ブリッジレポート
(4709) 株式会社IDホールディングス

プライム

ブリッジレポート:(4709)IDホールディングス 2023年3月期決算

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舩越 真樹 社長

株式会社 IDホールディングス(4709)

 

 

会社情報

市場

東証プライム市場

業種

情報・通信

代表取締役社長

舩越 真樹

所在地

東京都千代田区五番町12-1 番町会館

決算月

3月末日

HP

https://www.idnet-hd.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(自己株式を控除)

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,114円

16,595,286株

18,487百万円

14.2%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

50.00円

4.5%

91.59円

12.2倍

625.64円

1.8倍

*株価は6/1終値。発行済株式数は直近期末の発行済株式数から自己株式を控除。
*各数値は23年3月期決算短信より。

 

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2021年3月(実)

25,766

1,372

1,553

747

44.37

33.33

2022年3月(実)

27,805

1,869

1,922

1,046

61.61

40.00

2022年3月(実)

27,805

1,869

1,922

1,046

61.61

40.00

2023年3月(実)

31,101

2,424

2,504

1,402

84.54

45.00

2024年3月(予)

32,800

2,630

2,650

1,520

91.59

50.00

*単位:百万円、円。
*予想は会社予想。
*当期純利益は、親会社株主に帰属する当期純利益。
*2021年7月1日付で1:1.5の株式分割を実施。DPSとEPSは2021年3月期まで遡及して再計算。

 

 

IDホールディングスの2023年3月期決算概要と2024年3月期業績予想等についてご報告致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.中期経営計画
3.2023年3月期決算概要
4.2024年3月期業績予想
5.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 23/3期の売上高は前期比11.9%の増収、同29.7%の営業増益。売上面では、システム運営管理、ソフトウェア開発およびサイバーセキュリティ・コンサルティング・教育が堅調に推移した。利益面では、従業員への還元やグループ組織変更にともなう売上原価の増加があったものの、増収に伴う利益の増加と利益率の高いDX関連ビジネスの売上高拡大や管理部門における業務効率化などが増益に寄与した。過去最高の売上高と営業利益を達成した。

     

  • 24/3期の会社計画は売上高が前期比5.5%増の328億、営業利益が同8.5%増の26億30百万円。引き続き中期経営計画「Next 50 Episode Ⅱ 『Ride on Time』」のもと、顧客企業におけるDX推進支援を強化するとともに、自社ソリューションの充実による新規ビジネスの拡大に取り組み、さらなる収益性向上を目指す。配当予想は、1株当たり前期比5円増配の50円とした。予想配当性向は54.6%。

     

  • 同社は中期経営計画の24/3期と25/3期における数値目標の上方修正を実施した。これは、今後も企業のビジネス変革に向けたIT投資が活発に行われ、同社が推進しているDX関連売上の拡大が見込まれることを反映したものである。高付加価値のDX関連売上の拡大は、同社の収益性の更なる向上につながる。中期経営計画の2年目においても好調なスタートを切ることができるのか、今後のDX関連売上の動向が注目される。

     

1.会社概要

金融向けITアウトソーシングに強みを持つ独立系の情報サービス会社である株式会社インフォメーション・ディベロプメントを中核とする持株会社。システム運営管理とソフトウェア開発・保守を二本柱とし、一つの顧客に対し、コンサルティングからソフトウェア開発、システム運営管理等の複数のサービスを提供するBusiness Operations Outsourcing(BOO)戦略を推進しており、好不況の波の大きいIT業界にあって、相対的に業績の変動が小さく、高配当を継続している。尚、2013年12月17日、JASDAQから東証2部に市場変更。2014年9月8日、東証1部に上場。2022年4月、市場再編に伴い東証プライム市場に移行。
2019年4月1日、持株会社体制に移行した。

 

【IDグループの強み】

IDグループの強みの一つがシステム運用管理による安定した収益構造である。
システム運用管理は顧客のシステムを24時間365日運用・監視し、社会の重要なインフラを支える業務で、信頼や実績が不可欠であり、同社は強固な参入障壁を構築している。
同業務の売上高構成は4割強と高く、ストックビジネスとして業績を下支えしている。今後は従来型運用に加え、先端技術を活用したSaaS型サービス「Smart運用」による高付加価値化を目指していく。

【IDグループのサービスの特徴】

◎50年の経験、大手優良企業を中心に実績は1,000社以上
同社は、1969年の会社設立以来、大手金融機関や社会インフラ企業を中心に1,000社以上の企業との取引実績がある。コンサルティングからシステム基盤、ソフトウェア開発、システム運営管理、クラウド、サイバーセキュリティまでワンストップで提供し、顧客の様々な要望に最適な提案で対応することで、顧客より高い評価を得ている。

 

◎国内最大級の運営管理プロフェッショナル集団
同社は、顧客の業務に精通した1,600名以上ものシステム運営管理エンジニアを有し、ソフトウェア開発やシステム基盤との連携を図り、トータルサービスの提供によって、安定したシステム運営と業務効率化を実現している。また、マルチクラウドソリューションサービスを提供し、近年需要の高い顧客のクラウドシフトを強力にバックアップしている。

 

◎ユーザ視点でシステム開発
同社は、長年蓄積した顧客のシステムに関する業務知識やノウハウを持ち、金融機関やエネルギーなど幅広い分野への開発実績がある。また、顧客のニーズに柔軟かつスピーディーに対応できるアジャイル開発も行っており、従来型の手法と使い分けることで、コスト効率の高い、安定したシステムを構築している。

 

◎DXへの対応
RPA・AIなどのデジタル技術を活用した既存ビジネスの変革(DX)に対するニーズが高まっている。同社はこうした先端技術の調査・研究を行う部門や、DXを推進する専門組織を設置し、顧客の業務変革に貢献する付加価値の高いサービスを提供している。

 

◎世界各国でグローバルな事業をサポート
2004年に中国武漢市に現地法人を設立して以来、東南アジア、北米、欧州に拠点を設立。海外ネットワークを通じ、時差を利用した24時間/365日体制で、グローバルなサービスをスピーディーに提供している。

