ブリッジレポート
(4340:東証1部) シンプレクス・テクノロジー 企業HP
金子 英樹 社長
金子 英樹 社長

【ブリッジレポート vol.7】2008年3月期決算業績レポート
取材概要「09/3期もUMS事業の立上げに伴う先行投資が続くものの、豊富な受注残を背景にした増収効果で吸収、20%を超える経常利益の伸びが見込まれる・・・」続きは本文をご覧ください。
2008年5月27日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社シンプレクス・テクノロジー
社長
金子 英樹
所在地
東京都中央区日本橋 1-4-1
事業内容
金融機関向けディーリングシステムなどの受託開発が主体。パッケージソフト開発も展開
決算期
3月
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2008年3月 8,128 2,081 2,074 1,234
2007年3月 6,742 1,612 1,608 909
2006年3月 4,765 1,145 1,138 670
2005年3月 3,473 818 794 431
2004年3月 2,637 555 555 315
2003年3月 2,062 423 420 231
2002年3月 1,632 325 303 185
2001年3月 1,466 277 302 169
2000年3月 1,858 553 555 260
株式情報(5/19現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
53,000円 574,346株 30,440百万円 31.6% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
260円 0.5% 2,568.14円 20.6倍 7,327.91円 7.2倍
※株価は5/19終値。発行済株式数は直近期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
シンプレクス・テクノロジーの2008年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
債券や株式等のディーリング業務や、ネット証券における個人投資家向けインターネット取引サービスの提供等、金融機関が収益を上げるための業務(フロント業務)をサポートするシステム・ソリューションに特化したビジネスを展開。「高度な金融工学」、「豊富な金融業務知識」、「最先端のIT技術」を融合する事で、この分野のリーディングカンパニーとして独自の強みを発揮している。
1997年秋、外資系金融機関で金融ハイテクの最先端をリードしてきたメンバーにより設立された。設立5年目の2002年2月にJASDAQ上場。04年5月の東証二部上場を経て、設立から7年11ヶ月目の2005年9月に東証一部指定替えとなった。現在、独立系金融ハイテクベンチャーとして、金融業界において確固たる地位を確立している。
 
<システム・インテグレーション(SI)事業とユニバーサル・マーケット・サービス(UMS)事業が二本柱>
システム業界におけるソリューションの提供方法は大きく二つに分かれる。一つは顧客の要望に沿って開発したフルオーダーメイドのシステムを納入し、その対価を得る売切型の受託開発モデル。もう一つは自社で開発・運用・所有するシステムを顧客に提供し、その利用料もしくはそこから発生する顧客の収益に連動した収益を受け取るサービス提供型モデル。同社では前者をシステム・インテグレーション(SI)事業(システム納入後の保守を含む)、後者をユニバーサル・マーケット・サービス(UMS)事業と呼んでいる。会社設立以来、SI事業により高い成長を実現してきたが、成長持続と更なる収益性の向上を目指して、現在進行中の第二次中期事業計画においてUMS事業を育成中である。

尚、UMS事業には、次に示す3つの特徴がある。
 
(1) サービス提供型(継続的な安定収益の実現)
UMS事業は、同社が企画・開発・保有するシステムを顧客に提供し、サービス利用料を月額チャージする事業。SI事業のように売切型でないため安定的な収益が見込め、かつ、SI事業と比較して労働集約性が低いため小数のエンジニアで事業展開できる。
 
(2)システム共有型 (高利益率の実現)
UMS事業では、複数の顧客が単一のシステムを共有するかたちでサービスを利用する。一方、システム運用コストは、その大半が固定費のため、顧客数に関わらずほぼ一定。このため、サービス採用顧客やユーザが増えるに従って、システム運用の固定費割合が下がり、利益率が上昇する。
 
(3)顧客収益連動型収益モデル(顧客事業の成長=シンプレクスの成長)
UMS事業の収益は、あらかじめ顧客と契約をした定額料金(下限フロア)である“基本料金”と、「ユーザ数課金」、「手数料収入課金」、「トランザクション課金」等、サービスを利用する事によって生じる顧客の収益に連動する料金である“インセンティブ”で構成されている。つまり、顧客のビジネスの拡大と同社の収益が連動するため、Win−Winの関係を構築する事ができる。

同社は、UMS事業(収益の安定性と高利益率)とSI事業(顧客である金融機関と密接な連携の下、最先端の金融業務をサポートする事によるノウハウと技術の蓄積)の特徴を活かし、更なる成長を目指す考えだ。足元、UMS事業の第一弾サービスとして開始した個人投資家向けインターネット取引システム「SPRINT(スプリント)」がネット証券を中心に順調に拡大している。
 
