示している主な原則>

原則

開示内容

<原則1-4 政策保有株式>

当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資する場合のみ保有していく方針です。なお、政策保有株式の議決権行使については、当該企業の価値向上につながるか、当社グループの企業価値を毀損させる可能性が無いかを総合的に判断し、対応しております。

【補充原則 4-11-2 取締役会の実効性確保のための前提条件】 

 

取締役候補者および取締役の重要な兼職の状況を、事業報告等の開示書類において毎年開示してまいります。

 

 

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