ブリッジレポート
(4767) 株式会社テー・オー・ダブリュー

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ブリッジレポート:(4767)テー・オー・ダブリュー vol.40

(4767:東証1部) テー・オー・ダブリュー 企業HP
江草 康二 社長兼CEO
江草 康二 社長兼CEO

【ブリッジレポート vol.40】2016年6月期第1四半期業績レポート
取材概要「通期予想に対する進捗率は、売上高20.4%、営業利益21.3%、経常利益21.4%となり、前期の実績ベースの進捗率(売上高22.9%、営業利益・・・」続きは本文をご覧ください。
2015年12月22日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社テー・オー・ダブリュー
社長兼CEO
江草 康二
所在地
東京都港区虎ノ門 4-3-13 ヒューリック神谷町ビル
決算期
6月
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2015年6月 13,442 1,335 1,349 818
2014年6月 12,188 1,026 1,035 638
2013年6月 12,346 850 864 428
2012年6月 13,935 973 987 508
2011年6月 10,570 378 377 131
2010年6月 12,575 671 670 357
2009年6月 14,210 1,401 1,392 876
2008年6月 14,397 1,362 1,343 729
2007年6月 13,070 1,051 1,041 551
2006年6月 12,341 781 784 423
2005年6月 10,705 771 782 465
2004年6月 9,638 781 765 466
2003年6月 9,441 1,103 1,073 537
2002年6月 8,600 940 920 462
2001年6月 7,555 756 730 371
株式情報(11/20現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
737円 22,408,452株 16,515百万円 13.7% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
20.75円 2.8% 41.54円 17.7倍 280.95円 2.6倍
※株価は11/20終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
テー・オー・ダブリューの2016年6月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
イベントプロデュース業界において、独立系ではNO.1の総合プロモーションカンパニー。「世界一の“感動体験”をクリエイトし、笑顔を増やす」を経営理念とし、イベントをはじめとするインタラクティブ・プロモーションに加え、Webサイト、ノベルティグッズ、印刷ツール、キャンペーン事務局といった各種セールスプロモーションメニューもラインナップ。マスメディア以外は全て対応可能なワンストップ体制とプロモーション提案力を強みとする。同業他社が約8000社あり、その大半が中小・零細企業といわれる中、同社は頭一つ抜け出た存在だ。グループは同社の他、連結子会社であるイベントの「制作」・「運営」及び「映像制作」を手掛ける(株)ティー・ツー・クリエイティブ。社名のテー・オー・ダブリューは、「Top Of The World」の頭文字に由来する。
 
【事業の概要】
15/6期の売上構成比は、イベント30.9%、セールスプロモーション59.2%、その他(企画売上高)0.7%、子会社売上高9.3%。
イベントでは、企画からイベント本番まで(「企画」、「制作」、「運営」、「演出」)を受注する。実際の業務は、照明、音響、映像、舞台制作、モデル・コンパニオン・警備員の派遣、整理、撤収、清掃など種々雑多。専門業者である外注先(連結子会社1社を含む)に業務毎に発注し、イベント全体をトータルにディレクション、プロデュースする事で主催者の意図を来場者に伝える。一方、セールスプロモーションでは、「企画」、「デザイン」、「制作」を主な業務とし、印刷、プレミアム、グラフィックデザイン、事務局運営、OOH(Out Of Home:交通広告や屋外広告等)、Web制作等を手掛ける。
もっとも、イベントとセールスプロモーションは独立したものではなく、そのシナジーを追求する事がポイントで、広告業界で主流となりつつある「インタラクティブ・プロモーション(IP)」のクオリティを左右する需要な要素となっている。尚、「インタラクティブ・プロモーション」とは、デジタル技術とアイデアで感動体験を創りだし、その体験を情報拡散・共有させるプロモーションである。
 
 
業種別では(企画売上高を除く個別ベース、15/6期)、情報・通信の構成比が24.2%と最も高く、次いで自動車17.4%、食品・飲料・嗜好品17.2%、化粧品・トイレタリー・日用品10.0%、官公庁・団体6.5%、精密機器その他製造6.2%、流通・小売5.8%、金融3.8%、その他8.9%。
 
