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書籍のすゝめ:『無形資産が経済を支配する―資本のない資本主義の正体』(後半)


この記事の結論

  • 無形資産は投資を過少にして経済の長期停滞を招き得る
  • 4Sによって所得格差が生まれる
  • 無形資産は経済だけでなく政治にも影響を与える

今回は、ジョナサン・ハスケル氏とスティアン・ウェストレイク氏の『無形資産が経済を支配する 資本のない資本主義の正体』の後半を紹介していきます!

前回の記事をまだ読んでいないという方は、ぜひ以下よりご覧ください。

前回のおさらい

  • 第1部:無形経済の台頭 (2章~4章)
  • 第2部:無形経済台頭の影響 (5章~11章)

この本は第1部と第2部に分かれており、前回の記事では第1部のみを解説しました。
そして、第1部では無形資産の持つ4つの性質がとても重要だという話をしました。

その性質は、4つの頭文字をとって4Sと呼ばれていましたね。

無形資産の特性4S

そしてこの4つの性質から導かれる、2つの特徴が無形資産にありました。

それは「不確実性」「紛争性」でした。

「スケーラビリティ」と「サンクコスト」でハイリスクハイリターンになるから無形資産には不確実性が生まれるんだワン!
また、「スピルオーバー」を嫌がって特許を設けたり、「シナジー効果」を求めて企業が合併することで紛争性が生まれるんだワン!

ここまでが第1部の内容でした。

この記事では第2部、すなわち、無形資産が経済に与える影響について考えていきます。

長期停滞は無形資産が原因!?

よく年配の方が、「昔は今より景気がよかったなぁ」と口にしますよね。

ご存じの方も多いと思いますが、最近の日本の景気はあまりよくありません。

下のグラフはThe World Bankのデータを基に作った、日本の年間GDP成長率(1961年~2018年)のグラフです。
成長率は上下しながら全体的に低下してきたことが分かります。

日本のGDP成長率推移

80年代までは3~4%以上の成長をしていたのに、90年代以降は0.5~1.5%の成長しかしていないんだね

そして程度に差はあるといえども、どの先進国でも日本と同じような傾向があります。

この近年の経済停滞の原因の一部は無形資産にある、と著者は書いています。

投資インセンティブがなくなっている?

GDP成長には消費や政府支出、純輸出など、様々な要素が関係してきます。
その中で、著者は投資という要素に注目しました。

そして著者は、「無形資産が増えるにつれて、一部の企業を別として、企業が投資に消極的になる」と主張します。

どうして無形資産が増えると企業は投資しなくなってしまうの?

無形資産が増えると、収益性の高い企業はスケーラビリティを用いて、低コストで生産活動を行えます。

また、無形資産のスピルオーバーがあると、他者の技術や研究を簡単に自分たちのビジネスに取り込むことができるかもしれません。

もちろん全ての企業がスピルオーバーをうまく活用できるわけではなく、スピルオーバー活用に優れている企業もあれば、そうでない企業もあります。

すると、スケーラビリティの高い無形資産を持っていて、スピルオーバーをうまく活用できる大企業(GoogleやFacebookなど)は、その市場で支配的なポジションを手にすることができます。

対照的に、スピルオーバーをうまく活用できない企業は、自分たちの技術や研究が他社にアドバンテージを与えてしまうため、投資するインセンティブを失ってしまいます。

スピルオーバーが招く投資インセンティブの低下

支配的な大企業というのは会社の規模は大きくても、割合としては市場全体のごく一部です。
大企業以外の会社が投資をやめてしまえば、それは多くの投資が無くなることを意味します。

そして、投資が減ればGDPが減るだけでなく、将来の生産性も向上しないため、長期的に経済は停滞することになるのです。

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無形資産が格差を生む?

無形資産が経済に与えるもう1つの影響があります。

それは、無形資産に依存する社会では、格差が広がるということです。

無形資産と格差にはどのような因果関係があるのでしょうか。

所得格差の原因は無形資産?

著者は、無形資産によって所得格差が広がると考えています。

上述した通り、無形資産によって富は一部の会社に集中するようになります。
こうした会社はスケーラビリティで収益性を高め、スピルオーバーも駆使していましたね。

すると会社はスピルオーバーを管理できる能力を持つ人材を取り込もうとします。

例えば、弁護士は法律に基づいて既得権益を守ることで、スピルオーバーで自社の無形資産が他社に使われるのを防ぎます。

また、優れたマーケターは他社よりも先に有力な企業を買収して、シナジー効果で莫大なアドバンテージを得るかもしれません。(他社はスピルオーバーの便益を得ることはできません)

こうしたスピルオーバーを管理する人は、代替しずらい存在のため賃金が上がります
一方、替えの利く仕事(誰でも出来てしまう仕事)の賃金は低下するのです。

工場稼働などの有形経済よりも、システム開発などの無形経済のほうが、代替の利かない仕事をより多く必要とするんだワン!

自尊心の格差?

本書ではもう1つ、別の格差が無形資産によって広がると書いてあります。

それは自尊心の格差です!

自尊心の格差とは、自尊心の高い人と低い人で人口が分断することです。
例えば、「あの人たちだけ得してて、私たちは得してない…」といった感情などです。

無形資産とは関係ないように思えるんだけど…

2016年、トランプ氏が大統領に就任した大統領選挙で、ポピュリスト政党の支持者は、「自分たちがエリートに見下されている」という感情をお互いに共有し、トランプ氏を支持しました。

心理学者の分析によると、こうしたポピュリスト政党の支持者に共通していることがありました。
それは、新しいものにチャレンジする気概(心理学では「経験への開放性」と言います)が低く、伝統的意見を尊重するということです。

一方で目の敵にされていたエリートたちは、新しいアイデアや創造性に富んでいました。
そして彼らは新しいアイデアや事柄にチャレンジする、経験への開放性が高かったのです。

ポピュリスト政党支持者とエリート比較

スピルオーバーやシナジー効果を活用できる人は、無形資産の経済では重宝されます。

経験への開放性が低く保守的な人と、チャレンジ精神にあふれた経験への開放性が高い人。
どちらがスピルオーバーやシナジー効果を獲得するのに適しているでしょうか?

もちろん後者ですよね。
後者の人々は新技術にも抵抗が少なくスピルオーバーを管理できるため、企業からの需要も高くエリートとみなされます。

「経験への開放性」という人間の特性が政治的な対立の要因になっているのですが 、無形資産はその対立に拍車をかけているのです!

経済の問題が政治問題にも影響を与えているんだね

いかがだったでしょうか。
これからより重要性を増してくる「無形資産」、知らなかったことも多かったのではないでしょうか?

本書では、他の切り口でも無形資産の分析や、無形経済の抱える問題へのアプローチもしています。

興味が湧いたらぜひ読んでみてください!

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