ブリッジレポート
(3131) シンデン・ハイテックス株式会社

スタンダード

ブリッジレポート:(3131)シンデン・ハイテックス 2023 年3 月期決算

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鈴木 淳 社長

シンデン・ハイテックス株式会社(3131)

 

 

企業情報

市場

東証スタンダード市場

業種

卸売業(商業)

代表者

鈴木 淳

所在地

東京都中央区入船3-7-2 KDX銀座イーストビル

決算月

3月

HP

https://www.shinden.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数(自己株式を控除)

時価総額

ROE(実)

売買単位

2,914円

1,953,630株

5,692百万円

13.5%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

150.00円

5.1%

501.63円

5.8倍

3,548.68円

0.8倍

*株価は6/20終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。BPSは直近四半期末実績。ROEは前期実績。

 

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主帰属利益

EPS

DPS

2019年3月(実)

46,102

626

299

209

102.09

45.00

2020年3月(実)

44,277

496

291

185

92.88

45.00

2021年3月(実)

49,084

819

702

497

246.18

75.00

2022年3月(実)

43,458

1,501

1,062

748

367.77

110.00

2023年3月(実)

41,924

2,242

1,302

897

448.80

135.00

2024年3月(予)

45,000

1,900

1,400

980

501.63

150.00

* 予想は会社予想。単位:百万円、円。

 

シンデン・ハイテックスの2023年3月期決算の概要と2024年3月期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2023年3月期決算概要
3.2024年3月期業績予想
4.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

今回のポイント

  • 23/3期は前期比3.5%減収、49.3%営業増益。半導体製品分野においては、特に年度前半が好調に推移し大幅増収。ディスプレイ分野は直接取引への商流変更により減収。システム製品分野及びバッテリ&電力機器分野では顧客における一部商材の供給難の影響を受けて減収となった。利益面では、半導体製品分野の増収効果と、ディスプレイ分野の利益率が改善、円安効果もあり売上総利益率が前期7.9%から10.3%へ大幅に向上した。営業外で為替差損を計上したことにより経常利益は22.6%増にとどまったものの、親会社株主帰属利益を含めて過去最高益を更新した。135円/株の期末配当を実施。

     

  • 24/3期は前期比7.3%増収、15.3%営業減益、7.5%経常増益を計画する。ドル取引の構成比が高く、前年に為替相場の円安進行の恩恵を受けた半導体製品とディスプレイ分野は減収見込み。一方、円取引の構成比が高いシステム製品とバッテリ&電力機器分野が増収見込み。利益面では、売上総利益はシステム製品分野の増加等営業努力分がプラス要因となるものの、23/3期にあった円安効果の剥落により減少する見通し。販管費については、主に販売活動の増加による渉外費用増により増加を見込んでおり、営業減益となる見通し。営業外ではドル金利の高止まりによる支払利息の増加はあるものの、前期に計上した為替差損5.9億円を見込んでいないことから営業外損益が改善し、経常増益となり連続で過去最高を更新する見通し。親会社株主帰属利益も9.2%増を見込む。配当は、150円/株の期末配当を予想。

     

  • 23/3期は、特に上期における好調な半導体需要と円安が追い風となった。ディスプレイ関連における直接取引への移管などもあり利益率が大幅に改善、減収ながら11月の上方修正を経て大幅増益、過去最高益を更新した。24/3期は半導体製品分野においてスロースタートを見込むものの、システム製品分野やバッテリ&電力機器分野が大幅に伸びる見通し。営業利益は減益予想だが、半導体市況の立ち直りが想定より早くなり、現状の為替水準であれば増益着地も考えられる。経常利益については、26/3期に目指す15億円の2年前倒し達成も視野に入りそうだ。株価については、依然としてPER、PBRとも極めて低位にある上、配当利回りは高い。会社側もより株価を意識した経営方針を打ち出している。23/3期までに収益構造改革を進め、今後はよりトップラインを重視した取り組みとなりそう。これまで水面下で進めてきたパイプライン整備の成果がいよいよ本格的に発揮されるのではないだろうか。