 

◎コンプライアンスの徹底
同社は、個人情報保護や品質管理、情報セキュリティに関するマネジメント体制を確立するとともに、コンプライアンスハンドブックを全グループ社員の行動規範として活用。経営理念のIDentityにも掲げている通り、つねに「私たちは損か得かで判断するのではなく、正しいか正しくないかで行動する」ことを徹底している。

 

【サービス別の業績動向】

売上高は、システム運営管理、ソフトウェア開発、ITインフラ、サイバーセキュリティ・コンサルティング・教育、その他に分かれ、サービス別の概要と売上構成比は次のとおり。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

システム運営管理(23/3期売上構成比43.9%)
金融機関、運輸、エネルギーをはじめとする幅広い分野の顧客の安定した業務運営に貢献。顧客目線での最適なシステム基盤の構築 を目指し、「24時間365日システムを動かす」安定したシステム運営管理サービスを提供している。また、オフショアを活用した高品質・廉価な一括受託にも対応している。22/3期のシステム運営管理、セキュリティ、プラットフォームからなる従来型運用の売上高は全社の売上の60.8%を占めている。

 

ソフトウェア開発(23/3期売上構成比36.8%)
金融機関、運輸、エネルギーをはじめとする幅広い分野の顧客へ総合システムビルダーとして多くのソフトウェア開発実績を築いている。グループ内にコンサルティング、オフショア(海外子会社に委託開発)、ニアショア(地方事業所での開発)体制を構築しており、多数の高度な専門技術者が高品質なサービスを実現。国内外の有力先進企業と提携し、顧客の既存ビジネスの強化・拡大、新たな領域への挑戦を支援しており、「Ruby」認定や「ISO9001」認証(受託開発部門)取得など、常に技術・品質の向上に努めている。

 

ITインフラ(23/3期売上構成比8.4%)
金融機関、運輸、エネルギーをはじめとする幅広い分野の顧客へシステム運用部門・ソフトウェア開発部門・セキュリティ部門と連携し、高品質なシステム基盤を提供。メーカーソフトやシェルスクリプトなどを駆使し、環境の自動起動からバックアップ取得、更に障害時自動切替などの設計・構築を行うことで、システムの安定稼働やコスト削減・省力化を実現している。また、同社は独立系として、特定のハードやOS・開発言語にとらわれることなく、顧客目線での最適なシステム基盤を構築している。

 

サイバーセキュリティ・コンサルティング・教育(23/3期売上構成比9.4%)
海外の大手ベンダーと提携し、各種セキュリティ製品の提供からコンサルティング、セキュリティ環境の構築・導入・運用・サポートまで一貫したサービスを提供。同社は、様々なベンダーの製品を取り扱っており、特定ベンダーにこだわることなく、顧客の環境、要望、状況に応じて、最適な製品を柔軟に組み合わせ、提案している。

 

その他(23/3期売上構成比1.5%)
システム運営管理、ソフトウェア開発、サイバーセキュリティ環境の構築などに付随した製品販売などがある。

 

23/3期の売上高は311億1百万円であった。情報通信、公共関連顧客における案件の収束などにより、ITインフラなどの売上高が前期比で減少した。一方、大手ITベンダーへの営業強化による取引拡大、金融関連顧客における受注拡大などが寄与したシステム運営管理や、大手ITベンダー、金融、公共関連顧客における受注拡大、運輸関連顧客における大型案件の再開などが寄与したソフトウェア開発や、サイバーセキュリティにおける受注拡大や製品販売の増加、コンサルティングの売上増加などが寄与したサイバーセキュリティ・コンサルティング・教育などの売上高が前期比で増加した。
 

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

同社のDX関連ビジネスは、既存のITサービスに、クラウドやAI、IoTなどの先端技術を組み合わせ、顧客のDXを推進するビジネスであり、セキュリティ・ITインンフラ、遠隔支援・高度開発、クラウド、コンサル・研修、自動化・効率化などからなる。23/3期のDX関連売上高は148億10百万円となり、連結売上高の約47.6%(前期は売上高126億71百万円で売上高構成比約45.6%)を占める規模となった。また、23/3期のDX関連の売上総利益は、34億72百万円でDX関連ビジネスの売上総利益率は23.4%となった。

 

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

戦略グループ別では、営業強化が奏功しIBMグループ、日立グループの伸びが大きくなった。また、既存顧客の受注が拡大した金融の主要顧客に加え、公共関連顧客と運輸関連顧客が増加した金融以外の主要顧客も拡大した。なお、IBMグループが売上高の14%を占めるが、IBMグループの内訳は、キンドリルジャパン売上高の7.7%、MIデジタル同4.7%、日本IBM同1.6%となった。

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

【グローバル展開】

同社グループは2004年に中国(武漢市)に現地法人を設立して以来、シンガポール、アメリカ、ミャンマーに子会社を設立。
これらの拠点及び海外アライアンスパートナーとの協業により、中国(武漢、無錫、上海)、シンガポール、ミャンマー、アメリカ、イギリス、オランダにおいて、海外でも高品質のデータセンターの運用・保守サービスを受けたい、システム開発を高品質かつ短納期で行いたい、サイバー攻撃に備えるセキュリティ対策を万全にしたいという顧客のニーズに対して、グローバルなIT高品質サービスをスピーディーに提供することを目指している。今後も世界各国の地域に根差したセールス・生産ネットワークを強化し、グローカルなITサービスモデルの確立を推進する。

 

(同社決算説明資料より)

 

 *株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

【情報サービス業の動向】

(経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」を基に(株)インベストメントブリッジ作成)

 

