ブリッジレポート
(7590) 株式会社タカショー

スタンダード

ブリッジレポート:(7590)タカショー vol.1

(7590)タカショー / 高岡 伸夫社長
2004年4月12日(月)

 

ガーデニング製品取り扱いで国内トップクラスのタカショーを訪問しました。
和歌山県海南市の本社で、高岡社長、IR担当の松井チーフにお話を伺いました。


高岡 伸夫社長

 


創業の経緯
高岡社長が起業した背景・考え方のポイントは以下のようなものです。

1.業種の近代化と顧客の集中
伝統はあるものの、競争が少なく、情報化を含めあらゆる面で近代化が遅れている業界で、徹底的に差別化を図り、顧客を組織化することができれば、必ず成功する。

2.人に望まれるものを扱う
自分がやりたいことではなく、人に望まれているものを扱うことが重要。

本社のある和歌山県海南市周辺は、室町時代の昔から「シュロの木」を材料とした「たわし」や「シュロ縄」といった日用品の生産で大変有名なところです。
高岡社長の実家も、竹垣を組むときに使われるシュロ縄卸を商ってきました。
大学卒業後、2年間の会社勤めの後、和歌山に戻り家業を継ぎますが、旧来の商売の仕方に限界を感じるとともに、「食べていくためだけの仕事」に飽き足らず、大学時代の仲間とともに1980年にタカショーを設立しました。
不正確な尺寸法表示のまま売られていたシュロ縄を正確なメートル表示に切り替え、品揃えの充実、竹垣とのセット販売などで付加価値を高めていきました。また、人工竹垣を手がけて新しい需要を開拓したり、徐々に造園、園芸用品、ガーデニング全般へと仕事を広げていきました。
また、ホームセンターや造園資材店など新しい販路も積極的に開拓していきました。
こうした中で、同社が大きく飛躍するきっかけとなった一つが1990年に確立した施工実例提案型のカタログ配布と24時間受注システムです。
同社ではプロユーザー向けのカタログ「プロエクス」を業界最大の約20万冊印刷し、顧客である造園業者、設計士、エクステリア施工店、商業施設などにDMとして配布しています。カタログは単なる商品紹介ではなく、商品を使った庭園イメージ写真もついており、顧客はこの写真を見ながら実際に施工する場所と庭園の簡単な図面を書いてファックスで申し込みます。
注文を受けると、CAD、CGを駆使した完成予想図とともに見積書を当日中に返送。
正式な注文があれば注文どおりの商品が1週間以内に届くというものです。
現在では、Webを使っての積算も可能になっており、IT化を更に推進しています。
このように、前近代的だった業界にシステムを導入して顧客の満足度を高めるとともに新しい販売ルートを開拓して大きな成長を遂げ、1998年9月に店頭市場(現、ジャスダック市場)に公開しました。


事業内容
「風・緑・光・水そして心」をコンセプトに、前述の6割のシェアを持つ人工竹垣をはじめとして、ガーデニングフェンス、ガーデンファニチャー(家具)、人工植物、照明機器、池・噴水・滝など、ガーデニング、造園に関する製品を製造、仕入れ、販売しています。
取り扱い商品数は約1万8千点で国内トップクラスです。

商品分類別売上げ
<単体>
(単位:100万円)
 
2004年1月期
構成比
対前期比
ガーデニングフェンス
5,109
52.1%
+0.7%
庭園資材
3,769
38.5%
-0.2%
照明機器
530
5.4%
-5.0%
池・滝・噴水
203
2.1%
+16.1%
その他
190
1.9%
-1.3%
合計
9,803
100%
+0.2%

国内
本社のほか2つの支店、9つの営業所、4つの製造拠点を保有しています。
子会社の株式会社青山ガーデンでインターネット販売を行っています。

海外
製造・仕入先である広東高秀花園製品有限公司(関連会社)に加え、連結子会社・天津高秀国際工資有限公司、上海高秀園芸建材有限公司を設立し、中国からの商品・部材調達体制を強化しました。
販売は、東アジア地域、北米地域、欧州地域にそれぞれ販売子会社を持っています。
上海・広州・天津は現在のところは製造拠点ですが、将来的に中国市場は有望な販売先と考えています。

販売ルート
工務店向け「プロユース」、一般消費者向け「ホームユース」、「通信販売」、「輸出」などがあり、2004年1月期の実績は以下のとおりです。

(単体 単位:100万円)
 