     

1.会社概要

半導体製品、ディスプレイ、システム製品、バッテリ&電力機器等の独立系エレクトロニクス商社。主に海外メーカの製品を仕入れ、国内電子機器メーカや産業機器メーカに販売しており、23/3期における売上の約81%を半導体製品分野及びディスプレイ分野が占め、システム製品分野、バッテリ&電力機器分野が約18%。中国(香港)、タイの連結子会社2社とグループを形成し、それぞれの地域に展開する日系企業向けビジネスを手掛けている。海外連結子会社の売上構成比が約9%を占める。

 

【経営理念 : 「当たり前のことを当たり前にする会社」】

・世界中より時代を先取りできる製品を発掘し、お客様に供給することで「社会の発展に貢献」する
・業界において、ナンバー・ワンを目指す
・トータルソリューションとして、お客様のニーズを的確に捉え、スピーディに対応し、「お客様の満足できる企業」を目指す
・社員が「夢を持って働ける企業」を目指す

【CSR・環境への取り組み】

同社は地球環境に優しい企業活動を経営課題の一つと位置づけており、環境保全と資源保護に配慮した活動による社会貢献と環境汚染の予防を推進している。具体的には、SDGsも念頭に、環境配慮型電池及びその周辺装置(半導体を含む)の拡販、システムでの低消費電力化に向けた高性能半導体の拡販に取り組んでいる。
この他、顧客のグリーン調達基準を遵守するため、化学物質管理システム(CMS)を構築・運用している他、社員が能力を発揮し、仕事と生活の調和を図り、働きやすい雇用環境の整備を行うため、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画を策定し推進している。2003年7月にISO 14001認証を、2004年3月にISO 9001認証を、それぞれ取得している。

 

1-1 取扱商品と仕入先・販売先

ディスプレイは主に韓国、中国及び台湾のディスプレイメーカから液晶モジュール等を仕入れ、そして、半導体製品はDRAMやフラッシュ等のメモリ及びメモリモジュールを主に韓国、中国及び台湾メーカから仕入れ、それらの商品を車載用機器、事務用機器、産業用機器等のセットメーカに販売している。ASSP(特定用途向け汎用IC)やASIC(特定用途向けカスタムIC)については、米国や韓国のメーカから仕入れており、CPU(中央演算処理装置)やGPU(リアルタイム画像処理に特化した演算装置)については米国メーカから仕入れた商品をパソコン用途以外の顧客に販売している。この他では、ファウンドリも手掛けている。ファウンドリとは、顧客から半導体の設計データを受け取り、韓国・米国半導体メーカに製造依頼し、完成品を依頼元に販売するビジネスである。システム製品では、国内・韓国メーカの検査用の装置等の電子機器、そして、EMSを取り扱っている。EMSとは、製品の開発・生産を受託するサービスである。バッテリ&電力機器は、主に韓国メーカからリチウムイオンや鉛バッテリ、電力機器等を仕入れ、民生品メーカや太陽光発電所向けに販売している。

 

商品分野・製品と市場・応用製品等

分野

製品

市場・応用製品等

半導体製品

メモリ、メモリモジュール、SSD、ASSP/ASIC、CPU/ GPU、LED、

ファウンドリ、パワー半導体等

カーナビゲーション等車載用、複合機等事務機器、

産業用機器、モバイル機器、その他民生用機器、

サーバ、スマートフォン、アミューズメント、液晶ドライバ

ディスプレイ

液晶モジュール、有機EL、タッチパネル、液晶ディスプレイ、LEDディスプレイ等

カーナビゲーション等の車載用、PC・タブレット、

スマートフォン、産業用機器、医療用機器、商業用施設等

システム製品

検査等装置、通信モジュール、Board、EMS、サーバ機器、

各種システム製品・機器

産業用機器、民生用機器、車載用機器、通信用機器、

事務用機器、スマートフォン、量子コンピュータ、

アミューズメント、研究・教育機関等

バッテリ&

電力機器

電池関連商品(リチウムイオン電池等)、

電源モジュール

電力機器(配電盤、開閉器等)