<第二次中期事業計画>
同社は07/3期を最終年度とする第一次中期事業計画の業績目標を達成した事で、創業以来目指してきた、“金融フロンティア領域のNo.1システム・インテグレーター”へと成長を遂げた。そして同社は、新たな成長軌道を確立し持続的な企業価値の向上に取り組むべく、“金融フロンティア領域のユニバーサルプレーヤ”を目指して第二次中期事業計画(08/3期〜12/3期)を進めている。
第二次中期事業計画は5年間にわたる事業計画。事業期間を「投資フェーズ」と「収穫フェーズ」に分け、最初の3年間をUMS事業への投資フェーズと位置づけ集中的な先行投資を実施。最終の12/3期までに既存のSI事業とUMS事業の売上総利益を共に30億円台に引き上げる計画(12/3期のUMS事業の売上高は50〜60億円を計画)。このため、当初の3年間は、本来30%程度の成長が期待できるSI事業の成長率を15%程度に抑え、UMS事業の立上げと拡大に注力する。UMS事業向け投資として、5年間で50億円程度の投資を予定しており、各会計年度で費用化する考え。
※08/3期、09/3期のグラフはすべて計画策定時の業績目標で表示

※10/3期、12/3期のグラフはすべて業績目標の中間値で表示

※UMS事業向け先行投資として、5年間で50億円程度の投資を実施予定

※投資コストは各会計年度で費用化することを前提として計上
2008年3月期決算
 
−SI事業が伸長、UMS事業関連の先行投資負担を吸収して29%の経常増益−
 
 
売上高はディーリングシステムの大型受注に加えてUMS(サービス)の順調な立ち上がりを受けて、前期比20.6 %増加した。また、研究開発費が3.6億円と前期の1.3億円から大幅に増加した他、人員も193名(期中平均)と前期比30名増加したことにより販管費率が19.6%と前期より4.7ポイント増加した一方で、SIにおいて特定の大型案件の利益率が予想以上に高かった事、保守において目立ったシステム障害がなかった事、更には売上総利益率の高いUMS(サービス)の売上構成比が高まった事等で売上総利益率が45.2%と前期より6.4ポイント上昇した。結果として、営業利益率は25.6%(前期は23.9%)と前期より6.4ポイント上昇し、上場来最高となった。

営業利益上振れの要因は、売上総利益率が想定を上回った事と販管費が想定ほどに増加しなかった事である。
売上総利益率が想定を上回ったのは、SIにおいて大型案件の利益率が予想以上に高かった事と保守において目立ったシステム障害がなかった事が要因。40〜42%を想定していたSIの売上総利益率が47.2%(前期36.2%)、50%程度を想定していた保守が59.9%(同48.9%)となった。今期は保守の利益率改善も一時的な要因によるところが大きいが、趨勢的にも改善傾向にあることは確かだ。と言うのは、近年、複数の案件で保守要員をシェアするようになってきたため、スケールメリットが効いてきた。このため、今後は、55%を想定して経営を進めると言う。
また、販管費が予想を下回ったのは、投資コスト5.5億円をすべて費用化することを前提としていたUMS事業向け研究開発費の一部が原価に計上されたためである。具体的には、UMS事業関連の研究開発費3.6億円を販管費として計上すると共に、特定のUMS(導入)案件における研究開発費2億円を売上原価に計上した。この結果、同事業関連の研究開発を合計5.6億円計上した事になり、ほぼ期初予想(5.5億円)通りの着地となった。その他、前期比で約60%増加した販管費の主な増加項目は、人員増に伴う給与賞与や採用教育費、オフィス増床に伴う賃借料である。

配当性向を当期純利益の10〜15%と定め、完全業績連動型の配当を実施する同社。08/3期配当金は、過去最高となった好調な業績を反映して、期初予想180円に30円上乗せの210円(前期より50円増配)を予定している。
 
(1)事業セグメント別売上高
 
SIはディーリングシステムやインターネット取引システムの受注が好調だったことを受けて、保守と共に期初予想通り順調に推移した。UMS(導入)の売上が減少したのは、研究開発色の強い案件を戦略的価格で受注したため。一方、UMS(サービス)は、個人投資家向けインターネット取引システム「SPRINT」を中心に順調に立ち上がった。
 
(2)分野別売上高
 
都銀向けデリバティブシステム等をけん引役にディーリングシステムが好調に推移した。債券分野では大手総合証券10社中9社、及び都銀3行のうち2行が同社システムを採用しており、株式分野でも大手総合証券10社中4社が同社システムを採用している。また、デファクトスタンダード(市場実勢を元にした事実上の標準)となりつつある外国為替証拠金取引システムを中心にインターネット取引システムも伸びた。
 
 
(3)顧客セグメント別売上高
注力している都市銀行の開拓が進み、都銀・信託銀行向け売上高が13.7億円と前期比54.6%増加。経営が保守的な都市銀行は取引開始までに時間がかかるものの、一旦取引が始まると安定した受注が期待できる。
2009年3月期業績予想
 
