ブリッジレポート
(3034:東証1部) クオール 企業HP
中村 勝 社長
中村 勝 社長

【ブリッジレポート vol.30】2016年3月期第3四半期業績レポート
取材概要「通期予想に対する進捗率は、売上高72.7%、営業利益74.8%、経常利益77.1%。足元、暖冬の影響で流行性疾患数が前年を下回っているよう・・・」続きは本文をご覧ください。
2016年2月9日掲載
企業基本情報
企業名
クオール株式会社
社長
中村 勝
所在地
東京都港区虎ノ門4-3-1 城山トラストタワー37階
事業内容
調剤薬局チェーン大手。首都圏中心に全国に店舗展開。
決算期
3月末日
業種
小売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2015年3月 114,363 4,243 4,262 2,155
2014年3月 100,966 2,105 2,208 777
2013年3月 76,783 2,812 2,829 1,349
2012年3月 66,201 3,308 3,238 1,560
2011年3月 60,915 2,804 2,807 1,137
2010年3月 56,305 2,031 2,032 828
2009年3月 49,010 1,526 1,506 653
2008年3月 38,002 1,314 1,298 547
2007年3月 24,827 937 875 403
2006年3月 21,701 779 763 333
2005年3月 20,193 611 580 74
2004年3月 18,500 28 10 -134
2003年3月 11,869 253 413 -33
2002年3月 8,107 5 153 68
株式情報(1/29現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,743円 34,450,200株 60,047百万円 11.9% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
20.00円 1.1% 98.84円 17.6倍 557.42円 3.1倍
※株価は1/29終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
クオールの2016年3月期第3四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
 ※BPO:Business Process Outsourcing の略
 
会社概要
 
首都圏を中心に全国展開を進める業界3位の調剤薬局チェーン。従来、調剤薬局と言えば、大病院の近くに出店し顧客獲得を競う門前薬局が主流だったが、同社は医療機関とのマンツーマン体制による出店戦略を推進し独自の勝ちパターンを確立。近年では、異業種との提携等による人々が集まる導線上への出店に力を入れており、(株)ローソンとの資本業務提携による「コンビニエンスストア(以下、CVS:Convenience Store)併設型調剤薬局」(調剤薬局とCVSの融合)の街ナカ展開、家電量販店大手の(株)ビックカメラとの連携による駅チカ展開、更にはJR西日本グループとの業務提携による「駅クオール薬局」といった駅ナカ展開が進行中である。また、中間持株会社クオールSDホールディングス(株)を通してCSO事業、治験事業といったBPO受託事業も手掛けている。
 
企業理念    わたしたちは、すべての人の、クオリティ オブ ライフに向きあいます。いつでも、どこでも、あなたに。
 
【沿革】
1992年10月   中村 勝氏(現社長)が50歳の時に医薬品卸の営業本部長から転身して創業 兜町に1号店を出店
2006年 4月   大阪証券取引所「ヘラクレス」(現JASDAQ)上場
2008年12月   ローソンと業務提携
2010年 8月   CVS併設店舗1号店(東京都港区城山トラストタワー)
2011年12月   東証2部上場
2012年 8月   JR西日本デイリーサービスネットと業務提携
2012年 8月   ローソンと資本提携
2012年10月   アポプラスステーションを子会社化
2012年12月   東証1部上場
2013年 4月   会社分割(新設分割)により関連事業を統括する中間持株会社クオールSDホールディングスを設立
2014年 7月   ココカラファインと業務提携
 
【事業概要と調剤事業の特徴】
事業セグメントは、クオール(株)等が手掛ける調剤事業とクオールSDホールディングス(株)傘下の企業が手掛けるCSO事業、治験事業等のBPO受託事業に分かれ、15/3期は調剤事業の売上が全体の90.3%を占めた。調剤事業は調剤薬局の経営が中心だが、CVS併設型調剤薬局(「LAWSON」の法人オーナーとして展開)における物販の収益も含まれている。
一方、クオールSDホールディングス(株)が統括するBPO受託事業は、アポプラスステーション(株)によるCSO事業や薬剤師の派遣事業、クオールRD(株)の治験支援事業、メディカルクオール(株)の出版関連事業からなる。MRの派遣は製薬会社のコスト削減(MRの削減)に対応したもので、薬剤師の派遣は薬剤師の就学期間の長期化(薬学部が4年制から6年制へ)や薬剤師国家試験の合格率低下による薬剤師不足に対応したもの。
 
