ブリッジレポート:(6193)バーチャレクス・ホールディングス 2025年3月期決算
![]() 丸山 栄樹 社長 | バーチャレクス・ホールディングス株式会社(6193) |
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企業情報
市場 | 東証グロース市場 |
業種 | サービス業 |
代表取締役社長 | 丸山 栄樹 |
所在地 | 東京都港区虎ノ門4-3-13 ヒューリック神谷町ビル8階 |
決算月 | 3月 |
HP |
株式情報
株価 | 発行済株式数(除、自己株式) | 時価総額 | ROE(実) | 売買単位 | |
770円 | 2,813,524株 | 2,166百万円 | 6.4% | 100株 | |
DPS(予) | 配当利回り(予) | EPS(予) | PER(予) | BPS(実) | PBR(実) |
15.00円 | 1.9% | 71.90円 | 10.7倍 | 613.15円 | 1.3倍 |
*株価は6/13終値。発行済株式数、DPS、EPSは25年3月期決算短信より。ROE、BPSは25/3期実績。
業績推移
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 | EPS | DPS |
21年3月(実) | 5,632 | 164 | 181 | 110 | 38.42 | 0.00 |
22年3月(実) | 6,223 | 519 | 543 | 364 | 126.37 | 0.00 |
23年3月(実) | 6,798 | 576 | 497 | 635 | 217.74 | 15.00 |
24年3月(実) | 6,692 | 371 | 454 | 202 | 69.43 | 15.00 |
25年3月(実) | 6,488 | 279 | 185 | 111 | 39.22 | 15.00 |
26年3月(予) | 6,900 | 330 | 320 | 200 | 71.90 | 15.00 |
*単位:百万円、円。予想は会社側予想。
バーチャレクス・ホールディングス株式会社の2025年3月期決算概要などをお伝えします。
目次
今回のポイント
1.会社概要
2.成長戦略
3.2025年3月期決算概要
4.2026年3月期業績予想
5. 今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
今回のポイント
- 25/3期の売上高は前期比3%減の6,488百万円、営業利益は同25%減の279百万円となった。期初会社計画は増収増益を計画していたが、一転減収減益の着地となった。IT&コンサルティング事業、アウトソーシング事業ともに事業拡大計画が未達に終わった。SI案件の開発遅延や既存事業の横展開が思ったように進まなかったうえ、顧客起因による売上計上停止が全体の足を引っ張った格好である。
- 26/3期会社計画は前期比6%増収、18%営業増益。従来開示の25/3期~27/3期の累計営業利益目標も17億円から10億円に引き下げた。AI利活用の重要性が加速度的に増す事業環境において、デジタルマーケティング領域においてもAIソリューションを中核とした成長戦略を採ることが重要との考えから、今後2期はAIノウハウの修正および深化、事業構築および拡大に経営の力点を置く考え。一株配当は15円(配当性向15.6%)とする計画。
- 25/3期は事業拡大計画の未達に加え、開発遅延や顧客起因の貸倒引当金積み増しなどが重なり、苦しい期となった。その結果、3か年での累計利益計画も引き下げられた。しかしながら、今後に向けてマインドが冷えている印象はなく、全事業領域をよりAIビジネスにフォーカスした成長戦略へと舵を切るなど、ファイティングポーズは取り続けている。同社の強みを最大限生かし、業界内に先駆けてAIフォーカスに注力することで、比較優位性を高めようとする経営戦略は評価したい。とはいえ、簡単な事業領域ではないことも事実であり、今来期の仕込みをきちんと見守っていきたいところである。
1.会社概要
1999年の創業以来、「コンサルティング」「テクノロジー」「オペレーション」の3つのコアスキルを融合し、クライアント企業のCRM領域をドメインに一気通貫サービスを提供してきた。現在では、「Digital & AI」で「SX(Sustainable Transformation)」を実現するという事業ビジョンのもと、クライアント事業のSuccession(=成功の連続)に向けた伴走支援を行っている。
