ブリッジレポート
(6890) 株式会社フェローテックホールディングス

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ブリッジレポート:(6890)フェローテック vol.14

(6890:JASDAQ) フェローテック 企業HP
山村 章 社長
山村 章 社長

【ブリッジレポート】フェローテック VOL.14
(取材概要)
「多分に漏れず、同社の下期見通しも慎重なものとなりました。しかし、足下、真空シール、石英製品、及び太陽電池向けシリコン単結晶等の好調が持続しており・・・」続きは本文をご覧ください。
企業基本情報
企業名
株式会社フェローテック
社長
山村 章
所在地
東京都中央区京橋 1-4-14
決算期
3月
業種
電気機器(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2006年3月 23,946 1,210 1,040 708
2005年3月 21,105 1,762 1,456 633
2004年3月 15,000 615 -177 -645
2003年3月 12,845 111 -626 -899
2002年3月 14,775 916 984 -357
2001年3月 16,435 2,665 2,561 1,644
2000年3月 7,988 892 629 288
株式情報(12/11現在データ)
株価 時価総額 発行済株式数 単元株数 決算データ年月 1株配当
798円 16,085百万円 20,156,550株 100株 2006年3月 8.00円
配当利回り PER(連) 1株利益(連) PBR(連) 1株株主資本(連) ROE(連)
1.00% 22.42倍 35.59円 0.92倍 868.78円 4.44%
フェローテックの2007年3月期中間決算について、会社概要と共にブリッジレポートにてご報告致します。
 
会社概要
 
半導体やフラットパネル・ディスプレイ(FPD)の製造装置部品である真空シールや石英製品、半導体材料のシリコン製品、及び温度調節に使われるサーモモジュール等の製造・販売を行っています。
 
もともとは磁力を持つ液体である磁性流体応用製品のメーカーでした。その代表例が、真空シールであり、ハードディスクドライブ等で使われていたコンピュータシールです。いずれもOnly Oneの製品であることはもちろん、超精密部品であるため、金属加工や表面処理等で高い技術が要求されます。この技術を中国に持ち込み、現地の労働力と融合させたのが、事業セグメントの一つである受託生産事業です。また、今後の市場拡大が期待できる太陽電池関連の事業に取り組んでいます。太陽電池の材料となるシリコン単結晶の引上装置は、真空シールや石英製品等が主要部材として使われ、これまで蓄積してきた技術やノウハウが活かせる分野です。
 
<沿革>
1980年9月、磁力を持つ液体である磁性流体応用製品のメーカーだった米国フェローフルイディクス社の日本法人 日本フェローフルイディクス(株)として設立され、コンピュータシール、真空シール、磁性流体の輸入販売を開始しました。
87年4月にマネジメントバイアウトにより独立、翌88年4月には自社で磁性流体の製造を開始しました。92年1月、中国杭州市に現地法人を設立しサーモモジュールの製造を開始。サーモモジュールは、会社設立以来、同社の社長を務める山村社長が大学時代から研究していたテーマです。
95年10月、15周年を記念して、商号を現商号の(株)フェローテックに変更、翌96年10月、株式を日本証券業協会に店頭登録しました(現ジャスダック上場)。
99年11月、元の親会社フェローフルイディクス社を公開買付により買収(2000年1月に100%子会社化)。以後、製造拠点としての中国事業を強化すると共に、米国、欧州でのマーケティングや研究開発の拠点展開を加速させています。
 
<事業内容>
事業は装置関連事業、電子デバイス事業、受託生産(以下CMS)事業に分かれます。2007年3月期中間期の売上構成比は、それぞれ47.7%、15.1%、37.2%です。
 
 
1.装置関連事業
半導体及び液晶・PDP・有機ELなどFPD製造装置向け製品を取り扱っています。主な製品には、磁性流体技術を応用した「真空シール」、半導体製造工程に不可欠な「石英製品」、半導体材料のシリコン製品等があります。
 