 
調剤事業の特徴
クオール薬局
「処方箋は病院の近くで処理するもの」と言う固定観念が強いため、処方箋を受け取った患者が自ら薬局を選ぶ事は稀で、病院等の近くの薬局(門前薬局)を利用するケースが一般的であった。このため、調剤薬局は大病院など大手医療機関の門前に店舗を構え、好立地を活かした店舗運営を志向してきた。これに対して、同社は多くの医療機関と1対1の密接な関係(処方元医療機関の医師との強固な信頼関係)を構築するマンツーマン薬局を志向すると共に、1店舗で複数の医療機関が発行した処方箋を応需する面対応の店舗展開を進めてきた。
 
クオール薬局は既存店の新患率が約8%、売上高は2ケタ成長が続いている。
同社独自の疾患別認定薬剤師制度により、がん、認知症、在宅、糖尿病等、専門知識を持った薬剤師を育成する事で処方提案レベルを高めている他、過誤防止、全自動調剤、スピーチプライバシーシステム、エコ、災害対策、在宅、テレビ電話等、機能面での充実にも力を入れている。
加えて、異業種とのコラボレーションやクオールカード、処方せん送信アプリ、クオール薬局アプリと言ったIT化により、近隣の大病院に頼らない面対応の取り組みも継続的に進めている。
 
面対応強化の一環として異業種と連携   −広範囲な市場をカバー−
2010年以降は異業種と連携により多様なチャンネル展開にも力を入れており、ローソンとの提携による調剤薬局併設のCVS(コンビニ)運営(2014年4月以降は、調剤、コンビニ、ドラッグストアのヘルスケア融合型にシフト)、駅前の好立地に店舗展開し、高い集客力を誇るビックカメラ店舗でのインストア展開、JR西日本グループとの提携による駅構内での店舗展開を進めている。現在、患者の20%超は能動的に調剤薬局を選択していると言われており、こうした患者の取り込みを図るための差別化戦略であり、患者との接点を点から面に広げる事で広く処方箋を獲得しようとするもの。将来的には宅配サービスも視野に入れており、薬だけでなく、介護用品や弁当等を届ける体制を整備したい考え。
 
流通改革
2014年3月、調剤薬局・ドラッグストア16社と共に、医薬品卸会社へ医薬品の競争入札を行う医薬品調達機構を立ち上げた。医薬品調達機構は、医薬品を5つのカテゴリーに分け、このうち新薬創出加算品、特許品、及び長期収載品の3カテゴリーについて、カテゴリー別に事前に各社へ購入予定価格を通知、その価格に対して一般競争入札を行う。残りの後発医薬品、エッセンシャルドラッグ(その国の保険医療に最低限必要な医薬品)は従来通り、各々が仕入先と交渉する。これまで同社はすべての医薬品を一括購入していたため、値引き率には限界があったが、15/3期より、先述の入札制度により、適正かつ公正な価格での交渉・妥結が可能となり、利益率の改善につながっている。

これまで同社の通期業績は、第4四半期(1-3月)に医薬品の仕入価格交渉が最終決着し、その結果いかんで大きく変動する事があった。特に13/3期、14/3期は影響が大きかったが、仕入価格(仕入原価)を確定した上で仕入れを行うと言う本来の商習慣への回帰を目指す医薬品入札制度を導入した事で15/3期は大きな波乱なく着地できた。

尚、一般的には調剤薬局が処方箋を1枚処理した場合、処方箋単価が調剤薬局の収入となり、処方箋単価の約25%が技術料で残り約75%が薬剤料として売上計上される。技術料は100%粗利となるが、薬剤料は医薬品の仕入原価を差し引いた残り(薬価差益)が粗利となる(値引き率を大きくする事によって超過収益を得る事ができる)。
 