 
尚、売上に季節性がある事も特徴で、売上が第2四半期(10-12月)と第4四半期(4-6月)に集中する傾向がある(ボーナス商戦に向けての販促キャンペーン等は10月~12月、4月~6月に実施される事が多い)。近年、企業の販売促進を目的としたキャンペーンイベントやそれに付随する印刷物・販促グッズの制作、新商品の発表会等の比率が高くなっている。
 
【強み】
国内外の大手広告代理店10社以上と取引、大型会場でのイベントに1社単独での対応が可能
日本では大半のイベントが、イベント主催者(クライアント)からの発注を受けた大手広告代理店によって開催されている。このため、同社を含めた実際にイベントの企画・制作・運営を行う会社は、イベント主催者から直接受注するのではなく、大手広告代理店を介して受注するケースが多い。ただ、競合他社が限られた大手広告代理店との取引にとどまっているのに対して、同社は国内外の大手広告代理店10社以上と取引しており、顧客基盤で競合他社を圧倒している。加えて、東京ドーム、幕張メッセ、国際フォーラム、東京ビッグサイト等、大型会場でのイベントに1社単独で対応できる事も大きなアドバンテージである。
 
ワンストップソリューションを提供する総合プロモーションカンパニー
「企業のコミュニケーションの中でのプロモーション展開を考える際に、様々な知識と経験を持ったプロモーションの専門家によるトータルプランニングこそが、プロモーション効果を高めるために最も重要である」との考えの下、イベント制作における実績を生かしたライブコミュニケーションに加えて、プレミアム、ツール、WEB等のセールスプロモーションコンテンツの専門部署を発足させ、プロデューサー・プランナー・ディレクターが一元的にクライアントのプロモーションニーズに応える事ができる。言い換えると、「プロモーション・パートナー」という新しい業態として、ワンストップソリューションの提供が可能な総合プロモーションカンパニーとして機能している。
 
 
 
1976年7月の会社設立以来、リーダーとして業界をけん引
同社は、1976年7月に有限会社テー・オー・ダブリューとして設立され、以来、一貫してイベントに関する企画・制作・運営・演出・管理等を手掛けてきた。イベントが広告ツールとして社会的に認知され始めたのは、大阪万博以降であると言われており、それから30年間、同社は常に業界のリーダーシップを取り続けてきた。

同社がこれまで手掛けてきたイベントには、「ウォークマン(第1号モデル)発売キャンペーン」、「東京湾横断道路(アクアライン)開通記念式典」、「FIFA 2002ワールドカップ抽選会」等、話題性に富んだ案件が多く、「そういえば、あの時こんなことがあったっけ…」というふうに、今でも多くの方の記憶に残っているものと思われる。

同社のこうした取り組みは、大手広告代理店をはじめとする多くの優良得意先との信頼関係を年を重ねる毎に堅固なものとなったが、更なる飛躍を遂げるべく、1989年3月に有限会社から株式会社へ改組。98年6月に年商が40億円を超え、2000年7月にJASDAQに株式を上場。2007年6月の東証2部上場を経て、2008年6月に東証1部に指定替えとなった。
 
デジタル技術とアイディアで感動体験を創りだし、その体験を情報拡散・共有させる「インタラクティブ・プロモーション(IP)」に注力
創業以来、多くのリアルイベントで実績を残してきた同社だが、2009年~2010年にデジタル分野に進出(11/6期にデジタルプロモーション室を開設)。各種キャンペーンサイト等のWebサイト制作、Facebook等のソーシャルメディアの運用支援、更にはアプリ開発等、制作面で実績を残した。

しかし、デジタル(テクノロジー)は進化と共にコミュニケーションとの融合が進み、コミュニケーションはテクノロジーとの融合で「一方的に」メッセージを伝えるものから、「インタラクティブ」な人を動かすものに進化していった(そして今もなお進化を続けている)。このため、同社は、2014年7月に「デジタルプロモーション室」を「インタラクティブプロモーション室」に名称変更し、制作面でのデジタルの活用からリアルイベントでのデジタルの活用に軸足を移し、デジタルとリアルイベントを統合(インテグレート)した新しいプロモーションプロデュースを本格化した。