真空シールとは、
回転運動を伝え、気密空間を守る部品です。半導体ウェーハや液晶パネルの製造工程では、超精密な成膜加工を実現するため、密閉された真空空間で加工が行われています。空気、ガス、蒸気、微細粒子などの不純物が紛れ込むことは、回路パターンの品質を落とすことにもつながりかねないからです。真空シールは、加工が行われる密閉空間を外部から隔離するとともに、密閉空間の作業に必要な様々な運動を伝える役割も担っています。
 
石英製品とは、
純度99.99%のピュアで、熱や化学反応に強いガラスです。半導体製造プロセスでは、高熱処理や化学処理が頻繁に行われます。純度99.99%のシリカガラスからなる石英製品は、高温作業に耐え、活性ガスにも化学変化を起こしません。そのため、シリコンウェーハの薄膜生成・搬送・洗浄などの工程でウェーハを固定する部材、あるいは洗浄槽として大量に用いられています。当社では、原材料の調達から製造・加工、販売までを行い、半導体製造工程に必要なあらゆる石英製品をラインアップしています。
 
2.電子デバイス事業
情報通信機器・自動車・エレクトロニクス機器などハイテク産業分野向けの製品を取り扱っています。主な製品は、情報通信・エレクトロニクス・バイオなど幅広い分野で活用される冷熱素子「サーモモジュール」や同社のコアテクノロジーでもある磁性流体及びその応用製品である磁性流体シールで、基板実装等も手掛けています。
 
サーモモジュールとは、
電流の流れで、対象物を温めたり、冷やしたりする半導体冷熱素子です。N型とP型という異なる性質を持った半導体素子に、直流の電気を流すと熱が移動し、一方の面が吸熱(冷却)し、反対の面が放熱(加熱)するというペルチェ効果を応用したものです。電源の極性を逆にすると吸熱と放熱を簡単に切り替えることができます。
 
 
サーモモジュールを熱源とし、自動車シートの内部から温風・冷風を送出して、快適な車内環境を演出します。
 
3.CMS事業
中国における生産能力、オペレーションノウハウを活かした事業です。同社の生産対応力と同社に生産を委託するパートナー企業がもつ優位性のある技術を融合することで、グローバル市場において競争力をもった製品を創出する新たなビジネスモデルの構築に努めています。
現在の主力事業は、個別半導体用小口径シリコンウェーハの受託加工です。東芝セラミックス(株)とのパートナーシップにより、小口径シリコンウェーハ用生産設備及び加工技術を上海工場へ移管。
この他、装置部品洗浄、シリコン単結晶引上装置製造、工作機械製造等を手掛けています。
 
<グループ>
企業グループは、同社の他、連結子会社16社、持分法適用会社8社、及び非連結子会社2社。本社機能と生産技術等の開発を担う同社は、純粋持株会社に近い性格を持っています。
 
 
2007年3月期中間決算
 
<連結>
 
営業利益が前年同期比3.3倍に拡大しました。
半導体及びFPD製造装置向けの真空シール及び石英製品、半導体メーカー向けのシリコン製品の出荷が好調に推移。自動車温調シート向けを中心にサーモモジュールも大きな伸びを示すなど、ほぼ全ての製品の売上が期初予想を上回りました。
中間純利益の伸びが61.7%にとどまるのは、前年同期に特別利益(補償金収入6億円等)を計上したためです。
 
<セグメント別動向>
 
1.装置関連事業
売上高70億70百万円(前年同期比29.1%増)、営業利益8億97百万円(同98.9%増)となりました。
パソコン、モバイル機器、デジタル家電及び自動車等に幅広く搭載される半導体の需要増を受け、日本、韓国、米国、台湾における半導体メーカーは、DRAM(ダイナミックラム)やフラッシュメモリー等を中心に活発な設備投資を継続、半導体の生産量も拡大しました。また、FPDにおいても、日本を含むアジアの液晶・プラズマパネルメーカー各社の生産が拡大、旺盛な設備投資が続きました。このため真空シール、石英製品、シリコン製品等の主要製品の売上が大きく伸びました。
原材料高が利益圧迫要因となりましたが、増収効果及び前期から取組んでいる生産革新プログラムの成果で、当セグメントの営業利益はほぼ倍増しました。
 