内閣府が5月17日に発表した23年1-3月の国内総生産(GDP、季節調整済み)1次速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.4%増(年率換算で1.6%増)と3四半期ぶりのプラスとなった。新型コロナウイルス禍からの経済の正常化で、堅調な個人消費が全体を押し上げた。同社の業績とも関連性が深い民間企業設備(実質)は、同0.9%増と、2四半期ぶりのプラスとなった。企業の社用車やトラックなど自動車への投資が伸びた。また、経済産業省発表の「特定サービス産業動態統計調査」(5月22日発表、23年3月分確報値)によると、3月の情報サービス産業売上高は前年同月比7.6%増と12ヶ月連増のプラスとなった。また、同社と関連性の高い受託ソフトウェアの売上高は前同月比9.5%増、システム等管理運営受託の売上高も同2.2%増のプラス成長となった。同社を取り巻く業界環境は引き続き堅調に推移しているものと思われる。

 

2.中期経営計画

【中期経営計画「Next 50 EpisodeⅡ 「Ride on Time」(2023年3月期~2025年3月期)】

1.概要
同社は、2023 年3月期を初年度とする3か年の中期経営計画「Next 50 Episode Ⅱ 『Ride on Time』」を策定し、2022年4月28日に公表した。新中期経営計画では、前中期経営計画で構築した事業基盤のもと、顧客ニーズの高い技術領域を定め、パ
ートナー企業と連携して顧客企業の DX 推進支援を強化し、それを支える高度技術者や企画提案型人財を育成する。また今後の成長分野であるクラウドやサイバーセキュリティの領域における同社独自のソリューション開発に努めるほか、社内基幹システムの刷新などによる業務の効率化・高度化や、事業活動を通じた社会課題の解決に取り組む。変化の速い IT 業界において、時流を的確にとらえ、「Waku-Waku する未来」を届ける IT エンジニアリングパートナーを目指す。
「Next 50 Episode Ⅱ 『Ride on Time』」は、3つの基本方針「同社 DX ポートフォリオに沿ったビジネスモデルの展開」、「高付加価値創出に向けたパートナーシップの強化」、「管理部門の高度化と事業部門への人財シフト」からなり、4つの基本戦略「IT サービス戦略」、「人財戦略」、「ニューノーマル戦略」、「SDGs 戦略」を推進する。当初の数値目標は、最終年度である25/3期に、売上高320億円、営業利益25億50百万円、営業利益率8.0%であった。しかし、同社は目標数値を前倒しで達成したことから、数値目標の修正を行った。新しい中期経営計画は、最終年度の25/3期に、売上高350億円、営業利益30億円、営業利益率8.6%の達成となった。

 

【重点数値目標】

 

22/3期

実績

23/3月期

当初目標

23/3期

実績

24/3期

当初目標

24/3期

修正後

25/3期

当初目標

25/3期

修正後

27/3期

当初目標

売上高

278億円

290億円

311億円

304億円

328億円

320億円

350億円

400億円

営業利益

(営業利益率)

18.6億円

(6.7%)

19.5億円

(6.7%)

24.2億円

(7.8%)

22.0億円

(7.2%)

26.3億円

(8.0%)

25.5億円

(8.0%)

30.0億円

(8.6%)

32.0億円

(8.0%)

DX売上高

(DX比率)

126億円

(45.6%)

139億円

(48.0%)

148億円

(47.6%)

161億円

(53.0%)

173億円

(53.0%)

192億円

(60.0%)

210億円

(60.0%)

280億円

(70.0%)

EBITDA

(EBITDA比率)

24.9億円

(9.0%)

25.8億円

(8.9%)

30.3億円

(9.2%)

28.0億円

(9.2%)

32.6億円

(10.0%)

31.0億円

(9.7%)

35.5億円

(10.0%)

40.0億円

(10.0%)

*EBITDA = 営業利益 + 減価償却費 + のれん償却額

 

【新中期経営計画の目指す姿】
同社の新中期経営計画の目指す姿は、「5つのステークホルダーへ Waku-Wakuする未来をお届けするITエンジニアリングパートナーを目指して。ともにRide on Time!」である。5つのステークホルダーとのエンゲージメントを強め数値目標を達成する。

 

ステークホルダー

内容

数値目標

顧客

高付加価値サービスの提供

DX売上高比率60%

ビジネスパートナー

DX分野の協業深化

単価5%UP

社員

Happiness

年収5%UP

社会

事業活動を通じた課題解決

SDGsの推進

株主

持続的な安定配当

時価総額250億

 

 

(同社中期経営計画より)

 

【3つのテーマ】
①同社DXポートフォリオに沿ったビジネスモデルの展開
②高付加価値創出に向けたパートナーシップの強化
③管理部門の高度化と事業部門への人財シフト

 

 

2.4つの基本方針と戦略

①ITサービス戦略

よりニーズの高い技術領域を定め、パートナー企業との連携による顧客のDX推進支援や成長分野を対象とした自社ソリューション開発に努める。

②人財戦略

DXサービスの拡大や高付加価値化の実現に向けて、研修制度をさらに充実し、中上級技術者および企画提案人財の育成を加速する。

③ニューノーマル戦略

社内基幹システムの刷新などによる業務の効率化・高度化に努めるとともに、スマートな管理部門の構築を図り、事業部門への人員の再配置を進める。

④SDGs戦略

事業活動を通じてサステナビリティへの取り組みを進め、「社会課題の解決」と「企業価値の向上」の好循環を目指す。

(同社中期経営計画より)

 

①ITサービス戦略(DXポートフォリオ)
既存のベース事業において、顧客の価値を高める収益を確保するとともに、顧客の価値創出をDX技術の活用により、推進支援する。加えて、自社のDXソリューションのサービス化により新規事業を創出する。

 

(同社中期経営計画より)

 

②人財戦略(育成)
更なる成長に向けて中上級DX技術者および企画提案人財の育成を強化する。
具体的な人財育成施策として、①日本型ジョブディスクリプション制度の構築と運用、②人財マネジメントシステム活用と戦略的人事運営、③各層の連続的な次世代育成(リスキリング)、④メタバース、NFT(非代替性トークン)などWEB3.0世代の技術者育成を実施する。これらを通じて、22/3期末で1,063人のDX技術者を、25/3期に1,600人まで育成する。更に、新たな発想でソリューションを提案できる人財を22/3期の70人から25/3期に200人まで育成する。中計期間の3年間に6億円(22/3期は1.8億円)の育成予算を投下する方針である。
なお、23/3期末時点で、DX技術者数は1,097人となり、連結従業員数の46.7%まで拡大した。