デジタルに留まっていると広がりが限定的になるため(感動体験が拡散しない)、リアルの領域を絡ませないと広告主の期待に応える事ができない。「インタラクティブなコミュニケーションとは“体験装置”と“導線設計”によって成り立つものであり、テクノロジーを利用したリアルコミュニケーションを深く突き詰め、デジタルメディアを活用して情報拡散させる事で人を動かす事ができる」と言うのが、同社の考え。リアルイベントを中心としたプロモーションプロデュースが生業であり、強みでもあるの同社だからこそ、デジタルのメリットを最大限引き出す事ができる。

デジタルとリアルを統合させた深い体験や感動を空間軸や時間軸を超えて人々に伝える取り組みが成果をあげ、15/6期は売上・利益を大きく伸ばす事ができた。16/6期はやや保守的な予想だが、売上・利益共に過去最高の更新が見込まれる。
 
 
2016年6月期の方針
 
【事業環境】
(株)電通「日本の広告費」によると(2015年2月発表)、2014年(1月~12月)の国内総広告費は前年比2.9%増の6兆1,522億円と3年連続で前年実績を上回った。特に非マス広告費(TV・ラジオ・新聞・雑誌以外)の伸びが大きいようで、広告経済研究所の「広告と経済」(2015年8月1日発行)によると、広告における非マス広告(大手代理店3社合計)のシェアの上昇が顕著であると言う。実際、スマートフォンで情報を受発信する人が増えており、博報堂DYメディアパートナーズ゙・メディア環境研究所調査によると、日本人一人当たりのメディア接触度は、10年前との比較で(2006年と2015年の比較)、4マスメディアが267分から215分 へ50分減少したのに対して、スマートフォン・PC・タブレットは67分から169分へ拡大している。
 
 
【TOWのプロモーション設計  -キーワードは「インタラクティブ・プロモーション(IP)」-】
非マス広告に注目が集まる広告業界にあって、今、広告主が強く求めているプロモーション効果は、実施の「売り」につながる「共感とシェア」である。この効果を得るためには、デジタルとリアルを統合させた深い感動体験をデジタルメディアの活用により情報拡散させる(バズらせる)必要があり、これを可能にするのがインタラクティブプロモーション(IP)である。

同社は受注競争力強化のためのポイントとて、①“IP力の標準装備化の加速”とさらなる“異業種コラボ”の推進、②IP含む“統合プロモーション力”強化、及び③“グループ力”の更なる強化という3つの付加価値を上げている。
 
“IP力の標準装備化の加速”と更なる“異業種コラボ”の推進
インターネット広告、スマートフォンアプリ、コミュニティサイト等の規格・開発・運用等を手掛ける(株)カヤック(神奈川県鎌倉市)との業務提携によるIPコラボが2015年7月にスタートした。今回の提携に伴い発足した「チーム・トワック」が、ポップアップストア(期間限定の仮店舗)や試乗会等でバズるイベントを提供していく考え。
この他、デジタル技術を活用したデザイン開発を手掛ける(株)パーティー(東京都渋谷区)の指定ネットワーク会社としての関係を強化した他、IP力の標準装備化の加速するべく社内でIP推進の中核を担うインタラクティブプロモーション室を強化した(人事異動や外部クリエーターの採用により人員を10名から18名に増員すると共に独立したルームを開設)。
 
IP含む“統合プロモーション力”強化
カンヌ国際広告賞等、数々の受賞歴を持つクリエイティブ・ディレクターの阿部晶人氏が、2015年7月、同社初のクリエイティブ・ディレクター(インタラクティブプロモーション室)に就任した。デジタルを起点としたコミュニケーション構築を得意とする阿部晶人氏は数々のキャンペーンを成功に導き、TIA金賞、カンヌ銅賞など多数の受賞実績を有する。また、クリオ賞日本代表審査員、OneShow日本代表審査員等を歴任した。今後、阿部晶人氏を中心にクリエイティブ力を強化していく考えだ(リアル×デジタル×クリエイティブの時代への対応)。
 