 
09/3期は前期比29.2%の増収、同20.5%の経常増益を見込む。第二次中期事業計画の2年目として引き続きUMS事業の立上げに注力するため、同事業関連の先行投資が続くものの、豊富な受注残を背景に大幅な増収が見込まれ、販管費比率は横ばいの見通し。
販管費は、同27.8%増の20.3億円を予定しており、UMS事業関連の販管費内研究開発費として6億円が織り込まれている。内訳は、360人月分のエンジニア人件費4億円とUMS事業向けその他経費(情報料等)2億円。この他、リクルーティング費用2.5億円(前期1.3億円)が織り込まれている。

尚、1株当たり配当金は50円増配の260円を予定。また、上記予想を達成した場合、投資フェーズ最終年度にあたる10/3期の業績目標(売上高100〜120億円、営業利益25〜30億円)の下限値を1年前倒しで達成する事になる。
 
(1)受注残高
 
UMS(サービス)のインセンティブ(成果報酬)売上を織り込んでいないものの、初めて期初時点の予算達成率が50%を上回った。
 
(2)事業セグメント別見通し
SI事業
UMSの大型案件受注に伴い、SI案件からUMS(導入)へエンジニアの振り分けを実施するため、ディーリングシステムを中心にSIの新規受注を抑制する。ただ、豊富な受注残を抱えるインターネット取引システムは、売上が大幅に拡大する見通し。特定の大型案件の利益率が高まったことを受けて、08/3期に特例的に向上した売上総利益率は、一時的な要因がなくなる事でSI・保守共に例年通りの水準(SI:40%程度、保守:55%程度)に戻る見込み。
また、CRM/SFAシステムは、CRM分野で高度なシステムコンサルティングノウハウを有するバーチャレクス(前期に発行済株式数の40%を取得して筆頭株主となった)とのシナジーを高めていく考え。
 
UMS事業
大阪証券取引所の取引所外国為替証拠金取引「大証FX(仮称)」システム導入案件の受注が内定した(2009年春より稼動予定)。システムの設計・開発に伴う初期費用はUMS(導入)として09/3期に大半の売上計上を予定しており、システム稼動後はシステムの月額運営費用をUMS(サービス)として10/3期から売上計上する予定。
今回の取引所取引システムの受注実績を基に、FXシステム開発のリーディングカンパニーとしてPTS(私設取引システム)/ECN(注)への受注につなげていく考えだ。

この他にも、大型導入プロジェクトが複数あり、UMS(導入)は15億円程度に拡大する見込み。また、都銀向けの新サービスとしてデリバティブ時価評価サービスの展開を予定している他、「SPRINT」の対応商品として債券が新たに加わる見通しだ。

(注)ECN:私設の証券取引所として運営される電子証券取引ネットワーク。
 
第二次中期事業計画進捗状況
 
08年3月時点のUMS(サービス)の売上高は月額1.1億円。年換算値(月額売上高の値を12倍して算出した値)は13億円となり、09/3期予想売上高105億円の12.3%に当たる。また、同売上高は、予め顧客と契約をした定額料金である“基本料金”と「ユーザ数課金」、「手数料収入課金」、「トランザクション課金」等、サービスを利用する事によって生じる顧客の収益に連動する“インセンティブ”に分かれるが、08年3月時点の月額1.1億円の内訳は基本料金0.7億円、インセンティブ0.4億円である。
 
 
09/3期のUMS(サービス)は、通期で売上高20億円、売上総利益率55%を目指す。08年5月時点で契約しているUMS(サービス)案件が全てサービスインした場合、09年3月時点の売上高は月額1.8億円(年換算値21億円)となる。更なる新規案件の受注により、09年3月までに月額2億円(年換算値24億円)に引き上げる事を努力目標としている。
 
取材を終えて
09/3期もUMS事業の立上げに伴う先行投資が続くものの、豊富な受注残を背景にした増収効果で吸収、20%を超える経常利益の伸びが見込まれる。先行投資負担が軽いわけではないが、SI事業の成長力・収益力が強いため、余裕を持って吸収できる事が同社の強みだ。足元、UMS事業も順調に拡大しており、当面の業績を考えた場合、目立ったリスクが無い状態。サブプライムローン関連の損失や景気後退により、今後、金融機関が設備投資を抑制する可能性もあるが、収益力強化に不可欠なフロント業務(金融フロンティア領域)への投資が他の投資に先立って削減される可能性は少ないと考える。
 
本資料は、情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。
このレポートは当社が信頼できると判断した情報源(当該発行会社が作成した会社説明資料等)の情報に基づき作成したものですが、その正確性について当社が保証するものではなく、また当資料の一部また全部を利用することにより生じたいかなる損失・損害についても当社は責任を負いません。
本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあります。また本資料の内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。
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