通信用基地局、民生用機器、産業用機器、

太陽光発電所向け等の再生エネルギー関連製品

 

仕入先

 

主な仕入先

特徴

半導体製品

SK hynix(韓国)

DRAM・NAND型フラッシュメモリ、メモリモジュール、CIS等の半導体メーカ。

Giga Device(中国)

NORフラッシュ製品やNANDフラッシュからMCU製品まで幅広く提供する不揮発性メモリデバイスの大手ファブレスメーカ。

MagnaChip(ルクセンブルク)

通信、モノのインターネット(IoT)アプリケーション、アナログ及びミックスドシグナル半導体プラットフォームソリューションの設計等。

AMD(米国)

PCプロセッサー、組み込み用プロセッサー等の半導体メーカ。

Telechips(韓国)

車載及びコンシューマ市場向けアプリケーション・プロセッサー(SoC)の設計・開発。

Global Foundries(米国)

IBMマイクロエレクトロニクス事業を譲り受けた世界トップクラスのファウンドリ。

Skyworks(米国)

スマートフォン等ワイヤレス通信機能を搭載した製品を幅広くサポートするデバイスを開発する半導体メーカ。

ディスプレイ

BOE(中国)

北京に本社を置くディスプレイパネル大手。

O-Nation Corporation(台湾)

顧客の要望に沿ったLCDモジュールを開発・販売するメーカ。

Goworld(中国)

各種LCDモジュール・静電タッチパネルメーカ。

WAYTON(台湾)

液晶ディスプレイモジュール専門企業。

EDT(台湾)

液晶タッチパネルメーカ。

システム製品

EMS部品メーカ

電子機器受託生産を展開する企業。

Boardメーカ

特定の機能を実現するため、様々な電子部品を実装した回路基板を製造するメーカ。

Telit(イタリア)

M2M製品を専門に取り扱う世界的メーカ。

EM-TECH(韓国)

スピーカーやハプティクスモーター等の高性能なデバイスを製造。

Giga Computing (台湾)

ハイパフォーマンスコンピューティングの礎となるべく、末端のエッジから最上層のクラウドに至るまでのソリューションを提供。

KAYTUS(シンガポール)

一般サーバから高性能サーバまで幅広くラインナップを有するグローバルIT企業。

バッテリ&

電力機器

LG Energy Solution(韓国)

韓国最大の総合化学メーカLG Chem.より独立。Liバッテリの供給元。

パナソニック(日本)

同社の充電式電池を取扱う。

LS ERLECTRIC(韓国)

電力機器及び自動化機器のメーカ。

ベルニクス(日本)

高圧電源システム、DC-DCコンバータなどにおいてユニークな独創的製品を扱う。

PHIHONG(台湾)

スイッチング電源。特に標準電源の互換品に強みを持つメーカ。

 

2.2023年3月期決算概要

2-1 連結業績

 

22/3期

構成比

23/3期

構成比

前期比

会社予想

予想比

売上高

43,458

100.0%

41,924

100.0%

-3.5%

44,400

-5.6%

売上総利益

3,422

7.9%

4,304

10.3%

+25.8%

-

-

販管費

1,921

4.4%

2,061

4.9%

+7.3%

-

-

営業利益

1,501

3.5%

2,242

5.3%

+49.3%

2,150

+4.3

経常利益

1,062

2.4%

1,302

3.1%

+22.6%

1,260

+3.3%

親会社株主帰属利益

748

1.7%

897

2.1%

+20.0%

865

+3.7%

* 単位:百万円

 

