ブリッジレポート
(4767) 株式会社テー・オー・ダブリュー

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ブリッジレポート:(4767)テー・オー・ダブリュー vol.11

(4767:東証2部) テー・オー・ダブリュー 企業HP
川村 治 社長
川村 治 社長

【ブリッジレポート】テー・オー・ダブリュー vol.11
(取材概要)2007年2月20日掲載
「通期予想に対する経常利益の進捗率は連結が67.9%、個別が61.6%ですが、通期の業績は期初予想が据え置かれました。特に不安材料があるわけではありませんが、例年の事ながら、同社はこの時期に通期の業績予想を修正しません。・・」続きは本文をご覧ください。
企業基本情報
企業名
株式会社テー・オー・ダブリュー
社長
川村 治
所在地
東京都港区虎ノ門 1-26-5 虎ノ門17森ビル
決算期
6月
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2007年6月 13,070 1,051 1,041 551
2006年6月 12,341 781 784 423
2005年6月 10,705 771 782 465
2004年6月 9,638 781 765 466
2003年6月 9,441 1,103 1,073 537
2002年6月 8,600 940 920 462
2001年6月 7,555 756 730 371
2000年6月 5,995 556 537 238
株式情報(2/13現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
655円 11,612,749株 7,606百万円 11.1% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
16円 2.4% 38.39 332.86円 2.0倍
※株価は2/13終値
 
テー・オー・ダブリューの2007年6月期中間決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
会社概要
 
イベントの企画・制作を手掛けています。企画から本番までイベントをトータルで受託、専業としては業界最大手です。
イベントが広告ツールとして社会的に認知され始めたのは大阪万博以降と言われていますが、まさに同社の歴史と軌を一にしています。以来、30年、同社は「ウォークマン(第1号モデル)発売キャンペーン」、「東京湾横断道路(アクアライン)開通記念式典」、「Windows95発売キャンペーン」、「FIFA2002ワールドカップ抽選会」等を手掛け、常に業界をリードしてきました。
 
2007年6月期中間決算
 
<連結>
 
グループは、同社とイベントの「制作」、「運営」、「演出」を専業とする(株)ティー・ツー・クリエイティブの2社で構成されています。
 
<個別>
 
前年同期は愛知万博、TXつくば開業、東京モーターショーといった大きなイベントがありました。本来であれば、今期はその反動も止む無しといったところですが、若手社員による大型代理店の担当者開拓が進んだことで、売上高は前年同期比1.2%の減少にとどまりました。
また、若手社員はプロジェクト管理の面でも成長の跡が見られ、粗利率が前年同期の19.3%から22.5%に上昇、期初予想の21.6%をも上回りました。
 
<財政状態:個別>
 
(従来、ファクタリングを利用して売上債権を現金化していましたが、この中間期はファクタリングを行わず、当座貸越により10億円の借入を行いました。加えて、支払サイトの長い大手代理店の新規担当者開拓が進んだ事で売掛金も5億円弱増加、これらを主な要因として総資産が18億円弱増加しました。この結果、自己資本比率が約10ポイント低下しました。
 
<キャッシュ・フロー計算書:連結>
 
ファクタリングを実施しなかったため、営業活動によるキャッシュ・フローは前年同期を下回りましたが、実質的には大幅な増加です。
 
中間決算のポイント
 
<若手社員の成長>
 
2000年以降に入社した若手社員による新規の顧客開拓が進んでいます。小型案件が継続的に増加している事に加え、中型案件が大きく伸びました。また、若手社員は企画案件でも力を発揮し始めています。小型案件が多いものの、指定案件数が増加しました。
 
(1)案件数の増加
 
小型案件(~2,000万円)
若手社員の積極的な営業が受注につながり ⇒ 受注した案件で結果を残してきた事でクライアントからの信頼性が向上 ⇒ 次の受注につながる、と言う好循環が生まれています(結果として、案件受注精度が上昇)。

中型案件
小型案件でクライアントの信頼を得た若手社員が、中型案件へステップアップしている事が増加の要因です。今後は、制作力強化による粗利率アップに取り組みます。

大型案件 前中間期は万博関連がありました。今期に限らず、趨勢的に大型案件は減少傾向にあります。
 
(2)案件数の増加
 
クライアントが競合コンペを増やしているため、提案案件は全体の件数自体が減少傾向にあります。一方、若手社員を積極的に企画コンペに参加させた競合案件・指定案件の受注は増加しました。これまで、他社が手がけていた競合案件の受注にも成功しています。企画部門の増員も奏功しました。
若手社員に対する信頼度や企画力に対する認知度は着実に高まっています。
 
(3)案件数の増加
 
低営収案件の抑制に努めることで更なる粗利率の改善を目指します。金額ベースで全体の15%程度に抑えたい意向です。
 
(4)案件数の増加
 
若手社員に積極的に企画提案させたため、企画勝率(制作移行案件獲得数/未決定企画本数)は低下しました。
 
<業種別売上高:個別>
 
電通を中心としたNTTドコモのキャンペーンの受注に成功した事で情報・通信が伸長、オペラ効果で金融も伸びました。一方、今中間期にシャンプーや髭剃り等のキャンペーンがなかった化粧品・トイレタリーや万博関連が無くなった官公庁・団体が減少しました。
 
