
・企業が上場廃止するのはなぜ?
・上場廃止すると株はどうなる?
・過去の事例では上場廃止で儲かったの?
このようなお悩みを解決します。
この記事の結論
- 上場廃止理由のほとんどは完全子会社化やMBOなど経営戦略によるもの
- 上場廃止になると株主は1ヶ月の取引期間が与えられる
- 過去には上場廃止により株価が約37%上昇した企業も
近年、IPO投資で新規上場株式に注目が集まりますが、反対に市場から上場廃止する企業も多くあります。
「わざわざ上場したのに廃止してしまうのはなぜ?」「上場廃止した株はどうなるの?」そんな疑問を持つ方もいると思います。
今回は、企業が上場廃止になる理由や上場廃止後の株について、事例とともに解説します。
上場廃止されると株はどうなる?

上場廃止って聞いたことあるけど、そもそもどういうことなの?
野村證券は上場廃止を次のように説明しています。
金融商品取引所に上場している企業の状況などを理由として、金融商品取引所での取引が行われなくなることをいう。各取引所は上場廃止基準を定めており、その基準に抵触した場合に、取引所が上場廃止を決定するが、上場企業自らが申請を行うことにより、上場廃止に至るケースもある。
野村證券 証券用語解説集 より抜粋
つまり、上場廃止とは企業の株式が市場で取引できなくなることです。
その理由は、①完全子会社化やMBOなどの経営戦略、②経営破綻など上場廃止基準の該当、の大きく分けて2つがあります。
ここで直近5件の上場廃止銘柄の例をみてみましょう。
上場廃止日 | 銘柄名 | 上場廃止理由 |
---|---|---|
2023/05/19 | 静養軒 | 株式の併合 |
2023/05/10 | カッシーナ・イクスシー | 株式等売渡請求による取得 |
2023/05/02 | 兼松エレクトロニクス | 株式等売渡請求による取得 |
2023/04/30 | アジア開発キャピタル | 内部管理体制について改善が なされなかったと取引所が認める場合 |
2023/04/27 | テクノアソシエ | 株式等売渡請求による取得 |
直近ではアジア開発キャピタルが上場廃止基準の該当により上場廃止したことを除いては、残りすべてが経営戦略によるものとなっています。
また、2022年には77件の企業の上場廃止がありましたが、そのうち経営破綻など上場廃止基準に該当した場合はわずか2件しかありませんでした。
つまり、上場廃止の大半は完全子会社化やMBOなど経営戦略によるものであるということです。
上場廃止と聞くと経営破綻のイメージが強いけど、実はそういう企業は少ないんだね!
では上場を廃止した企業の株がどうなるか以下で説明していきます。
上場廃止の理由によって異なる
結論から言うと株の取り扱いは上場廃止理由によって異なります。
「経営戦略」と「上場廃止基準の該当」という2つの理由に分けて株がどうなるのか見ていきましょう。
経営戦略
経営戦略といっても、完全子会社化やMBO、TOBなど理由は様々あります。
いずれの場合も企業は経営を続けますが、その企業の株式は他の企業や自社に買収されるため、市場で取引できなくなり上場廃止となります。
特に親会社が子会社の株式を100%買収する完全子会社化の場合が多く、2022年の上場廃止企業のうち25件(32.5%)ほどがこれにあたります。
株式の併合という理由でも、後に完全子会社化するケースもあるので実際はもっと多いんだワン!
上場廃止の際には、上場廃止となる企業の株式の市場株価にプレミアムを付与して、買収企業が買い付けます。
つまり、株主は株式を買収企業に買い取ってもらうことができるため、株式の価値がなくなることはありません。
上場廃止=株式価値ゼロではないんだね!
上場廃止基準の該当
上場廃止基準の該当に関しても理由は様々であり、以下のような事例があります。
上場廃止日 | 銘柄名 | 上場廃止理由 |
---|---|---|
2022/08/23 | テラ | 経営破綻 |
2022/02/28 | グレイステクノロジー | 四半期報告書提出遅延 |
2021/08/01 | オンキヨーホームエンターテイメント | 債務超過 |
2021/07/26 | 五洋インテックス | 内部管理体制について改善が なされなかったと取引所が認める場合 |
どれも戦略的に上場廃止しているわけではなさそうだね…
中でも代表的なのが企業の経営破綻です。
企業の事業が立ち行かず追加の資金調達が困難になった末に、債務を返済できなくなると企業は経営破綻に追い込まれ上場廃止となります。
この場合経営破綻した企業の株式には返済義務がないため、株式は保有していてもただの紙切れとなってしまいます。
上場廃止されたら株主は取引できる?