前年同期比3.5%の減収、営業利益は同49.3%増で過去最高を更新
売上高は前期比3.5%減の419.2億円。半導体製品分野において、年度前半の旺盛な半導体需要の取込みに注力したことに加え、為替相場が円安に進行したため3Qまでは増加基調にあった。年度後半から半導体市況の潮目が変化したところに、4Qより為替相場が円高に転換したものの大幅増収。ディスプレイ分野では、年度を通して直接取引への商流変更により減収。システム製品分野及びバッテリ&電力機器分野では顧客における一部商材の供給難による生産調整の影響を受けたため、足元では回復基調にあるものの減収となった。
営業利益は前年同期比49.3%増の22.4億円。利益面では、半導体製品分野の増収効果と、ディスプレイ分野の利益率が改善、為替相場が3Qまで円安に進行したことが奏功して売上総利益率が前期7.9%から10.3%へ大幅に向上し、売上総利益は前期34.2億円から43.0億円へ25.8%の大幅増。販管費の増加を吸収して営業利益は過去最高益を更新した。一方、年度当初の半導体をはじめとする各種商材の納期長期化への対応として在庫確保を行い供給の安定化を図ったため、外貨建て負債が大きくなっていたところへ急激な円安進行によって為替差損を大幅に計上したことと、ドル金利の上昇により支払利息が増加した。しかし、営業利益の増加が、これらのマイナス影響を打ち消したことにより、経常利益は前期比22.6%増の13.0億円、親会社株主帰属利益は同20.0%増の8.9億円となり、いずれも営業利益と同様に過去最高益を更新した。
配当は、135円/株の期末配当を実施。

 

2-2 分野別動向

 

22/3期

構成比

23/3期

構成比

前期比

半導体製品

21,367

49.2%

28,133

67.1%

+31.7%

ディスプレイ

12,258

28.2%

5,785

13.8%

-52.8%

システム製品

6,418

14.8%

5,560

13.3%

-13.4%

バッテリ&電力機器

3,011

6.9%

2,111

5.0%

-29.9%

その他

403

0.9%

332

0.8%

-17.5%

連結売上高

43,458

100.0%

41,924

100.0%

-3.5%

* 単位:百万円

*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

半導体製品分野の売上は前期比31.7%増の281.3億円。年度前半の世界的な半導体不足の中、その旺盛な需要への対応に注力したことと、メモリ価格上昇や為替相場が円安基調に推移したことで大幅に増加した。年度後半からの半導体市況の潮目の変化とQ4からの円高転換の影響を受けるも、年度前半の車載用機器・事務用機器・スマートフォン周辺機器向け等の旺盛な需要へ対応できた。
ディスプレイ分野の売上は同52.8%減の57.8億円。23/3期より再構築分野として、高利益商材の販売に注力し利益率の改善に努めている。直接取引に商流変更となった液晶モジュールビジネスの影響を受け減収となった。円安進行による恩恵があった、直接取引への移管は車載・モニタ向けLCDモジュール。メーカ構成の変化により利益率は大幅に改善しており、利益面における影響は軽微。
システム製品分野の売上は同13.4%減の55.6億円。異物検出装置は堅調に推移した。しかし、一部部品の供給不足継続の影響による顧客の生産調整のためEMSビジネスが減少して減収となった。ただし、4QよりEMSビジネスは部品の需給動向の改善で回復基調にある。
バッテリ&電力機器分野の売上は同29.9%減の21.1億円。顧客製品における開発遅延や、一部部品の供給不足継続の影響により、主に家庭用蓄電システム(ESS)の顧客の生産調整の影響を受けたため減収となった。

 

2-3 財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)

財政状態

 

22年3月

23年3月

 