2004年1月期
構成比
対前期比
プロユース
4,619
47.1%
+6.3%
ホームユース
4,567
46.6%
-6.9%
通信販売
485
4.9%
+17.7%
輸出
92
0.9%
+114.0%
その他
38
0.4%
-45.7%


強み・特徴
豊富な在庫・資金と効率的な生産・物流体制
現場のニーズに的確に対応できる商品の種類や在庫の豊富さ、納期の短さなどからプロユースに関して強い競争力を持っており、業者から「ガーデニング用品ならタカショー」という評価が定着しています。
ホームユースにおいても、ホームセンターなどでは季節に合った商品の供給が求められますが、当然ながらそのためにはそのシーズンよりもかなり前から製造をはじめ、在庫を確保しなければなりませんが、同社の場合は、豊富な資金とキャッシュフローで在庫確保が大変容易であり、この点が同業他社と大きな違いとなっています。
また、近年のデフレのためホームユースでの価格低下が顕著ですが、中国に自社工場を持つ同社は、「低価格で勝負しなければならない商品は中国で生産・輸入。デザイン・品質重視の商品は国内工場で生産」というような使い分けができる点も大きな強みです。
加えて、和風&洋風、別注品にも対応できるマーッケットニーズに合わせた商品供給体制は同社の大きな競争力となっています。

トータルコーディネート力 ガーデニング
関連の商品を数多く取り扱っている同社は、前述のカタログにあるように、様々な現場、シーン、状況に応じた「庭」のあり方を提案することができます。
「一つ一つの庭は、その家庭のライフスタイルや将来設計を踏まえてつくられるべき」というのが高岡社長の持論であり、これからの日本はこうしたライフスタイルに合わせた商品やサービスを提供する「ライフスタイル型産業」が中心となっていくと考えています。
そのためにメーカーは、使い勝手のいい融通性の高い部品を設計者や施工者に提供するとともに、それら部品を使った「いい作品」を業者やユーザーに見てもらうことが重要と考え、各地の展示場や毎年神奈川・横浜パシィフィコで開催されている「エクステリア&ガーデニングショー」では、新しい情報や庭のあり方を発信しています。
同社が提供した材料を使ってプロの職人の技が付加価値として加味されて完成した一つ一つの庭こそが、同社の商品だと高岡社長は考えています。

情報収集&発信力
グローバルに事業展開している同社には、世界各地域の様々なガーデニングの文化や、季節を先取りした流行・ファッションなどの情報が逐次集まってきます。
こうした他社にはない情報収集力を、新商品の開発に活かして差別化を進めていきます。


将来展望

GDPで比較すると、日本はドイツの倍以上ですが、ガーデニング市場で見ると、日本は約5200億円。それに対してドイツは倍の1兆1000億円になります。自然、環境、ガーデニングに対する考え方の違いもあるのでしょうが、「人生を楽しく豊かにするガーデニングの素晴らしさを普及させることがマーケットを拡大させる」と考えて、様々な取り組みを行っていきます。

1. 階層別ブランドの構築
既にプロユースでは圧倒的な評価を受けている同社ですが、ホームユース向けのカタログ「ガディス」を配布し、一般家庭への一段の浸透を進めていきます。
また、庭のリフォームを対象にしたカタログ「リフォームガーデン」を発刊したほか、高級感のある新ブランドなども新たに展開していきます。

2. IT化の積極的展開
業界でいち早くシステムの導入を進めてきた同社は、インターネットをより積極的に活用して一段と競争力を高めようとしています。

現在注力しているのは、「顧客の組織化=施工店の組織化」です。同社は他社に比べて圧倒的に豊富な商品と情報を保有しています。これをインターネットで提供することで全国の多くの施工店、職人のネットワークを構築していきます。

また、新しい販売ルートとして、100%子会社の株式会社青山ガーデンが「楽天市場」、「Yahoo!ショッピング」に出店し、インターネットによる販売を展開しています。
青山ガーデンは、ガーデニングの専門ストアとしてガーデングッズ、デコレーション、ファニチャーなどを中心に、青山ガーデン銀座店のギフト用フラワーアレンジメントやオーストラリアからのガーデニング輸入雑貨まで、幅広く販売しています。登録商品は約1,000アイテムからスタートし、最終的には10,000アイテムを扱う予定です。
「リビングガーデン」をコンセプトに、単なる商品の陳列販売でなく、新しいライフスタイルを提案しながら、一般消費者のニーズに合ったガーデニング商品を選べるよう企画しています。
両店舗ともに好調な推移ということで、インターネットにおけるガーデンビジネスで一番になれる可能性が高いと見ています。

