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(2146:JASDAQ) UTホールディングス 企業HP
若山 陽一 社長
若山 陽一 社長

【ブリッジレポート vol.5】2011年3月期業績レポート
取材概要「東日本大震災で同社の社員や施設が被害を受ける事は無かったが、顧客工場の被災や物流の混乱等で3月の技術職社員未稼働が400名に達し、11/3期・・・」続きは本文をご覧ください。
2011年9月27日掲載
企業基本情報
企業名
UTホールディングス株式会社
社長
若山 陽一
所在地
東京都品川区東五反田1-11-15 電波ビル
事業内容
半導体向けの製造派遣・請負が中核、製造装置販売からライン移設業務に転換。設計開発事業も
決算期
3月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年3月 20,227 1,442 1,309 766
2010年3月 18,056 290 182 -1,401
2009年3月 40,694 1,793 603 -10,861
2008年3月 51,787 4,200 3,473 1,203
株式情報(5/23現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
67,000円 212,545株 14,241百万円 30.6% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
2,500.00円 3.7% 4,704.88円 14.2倍 12,162.14円 5.5倍
※株価は5/23終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
UTホールディングスの2011年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
国内外の半導体・FPDメーカー等に対して、構内作業(工場内作業)の請負サービスを提供する「アウトソーシング事業」とデバイス設計(デザイン)サービスを提供する「設計開発事業」を柱とし、それらサービスを一括して提供するワンストップ型トータルソリューションサービスを展開している。
 
 
事業はアウトソーシング事業と設計開発事業に分かれ、売上構成比は、前者が97%、後者が3%(11/3期)。
 
アウトソーシング事業
半導体・液晶・太陽電池・二次電池など高度な分野に専門特化した製造請負事業を展開。各工程の製造オペレーションから、装置メンテナンスや保全業務の一括受託まで行い、各工程の生産能力を把握し、それに基づいた作業改善を提案するなど付加価値の高いサービスが特徴。パナソニック、ソニー、ローム、東芝等の大手半導体メーカーを主要顧客としており、日本エイム(株)と(株)ファインステージがサービスを提供している。
設計開発事業
半導体デバイスの設計・デザイン請負や設計エンジニアの派遣の他、組込みソフトウェアの受託開発を行っている。半導体・液晶生産に関する幅広い経験とノウハウを活かして、製造プロセス及びそのコストを視野に入れた設計が高い評価を得ている。国内大手ソフトウェア会社を主要顧客とし、(株)アルティスタがサービスを提供している。
 
<取引先顧客数の推移>
 
 
2011年3月期決算
 
 
前期比12.0%の増収、経常利益13.0億円(前期は1.8億円の利益)
売上高は前期比12.0%増の202.2億円。営業体制の強化が奏功し、既存顧客内でのシェアアップと新規の顧客開拓が進み、アウトソーシング事業を中心に売上の源泉となる技術職社員稼働数が大幅に増加した。利益面では、3月11日に発生した東日本大震の影響で技術職社員の未稼働が発生したものの、震災発生前までの稼動数の増加と製造装置事業が連結から外れた事による収益改善で吸収し、営業利益が14.4億円と同5倍弱に拡大。為替差益(82百万円)が無くなった他、雇用調整助成金が減少(64百万円減)する一方で持分法投資損失が増加(34百万円増)したため営業外損益が悪化したものの、装置関連事業を手掛ける不採算子会社への対応一巡による特別損失の減少で当期純損益は前期の14.0億円の損失から7.6億円の利益に転じた(前期は特別利益74.4億円と計上する一方、110.1億円の特別損失を計上)。期末の技術職社員稼働数は前期末比1,342名増の5,346名(期初予想4,227名)。配当は1株当たり100円増配の期末2,400円を予定している。尚、東日本大震災後に業績予想を修正したが(売上高201億円、経常利益12.9億円)、売上・利益共に修正値を上回る着地となった。
 