22年3月

23年3月

現預金

6,331

4,188

仕入債務

2,548

2,364

売上債権

8,490

6,554

短期有利子負債

10,413

5,496

棚卸資産

5,384

5,255

未払法人税等

184

268

流動資産

20,516

16,494

流動負債

13,471

9,054

有形固定資産

12

21

長期有利子負債

1,025

858

無形固定資産

4

2

固定負債

1,026

860

投資その他

355

338

純資産

6,390

6,942

固定資産

371

361

負債・純資産合計

20,888

16,856

* 単位:百万円

株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

総資産は168.5億円となり、前期末との比較(以下同)で40.3億円減少した。現預金や売掛金が減少したことによるもの。負債は99.1億円となり、45.8億円減少した。その他の流動負債が増加したが、有利子負債が減少した。純資産は69.4億となり、5.5億円増加した。主な要因は、利益剰余金の増加によるもの。
流動比率は、短期借入金の減少等により前期末比29.9ポイント増加し、182.2%となった。自己資本比率は、利益剰余金の増加による純資産増加等により、同10.5ポイント増加し41.1%となった。有利子負債対純資産比率は0.9倍となり、同0.9ポイント減少した。

 

キャッシュ・フロー(CF)

 

22/3期

23/3期

前期比

営業キャッシュ・フロー(A)

747

4,577

+3,829

+512.2%

投資キャッシュ・フロー(B)

7

-15

-23

-

フリー・キャッシュ・フロー(A+B)

755

4,561

+3,805

+503.8%

財務キャッシュ・フロー

-866

-6,772

-5,906

-

現金及び現金同等物期末残高

6,316

4,173

-2,143

-33.9%

* 単位:百万円

株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。

 

3.2024年3月期業績予想

3-1 通期連結業績

 

23/3期 実績

構成比

24/3期 予想

構成比

前期比

売上高

41,924

100.0%

45,000

100.0%

+7.3%

営業利益

2,242

5.3%

1,900

4.2%

-15.3%

経常利益

1,302

3.1%

1,400

3.1%

+7.5%

親会社株主帰属利益

897

2.1%

980

2.2%

+9.2%

* 単位:百万円

 

24/3期は7.3%増収、営業利益は15.3%減を見込む
24/3期は売上高が前期比7.3%増の450億円、営業利益は同15.3%減の19.0億円、経常利益は同7.5%増の14.0億円、親会社株主帰属利益は同9.2%増の9.8億円を計画する。
売上高は、ドル取引の構成比が高く、前年に為替相場の円安進行の恩恵を受けた半導体製品とディスプレイの両分野は減少見込みとなる。一方、円取引の構成比が高い(=為替影響の少ない)システム製品とバッテリ&電力機器の両分野が増加見込みとなり、総じて売上高は前年対比で増加するものと見通している。
半導体製品分野の売上は前期比0.5%減の280億円を見込む。前半は半導体市況の下落基調が継続し、スロースタートを想定。また、前年に恩恵を受けた円安効果が剥落する見込みのため微減収と見通す。(循環市況である)半導体市況の転換時期次第であるが、やや保守的な想定としている。ディスプレイ分野の売上は前期比20.5%減の46億円を見込む。産業用機器向け、PC向け、スマートフォン等のモバイル機器向けの需要減が継続し、円安効果の剥落も加わる見込みで減収予想。しかし、メーカ構成の変化により利益率は大幅に改善しており、利益面における売上減少の影響は軽微にとどまる見通し。システム製品分野の売上は前期比65.4%増の92億円を見込む。異物検出装置ビジネスは堅調に推移する見通し。また、前年に一部部品の供給不足による顧客の生産調整の影響を受けたEMSビジネスにおいて、顧客の大幅な増産計画と、「新規EMSビジネス」の稼働を見込むため、大幅増収予想。採算性の高い分野であり、当分野の売上高増により利益面で大きく寄与する見込み。バッテリ&電力機器分野の売上は前期比30.2%増の27.5億円を見込む。顧客製品における開発遅延や、家庭用電力貯蔵システム(ESS)ビジネスにおいて、一部部品の供給不足の影響による顧客の生産調整が改善する見込みであり増収予想。
利益面では、売上総利益はシステム製品分野の増加等営業努力分がプラス要因となるものの、23/3期にあった円安効果の剥落により減少する見通し。販管費については、主に販売活動の増加による渉外費用増により増加を見込んでおり、営業減益となる見通し。営業外ではドル金利の高止まりによる支払利息の増加はあるものの、前期に計上した為替差損5.9億円を見込んでいないことから営業外損益が改善し、経常増益となり連続で過去最高を更新する見通し。
配当は、150円/株の期末配当を予想。

