ブリッジレポート
(6890) 株式会社フェローテックホールディングス

スタンダード

ブリッジレポート:(6890)フェローテック vol.11

(6890)フェローテック/山村 章社長
2006年2月3日(月)

フェローテックの2006年3月期第3四半期決算をレポートします。


山村 章社長

 

2006年3月期第3四半期決算概要(4~12月累計)

<連結>
(単位:100万円)
 
実績
前年同期比
売上高
17,087
+5.3%
営業利益
578
-58.5%
経常利益
560
-52.2%
四半期純利益
500
-12.8%

受注は回復しており、売上高は計画に近い線で推移していると思われます。
ただ、原材料価格の高止まりが予想以上に長期化しており、利益の圧迫要因となっています。

 

<セグメント動向>

(単位:100万円)
   
実績
前年同期比
  装置関連事業
8,690
+4.3%
  電子デバイス事業
2,320
-17.5%
  CMS事業
6,077
+19.8%
売上高
17,087
+5.3%
  装置関連事業
721
-33.0%
  電子デバイス事業
-314
-
  CMS事業
203
+75.0%
  消去
-31
-
営業利益
578
-58.5%

装置関連事業 : 真空シール、石英製品、シリコン製品等
真空シールは、フラットパネル・ディスプレイ(FPD)製造装置向けが堅調に推移しており、半導体製造装置向けも受注は回復しており、今後、売上の増加が期待できます。石英製品の売上はほぼ計画に沿ったものとなりました。シリコン製品は、単結晶インゴットの売上が大きく伸びました。
この結果、売上高は前年同期比4.3%増の86 億90 百万円となりましたが、原材料価格の高騰やプロダクトミックスの変化等により、営業利益は同33.0%減の7 億21 百万円となりました。

電子デバイス事業 : コンピュータシール、サーモモジュール、磁性流体等
コンピュータシールは、HDD(ハードディスク・ドライブ)モーターの流体動圧軸受化に伴い大きく減少しました。サーモモジュールは、主力の自動車温調シート向けが回復しており、特に下期に入り大きな伸びを示しています。磁性流体は、バイオメディカル用ナノ粒子を発売しました。来期以降の収益への寄与が期待できそうです。
この結果、売上高は前年同期比17.5%減の23 億20 百万円となりました。利益面では、主にコンピュータシールの代替製品FFB(フルイド・フィルムベアリング軸受)その他新製品の研究開発費等が負担となり、営業損失3 億14 百万円となりました。

CMS 事業 : シリコンウェーハ受託加工、装置部品洗浄、シリコン単結晶引上装置等
シリコンウェーハ受託加工及び装置部品洗浄の増加に加え、シリコン単結晶引上装置も計画通りに拡大しました。
この結果、売上高は前年同期比19.8%増の60 億77 百万円、生産性向上対策の強化等により営業利益は同75.0%増の2 億03 百万円となりました。


2006年3月期業績予想

<連結>
(単位:100万円)
 
予想
前期比
売上高
23,000
+9.0%
営業利益
1,400
-20.5%
経常利益
1,200
-17.6%
当期純利益
700
+10.6%

業績予想の修正はありません。
足下の受注が堅調に推移しており、売上の面で心配はありません。しかし、原材料価格の高止まりが予想以上に長期化しており、利益面で回復が遅れています。原材料価格は徐々に落ち着きをみせており、生産性向上対策の強化等によりコスト削減努力を継続していますが、今期中には十分な成果を得ることができないかも知れません。
ただ、下期の為替レートの前提は1ドル=110円ですから、為替差益が50百万円~1億円程度上積みされる可能性があります。


トピックス

<ノルド社の製造技術取り込みで、サーモモジュールの競争力強化>
同社は、昨年8月にロシアのサーモモジュールメーカー、SCTBノルド(モスクワ)を買収しました。ノルド社の使用している素材は、同社(フェローテック)の現行品より15%程度の省電力効果(熱効率に優れる)があるほか、強度も優れているそうです。また、検査や組み立て等の自動化により、高い生産性を実現しています。
以前、同社の中国工場でサーモモジュールの検査・組み立て工程を見学させて頂いたことがありますが、人手に頼る部分が多く、「人件費の安い中国ならでは」といった感がありました。つまり、機械化・自動化による生産性改善の余地が大きかったわけです。
原材料の高止まりに加え、人件費も上昇していますが、ノルド社の製造技術の取り込み等により熱効率の改善やコスト削減で成果を上げることができれば、デジタル家電向けなど新規の需要開拓が加速するものと思われます。

サーモモジュールとは、直流電流を流すことによって一方の面から他方の面に熱が移動し、一方の面は冷却され反対の面は加熱されます。電流の流れる向きを逆にすると、熱の移動方向も逆になるので加熱・冷却を完全に逆転することができます。同社の製品は、現在、自動車用温調シート、半導体製造装置、DNA(デオキシリボ核酸)の増幅装置、更には小型でコンプレッサーのように騒音を発生させない事が評価され一部の冷蔵庫などで使用されています。

 


取材を終えて
鋼材価格に加え、サーモモジュールに使われるビスマス、テルルも予想以上に高値が続いています。そんな時に、受注が急回復して生産が増えると、利益面ではかえって下方修正要因になってしまうことがあります。下期の状況を俯瞰すると、こんな感じになるのではないでしょうか。
そんな中で楽しみな商材もありました。単結晶インゴットやシリコン単結晶引上装置といった太陽電池関連です。原油価格高騰やイラク、イラン、ナイジェリアなど地政学的リスクも気になる今日この頃。クリーンで環境にも優しい太陽電池関連の製品は話題性にも富んでいます。堅調なFPD投資やメモリーを中心にした半導体投資が一巡したら、次は太陽電池向けの半導体投資、と言う見方もあるようです。

http://www.ferrotec.co.jp/

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