【1-1沿革】
実力主義の世界で自分の力を試そうと考えた丸山 栄樹氏(現 バーチャレクス・ホールディングス株式会社 代表取締役社長)は
大手コンサルティングファームのアクセンチュアに入社し、コンサルタントとして実績を積み上げていった。丸山社長は、実績を積んでいく中で会社の看板無しに自分で何ができるかを試したいと考えるようになった。具体的には、一般的にコンサルティングの成果物は提案書やレポートであり、その計画をクライアントが実行しない限りは結果を見ることができないが、そうではなく、始めから最後までクライアントと共に伴走し、結果を提供したいと考えるようになり、1999年6月、株式会社バーチャレクス(現 バーチャレクス・ホールディングス株式会社)を創業するに至った。
企画・提案までを主体とする「コンサルティング」に加えて、その実現手段である「テクノロジー」と業務遂行自体を支援する「アウトソーシング」をワンストップに提供することを理念とする同社は、大手証券会社グループを初めての顧客とすると、独自のスタイルが評価され、紹介を通じて大手小売企業や大手EC企業を中心に顧客数を着実に伸ばしていった。2016年6月、東証マザーズ市場に上場した(2022年4月、市場再編に伴い東証グロース市場に移行)。

【1-2 グループ企業理念】
以下のような企業理念を掲げ、全てのステークホルダーとの共栄を目指している。
「Success for the people, organization and society.」
☆ | 私たちは生活者・消費者(顧客)、クライアント企業やパートナー企業の皆様、当社の株主やグループ従業員とその家族など、共に歩むすべての人たちの成功に向かいます。 |
☆ | 私たちはクライアント企業・団体、パートナー企業、グループ企業の成功に向かいます。 |
☆ | 私たちは社会・環境の持続的な成功に向かいます。 |
☆ | 私たちはこのような想いのもと、議論し、判断し、行動します。 |
【1-3 事業ビジョン・ビジネスドメイン・事業環境】
コンタクトセンター運営に関するコンサルティング及び運営受託からスタートした同社は、事業領域をCRM、デジタルマーケティングへと拡張してきた。その後の社会の大きな変化に合わせ、現在はAIとDXを共通基盤に、「Consulting(戦略を練り、企画・計画する力) / Technology (最先端技術を組み上げる力)/ Operation(クライアントを伴走し結果を出す能力)」をミックスした最適なソリューションとサービスを提供していくことに注力している。

(同社資料より)
同社の事業領域は主にクライアントのCustomer Success Pipelineである。AI及びDigital領域での知見とこれまでの実績をベースに、コンサルティングサービス、ソフトウェア製品技術支援・開発、伴走型・実行型コンサルティング、といったサービスを提供している。

(同社資料より)
【1-4 事業内容】
(1)グループ体制
持株会社バーチャレクス・ホールディングス株式会社及び、子会社5社(連結子会社4社、非連結子会社1社)でグループを構成。グループ一体となってサービスを提供している。
企業名 | 事業内容 |
バーチャレクス・ホールディングス株式会社 | グループ経営戦略・経営管理 |
バーチャレクス・コンサルティング株式会社 | カスタマーサクセスパイプラインをテーマに、コンサルティングからテクノロジー支援・アウトソーシングサービスまで、ワンストップでサービスとサクセッション(継続的成功)を提供 |
バーチャレクス九州株式会社 | オペレーションエクセレンスを追求しクライアント業務を実行支援するアウトソーシング企業 |
VXアクト株式会社 | 旬な技術を持った技術者をチームで提供し、エンジニアリングをサポートする技術開発支援企業 |
株式会社タイムインターメディア | 最先端の技術力をベースに、ソフトウェアの開発導入、保守・運用まで一気通貫でサービスを提供するテクノロジー企業 |
Virtualex U.S.A., Inc. | ITソリューションの調査・研究 |
*バーチャレクス・コンサルティング株式会社、バーチャレクス九州株式会社、VXアクト株式会社、株式会社タイムインターメディアが連結子会社。