 

 

3-2 中期経営方針

経営目標(24/3期~26/3期)

次期中期経営期間における販売戦略は、推進中の「収益構造改革」の基本構造を踏襲しつつ、経営基盤戦略を充実させ、下記の中期経営目標の達成に向けて邁進する。

 

目標① 26/3期経常利益15億円

 

目標② ROE10%以上の継続

 

 

 

経営方針

全社一丸となり、デジタル・トランスフォーメーション(DX)、グリーン・トランスフォーメーション(GX)市場の開拓を推進し、サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)への寄与をもって社会へ貢献し、企業価値の向上を目指す。

(同社資料より)

 

販売戦略

販売戦略の遂行と中期経営目標達成にあたり、「新規開拓活動」を引続き、次期中期経営期間の重点活動とする。
既存顧客の深掘 → 半導体製品分野をコア分野とし、ディスプレイ・システム製品・バッテリ&電力機器の各分野の需要をつかみ、相乗効果を発揮させる。
新規顧客の開拓 → 産業機器・社会環境関連市場の新規優良顧客の開拓を加速化させる。

 

(同社資料より)

 

経営基盤戦略

①人的資本に関する戦略
「当社グループの最大の資本は人であり、役員及び従業員が最大限に力を発揮できる環境と共に社業の発展がある」との考えに立脚し、次の人的資本に関する戦略を掲げる。

  • SXに寄与する人材の育成・・・適材適所の人員配置を追求+実践を通じた育成の場を提供
  • 次世代の役員・管理職の育成・・・能力と志を有する従業員に対し、年齢・性別を問わず段階的に実践の場を提供
  • 従業員の年齢構成の最適化・・・中途採用を中心とした新規採用によって増員を図る
  • より働きがいのある職場づくり・・・公正な評価制度を追求
  • モチベーションアップのための各種制度設計や施策の継続的な検討・推進

     

    ②経営管理機能の強化

  • 経営管理機能のDX化を推進・・・「法制度改正への対応」「効率的な働き方の実現」「戦略の実効性把握」

     

    ③資本戦略

  • 在庫運用の適正化を追求・・・ビジネス展開を見極める
  • 資金調達コストの低減・・・取引金融機関との良好な関係を維持
  • 株式価値の維持向上・・・会社情報の発信を充実+機動的かつ適時適切な資本政策の実施を検討

     

3-3 サステナビリティに関する考え方

同社では、「モットー」及び「企業行動憲章」を行動規範とし、「戦略リスク」と「オペレーションリスク」に分類したリスクマネジメントを行いつつ、環境保全に寄与する商品の拡販に注力する取組み、そして、ESGにかかる取組みを通じ、持続的成長・発展を図ることが、より良い地球環境や社会への貢献と考え、その実現を目指す。

 

目標

(同社資料より)

 

取組

中期販売戦略(24/3期~)

  • 市場・顧客戦略
重点市場:DX・GX関連市場産業機器市場・社会/環境市場の新規優良顧客の開拓
  • 製品戦略
バッテリ&電力機器分野をSXの重点市場に位置づけるエネルギーマネジメント及びEV関連商材の発掘と拡販