 
成長4分野(太陽電池、二次電池、LED、ディスプレイ)の強化に向け営業社員の増強を行った結果、新規の顧客開拓が進み、第3四半期(10-12月)に新規の受注が大幅に増加した。このため、第4四半期(1-3月)は新規案件の立ち上げで一時的にコストが増加したが、このコスト増については売上高及び売上総利益の増加によって吸収できる見通しだった。しかし、東日本大震災の発生で東日本エリアを中心とした取引先工場の生産が一時的にストップした他、物流の混乱による部材調達難が全国の工場に広がったため、震災後に技術職社員400名の未稼働が発生し、想定していた売上を確保できなかった。利益面では、未稼働技術職社員の発生で売上総利益率が低下する一方、営業体制の強化に伴い販管費率が上昇。営業利益は前期半期及び前年同期に実績を下回った。
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
CFの改善を受けて有利子負債の削減を進め結果、期末総資産は90.2億円と前期末比8.7億円減少した。CFの面では、事業拡大に伴う運転資金の増加等で営業CFが減少したものの、装置関連事業を手掛ける不採算子会社への対応一巡で投資CFのマイナス幅が大幅に縮小。フリーCFは前期の10.3億円から15.5億円に増加した。有利子負債の削減を進めた事や増配による配当負担の増加で財務CFのマイナス幅が拡大したものの、現金及び現金同等物の期末残高は33.2億円と前期末比2.1億円の減少にとどまった。
 
 
 
2012年3月期業績予想
 
 
前期比23.5%の増収、同49.7%の経常増益予想
同社では東日本大震災の業績への影響は期間限定的なものにとどまると考えているが、一部の顧客の部材調達が困難になる可能性を考慮し、第1四半期(4-6月)において月間で最大500名の技術職社員(全体の約10%)が非稼働になると想定している。6月には全ての技術職社員が稼動し、第2四半期(7-9月)以降、生産が正常化するとみているが上期は減益予想。配当は1株当たり100円増配の期末2,500円を予定している。
 
 
(2)12/3期の重点戦略
12/3期の重点戦略として、西日本地域の営業活動強化、インハウスソリューションの強化、及び東日本雇用支援プロジェクトの立ち上げ、の3点を挙げている。
 
\焼本地域の営業活動強化
メーカー各社は震災の影響による東日本地域での生産の落ち込みをカバーするべく、西日本地域での生産を増やしている。ただ、生産の西日本地域偏重が長期間続くかは未知数であるため、人員の不足をアウトソーシングで補う考えで、派遣法改正の状況が不透明な事や「2012年問題」もあり、機動的に対応でき、かつ請負化にも対応できる派遣の活用に前向きだ。このため、同社は西日本地域の営業活動を強化すると共に、製造派遣と製造請負の2つのニーズへの対応を進めていく。尚、「2012年問題」とは、「2009年問題」への対応で派遣社員を契約社員へ切り替えたり、改めて派遣契約を結んだりしたケースが多かったが、その契約が3年の期限を迎えるため新たな対応に迫られる問題。
 
▲ぅ鵐魯Ε好愁螢紂璽轡腑鵝兵勸転籍型業務一括請負)の強化
インハウスソリューションとは、顧客従業員を受け入れ、製造業務を一括して請負うサービスの事で、同社自身の事業の拡大だけでなく、製造業の国内雇用維持に貢献できる事が特徴。同社は09年10月に230名規模のインハウスソリューションを業界で初めて受注し、11年に入り2件(1月に100名規模、4月に40名規模)の受注に成功した。
 
E貽本雇用支援プロジェクトの立ち上げ
復興支援の一環として、被災地への雇用支援プロジェクト「踏み出そうニッポン」を始動させた。同社の事業基盤を通じて被災した地域の雇用とインフラ復興の支援活動を実施していく考えで、既に現地へ出向き就職面接会やキャリア相談会を開催した他(被災地域の方を中心に東日本地域で500名の正社員採用が目標)、今後、住宅関連メーカー等の製造業務や被災地域のインフラ復興の業務を受託する事で被災地域のインフラ復興を支援していく。
 
 
新中期経営計画
 
同社は、「半導体製造請負NO.1」から質・量共に「日本一の請負会社」を目指すべく、12/3期から16/3期にかけての5年に及ぶ新中期経営計画を策定した。最終の16/3期に稼働技術職社員20,000人体制(300工場、1工場当たり70人、期末21,000人)を確立し、売上高750億円、経常利益90億円の達成を目指しており、併せて、「地方における良質な雇用機会の創出」、「派遣・請負で働く人たちのキャリアアップ機会の創出」、及び「製造業の横断的な雇用調整機能」という社会的な役割も果たしていく考え。尚、11/3期末時点では、5,000人体制(100工場、1工場当たり50人)。
 
 
<基本戦略>
基本戦略として、(1)成長4分野の強化、(2)大規模請負力の強化、及び(3)従業員のカスタマー化の3点を挙げており、(1)成長4分野の強化では、重点領域の拡大を図る一方で、対象工場の絞込み(3,000工場→300工場)を行い、成長分野比率を40%以上に高める。(2)大規模請負力の強化(1工場当たりの人数:50人→70人)では、派遣法改正による請負化の流れを捉え、製造請負でのシェアアップを図ると共にインハウスソリューションを拡大させる。また、(3)従業員のカスタマー化では、安定した雇用環境を整備すると共にキャリアアップの機会拡大と充実した人事・報酬制度の導入により社員の定着率を高める他、採用ルートの強化にも取り組む。
 