 

 

2022年3月期

(実績)

2023年3月期

(中計)

2024年3月期

(中計)

2025年3月期

(中計)

DX技術者数

1,063人

1,240人

1,420人

1,600人

企画提案人財

70人

110人

150人

200人

 

【DX推進支援サービス】
Smart運用とDX開発など、先端技術を活用した次世代型システム運営管理とソフトウェア開発を推進する。
◆Smart運用
従来型運用に加え、先端技術を活用したSaaS型サービス「Smart運用」に注力する。手作業、オンプレ、オンサイトが一般的な従来型運用を、自動化ツール、クラウド、リモートを活用したシステム運用へ進化させ、大手銀行・地方銀行へ展開する。同社は、コスト削減だけでなく生産性向上と品質改善を同時に実現することが可能となる。

 

(同社決算説明資料より)

 

◆DX開発
ウォーターフォール、オンサイトによる従来型開発を、アジャイル、ローコード、パブリッククラウドなどの先端技術の活用に加え、国内外拠点によるリモートと分散開発を通じたDX開発へ進化させる。同社は、こうしたDX開発の積極的な推進により、効率的な開発が実現可能となる。

 

【自社ソリューション】
マルチクラウドとサイバーセキュリティの自社ソリューションを重要インフラ領域へ展開する。
◆ID-Cross
導入・マネージドサービス、脆弱性判別・情報提供、PC管理、RPAリモート保守などをマルチクラウドで提供する自社ソリューションの「ID-Cross」を医療、エネルギー、公共分野の顧客へ提供する。
◆ID Ashura
セキュリティ(アドバイザリー&スコアリング)、サイバー脅威遡及分析、EDR(エンドポイントの監視を強化し、サイバー攻撃を検出して対応すること)、サイバー防御演習などを、製造、建設、物流、医療、公益分野の顧客へ提供する。

 

③ニューノーマル戦略(管理部門の高度化)
業務効率化により管理部員を事業部門へシフトし、収益寄与分を社員に還元する。業務の効率化・簡素化のため、情報共有基盤の導入によるデータの一元化とプロセスの削除、業務のデジタル化を推進する。また、本社機能の分散化のため、山陰・海外拠点へ本社機能の一部を移管する。また、ヘッドオフィスとシェアードオフィスの機能の整理を行う。更に、経営管理・企画機能の強化のため、基幹システムの刷新によるデータの集約と利活用を推進する。これらを通じて、22/3期の管理部門190名を25/3期に140名へ削減するとともに、22/3期の販管費率17.3%を25/3期に13.9%へ引き下げる。

 

④SDGs戦略
事業活動を通じて、社会課題の解決に貢献するとともに、企業価値を向上させる。

 

(同社中期経営計画より)

 

【取り組むSDGs(抜粋)】
同社は、事業活動を通じて、さまざまな社会課題の解決に向けた取組みを行っている。代表的な事例は下記の通り。

事業活動

SDGs17の目標

◆障がい者雇用による植物栽培

◆芸術家活動支援

1.貧困をなくそう

2.飢餓をゼロに

3.全ての人に健康と福祉を

◆DXソリューションサービスの提供

ID-Cross、ID Ashura、ID-VROP

8.働きがいも経済成長も

9.産業と技術革新の基盤をつくろう

12.つくる責任 つかう責任

◆ジェンダーフリーの実現

◆グローバル人材の採用・活用温室効果ガスの削減

4.質の高い教育をみんなに

5.ジェンダー平等を実現しよう

10.人や国の不平等をなくそう

 

文化芸術活動支援

◆メセナ活動を通じ、多くの芸術家を支援

外部からの評価

◆「健康経営優良法人 ~ホワイト500~」に4年連続で認定

◆NIKEI Smart Work 2023  3つ半   「人材活用力」がA++

◆NIKEI SDGs 経営調査   星3つ   「社会価値」がS

 

 

【新中期経営計画の主要KPI】

 

主要KPI

23/3期

(実績)

24/3期

(目標)

25/3期

(目標)

ITサービス戦略

DX売上高

148億円

173億円※

210億円※

DX売上高比率

47.6%

53%

60%

人材戦略

DX技術者数

1,097人

1,420人

1,600人

女性従業員比率

24.3%

28%

30%

女性管理職比率

15.9%

25%

30%

外国籍社員比率

7.9%

13%

15%

ニューノーマル戦略

販管費率の改善

14.1%

14.6%

13.9%

SDGs戦略

CO2の削減(電力使用由来による)

*2021年3月期比 電力使用量

100%減

18%減

20%減

紙の使用量の削減

*2021年3月期比

30.9%減

20%減

23%減

環境ボランティア活動の参加

(年間延べ人数)

228人

200人

200人

※中期経営計画の数値目標の修正にともない、目標の修正を実施

 

3.2023年3月期決算概要

(1)連結業績

 

22/3期 

構成比

23/3期 

構成比

前期比

売上高

27,805

100.0%

31,101

100.0%

+11.9%

売上総利益

6,668

24.0%

6,802

21.9%

+2.0%

販管費

4,799

17.3%

4,377

14.1%

-8.8%

営業利益

1,869

6.7%

2,424

7.8%

+29.7%

経常利益

1,922

6.9%

2,504

8.1%

+30.3%

四半期純利益

1,046

3.8%

1,402

4.5%

+34.1%

*単位:百万円。
*四半期純利益は、親会社株主に帰属する四半期純利益。

 