(2)セグメント
セグメントは、「IT&コンサルティング事業」と「アウトソーシング事業」の2つ。売上、利益ともITコンサルティング事業:アウトソーシング事業=6:4となっている(25/3期実績)。収益性も概ね同水準となっている。


(同社資料より)
①IT&コンサルティング事業
バーチャレクス・コンサルティング株式会社、株式会社タイムインターメディアおよびVXアクト株式会社が行っている。
具体的なサービス内容は、「コンサルティングサービス」「CRM製品提供」「ストック型ITサービス」からなる。
*コンサルティングサービス
創業当初から行っているコールセンター構築をはじめとする企業の事業戦略、CRM戦略、IT戦略、及びマーケティング戦略等の立案から、それらの実現・導入に向けた業務やシステムの設計・構築の支援を行う。
サービス | 内容 |
事業戦略・CRM戦略の立案 | 企業の事業活動やCRM活動を向上させるための戦略作りや計画作りを支援する。 |
IT戦略の立案 | CRM活動を向上させるためのIT基盤の在り方についての戦略作りや計画作りを支援する。 |
CRM製品の提供に伴うカスタマイズ | CRMパッケージ製品「inspirX(インスピーリ)」を提供するにあたって、クライアント企業のニーズに基づくカスタマイズ開発を行う。 |
CRMコールセンターの構築・変革支援 | CRM向上に寄与する役割や業務の在り方を踏まえたコールセンターの構築や変革の支援を行う。 |
コールセンターCALL削減 | コールセンターにおけるCALL分析により、無駄な問合せを削減するための様々な施策を打ち、それぞれのチャネルの最適化を図ることで、コールセンターの運営コストの低減を図る。 |
CEM領域で培ったノウハウを、デジタルマーケティングやビジネス・アナリティクスといったマーケティング領域に融合展開し、サービス領域及び提供価値の拡充を図っている。
サービス | 内容 |
マーケティングデータ分析 | 企業のマーケティング活動に有益な種々のデータ(ビッグデータ)の分析を行い、マーケティング戦略作りを支援する。 |
マーケティングプロセス設計 | 策定したマーケティング戦略を実践するためのプロセス設計(業務・システム)を行う。 |
マーケティングプラットフォーム構築 | マーケティング活動に必要となるITプラットフォームの構築を行う。 |
Web領域、文教・教育ソリューション領域にも事業ドメインを拡大しているほか、遺伝的アルゴリズム(進化計算)をベースとしたAIの利活用、デジタルトランスフォーメーション支援、分散コールセンターやマザーセンターの技術基盤構築など、ソリューション領域を拡張しビジネスを成長させている。
*CRM製品提供
コンサルティングやプロセス運営で培った知見をITソリューションとして形にしたCRMパッケージ製品「inspirX(インスピーリ)」をライセンス販売している。
CRMパッケージ製品「inspirX」は、長年にわたるコールセンター運営の経験を活かして自社開発した顧客対応履歴管理ソフトウェア。電話、FAX、メール、SMS、LINE等のマルチチャネルに対応しており、同製品の導入により、顧客からの問い合わせ、意見、クレーム、受発注情報などのやりとりや実際の訪問など、あらゆる顧客とのコミュニケーションを統合的に管理することが可能となる。
*ストック型ITサービス
企業のCRM基盤を戦略的かつ効率的に支援している。
近年急速にニーズが高まっている「inspirX」のクラウド型サービスを中心に、オンプレミス型導入後の保守サービス、他社(パートナー企業)製品の代理店型サービスなども提供している。
②アウトソーシング事業
バーチャレクス・コンサルティング株式会社、バーチャレクス九州株式会社が行っている。
創業以来、クライアント企業のCRM推進の中心的な役割を果たすコールセンター業務等の受託運営を行ってきた。
コールセンターの受託運営は、大別すると、同社グループセンターで同社のグループ要員が業務を遂行するサービス形態と、クライアント企業のセンターで同社のグループ要員がクライアント社員と共同で業務を遂行するサービス形態とがあり、クライアントの要望に合わせてサービスを提供している。