上場廃止されたら持っていた株の取引ができなくなるのかな…
上場廃止というと株式がすぐに取引できなくなるとイメージされる方もいるでしょう。
しかし実際はそうではなく、上場廃止が決定した銘柄は整理銘柄に指定され、投資家が不利益を被るのを防ぐために1ヶ月間取引の猶予が株主に与えられます。
つまり、この1ヶ月の間に売却するのも、(TOBなどの場合は)プレミアムが付与された買付額で買われる上場廃止日まで保有するのも、投資家の自由ということになります。
最後の買付まで保有すると手続きが複雑になることから、上場廃止日までに売ってしまう投資家が多いんだワン!
また、上場廃止基準に該当する恐れがある銘柄は監理銘柄として事前に投資家に周知されます。
これら二つの銘柄に関して詳しく知りたい方は以下の記事も合わせてご覧ください。
整理銘柄・監理銘柄について詳しくは
上場廃止は儲かる?

上場廃止で株主が儲かることってあるの?
結論から言うと、経営戦略での上場廃止の場合は儲かるケースが多いです。
通常、企業がTOBなどで株式を取得する際には、その時の市場株価にプレミアムを付与した価格を公開価格として提示します。
そのため、企業戦略により上場廃止となる場合には、付与されたプレミアムが投資家の利益となります。
一方で、経営破綻になった場合は株式が買収されるわけではないので、株式の価値がなくなり株価がゼロに近づいてしまいます。
ここでは上場廃止となった企業の実際の例を株価とともに紹介します。
事例①:プレナス(経営戦略)
株式会社プレナスは、株式の併合により2023年2月24日に上場廃止となりました。
同社は「やよい軒」や「ほっともっと」などの飲食業を中心に展開する企業ですが、ポストコロナの競争環境においてより柔軟な経営戦略を取るために、創業家が所有する合同会社塩井興産によるMBOにより株式を非公開化することを決めました。
MBO(マネジメント・バイ・アウト)とは
企業の経営陣が自社の株式や一部の事業部門を買収して独立させること。
ここで、同社がMBOを発表した2022年10月14日付近の株価の動向を見てみましょう。
日付 | 株価終値 |
---|---|
2022/10/18 | 2,635円 |
2022/10/17 | 2,320円 |
2022/10/14 | 1,920円 |
2022/10/13 | 1,904円 |
同日、同社は市場株価に約35%のプレミアムを付与した買付価格2,640円を提示しました。
そのため、同社の株価はなんと6日間で37.2%も上昇しました。
上場廃止銘柄を保有していると、かなり利益が出ることがあるんだね!
事例②:テラ(上場廃止基準の該当)
テラ株式会社は破産手続きにより2022年8月23日に上場廃止となりました。
同社はワクチンや再生医療を中心に医療支援事業を行っていた企業ですが、虚偽の開示など度々問題となる事件を起こし、資金繰りが悪化したため破産手続きを受けることになりました。
同社が整理銘柄に指定された2022年8月5日付近の株価の動向を見てみましょう。
日付 | 株価終値 |
---|---|
2022/08/09 | 13円 |
2022/08/08 | 66円 |
2022/08/05 | 96円 |
2022/08/04 | 95円 |
8月5日以前から同社の信用力は低下していたため株価は100円を切っていましたが、なんとそこから株価は4日間で86.5%も下落しました。
そして最終的に、上場廃止日の終値は2円で取引を終えました。
株式の価値がなくなってしまうのは怖いね…
【まとめ】上場廃止の理由を確認するようにしよう!

これまで、上場廃止の理由やその後の株の動向などを解説してきました。
最後に、本記事の結論をおさらいします。
- 上場廃止理由のほとんどは完全子会社化やMBOなど経営戦略によるもの
- 上場廃止になると株主は1ヶ月の取引期間が与えられる
- 過去には上場廃止により株価が約37%上昇した企業も
上場廃止は投資家に有利に働くケースが多いです。
自身の保有している株式が上場廃止になった場合も焦らず、上場廃止理由を確認するようにしましょう!