前期比11.9%の増収、同29.7%の営業増益
売上高は前期比11.9%増の311億1百万円、営業利益は同29.7%増の24億24百万円。
売上面では、ITインフラが減少したもののシステム運営管理、ソフトウェア開発およびサイバーセキュリティ・コンサルティング・教育が堅調に推移した。
利益面では、従業員への還元やグループ組織変更により、売上原価の増加があった一方で、増収にともなう増益や、利益率の高いDX関連ビジネスの拡大、管理部門における業務効率化などが増益に寄与した。売上総利益率は21.9%と前期比2.1ポイント低下し、販管費比率は14.1%と同3.2ポイント低下した。以上により、営業利益率は7.8%と同1.1ポイント上昇した。また、経常利益は同30.3%増の25億4百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同34.1%増の14億2百万円となった。営業外費用におけるコミットメントライン手数料の減少や、退職給付制度終了損の計上が、前期からの損益変動要因の大きなものとなった。その他、EBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却額)は、前期比21.8%増の30億33百万円となった。

 

サービスごとの業績動向(23/3期期)

 

22/3期

23/3期

前期比

増減額

増減率

システム運営管理

売上高

12,201

13,637

+1,436

+11.8%

売上総利益

2,941

2,964

+23

+0.8%

売上総利益率

24.1%

21.7%

-2.4P

-

ソフトウェア開発

売上高

10,542

11,458

+916

+8.7%

売上総利益

2,325

2,535

+209

+9.0%

売上総利益率

22.1%

22.1%

+0.1P

-

ITインフラ

売上高

2,624

2,602

-22

-0.8%

売上総利益

715

644

-71

-9.9%

売上総利益率

27.3%

24.8%

-2.5P

-

サイバーセキュリティ・コンサルティング・教育

売上高

2,081

2,934

+852

+41.0%

売上総利益

563

621

+57

+10.2%

売上総利益率

27.1%

21.2%

-5.9P

-

その他

売上高

355

467

+111

+31.3%

売上総利益

121

36

-84

-69.7%

売上総利益率

34.2%

7.9%

-26.3P

-

合計

売上高

27,805

31,101

+3,295

+11.9%

売上総利益

6,668

6,802

+134

+2.0%

売上総利益率

24.0%

21.9%

-2.1P

-

*単位:百万円

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

システム運営管理の売上高は、前期比11.8%増の136億37百万円となった。大手ITベンダーへの営業強化による取引の拡大や、金融関連既存顧客における受注拡大などが寄与した。売上総利益は、同0.8%増の29億64百万円、売上総利益率は同2.4ポイント低下の21.7%となった。

 

ソフトウェア開発の売上高は、前期比8.7%増の114億58百万円となった。大手ITベンダーへの営業強化による取引の拡大や、運輸関連既存顧客において延期となっていた大型案件の再開、金融および公共関連既存顧客における受注拡大などが寄与した。売上総利益は、同9.0%増の25億35百万円、売上総利益率は同0.1ポイント上昇の22.1%となった。

 

ITインフラの売上高は、前期比0.8%減の26億2百万円となった。金融関連既存顧客における取引の拡大があったものの、情報通信および公共関連既存顧客における案件の収束などが影響した。売上総利益は、同10.0%減の6億44百万円、売上総利益率は同2.5ポイント低下の24.8%となった。

 

サイバーセキュリティ・コンサルティング・教育の売上高は、前期比41.0%増の29億34百万円となった。サイバーセキュリティにおける製品販売の増加や受注拡大に加え、コンサルティングにおける売上の増加などが寄与した。売上総利益は、同10.2%増の6億21百万円、売上総利益率は同5.9ポイント低下の21.2%となった。

 

その他の売上高は、前期比31.3%増の4億67百万円となった。製品販売における前期大口受注の反動減があったものの、データエントリー及び製品販売における受注の拡大などが寄与した。売上総利益は、同69.7%減の36百万円、売上総利益率は同26.3ポイント低下の7.9%となった。

 

営業利益の増減要因

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

第4四半期(1-3月)の業績推移

 

23/3期第4四半期(1-3月)は、高水準であった前年同期と比べて増収減益となったものの、過去と比較して非常に高水準の売上高と営業利益となった。

 

(2)サービス別受注残高の状況

 

2022年3月末

2023年3月末

増減額

増減率

システム運営管理

3,325

3,743

+418

+12.6%

ソフトウエア開発

2,055

2,015

-40

-1.9%

ITインンフラ

623

560

-63

-10.1%

サイバーセキュリティ・コンサルティング・教育

347

440

+93

+26.8%

その他

185

112

-73

-39.5%

合計

6,537

6,872

+335

+5.1%

※単位:百万円

 

2023年3月末の受注残高は、2022年3月末比で5.1%の増加となった。システム運営管理とサイバーセキュリティ・コンサルティング・教育の受注残高の増加が顕著となった。

 

(3)経営施策の取組み状況

同社は現中期経営計画において推進する、①「顧客のDX推進支援の強化」と「自社のソリューション開発」という同社DXポートフォリオに沿ったビジネスモデルの展開、②高付加価値創出に向けたパートナーシップの強化、③管理部門の高度化と事業部門への人財シフトからなる3つの基本テーマの実現に向けて、「ITサービス戦略」「人財戦略」「ニューノーマル戦略」「SDGs戦略」の4つの基本戦略を掲げている。

 

◎ITサービス戦略
ニーズの高い技術領域を定め、パートナー企業との連携による顧客のDX推進支援や成長分野を対象とした自社ソリューション開発に努める。顧客のBCP(事業継続計画)強化・効率化のニーズに対応するため、SaaS型システム運用サービス「Smart運用」を提供している。更に、時間と場所にとらわれない運用業務の実現に向けて、メタバースを活用したバーチャルオペレーションセンターの開発を進めている。また、サイバーセキュリティにフォーカスしたサービスブランド「ID-Ashura(IDアシュラ)」を立ち上げ、顧客のニーズに対応するために10月より、サイバー保険商品付帯の適用を開始した。加えて、米国サイバーセキュリティのリーディングカンパニーと戦略的提携を開始し、サイバーセキュリティ強化を目指す顧客の技術者養成を支援している。