近年では、通常の問い合わせセンターや受発注センターの運営のみならず、同社グループのコンサルティング力を活かすことによって、業務標準(KPI、プロセス)構築や新規取り組みを実施(仮説検証)するマザーセンターの運営、デジタルマーケティングのバックオフィス業務のアウトソーシング受託(Marketing Process Outsourcing)等のサービスを展開している。
サービス | 内容 |
マザーセンターのアウトソーシング | コンサルティング、テクノロジー、アウトソーシングのノウハウを集約し、コールセンターのベストプラクティスを追求するラボ(実験)機能を有するセンターの運営を行う。 |
CALL削減のための一部業務の運営 | 顧客からの問い合わせ内容を分析することにより、問い合わせ原因を解消したり、自己解決に導いたり、対応チャネルを効率化させることを目的としたセンターの運営を行う。 |
新規顧客獲得業務の代行・共同運営 | マーケティングデータ分析やマーケティングプロセス設計に基づいた新規顧客獲得業務の代行や共同運営を行う。 |
広告・ソーシャルチャネルの運用 | デジタルマーケティングによる広告やソーシャルチャネルを利活用したマーケティング業務の運用を行う。 |
キャンペーンマネジメント業務の運用 | マーケティング計画やマーケティングプラットフォームに基づくマーケティングキャンペーン活動等のマネジメント業務を行う。 |
マーケティングデータ管理・レポーティング | マーケティング活動で蓄積されるデータの管理や分析レポートの作成を行う。 |
マーケティングプラットフォームの運用 | より効果的なマーケティングを実践するためのプラットフォームを構築した上で、そのプラットフォームの運用を代行する。 |
【1-5 特長・強み・競争優位性】
(1)CRM領域における総合力を活かしたワンストップ・サービス
企業がより有効なCRMを実践するには、店舗や営業マンなどの「対面チャネル(接点)」と、コールセンターやインターネットなどの「非対面チャネル」の両者を通じた顧客接点全体の再構築を行い、それらをCRMプロセスとして導入する必要がある。
企業がこれらの再構築やプロセス導入を行う際には、広告代理店、コンサルティング会社、SIベンダー、テレマーケティング会社など様々な会社に支援を求めることが必要となる。
一方、「コンサルティング(=戦略や計画の策定力)」「テクノロジー(=ITソリューションの開発力)」「アウトソーシング(=業務の実行力)」の3つのノウハウを合わせ持つ同社グループでは、この3つの力を活用することで、多様化する顧客との接点を通じた企業のCRM再構築を、ワンストップでトータルに支援している。
具体的には、戦略策定や計画策定等の上流工程及び継続的な業務実施・運用を支援する「コンサルティングサービス」、コンサルティングやプロセス運営で培った知見をITソリューションとして形にした「CRM製品提供」、企業のCRM基盤を戦略的かつ効率的に支えるための「CRM ITサービス」、さらには実際の顧客接点業務を企業と共同あるいは請け負って実行する「CRMプロセスサービス」を、継ぎ目なくシナジーを発現しながら提供している。
同社グループが事業展開のドメインとする「企業と顧客の接点」は、かつては店舗や訪問での対面チャネルが中心だったが、その後コールセンターのような非対面チャネルに広がり、近年では、インターネットが普及し、e-コマースやe-メール、スマートフォンアプリの利用が浸透したことで、企業と顧客の接点も多様化や複雑化など飛躍的な変革が生じている。
例えば、企業の製品やサービスを利用した消費者は、問題や欲求を解決する際に、電話やe-メール等を介してコールセンターに問合せをするのではなく、スマートフォンやタブレット端末等でホームページやソーシャルメディアを検索して解決しようとする傾向が強まっている。
企業はこうした変革や顧客ニーズに対応して、顧客毎に最適なタイミング、チャネル、コンテンツを選択してアプローチしうるCRMの再構築を行うことで、顧客満足度と顧客価値の最大化を図ることが必要不可欠になっている。
このため、同社グループが持つCRM領域における総合力を活かしたワンストップ・サービスへのニーズは年々高まっており、自社の強力な競争優位性であると考えている。
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(同社資料より)
(2)ストックビジネス化による安定収益構造