調剤売上高 = 処方箋単価 × 処方箋枚数
調剤利益 = 技術料 +(薬剤料 × 値引き率)
 
 
国内の製薬大手5社は海外売上比率が40〜70%を占める等、国内制度依存からの脱却が進んでいるが、準大手以下の製薬企業は国内への依存度が82〜100%と高く、長期収載品の比率も50〜60%と高い。後者の多くは、長期収載品のジェネリック化、新薬研究開発費の増高、新薬導入コストの増高等で厳しい経営を強いられており、製薬企業として生き残るべく、真の研究開発以外の業務についてBPO(外部委託)化を進めている。BPO化の具体例として、「自社MRからCSOへ切り替え」、「自社開発からCROへ切り替え」、「フェーズ4を臨床委託」、「製造の外部委託」等を挙げる事ができるが、同社グループではクオールSDHD傘下のアポプラスステーション(株)が「自社MRからCSOへ切り替え(コントラクトMR)」に対応したサービスを提供しており、「自社開発からCROへ切り替え」に対してはクオールRD(株)がサービスを提供している。
 
CSO事業の魅力と課題
国内のMRは2013年の65,752人をピークに減少しているが、コントラクトMR(CMR、派遣型MR)を活用する企業数は増加傾向が続いており、2017年にはCMRのシェアがMR全体の8〜10%に達すると見られている。言い換えると、CSO事業は成長力に富んだ有望事業であり、実際、同社の受注も順調に拡大しているが、人材需要に応えるために必要なCMRの確保が課題である(CSO事業に限らず、国内人材サービス各社の共通の悩みだが)。同社は異業種で経験を積んだ人材を採用・教育してMRとして派遣しているが、求人市場の需給ひっ迫で人材を確保するために越えなければならないハードルの高さが上がっている。
 
 
 
2016年3月期第3四半期決算
 
 
前年同期比7.4%の増収、同52.3%の営業増益
売上高は前年同期比7.4%増の914億77百万円。子会社売却や不採算事業の整理等、収益性重視の観点から選択と集中を進めたBPO受託事業の売上が69億97百万円と同15.6%減少したものの、既存店の好調とM&A効果で調剤事業の売上が844億79百万円と同9.8%増加した。

利益面では、BPO受託事業の売上総利益率が6.4ポイント改善した他、調剤事業も、医療品調達コストの削減、ジェネリック医薬品の拡大等で1.4ポイント改善。連結ベースでは12.4%と1.4ポイント改善し売上総利益が同21.1%増加。人件費やのれん償却費を中心にした販管費の増加を吸収して営業利益が46億34百万円と同52.3%増加した。役員退職慰労引当金戻入額3億17百万円を特別利益に計上した事や実効税率の低下で最終利益は29億50百万円と同89.6%増加した。第3四半期末の従業員数は3,622名(前年同期末3,474名、前期末3,455名)、うち薬剤師は1,584名(同1,497名、同1,490名)。
 
 
調剤事業
売上高は前年同期比9.8%増の844億79百万円。店舗数の増加とギリアド・サイエンシズ社から発売されたC型肝炎新薬の寄与により既存店の売上が285億63百万円と同17.8%増加、既存店処方箋単価も上昇(10,982円と708円上昇)した他、M&Aによる拡大戦略を積極的に進めた事でM&A等の売上が同10.9%増加した。

利益面では、医薬品調達コストの削減、ジェネリック医薬品の推進、人件費コントロール、不採算店舗の閉店(主に売店)、及び処方箋OCRシステムの導入等による店舗の生産性向上で収益性が改善。売上総利益率が10.4%と1.4ポイント上昇し、営業利益が45億67百万円と同43.9%増加した。

第3四半期末の店舗数はLAWSON32店舗を含む559店舗(前年同期末532店舗、前期末538店舗)。41店舗(クオールグループ40店舗、LAWSON1店舗)の出店を行う一方、 売店を中心に20店舗を閉店した。
 