 

◎人財戦略
DXサービスの拡大や高付加価値化の実現に向けて、研修制度のさらなる充実を図り、中上級技術者及び企画提案型人材の育成を加速させる。日本型ジョブディスクリプション制度の構築・運用のほか、社内システムを通じた技術ナレッジの社員間での共有を目指している。具体的な取組みとして、開発部門がクラウド、ローコード、AIの育成プログラムを作成し、社員の資格取得を支援している。また、DX関連研修環境を社員に提供し、その受講者数は23/3期末でのべ437名となった。

 

◎ニューノーマル戦略
社内基幹システムの刷新などによる業務の効率化・高度化に努めるとともに、スマートな管理部門を構築する。グループ全体の生産性を向上させるため、情報共有基盤によるデータ一元管理や、ワークフローシステムの刷新検討など社内システムの適正化を進めている。また、管理部門要員の事業部門への再配置を進めるとともに、重複業務の削減や業務シェアの推進を行っている。

 

◎SDGs戦略
事業活動を通じてサステナビリティへの取組みを進め、「社会課題の解決」と「企業価値の向上」の好循環を目指す。鳥取県江府町と協定を締結し、行政におけるDX推進および地方共生へ取り組んでいる他、本社ビルでの使用電力を再生可能エネルギーに変更し、当社グループの温室効果ガス排出量を大幅に削減した。加えて、子ども食堂への食品・絵本の寄附等の社会貢
献活動やビーチクリーンボランティア等の環境保全活動、クラシックコンサート開催等の文化芸術活動支援を行っている。
また、ダイバーシティや人的資本開示への取組みが評価され、日経「スマートワーク経営」調査、「SDGs経営」調査において、それぞれ星3つ半、星3つに2年連続で認定された。更に、「健康経営」の観点では、とくに経営理念・方針や組織体制の側面が評価され、「健康経営優良法人 ~ホワイト500~」に4年連続で認定された。

 

(4)財政状態とキャッシュ・フロー

財政状態

 

22年3月

23年3月

 

22年3月

23年3月

現預金

4,908

5,069

仕入債務

945

1,147

売上債権

4,506

5,906

短期有利子負債

1,992

1,775

未収入金

297

153

賞与・役員賞与引当金

841

1,165

流動資産

10,341

11,649

長期有利子負債

725

350

有形固定資産

1,398

1,327

負債

6,792

7,087

無形固定資産

1,860

1,457

純資産

9,446

10,432

投資その他

2,638

3,085

負債・純資産合計

16,238

17,519

固定資産

5,897

5,870

有利子負債合計

2,718

2,125

*単位:百万円

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

2023年3月末の総資産は前期末比12億80百万円増加の175億19百万円。資産面では売上債権、投資有価証券などが主な増加要因となり、契約資産、のれん等が主な減少要因となった。負債・純資産面では仕入債務、賞与引当金、親会社株主に帰属する当期純利益による利益剰余金などが主な増加要因となり、短期と長期の有利子負債、未払法人税等などが主な減少要因となった。有利子負債は、前期末比5億92百万円の減少となった。自己資本比率は59.3%と前期末比1.4ポイント上昇した。

 

◎キャッシュ・フロー

 

22/3期

23/3期

前期比

営業キャッシュ・フロー

1,842

1,654

-188

-10.2%

投資キャッシュ・フロー

-9

-360

-350

-

フリー・キャッシュ・フロー

1,833

1,293

-539

-29.4%

財務キャッシュ・フロー

-1,889

-1,275

613

-

現金及び現金同等物の期末残高

4,713

4,801

88

+1.9%

* 単位:百万円

 

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

CFの面から見ると、売上債権の増加により営業CFのプラス幅が縮小した。また、定期預金の預入、無形固定資産の取得、投資有価証券の取得の増加などにより投資CFのマイナス幅が拡大し、フリーCFのプラス幅が縮小した。その他、短期借入金の減少幅の縮小などにより財務CFのマイナス幅は縮小した。以上により、23/3月末のキャッシュ・ポジションは前期比1.9%増加した。

 

(5)最近のトピックス

◎メタバースでバーチャルオペレーションセンターの開発に着手
同社の連結子会社である株式会社インフォメーション・ディベロプメントとINFORMATION DEVELOPMENT AMERICA INC.(本社:米国マサチューセッツ州、以下IDアメリカ)は 2023年3月、システム運用のあり方を変革し、新たな価値を創出する取組みとして、デジタルツインを活用したバーチャルオペレーションセンター(以下 VROP)の開発に着手した。
VROP は、インターネット上の仮想空間であるメタバースに構築したバーチャルなシステムオペレーションセンターのこと。物理的に離れた複数の拠点から VROP にアクセスし、リアルとバーチャルの融合した新たなコミュニケーション手法を用いることで、メタバースでのシステム監視やオペレーション等のシステム運用業務を実現する。2024年1月のサービス開始を目指して開発を進めており、SaaS 型サービスとして年間サブスクリプション契約(価格は未定)での提供を予定している。

 

(同社決算説明資料より)

 

◎米国サイバーレンジのリーディングカンパニーSimSpace Corporation との戦略的提携
同社は、2022年10月、米国商用サイバーレンジNo.1カンパニー SimSpace Corporationと戦略的提携を締結し、SimSpace Corporationの日本市場参入を開始した。SimSpaceサイバーレンジを活用したサイバーセキュリティ強化を目指す顧客への、セキュリティ技術者の養成を支援する。サイバーレンジは、セキュリティ人材育成、組織としての対応プロセスの評価、そしてサイバー攻撃に対する対応の実演習を行う基盤。また、セキュリティ製品の選定や評価も行うことができる。この演習基盤を活用することにより、高度化するサイバー攻撃に対して適切に対応・判断できるセキュリティ人材の育成と、未知の攻撃に対応できるスキル修得が可能となる。

 