(1)成長4分野の強化
半導体領域の市場規模は1,400億円で同社のシェアは10%。今後、半導体領域に加え、成長4分野(LED、太陽電池、2次電池、ディスプレイ)を中心としたエレクトロニクス分野に重点領域を広げていく事で16/3期には対象の市場規模が5,600億円となり、同社は13%のシェア確保を目指している。
 
 
尚、経済産業省が産業構造ビジョンで掲げる戦略5分野の中で、最も高い成長が見込まれるのが環境・エネルギー関連分野であり、雇用者数においても高い成長が見込まれている。
 
 
また、多くの外部労働力を活用し、複数社に派遣形態で発注している工場や成長分野等これから投資が見込める工場等、300工場に対象工場を絞込む他、半導体分野で培った請負ノウハウを成長4分野へ展開し、11/3期実績ベースで13.5%だった成長分野比率を40%以上に高める。
 
(2)大規模請負力の強化
現在、労働者派遣法改正案が国会で継続審議中だが、規制強化を見越して外部労働力への依存度が低い自動車業界は派遣から直接雇用に切り替えた。しかし、外部労働力比率が高いエレクトロニクス業界が直接雇用へ切り替える事は難しいため、今後、請負化が加速するとみられている(同社が強みを有する半導体分野は業界では例外的に請負化が進んでいる)。同社は請負化の流れを取り込むと共に、新たに設置した生産本部のバックアップにより1工場当たりの人数を50名から70名へ引き上げる考え。ちなみに、同社は05/3期から10/3期にかけて1工場当たりの期末人数が21人から48人へ増加したが、これにより工場数に比例して増える管理コストの増加が抑制され、売上高販管費比率が16.8%から10.8%に改善した。このため、1工場当たりの期末人数を70人に引き上げる事で16/3期に売上高販管費比率が7.3%に低下すると試算している。
 
(3)従業員のカスタマー化
「成長4分野の強化」と「大規模請負力の強化」で16/3期に売上高750億円、経常利益90億円を目指す同社だが、そのためには、20,000人体制の構築が必須であり、人材の確保が課題となる。また、取引先の信頼を得て請負を拡大させるためには定着率を高める必要もある(離職率の引き下げ)。このため、同社の月次離職率は2%と製造派遣の8%を大きく下回るが、安定した雇用環境を整備すると共に、キャリアアップの機会拡大と充実した人事・報酬制度の導入により、月次離職率の更なる引き下げを図る考え(2%→1%)。この一環として、紹介事業を推進やESOPの導入を計画している。尚、ESOP(Employee Stock Ownership Plan)とは、企業が従業員の報酬制度として導入する企業の拠出(損金扱い)による従業員への税制優遇自社株配分制度の事(野村證券Webサイトより)。同社のESOPでは、派遣・請負職場で働く従業員に、勤続や成果に応じてポイントを付与し、退職時に累積したポイントに相当する同社株式を給付する。
 
 
取材を終えて
東日本大震災で同社の社員や施設が被害を受ける事は無かったが、顧客工場の被災や物流の混乱等で3月の技術職社員未稼働が400名に達し、11/3期決算に5億円程度の減益インパクトが生じた。このため、12/3期の第1四半期は月間で最大500名の未稼働を想定しているが(4月、5月と改善に向かい、最終月の6月は未稼動ゼロを想定)、実際の生産の立ち上がりは同社の想定以上に早く、4月末には未稼働数が50名に減少しており、顧客工場数も3月末の194工場から4月末には201工場に増加している。
電力供給不安や原発問題等で先行きの不透明感が払拭できない事は確かだが、11/3期において12/3期以降につながる売上基盤が作れたとして、説明会での若山社長の表情は明るかった。同社は昨年12月に66件(取引先顧客数が105件から171件に増加)の新規契約を得たが、このうち35件は12/3期以降の請負化を見据えた派遣契約であり、6月には未稼働数がゼロになると想定しているのも、これらの案件で順次請負化が進むためだ。
会社設立から10年で半導体分野の人材アウトソーシングサービスにおいてNo.1となった同社だが、この実績を踏まえ、新中期経営計画では「日本一の請負会社」となる事を目指している。同社が目指すところは、1企業の業績にとどまらず、“日本でのモノづくり”と“国内雇用の維持”と言う観点からも大きな意義を持つだけに、今後の展開に期待が高まる。
 
本資料は、情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。
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