BPO受託事業
売上高は前年同期比15.6%減の69億97百万円。薬剤師等の派遣事業及び治験事業が堅調に推移したものの、医療用医薬品の広告やプロモーション等を手掛けていた(株)シナジーメディカルコミュニケーションズの(株)電通への売却やアポプラスステーション(株)の不採算事業の整理に伴う売上の減少を吸収できなかった。ただ、アポプラスステーション(株)の収益性改善や各事業での徹底した損益管理が成果をあげ売上総利益率が改善(30.2%→36.6%)。営業利益は7億79百万円と同28.4%増加した。
 
 
 
 
業容拡大と無担保転換社債型新株予約権付社債(以下、新株予約権付社債)の発行による資金調達で第3四半期末の総資産は708億08百万円と前期末に比べて112億35百万円増加した。
新株予約権付社債の発行による資金調達は、2015年10月27日の払い込みで調達額は100億円。同社は調達した資金を向こう3年間の調剤事業におけるM&Aのための資金に加え、クオール薬局や新業態店舗の新規出店と既存店舗の改修、及び借入金の返済に充当していく考え。今回発行した新株予約権付社債には行使価額修正条項が付されているが、下限行使価額(当初行使価額の1,799 円)と潜在株式数(5,558,700 株)が固定されているため、1株当たりの利益や資産が過度に希薄化する事はない。また、払込期日の翌取引日以降、2018年9月28日までの間に所定の手続きを踏む事で残存する新株予約権付社債の全部を繰上償還する事もできる。
 
 
2016年3月期業績予想
 
 
利益予想を24%上方修正。前期比10.0%の増収、同46.1%の営業増益を見込む
第3四半期決算の発表と共に通期の利益予想を上方修正した。調剤事業におけるC型肝炎治療薬の処方箋応需の増加や後発医薬品の利用増に加え、BPO受託事業における事業の選択と集中の成果、更にはグループ全体としての経費コントロールが予想以上に成果をあげる事が上方修正の背景にある。
売上総利益と販管費については、第1四半期より人件費等の原価計算を精緻化した事に伴い、従来、販管費として計上していたBPO受託事業関連費用の一部の表示区分を売上原価へ変更した影響もある。

調剤事業はクオールグループ47店舗、LAWSON 8店舗の出店を計画しており、期末店舗数が593店舗と前期末に比べて55店舗増加する見込み。LAWSONについては、スクラップ&ビルドによりヘルスケアCVSへのシフトを進め、期末40店舗体制を目指している。

設備投資は16億27百万円(前期17億52百万円)を計画しており、減価償却費16億99百万円(同16億11百万円)、のれん償却費17億60百万円(同14億97百万円)を織り込んだ。

期末配当は、1株当たり10円を予定しており、上期末配当と合わせて年20円となる見込み(予想配当性向20.2%)。
 
 
 
今後の注目点
通期予想に対する進捗率は、売上高72.7%、営業利益74.8%、経常利益77.1%。足元、暖冬の影響で流行性疾患数が前年を下回っているようだが、同社グループの調剤事業は、面応需薬局を中心とした処方箋応需枚数の増加と長期処方の進行及び高単価な新薬の処方による処方箋単価の上昇で順調だ。
また、かかりつけ薬局・薬剤師に必要な機能の整備や不動在庫の増加に対応した社内物流改革(期限切れ薬剤の管理強化や医療用医薬品の有効活用)といった来期以降の逆風(来年度の調剤報酬の改定や2017年4月の消費税率引き上げ)に備えた施策が進んでいる事に加え、向こう3年間に必要な成長資金の調達も完了した。
足元の着実な利益成長に加え、やるべき事が前倒しで確実に実施されている。同社のマネジメント能力の高さを再確認した。
 
本資料は、情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。
このレポートは当社が信頼できると判断した情報源(当該発行会社が作成した会社説明資料等)の情報に基づき作成したものですが、その正確性について当社が保証するものではなく、また当資料の一部また全部を利用することにより生じたいかなる損失・損害についても当社は責任を負いません。
本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあります。また本資料の内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。
投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。
Copyright(C) 2017 Investment Bridge Co.,Ltd. All Rights Reserved.

« ブリッジレポート:(3189)ANAP vol.8 | ブリッジレポート:(2931)ユーグレナ vol.6»

ブリッジレポート(バックナンバー)
アンケート
ブリッジメール
アラート申込み
CLOSE