3. グローバル展開
海外の「ガーデニング」という文化を日本に導入しながら、日本の庭園文化を海外に普及させようというのが海外展開のきっかけでした。
前述のように、中国に生産拠点を構築。北米市場、ヨーロッパ市場でも積極的な営業活動をはかり、ガーデニングの展示会には毎年出展しています。
今後も海外からの導入と日本からの発信を拡大させ、将来的には、海外売上げ比率は4割程度まで引き上げたいと考えています。

4. 環境問題への取り組み:ガーデニングを文化創造型産業へ
高岡社長は設立時から、これからの日本は「基盤整備産業」中心から、生活に心の豊かさや楽しさを求める「文化創造型産業」中心の社会へと転換してゆくと考えています。
そうした中で、最も重要なテーマの一つが「環境保全」であり、庭に水と緑を取り入れ、地球環境を再生することができるガーデニングを文化創造型産業へと導いていくことが同社の使命と捉えています。
循環型社会を見据えた庭造りの提案として、具体的に以下のようなものがあります。

*「エバーエコウッド」シリーズ
3R(リサイクル:繰り返し使える、リユース:再利用可能、リデュース:長持ちする)の視点から開発された「廃木材60%、廃プラスチック40%」で構成される100%リサイクル素材です。
天然木の風合いを持ちながら、反りや割れ、ささくれなどが起きません。
また、天然木材に比べ約4倍の強度を持ち、優れた木ねじ保持力と曲げ強度を誇り、メンテナンス費用も格安となります。
この素材を使い、業界で初めて庭をトータルに構成できる製品群を揃えました。

*ビオトープ&ビオガーデン
ビオトープとはドイツ語で「野生動物が生息・生育する空間」のことです。
ドイツでは1976年に自然保護および景域保全に関する法律(ビオトープ条例)が制定され、環境先進国になりました。それまではブロックを張っていた河川の水辺にアシを植えて水を浄化したり、鳥が好む植栽にして木の実を運んでもらい自然に植物が増えていくような仕組みを作りました。
このビオトープの概念を庭の一形態として実現しようというのが、「ビオガーデン」です。 自然の風を尊び、生き物の訪れを歓迎し、季節の変化を重視する日本庭園の発想はビオトープそのものといっても過言でないと考えたのです。
2003年10月には、本社の一角にビオガーデンをテーマにした屋外展示場を開設しました。庭の広さに応じて組み合わせることができるビオガーデンを提案し、多くの人に、水草や魚などの生き物が住める庭池を楽しんでもらいたいと考えています。


個人投資家に対するメッセージ

前述のように環境問題に対し熱心に取り組んでいる高岡社長は、多くの個人投資家に株主になってもらい、同社を通じて共に社会貢献してもらいたいと考えています。
そのためには、同社をより深く知ってもらうことが必要であり、以下のような施策を行っています。

<土曜日に株主総会および交流会を開催>
株主総会を土曜日に開催し、総会後は本社の屋外展示場を使って「株主交流会」を行っています。
遠方からの株主も出席し、同社商品と自然が融合した会場で、大変アットホームな交流会となったそうです。同社のことをより深く理解してもらう非常によい機会となっています。

<マーケットメイクを中止>
個人投資家に価格形成がわかりにくいマーケットメイクを2004年4月20日で終了し、オークション方式へ移行しました。


取材を終えて
高岡社長の考える社会貢献は決して環境問題だけではありません。東京や大阪等の大学を出た和歌山県出身者の就職先の創出も重要な社会貢献であると考え、18年前から新卒採用を開始しています。
人材の採用に関しては「人のつながり、出会い」を大切にしており、結果として優秀な人材を採用することができているそうです。
また、米国の小売大手ウォルマートを参考に、確固たる企業理念を持って事業を進めれば、IT化が急速に進む現在、和歌山から世界的企業を目指すことが可能であり、それを実現さえると決意したそうです。
足元の業績に加えて、環境対応商品の動向など、同社の今後をウォッチしていきたいと思います。

http://takasho.jp/