2.電子デバイス事業
売上高22億35百万円(同15.1%増)、営業損失13百万円(3億17百万円改善)となりました。
自動車温調シート、半導体製造装置、メディカル向けにサーモモジュールが増加しましたが、コンピュータシールは製品寿命の終息により売上高が減少しました。また、オーディオスピーカー向けが中心の磁性流体も用途が拡大しバイオ研究用キットも堅調に推移しました。FFB(磁性流体動圧軸受)等の開発費が一巡したこともあり、損益も大幅に改善しました。
 
3.CMS事業
売上高55億14百万円(前年同期比29.1%増)、営業利益1億23百万円(同30.9%増)となりました。
中国工場への設備移管が完了したシリコンウェーハ加工が期初予想を上回る伸びを示したほか、装置部品洗浄及び工作機械製造並びに太陽電池用シリコン単結晶引上装置などの受注も堅調に推移。売上高の増加に伴い利益も順調に拡大しました。
 
<産業別売上構成>
 
中間期の産業別の売上構成比は次の通りです。
 
 
<貸借対照表>
 
中間期末に売上高が集中したため、売上債権が増加したものの、投資有価証券の売却や未収入金等の減少により、資産の増加は前期末比4.3%の増加にとどまりました。長期へのシフトを進めた有利子負債も、全体では同6.1%の増加にとどまりました。
売上高が大きく伸びていますが、バランスシート全体では大きな変化はありません。この結果、中間期末の自己資本比率は47.8%、一株当たり純資産(BPS)は868円となりました。
 
<キャッシュ・フロー>
 
中間期末に売上が集中したため、営業活動によるキャッシュ・フローが減少したものの、投資有価証券の売却もあり、フリー・キャッシュ・フロー(営業CF+投資CF)は5億32百万円の資金流入。中国での子会社設立等で設備投資は続いていますが、大きな投資は一巡しているため、これまで資金流出が続いていた、フリー・キャッシュ・フローの黒字化(資金流入)が定着してきました。株主還元や有利子負債削減等の原資となります。
 
2007年3月期業績予想
 
<連結>
 
増収・増益の予想です。
会社側の下期の見通しは慎重ですが、足下、真空シールや石英製品等の好調が続いている他、収益性の高いシリコン単結晶引上装置の受注が伸びています。
尚、下期の為替レートの前提は1ドル=115円です。
 
<セグメント別予想>
 
1.装置関連事業
真空シールは国内では液晶製造装置向けが調整期に入り、期末頃に予想される同社への影響を織り込みました。しかし、米国や欧州での半導体製造装置向けが堅調であり、ほぼ上期と同様な売上高が見込まれます。原材料価格の高止まりが懸念材料ではありますが、生産革新プログラムの導入効果が徐々に現れ始めています。
 
石英製品は認定を受けた国内外の大手半導体メーカー向けOEM(相手先ブラドによる生産)供給が始まっています。増産要請に応えるため、設備増設を実施しました。受注は更に増加する見込みです。
また、成長著しい中国のファウンドリーへの営業を強化している他(同社の上海工場周辺に集中しています)、ヨーロッパ市場での消耗品のOEM市場へも参入しました。今後、徐々に業績に現れてくるものと思われます。
また、石英製品の製造方法には人手に頼る火加工と機械による切削加工(機械加工)の2通りがあります。
 
石英製品の国別売上高
 
2.電子デバイス事業
主力のサーモモジュールは原材料の高値が続いていますが、自動車温調シート向けで、一部価格転嫁が進みつつある上、日本メーカー車や米国セダン向けに需要の増加が続いています。自動車の生産調整が予想される1-3月も、搭載車種の増加でカバーできる見込みです。また、欧州車(ランドローバー社)での搭載も決まりました。
 