自社製品やITソリューションの導入に伴う保守サービスや拡張サービスの提供、自社ITサービスの提供による月額利用料の収受といった一般的なリカーリングのみではなく、コンサルティングにおける同社の特長である伴走型サービス、アウトソーシングサービスについてもストックビジネス化を進め、安定収益構造構築を図っている。

(同社資料より)
(3)ビジネスモデルはビジネスの【ストック化】と実績・ノウハウの【自社製品化】
前述した3つのスキルによって顧客企業を支援する中で培った実績やノウハウをソリューション化、自社製品・サービス化しストックビジネスとして安定的な収益を確保しながら利益を再投資することで、持続的な成長を目指すのが同社のビジネスモデルである。

(同社資料より)
2.成長戦略
顧客接点(とくにコンタクトセンター)の事業領域においては、今後一層「人」から「AIエージェント」への代替が進むなど、生成AIやAIエージェントを利活用した構造変化が一気に進展する見通しと同社は想定している。このような環境前提をベースに、同社は全事業領域をAIビジネスにフォーカスした成長戦略へとシフトする。
同社グループでは「進化計算:TENKEI」」を用いてAI関連ビジネスの拡大をこれまで進めてきた。今後はTENKEIの適用範囲の拡大および生産計画への適用マーケティングを開始する。成長マイルストーンとしては、26/3期:TENKEIでのPOC営業および導入事例構築、27/3期:TENKEI導入事例の拡大、を置いている。
大企業への横展開が開始されたマザーセンターについては、今後AIコールセンター化に向けた支援もテーマになってくるだろう。具体的には、26/3期に個別AIの導入、27/3期に未来型AIコールセンターの導入を目論んでいる。大規模請負業者でAIシフトできているところは今のところ見当たらないため、勝機はあると同社は考えている。加えて、生成系AIを活用したAI自動応答ソリューションの開発やPOC営業にも取り組んでいく構え。自社製品のAIと外部プロダクトとの連携を強化し、CRM単体ではなくプラットフォーム全体のソリューション提供にも注力していく考えである。
3.2025年3月期決算概要
【3-1業績概要】
| 24/3期 | 構成比 | 25/3期 | 構成比 | 前期比 | 会社計画 | 達成率 |
売上高 | 6,692 | 100.0% | 6,488 | 100.0% | -3.0% | 7,050 | 92.0% |
売上総利益 | 1,602 | 23.9% | 1,614 | 24.9% | 0.7% | - | - |
販管費 | 1,231 | 18.4% | 1,335 | 20.6% | 8.4% | - | - |
営業利益 | 371 | 5.5% | 279 | 4.3% | -24.8% | 422 | 66.1% |
経常利益 | 454 | 6.8% | 185 | 2.9% | -59.3% | 420 | 44.0% |
当期純利益 | 202 | 3.0% | 111 | 1.7% | -45.0% | 270 | 41.1% |
*単位:百万円。
事業拡大計画の未達に加え、開発遅延等も顕在化
25/3期の売上高は前期比3%減の6,488百万円、営業利益は同25%減の279百万円となった。期初会社計画は増収増益を計画していたが、一転減収減益の着地となった。IT&コンサルティング事業、アウトソーシング事業ともに期初計画を下回った。販管費においては特定顧客の信用力悪化に対応し貸倒引当金繰入額を積み増したこと、営業外費用に投資事業組合運用損を計上したことも下振れの一因になった。

【3-2 セグメント動向】
| 24/3期 | 構成比 | 25/3期 | 構成比 | 前期比 |
IT&コンサルティング事業 | 4,089 | 61.1% | 3,739 | 57.6% | -8.6% |
アウトソーシング事業 | 2,602 | 38.9% | 2,749 | 42.4% | 5.6% |
売上高合計 | 6,692 | 100.0% | 6,488 | 100.0% | -3.0% |
IT&コンサルティング事業 | 796 | 19.5% | 778 | 20.8% | -2.3% |
アウトソーシング事業 | 517 | 12.6% | 497 | 13.3% | -3.9% |
調整 | -942 | - | -996 | - | - |