事業リスクを以下の2種に区分し、リスクマネジメントを行う。

  • 戦略リスク
事業戦略の策定及び遂行により健全な範囲で事業成果を獲得するために「敢えて選択して取るリスク」
  • オペレーションリスク
戦略遂行を支えるオペレーション上の事象による損失額及び事象発生可能性であり、事業遂行上、「一定以下に抑制すべきリスク」
  • 環境(Environment)
ISO14001認証規格の取組化学物質管理(禁止化学物質・環境影響物質の管理)
  • 社会(Social)
人権の尊重(同社サプライチェーン内で紛争鉱物調査)従業員の適正な処遇、労働環境の整備と育成
  • ガバナンス(Governance)
コーポレートガバナンス・コードへの取組コンプライアンス・災害等危機管理への取組

3-4 資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて

分析指標

現状評価にあたり、下表は「収益構造改革」を着手する前年度である20/3期を起点としている。

指標

20/3期末

21/3期末

22/3期末

23/3期末

資本コスト

 

WACC(注1)

2.1%

2.0%

3.8%

7.3%

資本収益性

 

ROIC(注2)

2.6%

3.6%

6.6%

13.9%

(②- ①)

+0.5%

+1.6%

+2.8%

+6.6%

資本コストを上回る資本収益性を達成できているか

 

株式市場の評価

 

BPS

2,670.68円

2,832.93円

3,137.27円

3,548.68円

 

株価(期末時点)

811円

2,011円

2,030円

2,957円

PBR

0.3倍

0.7倍

0.6倍

0.8倍

株価で十分な市場評価を得られているか(PBR1倍)

×

×

×

×

(注1):WACC(%)=加重平均負債コスト(%)+株主資本コスト(%)=資金調達にどのくらいコストをかけているかを示す指標。
なお、20/3期~22/3期末における株主資本コストの計算に使用した期待収益率及び企業のβ値は暫定値を使用。
(注2):ROIC(投下資本利益率)=NOPAT(税引後営業利益)÷投下資本(有利子負債+株主資本)

 

同社による現状評価

21/3期開始の中期経営期間(3か年)において、「収益構造改革」に着手している。同期間においては、新型コロナウイルス感染症やロシアのウクライナ侵攻により、金利や仕入れ価格の上昇の影響を受けつつも、資本効率の向上を追求した各種施策を実施してきた。その結果、「収益構造改革」を着手する前年度である20/3期に対し、21/3期からの3か年において、資本コストを上回る収益性の拡大ができた。よって、推進してきた「収益構造改革」に一定の効果があるものと評価。

20/3期~23/3期における全期間、PBRが1倍割れとなり、株式市場において十分な評価を得られなかった。しかしながら、PBRは1倍を割れているものの、「収益構造改革」による業績の改善や、会社説明会の動画配信などのIR を充実させる取組みを通じて、徐々に改善基調にあるものと評価。

3-2 中期経営方針に示した通り

 

 

4.今後の注目点

同社のビジネスを考えるうえでのポイントは、表面的な売上・利益よりも、先を見越して進めている水面下でのパイプラインの整備である。売上・利益は結果であり、その時々の為替やデバイスの市況にも左右されてしまうが、パイプラインが整備されていれば、目先の業績が振れても、中長期の成長に不安はない。今も数年先を見据えた営業努力が続いている。
23/3期は、特に上期における好調な半導体需要と円安が追い風となった。ディスプレイ分野における直接取引への移管などもあり利益率が大幅に改善し、減収ながら11月の上方修正を経て大幅増益を確保した。24/3期は半導体製品分野においてスロースタートを見込むものの、システム製品分野やバッテリ&電力機器分野が大幅に伸びる見通し。営業利益は減益予想だが、半導体市況の立ち直りが想定より早くなり、現状の為替水準であれば増益着地も考えられるだろう。経常利益については、26/3期に目指す15億円の2年前倒し達成も視野に入りそうだ。
株価についてはかなり見直されたものの、依然としてPER、PBRとも極めて低位にある上、配当利回りは高い。会社側も今回の決算発表に際して、PBR1倍割れを考慮するようになっており、より株価を意識した経営方針を打ち出している。23/3期までに収益構造改革を進め、今後はよりトップラインを重視した取り組みとなりそう。これまで水面下で進めてきたパイプライン整備
の成果がいよいよ本格的に発揮されるのではないだろうか。