また、空気清浄機、美容機器、除湿機など民生用機器での採用も増加しています。空気清浄機は、マイナスイオン発生機能が付いたものが人気商品となっていますが、マイナスイオンを発生させるためにサーモを利用します。除湿機は、サーモを冷却し、空気中の水分を結露させ水滴を吸収し除湿する仕組みです。美容機器は、顔に当てるパッドにゲルを塗り、パッド温度の上下を繰り返し、肌の深層部分を活性化させ美肌効果を促進する機器で、パッド温度の上下にサーモが使われています。
 
更に子会社ノルド社(ロシア)の技術を用いた高性能素子の投入により、医療検査機器やバイオ関連機器で他社製品からの切り替えが進んでいます。
 
磁性流体は、これまで、カーオーディオや高音域の高級スピーカーが主な用途でしたが、振動幅が大きな中音域スピーカーにも搭載され評価は良好です。音楽携帯端末外部スピーカーや薄型TV用スピーカー向けの営業を強化しています。
 
 
3.CMS事業
太陽電池向けシリコンは中間期に大口顧客の開拓に成功しました。材料不足が続いていますが、顧客からの材料支給による売上拡大が見込まれます。また、単結晶シリコン引上装置については、中国主要結晶メーカーからの受注が拡大しており、リピート受注も順調です。今期は20億円の売上を計画していますが、部材調達が順調に進めば、来期の売上は60%程度増加しそうです。
この他、工作機械製造は、米国向けにOEMを行っている台湾メーカーからの受注が堅調です。
 
太陽電池関連事業
 
第4の収益の柱として育成中の太陽電池関連事業は、太陽電池用シリコン単結晶製造(引上)事業、単結晶引上装置開発事業、単結晶引上サポート事業の3事業に分かれます。
 
1.太陽電池用シリコン単結晶製造(引上)事業 :シリコン単結晶の製造・販売
原材料の調達難に対応して、4月より顧客から原材料の支給を受けて製造(製造請負)を行っています。一層の製造能力強化で、原材料支給受注を強化する考えです。
 
2.単結晶引上装置開発事業 : シリコン単結晶引上装置の開発販売
現在の生産能力は、月産10台です。また、製品ラインナップの拡充に向けて8インチ専用大型装置の開発及び低価格機種の開発に取り組んでいます。
 
3.単結晶引上サポート事業
シリコン単結晶の製造・販売と引上装置の開発販売を手掛ける同社ならではの事業です。
消耗品である装置用ルツボや定期交換が必要な装置用カーボン部品の供給を始めました。今後、装置オペレーターの育成代行や装置の保守・メンテナンス等へサービスを広げていく考えです。
 
*自社技術がふんだんに使われている単結晶引上装置の開発販売は収益性の高い事業です。
 
 
取材を終えて
多分に漏れず、同社の下期見通しも慎重なものとなりました。しかし、足下、真空シール、石英製品、及び太陽電池向けシリコン単結晶等の好調が持続しており、部材調達が懸念された単結晶引上装置も順調なことから、今期の業績は上振れの可能性が高いと考えます。
今期は活発な半導体・FPD投資を受けて装置関連事業を中心に事業環境に恵まれた面があります。このため、来08/3期はその反動が懸念されるところですが、M&A効果により真空シールの客層が広がっている事、石英製品の国内外大手半導体製造装置メーカー向けOEM供給の拡大や材料支給による太陽電池向けシリコン単結晶の伸びが見込まれる事、更には受注が堅調な単結晶引上装置は部材調達に支障が無ければ、売上高が6割ほど増加する見込みである事等を考えると、来期の業績が大きく落ち込む可能性は低いのではないかと思われます。
また、同社はこれまで実施していた株主優待を今期で終了する考えです。蘭の鉢植え等をプレゼントしていましたが、今後は、配当による株主還元を重視していきます。その原資となる、キャッシュ・フローが安定感を増すなか、今期予想ベースの配当性向14%には物足りなさを感じざるを得ません。このため、来期以降は増配が期待できそうです。
今期の業績上振れ期待、来期の見通しもまずまず、そして増配期待と好材料がそろっているものの、現在、株価は予想PER16倍の水準にとどまっています。