セグメント利益合計 | 371 | 9.1% | 279 | 7.5% | -24.8% |
*単位:百万円。利益の構成比は売上高利益率。
(1)IT&コンサルティング事業
売上高は前期比9%減の3,739百万円。新規事業領域として拡大を目指したデジタルマーケティング領域の受注が低調に推移した。そのうえ、大型システム開発案件のトラブル収束に時間を要した結果、新規案件着手に手間取ったことも案件獲得の阻害要因となった。SI受託顧客の急激な信用力低下により、仕掛評価損および貸倒引当金を計上するだけでなく、売上計上を停止した影響も大きかった。
セグメント利益は同2%減の778百万円となった。期初のコンサルタント未稼働発生による損失計上を挽回できなかったことに加え、大型システム開発案件のトラブル収束に時間を要し通期にわたって損失を計上した影響も大きかった。
(2)アウトソーシング事業
売上高は前年同期比6%増の2,749百万円。収益性の高かった新型コロナ特需案件よる減収の影響を、マザーセンター運営受託をはじめとした既存案件拡大等でカバーした格好である。ただし、収益面ではカバーするに至らず、セグメント利益は減益での着地となった。
【3-3 財務状態とキャッシュ・フロー】
◎主要BS
| 24年3月末 | 25年3月末 | 増減 |
| 24年3月末 | 25年3月末 | 増減 |
流動資産 | 2,421 | 2,679 | +258 | 流動負債 | 1,453 | 1,600 | +146 |
現預金 | 1,155 | 1,365 | +210 | 仕入債務 | 129 | 127 | -2 |
売上債権 | 1,078 | 1,232 | +154 | 短期借入金 | 476 | 632 | +156 |
固定資産 | 1,102 | 1,107 | +5 | 固定負債 | 317 | 413 | +95 |
有形固定資産 | 70 | 82 | +12 | 長期借入金 | 287 | 404 | +117 |
無形固定資産 | 248 | 350 | +102 | 負債合計 | 1,771 | 2,013 | +241 |
投資その他の資産 | 783 | 673 | -110 | 純資産 | 1,752 | 1,773 | +20 |
資産合計 | 3,524 | 3,786 | +262 | 利益剰余金 | 860 | 928 | +67 |
|
|
|
| 負債純資産合計 | 3,524 | 3,786 | +262 |
*単位:百万円
現預金の増加、新規ソフトウェア開発に伴うソフトウェア・ソフトウェア仮勘定の増加を主要因に、資産合計は前期末比から262百万円増加した。負債合計は同241百万円増加。長短有利子負債が増加した。純資産は同20百万円増加した。利益剰余金が同67百万円増加した一方、自己株式取得により55百万円減少した。自己資本比率は前期末比3.1ポイント低下し、45.6%。
◎キャッシュ・フロー
| 24/3期 | 25/3期 | 増減 |
営業CF | 399 | 229 | -44 |
投資CF | -477 | -198 | -944 |
フリーCF | -77 | 31 | -987 |
財務CF | -107 | 178 | -244 |
現金同等物残高 | 1,155 | 1,365 | -185 |
*単位:百万円
4.2026年3月期業績予想
【4-1 業績予想】
| 25/3期 | 構成比 | 26/3期(予) | 構成比 | 前期比 |
売上高 | 6,488 | 100.0% | 6,900 | 100.0% | +6.4% |
営業利益 | 279 | 4.3% | 330 | 4.8% | +18.3% |
経常利益 | 185 | 2.9% | 320 | 4.6% | +73.0% |
当期純利益 | 111 | 1.7% | 200 | 2.9% | +80.2% |
*単位:百万円。予想は会社予想。
新中期3ヵ年計画はAIノウハウ集積・深化と事例構築・拡大に努める算段