“グループ力”の更なる強化
同社は、「“グループ力”の更なる強化には、イベントの「制作」・「運営」を手掛ける(株)ティー・ツー・クリエイティブ(T2C)の外部売上げ拡大が不可欠」と考えている。15/6期は同社からディレクター3名・兼務プランナー6名の受け入れると共に新卒採用と中途で計6名を増員。人員の質的向上と増員で15/6期の売上は14/6期の約5億円から約11億円に拡大。16/6期はインバウンド・アウトバンド需要への対応を強化するべく、バイリンガル人材を持つ子会社(株)ソイルをT2Cが吸収合併した。また、代理店の内製化に対応して同社とT2Cの役割も明確化した。
この他、“グループ力”の更なる強化の一環として、TOWグループの全社員を対象に、四半期毎の予算達成に対し権利を付与する“マイレージ型ストックオプション”を導入した。
 
 
2016年6月期第1四半期決算
 
 
前年同期比5.3%の減収ながら、同5.9%の営業増益
不安定な海外経済の影響等で国内経済は先行き不透明な状態が続いており、4-6月、7-9月と実質GDP(国内総生産)は2期連続でマイナスとなった。同社グループが属する広告業界や事業領域であるプロモーション領域においても同様の傾向にあり、第1四半期の同社の売上高は29億21百万円と前年同期比5.3%減少した。

ただ、重要顧客にフォーカスした営業活動、受注管理の強化、及び全社的なIP力の強化といった継続的な取り組みの成果が顕在化しつつあり、売上総利益率が前年同期の14.9%から16.7%に改善。人員増強による販管費の増加を吸収して営業利益が3億01百万円と同5.9%増加した。役員報酬や執行役員賞与の返納があった前年同期の反動で営業外収益が減少したものの、実効税率の低下等で最終利益は1億94百万円と同5.6%増加した。
 
 
 
第1四半期末の総資産は前期末に比べて3億16百万円減の98億26百万円。季節要因で、売上債権、支払債務が減少した他、配当金の支払いや法人税の納付で現預金も減少した。流動比率273.5%(前期は257.4%)、固定比率21.0%(同20.8%)、自己資本比率64,1%(62.2%)。財政状態は、流動性が高く、長期的な安定性にも優れる。
 
 
2016年6月期業績予想
 
 
業績予想に変更はなく、通期で前期比6.3%の増収、同5.4%の経常増益予想。売上高、利益共に過去最高を見込む
東京モーターショーの開催年である自動車が増加する他、近年売上が伸びている食品・飲料・嗜好品や化粧品・トイレタリー・日用品等で販売促進を目的としたキャンペーンイベントやそれに付随する印刷物・販促グッズの制作、新商品の発表会等の取り込みを図る。また、グループ力の強化に向け、(株)ティー・ツー・クリエイティブの外部売上の拡大にも取り組む。
 
 
1株当たり配当金は上期末10.25円、期末10.50円の年20.75円
同社は、利益配分の指標として、連結ベースの配当性向及び株価配当利回りの二つを基本としており、具体的には、16/6期の予想当期純利益(9億30百万円)に対して、配当性向40%で算出された一株当たりの予想配当金(16.61円)と、同決算発表日の前日(2015年8月6日)の終値(654円)に株価配当利回り4.5%を乗じて算出された一株当たりの配当金(29.43円)のいずれか高い方を最低配当金として配当金を決定する事としているが、内部留保確保の基本方針に基づき、連結配当性向換算で50%を上限とし配当額を決定している。
 
 
今後の注目点
通期予想に対する進捗率は、売上高20.4%、営業利益21.3%、経常利益21.4%となり、前期の実績ベースの進捗率(売上高22.9%、営業利益21.3%、経常利益21.9%)とほぼ同水準である事から16/6期の立ち上がりは順調と考える。第1四半期は外部環境にも恵まれず、売上が減少したものの、収益性を改善させる事で受注管理の強化や全社的なIP力の強化といった取り組みの成果を示す事ができた。稼ぎ時の第2四半期(10-12月)は2015年東京モーターショー効果もあり、売上・利益共に前年同期の実績を上回る見込みだ(同社の業績は第2・第4四半期の比重が高い)。