◎鳥取大学との医療AIシステムに関する共同研究を開始
株式会社インフォメーション・ディベロプメント(は2023年3月、国立大学法人鳥取大学と、整形外科におけるX線画像診断AIシステムの設計・開発・評価の検討に関する共同研究契約を締結し、研究を開始した。本共同研究では、整形外科におけるX線画像診断AIシステムを研究開発する。鳥取大学医学部付属病院整形外科の持つ医学的見地と同社の持つ最先端技術を組み合わせ、地域医療における課題を解決する方法を研究・開発する。この取組みを通じ、新たな医療の在り方を模索し社会実装を進めることで、同社の目指す地域社会との共存共栄をはかり、持続可能な社会の実現に貢献する。

 

4.2024年3月期業績予想

(1)連結業績

 

23/3期

構成比

24/3期

構成比

前期比

売上高

31,101

100.0%

32,800

100.0%

+5.5%

営業利益

2,424

7.8%

2,630

8.0%

+8.5%

経常利益

2,504

8.1%

2,650

8.1%

+5.8%

当期純利益

1,402

4.5%

1,520

4.6%

+8.4%

*単位:百万円。
*当期純利益は、親会社株主に帰属する当期純利益。

 

売上高328億円、営業利益26億30百万円の計画
24/3期の会社計画は売上高が前期比5.5%増の328億、営業利益が同8.5%増の26億30百万円。
同社グループが属する情報サービス業界では、新たなビジネスモデルの創出や変革に向けたDX関連のIT投資ニーズが底堅く、引き続き堅調に推移するものと予想される。また、新型コロナウイルスの影響で抑制傾向にあった顧客企業のIT投資の回復基調が続いている。こうした中、同社グループは、引き続き中期経営計画「Next 50 Episode Ⅱ 『Ride on Time』」のもと、顧客企業におけるDX推進支援を強化するとともに、自社ソリューションの充実による新規ビジネスの拡大に取り組み、さらなる収益性向上を目指す。また、EBITDAは、前期比7.8%増の32億69百万円を予定している。売上高営業利益率は、前期比0.2ポイント上昇の8.0%の計画。
配当は、1株当たり前期比5円増配の50円の予定。予想配当性向は54.6%となる。同社は、株主に対する利益還元を経営の重要課題のひとつとして認識し、強固な経営基盤の確保、安定収益、および自己資本利益率の向上に努め、業績に裏付けられた適正な利益配分を継続することを基本方針としている。この方針のもと、今中期経営計画期間(23/3月期~25/3月期)においては、配当に加ええて自己株式取得を含めた総還元性向 50~60%を株主還元の目途とする。
※総還元性向 =(配当総額 + 自己株式取得額)÷ 親会社株主に帰属する当期純利益

 

5.今後の注目点

同社の23/3期は、前期比11.9%の増収、同29.7%の営業増益の好決算となった。これは、大手ITベンダーとの協業による積極的な営業活動の推進と、クラウドやサイバーセキュリティ等の先端技術を活用したDX関連ビジネスの広がりにより取引が拡大したものである。加えて、管理部門における業務効率化により販管費率が大幅に低下したことも寄与した。23/3期の売上高と営業利益は当初の数値目標を大幅に超過し過去最高を更新するとともに、中期経営計画における2年目の数値目標をも上回った。これら好調な業績推移に加え、今後も企業のビジネス変革に向けたIT投資は引き続き活発な見通しであることから、同社は中期経営計画の24/3期と25/3期における数値目標の上方修正を実施した。24/3期については、売上高を304億円から328億円へ、営業利益を22億円から26.3億円へ修正し、25/3期については、売上高を320億円から350億円へ、営業利益を25.5億円から30億円へ修正した。こうした好調な業績を牽引しているのが、DX関連売上の拡大である。今回DX関連売上の目標についても、24/3期が161億円から173億円へ、25/3期が192億円から210億円へ上方修正された。高付加価値のDX関連売上の拡大は、同社の収益性の更なる向上に直結する。中期経営計画の2年目においても好調なスタートを切ることができるのか、今後のDX関連売上の動向が注目される。
更に、現在同社が推進しているITサービス戦略の取り組み状況からも目が離せない。顧客のBCP(事業継続計画)強化・効率化のニーズに対応するため、SaaS型システム運用サービス「Smart運用」の提供を行っている。また、時間と場所にとらわれない運用サービスの実現を目指し、バーチャル空間を活用したオペレーションセンターの開発を進行中である。このID-VROPは、物理的に離れた拠点からアクセス可能で、年間サブスクリプション契約のSaaS型サービスとして、2024年1月にサービス開始を予定している。更に、サイバーレンジは、セキュリティ人材育成、組織としての対応プロセスの評価、そしてサイバー攻撃に対する対応の実演習を行う基盤であるが、同社は米国商用サイバーレンジNo.1カンパニーであるSimSpace Corporationと戦略的提携を締結し、SimSpace Corporationの日本市場参入を開始した。現在積極的に推進しているこれら新サービスの進捗状況にも期待を込めて注目していきたい。

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成>

組織形態

監査役設置会社

取締役

6名、うち社外3名

監査役

4名、うち社外3名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日: 2022年6月20日

 

<基本的な考え方>
当社では、「継続的に企業価値を高める」ことを経営における最重要項目と位置づけ、(1)経営と執行の分離による透明性と健全性の確保、(2)スピーディーな意思決定と事業遂行の実現、(3)アカウンタビリティー(説明責任)の明確化および(4)迅速かつ適切で公平な情報開示を基本方針として、コーポレート・ガバナンスの強化および監視機能の充実に取り組んでいます。なお、当社のコーポレート・ガバナンスに関する考え方を「コーポレートガバナンス・ガイドライン」(以下、「ガイドライン」という)として取りまとめ、当社ウェブサイトにおいて公開しています。(https://www.idnet-hd.co.jp/corporate/policy.html)