<業種別売上高:個別>
 
注力分野であるSP(セールスプロモーション)が順調に拡大しています。
 
<得意先別売上高:個別>
 
万博関連が無くなった事で、電通グループ、博報堂グループ向けの売上高が減少しました。一方、外車メーカーからの受注に成功した事で直クライアントの売上高が増加しました。
 
2007年6月期業績予想
 
<連結>
 
<個別>
 
連結・個別共に通期予想の修正はありません。
 
<通期業績の考察>
 
受注確定或いは受注確度の高い案件を豊富に抱えており、通期業績の下振れ懸念は少ないと思われます。
 
得意先別の状況
 
<電通グループ>
1.中間期
 
若手の成長と電通テックの組織に対応した人員配置等が奏功し、万博関連を除いたベースでの前年同期との比較では、売上が増加し、粗利率も改善、更に平均単価が上昇しました。

2.下期
SP専従社員の配置により提案力を強化し若手社員を中心に提案・実施案件の増加を図ります。また、電通常駐により案件獲得に努めます。中間期は新たに3部署の開発に成功しました。下期は更に1部署の開拓が見込まれています。
 
<博報堂グループ>
1.中間期
組織営業基盤の拡大、博報堂グループ戦略への対応、及び既存クライアントを中心にしたSP戦略の展開により、博報堂グループとの関係強化に努めました。

組織営業基盤の拡大策
イベント部署(事業プロデュース局)及びSP担当部署(BSMC:ブランド・ソリューション・マーケティングセンター)への専任担当常駐を広げました。
 ⇒ 販促イベント売上が12億26百万円と前年同期比16.4%増加

博報堂グループ戦略への対応
SP領域の制作子会社である博報堂プロダクツへの専任担当者の常駐を開始した他、博報堂ケトル、博報堂ブランドクロッシングへの担当チームを選定する等、プロモーション機能別専門子会社への対応を強化しました。
 ⇒ SP提案の機会増によりプレミアム・印刷ツール等の売上が1億67百万円と同71.6%増加

既存クライアントを中心にしたSP戦略の展開
SP提案によりイベント実績のある主要クライアントの深耕に努めました。
 ⇒ 博報堂グループ会社・子会社に対する売上が5億39百万円と同80.5%増加。

2.下期
SP専従社員の配置により提案力を強化し若手社員を中心に提案・実施案件の増加を図ります。また、電通常駐により案件獲得に努めます。中間期は新たに3部署の開発に成功しました。下期は更に1部署の開拓が見込まれています。
 
<アサツーディ・ケイグループ(ADK)>
1.中間期
 
SP専門部署への注力不足により、前年同期並みの件数を受注したものの、平均単価の低下により売上高が減少しました。

2.下期
(1)主力SP分門の2007年1月新組織への機動的な取り組み、(2)担当者のADK個別営業先の選択と集中によるスピーディな判断と行動(週間チェックによる個別営業先の入れ替え)、及び(3)情報通信、自動車、飲料、金融など戦略テーマ業種への意欲的なアプローチを戦略として掲げています。
 
<中堅代理店>
1.中間期
新規得意先の開拓が進みました。

2.下期
(1)外資系・中堅代理店等の新規取引先の拡大、(2)企画からSP全般制作業務のワンストップサービスのニーズ拡大、更には(3)Web・モバイルをハブにしたSP業務の進展による引合・受注増等が期待できます。
 
制作体制の強化
 
1.収益性の改善
 
イベント制作を専業とする100%子会社ティー・ツー・クリエイティブの収益性改善が進んでいます。要因として、次の3点を挙げることができます。

収益性改善要因
(1)社内体制の見直しによる専門性の強化(演出・映像)
(2)利益意識の徹底
(3)若手同士の交流などによる親会社(テー・オー・ダブリュー)との関係見直し

2.イベントスタッフネットワーク(全国のイベント制作スタッフ300名からなる会員組織)による制作力の強化
イベントスタッフネットワークの活用による制作力の強化に努めます。具体的には、少人数の制作プロダクションからの直接出向や常駐スタッフの確保等により協力機関との関係を強化します。また、このネットワークを交流の場からビジネスチャンスの場へ変えて新SPツール等の売り込みの場とする等、協力機関からのセールスを全社へ紹介します。
 
ブランド戦略
 
ブランド戦略として、オペラ事業、日本イベント大賞における特別協力、出版等に取り組みました。

ローマ歌劇場引越公演主催
 
 
取材を終えて
通期予想に対する経常利益の進捗率は連結が67.9%、個別が61.6%ですが、通期の業績は期初予想が据え置かれました。特に不安材料があるわけではありませんが、例年の事ながら、同社はこの時期に通期の業績予想を修正しません。
ちなみに、前年同期の進捗率は万博やモーターショーがあった事もあり、連結が86.5%、個別が84.7%。下期は上期のように大きなイベントがありませんでしたが、下期の経常利益は、上期の経常利益の80%の水準を確保しました。今上期は前上期のように大型案件があったわけではないので、前期ほどの上下の差は無いと思われますが、仮に前期並みの80%水準の経常利益を確保できれば、通期の連結経常利益は10億円を超える計算です。