26/3期の営業利益は前期比18%増の330百万円を計画。これに合わせ、従来開示の25/3期~27/3期の累計営業利益目標を17億円から10億円に引き下げた。AI利活用の重要性が加速度的に増す事業環境において、デジタルマーケティング領域においてもAIソリューションを中核とした成長戦略を採ることが重要と同社は考えている。そのために、今後2期はAIノウハウの集積および深化、事業構築および拡大に経営の力点を置く考え。具体的には、26/3期においてマザーセンターにおける個別AI導入、AI自動応答ソリューションの導入事例構築、TENKEIの導入事例構築、を必要条件として掲げている。続く27/3期においては、未来型AIコールセンター化、AI自動応答ソリューション導入の横展開、TENKEI導入事例の拡大、が求められる。
一株配当は15円(配当性向15.6%)を計画。特殊要因を除いた親会社株主に帰属する当期純利益の10~20%を配当原資とする想定。
| 25/3期 | 構成比 | 26/3期(予) | 構成比 | 前期比 |
IT&コンサルティング事業 | 3,739 | 57.6% | 4,017 | 58.2% | +7.4% |
アウトソーシング事業 | 2,749 | 42.4% | 2,882 | 41.8% | +4.8% |
売上高合計 | 6,488 | 100.0% | 6,900 | 100.0% | +6.4% |
IT&コンサルティング事業 | 778 | 20.8% | 866 | 21.6% | +11.3% |
アウトソーシング事業 | 497 | 18.1% | 598 | 20.7% | +20.3% |
調整 | -996 | - | -1,134 | - | - |
セグメント利益合計 | 279 | 4.3% | 330 | 4.8% | +18.3% |
*単位:百万円。利益の構成比は売上高利益率。
IT&コンサルティング事業、アウトソーシング事業共に増収増益を計画している。人材やAI領域への投資を継続することから、全社費用が前期比14%増加する見込みになっているが、両セグメントの収益性回復により、売上高営業利益率は前期比0.7ポイント改善する計画である。23/3期売上高営業利益率8.5%と比較するとまだ収益性回復は道半ばであり、今後のAI注力が収益貢献してくるのを待ちたい。
5.今後の注目点
25/3期は事業拡大計画の未達に加え、開発遅延や顧客起因の貸倒引当金積み増しなどが重なり、苦しい期となった。その結果、3か年での累計利益計画も引き下げられた。しかしながら、今後に向けてマインドが冷えている印象はなく、全事業領域をよりAIビジネスにフォーカスした成長戦略へと舵を切るなど、ファイティングポーズは取り続けている。同社の強みを最大限生かし、業界内に先駆けてAIフォーカスに注力することで、比較優位性を高めようとする経営戦略は評価したい。とはいえ、簡単な事業領域ではないことも事実であり、今来期の仕込みをきちんと見守っていきたいところである。
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
◎組織形態、取締役、監査役の構成
組織形態 | 監査役設置会社 |
取締役 | 5名、うち社外取締役2名(うち独立役員2名) |
監査役 | 3名、うち社外監査役2名(うち独立役員2名) |
◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2024年6月26日
<基本的な考え方>
当社は、株主の利益を最大化するためには、「当社の企業としての成長」「より良い社会作りへの貢献」「クライアント企業への結果での貢献」が不可欠と考え、以下の企業理念を掲げております。
Success for the people, organization and society.
・私たちは生活者・消費者(顧客)、クライアント企業やパートナー企業の皆様、当社の株主やグループ従業員とその家族など、共に歩むすべての人たちの成功に向かいます。
・私たちはクライアント企業・団体、パートナー企業、グループ企業の成功に向かいます。
・私たちは社会・環境の持続的な成功に向かいます。
私たちはこのような想いのもと、議論し、判断し、行動します。
当社グループは、これらを達成するために、コーポレート・ガバナンスの強化充実を重要な経営課題と認識しており、経営の健全性、機動性及び透明性を確保する体制の構築に取り組んでまいります。
<コーポレート・ガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則を、全て実施しております。
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