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>

原則

開示内容

【補充原則4-11① 取締役会の多様性に関する考え方】

取締役会は、専門知識や経験等のバックグラウンドが異なる多様な取締役で構成するとともに、その機能がもっとも効果的、効率的に発揮できる員数としています。また、役員の選考については、ジェンダーや国際性、職歴、年齢の面を含む多様性と適正規模の両立にも十分配慮します。社外役員は、他社での企業経営経験者、学識教育経験者、技術経験者、会計士等をおもな対象とします。

現在の社外取締役の3名は、他社での経営経験はありませんが、全員が独立社外取締役であり、且つ豊富な経験と幅広い見識を有しています。今後も多様性と適正規模を両立させる構成となるよう努めてまいります。

なお、当社の取締役および監査役の個人別のスキル、多様性については、当社ウェブサイトに掲載しています。

<取締役会のスキルマトリックス、多様性>

https://www.idnet-hd.co.jp/corporate/policy.html

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示(抜粋)>

原則

開示内容

【原則1-4政策保有株式】

(1)上場株式の政策保有に関する方針

事業上の関係を維持・強化し、中長期的な企業価値の向上を図るため、取引先等の株式を保有することがあります。取締役会は、毎年個別の政策保有株式について、保有目的および保有にともなう便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、その結果を開示するとともに、継続保有の合理性が認められない場合は、適切な時期に当該株式の売却を実施します。

(2)政策保有株式の議決権行使に関する基準

投資先企業のコーポレートガバナンス体制の整備状況や中長期的な企業価値の向上に資する議案であるかどうか、また、当社への影響などを総合的に勘案して、判断しています。

【補充原則2-4① 中核人材の登用等における多様性の確保】  

多様性を重視する企業文化のもと、さまざまな考え方を積極的に融合し結集することによって、グループ全体の力を最大限に発揮し、Waku-Wakuする未来創りを実現します。そのため、国籍、経験、専門性、価値観、ライフスタイル、障がい、LGBTなど、多様なバックグラウンドを持つ人材の採用と登用を積極的に進め、そうした個性が活きるよう、ワークライフバランスの推進や異文化コミュニケーション研修の実施、社内文書の多言語対応の充実など、人材育成と職場環境整備を進めています。

測定可能な数値目標に関しては、外国籍比率や女性管理職比率に関する目標値を定め、運用しています。本年3月末現在における女性管理職比率は16.9%と増加傾向にありますが、中期的には30%達成を目指して取り組みます。

また、管理職に占める中途採用者の比率は50%近くにまで達しており、既に十分な水準にあると認識し、具体的な目標設定はしておりません。

その他、人材の多様性確保や育成方針、職場環境に関する整備方針、外国籍管理職割合目標、中途採用管理職の状況については、当社ウェブサイトに掲載しています。

<サステナビリティ(社員の働く環境)>

https://www.idnet-hd.co.jp/sustainability/labor_practices.html

【原則3-1(i)会社の目指すところ(経営理念等)】 

当社グループは、経営理念IDentityのもと、お客さまのニーズにあった付加価値の高い情報サービスを提供し、情報化社会に貢献することを経営の基本方針とし、ミッションである「私たちはWaku-Wakuする未来創りに参加します」の実現に努めています。

経営理念や中期経営計画については当社ウェブサイトに掲載しています。また、機関投資家および個人投資家向けの説明会を定期的に開催し、積極的に情報を開示します。

<経営理念>

https://www.idnet-hd.co.jp/corporate/vision.html

<中期経営計画>

https://www.idnet-hd.co.jp/ir/strategy.html

【補充原則3-1③ サステナビリティについての取組み等】  

(1)自社のサステナビリティについての取組み  

IDグループは、経営理念のミッションにある 「Waku-Wakuする未来創りに参加します」のもと、サステナビリティ基本方針を定め、その方針に基づき、持続可能な社会の実現を目指します。また、中期経営計画では、4つの基本戦略のひとつに「SDGs戦略」を掲げ、当社の主要事業である情報サービスの提供を通じた社会課題の解決に積極的に取り組みます。また、気候変動への取組みとして、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の枠組みに沿って「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」ごとに、情報開示を行っています。

サステナビリティについての方針および取組みは当社ウェブサイトに掲載しています。

<サステナビリティ>

https://www.idnet-hd.co.jp/sustainability

<気候変動への取組み>

https://www.idnet-hd.co.jp/sustainability/environment.html

 

(2)人的資本や知的財産への投資等 

人的資本への投資については、中期経営計画の4つの基本戦略のひとつに「人財戦略」を定め、当社のDXビジネスのさらなる拡大に向けて、クラウドやサイバーセキュリティ、AI関連分野における中上級技術者の育成や、新たな発想でソリューション提案ができる企画提案型人財の育成を強化します。

また、知的財産への投資については、米国ベンチャーファンドへの出資や慶應義塾大学との協業を通じて先端技術の情報収集をするほか、画像分析・動画技術・音声認識の研究、スマートグラス活用、WEB3.0関連分野の調査研究に取り組んでいます。

人的資本等については当社ウェブサイトに掲載しています。         

<中期経営計画>

https://www.idnet-hd.co.jp/ir/strategy.html

【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】

株主との建設的な対話が、会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上に資するよう、株主からの対話(面談)の申込みに対しては、株主の希望と面談のおもな関心事を踏まえたうえで、合理的な範囲で社外取締役を含む取締役または経営陣幹部、監査役が臨むことを基本とします。

また、IR担当役員は、以下の通り行動します。

・当社グループの関係各部署と協力し、建設的な対話の実現に努力する。

・個別面談のほか、経営説明会等を開催し、IR活動の充実を図る。

・対話において把握した株主からの意見・要望について、取締役会および関連する経営陣幹部へ適時適切にフィードバックするよう努める。

・未公表の重要な内部情報(インサイダー情報)が外部に漏洩することを防止するため、当社の情報セキュリティースタンダードに基づき、情報管理統括責任者と連携を図り、情報管理を徹底する。

・株式名簿に基づき、定期的に株主構造の把握を行い、取締役会に報告する。

 

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