 

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

10名、うち社外2名

監査役

3名、うち社外2名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2022年11月9日)
基本的な考え方
当社は、コーポレート・ガバナンスの強化・充実を経営上の重要な課題の一つとして位置付けております。
経営環境の変化に柔軟かつ迅速に対応し、グループ全体の持続的な企業価値の向上を図るとともに、企業理念を具現化し発展していくために、意思決定の迅速化及び責任の明確化、並びに内部統制システムの整備等により、経営体制を充実させ、経営の透明性向上とコンプライアンス遵守の徹底を図っていくことを当社のコーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方としております。さらに、株主をはじめとするステークホルダーに対する、企業としての社会的責任を果たすことを、経営の重要な責務として認識し、グループ内における監督機能、業務執行機能及び監査機能を明確化することにより、経営目標の達成に向けた経営監視機能の強化に努めております。

 

<実施しない原則とその理由>
【補充原則1-2④】
当社は、機関投資家が議決権行使をおこないやすい環境の整備や海外株主に向けた英文による情報提供が必要と認識していますが、現状は、自社の株主における機関投資家や海外投資家が少ないため、英訳は実施しておりません。今後の株主動向等を踏まえ、検討してまいります。

 

【補充原則2-4①】
当社は、管理職や中核人材の登用等において、性別・国籍・採用ルート等の属性による制限なく、役割に必要な能力・知識・経験等に基づいて、適任と判断した人物を登用しております。
現時点では、女性・外国人・中途採用者の管理職・中核人材への登用に対する測定可能な数値目標を定めるには至っておりませんが、今後も引き続き多様性の確保に努めるとともに、今後の企業規模の拡大や環境変化に応じて、目標について検討してまいります。

 

【補充原則3-1②】
当社は、海外投資家等に向けた英文による情報提供が必要と認識していますが、現状は、自社の株主における海外投資家等が少ないため、英訳は実施しておりません。今後の株主動向等を踏まえ、検討してまいります。

 

【補充原則4-1③】
当社は、最高経営責任者である社長の後継者の計画を現時点では明確に定めておりませんが、当社の企業理念・経営理念の実現及び会社の持続的な成長に向けてリーダーシップを発揮しうる者を、経験・能力・識見・人格を踏まえ、取締役会において協議し適切に決定しております。
後継者計画の立案については、今後必要に応じて検討してまいります。

 

【補充原則4-10①】
当社は、独立社外取締役を主要な構成員とする独立した指名委員会・報酬委員会を設置しておりませんが、取締役会等で、取締役や監査役、経営陣等と意見交換や提言をおこなっており、独立社外取締役としての責務を十分に果たしていると考えております。
指名や報酬などの特に重要な事項については、適宜、独立社外取締役から意見や助言を得ながら、取締役会で定めた方針に従い、決定してまいります。

【補充原則4-11③】
取締役会において、取締役は、相互に業務執行状況や経営課題進捗状況について意見交換等が行われているとともに、社外取締役及び監査役から意見表明や提言、助言がなされ、取締役会の実効性は保たれていると判断しております。
取締役会の実効性の分析評価制度の導入及びその結果概要の開示につきましては、必要に応じて検討してまいります。

 

本レポートは、情報提供を目的としたものであり、投資活動を勧誘又は誘引を意図するものではなく、投資等についてのいかなる助言をも提供するものではありません。また、本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、当社は、本レポートに掲載されている情報又は見解の正確性、完全性又は妥当性について保証するものではなく、また、本レポート及び本レポートから得た情報を利用したことにより発生するいかなる費用又は損害等の一切についても責任を負うものではありません。本レポートに関する一切の権利は、当社に帰属します。なお、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申し上げます。

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